(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】植物育成土壌の加熱冷却装置及び加温冷却方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20230227BHJP
【FI】
A01G9/02 101K
A01G9/02 101J
A01G9/02 101U
(21)【出願番号】P 2022030595
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】510052067
【氏名又は名称】斉藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】野田 靖之
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-098943(JP,A)
【文献】特開平08-242701(JP,A)
【文献】特開2020-048432(JP,A)
【文献】特開2017-216897(JP,A)
【文献】特開2004-154031(JP,A)
【文献】実開昭61-064262(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開口した有底の植物育成土壌を収納する内鉢であって、多孔質の陶器で構成された内鉢と、
上下を開口して、前記内鉢の開口面以外を覆う外鉢であって、該外鉢の内面と前記内鉢の外面との間に温度管理空間を形成した、前記内鉢よりも熱伝導率の低い外鉢と、
前記外鉢の下面を載置する把持開口を上面に形成し、該把持開口に該外鉢を載置して、該外鉢の開口下面と連通させ、該外鉢内部の前記温度管理空間に温度管理された空気を供給する中空の台座部と、
を備え
、
前記外鉢は、その下面を前記台座部の把持開口に載置した状態で、前記外鉢の側面を、前記台座部から表出させてなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記内鉢が、多孔質である植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記外鉢の前記開口下面から上の前記温度管理空間の体積が、
前記内鉢の体積の50%以
下である植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記外鉢が、前記内鉢の外周の上部を保持し、該保持された部分の下方に、前記温度管理空間を形成してなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記内鉢は、その高さ方向の50%以上を、前記台座部の上面から突出させてなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記外鉢が、外面に釉薬をかけた陶器である植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記外鉢が、プラスチック製である植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記台座部が、前記温度管理された空気を、前記温度管理空間に送風する送風ファンを備えてなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記台座部が、
前記把持開口を、上面に複数開口してなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、さらに、
前記台座部の中空の空間に連通して熱結合された熱交換器を備えてなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項11】
請求項10に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記熱交換器が、前記台座部の中空の空間内に配置されてなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項12】
請求項10に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、さらに、
前記台座部の中空の空間と、前記台座部の外部に配置された前記熱交換器とを連通するダクトを備えてなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記熱交換器が、ボイラー、ヒートポンプ、又は
ヒータである植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、さらに、
前記内鉢内の植物育成土壌の土壌温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部及び熱交換器と接続され、前記温度検出部で検出された土壌温度に従い、前記熱交換器による温度制御を行う温度管理制御部と、
を備える植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項15】
請求項14に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、さらに、
育成対象の植物の種類毎に、育成に適した温度の範囲を記憶する記憶部を備えており、
前記温度管理制御部は、前記内鉢内の植物育成土壌に植えられた植物の種類に応じて、該当する育成温度の範囲内に土壌温度を維持するよう、前記熱交換器を制御してなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項16】
請求項1
0~1
5のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記内鉢内の植物育成土壌の土壌温度を、前記熱交換器でもって5℃~20℃に維持するよう制御してなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項17】
請求項1~1
6のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
前記内鉢又は外鉢が、信楽焼製である植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の植物育成土壌の加熱冷却装置であって、
ビニールハウス内に設置されてなる植物育成土壌の加熱冷却装置。
【請求項19】
植物育成土壌を加熱冷却する方法であって、
上面を開口し、多孔質の陶器で構成された内鉢に、
植物育成土壌を収納する工程と、
前記内鉢の開口面以外の周囲を、下面を開口した開口下面を形成した、前記内鉢よりも熱伝導率の低い外鉢で覆い、該外鉢の内面と前記内鉢の外面との間に温度管理空間を形成する工程と、
前記外鉢の下部を、中空で上面に把持開口を形成した台座部の該把持開口に載置して、
前記外鉢の側面を、前記台座部から露出させると共に、該外鉢の開口下面と連通させ、該外鉢内部の前記温度管理空間に温度管理された空気を供給する工程と、
を含む植物育成土壌の加熱冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育成土壌の加熱冷却装置及び加温冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の育成は、温度管理が重要である。このため植物育成用のビニールハウス内での植物の栽培が行われている。しかしながらビニールハウス内の温度制御は容易でない。一般にビニールハウスは面積も体積も大きいため、ビニールハウス内の温度を均一に維持すること容易でなく、ビニールハウスの内部空間を恒温状態とするために膨大なエネルギーを消費していた。
