(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】バンド用留め具
(51)【国際特許分類】
A44C 5/18 20060101AFI20230227BHJP
A44C 5/20 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
A44C5/18 C
A44C5/18 G
A44C5/20 B
(21)【出願番号】P 2019110231
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】595019522
【氏名又は名称】株式会社和久元
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】篠木 勝也
(72)【発明者】
【氏名】平岡 武
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-115992(JP,A)
【文献】登録実用新案第3090018(JP,U)
【文献】特開平10-327914(JP,A)
【文献】登録実用新案第3209929(JP,U)
【文献】特開2014-004197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/18-5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装身具の本体の一端側に取り付けられた一方のバンドと前記本体の他端側に取り付けられた他方のバンドとを接続するバンド用留め具であって、
前記一方のバンドに接続する下部材と、前記他方のバンドに接続する上部材と、前記下部材と前記上部材とを接続する中部材とを有し、前記下部材、前記中部材及び前記上部材の順で折り畳み可能に形成される留め具本体と、
前記中部材と前記上部材が折り畳まれた状態で前記中部材と前記上部材との間に位置するように配置される箱体であって、その前記バンドの幅方向の両端部にそれぞれ開口部が形成される前記箱体と、
前記下部材における前記一方のバンド側の所定部位に突設されると共に前記下部材と前記中部材が折り畳まれた状態で前記箱体内に貫入可能な頭部を有する突起部と、前記箱体内にて前記頭部に係脱自在に係合可能な係合部を協働して形成する一対の係合部材とを有し、前記一対の係合部材が押圧操作されると前記係合部と前記頭部との係合を解除可能に構成された係合機構と、
を含み、
前記他方のバンドには、その長手方向に間隔を空けて複数の孔が形成されており、
前記上部材は、前記他方のバンドを挿通可能な挿通口部と、前記複数の孔のいずれかに係合する係合ピンとを有し、
前記上部材は前記係合ピンを前記孔に係合させることによって前記他方のバンドに接続し、
前記一対の係合部材の一方は、前記箱体の一方の前記開口部側にて外方に位置して押圧操作される第1押圧片を有し、
前記一対の係合部材の他方は、前記箱体の他方の前記開口部側にて外方に位置して押圧操作される第2押圧片を有し、
前記箱体における前記長手方向の一端部は前記中部材における前記上部材側の端部に回動可能に接続されると共に、前記箱体の前記一端部における前記幅方向の長さが前記上部材の前記挿通口部の内側の幅より小さく設定され、
前記第1押圧片及び前記第2押圧片は、前記箱体における前記長手方向の他端部側に寄せて配置され、
前記箱体の前記両端部の前記他端部側における前記箱体の回動方向についての前記上部材側の各部位には、それぞれ前記幅方向の外方に張り出す張出部が形成されている、バンド用留め具。
【請求項2】
前記一対の係合部材のそれぞれに一体に形成されると共に、前記上部材の前記挿通口部における長手方向Lに延びる側部に係合して前記上部材の回動を防止する回転防止機構を更に含む、請求項1に記載のバンド用留め具。
【請求項3】
前記回転防止機構は、前記箱体の一方の前記開口部側にて前記箱体における前記一端部側に寄せて配置され前記上部材の前記側部に係脱自在に係合可能な第1回転防止片と、前記箱体の他方の前記開口部側にて前記箱体における前記一端部側に寄せて配置され前記上部材の前記側部に係脱自在に係合可能な第2回転防止片とからなる請求項2に記載のバンド用留め具。
【請求項4】
前記一対の係合部材の一方は、前記第1押圧片と一体的に形成されると共に前記係合部の一部を形成する第1係合片であって、前記箱体内における前記幅方向に延びる一方の内側面に沿って摺動可能にガイドされて直線状に延びている前記第1係合片を有し、
前記一対の係合部材の他方は、前記第2押圧片と一体的に形成されると共に前記第1係合片と協働して前記係合部を形成する第2係合片であって、前記箱体内における前記幅方向に延びる他方の内側面と前記第1係合片との間において前記他方の内側面に沿って摺動可能にガイドされて直線状に延びている前記第2係合片を有する、請求項1~3のいずれか一つに記載のバンド用留め具。
【請求項5】
前記第1係合片における前記第2係合片側の第1側面には第1凹部が凹設されていると共に、前記第2係合片における前記第1側面と対向する第2側面には第2凹部が凹設されており、
前記係合部は、前記第1凹部における前記他方の開口部側の第1縁部と、前記第2凹部における前記一方の開口部側の第2縁部とにより形成され、
前記第1縁部は、前記第1凹部の底部から離れるにしたがって前記他方の開口部に近づくように傾斜しており、
前記第2縁部は、前記第2凹部の底部から離れるにしたがって前記一方の開口部に近づくように傾斜している、請求項4に記載のバンド用留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装身具の本体の一端側に取り付けられた一方のバンドと本体の他端側に取り付けられた他方のバンドとを接続するバンド用留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の一部(例えば、腕や足首や首回り)に巻回されて装着される装身具では、その装身具の本体に装身用の一対のバンドが取り付けられており、この一対のバンドの一方のバンドと他方のバンドとはバンド用留め具によって接続されている。この種の装身具の本体としてはアナログ式やデジタル式の時計本体が一般的に知られているが、近年では、電話、歩数計、位置情報モニタ(GPS本体)、デジタル音楽プレーヤ、心拍数モニタといった各種のウェラブル情報端末も知られている。
【0003】
