(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】ペースト用溶剤組成物、ビヒクル、導電性ペースト、および誘電体ペースト
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230227BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20230227BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20230227BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230227BHJP
C09D 101/00 20060101ALI20230227BHJP
C09D 129/14 20060101ALI20230227BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230227BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230227BHJP
H01B 3/00 20060101ALI20230227BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230227BHJP
C07C 13/18 20060101ALN20230227BHJP
C07C 13/19 20060101ALN20230227BHJP
C07C 13/20 20060101ALN20230227BHJP
C07C 69/68 20060101ALN20230227BHJP
【FI】
H01G4/30 515
C09D5/24
C09D7/20
C09D7/61
C09D101/00
C09D129/14
C09D133/00
H01B1/22 A
H01B3/00 A
H01G4/30 201D
H01G4/30 201L
H01G4/30 516
H05K1/03 610B
C07C13/18
C07C13/19
C07C13/20
C07C69/68
(21)【出願番号】P 2018088734
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000117319
【氏名又は名称】ヤスハラケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【氏名又は名称】白井 重隆
(72)【発明者】
【氏名】本田 絵里
(72)【発明者】
【氏名】高田 茂人
(72)【発明者】
【氏名】道田 実
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-105827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0173917(US,A1)
【文献】国際公開第2014/057846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00-4/224
H01G 4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
H01B 1/00-1/24
H01B 3/00-3/14
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層セラミック部品の製造に使用されるペースト用溶剤組成物、
およびバインダー樹脂を含有するビヒクルであって、
ペースト用溶剤組成物が(A)ヒドロキシモノカルボン酸エステルおよび(B)テルペン系炭化水素を含有
し、
(A)成分が乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチルから選択される1種または2種以上であり、(B)成分がα-ピネン、β-ピネン、パラメンタンから選択される1種または2種以上である、
ビヒクル。
【請求項2】
(B)成分が、(A)及び(B)の合計100重量部に対して5~90重量部である、請求項1に記載の
ビヒクル。
【請求項3】
バインダー樹脂がセルロース系樹脂、ブチラール樹脂、またはアクリル系樹脂を含有する請求項
1または2記載のビヒクル。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれかに記載のビヒクル、および導電性粉末を含有する導電性ペースト。
【請求項5】
請求項
1~3のいずれかに記載のビヒクル、および誘電体粉末を含有する誘電体ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ、多層セラミック基板などの多層セラミック部品を製造する際に使用される、導電性ペーストや誘電体ペースト用の溶剤組成物、このペースト用溶剤組成物にバインダー樹脂を配合したビヒクル、さらにこのビヒクルに導電性粉末または誘電体粉末を配合したペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多層セラミック部品は、キャリアフィルム上にドクターブレード法などにより誘電体ペーストを塗布してセラミックグリーンシートを形成し、そのシート上に導電性ペーストを印刷することで内部電極を形成後、得られたシートを数十から数百層積み重ね同時焼成して得られるセラミック積層体に、外部電極を塗布、焼き付け加工して得られる。
