(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】ワイヤソー
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20230227BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230227BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20230227BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230227BHJP
B28D 5/04 20060101ALN20230227BHJP
B28D 1/08 20060101ALN20230227BHJP
【FI】
B24B27/06 Z
B24B41/06 A
B28D7/04
H01L21/304 611W
B28D5/04 C
B28D1/08
(21)【出願番号】P 2019068297
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久雄
(72)【発明者】
【氏名】村井 史朗
(72)【発明者】
【氏名】河津 知之
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-276172(JP,A)
【文献】特開平07-308917(JP,A)
【文献】特開平10-199833(JP,A)
【文献】実開平05-029654(JP,U)
【文献】特開2000-117580(JP,A)
【文献】米国特許第5222854(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B24B 41/06
B28D 7/04
H01L 21/304
B28D 5/04
B28D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを、ワイヤによってワークを切断する加工位置と、
前記ワークの交換が行われるワーク交換位置との間で移動させるワーク送り機構を備えたワイヤソーであって、
前記ワーク送り機構は、前記ワークを取り付けるワーク治具と、
前記ワーク治具に設けられたリンクと、
前記リンクの一端側に回動自在に連結された第1アームと、
前記リンクの他端側に回動自在に連結された第2アームと、
前記第1アーム及び前記第2アー
ムを回動させる駆動手段と、を備え、
前記第1アームと前記第2アームと前記リンクとは、リンク機構を構成し、
前記リンクと前記ワーク治具とは、前記リンク機構が変位しても垂直状態が維持されている
ことを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
ワークを、ワイヤによってワークを切断する加工位置と、
前記ワークの交換が行われるワーク交換位置との間で移動させるワーク送り機構を備えたワイヤソーであって、
前記ワーク送り機構は、モータによって回転駆動される駆動歯車と、
前記駆動歯車の回転によって駆動される第1従動歯車及び第2従動歯車と、
前記第1従動歯車の回転によって回動される第1アームと、
前記第2従動歯車の回転によって回動される第2アームと、
前記第1アームの先端部と前記第2アームの先端部とを回動自在に連結したリンクと、
前記リンクに設けられ、前記ワークを取り付けるワーク治具と、を備え、
前記第1アームと前記第2アームと前記リンクとは、リンク機構を構成し、
前記リンクと前記ワーク治具とは、前記リンク機構が変位しても垂直状態が維持されている
ことを特徴とするワイヤソー。
【請求項3】
前記リンクは、常に垂直状態に配置され、
前記第1アームと前記第2アームと前記リンクとは、平行四辺形の平行クランク機構を形成するように配置されて、
前記ワーク治具は、常に前記リンクの下側または上側に垂直状態に配置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤソー。
【請求項4】
前記第1従動歯車と前記第2従動歯車とは、それぞれ前記駆動歯車に噛合されると共に、互いに上下方向に離間して配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤソー。
【請求項5】
前記第1アームと前記第2アームとは、それぞれ同じ長さの左右一対の部材から成り、