この種の装身具のバンド用留め具の一例として、例えば特許文献1に記載された中留構造10(以下では、バンド用留め具という)が知られている。このバンド用留め具は、時計用のバンドに用いられ、下板20と中板30と中箱40と上箱50を有している。下板20は一方の皮革バンド80に接続し、上箱50は他方の皮革バンド81に接続し、中板30は下板20と上箱50とを接続し、下板20、中板30及び上箱50はこの順で折り畳み可能に形成されている。中板30と上箱50が折り畳まれた状態で、中箱40は中板30と上箱50との間に位置している。また、下板20には、中箱40との係止用の係止用突起部21が突設されており、中箱40内には、係止用突起部21に係止可能な係合部を有する一対の係止片(以下では、一対の係合部材という)が設けられている。この一対の係合部材のそれぞれの一端部に係合部が形成され、一対の係合部材のそれぞれの他端部には中箱40の外方から押圧されるプッシュボタン41,41(以下では、一対の押圧片という)が係合部材と一体的に形成されている。また、一対の係合部材の一端部側の部位は中箱40内で摺動可能にガイドされていると共に薄板状に形成されている。そして、一対の係合部材は、一対の押圧片が押圧されることにより、係止用突起部21と係合部との係合が解除されるように構成されている。また、一対の係合部材の一端部は、具体的には特許文献2に開示されているようにそれぞれ鉤状に屈曲するように形成されている。そして、特許文献1に記載された他方の皮革バンド81には複数の尾錠孔82が形成されており、上箱50には他方の皮革バンド81を挿通可能な挿通口と尾錠孔82に挿入(係合)可能なツク棒51とが形成されている。つまり、特許文献1に記載されたバンド用留め具は、いわゆる尾錠タイプのバンドに用いられるものである。係止用突起部21が一対の係合部材の係合部に係合し、他方の皮革バンド81が上箱50の挿通口に挿通され、且つ、上箱50のツク棒51が他方の皮革バンド81のいずれかの尾錠孔82に挿入されることによって、手首への装身具の装着が完了する。ここで、装身具の装着完了後、一対の押圧片41,41が指等により押圧操作されると、係止用突起部21と係合部との係合が解除される。そして、この状態でそのまま中箱40がつまみ上げられると、中板30が展開される。これにより、皮革バンド81,81の手首への締め付けが緩むと共に皮革バンド81,81とバンド用留め具により形成される環状体が拡径され、手首を環状体内から抜き出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-061842号公報
【文献】特開2008-183213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、係止用突起部21と係合部との係合解除後、上箱50のツク棒51が他方の皮革バンド81の尾錠孔82に挿入されている状態において、手首を前述の環状体内に挿入し、装身具を手首に再装着する場合がある。この場合、一対の押圧片41,41を押圧するのではなく、上箱50を中箱40側に強く押圧することにより、ツク棒51と係合部とを係合させようと操作することが想定される。つまり、上箱50を強く押圧して中箱40内の係合部をツク棒51に強く押し付けることによって、一対の係合部材を係合解除方向(開方向)に移動させようと操作することが想定される。このように上箱50が押圧操作されると、上箱50が一対の係合部材の押圧片41,41に直接的に当接し、一対の係合部材の動きが鈍くなり、ツク棒51と係合部との係合が上手くできないおそれがあり、その工夫が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、再装着時の操作性を向上させることができるバンド用留め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、装身具の本体の一端側に取り付けられた一方のバンドと本体の他端側に取り付けられた他方のバンドとを接続するバンド用留め具が提供される。バンド用留め具は、留め具本体と箱体と係合機構とを含む。留め具本体は、一方のバンドに接続する下部材と、他方のバンドに接続する上部材と、下部材と上部材とを接続する中部材とを有し、下部材、中部材及び上部材の順で折り畳み可能に形成される。箱体は、中部材と上部材が折り畳まれた状態で中部材と上部材との間に位置するように配置されており、そのバンドの幅方向の両端部にそれぞれ開口部が形成される。係合機構は、突起部と一対の係合部材とを有する。突起部は、下部材における一方のバンド側の所定部位に突設されると共に下部材と中部材が折り畳まれた状態で箱体内に貫入可能な頭部を有する。一対の係合部材は、箱体内にて頭部に係脱自在に係合可能な係合部を協働して形成する。係合機構は、一対の係合部材が押圧操作されると係合部と頭部との係合を解除可能に構成されている。一対の係合部材の一方は、箱体の一方の開口部側にて外方に位置して押圧操作される第1押圧片を有する。一対の係合部材の他方は、箱体の他方の開口部側にて外方に位置して押圧操作される第2押圧片を有する。箱体における長手方向の一端部は中部材における上部材側の端部に回動可能に接続されると共に、箱体の一端部における幅方向の長さが上部材の挿通口部の内側の幅より小さく設定されている。第1押圧片及び第2押圧片は、箱体における長手方向の他端部側に寄せて配置されている。箱体の幅方向の両端部の他端部側における箱体の回動方向についての上部材側の各部位には、それぞれ幅方向の外方に張り出す張出部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によるバンド用の留め具によれば、箱体の幅方向の両端部の他端部側における箱体の回動方向についての上部材側の各部位には、それぞれ幅方向の外方に張り出す張出部が形成されている。これにより、仮に上部材を強く押圧することによって係合部と突起部とを係合させようと操作されたとしても、上部材は第1押圧片及び第2押圧片ではなく、張出部に当接(接触)することになり、第1押圧片及び第2押圧片への上部材の当接が防止される。その結果、箱体内の係合部が突起部に押し付けられているときにおいて、一対の係合部材の係合の解除方向(開方向)へ移動がスムーズになり、係合部と突起部との係合がスムーズに行われる。このようにして、再装着時における操作性を向上させることができるバンド用留め具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態におけるバンド用留め具の側面図である。
【
図2】留め具本体が展開された状態のバンド用留め具の側面図を示す。
【
図3】バンド留め具を内側(身体側)から視た図である。
【
図5】バンド用留め具の箱体と係合機構の一部の組立体の裏面図である。
【
図6】
図5に示すA方向から視た組立体の側面図である。
【
図8】
図7に示すB方向から視た箱体の側面図である。
【
図9】
図7に示すC方向から視た箱体の側面図である。
【
図10】係合機構の第1係合部材(一対の係合部材の一方)の平面図である。
【
図11】
図10に示すD方向から視た第1係合部材の側面図である。
【
図12】係合機構の第2係合部材(一対の係合部材の他方)の平面図である。
【
図13】
図12に示すF方向から視た第2係合部材の側面図である。
【
図15】バンド用留め具の着脱時の動作の一例を説明するための概念図である。
【
図16】
図15に続く動作の一例を説明するための概念図である。
【
図17】張出部を有さない別のバンド用留め具における再装着時の動作の一例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るバンド用留め具の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
