(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】生体検知装置、生体検知システム、生体検知方法及び生体データ取得装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20230227BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20230227BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20230227BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230227BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20230227BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20230227BHJP
G01S 13/04 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/11 ZDM
A61B5/113
A61B5/0245 100A
A61B5/00 102A
G08B21/02
G08B25/04 K
G01S13/04
(21)【出願番号】P 2018219150
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-11-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成30年3月6日 刊行物 2018年電子情報通信学会総合大会、講演論文集1、第477頁「UWB電波センサを用いたSVMによる浴室内監視システムの提案」 〔刊行物等〕開催日 平成30年3月21日 集会名 2018年電子情報通信学会総合大会 開催場所 東京電機大学(東京都足立区千住旭町5番)2号館 7F 2704教室
(73)【特許権者】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】梶原 昭博
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-096198(JP,A)
【文献】特開2006-058018(JP,A)
【文献】特開2006-329689(JP,A)
【文献】特開2009-031165(JP,A)
【文献】登録実用新案第3185531(JP,U)
【文献】特開2016-059458(JP,A)
【文献】特開2017-074332(JP,A)
【文献】特開2004-125399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/00 - 5/03
G08B 21/02 - 21/06
G08B 25/04
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信可能に構成された発信部と、
前記発信部から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成された受信部と、
前記受信部が受信した反射波に基づいて、前記検知領域を構成し且つ前記受信部からの距離方向において複数に区切られた複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出するように構成された信号強度算出部と、
前記複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、前記複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定するように構成された位置特定部と、
前記存在エリアと前記存在エリアに隣り合う少なくとも一つの隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて生体の動きをトラッキングして、動作データを生成するように構成されたトラッキング部と、
前記存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成するように構成されたデータ生成部とを備え、
前記位置特定部は、前記複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動と、所定の閾値とを比較して、当該閾値を超える時間変動を示す
エリアを、前記存在エリアとして特定することを含む、生体検知装置。
【請求項2】
前記トラッキング部は、前記存在エリアと前記存在エリアの両隣に位置する一対の隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、生体の位置をトラッキングする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記存在エリアにおける信号強度の時間変動が所定の閾値を超えて変動した場合に、生体が異常状態にあると判定するように構成された状態判定部をさらに備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記トラッキング部によるトラッキングの結果、生体が所定時間継続して静止状態にある場合に、生体が異常状態にあると判定するように構成された状態判定部をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記データ生成部は、前記存在エリアにおける信号強度の時間変動に対して周波数解析を行うことにより、生体の呼吸成分と拍動成分とを分離して生成するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
生体の状態に関する情報を報知するように構成された報知部をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記状態判定部による判定の結果、生体が異常状態にある場合に警報を報知するように構成された報知部をさらに備える、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項8】
前記動作データと前記生体データとが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、前記基準データが複数の個体クラスのうちのいずれか一つに分類された分類モデルを記憶するように構成された記憶部と、
前記受信部が解析対象の前記反射波を受信したときに、前記トラッキング部及び前記データ生成部からそれぞれ前記動作データ及び前記生体データを生成し、これらが対応付けられた解析データを生成するように構成された解析データ生成部と、
前記解析データが前記複数の個体クラスのいずれに属するのかを判定するように構成されたクラス判定部とをさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記発信部は、広帯域又は超広帯域の無線電波をトイレ室内の便座に着座した状態の人体の背面に向けて発信可能に構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
建物内の所定箇所に設置された、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置と、
前記装置との間で通信して、前記装置から送信された生体の状態に関する情報を報知するように構成された報知装置とを備える、生体検知システム。
【請求項11】
建物内の所定箇所に設置された、請求項3又は4に記載の装置と、
前記状態判定部による判定の結果、生体が異常状態にある場合に前記装置との間で通信して、警報を報知するように構成された報知装置とを備える、生体検知システム。
【請求項12】
広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信部により発信することと、
前記発信部から発信された無線電波の反射波を受信部により受信することと、
前記受信部で受信した無線電波の反射波に基づいて、前記検知領域を構成し且つ前記受信部からの距離方向において複数に区切られた複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出することと、