【0003】
また仮にビニールハウス内の気温を管理できても、植物の栽培においては種子を播種した土壌の温度が重要になるところ、土壌の温度を直接制御することは従来実現できておらず、あくまでも室内の空気温度の変化でもって制御するしかなかった。この場合、気温の変化と土壌温度の変化にはタイムラグがあるため、土壌の温度を正確に把握、制御することは容易でない。
【0004】
一方で、植物は種類によって育成に適した温度が異なる。同一のビニールハウス内で異なる種類の植物を育成するには、ビニールハウス内で個別に温度制御することが必要であるが、現状、そのようなシステムは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、植物を育成する土壌の温度の制御を容易に行えるようにした植物育成土壌の加熱冷却装置及び加温冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の第1の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上面を開口した有底の植物育成土壌を収納する内鉢であって、多孔質の陶器で構成された内鉢と、上下を開口して、前記内鉢の開口面以外を覆う外鉢であって、該外鉢の内面と前記内鉢の外面との間に温度管理空間を形成した、前記内鉢よりも熱伝導率の低い外鉢と、前記外鉢の下面を載置する把持開口を上面に形成し、該把持開口に該外鉢を載置して、該外鉢の開口下面と連通させ、該外鉢内部の前記温度管理空間に温度管理された空気を供給する中空の台座部とを備え、前記外鉢は、その下面を前記台座部の把持開口に載置した状態で、前記外鉢の側面を、前記台座部から表出させることができる。上記構成により、従来のビニールハウスのような植物の周囲の広い空間を加熱したり冷却したりする方式でなく、土壌を収容する容器の周囲に温度管理された空気を送り込むという部分的な冷却、加熱方式としたことで、温度管理に要するエネルギー消費量を極減し、極めて効率のよい低コストな植物育成が実現される。特に内鉢を多孔質の陶器として、通気性に優れ熱伝導性が高く、温度管理空間から内部に収容した土壌に高効率で伝熱して、土壌の温度管理を効率良く実現できる。
【0008】
また、本発明の第2の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記構成に加えて、前記内鉢が、多孔質である。上記構成により、内鉢に通気性を持たせて、内鉢の外気温と内部の温度差を低減し、熱伝導性を高めることにより、効率良く内鉢で保持する植物育成土壌を加熱あるいは冷却することができる。
【0009】
さらに、本発明の第3の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記外鉢の前記開口下面から上の前記温度管理空間の体積が、内鉢の体積の50%以下である。これにより、温度管理が必要な空間の体積を必要最小限とすることで、従来のビニールハウス内の空間全体を温度管理する方法に比べ、遙かに少ないエネルギー消費で効率のよい温度制御が実現できる。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記外鉢が、前記内鉢の外周の上部を保持し、該保持された部分の下方に、前記温度管理空間を形成することができる。上記構成により、外鉢を内鉢で物理的に保持しながら、外鉢の内面と内鉢の外面との間に温度管理空間を形成できる。
【0011】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記内鉢は、その高さ方向の50%以上を、前記台座部の上面から突出させることができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記外鉢が、外面に釉薬をかけた陶器である。上記構成により、外面に釉薬をかけて断熱性で温度管理空間の温度制御と防水性を発揮できる。
【0013】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記外鉢を、プラスチック製とできる。これにより、二重構造の外鉢を安価に実現できる。
【0014】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記台座部が、前記温度管理された空気を、前記温度管理空間に送風する送風ファンを備えることができる。上記構成により、送風ファンで温風等の温度調整した空気を温度管理空間に効率良く送出できる。
【0015】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記台座部が、前記把持開口を、上面に複数開口している。上記構成により、複数の把持開口で複数の外鉢をセット可能となり、一の台座部で複数個の外鉢を温度管理可能となり、効率のよい植物育成土壌の温度管理が実現される。
【0016】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記台座部の中空の空間に連通して熱結合された熱交換器を備えることができる。
【0017】
さらにまた、本発明の第11の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記熱交換器が、前記台座部の中空の空間内に配置されている。
【0018】
さらにまた、本発明の第12の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記台座部の中空の空間と、前記台座部の外部に配置された前記熱交換器とを連通するダクトを備えることができる。
【0019】
さらにまた、本発明の第13の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記熱交換器が、ボイラー、ヒートポンプ、ヒータである。
【0020】
さらにまた、本発明の第14の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記内鉢内の植物育成土壌の土壌温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部及び熱交換器と接続され、前記温度検出部で検出された土壌温度に従い、前記熱交換器による温度制御を行う温度管理制御部とを備えることができる。上記構成により、温度検出部で検出した土壌温度に基づいて温度管理制御部が熱交換器をフィードバック制御を行うことで、内鉢に植えられた植物の育成に適した精密な温度制御が実現できる。
【0021】
さらにまた、本発明の第15の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、さらに、育成対象の植物の種類毎に、育成に適した温度の範囲を記憶する記憶部を備えており、前記温度管理制御部は、前記内鉢内の植物育成土壌に植えられた植物の種類に応じて、該当する育成温度の範囲内に土壌温度を維持するよう、前記熱交換器を制御することができる。
【0022】
さらにまた、本発明の第16の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記内鉢内の植物育成土壌の土壌温度を、前記熱交換器でもって5℃~20℃に維持するよう制御することができる。