【0003】
誘電体ペーストは、通常、セラミック誘電体粉末にポリビニルブチラール樹脂などのバインダー樹脂およびエタノールなどの有機溶剤を加え混合したものが使用される。また、導電性ペーストは、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどの金属粉末などの導電性材料を、エチルセルロース樹脂などのバインダー樹脂を溶剤に溶解した有機ビヒクルに分散させたものが使用される。
【0004】
近年、各種情報機器の小型化、薄型化、高機能化に伴い、多層セラミック部品も更なる小型化、高容量化が求められており、積層1層当たりの厚みを薄くし、積層数を増やすことが行なわれている。しかしながら、従来、各ペーストの印刷に適用されてきたスクリーン印刷法では、薄膜状の内部電極や誘電体層を形成することが困難であるため、グラビア印刷法の適用が種々検討されている。
【0005】
グラビア印刷法のような高速印刷の場合、溶剤の乾燥速度がスクリーン印刷で求められる乾燥速度より速くなければならない。また、グラビア印刷に適用される導電性ペーストに含まれる金属粉末は粒径が小さく、比表面積が広くなるため、ターピネオールなどの既存の溶剤を使用した場合、導電性ペーストの粘度が高くなりすぎ、内部電極の薄層化が困難となる場合がある。従って、沸点および粘度が比較的低い導電性ペースト用溶剤の開発が求められている。
【0006】
例えば、特許文献1には、溶剤としてジヒドロキシテレフタル酸とオイカリプトールを含有する導電性ペーストが開示されている。この導電性ペーストは、溶剤の沸点が比較的低いため乾燥速度が速く、しかも低粘度特性を有するため、グラビア印刷に適用した場合、電気的接続性に優れた内部電極を形成できるとされている。しかしながら、溶剤の乾燥性と粘度特性のバランスが充分でなく、更なる改善が必要であった。
【0007】
さらに、誘電体ペーストについても、セラミックグリーンシートの薄層化に伴い、粒径が小さい誘電体粉末が使用されるようになってきており、導電性ペーストの場合と同様に比較的低沸点かつ低粘度の溶剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電気的特性劣化の発生しない多層セラミック部品を製造するための、蒸発乾燥が容易で、かつ適度な粘度特性を備えたペースト用溶剤、それを利用したビヒクル、導電性ペースト、および誘電体ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の請求項1~8から構成される。
<請求項1>
多層セラミック部品の製造に使用されるペースト用の溶剤組成物であって、(A)ヒドロキシモノカルボン酸エステル、および(B)テルペン系炭化水素を含有するペースト用溶剤組成物。
<請求項2>
(A)成分が乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸オクチル、乳酸2-エチルヘキシル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸n-プロピル、グリコール酸イソプロピル、グリコール酸n-ブチル、グリコール酸イソブチル、グリコール酸ペンチル、グリコール酸ヘキシル、グリコール酸オクチル、およびグリコール酸2-エチルヘキシルから選択される1種または2種以上である請求項1に記載のペースト用溶剤組成物。
<請求項3>
(B)成分がα-ピネン、β-ピネン、ピナン、3-カレン、カラン、カンフェン、フェンチェン、ジペンテン、リモネン、α-テルピネン、γ-テルピネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、テルピノレン、1-パラメンテン、パラメンタン、パラサイメン、サビネン、ミルセン、ジヒドロミルセン、アロオシメン、および2,6-ジメチルオクタンから選択される1種または2種以上である請求項1または2のいずれかに記載のペースト用溶剤組成物。
<請求項4>
(B)成分が、(A)及び(B)の合計100重量部に対して5~90重量部である、請求項1~3のいずれかに記載のペースト用溶剤組成物。
<請求項5>
請求項1~4のいずれかに記載のペースト用溶剤組成物、およびバインダー樹脂を含有するビヒクル。
<請求項6>
バインダー樹脂がセルロース系樹脂、ブチラール樹脂、およびアクリル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項5記載のビヒクル。
<請求項7>
請求項5または6記載のビヒクル、および導電性粉末を含有する導電性ペースト。
<請求項8>
請求項5または6記載のビヒクル、および誘電体粉末を含有する誘電体ペースト。
【発明の効果】
【0011】
本発明のペースト用溶剤組成物は、従来のペースト用溶剤と比較して低沸点かつ低粘度であるので、その溶剤組成物を使用したビヒクルならびにペーストはグラビア印刷に適用可能であり、電気的特性の劣化の発生しない多層セラミック部品を製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ペースト用溶剤組成物>
本発明の多層セラミック部品の製造に使用されるペースト用溶剤組成物は、(A)ヒドロキシカルボン酸エステルと(B)テルペン系炭化水素とを含む。ここで、(A)、(B)それぞれの成分について、以下に説明する。
【0013】
<(A)ヒドロキシカルボン酸エステル>
