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  • 特許-双眼ルーペ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】双眼ルーペ
(51)【国際特許分類】
   G02B 25/00 20060101AFI20230227BHJP
   G02C 1/00 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
G02B25/00
G02C1/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019096374
(22)【出願日】2019-05-05
(65)【公開番号】P2020184047
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】396011347
【氏名又は名称】株式会社岩田鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真太郎
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-006265(JP,A)
【文献】実開昭51-073049(JP,U)
【文献】特開2004-138870(JP,A)
【文献】米国特許第02880649(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の鼻に掛ける鼻掛け部、耳に掛ける一対の耳掛け部、及び、前記鼻掛け部から一対の前記耳掛け部それぞれにかけて頬骨に沿って延びるように下方に膨らんで湾曲しているアンダーリムを有しているフレームと、
それぞれ前記鼻掛け部の両脇で前記アンダーリムに支持されている一対のルーペ本体とを具備し、
一対の前記ルーペ本体は、それぞれ接眼側端部で前記アンダーリムに接続されていると共に、対物側端部で互いに連結されている
ことを特徴とする双眼ルーペ。
【請求項2】
前記フレームは、眼鏡レンズに相当する構成を支持していない
ことを特徴とする請求項1に記載の双眼ルーペ。
【請求項3】
一対の前記耳掛け部は、それぞれ端部にフックを有している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の双眼ルーペ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双眼ルーペに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の双眼ルーペとしては、眼鏡の二つのレンズ(キャリアレンズ)それぞれに、ルーペ本体が嵌め込まれている眼鏡一体型ルーペ(例えば、特許文献1参照)と、一対のルーペ本体を支持しているアームがクリップ等の係止具を有しており、その係止具で眼鏡のフレームに着脱式に取り付けられる眼鏡前掛け型ルーペを挙げることができる(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
眼鏡一体型ルーペは、使用者の眼幅、視力、要請される作業距離に応じて、キャリアレンズに対するルーペ本体の取り付け位置や角度を調整し、レンズ倍率が選択されるオーダーメイドとされることが多いため、汎用性が乏しく高価である。また、キャリアレンズに固定されたルーペ本体が使用者の眼前に位置するため、拡大視野ではない通常の視野が狭く、拡大しない状況では物を見にくいという問題があった。
【0004】
一方、眼鏡前掛け型ルーペは、一対のルーペ本体間の距離を眼幅に合わせて調整できる機構を有していることが多く、汎用性が高いという利点はあるが、重心が前方に位置するため、視線を下方に向けるように頭を傾けて作業していると、眼鏡がずり下がったりルーペの重さを負担に感じたりすることがあった。また、ルーペ本体の接眼レンズと使用者の眼との間に眼鏡のレンズが存在するため、接眼レンズが眼から離れることとなり、ルーペ本体自体が視野に入って拡大視野が見にくいと共に、眼前にルーペ本体及びこれを支持するアームが吊り下がった状態であるため、拡大視野ではない通常の視野で物を見にくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-200411号公報
【文献】特開2011-2642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、汎用性が高く、装着感が良いと共に、拡大視野ではない通常の視野も良好な双眼ルーペの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる双眼ルーペは、
「使用者の鼻に掛ける鼻掛け部、耳に掛ける一対の耳掛け部、及び、前記鼻掛け部から一対の前記耳掛け部それぞれにかけて頬骨に沿って延びるように下方に膨らんで湾曲しているアンダーリムを有しているフレームと、
それぞれ前記鼻掛け部の両脇で前記アンダーリムに支持されている一対のルーペ本体とを具備する」ものである。
【0008】