前記複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、前記複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定することと、
前記存在エリアと前記存在エリアに隣り合う少なくとも一つの隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて生体の動きをトラッキングして、動作データを生成することと、
前記存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成することとを含み、
前記存在エリアを特定することは、前記複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動と、所定の閾値とを比較して、当該閾値を超える時間変動を示す
エリアを、前記存在エリアとして特定することを含む、生体検知方法。
【請求項13】
広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信可能に構成された発信部と、
前記発信部から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成された受信部と、
前記受信部が受信した反射波に基づいて、前記検知領域を構成し且つ前記受信部からの距離方向において複数に区切られた複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出するように構成された信号強度算出部と、
前記複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、前記複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定するように構成された位置特定部と、
前記存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成するように構成されたデータ生成部とを備え、
前記位置特定部は、前記複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動と、所定の閾値とを比較して、当該閾値を超える時間変動を示す
エリアを、前記存在エリアとして特定することを含む、生体データ取得装置。
【請求項14】
広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信可能に構成された発信部と、
前記発信部から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成された受信部と、
前記受信部が受信した反射波に基づいて、前記検知領域を構成し且つ前記受信部からの距離方向において複数に区切られた複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出するように構成された信号強度算出部と、
前記複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、前記複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定するように構成された位置特定部と、
前記存在エリアと前記存在エリアに隣り合う少なくとも一つの隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて生体の動きをトラッキングして、動作データを生成するように構成されたトラッキング部と、
前記存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成するように構成されたデータ生成部と、
前記動作データと前記生体データとが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、前記基準データが複数の個体クラスのうちのいずれか一つに分類された分類モデルを記憶するように構成された記憶部と、
前記受信部が解析対象の前記反射波を受信したときに、前記トラッキング部及び前記データ生成部からそれぞれ前記動作データ及び前記生体データを生成し、これらが対応付けられた解析データを生成するように構成された解析データ生成部と、
前記解析データが前記複数の個体クラスのいずれに属するのかを判定するように構成されたクラス判定部とを備える、生体検知装置。
【請求項15】
広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信部により発信することと、
前記発信部から発信された無線電波の反射波を受信部により受信することと、
前記受信部で受信した無線電波の反射波に基づいて、前記検知領域を構成し且つ前記受信部からの距離方向において複数に区切られた複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出することと、
前記複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、前記複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定することと、
前記存在エリアと前記存在エリアに隣り合う少なくとも一つの隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて生体の動きをトラッキングして、動作データを生成することと、
前記存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成することと、
前記動作データと前記生体データとが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、前記基準データが複数の個体クラスのうちのいずれか一つに分類された分類モデルを記憶部に記憶させることと、
前記受信部が解析対象の前記反射波を受信したときに、前記動作データ及び前記生体データを生成し、これらが対応付けられた解析データを生成することと、
前記解析データが前記複数の個体クラスのいずれに属するのかを判定することとを含む、生体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体検知装置、生体検知システム、生体検知方法及び生体データ取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレでの排便時のいきみ(怒責)によって一時的な呼吸の停止や血圧上昇が生ずることがある。このとき、血圧の急変などに起因して、「排便ショック」と呼ばれるショック症状(例えば、脳卒中、失神など)が生ずることがある。当該ショック症状は、加齢によって血管系及び呼吸系機能が低下した高齢者に特に生じやすい。
【0003】
当該ショック症状が起こりやすい場所には、一人で出入りすることが多いので、ショック症状が生じた人が床に倒れ込んでしまったような場合には、その発見が遅くなってしまう。しかしながら、プライバシーの関係上、トイレなどにカメラを設置して人を撮像することは好ましくない。そのため、カメラではなく電波センサを用いて人の様子を検知して、異常が生じた場合に家族等に報知するための種々の技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1,2は、ドップラーセンサを用いて電磁波を人体表面に照射し、人体表面からの反射波を処理することにより、心拍数、呼吸などの生体データを取得する電波式生体センサを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-225559号公報
【文献】特開2017-225560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、生体の状態を精度よく把握することが可能な生体検知装置、生体検知システム、生体検知方法及び生体データ取得装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの観点に係る生体検知装置は、広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信可能に構成された発信部と、発信部から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成された受信部と、受信部が受信した反射波に基づいて、検知領域を構成する複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出するように構成された信号強度算出部と、複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定するように構成された位置特定部と、存在エリアと存在エリアに隣り合う少なくとも一つの隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて生体の動きをトラッキングして、動作データを生成するように構成されたトラッキング部と、存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成するように構成されたデータ生成部とを備える。