【0023】
さらにまた、本発明の第17の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記内鉢又は外鉢が、信楽焼製である。
【0024】
さらにまた、本発明の第18の側面に係る植物育成土壌の加熱冷却装置によれば、上記いずれかの構成に加えて、ビニールハウス内に設置されている。上記構成により、ビニールハウス内の全体の気温を外気温よりも高温や低温に制御せずとも、内鉢内の植物育成土壌の土壌温度を効率良く加温、冷却して、エネルギー消費量を抑制でき、化石燃料や電力消費を抑えてCO2を削減できる。
【0025】
さらにまた、本発明の第19の側面に係る植物育成土壌の加熱方法によれば、上面を開口し、多孔質の陶器で構成された内鉢に、植物育成土壌を収納する工程と、前記内鉢の開口面以外の周囲を、下面を開口した開口下面を形成した、前記内鉢よりも熱伝導率の低い外鉢で覆い、該外鉢の内面と前記内鉢の外面との間に温度管理空間を形成する工程と、前記外鉢の下部を、中空で上面に把持開口を形成した台座部の該把持開口に載置して、前記外鉢の側面を、前記台座部から露出させると共に、該外鉢の開口下面と連通させ、該外鉢内部の前記温度管理空間に温度管理された空気を供給する工程とを含むことができる。これにより、従来のビニールハウスのような植物の周囲の広い空間を加熱したり冷却したりする方式でなく、土壌を収容する容器の周囲に温度管理された空気を送り込むという部分的な冷却、加熱方式としたことで、温度管理に要するエネルギー消費量を極減し、極めて効率のよい低コストな植物育成が実現される。また植物育成土壌の表面からの放熱を制御して、植物の生長点を加温する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1の植物育成土壌の加熱冷却装置の分解斜視図である。
【
図3】変形例に係る植物育成土壌の加熱冷却装置の、断熱材を付加した外鉢と内鉢を示す分解斜視図である。
【
図4】
図1の植物育成土壌の加熱冷却装置の垂直断面図である。
【
図6】植物育成土壌の加熱冷却装置の熱交換器の一例を示す断面図である。
【
図7】変形例に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す断面図である。
【
図8】
図1の植物育成土壌で温度管理を行う様子を示す模式図である。
【
図9】実施形態2に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す断面図である。
【
図10】実施形態3に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す斜視図である。
【
図11】
図10の植物育成土壌の加熱冷却装置の断面図である。
【
図12】実施形態4に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す横断面図である。
【
図13】変形例に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を、家庭菜園に適用した例を示す模式図である。
【
図14】実施例1及び比較例1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す写真である。
【
図15】実施例1及び比較例1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置で測定した土壌温度、及び外気温度とヒータの温度を示すグラフである。
【
図16】実施例2及び3に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す写真である。
【
図17】実施例2及び3に係る植物育成土壌の加熱冷却装置で測定した土壌温度、及び外気温度とヒータの温度を示すグラフである。
【
図18】実施例4及び5に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す写真である。
【
図19】実施例4及び5に係る植物育成土壌の加熱冷却装置で測定した土壌温度、及び外気温度とヒータの温度を示すグラフである。
【
図20】実施例6及び比較例2に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す写真である。
【
図21】実施例6及び比較例2に係る植物育成土壌の加熱冷却装置で測定した土壌温度、及び外気温度とヒータの温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
【0028】
本発明の実施形態に係る植物育成土壌の加熱冷却装置は、屋外の例えば路地に設置され、あるいはビニールハウス内に設置されて使用される。実施形態1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を、
図1~
図8に示す。これらの図において、
図1は、本発明の実施形態1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置100を示す斜視図、
図2は、
図1の植物育成土壌の加熱冷却装置100の分解斜視図、
図3は変形例に係る植物育成土壌の加熱冷却装置の、断熱材を付加した外鉢と内鉢を示す分解斜視図、
図4は
図1の植物育成土壌の加熱冷却装置100の垂直断面図、
図5は
図4の内鉢10と外鉢20を示す拡大断面図、
図6は植物育成土壌の加熱冷却装置の熱交換器の一例を示す断面図、
図7は変形例に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を示す断面図、
図8は
図1の植物育成土壌SOで温度管理を行う様子を示す模式図を、それぞれ示している。これらの図に示す植物育成土壌の加熱冷却装置100は、内鉢10と、外鉢20と、台座部30を備える。
(内鉢10)
【0029】
内鉢10は、
図1~
図2に示すように、上面を開口した有底の筒状、あるいは多角形などの矩形状やプランター形状とする。好ましくは、後述する外鉢20に上方からセットし易いよう、下すぼみの形状とする。また底面には底穴を形成する。この内鉢10の内部に植物育成土壌SOを収納する。植物育成土壌SOは、育成したい植物に適した土壌とする。植物育成土壌SOに直接種を蒔く他、予め苗を植えていてもよい。育成対象の植物の育成に適した温度となるように、土壌を直接加熱、又は冷却する(詳細は後述)。
【0030】
この内鉢10は多孔質の陶器で構成される。また、内鉢10の厚さ方向における熱伝導率である第一熱伝導率は、0.9W/m・K以上、好ましくは1.0W/m・K~1.6W/m・K、より好ましくは1.1W/m・K~1.5W/m・Kとする。
【0031】
内鉢を、円形の鉢とする場合、そのサイズは、例えば内径10.9cm、深さ5.4cm、厚さ4mmとする。
【0032】
また内鉢を矩形状あるいはプランター状とする場合、そのサイズは例えば65cm×20cm×20cmで容量を15Lとする。
【0033】
内鉢10は、多孔質とすることが好ましい。これにより内鉢10に通気性を持たせて、内鉢10の外気温と内部の温度差を低減し、熱伝導性を高めることにより、効率良く内鉢10で保持する植物育成土壌SOを加熱あるいは冷却することができる。
(外鉢20)
【0034】
