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特許7233116雄臭除去用組み換えタンパク質およびこれを含むワクチン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】雄臭除去用組み換えタンパク質およびこれを含むワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230227BHJP
   A61P 5/04 20060101ALI20230227BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230227BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230227BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 15/16 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230227BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20230227BHJP
   C07K 14/28 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
A61K39/00 Z
A61P5/04
C07K19/00 ZNA
A61K47/64
A61K47/68
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/16
C12N15/31
C12N15/13
C07K14/575
C07K14/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020540779
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2020008420
(87)【国際公開番号】W WO2021194013
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0035897
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519142114
【氏名又は名称】バイオアプリケーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOAPPLICATIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ウン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン ジク
(72)【発明者】
【氏名】イ、サンミン
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-513770(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2053009(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0085926(US,A1)
【文献】Vaccine,1994年,12(8),pp.741-746
【文献】Mol Biotechnol.,2011年,48,pp.201-209
【文献】BioMed Research International,2014年,Volume 2014,Article ID 421486, pp.1-11
【文献】Plant Cell, Tissue and Organ Culture (PCTOC),2019年,138,pp.213-223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C07K
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合免疫グロブリンタンパク(BIP)、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、n個のGnRH(Gonadotropin-releasing hormone)、ブタ免疫グロブリンFc断片、及びHDEL(His-Asp-Glu-Leu)が融合した組み換えタンパク質を有効成分として含み、前記nは、1~20の整数であり、
該BIPが配列表の配列番号8のアミノ酸配列からなり、該CTBが配列表の配列番号4のアミノ酸配列からなり、該GnRHが配列表の配列番号1のアミノ酸配列からなり、該ブタ免疫グロブリンFcフラグメントが配列表の配列番号6のアミノ酸配列からなる、雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項2】
前記nは、6であることを特徴とする、請求項1に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項3】
前記GnRHは、配列番号2のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項2に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項4】
前記GnRHは、nが2以上であるとき、それぞれ、アラニン-グリシン-アラニン(alanine-glycine-alanine)リンカーで連結されたことを特徴とする、請求項1に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項5】
前記CTBは、GnRHのN-末端方向に融合し、前記ブタ免疫グロブリンFc断片は、GnRHのC-末端方向に融合することを特徴とする、請求項1に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項6】
前記CTBは、GnRHのN-末端方向に融合し、前記BiPは、CTBのN-末端方向に融合することを特徴とする、請求項1に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項7】
前記CTBは、GnRHのN-末端方向に融合し、前記HDELは、GnRHのC-末端方向に融合することを特徴とする、請求項1に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項8】
前記組み換えタンパク質は、BiP、CTB、GnRH、ブタ免疫グロブリンFc断片、およびHDELが順次に融合したものであることを特徴とする、請求項1に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項9】
前記組み換えタンパク質は、配列表の配列番号12のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項8に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項10】