左右一対の前記第1アームは、左右一対の前記第2アームの軸方向内側に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のワイヤソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク送り機構を備えたワイヤソーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体材料や磁性材料等のワークをワイヤで切断するワイヤソーは、ワークの加工が行われる加工位置と、ワークの着脱が行われるワーク交換位置と、にワークを送るワーク送り機構(ワーク支持装置)を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤソーのワーク支持装置では、機台に設けられた回転駆動手段と、回転駆動手段によって回動するスイングアームと、スイングアームの先端に設置されてワークを保持するワークホルダと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のワイヤソーのワーク支持装置では、スイングアームによってワークを移動させると、ワークの姿勢が、取り付け位置・取り外し位置のときの姿勢と、切断位置のときの姿勢と、で大きく(180°)変化する。このため、ワーク(ウエハ)は、切断後に取り付け位置・取り外し位置へ移動中に、割れることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題点を解決して、ワークを加工位置とワーク交換位置とに移動させた際に、ワークの姿勢を変化させずに割れないように移動させることができるワイヤソーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ワークを、ワイヤによってワークを切断する加工位置と、前記ワークの交換が行われるワーク交換位置との間で移動させるワーク送り機構を備えたワイヤソーであって、前記ワーク送り機構は、前記ワークを取り付けるワーク治具と、前記ワーク治具に設けられたリンクと、前記リンクの一端側に回動自在に連結された第1アームと、前記リンクの他端側に回動自在に連結された第2アームと、前記第1アーム及び前記第2アームを回動させる駆動手段と、を備え、前記第1アームと前記第2アームと前記リンクとは、リンク機構を構成し、前記リンクと前記ワーク治具とは、前記リンク機構が変位しても垂直状態が維持されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、ワークを、ワイヤによってワークを切断する加工位置と、前記ワークの交換が行われるワーク交換位置との間で移動させるワーク送り機構を備えたワイヤソーであって、前記ワーク送り機構は、モータによって回転駆動される駆動歯車と、前記駆動歯車の回転によって駆動される第1従動歯車及び第2従動歯車と、前記第1従動歯車の回転によって回動される第1アームと、前記第2従動歯車の回転によって回動される第2アームと、前記第1アームの先端部と前記第2アームの先端部とを回動自在に連結したリンクと、前記リンクに設けられ、前記ワークを取り付けるワーク治具と、を備え、前記第1アームと前記第2アームと前記リンクとは、リンク機構を構成し、前記リンクと前記ワーク治具とは、前記リンク機構が変位しても垂直状態が維持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ワークを加工位置とワーク交換位置とに移動させた際に、ワークの姿勢を変化させずに割れないように移動させることができるワイヤソーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るワイヤソーを示す図であり、(a)はワークをワーク交換位置に配置したときの状態を示す要部概略斜視図、(b)は、ワークをワーク加工位置に配置するときの状態を示す要部概略斜視図である。
【
図2】ワーク送り機構を示す要部概略拡大側面図である。
【
図3】ワーク送り機構を示す要部概略拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るワイヤソーを
図1~
図3を参照して説明する。
本実施形態において、
図1に示す仮置台11がある方向を前(F)、仮置台11の後方向を後(B)、鉛直上方側を上(U)、鉛直下方側を下(D)、図面左方向を左(L)、図面右方向を右(R)として適宜説明する。
【0012】
まず、ワイヤソー1を説明する前に、ワイヤソー1に使用されるワークWについて説明する。
また、ワイヤソー1は、
図3に示すように、略左右対称に形成されているため、適宜その一方を説明して他方の説明を省略する。
【0013】
<ワーク>
図1に示すように、ワークWは、半導体材料、磁性材料、セラミック等の硬脆材料から成る。ワークWは、ワイヤソー1に配置された加工装置3(
図2参照)のワイヤ33に押し当てることで切削して切断される。
【0014】