本発明に係るバンド用留め具は、腕や足首といった身体の一部に巻回されて装着される装身具に用いられるものであり、装身具の本体に取り付けられた一対のバンドの留め具である。装身具の本体としては、腕時計の時計本体や、電話、歩数計といった各種のウェラブル情報端末が挙げられるが、以下では、腕時計の時計本体に適用する場合を一例に挙げて説明する。
【0011】
図1~
図3は本実施形態におけるバンド用留め具1の概略構成を説明するための図である。
図1はバンド用留め具1の側面図であり、その留め具本体2が折り畳まれる途中の状態の一例が示されており、
図2は留め具本体2が展開された状態の一例を示しており、
図3はバンド用留め具1を内側(身体側)から視た図であり、留め具本体2が完全に展開された状態が示されている。バンド用留め具1は、装身具としての腕時計の本体である時計本体(図示省略)に取り付けられたバンドX用の留め金具である。バンドXは時計本体の一端側に取り付けられた一方のバンドと時計本体の他端側に取り付けられた他方のバンドとからなり、バンド用留め具1は一方のバンドと他方のバンドとを接続するための留め金具である。以下では、一方のバンドを第1バンドX1と呼び、他方のバンドを第2バンドX2と呼ぶ。
【0012】
[バンド]
図1~
図3に示すように、本実施形態では、第1バンドX1及び第2バンドX2からなるバンドXは皮革製の部材により、所定の幅を有して帯状に形成されている。本実施形態では、バンドXは、バンド用留め具1により、第1バンドX1における時計本体と反対側の一端部と第2バンドX2における時計本体と反対側の一端部との間を着脱自在に接続されると共に、これらの端部間の長さを調整可能に構成されたいわゆる尾錠タイプのバンドである。第1バンドX1の一端部は留め具本体2の一端部に回動可能に接続されており、第2バンドX2の一端部は留め具本体2の他端部に着脱自在に接続される。第2バンドX2の一端部には、その長手方向Lに間隔を空けて複数の孔X2aが形成されている。複数の孔X2aのいずれかに後述する上部材22に形成される係合ピン22bが挿入されて係合することにより、第2バンドX2の一端部が留め具本体2の他端部に第1バンドX1の一端部との間の長さを調整可能に接続される。
【0013】
[バンド用留め具]
図1~
図3に示すように、本実施形態では、バンド用留め具1は、第1バンドX1の一端部と第2バンドX2の一端部との間に配置され、これら端部間を着脱自在に接続するものであり、留め具本体2と箱体3と係合機構4と回転防止機構5とを含んで構成されており、それぞれ金属製の部材で形成されている。
【0014】
留め具本体2は、バンド用留め具1の本体であり、第1バンドX1に接続する下部材21と、第2バンドX2に接続する上部材22と、下部材21と上部材22とを接続する中部材23とを有し、下部材21、中部材23及び上部材22の順で折り畳み可能に形成されている。
【0015】
下部材21は、金属製の薄板材により薄板状に形成されており、その一端部が第1接続ピン24を介して第1バンドX1の一端部に回動可能に接続している。これにより留め具本体2の一端部が第1バンドX1の一端部に接続している。具体的には、下部材21は、手首の曲率に概ね合うように湾曲すると共に所定の幅を有して形成された下湾曲部21aと、下湾曲部21aの一端部に取り付けられると共に二股に分かれてコの字状に形成された蟹足部21bとを有している。蟹足部21bが第1接続ピン24を介して第1バンドX1の一端部に回動可能に接続する。
【0016】
上部材22は、金属製の部材からなり、第2バンドX2の一端部に接続する。これにより留め具本体2の他端部が第2バンドX2の一端部に接続する。
【0017】
図4は、上部材22の裏面図である。本実施形態では、上部材22は、
図1~
図4に示すように、第2バンドX2を挿通可能な挿通口部22a(
図4参照)と、第2バンドX2に形成された複数の孔X2aのいずれかに係合する係合ピン22bとを有している。上部材22は、挿通口部22aにおける長手方向Lに延びると共に互いに対向する第1側部22c及び第2側部22dと、第1側部22cの一端部と第2側部22dの一端部との間を接続しバンドXの幅方向Wに延びる接続部22eとからなり、全体として概ね門型状に形成されている。係合ピン22bは接続部22eに突設されており、上部材22は、挿通口部22aに第2バンドX2を挿通させた状態で係合ピン22bを複数の孔X2aのいずれかに挿入させて係合させることによって、第2バンドX2の一端部に着脱自在に接続する。つまり、上部材22の接続部22eが留め具本体2の他端部を構成する。なお、本実施形態において第1側部22c及び第2側部22dがそれぞれ本発明に係る「長手方向に延びる側部」に相当する。
【0018】
図1~
図3に示すように、中部材23は、金属製の薄板材により薄板状に形成されており、その一端部が第2接続ピン25を介して下部材21の他端部に回動可能に接続しており、その他端部が第3接続ピン26を介して上部材22の第1側部22cの他端部及び第2側部22dの他端部に回動可能に接続している。中部材23は、第2接続ピン25を介して下部材21側に向って回動したときに、下部材21の一端部を除く部位を間に挟むと共に下部材21の曲率と合わせた曲率で湾曲する一対の中湾曲部23a,23aを有しており、この一対の中湾曲部23a,23aの一端部にはそれぞれ第2接続ピン25用の嵌合孔が形成されている。このようにして、中部材23は下部材21に対して折り畳み可能に形成されている。また、一対の中湾曲部23a,23aの他端部は、曲率半径の中心と反対側、つまり、
図1に示すように、折り畳まれた状態で外側に向かって屈曲している。この屈曲した他端部の間は、
図3に示すように、接続片23bにより接続されている。そして、この接続片23bに、第3接続ピン26用の嵌合孔が形成されている。上部材22は、第3接続ピン26を介して中部材23側に向って回動し、中部材23に対して折り畳み可能に構成されている。
【0019】
図5及び
図6は箱体3と係合機構4の一部の組立体を説明するための図であり、
図5は裏面図であり、
図6は
図5に示すA方向から視た側面図である。
【0020】
箱体3は、係合機構4の一部を収容する収容室31を形成するものであり、中部材23と上部材22が折り畳まれた状態で中部材23と上部材22との間に位置するように配置されている。箱体3は全体としてバンドXの幅方向Wに延びる概ね矩形筒状に形成されており、この筒体内の空間が収容室31を構成している。箱体3の幅方向Wの両端部32,33には、それぞれ開口部32a,33aが形成されており、各開口部32a,33aは収容室31に開口している。
【0021】
箱体3における長手方向Lの一端部は、中部材23の他端部(つまり、中部材23における上部材22側の端部)に、第3接続ピン26を介して上部材22と伴に回動可能に接続されている。そして、箱体3の一端部における幅方向Wの長さが上部材22の挿通口部22aの内側の幅より小さく設定されている。具体的には、箱体3における長手方向Lの一端部の幅方向Wの中央部には、凹部34が凹設されており、この凹部34に中部材23の接続片23bが嵌合されている。そして、箱体3の一端部には、第3接続ピン26用の嵌合孔が形成されている。中部材23と上部材22が折り畳まれた状態で、箱体3は上部材22の第1側部22cと第2側部22dとの間に挟まれている。なお、箱体3のより詳しい構造については、後に詳述する。