外鉢20は、上下を開口した筒状、あるいは多角形などの矩形状やプランター形状とする。この外鉢20は、筒状の内面では内鉢10の開口面以外の側面を覆えるよう、内鉢10の外形に沿った形状とし、かつ内鉢10よりも大きな内形に形成する。例えば内鉢10の外形に沿った内形に形成してもよい。また外鉢20で内鉢10の周囲を覆った状態で、外鉢20の内面と内鉢10の外面との間には、温度管理空間22が形成される。この外鉢20は、内鉢10の外周の上部を保持し、保持された部分の下方に、温度管理空間22を形成する。このような構成により、外鉢20を内鉢10で物理的に保持しながら、外鉢20の内面と内鉢10の外面との間に温度管理空間22を形成できる。
【0035】
また外鉢20の厚さ方向における熱伝導率である第二熱伝導率は、内鉢10よりも低くする。具体的な値として、1.6W/m・K以下、好ましくは1.0W/m・K~1.5W/m・K、より好ましくは1.2W/m・K~1.4W/m・Kとする。このように、内鉢10の熱伝導率を高めつつ、外鉢20の熱伝導率を抑えることで、温度管理空間22の熱を効率良く植物育成土壌SOに熱伝導させつつ、外部とは断熱して熱効率を高めることができる。
【0036】
また温度管理空間22の体積は、内鉢の体積の50%以下とすることが好ましい。具体的には50%以下、好ましくは50%~2%、より好ましくは40%~5%、最も好ましくは30%~10%とする。このように温度管理が必要な空間の体積を必要最小限とすることで、従来のビニールハウス内の空間全体を温度管理する方法に比べ、遙かに少ないエネルギー消費で効率のよい温度制御が実現できる。
【0037】
外鉢20は、断熱仕様で、培地重量に耐える強度を保持している。このような外鉢20は、外面に釉薬をかけた陶器とすることが好ましい。一般に陶器は2~12%程度の空孔率があり、通気性、透気性を有することから熱伝導性が発揮されるところ、釉薬をかけることによりこのような空孔を塞ぎ、断熱性を高めることができる。これにより、外面にかめた釉薬によって断熱性が発揮され、温度管理空間の温度制御と防水性を実現できる。特に外気に晒される外鉢20で断熱性を発揮することにより、熱エネルギーが外気によって失われることを低減し、効率良く内鉢10側に熱伝導が図られる。
【0038】
また外鉢20は、陶器の他、断熱性を有する素材、例えばプラスチック製としてもよい。特にプラスチック製の場合は、外鉢20の内面にアルミニウム、ポリエチレン膜等を設けて、断熱性能を向上させてもよい。
【0039】
好ましくは、内鉢10や外鉢20を、信楽焼で構成する。信楽焼の素地の細孔は微細な多孔質で、通気性により熱伝導が高く、内鉢10として好適である。また外鉢20に釉薬をかけることで断熱性を容易に付与できる。
(断熱材90)
【0040】
さらに、外鉢20には断熱材90を付加してもよい。断熱材90は、外鉢20の内面や外面に設けることができる。好ましくは、
図3の分解斜視図に示すように、外鉢20の内面に配置する。これにより、断熱材90を外鉢20の表面に貼付する等の固定の手間を省き、外鉢20の内面に断熱材90を重ねて、さらに内鉢10をセットすることで断熱材90を定位置に保持できる。このような断熱材90には、断熱性に優れた材質、例えばアルミニウム等の反射性に優れた金属をコーティングした発泡性シート等の空気層による断熱性を高めた素材が使用できる。
(台座部30)
【0041】
台座部30は、内部を空洞とし、その上面に、外鉢20の下面を載置する把持開口31を形成している。把持開口31は、上方から外鉢20を挿入して保持できるよう、外鉢20の下端よりも大きく、かつ上端よりも小さい内径とする。この把持開口31に外鉢20を載置して、外鉢20の開口下面21と連通させる。
図4、
図5に示すように、外鉢20の開口下面21から内鉢10の下面が表出されており、外鉢20内部の温度管理空間22に温度管理された空気を供給することができる。これにより、開口下面21を通じて内鉢10を下面から加熱、冷却することが可能となる。この結果、従来のハウス栽培のように、植物育成土壌の温度を直接加熱等することが困難であったところ、内鉢10の下面に直接、暖気を供給するなどして効率良く熱交換を行えるようにし、植物育成土壌の加熱等をより効率良く行えるようになる。
【0042】
内鉢10は、
図4に示すようにその底面を曲面状とすることが好ましい。これにより、内鉢10の底面から側面を連続して台座部30の内部空間に表出させて、内部空間との熱交換を効率良く行うことが可能となる。なお、内鉢10の底面を曲面とすると、内鉢10のみでは自立し難くなるため、外鉢20との組み合わせにより、二重鉢を自立させ易くしてハンドリング性を確保している。
【0043】
台座部30は、上面を平坦面とした箱形に形成される。また台座部30は、断熱性に優れた材質で構成する。例えば発泡スチロール製とすることで、安価で軽量でかつ入手が容易なため好ましい。
(熱交換器40)
【0044】
また植物育成土壌の加熱冷却装置100は、さらに熱交換器40を備える。熱交換器40は、台座部30の内部空間32に連通して熱結合されており、熱交換器40でもって内部空間32の温度を制御する。
図4の例では、熱交換器40が、台座部30の中空の空間内に配置されている。これにより、台座部30毎に温度を変更でき、この台座部30にセットされた内鉢10内の植物育成土壌SOの温度を所望の温度に調整できる。このような熱交換器40によって、台座部30の内部空間32の温度を調整し、台座部30の内部空間32と連通した温度管理空間22の温度制御によって
図5の拡大断面図に示すように内鉢10内の植物育成土壌SOの温度を管理する。
【0045】
この熱交換器40は、ボイラーやヒートポンプ、セラミックヒータ等で構成できる。ボイラーの燃料には、化石燃料や木質ペレットが利用できる。また熱交換器40は、加熱に限らず冷却にも利用できる。さらに熱交換用の冷媒として、空気等の気体の他、水や湯、オイル等の液体を用いてもよい。例えば台座部の内部空間に熱湯を蓄えて、ヒータ等で熱湯の温度を管理するよう構成してもよい。この場合は、台座部の内部空間を場所によらず均等に加熱するのに好適となる。
【0046】
熱交換器40に湯を用いる例を
図6の模式断面図に示す。この図に示すように、台座部30の下部に配置した水槽に水を張り、ヒータを浸漬させて水を加熱し、湯の温度を調整する。また湯の生成には太陽熱温水器を利用してもよく、これにより発熱のコストを削減できる。また湯の水面をビニールシート等の遮蔽材99で覆うことで湿気の伝搬を抑制できる。さらに水槽の上方に、送風ファン50を設置してもよい。
【0047】
このような構成により、従来のビニールハウスのような植物の周囲の広い空間を加熱したり冷却したりする方式でなく、土壌を収容する容器の周囲に温度管理された空気等の熱媒体を送り込むという部分的な冷却、加熱方式としたことで、温度管理に要するエネルギー消費量を極減し、極めて効率のよい低コストな植物育成が実現される。特に内鉢を多孔質の陶器として、通気性に優れ熱伝導性が高く、温度管理空間から内部に収容した土壌に高効率で伝熱して、土壌の温度管理を効率良く実現できる。
【0048】
熱交換器40は、台座部30の内部空間32の下部に設けることが好ましい。これにより、加熱した空気を熱対流で上方に配置した外鉢20の開口下面21から表出された内鉢10に対して、供給できる。また外鉢20の開口下面21から温度管理空間22に供給された空気は、熱溜まりを作るので、保温効果が一層高められる。ただ、熱交換器の配置位置は台座部の内部空間の下部に限定せず、例えば台座部の側面や天面に設けてもよい。例えば後述する
