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  • 特許-変位拡大装置及び測定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】変位拡大装置及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
G01B5/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022141002
(22)【出願日】2022-09-05
【審査請求日】2022-09-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591227398
【氏名又は名称】有限会社テクノ菅谷
(74)【代理人】
【識別番号】100142136
【弁理士】
【氏名又は名称】深澤 潔
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 日出夫
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特公平08-012067(JP,B2)
【文献】特開平01-141315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された変位を拡大して出力する変位拡大装置であって、
平板状の本体を備え、
該本体が、基体と、前記本体の一部が柱状に溝彫り加工されて前記本体の端部から中心部に向かって伸びるとともに前記基体に対して可動に形成された入力端と、前記本体の一部が柱状に溝彫り加工されて前記基体に対して可動に形成されるとともに前記入力端の伸びる方向に対して略鉛直方向に平行に配されたテコ部と、を備え、
前記テコ部が、一端側に回動中心となる第一支点が配され、前記入力端からの前記変位が入力される第一作用点を挟んで一端側から他端側に伸びる第一テコ部と、
一端側に回動中心となる第二支点が配され、前記第一テコ部によって拡大された前記変位が入力される第二作用点を挟んで出力端が配された他端側へ一端側から伸びる第二テコ部と、
を備え、
前記入力端の伸びる方向を第一方向、前記テコ部の延びる方向を第二方向としたとき、前記第一作用点及び前記第二作用点が前記第一方向に向けて配されるとともに、前記第二方向に並設された円状切欠部及び長円状切欠部に挟まれて中央が最も細い鼓形状に形成され、
前記第一支点が前記第二方向に前記長円状切欠部を挟んで前記第一作用点と対向するとともに前記第一方向に向けて配され、前記第二方向に並設された長円状切欠部及び三日月状切欠部に挟まれて前記第一作用点側を中心とした円弧弓状に形成され、
前記第二支点が前記第二方向に長円状切欠部を挟んで前記第二作用点と対向するとともに前記第一方向に向けて配され、前記第二方向に並設された長円状切欠部及び三日月状切欠部に挟まれて前記第二作用点側を中心とした円弧弓状に形成された変位拡大装置。
【請求項2】
変位拡大装置によって拡大された変位を計測する変位測定装置であって、
前記変位拡大装置が、請求項1に記載の変位拡大装置である変位測定装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位拡大装置及び変位測定装置並びに変位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小変位をテコの原理を応用して連続的に拡大する変位拡大装置として弾性基板に溝彫り加工して支点、作用点、テコを連続的に溝彫りして形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この変位拡大装置は、第一テコ5、第二テコ6、第3テコ7が平行配置で形成されていると共に、第一テコ5の第一柱状支点A1、第一柱状作用点B1、第二テコ6の第二柱状支点A2、第二柱状作用点B2、第3テコ7の第3柱状支点A3第3柱状作用点B3が加工され、更に第一柱状支点A1、第一柱状作用点B1、第二柱状支点A2、第二柱状作用点B2、第3柱状支点A3、第3柱状作用点B3が一体に加工されている。
【0004】
また、上記各柱状支点及び柱状作用点は、夫々のテコの基部において、テコに対して直角方向に配置され、更に各柱状支点及び柱状作用点は、中央が最も細くなるように両サイドが円弧状にカットされた鼓形状を呈し、かつ各柱状支点と各柱状作用点は並列に配置されている。また、各テコはすべて平行に配置され、第一テコ5の先端は第二柱状作用点B2と連結され、第二テコ6の先端は第3テコ7の第3柱状作用点B3と連結されている。
【0005】