【0022】
係合機構4は、下部材21に設けられる突起部6と、箱体3に組み込まれる一対の係合部材7,8と、一対の係合部材7,8を付勢する弾性部材9とを有し、留め具本体2を折り畳んだ状態で係合するための機構である。
【0023】
突起部6は、下部材21における第1バンドX1側の所定部位に突設され、軸状の軸部6aと頭部6bとを有する。頭部6bは、軸部6aの端部に軸部6aよりも大径の半球体状に形成されており、下部材21と中部材23が折り畳まれた状態で箱体3内に貫入可能に構成されている。
【0024】
一対の係合部材7,8は、箱体3内にて頭部6bに係脱自在に係合可能な係合部10(
図5参照)を協働して形成するものである。なお、一対の係合部材7,8の形状については、後に詳述する。
【0025】
弾性部材9は、一対の係合部材7,8を互いに引き離す方向に付勢する部材であり、例えば、圧縮ばねからなる。弾性部材9は、一対の係合部材7,8の一方の先端部と一対の係合部材7,8の他方の所定部位(詳しくは、後述する第2弾性部材支持片83)との間と、一対の係合部材7,8の他方の先端部と一対の係合部材7,8の一方の所定部位(詳しくは、後述する第1弾性部材支持片73)との間とにそれぞれ設けられている。弾性部材9により、一対の係合部材7,8が互いに引き離される方向に付勢されることによって、係合部10を構成する後述する第1縁部76aと第2縁部86aとが互いに近づいて突起部6に係合する方向(閉方向)に移動する。そして、係合機構4は、一対の係合部材7,8が押圧操作されると係合部10と頭部6bとの係合を解除可能に構成されている。
【0026】
回転防止機構5は、一対の係合部材7,8のそれぞれに一体に形成されると共に、上部材22の第1側部22c及び第2側部22dに係合して上部材22の回動を防止する機構である。なお、回転防止機構5の構造についても、後に詳述する。また、以下では、一対の係合部材7,8の一方を第1係合部材7と呼び、一対の係合部材7,8の他方を第2係合部材8と呼ぶ。
【0027】
[詳細構造]
次に、箱体3、係合機構4及び回転防止機構5の詳細形状及び構造について説明する。
図7~
図9は箱体3単体を説明するための図であり、
図7は箱体3の裏面図、
図8は
図7に示すB方向から視た側面図、
図9は
図7に示すC方向から視た側面図である。そして、
図10~
図14は、第1係合部材7及び第2係合部材8を説明するための図であり、
図10は第1係合部材7の平面図であり、
図11は
図10に示すD方向から視た第1係合部材7の側面図であり、
図12は第2係合部材8の平面図であり、
図13は
図12に示すF方向から視た第2係合部材8の側面図である。
図14は
図10に示すE-E矢視の部分断面図であると共に、
図13に示すG-G矢視の部分断面図でもある。
【0028】
[箱体の詳細構造]
図7~
図9に示すように、箱体3は、例えば、箱体本体3aと溝蓋3bとからなる。箱体本体3aは、平面視(
図7参照)で概ね矩形状に形成されている。箱体本体3aにおけるバンドXの長手方向Lの一端部に、凹部34が形成されている。箱体本体3aには、幅方向Wの全体に亘って所定幅を有し延びる溝部が形成されている。溝蓋3bは平面視(
図7参照)で矩形状の薄板からなり、箱体本体3aの前記溝部の上部開口を覆うように箱体本体3aに取り付けられると共に箱体本体3aに溶着されている。これにより、四角柱状の空間としての収容室31が形成されている。つまり、溝蓋3bと箱体本体3aにおける前記溝部の底壁3a1と両側壁3a2,3a3とにより収容室31が形成されている。また、溝蓋3bは箱体3の裏面側の部位を構成する。つまり、箱体3が中部材23の他端部に回動可能に接続された状態において、溝蓋3bは中部材23側に面している。この溝蓋3bには、下部材21に突設された突起部6の頭部6bを貫入可能な第1貫通孔3b1が開口されている。そして、溝蓋3bに対面する箱体本体3aの底壁3a1には、頭部6bより大径の第2貫通孔3a4が開口されている。また、箱体本体3aの両側壁3a2,3a3における幅方向Wの中央部には、それぞれ、所定幅で切り欠かれた切り欠き部3a5がそれぞれ形成されている。切り欠き部3a5には、
図7~
図9に示すように、突起片3a6が切り欠き部3a5の幅より小さい幅を有して各側壁3a2,3a3と平行に起立するように各側壁3a2,3a3と一体的に形成されている。この突起片3a6は、第1係合部材7及び第2係合部材8が箱体3に組み付けられた後に、
図8に実線矢印で示す方向に折り曲げられ、
図5及び
図6に示すように第1係合部材7及び第2係合部材8のスライド移動(摺動)の移動端を定める移動規制片3a6’を構成している。そして、箱体3には、上部材22が当接(接触)する部位が形成されている。具体的には、
図7~
図9に示すように、箱体3の幅方向Wの両端部32,33の他端部側(つまり側壁3a2側)における箱体3の回動方向についての上部材側の各部位には、それぞれ幅方向Wの外方に張り出す張出部32b,33bが形成されている。本実施形態では、張出部32b,33bは、箱体本体3aに形成されている。張出部32b,33bは、換言すると、中部材23と上部材22が折り畳まれた状態で、箱体3の幅方向Wの両端部32,33の他端部側における上部材22側の部位に突設されている。より具体的には、本実施形態では、
図5及び
図6に示すように、張出部32b,33bにおける箱体3の一端部側(つまり側壁3a3側)の端面32b1,33b1は、第1押圧片72及び第2押圧片82における箱体3の一端部側(側壁3a3側)の端面72a,82aより箱体3の他端部側(側壁3a2側)に位置している。
【0029】
[係合機構の詳細構造]
本実施形態では、
図10~
図13に示すように、一対の係合部材7,8の一方である第1係合部材7は第1係合片71と、第1押圧片72と、第1弾性部材支持片73とを有し(
図10及び
図11参照)、一対の係合部材7,8の他方である第2係合部材8は第2係合片81と、第2押圧片82と、第2弾性部材支持片83とを有する(
図12及び
図13参照)。第1係合片71及び第2係合片81は箱体3の収容室31内に収まる程度に収容室31の高さより僅かに小さい厚みを有している。
【0030】
第1係合片71は、突起部6の頭部6bと係合可能な係合部10の一部を形成する部位であり、箱体3内における幅方向Wに延びる一方の内側面31aに沿って摺動可能にガイドされて直線状に延びている。本実施形態では、箱体3内の一方の内側面31aとは、
図5及び
図6に示すように、箱体3おける長手方向Lの他端部側(換言すると、箱体本体3aの両側壁3a2,3a3のうちの凹部34と反対側)の側壁3a2の内側面であり、箱体3内の他方の内側面31bとは、箱体3おける長手方向Lの一端部側(換言すると、箱体本体3aの両側壁3a2,3a3のうちの凹部34側)の側壁3a3の内側面である。第1係合片71は、第2係合片81と同じ厚みで形成されており、後述するように第2係合片81と並んで配置されている。つまり、第1係合片71は側壁3a2と第2係合片81との間に配置されている。そして、第1係合片71の幅と第2係合片81の幅とを加えて得た全体の幅は箱体3の収容室31内の長手方向Lについての長さより若干短くなるように設定されている。特に限定するものでないが、第2係合片81の幅は第1係合片71の幅に合わせられている。