【0008】
本開示の他の観点に係る生体検知システムは、建物内の所定箇所に設置された上記の装置と、装置との間で通信して、装置から送信された生体の状態に関する情報を報知するように構成された報知装置とを備える。
【0009】
本開示の他の観点に係る生体検知方法は、広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信することと、無線電波の反射波に基づいて、検知領域を構成する複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出することと、複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定することと、存在エリアと存在エリアに隣り合う少なくとも一つの隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて生体の動きをトラッキングして、動作データを生成することと、存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成することとを含む。
【0010】
本開示の他の観点に係る生体データ取得装置は、広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信可能に構成された発信部と、発信部から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成された受信部と、受信部が受信した反射波に基づいて、検知領域を構成する複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出するように構成された信号強度算出部と、複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定するように構成された位置特定部と、存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成するように構成されたデータ生成部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る生体検知装置、生体検知システム、生体検知方法及び生体データ取得装置によれば、生体の状態を精度よく把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、生体検知システム及びトイレ室の周辺を側方から見た概略図である。
【
図2】
図2は、生体検知装置を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、主として制御部を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、測定対象者の体表面からの反射波に基づく信号強度の時間変動の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、生体検知装置からの距離に対する信号強度の時間変動の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、報知装置を概略的に示すブロック図である。
【
図8】
図8は、生体検知の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9(a)はシナリオ1による実験結果を示すグラフであり、
図9(b)はシナリオ2による実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
[生体検知システムの構成]
生体検知システム1の構成について、
図1を参照して説明する。生体検知システム1は、例えば、トイレ室30内の測定対象者H(生体)を検知して、トイレ室30から離れた場所に検知結果を知らせるように構成されている。生体検知システム1は、生体検知装置10と、報知装置20とを備える。
【0015】
ここで、トイレ室30の構成を説明する。トイレ室30は、ドアDによって隔てられた個室である。トイレ室30内には、ドアDに向かい合うように便器31が設置されている。便器31は、便器本体32と、便器本体32の座面に設けられた便座33及び便蓋34と、便器本体32の後部に設けられたタンク35とを含む。
【0016】
生体検知装置10は、トイレ室30内における測定対象者Hの動作(比較的大きな動き)、微体動、位置、呼吸、拍動等を検知する機能を有する。生体検知装置10は、例えば、タンク35の前方部分に設けられていてもよい。この場合、生体検知装置10は、ドアDと対面するとともに、便座33に着座した測定対象者Hの背面と対面する。
【0017】
生体検知装置10は、
図2に示されるように、発信機11(発信部)と、受信機12(受信部)と、通信機13と、制御部14(コントローラ)と、バス15とを含む。
【0018】
発信機11は、制御部14からの指示に基づいて、トイレ室30内に向けて広帯域又は超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の無線電波を発信するように構成されている。発信機11のアンテナ水平面における指向角は、例えば、40°~80°程度であってもよいし、60°~80°程度であってもよい。発信機11のアンテナ垂直面における指向角は、例えば、30°~40°程度であってもよいし、30°以下であってもよい。発信機11は、指向角の範囲におおよそ対応した検知領域Rを有している。
【0019】
本明細書において「広帯域」とは、周波数帯域幅が100MHz以上で且つ500MHz以下の場合をいうものとする。そのため、発信機11が発信する広帯域の無線電波の周波数帯域幅は、例えば、100MHz以上であってもよいし、300MHz以上であってもよい。「超広帯域」とは、周波数帯域幅が500MHzを超える場合をいうものとする。そのため、発信機11が発信する超広帯域の無線電波の周波数帯域幅は、例えば、3GHz以上であってもよいが、電波法及びコストパフォーマンスに鑑みて5GHz以下であってもよい。そのため、発信機11は、周波数帯域幅が500MHz超の超広帯域無線センサであってもよい。広帯域又は超広帯域の無線電波を用いる場合、無線電波の発信出力を小さくすることができ、測定対象者Hに対する無線電波の影響を小さくすることができる。
【0020】
受信機12は、発信機11から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成されている。発信機11において広帯域又は超広帯域の無線電波を用いているので、受信機12は、無線電波の反射波を反射パス長に対応した時間軸上で分離して受信することができる。すなわち、受信機12は、
図1に例示されるように、検知領域Rの距離方向において複数に区切られたエリア(レンジビンともいい、周波数帯域幅で決まる)ごとに、信号を抽出することが可能である。各レンジビンの幅は、例えば10cm以下であってもよい。検知領域Rにおけるレンジビンの数は、レンジビンの幅及び検知領域Rの大きさに応じて適宜変更可能である。
【0021】
通信機13は、報知装置20の通信機23と通信可能に構成されている。通信機13の通信機23との通信方式は特に限定されず、例えば、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB、Bluetooth(登録商標)、その他の通信方式が用いられてもよい。
【0022】
制御部14は、バス15を介して、発信機11、受信機12及び通信機13との間で信号の送受信を行い、これらの動作を制御するように構成されている。制御部14は、例えば、プロセッサ16と、メモリ17(記憶部)と、ストレージ18(記憶部)とを含む。
【0023】