従来、双眼ルーペに関しては、一対のルーペ本体間の距離は、使用者の眼幅(瞳孔間距離)に合わせて“調整しなければならない”と考えられてきた。また、従来の眼鏡一体型ルーペの製造に当たっては、使用者の視力や目的とする作業距離に、ルーペ本体を適応させてきた。このような当業者の常識に反し、本発明者は、双眼ルーペの使用されるシーンとして、ルーペ本体間の距離や作業距離が、厳密に調整・設定されていなくても問題がないシーンが、少なくないことに着目した。つまり、手術用ルーペなど、高度に精密な作業を、直立に近い姿勢で行うことが要請されるシーンで使用される双眼ルーペにとっては、ルーペ本体間の距離を使用者の眼幅に合わせる調整や、使用者の視力や目的の作業距離にルーペ本体を適応させる設定は重要である。これに対し、日常的な作業や手工業的な作業に使用される双眼ルーペとしては、そのような厳密な調整や設定を捨象する不利益より、汎用性が高められる利益の方が大きいのではないかと、本発明者は考えた。
【0009】
本発明は、上記の観点からなされたものであり、鼻掛け部の両脇でアンダーリムにルーペ本体が支持されている。一対のルーペ本体は鼻掛け部の両脇にあるため、使用者の眼幅に差異があっても、使用者の鼻に対する鼻掛け部の位置及び角度を微調整することにより、大抵の人がルーペ本体を介して拡大視することが可能である。また、作業距離は使用者の姿勢で調整することが可能であり、検討の結果、ルーペ本体のレンズ倍率と一対のルーペ本体それぞれの光軸がなす角度等の設定により、使用者の視力の差異が一般的な範囲であれば、作業距離を35cm~45cmという大差のない範囲とできることが判明した。
【0010】
本構成の双眼ルーペでは、アンダーリムは使用者の頬骨に沿うように下方に膨らんで湾曲しているため、アンダーリムに支持されたルーペ本体は、眼より下方に位置することとなる。そのため、本構成の双眼ルーペでは、視線を下方に向けたときに拡大視することができ、視野を正面に向けたときには、ルーペ本体が視野に入ることながなく、拡大視野ではない通常の視野で物を見る(以下、「通常視野」または「通常視」と称することがある)ことができる。
【0011】
本発明にかかる双眼ルーペは、上記構成に加え、
「前記フレームは、眼鏡レンズに相当する構成を支持していない」ものとすることができる。
【0012】
本構成では、ルーペ本体がアンダーリムに支持されて眼より下方に位置することに加え、眼鏡レンズに相当する構成を有していないため、眼前を遮る物が何もない。従って、双眼ルーペを装着した状態のままであっても、通常視野が極めて良好である。ここで、「眼鏡レンズに相当する構成」の語は、視力矯正の機能を有している眼鏡レンズに加えて、視力矯正の機能を有していない保護レンズや、レンズ形状のシールドを含む意で用いている。
【0013】
そして、眼鏡レンズに相当する構成を有していないことにより、従来の眼鏡一体型ルーペや眼鏡前掛け型ルーペとは異なり、眼鏡レンズを囲むように保持するためのフレームが不要であり、通常の眼鏡では使用者の眉あたりに位置する上部フレームを有しない構成とすることができる。従って、顔回りがすっきりして装着感が良いと共に、従来にない斬新なデザインの双眼ルーペとすることができる。
【0014】
本発明にかかる双眼ルーペは、上記構成に加え、
「一対の前記ルーペ本体は、それぞれ接眼側端部で前記アンダーリムに接続されていると共に、対物側端部で互いに連結されている」ものである。
【0015】
双眼ルーペでは、一対のルーペ本体それぞれの光軸が、それぞれのレンズ系の焦点で交わるように、それぞれの角度を設定する必要がある。本構成では、アンダーリムに接続されていない側の端部、すなわち、自由端である対物側端部で一対のルーペ本体が互いに連結されているため、それぞれの光軸の角度を設定された角度に維持しやすい。
【0016】
本発明にかかる双眼ルーペは、上記構成に加え、
「一対の前記耳掛け部は、それぞれ端部にフックを有している」ものとすることができる。
【0017】
本構成では、一対の耳掛け部それぞれの端部にフックを有しているため、フックに取り付けたベルトやバンドを用いて、双眼ルーペを頭部に固定することができ、双眼ルーペを装着した状態を簡易に安定させることができる。また、フックに取り付けたストラップを首に掛けておけば、不使用時に外した状態の双眼ルーペを携帯することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、汎用性が高く、装着感が良いと共に、拡大視野ではない通常の視野も良好な双眼ルーペを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態である双眼ルーペの斜視図である。
図2図1の双眼ルーペの正面図である。
図3図1の双眼ルーペの左側面図である。
図4図1の双眼ルーペにおける光軸の説明図である。
図5図1の双眼ルーペによる拡大視野と通常視野の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態である双眼ルーペ1について、図面を用いて具体的に説明する。双眼ルーペ1は、フレーム10に一対のルーペ本体20が支持されたものであり、ルーペ本体20の内部のレンズ系を除き、樹脂により一体成形されている。
【0021】