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルは、分子内にヒドロキシル基とカルボキシル基を併せ持つヒドロキシカルボン酸と、アルコールとの縮合反応で得られる化合物である。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸などが挙げられるが、好ましくは乳酸である。また、アルコールは、炭素数1~10の1価アルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0014】
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルは、公知の方法で製造でき特に制限されるものではないが、例えば、ヒドロキシカルボン酸とアルコールの脱水縮合反応、ヒドロキシカルボン酸エステルとアルコールとのエステル交換反応などで得ることができる。
【0015】
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルの常圧における沸点は、50℃以上、250℃以下であり、好ましくは80℃以上、200℃以下の範囲である。沸点が50℃未満では、溶剤の乾燥速度が速すぎ、ペーストの安定性が悪化する場合があり、250℃を超えると、溶剤の乾燥速度が遅すぎ、残存した溶剤が焼成時にシートアタック現象を起こしたり、印刷精度が悪化したりする場合があり好ましくない。
【0016】
本発明のヒドロキシカルボン酸エステルの具体例としては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸オクチル、乳酸2-エチルヘキシル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸n-プロピル、グリコール酸イソプロピル、グリコール酸n-ブチル、グリコール酸イソブチル、グリコール酸ペンチル、グリコール酸ヘキシル、グリコール酸オクチル、グリコール酸2-エチルヘキシル、などが挙げられるが、入手のしやすさから乳酸エチルが好ましい。
【0017】
<(B)テルペン系炭化水素>
本発明のテルペン系炭化水素は、(C5H8)nの分子式で表わされるイソプレン則に基づく化合物のうち、n=2のモノテルペン炭化水素化合物である。ただし、化合物の不飽和度に特に制限はなく、化合物中の多重結合が水素化されていてもよいし、芳香環を含有していてもよい。
【0018】
本発明のテルペン系炭化水素の常圧における沸点は、50℃以上、250℃以下であり、好ましくは100℃以上、200℃以下の範囲である。沸点が50℃未満では、溶剤の乾燥速度が速すぎ、ペーストの安定性が悪化する場合があり、250℃を超えると、溶剤の乾燥速度が遅すぎ、残存した溶剤により電気的特性を損なう場合があり好ましくない。
【0019】
本発明のテルペン系炭化水素の具体例としては、α-ピネン、β-ピネン、ピナン、3-カレン、カラン、カンフェン、フェンチェン、ジペンテン、リモネン、α-テルピネン、γ-テルピネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、テルピノレン、1-パラメンテン、パラメンタン、パラサイメン、サビネン、ミルセン、ジヒドロミルセン、アロオシメン、2,6-ジメチルオクタンなどが挙げられ、これらを単独または2種以上併用して使用することができる。
【0020】
本発明の(A)ヒドロキシカルボン酸エステルと(B)テルペン系炭化水素の混合割合に特に制限はないが、好ましくは(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して(B)が5~90重量部であり、さらに好ましくは10~70重量部である。(B)が5重量部未満であると、得られるペーストの粘度と乾燥速度のバランスが充分でなかったり、シートアタック現象を起こしたりする場合がある。一方、90重量部を超えると溶剤組成物へのバインダー樹脂の溶解性が低下し、ペーストの粘度が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0021】
また、本発明の溶剤組成物中には、必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤、通常、導電性ペーストや誘電体ペーストに用いられる他の溶剤を含有させてもよい。通常、導電性ペーストや誘電体ペーストに用いられる他の溶剤としては、テルピネオール、水素添加テルピネオール、水素添加テルピネオールアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルカルボン酸エステル類、ノピルアセテートなどのテルペン系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、トルエンなどの炭化水素系溶剤、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールなどのアルコール系溶剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
<ビヒクル、導電性ペースト、誘電体ペースト>
次に、本発明のビヒクル、導電性ペーストおよび誘電体ペーストについて説明する。
本発明のビヒクルは、本発明の溶剤組成物にバインダー樹脂を溶解して得られるものである。また、本発明の導電性ペーストは、金属電極層に相当するもので、本発明のビヒクル中に、導電性粉末を分散させたものである。また、本発明の誘電体ペーストは、誘電体層に相当するもので、本発明のビヒクル中に、誘電体粉末を分散させたものである。