メモリ17、ストレージ18等のハードウェアに所定のソフトウェア(プログラム)が読み込まれると、プロセッサ16は、所定の演算を行い、発信機11からの無線電波の発信、受信機12が受信した反射波の解析、通信機13による通信、メモリ17及びストレージ18におけるデータの読み出し又は書き込みを実行する。これにより、生体検知装置10における各機能が実現される。
【0024】
生体検知装置10における各機能について、
図3を参照して説明する。制御部14は、機能ブロックとして、記憶部14aと、送受信処理部14bと、信号強度算出部14cと、位置特定部14d、トラッキング部14eと、データ生成部14fと、状態判定部14gと、分類モデル生成部14hと、クラス判定部14iと、入退室判定部14jとを含む。
【0025】
記憶部14aは、種々のデータを記憶する機能を有する。記憶部14aが記憶するデータとしては、例えば、読み出したプログラム、発信機11の動作設定データ、受信機12が受信した反射波のデータ、データ生成部14fが生成した生体データ、状態判定部14gが生成した動作データ、生体データと動作データとが対応付けられた基準データ又は解析データ、分類モデル生成部14hが生成した各種分類モデル、状態判定部14g及びクラス判定部14iによる判定結果に関するデータ等が挙げられる。
【0026】
送受信処理部14bは、発信機11、受信機12及び通信機13の間で信号を送受信する機能を有する。具体的には、送受信処理部14bは、発信機11に指示信号を送信して、発信機11から無線電波を発信させる。送受信処理部14bは、受信機12から反射波のデータを受信し、当該データを記憶部14aに記憶させる。送受信処理部14bは、通信機13に指示信号を送信して、状態判定部14g及びクラス判定部14iによる判定結果を報知装置20に送信させる。
【0027】
信号強度算出部14cは、送受信処理部14bが受信した反射波のデータに基づいて、各レンジビンのそれぞれにおける信号強度を算出する機能を有する。信号強度算出部14cは、各レンジビンのそれぞれにおいて、時間軸で平滑化処理された信号強度を算出してもよい。平滑化処理としては、例えば、単純移動平均、重み付き移動平均などの種々の処理方法を採用してもよい。信号強度算出部14cによって算出された信号強度は、記憶部14aに記憶されてもよい。
【0028】
位置特定部14dは、信号強度算出部14cにおいて算出された各レンジビンの信号強度の時間変動に基づいて、レンジビンのいずれに測定対象者Hが存在するかを特定する機能を有する。位置特定部14dにおいて特定されたレンジビンは、測定対象者Hが存在する領域であることから、本明細書において「存在レンジビン」(存在エリア)と称する。
【0029】
トラッキング部14eは、位置特定部14dにおいて特定された存在レンジビンとその両隣に位置する一対の隣接レンジビン(隣接エリア)との3つのレンジビンのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、測定対象者Hの位置をトラッキングする機能を有する。トラッキング部14eは、測定対象者Hが他のレンジビンに移動した場合に、当該他のレンジビンを存在レンジビンとして更新し、当該他のレンジビンに隣接する一対のレンジビンを隣接レンジビンとして更新する機能を有する。
【0030】
データ生成部14fは、位置特定部14dにおいて特定された存在レンジビンにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成する機能を有する。例えば、測定対象者Hが呼吸をすると、それに応じて胸部が膨張収縮する。そのため、データ生成部14fは、測定対象者Hの体表面に対応する存在レンジビンにおける信号強度の時間変動(
図4参照)に基づいて、測定対象者Hの呼吸を生体データとして生成してもよい。例えば、測定対象者Hの心臓の拍動に応じて心臓が膨張収縮する。そのため、データ生成部14fは、測定対象者Hの心臓に対応する存在レンジビンにおける信号強度の時間変動に基づいて、測定対象者Hの拍動を生体データとして生成してもよい。データ生成部14fによって生成されたデータは、記憶部14aに記憶されてもよい。なお、データ生成部14fは、トラッキング部14eによるトラッキング処理が行われている場合(測定対象者Hが動作している場合)に、生体データの生成処理を一時的に停止してもよい。
【0031】
状態判定部14gは、位置特定部14dにおいて特定された存在レンジビン又はトラッキング部14eにおいて更新された存在レンジビンに基づいて、測定対象者Hがトイレ室30内のどの位置にいるか(例えば、便座33に対する着座位置)を判定する機能を有する。状態判定部14gは、トラッキング部14eによるトラッキング処理に際して、存在レンジビン及び隣接レンジビンのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、測定対象者Hが動作及び/又は微体動しているかどうかを判定する機能を有する。状態判定部14gによって取得された測定対象者Hの動作(姿勢の変化)、微体動、位置等に関するデータ(以下、まとめて「動作データ」という)は、記憶部14aに記憶されてもよい。
【0032】
状態判定部14gは、存在レンジビンにおける信号強度の時間変動が所定の閾値を超えて変動した場合に、測定対象者Hに異常が生じていると判定する機能を有する。状態判定部14gは、トラッキング部14eによるトラッキング処理の結果、測定対象者Hが所定時間継続して静止状態にある場合に、測定対象者Hに異常が生じていると判定する機能を有する。
【0033】
状態判定部14gは、データ生成部14fによって生成された生体データに基づいて、測定対象者Hに異常が生じているか否かを判定する機能を有する。例えば、状態判定部14gは、呼吸、拍動等が微弱又は停止している場合や高い値を示している場合に、測定対象者Hに異常が生じていると判定する。
【0034】
分類モデル生成部14hは、データ生成部14fによって生成された生体データと、状態判定部14gによって取得された動作データとが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、当該基準データを複数の個体クラスのうちいずれか一つに分類して、分類モデルを生成する機能を有する。例えば、所定数の基準データを含むデータセットが分類モデル生成部14hに入力された場合、分類モデル生成部14hは、教師あり学習を行ってもよいし、教師なし学習を行ってもよいし、強化学習を行ってもよい。教師あり学習のアルゴリズムとしては、例えば、サポートベクタマシン、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、決定木、k-近傍法、パーセプトロン、ニューラルネットワーク等が挙げられる。教師なし学習のアルゴリズムとしては、例えば、k-平均法、主成分分析、自己組織化マップ等が挙げられる。強化学習のアルゴリズムとしては、例えば、Q学習、モンテカルロ法、SARSA等が挙げられる。分類モデル生成部14hによって生成された分類モデルは、記憶部14aに記憶されてもよい。
【0035】
例えば、
図5に示されるデータセットDSが分類モデル生成部14hに入力された場合、分類モデル生成部14hは、データセットDSのうちの○印の基準データと□印の基準データと△印の基準データとを区画する境界線Lを生成してもよい。
図5に示される例において、データセットDSは、動作データと呼吸データとが対応付けられた複数の基準データの集合である。
図5に示される例において、データセットDSを構成する複数の基準データは、境界線Lにより、クラスC1(○印の基準データの集合)とクラスC2(□印の基準データの集合)とクラスC3(△印の基準データの集合)とのいずれか一つに分類される。クラスC1~C3はそれぞれ、例えば、測定対象者Hが「X氏」、「Y氏」、「Z氏」であることを示す分類であってもよい。境界線Lは、直線であってもよいし、曲線であってもよい。以下では、境界線Lによって区画されるクラスC1~C3によって構成される分類モデルを「分類モデルM」と称することがある。
【0036】
上述のとおり、生体データには測定対象者Hの呼吸、拍動等に関するデータが含まれ、動作データには測定対象者Hの動作、微体動、位置等に関するデータが含まれうる。そのため、基準データは、少なくとも一つの生体データと、少なくとも一つの動作データとが対応付けられたものであってもよい。
【0037】