<ワイヤソー>
図2に示すワイヤソー1は、加工装置3のワイヤ33によってワークWを切断する切断装置である。
図1に示すように、ワイヤソー1は、仮置台11と、基台12と、支持部13と、クランプ装置2と、加工装置3と、ワーク送り機構4と、を主に備えて構成されている。
【0015】
<仮置台>
仮置台11は、未加工のワークWを載置面に直接触れないように仮置きしたり、加工完了後のワークWを載置面に直接触れないように載置したりするための載置台である。仮置台11は、ワイヤソー1の加工室外の前側に配置されている。
【0016】
<クランプ装置>
図3に示すように、クランプ装置2は、加工装置3でワークWを加工する際に、加工室に搬入された未加工のワークWをクランプするための保持機構である。つまり、クランプ装置2は、加工室外のワーク交換位置P2に搬送された未加工のワークWをクランプしてから、そのワークWを加工室の加工位置P1に搬入して加工装置3のワイヤ33に押し当てて加工し、加工完了後のワークWをワーク交換位置P2でアンクランプさせるまで、ワークWを保持する。
【0017】
クランプ装置2は、複数のクランプ部材25と、複数(例えば、4つ)のクランプ部材25を保持したワーク保持部材26と、備えている。
【0018】
ワークWの上面には、ガラスプレート21、金属プレート22を介在して金属製のワーク治具23が着脱可能にボルト締めされている。ワーク治具23の上面には、複数の被クランプ部材(図示省略)が設けられている。
【0019】
ワーク治具23は、ワークWの上面に取り付けられて、ワークWを上側から保持するための部材である。ワーク治具23は、
図2に示すように、ワーク送り機構4が前後方向に回動することによって、加工位置P1とワーク交換位置P2との間を往復移動可能に配置されている。
【0020】
図3に示すように、ワーク保持部材26は、加工用ローラ31,32(
図2参照)間に掛装されたワイヤ33の上方において、クランプ装置2の下端にボルト締めされて、ワーク送り機構4によって移動(昇降)可能に配置されている。ワーク保持部材26の下面には、被クランプ部材(図示省略)に係合及び離間可能な複数のクランプ部材25が取り付けられている。
【0021】
<ワーク送り機構>
図2に示すように、ワーク送り機構4は、ワークWを、ワイヤ33によってワークWを切断する加工位置P1と、加工済のワークWと未加工のワークWとの交換が行われるワーク交換位置P2と、の間を移動させるための移送装置である。また、ワーク送り機構4は、ワーク交換位置P2側に配置されたワークWを加工位置P1に搬入する搬入装置と、加工完了後のワークWを加工位置P1からワーク交換位置P2に搬出させる搬出装置と、の機能を果たす。さらに、ワーク送り機構4は、ワークWを加工する際に、ワークWを昇降させる昇降装置の機能も果たす。
【0022】
ワーク送り機構4は、モータ(図示省略)と、駆動歯車41と、第1従動歯車42と、第2従動歯車43と、第1アーム44と、第2アーム45と、リンク46と、ワーク治具23と、をそれぞれ左右一対に配置して構成されている。
【0023】
モータ(図示省略)は、駆動歯車41を回転駆動させて、第1従動歯車42及び第2従動歯車43を介在して第1アーム44及び第2アーム45を揺動させるための駆動源である。モータ(図示省略)には、駆動歯車41に噛合して駆動歯車41を回転駆動させるロータ歯車(図示省略)が設けられている。モータ(図示省略)は、不図示の制御装置を介して電源に接続されている。
【0024】
図2に示すように、駆動歯車41は、そのモータによって回転駆動される歯車である。駆動歯車41、第1従動歯車42及び第2従動歯車43は、支持部13に設けられた歯車設置部14に回転自在に軸支されている。
【0025】
第1従動歯車42と第2従動歯車43とは、それぞれ駆動歯車41に噛合して駆動歯車41によって同回転される。第1従動歯車42と第2従動歯車43とは、互いに上下方向に長さL1離間して歯車設置部14に配置されている。
図3に示すように、第1従動歯車42は、第1アーム44に連結されて一体に回動する。また、第2従動歯車43は、第2アーム45に連結されて一体に回動する。このため、リンク機構から成るワーク送り機構4において、歯車設置部14は、
図2に示すように、固定リンクの役目を果たす。
【0026】
第1アーム44は、第1従動歯車42の軸部42aを中心として回動可能に配置されたリンク部材から成る。第2アーム45は、第2従動歯車43の軸部43aを中心として回動可能に配置されたリンク部材である。リンク46は、第2アーム45の先端部と、第1アーム44の先端部と、ワーク保持部材26とを回動自在に連結したリンク部材である。第1アーム44の基端部と、第2アーム45の基端部とは、上下方向に長さL1離間している。第1アーム44と第2アーム45とは、それぞれ同じ長さの左右一対の部材から成る。その左右一対の第1アーム44は、左右一対の第2アーム45の軸方向内側に配置されている(