図9の例において、温度制御された空気を送出する第二ダクト44を、台座部30の任意の位置に配置できるように可搬式としてもよい。
(送風ファン50)
【0049】
また台座部30は、温度管理された空気を、温度管理空間22に送風する送風ファン50を備えてもよい。これにより、送風ファン50で温風等の温度調整した空気を温度管理空間22に効率良く送出できる。送風ファン50は、把持開口31の数や台座部30の内部空間32の大きさ、形状等に応じて、複数台設けてもよい。また
図4の例では温度管理された空気を上向きに送出するよう、送風ファン50を水平姿勢に設けているが、熱交換器を設ける位置等に応じて、垂直姿勢とした送風ファンを設けてもよい。例えば後述する
図9の例では、ダクト42の入口付近に送風ファン50Bを水平姿勢に設けており、熱交換器40Bが偏在して設けられた場合でも均一に内部空間32内に温度管理された空気を供給できる。送風ファン50を回転させることで、土壌表面からの放熱が促される。例えば、育成植物が苺の場合は成長点のクラウンを加温する効果が得られる。
[変形例]
【0050】
さらに植物育成土壌の加熱冷却装置は、ダクト42から送出される温風や冷風などの温度管理された冷媒を外鉢20の開口下面21に効率良く供給できるガイド機構を設けてもよい。このようなガイド機構を設けた例を変形例に係る植物育成土壌の加熱冷却装置100”として
図7に示す。この図に示すガイド機構は、排出穴を複数設けた第二ダクト44で構成している。第二ダクト44は、台座部30の内部空間32に配置される。第二ダクト44の一端はダクト42と連結され、送風ファン50が配置される。また第二ダクト44の他端は、閉塞されている。さらに第二ダクト44を内部空間32の底面に配置した状態で、各外鉢20の下方に第二ダクト44を這わせると共に、各外鉢20と重なる領域において、第二ダクト44に排出孔46を設ける。排出孔46は、微細な孔を多数、第二ダクト44に開口させる。このような構成により、温風や冷風などの温度管理された冷媒がガイド機構を通じて各外鉢20の開口下面21に直接供給され、効率良く外鉢20の底面から温度管理空間に温度管理された空気を供給できる。このような第二ダクト44は、例えば半透明のポリエチレン等、既存の袋体を利用できる。特に筒状のポリエチレン筒体は安価で入手が容易である上、他端を結ぶことで容易に閉塞できる。また折曲させることも容易で、さらに針などを使って排出孔46を穿孔することも容易である。
(温度管理制御部70)
【0051】
また
図8に示すように、植物育成土壌の加熱冷却装置100’は、温度検出部60と、温度管理制御部70を備えてもよい。温度検出部60は、内鉢10内の植物育成土壌SOの温度を検出する部材である。このような温度検出部60として、例えば熱電対や放射温度計などが利用できる。
【0052】
温度管理制御部70は、温度検出部60及び熱交換器40と電気的に接続されている。この温度管理制御部70は、温度検出部60で検出された土壌温度に従い、熱交換器40による温度制御を行う。具体的には、育成対象の植物に応じて、適切な育成温度を予め設定しておき、この育成温度となるように温度管理制御部70は温度検出で得た土壌温度に従って熱交換器40を制御するフィードバック制御を行う。例えば土壌温度が、設定された温度範囲よりも低い場合は、熱交換器40で加熱するよう制御し、逆に土壌温度が高い場合は、熱交換器40をOFF、又は冷却するように制御する。さらに送風ファン50の回転数を温度管理制御部70で制御するよう構成することもできる。このような温度管理制御部70は、汎用PC向けのCPUやMPU、GPU、TPU等のプロセッサや特定用途向けにカスタマイズされたLSIやFPGA、ASIC等のゲートアレイ、マイコン、あるいはSoC等のチップセットやパッケージ等で構成できる。
(記憶部80)
【0053】
さらに植物育成土壌の加熱冷却装置100は、記憶部80を備えてもよい。記憶部80は、育成対象の植物の種類毎に、育成に適した温度の範囲を記憶する。この場合、温度管理制御部70は、内鉢10内の植物育成土壌SOに植えられた植物の種類に応じて、該当する育成温度の範囲内に土壌温度を維持するよう、熱交換器40を制御する。
【0054】
加温による一例として、ハウス苺の高設栽培ベッドの土壌温度を7℃に維持して育成している例がある。このような土壌温度データを、予め記憶部80に保持しておき、実際に内鉢10に植えられた植物に応じて、温度管理制御部70が対応する情報を記憶部80から取得して、制御する温度範囲を設定するよう構成してもよい。例えば温度管理制御部70に表示部を接続し、育成植物を一覧表示させ、一覧表示された育成植物の候補群からユーザに選択させ、選択された育成植物の育成温度のデータを記憶部80から取得して、この育成温度の範囲内で温度制御をするように設定する。この方法であれば、ユーザは内鉢10に植えた育成植物を、表示される候補群から選択するだけで、適切な温度に管理することができるので、育成植物毎に異なる育成温度範囲を把握することなく、容易に適切な育成環境に設定できる。
【0055】
このような記憶部80は、HDDやSSD等のストレージ、あるいはSDカード(商品名)等の記録媒体が利用できる。また記憶部80は、温度管理制御部70と別部材で設ける他、温度管理制御部と一体で構成してもよい。なお記憶部は必須でなく、例えば温度管理制御部で温度範囲を数値等で直接指定する等して、温度範囲を個別に設定することも可能である。
【0056】
温度管理制御部70の操作は、コンソール等の操作盤を設けたり、マウスやキーボードのような入力デバイスを接続したりして物理的に行う他、無線で行うこともできる。例えばスマートフォン等の通信デバイスと無線接続して、スマートフォンにインストールしたアプリケーションソフト上から行うように構成してもよい。
【0057】
また内鉢10を覆った外鉢20を台座部30の上面にセットした状態で、内鉢10の高さ方向の50%以上が、台座部30の上面から突出させるようにすることが好ましい。これにより、外鉢20を安定的に保持でき、温度管理空間に熱だまりを作ることができる。
[実施形態2]
【0058】
以上の例では、台座部30の内部空間32に熱交換器40を配置する例を説明した。ただ本発明はこの構成に限られず、熱交換器を台座部の外部に配置してもよい。この構成であれば、一の熱交換器で複数の台座部の温度管理を実現できる。このような例を実施形態2に係る植物育成土壌の加熱冷却装置200として、
図9の断面図に示す。この図に示す植物育成土壌の加熱冷却装置200において、上述した実施形態1の植物育成土壌の加熱冷却装置100と同じ部材については、同じ符号を付して詳細説明を省略する。
【0059】
図9の植物育成土壌の加熱冷却装置200は、台座部30Bと熱交換器40Bとを連通するダクト42を備える。ダクト42を介して、台座部30Bの外部に配置された熱交換器40Bで温度管理された空気を、台座部30Bの内部空間32に供給し、もってこの台座部30Bにセットされた内鉢10内の植物育成土壌SOの温度を制御する。このようなダクト42は、放熱性に優れた材質で構成する。例えばポリエチレン等の樹脂製のダクトとする。ダクト42からの放熱により、台座部30Bの内部空間を加熱あるいは冷却する。またダクト42は、必要に応じて分岐させて、複数台の台座部に対して温度管理空間を供給することもできる。
[実施形態3]
【0060】