図3に戻って、クラス判定部14iは、データ生成部14fによって生成された生体データと、状態判定部14gによって生成された動作データとが対応付けられた解析データを、分類モデル生成部14hによって生成された分類モデルMにおける複数のクラスC1~C3のいずれか一つに分類する機能を有する。すなわち、クラス判定部14iは、当該解析データを分類モデルMに当てはめて、当該解析データが複数のクラスC1~C3のうちどのクラスに属するのかを判定する。
【0038】
入退室判定部14jは、測定対象者Hのトイレ室30への入退室を判定する機能を有する。入退室判定部14jによる入退室の判定方法について、
図6を参照して説明する。なお、
図6において、明るいほど信号強度(受信電力)が高く、暗いほど信号強度(受信電力)が低いことを示している。
【0039】
まず、入退室判定部14jは、送受信処理部14bが受信した反射波のデータに基づいて、受信機12からの距離に応じた信号強度を取得する。具体的には、トイレ室30に測定対象者Hが存在していない場合には、ドアDからの反射波の信号強度が卓越する(
図6の「無人」部分を参照)。一方、トイレ室30に測定対象者Hが存在している場合、測定対象者HはドアDよりも生体検知装置10寄りに位置する。すなわち、生体検知装置10から測定対象者Hまでの距離d1は生体検知装置10からドアDまでの距離d2よりも短い。このとき、発信機11からの無線電波の一部が測定対象者Hで反射して壁に到達しなくなる。そのため、ドアDからの反射波の信号強度が小さくなり、ドアDよりも手前側(受信機12側)からの反射波の信号強度が大きくなる(
図6の「入室」、「着座」、「退室」を参照)。従って、入退室判定部14jは、経時的に信号強度を取得し、ドアDよりも手前側からの反射波が所定の閾値よりも大きくなったときに、測定対象者Hがトイレ室30に入室したと判断してもよい。入退室判定部14jは、経時的にドアDからの反射波の信号強度を取得し、ドアDよりも手前側からの反射波が所定の閾値以下となったときに、測定対象者Hがトイレ室30から退室したと判断してもよい。
【0040】
入退室判定部14jは、測定対象者Hのトイレ室30への入退室を判定する際に、ドアDからの反射波の信号強度も考慮してもよい。具体的には、入退室判定部14jは、経時的に信号強度を取得し、ドアDよりも手前からの反射波が所定の閾値よりも大きくなり且つドアDからの反射波の信号強度が所定の閾値以下となったときに、測定対象者Hがトイレ室30に入室したと判断してもよい。入退室判定部14jは、経時的に信号強度を取得し、ドアDよりも手前からの反射波が所定の閾値以下となり且つドアDからの反射波の信号強度が所定の閾値より大きくなったときに、測定対象者Hがトイレ室30から退室したと判断してもよい。ドアDからの反射波の信号強度の時間変動も考慮することにより、測定対象者Hの入退室をより精度よく判断することが可能となる。
【0041】
図1に戻って、報知装置20は、例えばトイレ室30とは壁Wを隔てた別の室内に取り付けられている。報知装置20は、
図7に示されるように、モニタ21(報知部)と、スピーカ22(報知部)と、通信機23と、制御部24(コントローラ)と、バス25とを含む。
【0042】
モニタ21及びスピーカ22はそれぞれ、通信機23を介して受信した状態判定部14gによる判定結果を、映像及び/又は音で当該別の室内にいる在室者(例えば、家族)に報知するように構成されている。通信機23は、生体検知装置10の通信機13と同様の構成を有しており、通信機13と同様に機能する。
【0043】
制御部24は、プロセッサ26と、メモリ27と、ストレージ28とを含んでおり、生体検知装置10の制御部14と同様に機能する。バス25は、生体検知装置10のバス15と同様の構成を有しており、バス15と同様に機能する。
【0044】
[生体検知方法]
続いて、
図8を参照して、生体検知方法(トイレ室30の監視方法)について説明する。なお、生体検知装置10の記憶部14aは、複数の基準データを用いた機械学習により得られる少なくとも一つの学習済みの分類モデルを記憶していてもよい。
【0045】
まず、送受信処理部14bは、発信機11に指示して、発信機11から無線電波をトイレ室30内に発信させる。次に、送受信処理部14bは、受信機12を介して無線電波の反射波のデータを受信する。信号強度算出部14cは、経時的に、レンジビンごとに、受信機12が受信した反射波の信号強度を算出し、当該信号強度を時間軸で平滑化処理する。平滑化処理としては、例えば、単純移動平均、重み付き移動平均などの種々の処理方法を採用してもよい。
【0046】
次に、入退室判定部14jは、所定のエリアからの反射波の信号強度の変動に基づいて、測定対象者Hがトイレ室30に入室したか否かを判定する(
図8のステップS1)。具体的には、入退室判定部14jは、ドアDよりも手前からの反射波の信号強度が所定の閾値よりも大きくなったか否かを判定する。例えば
図6には、生体検知装置10から0m~1.5m程度に存在するレンジビンの信号強度が、0秒~40秒程度までほぼ0である様子が示されている。この場合、入退室判定部14jは、この間に測定対象者Hが入室していない判断する。測定対象者Hがトイレ室30に入室していないと入退室判定部14jが判定した場合には(
図8のステップS1でNO)、ステップS1の処理を繰り返す。
【0047】
一方、例えば
図6には、生体検知装置10から0m~1.5m程度に存在するレンジビンの信号強度が、約40秒~約65秒の間に急激に変化している様子が示されている。この場合、入退室判定部14jは、この時点(約40秒~約65秒の間)で測定対象者Hが入室したと判断する。測定対象者Hがトイレ室30に入室したと入退室判定部14jが判定した場合には(
図8のステップS1でYES)、信号強度算出部14cは、信号強度算出部14cが受信した反射波のデータに基づいて、各レンジビンの信号強度を所定のサンプリング周期でそれぞれ算出する(
図8のステップS2)。サンプリング周期としては、例えば、0.01秒~0.1秒程度であってもよい。
【0048】
次に、位置特定部14dは、信号強度算出部14cが算出した各レンジビンにおける平滑化後の信号強度に基づいて、測定対象者Hが存在する存在レンジビンを特定する(
図8のステップS3)。具体的には、位置特定部14dは、各レンジビンにおける平滑化後の信号強度の時間変動(例えば、現在の信号強度と一定時間前の信号強度との差分)を、レンジビンごとに算出する。次に、位置特定部14dは、算出したレンジビンごとの時間変動を閾値と比較して、閾値を超える時間変動を示すレンジビンを特定する。なお、実験結果などに基づいて人が閾値の大きさを適宜設定してもよいし、機械学習の結果を用いて最適な閾値の大きさを設定してもよい。
【0049】
ところで、人体の動きは一定ではなく、人体が動いたときの信号強度の時間変動は極めて大きくなる傾向にある。そのため、信号強度の時間変動が閾値を上回る場合には測定対象者Hの存在が検知される。すなわち、測定対象者H以外の動きを外乱として排除することが可能となっている。
【0050】
次に、トラッキング部14eは、位置特定部14dにおいて特定された存在レンジビン及び隣接レンジビンのそれぞれにおける信号強度に基づいて、測定対象者Hの位置をトラッキングする。次に、状態判定部14gは、トラッキング部14eによるトラッキング処理を通じて、測定対象者Hの動作データを生成する(
図8のステップS4)。
【0051】
例えば
図6には、生体検知装置10から0m~1.5m程度に存在するレンジビンの信号強度が、約100秒、約140秒のそれぞれの前後で急激に変化している様子が示されている。すなわち、時間の経過に伴い、大きな信号強度が存在レンジビンから隣接レンジビンへと移行している。この場合、後述するステップS7において、状態判定部14gは、その時間、測定対象者Hが存在レンジビンから隣接レンジビンへと移動したと判断する。トラッキング部14eはその後、移行後の隣接レンジビンを新たな存在レンジビンとして扱うと共に、当該新たな存在レンジビンに隣接するレンジビンを新たな隣接レンジビンとして扱う。すなわち、トラッキング部14eは、レンジビン(生体検知装置10からの距離)に対する信号強度の変化率(現在の信号強度と一定時間前の信号強度との差分)に基づいて測定対象者Hをトラッキングしているともいえる。
【0052】
例えば
図6には、生体検知装置10から0m~1.5m程度に存在するレンジビンの信号強度が、約65秒~約100秒の間であまり変化していない様子が示されている。すなわち、時間の経過に伴い、存在レンジビンにおいて大きな信号強度が継続して生じているが、隣接レンジビンにおいて信号強度が小さいままである。この場合、後述するステップS7において、状態判定部14gは、その時間、測定対象者Hが特定の存在レンジビンに留まっていた(測定対象者Hが大きく動作しなかった)と判断する。