前記ワクチン組成物は、アジュバント(adjuvant)をさらに含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の雄臭除去用ワクチン組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のワクチン組成物をギニアピッグ又はブタに投与する段階を含む、動物の雄臭除去方法。
【請求項12】
配列表の配列番号8のアミノ酸配列からなるBiPをコードするポリヌクレオチド、配列番号3の塩基配列からなるGnRH遺伝子、配列番号5の塩基配列からなるCTB遺伝子、配列表の配列番号6のアミノ酸配列からなるブタ免疫グロブリンFc断片をコードするポリヌクレオチド、及び配列表の配列番号11の塩基配列からなるHDEL遺伝子を順に含み、請求項1の組換えタンパク質をコードする、雄臭除去用組み換えベクター。
【請求項13】
前記組み換えベクターは、配列番号12のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたは配列番号13の塩基配列を含むことを特徴とする、請求項12に記載の雄臭除去用組み換えベクター。
【請求項14】
結合免疫グロブリンタンパク(BIP)、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、n個のGnRH(Gonadotropin-releasing hormone)、ブタ免疫グロブリンFc断片、及びHDEL(His-Asp-Glu-Leu)が融合しており、該nは、1~20の整数であり、
該BIPが配列表の配列番号8のアミノ酸配列からなり、該CTBが配列表の配列番号4のアミノ酸配列からなり、該GnRHが配列表の配列番号1のアミノ酸配列からなり、該ブタ免疫グロブリンFcフラグメントが配列表の配列番号6のアミノ酸配列からなる、雄臭除去用組み換えタンパク質。
【請求項15】
請求項12に記載の組み換えベクターで形質転換された、形質転換体。
【請求項16】
請求項14に記載の雄臭除去用組み換えタンパク質を、ギニアピッグ又はブタの雄臭除去の為に使用する方法。
【請求項17】
雄臭除去に用いられるワクチンを製造する為の、請求項14に記載の組換えタンパク質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄臭除去用ワクチン組成物に関し、より具体的に、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin-releasing hormone;GnRH)に対する抗体を誘導するための雄臭除去用組み換えタンパク質、これを生産するための組み換えベクター、前記組み換えタンパク質を有効成分として含む雄臭除去用ワクチン組成物およびこれを用いた雄臭除去方法などに関する。
【0002】
本出願は、2020年3月24日に出願された韓国特許出願第10-2020-0035897号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
雄臭(boar taint)とは、豚肉または豚肉加工品を調理または食べた時にしばしば現れる不快臭または味のことを意味し、食肉の安全性には全く問題がないが、消費者が食肉を選択する過程で最も重要であると考えることが、色の次に臭いであるので、雄豚の雄臭を除去する作業は非常に重要である。
【0004】
雄臭の主な原因物質は、スカトール(skatole)とアンドロステロン(androsterone)であって、スカトールは、腸内バクテリアのタンパク質が分解されて作られた化学物質であって、ヒトの排泄物にも入っている。スカトールは、肝で分解されるが、アンドロステロンが分解を妨害する。すなわち、分解されないスカトールが、特に脂肪部分に積もることになり、豚肉を煮る過程で空気中に飛び出して消えるが、この臭いが雄臭である。
【0005】
数世紀の間雄臭を予防するために、豚に去勢(castration)を実施してきており、雄豚の去勢は、生後約2~3週に実施される。一部の国家(オランダ、スイス、ノルウェー)では、去勢による痛みとストレスを減らすために、全身または局部麻酔剤を使用することがあるが、最近、動物保護団体から麻酔の有無と関係なく、去勢に対する批判を受け入れてきた。
【0006】
雄豚の去勢に対する批判が高まるに伴い、オーストラリアとニュージーランドでは、1998年に商用化されたファイザー(Pfizer)社の免疫的去勢ワクチン「Improvac」の接種が始まり、米国、EU、日本、スイス、オーストラリア、ブラジルなど世界の様々な国家で販売され、韓国には、2006年に品目の許可を取得したことがある。免疫的去勢ワクチンは、雄臭の抑制のために、豚の免疫系を活用する非常に安全でかつ効率的な解決策になりうる。前記ワクチンは、豚の免疫系を刺激して性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin-releasing hormone;GnRH)に対する特異抗体を生成することによって、睾丸の機能を抑制して、雄臭の原因となる物質が生成および蓄積されないようにする。これについて、免疫系を用いて外科的手術である去勢と同じ効果を示すという点から、免疫去勢という表現を使用する。
【0007】
しかしながら、韓国の場合には、免疫的去勢方法による雄臭の除去や肉質の改善だけでは、去勢の判定基準に100%適しておらず、外科的去勢法と比較して非常に高費用(外科的去勢法が頭当たり100ウォンであれば、免疫的去勢法は、頭当たり5,000ウォン)が支出されるので、当該ワクチンの市場進出が失敗に終わったことがある。
【0008】
それにもかかわらず、免疫的去勢方法は、雄臭の除去だけでなく、外科的去勢法の実施後に現れることができる成長能力の低下、ストレスおよび痛みによる免疫抑制を誘発しないため、結局、これを使用した農家の生産性の向上に役に立つことができ、動物福祉という世界的傾向に逆行しないために、従来の外科的去勢法を免疫的去勢法に変える必要性が増加している。これにより、高い接種費用、等級判定時の不確実性、安全性イシューなど従来の免疫去勢ワクチンの限界を克服し、純粋国内技術を活用して実際適用可能な雄臭除去用ワクチンの開発必要性が次第に高まっているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述したような従来技術上の問題点を解決するために案出されたものであって、人為的に性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin-releasing hormone;GnRH)の抗原性を向上させるために、キャリア(carrier)タンパク質と融合した雄臭除去用組み換えタンパク質を含むワクチンを開発して、本発明を完成した。
【0010】