この変位拡大装置によれば、入力端2に入力された変位量をテコの原理により第3テコ7の先端まで拡大することができ、拡大された変位量を検出することで高精度に変位量を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平08-012067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年多発する巨大地震に対応するために研究者から広いダイナミックレンジを求められているのに対して、上記従来の変位拡大装置では変位の拡大率に制約があり、要求を満足することが困難になっている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、変位の拡大率のさらなる向上とスムーズな応答が得られる変位拡大装置及び変位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る変位拡大装置は、入力された変位を拡大して出力する変位拡大装置であって、平板状の本体を備え、該本体が、基体と、前記本体の一部が柱状に溝彫り加工されて前記本体の端部から中心部に向かって伸びるとともに前記基体に対して可動に形成された入力端と、前記本体の一部が柱状に溝彫り加工されて前記基体に対して可動に形成されるとともに前記入力端の伸びる方向に対して略鉛直方向に平行に配されたテコ部と、を備え、前記テコ部が、一端側に回動中心となる第一支点が配され、前記入力端からの前記変位が入力される第一作用点を挟んで一端側から他端側に伸びる第一テコ部と、一端側に回動中心となる第二支点が配され、前記第一テコ部によって拡大された前記変位が入力される第二作用点を挟んで出力端が配された他端側へ一端側から伸びる第二テコ部と、を備え、前記入力端の伸びる方向を第一方向、前記テコ部の延びる方向を第二方向としたとき、前記第一作用点及び前記第二作用点が前記第一方向に向けて配されるとともに、前記第二方向に並設された円状切欠部及び長円状切欠部に挟まれて中央が最も細い鼓形状に形成され、前記第一支点が前記第二方向に前記長円状切欠部を挟んで前記第一作用点と対向するとともに前記第一方向に向けて配され、前記第二方向に並設された長円状切欠部及び三日月状切欠部に挟まれて前記第一作用点側を中心とした円弧弓状に形成され、前記第二支点が前記第二方向に長円状切欠部を挟んで前記第二作用点と対向するとともに前記第一方向に向けて配され、前記第二方向に並設された長円状切欠部及び三日月状切欠部に挟まれて前記第二作用点側を中心とした円弧弓状に形成されている。
【0011】
また、本発明に係る変位測定装置は、変位拡大装置によって拡大された変位を計測する変位測定装置であって、前記変位拡大装置が、本発明に係る変位拡大装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変位の拡大率のさらなる向上と変位測定に際してスムーズな応答を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る変位拡大装置の概要を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る変位測定装置を示す(a)一部側面図(b)一部正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る変位測定装置への変位拡大装置の(a)搭載前(b)搭載後を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る変位拡大装置の作用を示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る変位測定装置による測定方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る一実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
本実施形態に係る変位拡大装置10は、入力された変位を拡大して出力する変位拡大装置であって、略円板状の本体11を備える。この本体11は、ベースとなる基体12と、測定すべき変位が入力される入力端13と、入力端13に入力された変位を拡大して出力するテコ部15と、を備える。
【0017】
入力端13は、本体11の一部が柱状に溝彫り加工されて本体11の端部から中心部Cに向かう軸線CL方向(第一方向)に伸びるとともに基体12に対して可動に形成されている。テコ部15は、本体11の一部が柱状に溝彫り加工されて基体12に対して可動に形成され、軸線CL方向に対して略鉛直の軸線CR方向(第二方向)に平行に配されている。
【0018】