以上の実施形態1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置100では、台座部30の上面に、外鉢20をセットする把持開口31を2個形成した例を説明した。ただ本発明は、台座部に設ける把持開口の数を2個に限定せず、1個としてもよいし、3個以上としてもよい。また
図1の例では複数の把持開口31を一列に並べた例を示したが、複数列の把持開口をマトリックス状や千鳥状、円環状等、任意のパターンに配置してもよい。把持開口の数を多くすることで、一の台座部で温度管理できる植物育成土壌の数を多くすることができる。また、台座部ごとに異なる温度管理を行うことで、育成温度の異なる植物を同時に適温で育成することも可能となる。したがって、要求される植物の育成数や温度管理する単位などに応じて、把持開口31の数を設定する。
【0061】
一例として、4行×5列の計20個の把持開口31を設けた例を、実施形態3に係る植物育成土壌の加熱冷却装置300として
図10、
図11に示す。これらの図に示す植物育成土壌の加熱冷却装置300において、上述した実施形態1と同じ部材については、同じ符号を付して詳細説明を適宜省略する。
【0062】
この植物育成土壌の加熱冷却装置300は、内鉢10と、外鉢20と、台座部30Cを備える。この台座部30Cは、複数の外鉢20をセット可能な開口を、上面に複数開口している。これにより、一の台座部30Cで複数個の外鉢20を温度管理可能となり、効率のよい植物育成土壌SOの温度管理が実現される。
【0063】
また台座部30Cは、床面に直置きとする他、
図10に示すように脚部34を設けてもよい。これにより、台座部30Cの床面と設置面との間に空間を設けて、断熱性を高めることができる。また脚部34を長くして、農業従事者の作業性を高める効果も得られる。
[実施形態4]
【0064】
以上の例では、台座部30は、把持開口31に外鉢20を嵌入して保持する構成を説明した。ただ本発明は、外鉢を台座部で保持する構造を上記に限定しない。例えば、外鉢の下面を支持する支持部を設けてもよい。特に、プランターのような大型、あるいは重量のある内鉢を使用する場合は、支持部で外鉢や内鉢の底面を直接支持する構成とすることが好ましい。このような例を実施形態4に係る植物育成土壌の加熱冷却装置400として、
図12の横断面図に示す。この図に示す植物育成土壌の加熱冷却装置において、上述した実施形態1等と同様の部材については、同じ符号を付して詳細説明を適宜省略する。この図に示す植物育成土壌の加熱冷却装置400は、台座部30Dの内部空間32D内において、長手方向に沿って複数の支持棒36を渡している。複数の支持棒36はそれぞれ、把持開口31Dの下面に面するように、すなわち平面視において把持開口31Dと重なる位置に配置される。
図12の例では、プランター状に一方向(紙面に垂直な方向)に延長された内鉢10Dを被覆する外鉢20Dの下面を、3本の支持棒36で支持している。各支持棒36は、例えば台座部30Dの長手方向の端面に設けられた嵌合穴により支持される。このような構成により、重量のある内鉢であっても安定的に底面から支持することが可能となる。
【0065】
これらの植物育成土壌の加熱冷却装置は、路地に設置してもよいし、ビニールハウスのような外界と遮断された空間内に配置してもよい。温度管理されたビニールハウス内に設置する場合でも、例えば室内温度を加温するために多大なエネルギーを消費することなく、内鉢10と外鉢20の間の限られた温度管理空間22を加熱するのみで、適切な土壌温度に加熱することが可能となり、必要なエネルギー消費量を低減できる。
【0066】
また本発明の実施形態に係る植物育成土壌の加温冷却装置は、屋外での栽培以外に、ビニールハウス内での栽培にも適用できる。ビニールハウス内での栽培に本願発明を適用することで、ビニールハウス内の気温全体を育成対象の植物に応じて適温に調整せずとも、設置した対象の鉢のみについて温度制御を行うことで、エネルギー効率のよい育成が実現できる。さらに、農業従事者による野菜や果物、あるいは花卉類の栽培に限らず、例えば観光農園向けの作物の育成にも適用できる。さらにまた専門の農家に限らず、一般家庭向けの家庭菜園に適用することもできる。この際、戸建ての庭での家庭菜園のみならず、マンションやアパートのベランダや屋上等を利用したベランダ菜園にも適用できる。このような例を変形例に係る植物育成土壌の加熱冷却装置500として、
図13に示す。この図に示すベランダ菜園の例では、ベランダの既存の物干し台91や物干し竿92等を利用して、透明なビニール等のシート材93をかけた簡易的な温室を形成している。シート材93は、例えば2枚を物干し台91や物干し竿92に対し、それぞれコ字状にかけたものを縦横に交差させることで、簡易的に側面と上面を覆った温室を形成できる。またシート材93の固定は、市販のクリップや紐などを適宜利用できる。ここでは完全な密閉空間を要さず、簡易的にでも外部を仕切られた空間を形成すれば足りる。特に、温暖地であれば有利となる。このような外部空間と簡易的に隔離された温室内に、実施形態に係る植物育成土壌の加熱冷却装置を設置することで、外気に直接設置するよりも遙かに優れた育成環境を提供できる。加えて、植物育成土壌の加温冷却装置に熱交換器40Cを付加すれば、局所加温が可能となる。ここでは熱交換器40Cとして、室内のエアコンを利用している。すなわち、エアコンの送風口に接続したダクトを室外に引き出して、植物育成土壌の加温冷却装置に接続することで、安価に熱交換器40Cを構築できる。このような構成であれば、一般家庭でも大きな追加費用を要さず、家庭菜園を効率良く構築でき、CO
2を削減した効果的な植物育成を安価に利用できるようになる。
[加温試験]
【0067】
次に、本発明の有用性を確認すべく、植物育成土壌の加熱冷却装置の一例として、実施例に係る植物育成土壌の加熱装置を試作して、種まき培土の加熱を行う加温試験を行った。ここでは、植物育成土壌への太陽光による加温、夜間の風による培地表面の放熱、また降雨による影響を少なくするために、断熱なしの農業倉庫内に実施例に係る植物育成土壌の加熱装置を配置し、外気温と土壌温度を比較する試験を行った。なお外気温とは農業倉庫内の温度である。ここでは、外気温度よりも高い温度に植物育成土壌を加熱して、所望の温度範囲(ここでは設定温度30℃の温湯で土壌を加熱して25℃程度)に維持できるかを確認した。実験は徳島県徳島市国府町芝原字橋本11番地の特定非営利活動法人とくしま農大アグリの農場倉庫で行った。
[実施例1、比較例1]
【0068】
まず実施例1として、二重構造の鉢は株式会社しんにょ陶器の素焼(内径10cm、深さ13cm、厚さ4mm)の鉢を切断加工して外鉢(内径10cm、深さ7.5cm)とし、株式会社東洋セラミックスの有田焼で数ミクロンの穴を無数に持つ多孔質セラミックフィルター小を内鉢とした二重構造の鉢とした。一方、比較例に用いた一重構造の鉢は園芸栽培で一般的に使用される粘土を焼成して形成した駄温鉢の4号鉢(内径11.5cm、深さ5cm)を用いて、温度制御の精度を比較した。ここでは2021年4月23日16:03~4月26日14:33までの約3日間、植物育成土壌を実施例1、比較例1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置に入れて、土壌温度を測定した。ここでは、
図14の写真に示す一重構造の駄温鉢(左)と二重構造の鉢(右)と台座部30を用いて、加温試験を行った。ここでは、実施例1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置では、