これより、本発明の目的は、CTB(Cholera toxin B subunit)およびn個のGnRH(Gonadotropin-releasing hormone)が融合した組み換えタンパク質を有効成分として含み、前記nは、1~20の整数である、雄臭除去用ワクチン組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、本発明によるワクチン組成物をヒトを除いた動物に投与する段階を含む、動物の雄臭除去方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、配列番号3の塩基配列からなるGnRH遺伝子および配列番号5の塩基配列からなるCTB遺伝子を含む、雄臭除去用組み換えベクターを提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、本発明による組み換えベクターを用いて製造した雄臭除去用組み換えタンパク質を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、本発明による組み換えベクターで形質転換された、形質転換体を提供することにある。
【0015】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記のような本発明の目的を達成するために、CTB(Cholera toxin B subunit)およびn個のGnRH(Gonadotropin-releasing hormone)が融合した組み換えタンパク質を有効成分として含み、前記nは、1~20の整数である、雄臭除去用ワクチン組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、CTBおよびn個のGnRHが融合した組み換えタンパク質を有効成分として含み、前記nは、1~20の整数であるワクチン組成物をヒトを除いた個体に投与して雄臭を除去する方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、CTBおよびn個のGnRHが融合し、前記nは、1~20の整数である組み換えタンパク質の雄臭除去用途を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、CTBおよびn個のGnRHが融合し、前記nは、1~20の整数である組み換えタンパク質の雄臭除去に用いられるワクチンを生産するための用途を提供する。
【0020】
本発明の一具現例において、前記GnRHは、配列番号1のアミノ酸配列からなり得るが、これに制限されるものではない。
【0021】
本発明の他の具現例において、前記CTBは、配列番号4のアミノ酸配列からなり得るが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、前記nは、6でありうるが、これに制限されるものではない
【0023】
本発明のさらに他の具現例において、前記nが6である場合、GnRHは、配列番号2のアミノ酸配列からなり得るが、これに制限されるものではない。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記GnRHは、nが2以上である時、それぞれ、アラニン-グリシン-アラニンリンカー(alanine-glycine-alanine linker)で連結され得るが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明の一具現例において、前記組み換えタンパク質は、豚の免疫グロブリンFc断片(porcine Fc fragment;pFc2)をさらに融合することができる。
【0026】
本発明の他の具現例において、前記pFc2は、配列番号6のアミノ酸配列からなり得るが、これに制限されるものではない。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記CTBは、GnRHのN-末端方向に融合し、前記pFc2は、GnRHのC-末端方向に融合することができるが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明の一具現例において、前記組み換えタンパク質は、BiP(chaperone binding protein)をさらに融合することができる。
【0029】
本発明の他の具現例において、前記BiPは、配列番号8のアミノ酸配列からなり得るが、これに制限されるものではない。
【0030】
本発明のさらに他の具現例において、前記CTBは、GnRHのN-末端方向に融合し、前記BiPは、CTBのN-末端方向に融合することができるが、これに制限されるものではない
【0031】
本発明の一具現例において、前記組み換えタンパク質は、HDEL(His-Asp-Glu-Leu)をさらに融合することができる。
【0032】
本発明の他の具現例において、前記HDELは、配列番号11の塩基配列によりコードされるものでありうるが、これに制限されるものではない。
【0033】
本発明のさらに他の具現例において、前記CTBは、GnRHのN-末端方向に融合し、前記HDELは、GnRHのC-末端方向に融合することができるが、これに制限されるものではない。
【0034】
また、本発明の一具現例において、前記組み換えタンパク質は、BiP、CTB、GnRH、pFc2およびHDELが順次に融合したものでありうるが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明の他の具現例において、前記組み換えタンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列からなり得るが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明の一具現例において、前記ワクチン組成物は、アジュバント(adjuvant)をさらに含むことができる。
【0037】
本発明の他の具現例において、前記アジュバントは、エマルシゲン(Emulsigen)系でありうるが、これに制限されるものではない。
【0038】
また、本発明は、本発明によるワクチン組成物をヒトを除いた動物に投与する段階を含む、動物の免疫去勢方法を提供する。
【0039】
本発明の一具現例において、前記動物は、犬、鯨、猫、ゴリラ、ガチョウ、ギニアピッグ、キジ、ラクダ、ノロ、ラバ、鶏、ロバ、イルカ、豚、ラマ、馬、水牛、鹿、牛、トナカイ、アルパカ、ヤク、羊、ヤギ、オランウータン、鴨、猿、フェレット、マウス、七面鳥、ダチョウまたはウサギでありうるが、これに制限されるものではない。
【0040】
また、本発明は、配列番号3の塩基配列からなるGnRH遺伝子および配列番号5の塩基配列からなるCTB遺伝子を含む、雄臭除去用組み換えベクターを提供する。
【0041】