図3参照)。
【0027】
第1アーム44の先端部の連結軸44aと、第2アーム45の先端部の連結軸45aと
は、上下方向に長さL2離間してリンク46に回動自在に軸支されている。長さL1は、長さL2と同じ長さである。第1アーム44と、第2アーム45とは、平行に配置され、上方向に回動したときに、側面視して互いに重ねるように配置されている。つまり、ワーク送り機構4において、歯車設置部14と、第1アーム44と、第2アーム45と、リンク46とは、長方形(平行四辺形)の平行クランク機構を形成する。その結果、リンク46と、リンク46にクランプ装置2を介在して連結されたワーク治具23(ワークW)とは、ワーク送り機構4が変位しても、常に垂直状態に配置された状態が維持されている。
【0028】
図3に示すように、ワーク治具23は、ワークWを、左右一対のリンク46の下端部に設けられたクランプ装置2に取り付けるための治具である。ワーク治具23は、上端がリンク46の下端に設けられたクランプ装置2のクランプ部材25に連結されて、下端部がワークWの上端にガラスプレート21及び金属プレート22を介在して取り付けられている。
【0029】
このため、ワークWは、
図2に示すように、ワーク送り機構4によってリンク46が加工位置P1に移動したときは、リンク46と共に加工位置P1に搬送され、リンク46がワーク交換位置P2に移動したときは、リンク46と共にワーク交換位置P2に搬送される。
【0030】
<加工装置>
図2に示すように、加工装置3は、クランプ装置2にクランプされた未加工のワークWを加工する切削機構である。加工装置3は、適宜な間隔で水平方向に対向配置された一対の加工用ローラ31,32と、加工用ローラ31と加工用ローラ32とに巻き掛けられたワイヤ33と、加工用ローラ31,32を回転駆動させる駆動モータ(図示省略)と、を備えて成る。加工装置3は、基台12上のコラムに設けられている。
【0031】
図2または
図3に示すように、加工中の加工装置3の上方において、リンク46には、ワークWを支持するクランプ装置2がワーク送り機構4によって回動可能(昇降可能)に配置されている。ワークWは、加工用ローラ31,32の軸線方向に沿って並設された複数のものから成る(添付図面では、省略して1つのみ記載している)。そして、ワイヤソー1の運転時には、ワイヤ33が加工用ローラ31,32間で走行されて、クランプ装置2で保持されたワークWが、ワーク送り機構4によって加工装置3に向かって回動(下降)されてワイヤ33に押し付けられることで切断される。
【0032】
加工用ローラ32,32は、駆動モータ(図示省略)によって回転されることで、ワイヤ33を加工用ローラ32,33間だけ走行させるように構成されている。加工用ローラ32,33は、少なくとも一対であればよく、相互間隔をおいて平行に配置される構成であれば、3本以上でもよい。
【0033】
ワイヤ33は、例えば、1本の線材によって構成された加工用ワイヤである。ワイヤ33は、加工用ローラ32,33によって、一定量前進及び一定量後退を繰り返して、全体として歩進的に前進し、または、一方向に連続して前進するように駆動される。
【0034】
図1に示す基台12の上方は、加工装置3等を覆う加工室カバー(図示省略)が配置されている。その加工室カバー(図示省略)には、シャッタ(図示省略)が開閉可能に配設されている。ワークWが加工位置P1に搬入されて切断加工が行われるとき、シャッタ(図示省略))が閉じられて、加工位置P1の空間とワーク交換位置P2の空間とが遮断されるように構成されている。
【0035】
[作用]
次に、本発明の実施形態に係るワイヤソー1の作用を、
図1~
図3を参照して説明する。
【0036】
図2に示すように、加工済のワークWが加工室(加工位置P1)にある場合は、そのワークWをワーク送り機構4によってワーク交換位置P2に搬送する。その後、クランプ装置2から加工済のワークWを取り外し、未加工のワークWをクランプ装置2に取り付ける(ワーク着脱工程)。
【0037】
次に、未加工のワークWをワーク送り機構4によってワーク交換位置P2から加工室内の加工位置P1に搬入する(搬入工程)。続いて、加工室カバー(図示省略)を閉めて、未加工のワークWをワーク送り機構4で昇降させることで、加工装置3のワイヤ33に押し当ててワークWを切削加工する(加工工程)。これにより、ワークWは、所定の厚さに切断される。
【0038】
そして、加工が完了したら、加工済のワークWをワーク送り機構4によってワーク交換位置P2に搬送する(搬出工程)。