【0053】
ところで、例えば
図6には、約100秒~約130秒の間で、生体検知装置10から0.2m~0.5m程度に存在するレンジビンの信号強度が小さくなり、且つ、生体検知装置10から0.4m~0.7m程度に存在するレンジビンの信号強度が大きくなっている様子が示されている。これは、測定対象者Hが便座33で前屈みとなったことで、存在レンジビンが後方に移行したためである。この場合、後述するステップS7において、状態判定部14gは、その時間、測定対象者Hが前屈みになっていたと判断する。
【0054】
次に、データ生成部14fは、位置特定部14dにより特定された存在レンジビン又はトラッキング部14eにより更新された新たな存在レンジビンにおける信号強度の時間変動に基づいて、生体データ(例えば、呼吸、拍動)を生成する(
図8のステップS5)。
【0055】
次に、クラス判定部14iは、ステップS4,S5において生成された動作データと生体データとが対応付けられた解析データを分類モデルMに当てはめて、測定対象者Hの個人識別を行う(
図8のステップS6)。例えば、データ生成部14fが
図5に示される解析データxを生成した場合、クラス判定部14iは、解析データxがクラスC3に属すると判定する。すなわち、クラス判定部14iは、測定対象者Hが「Z氏」であると判定する。このとき、制御部14は、ステップS4,S5で生成された動作データ及び生体データを、ステップS6で得られた測定対象者Hの個人情報に対応付けて、記憶部14aに記憶させてもよい。
【0056】
次に、状態判定部14gは、測定対象者Hの状態を判定する(
図8のステップS7)。具体的には、状態判定部14gは、測定対象者Hの動作、微体動、位置、呼吸、拍動の状態と、測定対象者Hが危険な状態にあるか否かを判定する。
【0057】
測定対象者Hの動作の有無の判定は、存在レンジビンと隣接レンジビンとの間での信号強度の時間変動に基づいて行われてもよい。例えば、トラッキング部14eにおいて存在レンジビンが更新された場合には、状態判定部14gは、動作ありと判断してもよい。一方、トラッキング部14eにおいて存在レンジビンが更新されない場合には、状態判定部14gは、測定対象者Hが動作していないので測定対象者Hが危険な状態にあると判断してもよい。
【0058】
測定対象者Hの微体動の有無の判定は、存在レンジビンにおける信号強度の時間変動に基づいて行われてもよい。例えば、存在レンジビンにおける信号強度の時間変動が所定範囲内である場合には、状態判定部14gは微体動ありと判定してもよい。存在レンジビンにおける信号強度の時間変動が所定範囲を下回る場合には、状態判定部14gは、測定対象者Hに微体動がないため測定対象者Hが危険な状態にあると判定してもよい。
【0059】
ところで、測定対象者Hが転倒、気絶等する場合には、測定対象者Hは通常よりも大きく動作する。このとき、存在レンジビンにおいて、通常よりも大きな信号強度の時間変動が発現する。そのため、存在レンジビンにおける信号強度の時間変動が所定範囲を上回る場合には、状態判定部14gは、測定対象者Hが危険な状態にあると判定してもよい。
【0060】
次に、ステップS7における判定の結果、測定対象者Hに異常がある場合には(
図8のステップS8でYES)、送受信処理部14bは、通信機13に指示信号を送信して、判定結果を報知装置20に送信させる。これにより、生体検知装置10とは別の室内にある報知装置20のモニタ21又はスピーカ22を通じて、当該別の室内の在室者に測定対象者Hの危険性が報知され(
図8のステップS9)、生体検知処理が終了する。なお、報知装置20による異常の報知は、状態判定部14gによる危険との判定が所定時間以上継続した場合に行われてもよい。
【0061】
一方、ステップS7における判定の結果、測定対象者Hに異常がない場合には(
図8のステップS8でNO)、入退室判定部14jは、測定対象者Hがトイレ室30から退室したか否かを判定する(
図8のステップS10)。具体的には、入退室判定部14jは、経時的に信号強度を取得し、ドアDよりも手前からの反射波が所定の閾値以下となったか否かを判定する。測定対象者Hがトイレ室30から退室していないと入退室判定部14jが判定した場合には(
図8のステップS11でNO)、ステップS2以下の処理を繰り返す。
【0062】
ところで、例えば
図6には、生体検知装置10から0m~1.5m程度に存在するレンジビンの信号強度が、約140秒~160秒の間に急激に変化している様子が示されている。この場合、入退室判定部14jは、この時点(約140秒~約160秒の間)で測定対象者Hが退室したと判定し(
図8のステップS11でYES)、生体検知処理が終了する。
【0063】
[作用]
以上の例によれば、位置特定部14dでは、複数のエリアごとに算出された信号強度の時間変動に基づいて、当該時間変動が大きいエリアに生体が存在することが把握される。このように、当該時間変動の大きさを基準とすることで、生体以外の変動の影響が抑制される。加えて、トラッキング部14eでは、測定対象者Hのトラッキングのために、位置特定部14dで特定された存在エリアとその隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動を利用している。そのため、これらのエリア外で突発的に信号強度の時間変動が大きくなっても、それを測定対象者Hと誤検知することが抑制される。さらに、データ生成部14fでは、測定対象者Hが存在する存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて、呼吸、拍動等の生体データが生成される。このように、位置特定部14dによって特定された存在エリアにおける信号強度の時間変動を用いることで、測定対象者Hの移動の前後において、生体データを継続的に生成することができる。したがって、測定対象者Hの状態を精度よく把握することが可能となる。
【0064】
以上の例によれば、測定対象者Hの位置をトラッキングするために、存在エリア及びそれに隣接する前後のエリアが利用される。そのため、トラッキングのためのエリアが拡大されるので、測定対象者Hが存在エリアの前後のどちらに移動した場合でも、容易にトラッキングすることが可能となる。
【0065】
以上の例によれば、動作データ及び生体データが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、個々の測定対象者Hを互いに異なる個体クラスに分類している。従って、このような分類モデルMに基づいて解析データが属する個体クラスを判定することにより、解析対象の個体を正確に特定することが可能となる。
【0066】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0067】
(1)生体検知装置10は、タンク35以外の箇所に設けられていてもよい。例えば、便器31がタンクレストイレである場合には、生体検知装置10は、ドアDと対面するトイレ室30の壁に設けられていてもよい。あるいは、発信機11のアンテナ指向角によっては、便蓋34や便器31のリモコン洗浄ユニット等に設けられていてもよい。生体検知装置10は、トイレ室30以外の他の空間(例えば、浴室、寝室、リビング、オフィス、自動車など)内における生体の検知に用いられてもよい。
【0068】
(2)生体検知装置10は、有線で報知装置20と接続されていてもよい。
【0069】
(3)上記の実施形態では、報知装置20は、生体検知装置10と同じ建物内に取り付けられていたが、生体検知装置10とは異なる建物内に取り付けられていてもよいし、移動通信可能な携帯端末(例えば、携帯電話、スマートフォンなど)であってもよい。当該異なる建物としては、例えば、測定対象者Hと別居している家族の家、救急医療サービスを提供する施設(日本においては消防署)、病院などが挙げられる。これらの場合、測定対象者Hとは離れた場所にいる家族、救急隊、医師などが測定対象者Hの状態を知ることができる。そのため、測定対象者Hが単身生活者の場合であっても、測定対象者Hの状態を見守ることが可能となる。
【0070】
(4)生体検知装置10が報知装置20を含んでいてもよい。すなわち、生体検知装置10が、モニタ21(報知部)、スピーカ22(報知部)等を内蔵していてもよい。この場合、報知装置20がトイレ室30内に配置される。そのため、例えば、測定対象者Hが便座33に着座したまま眠りに入ってしまい半覚醒状態にあるような軽度の異常に際して、モニタ21の点滅、スピーカ22からの警報(例えば、警報音、警告アナウンス等)によって、測定対象者Hが重度な異常に移行してしまうことを抑制することが可能となる。