図14において右側に示すように、外鉢として、内径10cm、深さ13cm、厚さ4mmの信楽焼の素焼きの陶器(白色)を用いた。また内鉢として、内径10cm、深さ5.5cm、厚さ3mmの株式会社東洋セラミックスの有田焼で数ミクロンの穴を無数に持つ多孔質セラミックフィルター小を用いた。有田焼の内鉢には野菜・花卉播種ソイルブロック専用培養土としてサカタ製スーパーミックスAPH調整剤・初期生育肥料を配合した播種から育苗用を、200cc投入した。
【0069】
また台座部30は、縦29cm、横43cm、高さ13cm、厚さ2cm、容積12177cm3の発泡スチロール製とした、この台座部30の上面にφ7.3cmの把持開口を2個開口し、それぞれの把持開口に実施例1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置の外鉢、及び比較例1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置の鉢をセットした。
【0070】
一方、比較例1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置では、
図14において左側に示すように、駄温鉢(4号鉢、内径11.5cm、深さ5cm)で陶器製の鉢(茶色)を使用した。比較例1では内鉢と外鉢の二重構造とせず、一重の鉢のみとした。その他は、実施例1と同じ条件としている。
【0071】
また熱交換器40は、
図6に示すように、台座部の下部に配置した縦37cm、横60cm、高さ27cmの水槽に35.5Lの水を張り、ヒータを浸漬させて水を加熱し、湯の温度を調整することで行った。ヒータは株式会社マルカン製観賞魚用サーモスタット シーバレックス300NEOを使用して湯温を30℃に設定した。湯の生成には、太陽熱温水器を利用することで加温コストを削減できる。また湯の水面をビニールシート等の遮蔽材99で覆うことで湿気の伝搬を抑制した。この水槽の上に、台座部30を載置した。水槽に台座部30を載置した状態で、水槽が露出する部分は発泡スチロール板で覆った。また台座部30には、水面から100mmの距離に送風ファン50を設けた。また内鉢の土壌に埋設した熱電対で土壌温度を、それぞれ測定した。この結果を、
図15のグラフに示す。このグラフは、実施例1及び比較例1に係る植物育成土壌の加熱冷却装置で測定した土壌温度、及び外気温度とヒータの温度を示すグラフである。
【0072】
図15に示すように、実施例1、比較例1のいずれも、外気温よりも高い温度に土壌温度を維持できることが確認された。特に実施例1に係る、信楽焼の素焼きの陶器を外鉢に用いた例では、比較例1に係る市販の駄温鉢よりも高い温度に維持できており、より温度制御特性に優れていることが確認された。また外気温度と加熱温度の波形に対し、実施例1の方がより加熱温度の波形に近い、言い換えると温度変化が少ない安定した波形を示し、比較例1の方が、外気温度の波形に近い温度変化を示す傾向が確認された。また一部の期間において、比較例1に係る土壌温度が実施例1よりも高くなる区間や、比較例1に係る土壌温度が外気温度を下回る区間が確認されているが、上述の通り比較例1の方が実施例1に比べて外気温度の変化に左右され易く、外気温度が急激に上昇、下降したために時間遅れが生じたものと推測される。
【0073】
また送風ファン50の有無による効果を確認するため、送風ファン50の回転をON/OFFさせた試験を行った。具体的には、
図15において累積時間1200分となるまでは送風ファン50をOFFとし、1200分の時点で送風ファン50をONし、以降は回転を継続させた。送風ファン50は口径110φ、回転数は2900rpm、風量2.9m
3/3minとした。
図15から明らかなとおり、実施例1、比較例1共、送風ファンを回転させることで、外気温から加熱温度に大きく近付くことが確認された。特に二重鉢の実施例1は、一重鉢の比較例1よりも温度が高く、加熱温度に近い状態に温度管理できること、いいかえると外気温度の影響を受けず植物育成土壌を安定的に加温できることが確認された。
【0074】
また植物育成土壌の加温装置は、培地の加温温度を高温にすることで土壌を消毒できるという利点も得られる。土壌に含まれる細菌を低減して土壌の健康状態を改善することで、農薬使用量の削減にもつなげられる。例えば土壌の健康状態を評価する土壌細菌の検査サービスが行われており、検査結果によっては土壌消毒が必要になることがある。このような場合に、予め植物育成土壌を実施形態に係る植物育成土壌の加熱装置で加熱することにより、植物育成土壌の健康状態を改善することが可能となる。
[実施例2、3]
【0075】
次に実施例2、3として、外鉢の材質に素焼きの陶器以外を用いて、温度制御の精度を比較した。ここでは2021年5月14日11:48~5月20日9:18までの約6日間、同じく植物育成土壌を実施例2、3に係る植物育成土壌の加熱冷却装置に入れて、土壌温度を測定した。ここでは、
図16に示すように、外鉢として、実施例2、3共、兼弥産業株式会社の4号プラスチック鉢の八角形底を直径7cmに切り開け、外側に株式会社大創産業の車フロントガラス日よけカバーシート(2mm厚のアルミフィルム、ポリエステル、ポリエチレン)を貼って断熱した。その鉢を積水化学 塩ビ製継ぎ手DVソケット100(内径11.5cm、深さ10.5cm、厚さ4mm)に容れて空気を遮断した。
【0076】
また内鉢として、実施例2では
図16の左に示すように、内径10.9cm、深さ5.4cm、厚さ4mmの信楽焼の素地の細孔を持つ鉢を用いた。実施例3では、
図16の右に示すように、実施例1と同じ内鉢の内径10cm、深さ5.5cm、厚さ3mmの株式会社東洋セラミックスの有田焼で数ミクロンの穴を無数に持つ多孔質セラミックフィルター小を用いた。
【0077】
これら実施例2、3に係る外鉢の内面にそれぞれ内鉢を挿入し、植物育成土壌を充填して、台座部30にそれぞれセットした。台座部30は、縦40cm、横47cm、高さ20cm、厚さ2cm、容積30780cm
3の発泡スチロール製とした、この台座部30の上面にφ11cmの把持開口を2個開口し、それぞれの把持開口に実施例2、3に係る植物育成土壌の加熱冷却装置の外鉢をセットした。さらに熱交換器40として実施例1と同じ水槽を用いて、この水槽の上に台座部30を載置し、水槽の露出面は同じく発泡スチロール板で覆った。この状態で外気温とヒータ温度、実施例2、3に係る内鉢の土壌温度を測定した結果を
図17のグラフに示す。この図から、外気温度が上記実施例とは異なっているため波形は異なるものの、外気温度に対して土壌温度を高い温度に維持できていることが確認された。また実施例2に係る信楽焼の方が、実施例3よりも高い温度に維持できていることが確認された。また実施例1と比較すると、同じ内鉢を使用しつつも、外鉢としてプラスチックを用いるよりも信楽焼の素焼きの方が、より高い温度に維持できる傾向にあることが確認された。
[実施例4、5]
【0078】
次に実施例4、5として、植物育成土壌の種類を変えて、温度制御の精度を比較した。ここでは2021年5月20日15:32~5月26日4:40までの約6日間、同じく植物育成土壌を実施例4、5に係る植物育成土壌の加熱冷却装置に入れて、土壌温度を測定した。ここでは、
図18に示すように、外鉢及び内鉢として、上記実施例2、3と同じものを使用した。すなわち、実施例4は