以上のワーク着脱工程から搬出工程を繰り返して、ワークWを順次に加工して生産する。
【0039】
このように、本発明は、
図2に示すように、ワークWを、ワイヤ33によってワークWを切断する加工位置P1と、ワークWの交換が行われるワーク交換位置P2との間で移動させるワーク送り機構4を備えたワイヤソー1であって、ワーク送り機構4は、モータ(図示省略)によって回転駆動される駆動歯車41と、駆動歯車41の回転によって駆動される第1従動歯車42及び第2従動歯車43と、第1従動歯車42の回転によって回動される第1アーム44と、第2従動歯車43の回転によって回動される第2アーム45と、第1アーム44の先端部と第2アーム45の先端部とを回動自在に連結したリンク46と、リンク46に設けられ、ワークWを取り付けるワーク治具23と、を備え、第1アーム44と第2アーム45とリンク46とは、リンク機構を構成し、リンク46とワーク治具23とは、リンク機構が変位しても垂直状態が維持されている。
【0040】
これにより、ワーク送り機構4は、駆動歯車41と、第1従動歯車42及び第2従動歯車43と、第1アーム44と、第2アーム45と、リンク46と、リンク46に設けられるワーク治具23と、を備えて成ることで、構造を簡素化して部品点数を削減することができる。
また、第1アーム44と第2アーム45とリンク46とが、リンク機構を構成し、リンク46とワーク治具23とが、リンク機構が変位しても垂直状態が維持されていることで、ワークWを加工位置P1とワーク交換位置P2とに移動させた際に、ワークWの姿勢を変化させずに移動させることができるため、ウエハが割れないように移動させることができる。
【0041】
また、ワーク治具23は、第1従動歯車42で回動される第1アーム44と、第2従動歯車43で回動される第2アーム45と、を回動自在に連結したリンク46に回動自在に連結されているので、2本のアームでワークWを支えることができる。このため、第1アーム44及び第2アーム45が回動した際に、ワークWの姿勢が反転しない。
【0042】
また、
図2に示すように、リンク46は、常に垂直状態に配置され、第1アーム44と第2アーム45とリンク46とは、平行四辺形の平行クランク機構を形成するように配置されて、ワーク治具23は、常にリンク46の下側または上側に垂直状態に配置されている。
【0043】
これにより、第1アーム44と第2アーム45とリンク46とは、平行四辺形の平行クランク機構を構成していることで、リンク46に設けたワークWを第1アーム44と第2アーム45との二本で支えながら搬送することができるため、搬送時のブレを抑制することができる。その結果、ワーク送り精度(真直性)及び加工精度を向上させることができる。
また、リンク46とワーク治具23とは、リンク機構の第1アーム44及び第2アーム45が変位しても、下側または上側に垂直状態を維持することができるので、ワークWの姿勢を変えずに(下方向または下方向を向いままの状態で)搬送させることができる。このため、ワイヤソー1は、搬送時にワークWの姿勢が変位するワーク送り装置と比較して、装置全体の高さをワークWの高さ分だけ低くすることができるので、装置の重量及び設置エリアの低減を図ることができる。
【0044】
また、第1従動歯車42と第2従動歯車43とは、それぞれ駆動歯車41に噛合されると共に、互いに上下方向に離間して配置されている。
【0045】
これにより、第1従動歯車42と第2従動歯車43とは、同じ駆動歯車41に噛合されていることで、第1アーム44と第2アーム45とを同じ状態に回動させることができる。また、第1従動歯車42と第2従動歯車43とは、上下方向に離間して配置されていることで、離間している分だけ固定リンク間の長さが長くなるため、回動時の状態を安定化させてブレを解消することができる。
【0046】
また、第1アーム44と第2アーム45とは、それぞれ同じ長さの左右一対の部材から成り、左右一対の第1アーム44は、左右一対の第2アーム45の軸方向内側に配置されている。
【0047】
これにより、第1アーム44と第2アーム45とは、同じ長さに形成されていることで、ワーク送り機構4が変位しても、第1アーム44と第2アーム45とを連結したリンク46の姿勢を常に同じ状態にすることができる。
また、左右一対の第1アーム44は、左右一対の第2アーム45の軸方向内側に配置されていることで、ワーク送り機構4が変位しても、正面視してリンク46及びワークWの姿勢を常に同じ状態にすることができる。
【0048】
[第1変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0049】