【0071】
(5)生体検知装置10は、測定対象者Hを含むユーザからの入力操作を受け付けるように構成された入力部を含んでいてもよい。入力部としては、例えば、スイッチ、タッチパネルなどが挙げられる。生体検知装置10は、入力部が受け付けた入力操作に基づいて機械学習が行えるように構成された更新部を含んでいてもよい。
【0072】
例えば、クラス判定部14iが測定対象者Hを「Z氏」であると判定したが、実際には「X氏」であるような場合に、測定対象者Hである「X氏」が入力部を介して正しい個人情報を入力することにより、更新部は、当該入力操作を契機として分類モデルMを更新してもよい。この場合、ユーザが入力部を通じて誤判定結果をフィードバックすることにより、測定対象者Hをより正確に識別することが可能となる。
【0073】
例えば、報知装置20が警報を発した際に、当該警報が誤警報であることを示すユーザからの入力操作が入力部に入力された場合(測定対象者Hが異常状態にあるとして報知装置20が警報を発したが、実際には測定対象者Hに異常が生じていない場合)、更新部は、当該入力操作を契機として機械学習を行ってもよい。この場合、ユーザが入力部を通じて誤警報をフィードバックすることにより、トイレ室30内における測定対象者Hの状況をより正確に検知することが可能となる。
【0074】
(6)制御部14は、状態判定部14gよって判定される測定対象者Hの状態に関するデータに基づいて、他の機器(例えば、トイレ室30内の照明など)を制御するための制御信号を生成する制御信号生成部を含んでいてもよい。当該制御信号生成部は、通信機13(通信部)を通じて、当該制御信号を当該他の機器に送信してもよい。
【0075】
(7)分類モデルMは、複数の基準データが予め学習された学習済みモデルであってもよいし、解析データを当該学習済みモデルにリアルタイムで追加学習させた動的な分類モデルであってもよい。
【0076】
(8)測定対象者Hの個々人の癖に応じて、便座33への着座位置(座り方)、着座時の姿勢変化(体の動き)、呼吸などが変化しうる。そのため、これらに基づいて、測定対象者Hの個人識別を行ってもよい。便座33への着座位置は、生体検知装置10からの距離(例えば、トラッキング部14eによるトラッキング処理)に基づいて識別されてもよい。着座時の姿勢変化や呼吸は、存在レンジビンにおける信号強度の時間変動に基づいて識別されてもよい。
【0077】
(9)測定対象者Hがトイレ室30内に存在していない場合においても引き続き生体検知装置10が動作して、トイレ室30内を監視してもよい。例えば、測定対象者Hの退室後も継続して生体検知装置10が動作することにより、測定対象者Hがトイレ室30から出た後に測定対象者Hに危険な状態が生じたか否かを検知することが可能となる。
【0078】
(10)制御部14は、受信機12が受信した反射波の信号強度の時間変動を周波数解析することにより、一つの受信信号から複数の生体データを分離及び生成してもよい。周波数解析の手法としては、例えば、フーリエ変換、ウェーブレット変換などが挙げられる。周波数解析によって一つの受信信号から分離及び生成される複数の生体データとしては、例えば、測定対象者Hの呼吸成分及び拍動成分が挙げられる。
【0079】
(11)生体検知装置10は、生体データ取得装置として用いられてもよい。すなわち、生体検知装置10は、データ生成部14fによって生体データを生成した後、状態判定部14gによる判定を行わなくてもよい。この場合、制御部14は、記憶部14aと、送受信処理部14bと、信号強度算出部14cと、位置特定部14dと、データ生成部14fとを少なくとも含んでいてもよい。
【0080】
(12)図示していないが、ドアDはトイレ室30の側壁に設けられていてもよい。この場合、生体検知装置10は、トイレ室30の正面の壁と対面するとともに、便座33に着座した測定対象者Hの背面と対面する。
【0081】
(13)生体検知装置10は、測定対象者Hがトイレ室30に入室したことを検知した後に、測定対象者Hが生体検知装置10から0m~0.5m程度の範囲内に存在しているか否かを判断してもよい。生体検知装置10は、この範囲におけるレンジビンの信号強度が変化しないか又は変化がわずかである場合に、測定対象者Hが便器31に着座しておらず、男性による立ち小便であると判断してもよい。この場合、測定対象者Hの生体データの生成及び個人識別を行わずに、測定対象者Hの状態判定を行ってもよい(
図8のステップS5,S6を省略してステップS7に進んでもよい)。
【0082】
[実験例]
以上のように構成された生体検知システム1を用いて、実験を行った。具体的には、
図1と同様に、生体検知装置10を便蓋34に取り付けた状態で、被験者が以下の2つのシナリオに基づきトイレ室30内で行動した。
・シナリオ1:被験者は、ドアDを通ってトイレ室30に入り、次に便座33に着座し、その状態で気を失ってトイレ室30の壁面に倒れかかった。
・シナリオ2:被験者は、ドアDを通ってトイレ室30に入り、次に便座33に着座し、便座33から立ち上がった際に気を失って転倒して床に寝そべった。
【0083】
シナリオ1の実験結果を
図9(a)に示す。シナリオ2の実験結果を
図9(b)に示す。
図9によれば、被験者の移動に伴って被験者がどの場所にいるのかが状態判定部14gによって特定できていることが確認された。また、
図9によれば、被験者がトイレ室30の壁面に倒れかかったり、床に寝そべったりと、危険な状態の発生を想定した行動を被験者がとった場合に、状態判定部14gによって危険ありと判定されることが確認された。
【0084】
[例示]
例1.本開示の一つの例に係る生体検知装置は、広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信可能に構成された発信部と、発信部から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成された受信部と、受信部が受信した反射波に基づいて、検知領域を構成する複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出するように構成された信号強度算出部と、複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定するように構成された位置特定部と、存在エリアと存在エリアに隣り合う少なくとも一つの隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて生体の動きをトラッキングして、動作データを生成するように構成されたトラッキング部と、存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成するように構成されたデータ生成部とを備える。
【0085】
生体の動きは一定ではなく、生体が動いたときの信号強度の時間変動は極めて大きくなる傾向にある。そのため、位置特定部では、複数のエリアごとに算出された信号強度の時間変動に基づいて、当該時間変動が大きいエリアに生体が存在することが把握される。このように、当該時間変動の大きさを基準とすることで、生体以外の変動の影響が抑制される。加えて、トラッキング部では、生体のトラッキングのために、位置特定部で特定された生体の存在エリアとその隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動を利用している。そのため、これらのエリア外で突発的に信号強度の時間変動が大きくなっても、それを生体と誤検知することが抑制される。さらに、例えば、生体の呼吸に応じて胸部が膨張収縮し、生体の心臓の拍動に応じて心臓が膨張収縮するので、生体の体表面や心臓からの反射波の信号強度が時間変動する。そのため、データ生成部では、生体が存在する存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて、呼吸、拍動等の生体データが生成される。このように、位置特定部によって特定された存在エリアにおける信号強度の時間変動を用いることで、生体の移動の前後において、生体データを継続的に生成することができる。したがって、例1に係る生体検知装置によれば、生体の状態を精度よく把握することが可能となる。
【0086】