本発明の一具現例において、前記組み換えベクターは、配列番号6のアミノ酸配列からなるpFc2をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明の他の具現例において、前記組み換えベクターは、配列番号8のアミノ酸配列からなるBiPをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明のさらに他の具現例において、前記組み換えベクターは、配列番号11の塩基配列からなるHDEL遺伝子をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明のさらに他の具現例において、前記組み換えベクターは、配列番号12のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたは配列番号13の塩基配列を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0045】
また、本発明は、本発明による組み換えベクターを用いて製造した雄臭除去用組み換えタンパク質を提供する。
【0046】
また、本発明は、本発明による組み換えベクターで形質転換された、形質転換体を提供する。
【発明の効果】
【0047】
本発明は、CTB(Cholera toxin B subunit)およびGnRH(Gonadotropin-releasing hormone)が融合した組み換えタンパク質を含む、雄臭除去用ワクチン組成物などに関し、GnRHのポリペプチド配列を含む組み換えタンパク質を用いてこれを投与した個体にGnRHに対する抗体を誘導し、これを通じて睾丸の萎縮効果を確認した。したがって、本発明は、低い費用、高い安全性および最小限の副作用で雄豚を免疫的に去勢して雄臭を除去するのに有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明の一実施例による組み換えGnRHタンパク質の製造のための発現カセット(expression cassette)を示す図である(BiP,chaperone binding protein;CTB,Cholera toxin B subunit;pFc2,porcine Fc fragment;HDEL,Histidine-Aspartic acid-Glutamic acid-Leucine)。
図2図2は、本発明の一実施例による組み換えGnRHタンパク質の分離・精製結果を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例による組み換えGnRHタンパク質が含まれたワクチン組成物を雄ラットに投与した日程を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施例による組み換えGnRHタンパク質が含まれたワクチン組成物を雄ラットに3回投与した後、睾丸を摘出してサイズを比較した図である。
図5図5は、本発明の一実施例による組み換えGnRHタンパク質が含まれたワクチン組成物を雄ラットに3回投与した後、血中テストステロンの濃度を測定した結果を示す図であって、上段および中段の図は、スタンダードを、下段の図は、各グループの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明者らは、組み換え性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)タンパク質を4週齢のラットに接種した後、それによる睾丸のサイズおよび重さの変化、血中テストステロン濃度の変化を分析した。その結果、本発明の組み換えGnRHタンパク質でワクチン化した群が、対照群と比較して睾丸のサイズおよび重さが減少し、血中テストステロンの濃度が減少したことを確認することによって、本発明による組み換えGnRHタンパク質を含むワクチン組成物が、免疫去勢効果およびそれによる雄臭除去効果を有することを確認して、本発明を完成した。
【0050】
これより、本発明は、CTB(Cholera toxin B subunit)およびn個のGnRH(Gonadotropin-releasing hormone)が融合した組み換えタンパク質を有効成分として含み、前記nは、1~20の整数である、雄臭除去用ワクチン組成物を提供することができる。
【0051】
本明細書において使用された用語「CTB(Cholera toxin B subunit)」または「コレラ毒素Bサブユニット」は、宿主細胞に対する結合活性を有するポリペプチドを称するものであって、好ましくは配列番号5の塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされ、最も好ましくは配列番号5で表されるポリヌクレオチドによりコードされるが、配列番号5の塩基配列と80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列によりコードされ得る。例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列相同性を有するポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、二つの最適に配列された配列と比較領域を比較することによって確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、二つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわちギャップ)を含むことができる。コレラ毒素は、A1およびA2サブユニットと5個のBサブユニットが結合した形態の複合体であり、コレラ毒素の内在化および活性化のためにCTBが粘膜免疫系(mucosal immune system)のM細胞(microfold cell)に結合する。この際、CTBは、細胞膜二重層のGM1-ガングリオシド(ganglioside)と特異的に反応して結合した後にCTBに結合されているAサブユニットまたは抗原タンパク質が細胞膜を通過するようにする。CTBは、粘膜障壁を通過する結合抗原の吸収増加および結合抗原の効率的な提示を通じて抗原の免疫原性を改善して、粘膜免疫強化のための強力な粘膜アジュバント(adjuvant)および輸送体(carrier)分子として用いられる。
【0052】
本明細書において使用された用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む、一般的にリン酸ジエステル(phosphodiester)結合により互いに結合した2以上の連結されたヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体を含むオリゴマーまたはポリマーを示す。ポリヌクレオチドは、また、例えばヌクレオチド類似体、またはリン酸ジエステル結合以外の「骨格」結合、例えばリン酸トリエステル結合、ホスホルアミダート結合、ホスホロチオエート結合、チオエステル結合またはペプチド結合(ペプチド核酸)を含むDNAおよびRNA誘導体を含む。ポリヌクレオチドは、一本鎖および/または二本鎖ポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)だけでなく、RNAまたはDNAのうちいずれか一つの類似体を含む。
【0053】