テコ部15は、軸線CL方向の変位をテコの原理を利用して拡大するもので、一端側に回動中心となる第一支点16が配され、入力端13からの変位が入力される第一作用点17を挟んで一端側から他端側に伸びる第一テコ部18と、一端側に回動中心となる中間支点20が配され、第一テコ部18によって拡大された変位が入力される中間作用点21を挟んで一端側から他端側に伸びる中間テコ部22と、一端側に回動中心となる第二支点23が配され、第一テコ部18及び中間テコ部22によって拡大された変位が入力される第二作用点25を挟んで出力端26が配された他端側へ一端側から伸びる第二テコ部27と、を備える。出力端26には、変位を電気信号に変換する不図示の変位計が接続される。
【0019】
第一作用点17は、入力端13と第一テコ部18との接続領域に、中間作用点21は第一テコ部18と中間テコ部22との接続領域に、第二作用点25は、中間テコ部22と第二テコ部27との接続領域にそれぞれ軸線CL方向に向けて配される。第一作用点17、第二作用点25、及び中間作用点21は、軸線CR方向に並設された2つの円状切欠部28Aに挟まれて中央が最も細い鼓形状に形成されている。
【0020】
第一支点16は、軸線CR方向に長円状切欠部28Bを挟んで第一作用点17と対向するとともに軸線CL方向に向けて配され、軸線CR方向に並設された長円状切欠部28B及び三日月状切欠部28Cに挟まれて第一作用点17側を中心とした円弧弓状に形成されている。中間支点20は、軸線CR方向に長円状切欠部28Bを挟んで中間作用点21と対向するとともに軸線CL方向に向けて配され、軸線CR方向に並設された長円状切欠部28B及び三日月状切欠部28Cに挟まれて中間作用点21側を中心とした円弧弓状に形成されている。第二支点23は、軸線CR方向に長円状切欠部28Bを挟んで第二作用点25と対向するとともに軸線CL方向に向けて配され、軸線CR方向に並設された長円状切欠部28B及び三日月状切欠部28Cに挟まれて第二作用点25側を中心とした円弧弓状に形成されている。
【0021】
変位拡大装置10が載置される変位測定装置30は、中心軸線C1を有する円筒状の感受体31と、中心軸線C1側に突出して感受体31に配された第一棚部32及び第二棚部33と、変位拡大装置10の入力端13と接離可能に配されて第一棚部32に載置された入力端13を押圧する加圧部35と、加圧部35を駆動する駆動機構36と、を備え、重力方向が中心軸線C1方向となるよう地中の所定位置に埋設される。埋設されることによって感受体31と地中との相対移動が規制され、感受体31が地中を伝播する変位を変位拡大装置10に伝えることになる。
【0022】
第一棚部32は、入力端13の先端側のみが載置される大きさに形成されている。第二棚部33は、中心軸線C1を挟んで第一棚部32に対向するとともに中心軸線C1側に突出して感受体31に配されている。この第二棚部33は、変位拡大装置10の本体11の中心部Cを挟んで反対側となる基体12の取付穴34の近傍のみが固定される大きさに形成されている。
【0023】
加圧部35は、凹部37が配され入力端13が凹部37に挿入された状態で第一棚部32に固定される門型の加圧本体38と、凹部37内に配されて一端が加圧本体38に回動自在に接続され他端にて入力端13を押圧する押さえヒンジ40と、押さえヒンジ40の他端側を中心軸線C1方向に押圧する加圧コマ41と、を備える。駆動機構36は、加圧コマ41を中心軸線C1方向に移動する駆動源42を備える。
【0024】
次に、本実施形態に係る変位拡大装置10及び変位拡大装置10が搭載された変位測定装置30の作用について変位測定方法とともに説明する。
【0025】
まず、準備工程(S01)では、変位拡大装置10を変位測定装置30に取り付ける。準備工程(S01)は、基体固定工程(S011)と、入力端固定工程(S012)と、埋設工程(S013)と、を備える。基体固定工程(S011)では、変位拡大装置10の入力端13を第一棚部32に載置するとともに、取付穴34を第二棚部33に不図示のボルトで固定して第二棚部33を介して基体12を感受体31に固定する。
【0026】
入力端固定工程(S012)では、加圧本体38の凹部37内に押さえヒンジ40及び加圧コマ41が挿入された状態で加圧本体38を第一棚部32に固定して第一棚部32を介して加圧本体38を感受体31に固定する。そして、駆動機構36によって加圧コマ41を中心軸線C1方向に移動して押さえヒンジ40を一端側を回転中心として回動させる。これによって、押さえヒンジ40の他端側にて入力端13を第一棚部32を介して感受体31に押圧固定する。こうして埋設工程(S013)にて変位測定装置30を地中の所定位置に埋設して測定工程(S02)へ移行する。
【0027】
測定工程(S02)では、地震等によって感受体31に変位が生じたとき、入力端13から入力された変位が変位拡大装置10で拡大されて出力端26から出力される。
【0028】