【0031】
第1押圧片72は、第1係合片71と一体的に形成されると共に箱体3の一方の開口部32a側にて外方に位置して押圧操作される部位である。換言すると、第1係合片71は第1押圧片72と一体的に形成されている。第1押圧片72は、第1係合片71の延伸方向(図では幅方向W)の端部から連続して延伸しており、第1係合片71の厚み方向について片側(張出部32bと反対側)に寄せて一体的に形成されている。第1押圧片72は第1係合片71より肉厚の厚みを有している。第1押圧片72は、
図5に示すように、箱体3おける長手方向Lの他端部側(側壁3a2側)に寄せて配置されており、第1係合片71及び第1押圧片72が一列に連続して配置されている。
【0032】
第1弾性部材支持片73は、第1係合片71における第2係合片81側の第1側面71aに突設されている。第1弾性部材支持片73は、第1側面71aにおける第1押圧片72側の部位から側壁3a3に向かって延びる部位であり、一方の弾性部材9の一端部を受け入れて支持する第1受部74を有する。第1弾性部材支持片73は第1係合片71と同じ厚みを有して第1係合片71と一体的に形成されており、第1係合片71及び第1弾性部材支持片73は全体として平面視で概ねL字状に形成されている。
図5に示すように、このL字状の第1係合片71及び第1弾性部材支持片73の内側に、第2係合片81が配置されている。第1受部74は第1弾性部材支持片73における第2係合片81の先端部に対向する側部に凹状に凹設されている。また、一方の弾性部材9の他端部は、第2係合片81の先端部に凹状に凹設された第2受部84に受け入れられて支持されている。
【0033】
第2係合片81は、第1係合片71と協働して係合部10を形成する部位であり、箱体3内における幅方向Wに延びる他方の内側面31b(つまり、側壁3a3の内側面)と第1係合片71との間において側壁3a3の内側面に沿って摺動可能にガイドされて直線状に延びている。第2係合片81は、第1係合片71と並んで配置されている。つまり、第2係合片81は側壁3a3と第1係合片71との間に配置されており、第2係合片81における第1係合片71側の第2側面81aは第1係合片71における第1側面71aと摺動可能に構成されている。
【0034】
第2押圧片82は、第2係合片81と一体的に形成されると共に箱体3の他方の開口部33a側にて外方に位置して押圧操作される部位である。換言すると、第2係合片81は第2押圧片82と一体的に形成されている。第2押圧片82は、第2係合片81の延伸方向(図では幅方向W)の端部から第2弾性部材支持片83を介して連続して延伸しており、第2係合片81の厚み方向について片側(張出部33bと反対側)に寄せて一体的に形成されている。第2押圧片82は第2係合片81より肉厚の厚みを有している。第2押圧片82は、
図5に示すように、第1押圧片72と同様に、箱体3おける長手方向Lの他端部側(側壁3a2側)に寄せて配置されている。第2押圧片82は、第2係合片81に対して長手方向Lにずらして配置されている。
【0035】
第2弾性部材支持片83は、第2係合片81における第2側面81aに突設されている。第2弾性部材支持片83は、第2側面81aにおける第2押圧片82側の部位から側壁3a2に向かって延びる部位であり、他方の弾性部材9の一端部を受け入れて支持する第3受部85を有する。第2弾性部材支持片83は第2係合片81と同じ厚みを有して第2係合片81と一体的に形成されており、第2係合片81及び第2弾性部材支持片83は全体として平面視で概ねL字状に形成されている。
図5に示すように、このL字状の第2係合片81及び第2弾性部材支持片83の内側に、第1係合片71が配置されている。第3受部85は第2弾性部材支持片83における第1係合片71の先端部に対向する側部に凹状に凹設されている。また、他方の弾性部材9の他端部は、第1係合片71の先端部に凹状に凹設された第4受部75に受け入れられて支持されている。
【0036】
本実施形態では、第1係合片71における第1側面71aには、第1凹部76が凹設されていると共に、第2係合片81における第1側面71aと対向する第2側面81aには第2凹部86が凹設されている。第1凹部76及び第2凹部86は、例えば、
図10及び
図12に示すようにそれぞれ平面視で台形状に切り欠かれており、台形の下底側が開口端をなしている。また、第1係合片71における第1側面71aと反対側の側面である第3側面71bには、第3凹部77が凹設されていると共に、第2係合片81における第2側面81aと反対側の側面である第4側面81bには、第4凹部87が凹設されている。第3凹部77及び第4凹部87内には、
図5に示すように、移動規制片3a6’の先端部がそれぞれ位置している。
【0037】
本実施形態では、係合部10は、第1凹部76における他方の開口部33a側(
図10では左側)の第1縁部76aと、第2凹部86における一方の開口部32a側(
図12では右側)の第2縁部86aとにより形成されている。第1縁部76aは、第1凹部76の底部76bから離れるにしたがって他方の開口部33aに近づくように傾斜している。第2縁部86aは、第2凹部86の底部86bから離れるにしたがって一方の開口部32aに近づくように傾斜している。
【0038】
図14は
図10に示すE-E矢視の部分断面図であると共に、
図12に示すG-G矢視の部分断面図でもある。第1縁部76aは厚み方向内側に向かって傾斜する第1傾斜面76a1を有し、第2縁部86aも厚み方向内側に向かって傾斜する第2傾斜面86a1を有している。具体的には、第1係合片71における厚み方向の一端面(
図11では上側端面)と第1縁部76aの端面との角部が斜めに面取り加工されると共に、第2係合片81における厚み方向の一端面(
図13では上側端面)と第2縁部86aの端面との角部が斜めに面取り加工されており、これにより平坦な面からなる第1傾斜面76a1及び第2傾斜面86a1が形成される。また、第1縁部76a及び第2縁部86aの先端部は斜め直線状に延びている。突起部6の頭部6bは第1係合片71及び第2係合片81の厚み方向の前記一端面側から挿入される。また、本実施形態では、第1押圧片72及び第2押圧片82は
図11及び
図13に示すようにそれぞれ第1係合片71及び第2係合片81の厚み方向の前記一端面側に寄せて形成されている。また、突起部6の頭部6bが箱体3内に貫入した状態で、突起部6の軸方向の中心は長手方向Lについて第1係合片71と第2係合片81との間の境界位置に合わせられると共に幅方向Wについて第1縁部76aと第2縁部86aとの中間位置に合わせられている。
【0039】
第1係合片71の厚み方向の他端面(
図11では下側端面)における第1縁部76aに対応する部位には、第1縁部76aにおける幅方向Wについての幅と合せた幅を有する第1溝部78が長手方向Lに延びるように形成されている。同様に、第2係合片81の厚み方向の他端面(