本明細書において使用された用語「GnRH(gonadotropin-releasing hormone)」は、性腺刺激ホルモン放出ホルモンを意味するものであって、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列からなるGnRHや、GnRHに対する免疫反応を誘導できるものであれば、これに制限されない。また、本発明のGnRHは、配列番号1の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的に、前記ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上、より好ましくは90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。GnRHは、10個のアミノ酸から構成され、すべての動物においてほぼ同じアミノ酸から構成されているものと知られている。GnRHは、視床下部で生成されて脳下垂体に作用することによって、性ホルモンであるFSHおよびLHの生成を促進させるが、GnRHを抗原として用いて動物に接種する場合、GnRHを認識する抗体が形成され、前記抗体が体内で存在するGnRHを除去することによって、雄性および雌性動物の性成熟が遮断されて去勢効果が発生することになり、これにより、雄臭が除去される効果が現れる。
【0054】
本明細書において使用された用語「組み換えタンパク質」または「融合した組み換えタンパク質」は、2種以上のタンパク質が人為的に連結された形態のタンパク質を意味し、本発明では、CTBとGnRHが連結された形態のタンパク質を意味する。上記のように融合した組み換えタンパク質は、それぞれのパートナーが決定された後、化学的に合成したりまたは遺伝子組換え方法で発現および精製して収得することができる。好ましくは、CTBをコードするポリヌクレオチドとGnRHをコードするポリヌクレオチドを連結した融合遺伝子を細胞発現システムで発現させて収得することができる。
本発明の組み換えタンパク質に使用されるGnRHは、GnRHアミノ酸配列の1コピー(one copy)よりは、2またはそれ以上のコピー(two or more copies)を有することが好ましい。このような多重コピー(multiple copy)を有する場合、GnRHに対する免疫原性をさらに増強させることができるので、GnRHのアミノ酸配列、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列が2個以上の多量体を取ることができる。GnRHの個数は、発現ベクター内で受け入れ可能であれば、特別な制限はないが、好ましくは2個~20個、より好ましくは2個~10個が連結された多量体の形態を取ることができ、さらに好ましくは6個が連結された六量体を使用することができる。本発明の具体的な実施例では、GnRHタンパク質が連続的に6回繰り返されるように製作した。前記6個のGnRHが連結されたポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなり得るが、これに制限されるものではない。
【0055】
また、このような融合組み換えタンパク質は、CTBとGnRHが直接連結されたり、リンカーのようなアミノ酸連結子を介して連結され得る。また、GnRHが複数コピー含まれる場合にも、各GnRHは、直接連結されたり、リンカーのような連結子を介して連結され得る。リンカーを介して連結される場合、これによる全体免疫原性(immunogenicity)を減少させないことが好ましい。
【0056】
本明細書において使用された用語「リンカー」とは、CTBとGnRHを連結して組み換えタンパク質を作る場合または数個のGnRHを連結させる場合、これらタンパク質の構造的柔軟性を増加させて結合させた各タンパク質の活性が増進され得るようにタンパク質とタンパク質の間に挿入するペプチドを意味する。リンカーは、免疫反応を最小化できるものであれば、その種類やアミノ酸個数は制限がないが、好ましくはアミノ酸1個~20個、より好ましくはアミノ酸1個~5個が好ましい。本発明の具体的な実施例では、各タンパク質を連結させるために、ベクターのマルチクローニングサイトにある制限酵素部位の配列を使用したり、アラニン-グリシン-アラニン(AGA)リンカーを使用した。
【0057】
本明細書において使用された用語「ワクチン(vaccine)」は、生体に免疫反応を起こす抗原を含有する生物学的な製剤であって、感染症の予防または特定抗原に対する抗体を誘導するために、動物に注射したり経口投与することによって、生体に免疫が生じるようにする免疫原をいう。前記動物は、非ヒト動物であって、その例は、後述する。
【0058】
本発明の「ワクチン組成物」は、それぞれ、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用され得る。製剤化する場合には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記レシチン類似乳化剤に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤をも使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などを使用することができ、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水溶性製剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤が含まれる。非水溶性製剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。
【0059】
本発明によるワクチン組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投与が好ましい。本願に使用された用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明のワクチン組成物は、また、直腸投与のための坐剤の形態で投与されることもできるが、前記列挙した投与方法に限定されず、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置により投与され得る。本発明によるワクチン組成物は、体液性または選択的に細胞-媒介性免疫反応および/または前記二つの免疫反応の組合せを誘導することができる。
【0060】
本発明によるワクチン組成物の投与量は、個体の年齢、体重、性別、身体状態などを考慮して選択される。特別な副作用なしに個体に免疫反応を誘導するのに必要な量は、免疫原として使用された組み換えタンパク質および賦形剤の任意存在によって多様になり得る。
【0061】