【0023】
バインダー樹脂としては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂や、ポリビニルブチラールなどのアセタール系樹脂、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどを重合して得られるアクリル系樹脂などが使用される。導電性ペースト用のバインダー樹脂としては、エチルセルロースが好ましく、誘電体ペースト用のバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラールが好ましい。
【0024】
ビヒクルは、溶剤組成物とバインダー樹脂を主成分とし、ビヒクル中の溶剤組成物の割合は、特に限定はないが、60~98重量%であることが好ましい。さらに、70~95重量%が好ましい。60重量%未満では、エチルセルロースなどの溶解性が悪くなったり、ビヒクルの粘度が高くなりすぎる場合がある。一方、98重量%を超えると、ビヒクルの粘度が低くなり過ぎて好ましくない場合がある。
【0025】
また、ビヒクルに配合されて導電性ペーストを構成する導電性粉末は、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどの金属粉末が使用される。より好ましくは、白金粉末、ニッケル粉末、パラジウム粉末である。
【0026】
また、ビヒクルに配合されて誘電体ペーストを構成する誘電体粉末は、チタン酸バリウム粉末、チタン酸ストロンチウム粉末、酸化チタン粉末、ジルコン酸ストロンチウム粉末などが使用される。より好ましくは、チタン酸バリウム粉末である。
【0027】
ペースト中の導電性粉末または誘電体粉末の割合は、特に限定はないが、通常、25~95重量%、好ましくは30~90重量%である。25重量%未満では、導電性粉末または誘電体粉末の充填密度が低くなるため好ましくない場合があり、一方95重量%を超えると、ペーストの粘度が高くなり、生産性が著しく悪化するため好ましくない場合がある。
【0028】
ペースト中における、上記ビヒクルの割合は、5~40重量%であることが好ましい。より好ましくは、10~30重量%である。ビヒクルは、5重量%未満であると、乾燥膜の強度が弱くなり、一方40重量%を超えると、焼成後の電極厚さが薄くなりすぎて好ましくない。
【0029】
さらに、本発明のペーストは、溶剤、バインダー樹脂、導電性粉末もしくは誘電体粉末以外に、酸化防止剤、界面活性剤、分散剤、フィラー、可塑剤、反応性モノマーなどを含有していても良い。
【実施例】
【0030】
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0031】
実施例1
乳酸エチル95g(コービオンジャパン社製 PURASOLV EL)、およびパラメンタン(ヤスハラケミカル社製)5gを混合して溶剤組成物を作製した。この溶剤組成物19gにエチルセルロース(ダウケミカル社製 ETHOCEL200)1gを配合し、遊星式攪拌・脱泡装置(クラボウ社製 マゼルスター)を使用してビヒクルを作製した。作製した溶剤組成物およびビヒクルは、それぞれ以下の評価に供した。評価結果を表1に示す。なお、粘度、乾燥速度は、下記のようにして測定した。
(粘度)
ビヒクルの20℃における粘度をB型粘度計で測定した。
(乾燥速度)
熱重量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用して、120℃の温度条件で溶剤組成物が50%減量するのにかかった時間(50%減量時間)を測定した。乳酸エチルの50%減量時間を100としたときの各溶剤組成物の50%減量時間を相対乾燥速度とした。
【0032】
実施例2~8、比較例1~6
溶剤の組成を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして、溶剤組成物およびビヒクルを作製した。作製した溶剤組成物およびビヒクルは、実施例1と同様の評価に供した。ただし、比較例2、3および4は、バインダー樹脂が溶剤に完溶せず、粘度の測定ができなかったため、表1では(-)とした。
【0033】
【0034】
表1に示すように、本発明の溶剤組成物は、従来のペースト用溶剤として使用されているターピネオールやジヒドロターピネオールなどと比較して、低粘度、かつ乾燥速度が速い。さらに、(A)ヒドロキシモノカルボン酸エステルと(B)テルペン系炭化水素の混合溶剤とすることで、それぞれ単独使用の場合(比較例1~6)と比較して、一層粘度が低減でき、しかも乾燥速度を速めることができるので、グラビア印刷用の導電性ペーストや誘電体ペーストの溶剤として好適に使用できる。
また、上記のように、比較例2(パラメンタン)、比較例3(α-ピネン)、比較例4(β—ピネン)は、バインダー樹脂がこれらの溶剤に完溶しないが、本発明では、ヒドロキシモノカルボン酸エステルである乳酸エチルと併用することにより、低粘度、かつ乾燥速度が速い溶剤が得られるうえ、バインダー樹脂が溶解可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のペースト用溶剤組成物を用いた導電性ペーストおよび誘電体ペーストは、積層セラミックコンデンサなどの多層セラミック部品の製造の際に使用されるペーストとして利用できる。