すなわち、入力端13から入力された軸線CL方向の変位は第一作用点17に伝わり、第一作用点17が軸線CL方向に長さX移動する。このとき、第一テコ部18は、第一支点16を回動中心として角度β分回転しようとするとともに、第一作用点17が第一支点16に対して距離σ分軸線CR方向に移動しようとする。この際、第一支点16が円弧弓状に形成されているので、鼓形状に形成された場合に比べて弾性変形しやすくなっている。そして、第一支点16と第一作用点17とが同一方向に並んで配されているため、角度β及び距離σが第一支点16に吸収される。こうして長さX分の変位が、第一支点16から第一作用点17までの距離と第一支点16から中間作用点21までの距離との比率に応じて拡大されて中間作用点21に出力される。
【0029】
中間テコ部22も第一テコ部18と同様の形状となっている。そのため、第一テコ部18と同様の作用によって中間テコ部22では、中間作用点21に入力された変位が中間支点20から中間作用点21までの距離と中間支点20から第二作用点25までの距離との比率に応じて拡大されて第二作用点25に出力される。第二テコ部27も第一テコ部18と同様の形状となっている。そのため、第一テコ部18と同様の作用によって第二テコ部27では、第二作用点25に入力された変位が第二支点23から第二作用点25までの距離と第二支点23から出力端26までの距離との比率に応じて拡大されて出力端26から出力される。
【0030】
こうして出力端26から出力された変位を不図示の変位計が検知して電気信号として出力することによって、軸線CL方向の変位を計測する。ただし、時間の経過とともに感受体31や変位拡大装置10に変位が蓄積されて飽和してしまう。そこで、所定時間経過後、リセット工程(S03)に移行して変位拡大装置10に蓄積された変位を解放する。
【0031】
リセット工程(S03)は、入力端解放工程(S031)と、入力端再固定工程(S032)と、を備える。入力端解放工程(S031)では、駆動機構36によって加圧コマ41を中心軸線C1方向に移動して、押さえヒンジ40の他端側を入力端13から離間して第一棚部32への押圧固定状態を解除する。この際、変位拡大装置10は、基体12に対して入力端13が軸線CL方向に移動自在となるので、各テコ部18,22,26が元の形状に戻ろうとして蓄積された変位が解放される。
【0032】
その後、入力端再固定工程(S032)に移行する。入力端再固定工程(S032)は、入力端固定工程(S012)と同様の作業を行う。こうして再び変位計測が可能になる。
【0033】
この変位拡大装置10によれば、各支点16,20,23の形状が円弧弓状に形成されている。このことから、従来よりも各支点を弾性変形しやすくさせて各テコ部の回転や軸線CR方向の移動をより好適に吸収することができ、各作用点17,21,25における軸線CL方向の変位量を拡大することができる。
【0034】
また、この変位測定装置30によれば、押さえヒンジ40が入力端13のみを第一棚部32に押圧するので、感受体31から入力される変位を入力端13のみから入力させることができ、高精度の測定を可能にする。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 変位拡大装置
11 本体
12 基体
13 入力端
15 テコ部
16 第一支点
17 第一作用点
18 第一テコ部
20 中間支点
21 中間作用点
22 中間テコ部
23 第二支点
25 第二作用点
26 出力端
27 第二テコ部
28A 円状切欠部
28B 長円状切欠部
28C 三日月状切欠部
30 変位測定装置
31 感受体
32 第一棚部
33 第二棚部
35 加圧部
36 駆動機構
C 中心部
C1 中心軸線
CL 軸線(第一方向)
CR 軸線(第二方向)
【要約】
【課題】変位の拡大率を向上した変位拡大装置及び変位測定装置並びに変位測定方法を提供すること。
【解決手段】変位拡大装置10は、第一作用点17及び第二作用点25が軸線CL方向に向けて配されるとともに、軸線CR方向に並設された円状切欠部28A及び長円状切欠部28Bに挟まれて中央が最も細い鼓形状に形成され、第一支点16が軸線CR方向に長円状切欠部28Bを挟んで第一作用点17と対向するとともに軸線CL方向に向けて配され、軸線CR方向に並設された長円状切欠部28B及び三日月状切欠部28Cに挟まれて第一作用点17側を中心とした円弧弓状に形成され、第二支点23が軸線CR方向に長円状切欠部28Bを挟んで第二作用点25と対向するとともに軸線CL方向に向けて配され、軸線CR方向に並設された長円状切欠部28B及び三日月状切欠部28Cに挟まれて第二作用点25側を中心とした円弧弓状に形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5