図18において左に示すように、内径10.9cm、深さ5.4cm、厚さ4mmの信楽焼の素地の細孔を持つ鉢を用いた。実施例5では、右に示すように、内径10cm、深さ5.5cm、厚さ3mmの株式会社東洋セラミックスの有田焼で数ミクロンの穴を無数に持つ多孔質セラミックフィルター小を用いた。
【0079】
さらに外鉢も、実施例2、3と同じく、4号プラスチック鉢の4号プラスチック鉢の八角形底を直径7cmに切り開け、外側に車フロントガラス日よけカバーシート(2mm厚のアルミフィルム、ポリエステル、ポリエチレン)を貼って断熱し、その鉢を内径11.5cm、深さ10.5cm、厚さ4mmの塩ビ製継ぎ手DVソケット100に容れて空気を遮断した。これらに対して、植物育成土壌を、上述した各実施例で用いたサカタ製スーパーミックスAに代えて、コーナン商事株式会社製家庭園芸用培養土「野菜と花の培養土」に変更した以外は、同じ条件で外気温と土壌温度を比較する試験を行った。なおサカタ製スーパーミックスAは、主に堆積年度の異なる黒ピートと白ピートの2つのピートをブレンドしている。黒ピートは、優れた保水力と、有機酸を含み養分に富んでいる。また白ピートには高い給水力と通気性により植物の生育時に必要な酸素を蓄えておく特徴を有している。また初期生育肥料を含んでいる。一方コーナン製野菜と花の培養土はピートモス、ココヤシ繊維、赤玉土、ボラ土、パーライト、鹿沼土、苦土石灰、バーミキューライト化成肥料、緩効性肥料弱酸性・化成肥料配合している。
【0080】
この結果を
図19のグラフに示す。この図に示すように、測定した期間中の日中の温度差が大きかったため波形は異なるものの、外気温度に対して実施例4、5のいずれも、外気温度に対して土壌温度を高い温度に維持できていることが確認された。また実施例4に係る信楽焼の方が、実施例5よりも高い温度に維持できていることが確認された。以上のように、植物育成土壌を変更しても同様に、土壌温度を外気温よりも高温に維持する温度制御が実現できていることが確認された。
[実施例6、比較例2]
【0081】
さらに内鉢10と外鉢20の厚さ方向の熱伝導率に差を設けることで、保温効果が高められることを実証すべく、実施例6、比較例2に係る植物育成土壌の加熱装置を作成して、その効果を確認した。具体的には実施例6として、二重構造の鉢は外鉢20に駄温鉢(内径23cm、深さ10cm、厚さ7mm)の底をφ12cm開口加工して外鉢とし、内鉢10に株式会社しんにょ陶器の信楽焼の素地の細孔を持つ鉢(内径30cm、深さ10cm、厚さ6mm)を内鉢とした二重構造の鉢とした。比較例2に用いた一重構造の鉢は外鉢20と同じ駄温鉢(内径23cm、深さ10cm、厚さ7mm)を用いた。ここでは上記実施例、比較例と同じく2022年1月13日10:54~1月15日10:54までの約3日間、植物育成土壌を実施例6、比較例2に係る植物育成土壌の加熱冷却装置に入れて、土壌温度を測定した。ここでは、
図20の写真において右側に示す実施例6に係る二重構造の鉢と、左側に示す比較例2に係る一重構造の鉢と台座部30を用いて、加温試験を行った。台座部30の上面にはφ11cmの把持開口31を2個開口した。この実施例6では
図3の分解斜視図に示すように、外鉢20の内面に断熱材90を配置した。一方で比較例2では断熱材90を使用しなかった。断熱材90には、プラスチックシートの片面にアルミニウムをコーティングした株式会社ユタカメイク製の保温・保冷シートを用いた。この結果を
図21に示す。
【0082】
図21は実施例6及び比較例2に係る植物育成土壌の加熱冷却装置で測定した土壌温度、及び外気温度とヒータの温度を示すグラフを示している。この図に示すように、実施例6の方が比較例2よりも概ね2~3℃、高い温度に加熱されていることが確認できた。これにより、内鉢10の無数の微孔で通気性を高めて内鉢10の厚さ方向の熱伝導率を高めた結果、台座部30の内部空間の加温空気が効率良く熱伝導されているためと思われる。加えて、外鉢20に断熱材90を適用して熱伝導率を抑え、熱が外部に奪われることを抑制して保温性を高めたことで、相乗効果が得られたとも捉えられる。
【0083】
なお、以上の例では外気温度よりも高い温度に植物育成土壌を加熱する温度制御について説明したが、逆に外気温度よりも低い温度に植物育成土壌を冷却することも可能である。この場合は熱交換器として、ヒータに代えてペルチェ素子やヒートポンプ等を利用できる。
【0084】
以上のように実施形態に係る植物育成土壌の加熱冷却装置は、熱伝導率を異ならせた内鉢と外鉢の二重鉢を使用し、かつ中空の台座部で温度管理された空気を供給することで、植物育成土壌を効率良く温度制御することが可能となり、従来のようなビニールハウス内の大容積空間の空調に要していた大量のエネルギー消費を抑制し、CO2削減に寄与し得る。また農家にとっても、普段使いの駄温鉢やプラスチック鉢を二重鉢で置き換えることで、土壌の局地加温を実現できる。特に鉢の培地加温を一鉢から実現できるので、少ない人手で山菜の早出し栽培や、マンゴーの完熟栽培等、利益率のよい栽培を複数種類展開し易くなる。また二重鉢にはプランターのようなサイズの大きい鉢も利用でき、さらに必要に応じて台座部を連結すれば温度制御対象の鉢数を増やすことも容易に行える。これにより、ビニールハウス内で消費する燃料代を低減して、少ない資本でも高付加価値の農業運営を実現し易くなり、高齢化の進む農業の経営にも資することが期待できる。
【0085】
加えて、一般家庭でも例えばマンションなどで家庭菜園を行う際、植物育成土壌の加熱冷却装置と二重鉢をベランダ等の狭いスペースでも設置できる。また局所加温、局所冷却の熱交換器として家庭用のエアコンを利用すれば、設備投資も少なく、効率の良い観葉植物の育成や家庭菜園を実現できる利点も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の植物育成土壌の加熱冷却装置及び加温冷却方法は、イチゴやマンゴーなどの熱帯果実や、野菜や山菜。あるいはエディブルフラワーや花卉、ハーブなどの加温栽培や、出荷時期の調整用途に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0087】
100、100’、100”、200、300、400、500…植物育成土壌の加熱冷却装置
10…内鉢
20…外鉢
21…開口下面
22…温度管理空間
30、30B、30C、30D…台座部
31…把持開口
32…内部空間
34…脚部
36…支持棒
40、40B、40C…熱交換器
42…ダクト
44…第二ダクト
46…排出孔
50、50B…送風ファン
60…温度検出部
70…温度管理制御部
80…記憶部
90…断熱材
91…物干し台
92…物干し竿
93…シート材
99…遮蔽材
SO…植物育成土壌
【要約】
【課題】植物を育成する土壌の温度の制御を容易に行えるようにする。
【解決手段】植物育成土壌の加熱冷却装置100は、上面を開口した有底の植物育成土壌SOを収納する内鉢10であって、多孔質の陶器で構成された内鉢10と、上下を開口して、内鉢10の開口面以外を覆う外鉢20であって、該外鉢20の内面と内鉢10の外面との間に温度管理空間22を形成した、内鉢10よりも熱伝導率の低い外鉢20と、外鉢20の下面を載置する把持開口31を上面に形成し、該把持開口31に該外鉢20を載置して、該外鉢20の開口下面21と連通させ、該外鉢20内部の温度管理空間22に温度管理された空気を供給する中空の台座部30とを備える。
【選択図】
図2