図13では下側端面)における第2縁部86aに対応する部位には、第2縁部86aにおける幅方向Wについての幅と合せた幅を有する第2溝部88が長手方向Lに延びるように形成されている。第1縁部76aにおける第1傾斜面76a1と反対側の面は第1溝部78の底面の一部を構成し、第2縁部86aにおける第2傾斜面86a1と反対側の面は第2溝部88の底面の一部を構成している。
【0040】
[回転防止機構の詳細構造]
本実施形態では、回転防止機構5は、箱体3の一方の開口部32a側にて箱体3における長手方向Lの一端部側(側壁3a3側)に寄せて配置され上部材22の第1側部22cに係脱自在に係合可能な第1回転防止片5aと、箱体3の他方の開口部33a側にて箱体3における一端部側(側壁3a3側)に寄せて配置され上部材22の第2側部22dに係脱自在に係合可能な第2回転防止片5bとからなる。具体的には、第1回転防止片5aは第1弾性部材支持片73における第1受部74と反対側の側部に第1弾性部材支持片73と同じ厚みで幅方向Wの外方に向かって突設されており、先細りの概ね台形状に形成されている。第2回転防止片5bは第2係合片81の基端部(
図12では左側端部)に第2係合片81と同じ厚みで幅方向Wの外方に向かって突設されており、先細りの概ね台形状に形成されている。第1回転防止片5aは係合部10が閉状態(
図5に示す状態)において箱体3の一方の開口部32aから外方に突出しており、開状態(図示省略)において箱体3の収容室31内に位置しており、箱体3の内外に進退可能に構成されている。第2回転防止片5bは係合部10が閉状態(
図5に示す状態)において箱体3の他方の開口部33aから外方に突出しており、開状態(図示省略)において箱体3の収容室31内に位置しており、箱体3の内外に進退可能に構成されている。上部材22の第1側部22cの他端部における第1回転防止片5aに対応する位置と、上部材22の第2側部22dの他端部における第2回転防止片5bに対応する位置には、それぞれ係合孔22fが開口されている。上部材22が箱体3側に回動して閉じた状態において、第1回転防止片5aが第1側部22cの係合孔22fに貫入して係止されると共に第2回転防止片5bが第2側部22dの係合孔22fに貫入して係止されることにより、上部材22の箱体3に対する回転が防止される。
【0041】
[係合部材の組み付け]
本実施形態では、前述したように、箱体3は箱体本体3aと溝蓋3bとにより構成され、箱体本体3aに溝蓋3bを溶着することにより箱体3が形成されている。ここで、溝蓋3bを箱体本体3aに溶着する前に、第1係合部材7及び第2係合部材8を箱体本体3aの溝部内に組み付け、その後、溝蓋3bを箱体本体3aに溶着すると、溶着時に発生する熱により、薄板材からなる第1係合部材7及び第2係合部材8が変形することになる。このような変形を防止するため、溝蓋3bを箱体本体3aにビス止めすることも考えられるが部品点数の増加を招いてしまうため、箱体本体3aへの溝蓋3bの取り付けは溶着が望ましい。その結果、第1係合部材7及び第2係合部材8の箱体3への組み付けは、溝蓋3bを箱体本体3aに溶着した後に行わざるを得ない。そのため、第1係合部材7及び第2係合部材8の箱体3への組み付けは、以下の手順で行われる。
【0042】
箱体本体3aと溝蓋3bの溶着後、例えば、第1係合片71が箱体3の側壁3a2の内側面に寄せられた状態で箱体3の一方の開口部32aから箱体3内に挿入される。この第1係合片71は、第3凹部77が切り欠き部3a5に対応する位置に到達するまで箱体3内をスライド移動され、その後、突起片3a6が折り曲げられる。次に、箱体3の他方の開口部33aを介して、一方の弾性部材9が第1係合片71の第1受部74に組み込まれると共に、他方の弾性部材9が第1係合片71の第4受部75に組み込まれる。この状態で、第2係合片81が他方の開口部33aを介して箱体3の側壁3a3と第1係合片71との間に挿入される。この第2係合片81は、第4凹部87が切り欠き部3a5に対応する位置に到達するまで箱体3内をスライド移動され、その後、突起片3a6が折り曲げられる。これにより、
図5に示すように、第1係合部材7及び第2係合部材8が箱体3へ組み付けられる。この状態で、第1係合部材7と第2係合部材8は弾性部材9によりそれぞれ幅方向Wの外方に付勢されると共に、それぞれの移動が移動規制片3a6’により規制されている。
【0043】
[バンド用留め具の動作]
次に、バンド用留め具1により腕時計を手首へ装着する際の張出部32b,33bを有するバンド用留め具1の動作の一例を、主に
図1、
図2及び
図15等を参照して説明する。
図15は
図1に示す状態に続く状態を示しており、
図15(a)~
図15(c)は手首への装着まで動作を示しており、
図15(d)は係合部10の係合が解除された状態を示している。
図16は
図15(d)に続く動作の一例を説明するための概念図であり、
図17は張出部32b,33bを有さない別のバンド用留め具1における再装着時の動作の一例を説明するための概念図である。なお、別のバンド用留め具1’は張出部32b,33bを有していないこと以外については本実施形態におけるバンド用留め具1と同じ構造を有している。
【0044】
まず、
図2に示すように、バンド用留め具1は大きく展開される。この状態で、第2バンドX2の端部が挿通口部22aに挿入されると共に、手首がバンドXとバンド用留め具1により形成される環状体内に挿入される。その後、
図1に示すように、中部材23が下部材21側に回動される。
図15(a)では、中部材23が下部材21側に更に回動されて下部材21側に折り畳まれている。この状態で突起部6の頭部6bの一部が箱体3の第1貫通孔3b1を介して箱体3内に貫入する。このとき、係合部10は
図5に示すように第1縁部76aと第2縁部86aとが弾性部材9の付勢力により互いに近づいた状態(つまり、係合部10が最小に閉じた状態)になっており、頭部6bは第1縁部76aの第1傾斜面76a1(
図10参照)及び第2縁部86aの第2傾斜面86a1(
図12参照)に当接する。その結果、箱体3は突起部6の頭部6bに押し上げられ、
図15(a)に示すように折り畳まれた下部材21及び中部材23から離れる方向に回動する。この状態で、例えば、第1押圧片72及び第2押圧片82が弾性部材9の付勢力に抗してそれぞれ内側に向かって押圧操作されると、第1縁部76aと第2縁部86aとが互いに離れる方向に移動して、係合部10が開く。その結果、
図15(b)に示すように、頭部6bが第1縁部76aと第2縁部86aとの間をすり抜けると共に、箱体3が回動して下部材21及び中部材23に当接する。その後、押圧操作を解除すると、第1縁部76aと第2縁部86aが弾性部材9の付勢力により互いに近づく方向に移動し、突起部6の軸部6aが第1縁部76aと第2縁部86aとの間に挟まれる。このとき、頭部6bの軸部6a側の端面は、第1係合片71の第1溝部78の底面(
図11参照)及び第2係合片81の第2溝部88の底面(
図13参照)に当接する。これにより、下部材21と中部材23と箱体3が折り畳まれた状態で維持されて互いに係合する。また、