例2.例1の装置において、トラッキング部は、存在エリアと存在エリアの両隣に位置する一対の隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、生体の位置をトラッキングしてもよい。この場合、生体の位置をトラッキングするために、存在エリア及びそれに隣接する前後のエリアが利用される。そのため、トラッキングのためのエリアが拡大されるので、生体が存在エリアの前後のどちらに移動した場合でも、容易にトラッキングすることが可能となる。
【0087】
例3.例1又は例2の装置は、存在エリアにおける信号強度の時間変動が所定の閾値を超えて変動した場合に、生体が異常状態にあると判定するように構成された状態判定部をさらに備えていてもよい。ここで、生体(例えば人体)が倒れ込んだりしたときには、生体が通常よりも大きく動作する。そのため、通常よりも大きな信号強度の時間変動が発現する。従って、例3によれば、信号強度の時間変動に基づいて生体の異常状態を判定することが可能となる。
【0088】
例4.例1~例3のいずれかの装置は、トラッキング部によるトラッキングの結果、生体が所定時間継続して静止状態にある場合に、生体が異常状態にあると判定するように構成された状態判定部をさらに備えていてもよい。ここで、生体(例えば人体)が倒れ込むに至らないまでも、気絶等により静止状態を継続することが起こりうる。例4によれば、このような場合でも、生体の異常状態を判定することが可能となる。
【0089】
例5.例1~例4のいずれかの装置において、データ生成部は、存在エリアにおける信号強度の時間変動に対して周波数解析を行うことにより、生体の呼吸成分と拍動成分とを分離して生成するように構成されていてもよい。この場合、周波数解析により、一つの受信信号から複数の生体データを得ることが可能となる。
【0090】
例6.例1~例5のいずれかの装置において、生体の状態に関する情報を報知するように構成された報知部をさらに備えていてもよい。
【0091】
例7.例3又は例4の装置において、状態判定部による判定の結果、生体が異常状態にある場合に警報を報知するように構成された報知部をさらに備えていてもよい。この場合、例えば、生体が眠りに入ってしまい半覚醒状態にあるような軽度の異常に際して、警報によって生体を覚醒状態とすることで、生体が重度な異常に移行してしまうことを抑制することが可能となる。
【0092】
例8.例1~例7のいずれかの装置は、動作データと生体データとが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、基準データが複数の個体クラスのうちのいずれか一つに分類された分類モデルを記憶するように構成された記憶部と、受信部が解析対象の反射波を受信したときに、トラッキング部及びデータ生成部からそれぞれ動作データ及び生体データを生成し、これらが対応付けられた解析データを生成するように構成された解析データ生成部と、解析データが複数の個体クラスのいずれに属するのかを判定するように構成されたクラス判定部とをさらに備えていてもよい。ところで、生体の動作、生体の呼吸、生体の拍動などの特徴量は個々の生体ごとに異なっており、これらの特徴量に応じて、受信部における信号強度の距離スペクトルが変化する。そのため、動作データ及び生体データが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、個々の生体を互いに異なる個体クラスに分類できる。従って、このような分類モデルに基づいて解析データが属する個体クラスを判定することにより、解析対象の個体を正確に特定することが可能となる。
【0093】
例9.例1~例8のいずれかの装置において、発信部は、広帯域又は超広帯域の無線電波をトイレ室内の便座に着座した状態の人体の背面に向けて発信可能に構成されていてもよい。
【0094】
例10.本開示の他の例に係る生体検知システムは、建物内の所定箇所に設置された、例1~例9のいずれかの装置と、装置との間で通信して、装置から送信された生体の状態に関する情報を報知するように構成された報知装置とを備える。この場合、例1~例9のいずれかの装置が検知した生体の動作の様子、生体の異常状態などを、当該装置とは異なる位置にある報知装置を介して把握することができる。そのため、例えば、トイレ室内の人物の様子を、キッチン、リビング、外出先などのトイレ室外から見守ることが可能となる。
【0095】
例11.本開示の他の例に係る生体検知システムは、建物内の所定箇所に設置された、例3又は例4の装置と、状態判定部による判定の結果、生体が異常状態にある場合に装置との間で通信して、警報を報知するように構成された報知装置とを備える。この場合、例3又は例4の装置が検知した生体の異常状態を、当該装置とは異なる位置にある報知装置を介して把握することができる。そのため、例えば、トイレ室内の人物の様子を、キッチン、リビング、外出先などのトイレ室外から見守ることが可能となる。
【0096】
例12.本開示の他の例に係る生体検知方法は、広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信することと、無線電波の反射波に基づいて、検知領域を構成する複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出することと、複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定することと、存在エリアと存在エリアに隣り合う少なくとも一つの隣接エリアとのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて生体の動きをトラッキングして、動作データを生成することと、存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成することとを含む。この場合、例1と同様の作用効果が得られる。
【0097】
例13.本開示の他の例に係る生体データ取得装置は、広帯域又は超広帯域の無線電波を所定の検知領域に向けて発信可能に構成された発信部と、発信部から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成された受信部と、受信部が受信した反射波に基づいて、検知領域を構成する複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出するように構成された信号強度算出部と、複数のエリアのそれぞれにおける信号強度の時間変動に基づいて、複数のエリアのうち生体が存在する存在エリアを特定するように構成された位置特定部と、存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて生体データを生成するように構成されたデータ生成部とを備える。
【0098】
生体の動きは一定ではなく、生体が動いたときの信号強度の時間変動は極めて大きくなる傾向にある。そのため、位置特定部では、複数のエリアごとに算出された信号強度の時間変動に基づいて、当該時間変動が大きいエリアに生体が存在することが把握される。このように、当該時間変動の大きさを基準とすることで、生体以外の変動の影響が抑制される。さらに、例えば、生体の呼吸に応じて胸部が膨張収縮し、生体の心臓の拍動に応じて心臓が膨張収縮するので、生体の体表面や心臓からの反射波の信号強度が時間変動する。そのため、データ生成部では、生体が存在する存在エリアにおける信号強度の時間変動に基づいて、呼吸、拍動等の生体データが生成される。このように、位置特定部によって特定された存在エリアにおける信号強度の時間変動を用いることで、生体の移動の前後において、生体データを継続的に生成することができる。したがって、例13に係る生体データ取得装置によれば、生体データを精度よく取得することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
1…生体検知システム、10…生体検知装置、11…発信機(発信部)、12…受信機(受信部)、13…通信機、14…制御部(コントローラ)、14a…記憶部、14b…送受信処理部、14c…信号強度算出部、14d…位置特定部、14e…トラッキング部、14f…データ生成部、14g…状態判定部、14h…分類モデル生成部、14i…クラス判定部、16…プロセッサ、17…メモリ(記憶部)、18…ストレージ(記憶部)、20…報知装置、21…モニタ(報知部)、22…スピーカ(報知部)、23…通信機、24…制御部(コントローラ)、30…トイレ室、H…測定対象者(生体)、R…検知領域。