一方、本発明による免疫去勢用ワクチン組成物は、抗原、薬剤学的許容可能な担体、適切な補助剤、その他通常の物質から構成され得、免疫学的効果量で投与する。本明細書において使用された用語「免疫学的効果量」とは、免疫去勢効果を示すことができるほどの十分な量と副作用や深刻なまたは過度な免疫反応を起こさないほどの量を意味し、正確な投与濃度は、投与される特定の免疫原によって変わり、免疫反応の発生を検査するために当業者が公知の方法を用いてこれを決定することができる。また、投与形態および経路、受容者の年齢、健康および体重、症状の特性および程度、現在の治療法の種類、および治療回数によって変化することができる。
【0062】
また、本発明による組み換えタンパク質は、豚の免疫グロブリンFc断片(porcine Fc fragment;pFc2)がさらに融合したものでありうる。前記pFc2は、GnRHのC-末端方向に融合することができるが、これに制限されるものではない。
【0063】
本明細書において使用された用語「Fc断片(Fc fragment)」とは、免疫グロブリンがパパイン(papain)により消化されたとき、重鎖(heavy chain;H chain)部分のみがS-S結合で連結され、抗原結合部位を有しない部分をFc断片と言い、本発明のFc断片は、好ましくは豚のFc断片であり、より好ましくは配列番号6のアミノ酸配列からなる豚のFc断片や、組み換えタンパク質と融合したとき、組み換えタンパク質の発現量および溶解性を増加させるFc断片であれば、これに制限されない。また、本発明のFc断片は、配列番号6の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的に、前記ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列と90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0064】
また、本発明による組み換えタンパク質は、BiP(chaperone binding protein)がさらに融合したものでありうる。前記BiPは、GnRHまたはCTBのN-末端方向に融合することができるが、これに制限されるものではない。
【0065】
本明細書において使用された用語「BiP(chaperone binding protein)」は、発現した組み換えタンパク質を小胞体に移動させるために使用されたものであって、好ましくは配列番号8のアミノ酸配列からなるBiPや、組み換えタンパク質と融合したとき、組み換えタンパク質を小胞体に移動させるBiPであれば、これに制限されない。また、本発明のBiPは、配列番号8の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的に、前記ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列と90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。前記BiPは、発現するときまたは発現した後、ペプチドの一部が切られて、一部のペプチドのみが残ることがある。
【0066】
また、本発明による組み換えタンパク質は、HDEL(His-Asp-Glu-Leu)がさらに融合したものでありうる。前記HDELは、GnRHまたはpFc2のC-末端方向に融合することができるが、これに制限されるものではない。
【0067】
本明細書において使用された用語「HDEL」は、ヒスチジン-アスパラギン酸-グルタミン酸-ロイシンよりなる標的ペプチド配列を意味するものであって、前記HDELは、組み換えタンパク質が小胞体(endoplasmic reticulum)から分泌されるのを防止したり、小胞体内で安定的に維持され得るようにする。前記HDELは、配列番号11の塩基配列によりコードされるものでありうるが、これに制限されるものではない。
【0068】
また、本発明による組み換えタンパク質は、BiP、CTB、GnRH、pFc2およびHDELが順次に融合したものであり得、これによる前記組み換えタンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列からなるものでありうるが、前記融合順序またはアミノ酸配列により本発明が制限されるものではない。
【0069】
本発明によるワクチン組成物は、雄臭(boar taint)の除去に卓越した効果がある。
【0070】
また、本発明によるワクチン組成物には、免疫反応を改善または強化させるために、一つ以上のアジュバント(adjuvant)を含むことができる。
【0071】
本明細書において使用された用語「アジュバント(Adjuvant)」とは、ワクチンまたは薬学的に活性がある成分に添加されて、免疫反応を増加させたり影響を与える物質または組成物をいう。代表的に、免疫原(immunogen)用キャリアまたは補助物質および/または他の薬学的に活性がある物質または組成物を通常的に意味する。典型的に、用語「アジュバント」は、広い概念で解されるべきであり、前記アジュバントに統合されたり前記アジュバントとともに投与された抗原の免疫原性(immunogenicity)を増進させることができる広い範囲の物質または策略(stratagerm)を意味する。また、アジュバントは、これに制限されず、免疫強化剤(immune potentiator)、抗原伝達系またはこれらの組合せに分けられる。適切なアジュバントの例として、アルミニウムヒドロキシド、フロイド完全または不完全アジュバント、DEAEデキストラン、レバミゾール、PCGおよびpoly I:Cまたはpoly A:Uを含むことができる。本発明の一実施例では、エマルシゲン(Emulsigen)系アジュバントとしてDDA(dimethyldioctadecyl ammonium bromide)を含むエマルシゲン-Dアジュバントを使用した。
【0072】
本発明による組み換えタンパク質は、野生型(wild type)のアミノ酸配列を有するタンパク質だけでなく、融合した組み換えタンパク質の変異体を含む。組み換えタンパク質の変異体とは、正常アミノ酸配列と一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換またはこれらの組合せによって異なる配列を有するタンパク質を意味する。分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびペプチド水準でのアミノ酸交換は、当該分野に公知されている(H.Neurath et al.,1979)。また、前記組み換えタンパク質は、リン酸化(phosphorylation)、メチル化(methylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、ファルネシル化(farnesylation)などで修飾(modification)されることもできる。前記変異体または修飾体は、天然タンパク質と同じ生物学的活性を示す機能的等価物であるが、必要によっては、そのタンパク質の特性を変形させた変異体または修飾体でありうる。好ましくは、アミノ酸配列上の変異と修飾によってタンパク質の熱、pHなどに対する構造的安定性が増加したり、タンパク質活性が増加したものである。
【0073】