図15(a)の状態で、単に箱体3を指等により中部材23側に押し付けることにより、第1縁部76aと第2縁部86aを弾性部材9の付勢力に抗して互いに離れる方向に移動させ、頭部6bを第1縁部76aと第2縁部86aとの間をすり抜けさせることもできる。つまり、第1押圧片72及び第2押圧片82の押圧操作又は箱体3自体への押圧によって、下部材21と中部材23と箱体3を折り畳まれた状態で互いに係合させる。その後、
図15(c)に示すように、第2バンドX2の長さが調整されつつ、上部材22が指等により回動操作され、複数の孔X2aのいずれかに上部材22の係合ピン22bが挿入され、第2バンドX2の一端部が留め具本体2の他端部に接続される。このとき、上部材22の第1側部22cの基端部が第1回転防止片5aにおける側壁3a3側の傾斜部5a1(
図5及び
図10参照)に当接すると共に、上部材22の第2側部22dの基端部が第2回転防止片5bにおける側壁3a3側の傾斜部5b1(
図5及び
図12参照)に当接する。その結果、第1回転防止片5a及び第2回転防止片5bが上部材22の回動に連動して弾性部材9の付勢力に抗してそれぞれ箱体3内に移動する。その後、更に上部材22が箱体3側に向って回動され、係合孔22fと第1回転防止片5a及び第2回転防止片5bとが一致すると、
図15(c)に示すように、第1回転防止片5aが弾性部材9の付勢力により箱体3内から飛び出し第1側部22cの係合孔22fに係合すると共に、第1回転防止片5aが弾性部材9の付勢力により箱体3内から飛び出し第1側部22cの係合孔22fに係合する。これにより、上部材22の回動が防止され、上部材22がぶらつくことなく折り畳まれた状態が維持され、腕時計の手首への装着が完了する。
【0045】
装着完了後、第1押圧片72及び第2押圧片82が指等により押圧操作されると、突起部6と係合部10との係合が解除される。そして、この状態でそのまま箱体3が下部材21から引き離す方向につまみ上げられると、
図15(d)に示すように中部材23が展開される。これにより、バンドXの手首への締め付けが緩むと共にバンドXとバンド用留め具1により形成される環状体が拡径され、手首を環状体内から抜き出すことができる。
【0046】
ここで、
図16は
図15(d)に続く動作の一例を説明するための概念図であり、係合解除後、手首へ再装着する場合の状態の一例が示されている。
図15(d)に示すように、第1側部22cの係合孔22fに第1回転防止片5aが貫入すると共に第2側部22dの係合孔22fに第2回転防止片5bが貫入している状態で、腕時計を手首に再装着する場合に、上部材22の接続部22eが軽く押圧されると、
図16に示すように中部材23が下部材21に対して折り畳まれる。このとき、箱体3は
図16に示すように突起部6の頭部6bにより押上げられる。この状態で、第1押圧片72及び第2押圧片82が押圧操作された後、その押圧が解除されると、係合部10と突起部6とが係合し
図15(c)に示す状態となり再装着が完了する。しかし、
図16に示す状態で、第1押圧片72及び第2押圧片82ではなく、上部材22の接続部22eを図中白抜き矢印方向に強く押圧することにより、係合部10と突起部6とを係合させようと操作する場合が想定される。このような操作をされることが予測される状況において、仮に、バンド用留め具1において張出部32b,33bが形成されていなかった場合、この張出部32b,33bを有さない別のバンド用留め具1’では、
図17(a)に示すように、各回転防止片5a,5bと係合孔22fとの隙間分だけ上部材22の回動が許容されているため、上部材22の第1側部22cが第1押圧片72の角部に当接すると共に、上部材22の第2側部22dが第2押圧片82の角部に当接する。その結果、第1係合部材7及び第2係合部材8が動きにくくなって係合部10の開方向への動きが鈍くなり、係合部10と突起部6との係合が上手くできない場合が想定される。また、このとき、上部材22には、第1押圧片72の角部及び第2押圧片82の角部を中心(支点)Y’とする回転モーメントが作用する。その結果、
図17(a)に実線矢印で示すように、上部材22の接続部22eと反対側の端部が下部材21から離れる方向の力が発生し、その後、更に上部材22の接続部22eが押圧されると、
図17(b)に示すように、上部材22に第3接続ピン26を介して接続された中部材23が箱体3と伴に下部材21から離れる方向に移動してしまい、係合部10と突起部6との係合が上手くできない場合が想定され得る。
【0047】
一方、張出部32b,33bを有するバンド用留め具1では、
図16(a)に示すように、再装着時に上部材22が強く押圧操作されたとしても、上部材22は、第1押圧片72及び第2押圧片82には当接せず、張出部32b,33bに当接している。したがって、バンド用留め具1では、上部材22が第1押圧片72及び第2押圧片82に当接することを防止することができる。したがって、上部材22が押圧操作されることによって、第1係合部材7及び第2係合部材8が開方向へスムーズにスライド移動し、係合部10と突起部6との係合がスムーズに行われ、
図15(c)に示す状態となり再装着が完了する。より具体的には、本実施形態では、前述したように、張出部32b,33bにおける箱体3の一端部側(つまり側壁3a3側)の端面32b1,33b1は、第1押圧片72及び第2押圧片82における箱体3の一端部側(側壁3a3側)の端面72a,82aより箱体3の他端部側(側壁3a2側)に位置するように構成されている。これにより、上部材22の接続部22eを押圧すると、
図16に示すように、上部材22の第1側部22cが張出部32bの角部に当接すると共に、上部材22の第2側部22dが張出部33bの角部に当接する。このとき、上部材22には、各張出部32b,33bの角部を中心(支点)Yとする回転モーメントが作用する。しかし、この中心Yは各押圧片72,82の角部である中心Y’よりも力点P側(つまり接続部22e側)に位置している。その結果、
図17に示した場合と比較して、上部材22に作用する回転モーメントが小さくなるため、この回転モーメントにより中部材23が箱体3と伴に下部材21から離れる方向に移動することを抑制することができ、ひいては、係合部10と突起部6との係合がよりスムーズに行われる。
【0048】
本実施形態によるバンド用留め具1によれば、箱体3の幅方向Wの両端部の他端部側における箱体3の回動方向についての上部材22側の各部位には、それぞれ幅方向Wの外方に張り出す張出部32b,33bが形成されている。これにより、仮に上部材22を強く押圧することによって係合部10と突起部6とを係合させようと操作されたとしても、上部材22は第1押圧片72及び第2押圧片82ではなく、張出部32b,33bに当接(接触)することになり、第1押圧片72及び第2押圧片82への上部材22の当接が防止される。その結果、箱体3内の係合部10が突起部6に押し付けられているときにおいて、第1係合部材7及び第2係合部材8の係合の解除方向(開方向)へ移動がスムーズになり、係合部10と突起部6との係合がスムーズに行われる。このようにして、再装着時における操作性を向上させることができるバンド用留め具1を提供することができる。