前記実施形態では、ワーク送り機構4を駆動させる駆動手段の一例として、モータ(図示省略)と、モータによって回転駆動される駆動歯車41と、駆動歯車41によって駆動される第1従動歯車42及び第2従動歯車43と、を備えたものを例に挙げて説明したがこれに限定されるものではない。
ワーク送り機構4の駆動手段は、第1アーム44または第2アーム45を回動させるものであればよい。
【0050】
例えば、本発明は、
図2に示すワークWを、ワイヤ33によってワークWを切断する加工位置P1と、ワークWの交換が行われるワーク交換位置P2との間で移動させるワーク送り機構4を備えたワイヤソー1であって、ワーク送り機構4は、ワークWを取り付けるワーク治具23と、ワーク治具23に回動自在に設けられリンク46と、リンク46の一端側に回動自在に連結された第1アーム44と、リンク46の他端側に回動自在に連結された第2アーム45と、第1アーム44及び第2アーム45の少なくとも一方を回動させる駆動手段(図示省略)と、を備え、第1アーム44と第2アーム45とリンク46とは、リンク機構を構成し、リンク46とワーク治具23とは、リンク機構が変位しても垂直状態が維持されているものであってもよい。
【0051】
これにより、ワイヤソー1は、未加工のワークWを加工位置P1に搬入し、加工後のワークWを加工位置P1からワーク交換位置P2に搬出させるワーク送り機構4を備えていることで、ワークWを搬入出させているときのワイヤソー1の停止及び中断している時間を削減することができるため、装置の稼働率を向上させることができる。
また、ワーク送り機構4は、駆動手段と、第1アーム44と、第2アーム45と、リンク46と、リンク46に設けられたワーク治具23と、を備えて成ることで、構造を簡素化して部品点数を削減することができる。
また、ワーク治具23は、第1アーム44と、第2アーム45と、を回動自在に連結したリンク46に回動自在に連結されているので、2本のアームでワークWを支えることができる。このため、第1アーム44及び第2アーム45が回動した際のブレを解消することができるため、高精度なワーク送り精度を確保することができる。
また、第1アーム44と第2アーム45とリンク46とが、リンク機構を構成し、リンク46とワーク治具23とが、リンク機構が変位しても垂直状態が維持されていることで、ワークWを加工位置P1とワーク交換位置P2とに移動させた際に、ワークWの姿勢を変化させずに移動させることができるため、ウエハが割れないように移動させることができる。
【0052】
[第2変形例]
また、前記実施形態では、
図2に示すように、駆動歯車41と、第1従動歯車42と、第2従動歯車43と、を備えた場合を例に挙げて説明したが、駆動歯車41と、第1従動歯車42と、第2従動歯車43とはなくてもよい。
この場合は、第1アーム44の連結軸44a、または、第2アーム45の連結軸45aに、モータ装置(図示省略)の軸を直結させて、モータ装置(図示省略)によってリンク機構の第1アーム44、または、第2アーム45を直接回動させることで、リンク機構全体を駆動するようにさせてもよい。
このようにすることで、さらに、部品点数及び部品組付工数を削減して、コストダウンを図ることができる。
【0053】
[その他の変形例]
例えば、前記実施形態で説明したモータと、第1従動歯車42と、第2従動歯車43とから成る電動歯車機構は、第1アーム44と、第2アーム45とを回動させることが可能な装置であればよく、これに限定されるものではない。その電動歯車機構は、例えば、油圧または空気圧の流体圧を生成する圧力源(図示省略)と、流体圧が供給されるシリンダと、シリンダに供給された流体圧で作動するピストンロッドと、ピストンロッドに連結されて揺動する第1アーム44及び第2アーム45と、を備えたものであってもよい。つまり、電動歯車機構は、第1アーム44及び第2アーム45を振り子運動させる駆動手段であればよい。
【0054】
また、その電動歯車機構は、第1アーム44及び第2アーム45を、電動モータと、ラックアンドピニオン機構あるいはウォーム・ホイール等の歯車機構を使用したものであってもよい。
【0055】
その他、モータと、第1従動歯車42と、第2従動歯車43とから成る電動歯車機構は、モータと、モータによって回転駆動されるチェーンまたはベルトと、チェーンまたはベルトによって回転駆動される第1従動車または第2従動車と、を備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ワイヤソー
2 クランプ装置
3 加工装置
4 ワーク送り機構
23 ワーク治具
33 ワイヤ
41 駆動歯車
42 第1従動歯車
43 第2従動歯車
44 第1アーム
45 第2アーム
46 リンク
P1 加工位置
P2 ワーク交換位置
W ワーク