本発明による組み換えGnRHタンパク質は、化学的に合成したり、遺伝子組換え方法を通じて生産することができ、好ましくは組み換えベクターを用いてこれを宿主細胞に形質転換させて、これから発現したタンパク質を分離、精製して生産することができる。
【0074】
したがって、本発明の他の様態として、本発明は、配列番号3の塩基配列からなるGnRH遺伝子および配列番号5の塩基配列からなるCTB遺伝子を含む、雄臭除去用組み換えベクターを提供することができる。
【0075】
組み換えベクターは、通常、外来DNAの断片が挿入されたキャリアであって、一般的に二本鎖のDNAの断片を意味する。本明細書において使用された用語「外来DNA」とは、外来種から起源するDNAを意味したり、同じ種から起源する場合には、本来の形態から実質的に変形された形態を意味し、外来遺伝子は、転写される特定の目的核酸でポリペプチドをコードする。組み換えベクターは、宿主細胞で形質転換された遺伝子の発現水準を高めるためには、当該遺伝子が選択された発現宿主内で機能を発揮する転写および解読発現調節配列に作動可能に連結されなければならない。前記組み換えベクターは、個体の細胞内で遺伝子挿入物が発現するように作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子構築物(construct)であって、このような遺伝子構築物を製造するために、標準組み換えDNA技術を用いることができる。組み換えベクターの種類は、原核細胞および真核細胞の各種宿主細胞で目的する遺伝子を発現し、目的とするタンパク質を生産する機能をすれば、特に限定されないが、強力な活性を示すプロモーターと強い発現力を保有しつつ、自然状態と類似した形態の外来タンパク質を大量で生産できるベクターが好ましい。組み換えベクターは、少なくとも、プロモーター、開始コドン、目的するタンパク質を暗号化する遺伝子、終止コドンおよびターミネーターを含んでいることが好ましい。その他に、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、目的とする遺伝子の5′末端および3′末端の非解読領域(UTR)、選別マーカー領域、または複製可能単位などを適切に含むこともできる。
【0076】
本発明の具体的な実施例では、6コピーのGnRH遺伝子断片が含まれたpCAMBIA13000ベクターにCTB遺伝子断片を挿入して製造した組み換えベクターをタバコ植物(Nicotiana benthamiana)に形質転換した。前記ベクターは、35SプロモーターとHSP(heat shock protein)ターミネーターシステムを有しており、タバコ植物でタンパク質を大量生産するのに有用なベクターである。
【0077】
本明細書において使用された用語「ベクター(vector)」とは、適合した宿主内でDNAを発現させることができる適合した調節配列に作動可能に連結されたDNA配列を含有するDNA製造物を意味する。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、または簡単に潜在的遺伝体(genome)挿入物でありうる。適当な宿主に形質転換されれば、ベクターは、宿主のゲノムと関係なく複製し機能することができるか、または場合によっては、ゲノムそれ自体に統合され得る。プラスミドが現在ベクターの最も通常的に使用される形態であるから、用語「プラスミド(plasmid)」および「ベクター(vector)」は、時には相互交換的に使用され得る。しかしながら、本発明は、当業界に知られたまたは知られることになるものと同等な機能を有するベクターの他の形態を含む。
【0078】
また、本発明において前記組み換えベクターは、配列番号6のアミノ酸配列からなるpFc2をコードするポリヌクレオチド、配列番号8のアミノ酸配列からなるBiPをコードするポリヌクレオチドおよび配列番号11の塩基配列からなるHDEL遺伝子よりなる群から選択される1種以上の配列がさらに含まれ得る。
【0079】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、本発明による組み換えベクターを用いて製造した雄臭除去用組み換えタンパク質を提供することができる。
【0080】
また、本発明の他の様態として、本発明は、本発明による組み換えベクターで形質転換された、形質転換体を提供することができる。
【0081】
本明細書において使用された用語「形質転換(transformation)」とは、注入されたDNAにより生物の遺伝的な性質が変わることを総称し、「形質転換体(transgenic organismまたはtransformant)」とは、分子遺伝学的方法で外部の遺伝子を注入して製造された有機体であって、好ましくは本発明の組み換えベクターにより形質転換された有機体であり、前記有機体は、本発明の目的を達成するためのものであれば、制限がない。
【0082】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、本発明によるワクチン組成物をヒトを除いた動物に投与する段階を含む、動物の雄臭除去方法を提供することができる。
【0083】
本発明のワクチン組成物を用いた雄臭除去方法は、動物種に関係なくヒトを除いたすべての動物に適用可能である。前記動物は、哺乳動物が好ましく、例えば犬、鯨、猫、ゴリラ、ガチョウ、ギニアピッグ、キジ、ラクダ、ノロ、ラバ、鶏、ロバ、イルカ、豚、ラマ、馬、スイギュウ、鹿、牛、トナカイ、アルパカ、ヤク、羊、ヤギ、オランウータン、鴨、猿、フェレット、マウス、七面鳥、ダチョウまたはウサギを例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0084】
本発明の方法において、投与は、2回以上実施することが好ましい。例えば、1次接種(initial vaccination)後にブースター接種(booster injections)を1週~10週間隔で1回~4回程度実施することができるが、これは、当該動物の種類によって当業者が適切に変形して実施することができる。
【0085】
本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は、通常的または事前的な意味に限定して解されるべきものではなく、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解されなければならない。
【0086】
以下、本発明の理解を助けるための好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例1】
【0087】
実施例1:BiP-CTB-GnRH-pFc2-HDEL融合タンパク質の発現および精製