【0049】
本実施形態では、第1係合片71は箱体3内における幅方向Wに延びる一方の内側面31a(側壁3a2の内側面)に沿って摺動可能にガイドされて直線状に延びており、第2係合片81は箱体3内における幅方向Wに延びる他方の内側面31b(側壁3a3の内側面)と第1係合片71との間において他方の内側面31bに沿って摺動可能にガイドされて直線状に延びている。つまり、組み付けの際に箱体3内に挿入される部位である第1係合片71及び第2係合片81はいずれも直線状に形成されていると共に箱体内において互いの干渉(係合)を回避するように配置されている。したがって、箱体3内への組み付けの際に、事前に第1係合部材7の一端部と第2係合部材8の一端部を互いに係合させる必要はなく、組み付けの作業者等は、第1係合部材7の第1係合片71を箱体3の一方の開口部32a側から挿入すると共に、第2係合部材8の第2係合片81を箱体3の他方の開口部33a側から挿入して、箱体3内に組み付けることができる。このように、第1係合部材7及び第2係合部材8は、それぞれの係合片(第1係合片71、第2係合片81)を単独で箱体3内へ組み付け可能な構造を有しているため、例えば、第1押圧片72を第1係合片71の厚さより厚い板厚を有して形成することができると共に、第2押圧片82を第2係合片81の厚さより厚い板厚を有して形成することができる。その結果、第1押圧片72及び第2押圧片82の押圧操作の操作性を、従来の薄板状の一対の押圧片(特許文献1のプッシュボタン41,41)と比較して向上させることができ、ひいては、係合解除用の押圧操作の操作性を向上させることができるバンド用留め具1を提供することができる。
【0050】
また、本実施形態では、係合部10は、第1凹部76における他方の開口部33a側(
図10では左側)の第1縁部76aと、第2凹部86における一方の開口部32a側(
図12では右側)の第2縁部86aとにより形成されている。そして、第1縁部76aは第1凹部76の底部76bから離れるにしたがって他方の開口部33aに近づくように傾斜しており、第2縁部86aは第2凹部86の底部86bから離れるにしたがって一方の開口部32aに近づくように傾斜している。これにより、係合最中における突起部6の頭部6bの表面と第1縁部76a及び第2縁部86aとの当接面積、並びに、係合後における頭部6bの軸部6a側の端面と第1溝部78(
図11参照)の底面及び第2溝部88(
図13参照)の底面との当接面積が例えば第1縁部76a及び第2縁部86aが長手方向Lに沿って平行に延びている場合よりも多く確保することができる。その結果、頭部6bの箱体3内への貫入の際に第1係合部材7及び第2係合部材8がスムーズにスライド移動すると共に、係合後には安定した係合を維持することができる。
【0051】
本実施形態では、バンド用留め具1は、上部材22の側部(第1側部22c、第2側部22d)に係合して上部材22の回動を防止する回転防止機構5を更に備えている。これにより、上部材22の回動が防止され、上部材22と第2バンドX2との接続が意図せず解除されることを防止することができる。また、回転防止機構5は第1係合部材7、第2係合部材8のそれぞれに一体に形成されている。これにより、回転防止機構5を第1押圧片72及び第2押圧片82の押圧操作に連動して操作することができる。
【0052】
本実施形態では、回転防止機構5は第1係合部材7に一体的に形成された第1回転防止片5aと第2係合部材8に一体的に形成された第2回転防止片5bとからなり、第1回転防止片5a及び第1押圧片72は箱体3の一方の開口部32aを介して外方に位置し、第2回転防止片5b及び第2押圧片82は箱体3の他方の開口部33aを介して外方に位置している。そして、第1押圧片72及び第2押圧片82は箱体3における長手方向Lの他端部側(側壁3a2側)に寄せて配置され、第1回転防止片5a及び第2回転防止片5bは箱体3における長手方向Lの一端部側(側壁3a3側)に寄せて配置されている。これにより、第1押圧片72及び第2押圧片82の押圧操作が容易になる。さらに、上部材22の基端部に第1回転防止片5a及び第2回転防止片5bを当接させて、第1回転防止片5a及び第2回転防止片5bを進退移動させることができるため、上部材22の回転操作に連動して回転防止機構5を操作することができる。
【0053】
[変形例]
なお、係合部10を構成する第1縁部76a及び第2縁部86aの先端部は平面視(
図10及び
図12に示す平面視)で斜め直線状に延びるものとしたが、これに限らず、例えば、突起部6の頭部6bの形状に合わせたR形状に形成されていてもよい。これにより、より安定した係合を図ることができる。また、係合部10を構成する第1縁部76a及び第2縁部86aは第1係合部材7及び第2係合部材8のスライド移動方向(図では幅方向W)に対して斜めに傾斜しているものとしたが、これに限らず、スライド移動方向と直交(つまり、長手方向Lに沿って平行)する方向に延びていてもよい。また、本実施形態では、組み付けの際に箱体3内に挿入される部位である第1係合片71及び第2係合片81はいずれも直線状に形成されているものとしたが、これに限らず、従来と同様に、鉤状に屈曲するように形成されていてもよいし、適宜の形状を適用することができる。
【0054】
また、バンドXは皮革製の部材からなるものとしたが、これに限らず、樹脂製や布製や金属製であってもよい。金属製のバンドXの場合、例えば、金属材からなる複数の細線を編み込んだメッシュ状のメタルバンドに尾錠用の孔X2aを形成すればよい。また、装身具の本体としては、腕時計の時計本体の場合を一例に挙げて説明したが、電話、歩数計、位置情報モニタ(GPS本体)、デジタル音楽プレーヤ、心拍数モニタといった各種のウェラブル情報端末であってもよい。また、装着部位は手首に限らず首回りや足首であってもよい。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態及びその変形例について幾つか説明したが、本発明は上記実施形態及び上記変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…バンド用留め具、2…留め具本体、3…箱体、4…係合機構、5…回転防止機構、5a…第1回転防止片、5b…第2回転防止片、6…突起部、6b…頭部、7,8…一対の係合部材、7…第1係合部材(一対の係合部材の一方)、8…第2係合部材(一対の係合部材の他方)、10…係合部、21…下部材、22…上部材、22a…挿通口部、22b…係合ピン、22c…第1側部(側部)、22d…第2側部(側部)、23…中部材、31a…一方の内側面、31b…他方の内側面、32,33…両端部、32a…一方の開口部、32b…張出部、33a…他方の開口部、33b…張出部、71…第1係合片、71a…第1側面、72…第1押圧片、76…第1凹部、76a…第1縁部、76b…第1凹部の底部、81…第2係合片、81a…第2側面、82…第2押圧片、86…第2凹部、86a…第2縁部、86b…第2凹部の底部、L…バンドの長手方向、X…バンド、X1…第1バンド(一方のバンド)、X2…第2バンド(他方のバンド)、X2a…孔、W…バンドの幅方向