フレーム10は、鼻掛け部11と、一対のアンダーリム12と、一対の耳掛け部13とを有している。鼻掛け部11は逆V字形であり、使用者の鼻梁に上方から引掛けられる。一対のアンダーリム12は、それぞれ鼻掛け部11の両側で、下方に膨らむように湾曲して延びており、使用者の頬骨に沿う形状である。一対の耳掛け部13は、それぞれアンダーリム12の終端から連続して上方に延びた後、略直線状の部分13sを介して、先端が下方に屈曲している。一対の耳掛け部13それぞれの先端にはフック13fが形成されている。フック13fは、一部が開口した平たい環状である。
【0022】
一対のルーペ本体20は、それぞれ接眼側端部E1から対物側端部E2に向かって拡径した円錐台形状のケースに、レンズ系が保持されたものである。それぞれのルーペ本体20では、接眼側端部E1の側周面が、鼻掛け部11の両脇でアンダーリム12に固定されている。ルーペ本体20は、使用者が装着した状態でレンズ系の光軸Lが下方に傾く角度で、アンダーリム12に固定されている。具体的には、耳掛け部13における略直線状の部分13sの接線Nに対して、ルーペ本体20の光軸Lが25度±2度の角度αをなすように設定されている(図2参照)。
【0023】
また、一対のルーペ本体20は、それぞれのレンズ系の光軸Lが焦点で交わるように、互いに内向きとなるようにアンダーリム12に固定されている。具体的には、使用者に装着された双眼ルーペ1を使用者の頭上から見下ろした状態に相当する視野で、一対のルーペ本体20それぞれの光軸Lは8度±1度の角度βをなしている(図4参照)。一対のルーペ本体20それぞれの対物側端部E2は、短い連結アーム27によって互いに連結されており、それぞれの光軸Lが角度βをなす取付け角度が安定的に維持されている。
【0024】
そして、接眼側端部E1で、一対のルーペ本体20それぞれの光軸Lの距離Wは、55mm±2mmに設定されている(図3参照)。
【0025】
検討の結果、角度α、角度β、距離Wを上記の設定とすることにより、例えばレンズ倍率を3.5倍とすれば、使用者の眼幅や視力が一般的な範囲で異なっていても、作業距離を35cmから45cmの範囲におさめることができる。
【0026】
上記構成の双眼ルーペ1では、アンダーリム12に支持されているルーペ本体20が、使用者の眼より下方に位置するため、図5に模式的に示すように、下方に向けた視線V1では拡大視することができ、正面に向けた視線V2では通常視することができる。従って、双眼ルーペ1を外すことなく、双眼ルーペ1を装着した状態のままで、拡大視と通常視とを繰り返すことができる。
【0027】
加えて、双眼ルーペ1は、従来の眼鏡一体型ルーペや眼鏡前掛け型ルーペとは異なり、眼鏡レンズに相当する構成を有しておらず、当然ながら眼鏡レンズを保持するように囲むフレームも有していないため、眼前を遮る物が何もなく、通常視野が極めて良好である。
【0028】
また、眼鏡レンズに相当する構成も、眼鏡レンズを保持するように囲むフレームも有していないことから、装着した状態で顔回りがすっきりしており、装着感が良い。更に、下方に膨らんで湾曲しているアンダーリム12にルーペ本体20が支持されているという、従来にない斬新で、洗練されたデザインである。
【0029】
また、一対の耳掛け部13それぞれの端部にフック13fを有しており、フック13fは一部が開口した平たい環状であるため、ベルトやバンドを着脱可能に容易に取り付けることができ、ベルトやバンドによって双眼ルーペ1を頭部に安定的に固定することができる。また、フック13fにストラップを着脱可能に取り付けることもでき、ストラップを首に掛けておけば、不使用時に外した状態の双眼ルーペ1を携帯することができる。
【0030】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0031】
例えば、上記の実施形態では、フレーム1として、アンダーリム12から耳掛け部13にかけて連続しており、通常の眼鏡のフレームとは異なり、フレームを折り畳むためのヒンジ部を有していないものを例示している。これは、双眼ルーペ1を装着した状態での通常視野が良好であることから、作業中は外す必要がなく、不使用時はフック13fに取り付けたバンド等で携帯できるため、そもそもフレーム10を折り畳む必要性があまりないこと、ヒンジ部が無いことにより構成が簡易で低コストで製造できること、すっきりとしたデザインとなることよる。しかしながら、このような構成に限定されるものではなく、アンダーリムと耳掛け部との間にヒンジ部を設けることにより折り畳み可能なフレームとしてもよく、折り畳んだ状態でケース等に収納して保管・携帯することができる。
【0032】
また、上記の実施形態では、フレーム10とルーペ本体20とがレンズ系を除き樹脂により一体成形されている場合を例示したが、これに限定されない。例えば、フレームとは別に成形されたルーペ本体を、フレームに取り付けることにより一体化させることができる。
【0033】
更に、実施形態の双眼ルーペ1は、眼鏡レンズに相当する構成を有していない点を長所の一つとしているが、上位概念の本発明は眼鏡レンズに相当する構成を排除するものではない。双眼ルーペの用途により、保護レンズやレンズ形状のシールドをアンダーリムに支持させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 双眼ルーペ
10 フレーム
11 鼻掛け部
12 アンダーリム
13 耳掛け部
13f フック
20 ルーペ本体
E1 接眼側端部
E2 対物側端部
L 光軸
図1
図2
図3
図4
図5