GnRHに対する免疫原性を誘導するために、図1に示されたように、GnRHにCTB、pFc2、BiPおよびHDELを融合した組み換えGnRHを発現させるためのベクターを製作した。10個のアミノ酸から構成されたGnRHは、6個が連続するようにしてアラニン-グリシン-アラニン(AGA)リンカーで連結した。6個が連結されたGnRHのアミノ酸配列および塩基配列は、それぞれ、配列番号2および配列番号3に示した。また、CTBに対するアミノ酸配列および塩基配列は、それぞれ、配列番号4および配列番号5に、pFc2に対するアミノ酸配列および塩基配列は、それぞれ、配列番号6および配列番号7に、BiPに対するアミノ酸配列および塩基配列は、それぞれ、配列番号8および配列番号9に、HDELに対するアミノ酸配列および塩基配列は、それぞれ、配列番号10および配列番号11に示し、発現カセット(cassette)の全体アミノ酸配列および塩基配列は、それぞれ、配列番号12および配列番号13に示した。
【0088】
前記ベクターで形質転換されたアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)をタバコ植物の葉に接種し、一過性発現(transient expression)をした。植物の葉から総タンパク質(Total protein)を抽出して遠心分離した後、溶液に含まれている水溶性(soluble)形態のタンパク質をprotein A-sepharose columnを装着したAKTA prime(GE Healthcare、米国)を用いてpFc2融合GnRHタンパク質を分離した。
【実施例2】
【0089】
実施例2:組み換えGnRHタンパク質濃度の確認
前記実施例1で分離・精製した組み換えGnRHタンパク質の濃度を確認および測定するために、濃度を知っているBSA(bovine serum albumin)をスタンダード(standard)としてSDS-PAGEおよびブラッドフォード定量分析(bradford assay)を行った。分離精製した組み換えGnRHタンパク質を1、2μlローディングし、定量のために0.5、1、2μgのBSAを含ませた。Gelは、クマシーブルー染色(Coomassie blue staining)を通じてバンドを最終的に確認した。ブラッドフォード定量分析は、BSAを標準時料として使用してスタンダードカーブ(standard curve)を描いて計算式を作り、GnRHのUV値を代入して濃度を計算した。
【0090】
その結果、図2に示されたように、組み換えGnRHタンパク質がよく発現して分離・精製されたことを確認し、GnRH組み換えタンパク質の濃度が約2μg/μlであることを確認した。上記のように確認された組み換えGnRHタンパク質を下記実施例3の動物実験に使用した。
【実施例3】
【0091】
実施例3:組み換えGnRHタンパク質の投与効果の確認
3.1.実験動物、投与条件および日程
組み換えGnRHタンパク質の免疫去勢効果を確認するために、4週齢の雄性SD(Sprague Dawley)ラットに下記表1に記載された投与条件で、図3に示された日程によって本発明による組み換えGnRHタンパク質が含まれたワクチン組成物を投与した。対照群は、同じ量のPBS(phosphate-buffered saline)を投与し、実験群は、前記ワクチン組成物100μg/180μlおよびEmulsigen(登録商標)-Dアジュバント20μlを投与した(下記表1参照)。入舎した4週齢のラットを約4日間安定化させた後、14日~15日の投与間隔で総3回投与した。採血は、それぞれ、投与前および実験終了時に実施し、3次投与後4週が経過した時点で睾丸を摘出して、重さおよびサイズを測定し、血中テストステロン(testosterone)の濃度を測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
3.2.睾丸の肉眼評価
本発明によるワクチン組成物の3次投与後に4週が経過した時点で睾丸を摘出して、肉眼評価を実施した。結果は、下記表2および図4に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
前記表2および図4に示されたように、非接種対照群と比較して組み換えGnRHタンパク質を含むワクチン接種群は、睾丸の重さおよび長さが有意に減少したことを確認した。また、重さの比率から確認できるように、個体の総体重対比睾丸の重さが占める比率は、ワクチン接種群が顕著に低いことが示され、ワクチン接種群の睾丸の平均長さも、非接種群対比64%~86%水準に示された。
【0096】
上記のような結果は、本発明による組み換えGnRHタンパク質を含むワクチン組成物の投与によって成功裏に免疫的去勢になったことを確認したものである。
【0097】
3.3.テストステロン(testosterone)のELISA結果
本発明によるワクチン組成物の3次投与後に4週が経過した時点で採血して、血中テストステロンの濃度を測定した。測定は、Elabscience(登録商標)のELISAキットを用いて製造社の指針によって行った。具体的に、テストステロンがコートされているプレートに50μLの血清を入れ、すぐに同じ量のbiotinylated Detection抗体を入れた。37℃で45分間反応させた後、350μLの洗浄バッファーを用いて3回洗浄した。次に、100μLのHRP conjugate溶液を入れ、37℃で30分間培養した。上述した過程と同一に洗浄を5回進めた後、90μLの基質液を添加した後、37℃で15分間培養した。その後、50μLの反応停止液を入れ、ELISA機械を通じて450nmの波長でOD値を測定した。血中テストステロンの実際量を定量するために、テストステロンスタンダードタンパク質を0.1、0.4、1.6、5、20ng/mlで含んで反応を進めた。これを通じて得られたOD値でスタンダードグラフを作って、これに先立って得られたサンプルのOD値を代入してテストステロンを定量した。その結果は、下記表3および図5に示した。
【0098】
【表3】
【0099】
その結果、前記表3および図5に示されたように、非接種対照群と比較して組み換えGnRHタンパク質を含むワクチン接種群は、血中テストステロンの濃度が顕著に減少したことが示された。
【0100】
上記のような結果、前記実施例3.2.の結果と一致するものであって、本発明による組み換えGnRHタンパク質を含むワクチン組成物の投与によって成功裏に免疫的去勢が行われ、これにより、雄臭が除去されることを確認したものである。
【0101】
上述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、CTB(Cholera toxin B subunit)およびGnRH(Gonadotropin-releasing hormone)が融合した組み換えタンパク質を含む、雄臭除去用ワクチン組成物などに関し、GnRHのポリペプチド配列を含む組み換えタンパク質を用いてこれを投与した個体にGnRHに対する抗体を誘導し、これを通じて睾丸の萎縮効果を確認した。したがって、本発明は、低い費用、高い安全性および最小限の副作用で雄豚を免疫的に去勢して雄臭を除去するのに用いられるところ、産業的利用価値が大きいものと予想される。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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