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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】微小電流装置および視覚疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018568156
(86)(22)【出願日】2017-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 US2017022416
(87)【国際公開番号】W WO2017160912
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2018-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】15/071,912
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522369049
【氏名又は名称】マクミラ メディカル デバイシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ディー.オクロック
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】井上 哲男
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6275735(US,B1)
【文献】特表2014-514070(JP,A)
【文献】特開2005-102949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0176820(US,A1)
【文献】特表2005-529689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚疾患の治療での使用のため微小電流刺激を提供する電気刺激療法機器であって、
(a)1マイクロアンペアと450マイクロアンペアとの間のピーク電流振幅を有する一連の電流パルスを含む波形を提供するよう構成された波形信号源と、(b)前記波形信号源に接続され、視覚疾患治療手順に従って前記波形信号源をデジタル制御するために波形パラメータの組み合わせを含む出力を生成するようプログラムされたマイクロコントローラを備える波形制御部であって、前記波形パラメータの組み合わせは、複数の変更されるパルス期間及び複数の変更されるパルス幅を含む、波形制御部と、を備える信号生成器であって、前記波形信号源は、前記マイクロコントローラから前記波形パラメータの組み合わせを受信し、前記波形パラメータの組み合わせに含まれる前記複数の変更されるパルス期間及び前記複数の変更されるパルス幅で前記電流パルスが提供される前記波形を生成するように構成される、信号生成器と、
治療セッション中に、目領域内の少なくとも1つの刺激点に前記波形を適用するよう構成されたプローブと、身体部分に取り付けるように構成されたカウンタ電極と、
を備える電気刺激療法機器。
【請求項2】
前記波形は、第1パルス配列と第2パルス配列とを含む、請求項1に記載の電気刺激療法機器。
【請求項3】
前記信号生成器は、双極波形を生成するために前記第1パルス配列および前記第2パルス配列のそれぞれの極性を制御する波形配列制御部をさらに備える、請求項2に記載の電気刺激療法機器。
【請求項4】
前記複数の変更されるパルス期間は、0.3Hzから300Hzの範囲で変更される複数の周波数を決定する、請求項1に記載の電気刺激療法機器。
【請求項5】
前記複数の変更されるパルス期間は、0.1Hzから50Hzの範囲で変更される複数の周波数を決定する、請求項1に記載の電気刺激療法機器。
【請求項6】
前記複数の変更されるパルス期間は、0.05Hzから10Hzの範囲で変更される複数の周波数を決定する、請求項1に記載の電気刺激療法機器。
【請求項7】
前記視覚疾患は、黄斑変性を含む、請求項1に記載の電気刺激療法機器。
【請求項8】
前記波形は、70マイクロアンペアと200マイクロアンペアとの間の平均電流を有する、
請求項1に記載の電気刺激療法機器。
【請求項9】
1マイクロアンペアと450マイクロアンペアとの間のピーク電流振幅を有する一連の電流パルスを含む波形を提供する波形信号源であって、前記波形は第1パルス配列と第2パルス配列とを含む、波形信号源と、
前記波形信号源に接続され、視覚疾患治療手順に従って前記波形信号源をデジタル制御するために波形パラメータの組み合わせを含む出力を生成するようプログラムされたマイクロコントローラを備える波形制御部であって、前記波形パラメータの組み合わせは、変更される複数の変更されるパルス期間及び複数の変更されるパルス幅を含む、波形制御部と、
双極波形を生成するために前記第1パルス配列および前記第2パルス配列のそれぞれの極性を制御する波形配列制御部と、
を備え、
前記波形信号源は、前記マイクロコントローラから前記出力を受信し、前記波形パラメータの組み合わせに含まれる前記複数の変更されるパルス期間及び前記複数の変更されるパルス幅で前記電流パルスが提供される前記波形を生成するように構成される、信号生成器。
【請求項10】
前記複数の変更されるパルス期間は、0.3Hzから300Hz、0.1Hzから50Hz、および、0.05Hzから10Hzのいずれか1つの範囲で複数の変更される周波数を決定する、請求項9に記載の信号生成器。
【請求項11】
前記視覚疾患は、黄斑変性を含む、請求項9に記載の信号生成器。
【請求項12】
波形信号源と、前記波形信号源に接続された波形制御部とを備える信号生成器の作動方法であって、
視覚疾患治療での使用のために前記波形信号源をデジタル制御するために、波形パラメータの組み合わせを提供するようにプログラムされたマイクロコントローラを備える前記波形制御部が、前記波形パラメータの組み合わせを含む出力を生成する工程であって、ここで、前記波形パラメータの組み合わせ、複数の変更されるパルス期間及び複数の変更されるパルス幅を含工程と、
前記波形信号源が、前記波形制御部から受信した前記波形パラメータの組み合わせに基づいて波形を提供する工程であって、ここで、前記波形信号源は、前記マイクロコントローラから前記波形パラメータの組み合わせを受信するように、複数の電流パルスが前記波形パラメータの組み合わせに含まれる前記複数の変更されるパルス期間及び前記複数の変更されるパルス幅で提供される前記波形を生成する、工程と、を含み、
前記複数の電流パルスは、1マイクロアンペアと450マイクロアンペアとの間のピーク電流振幅を有する、作動方法。
【請求項13】
前記波形は、第1パルス配列と第2パルス配列とを含む、請求項12に記載の作動方法。
【請求項14】
前記第1パルス配列および前記第2パルス配列のそれぞれの極性は、双極波形を生成するために変更される、請求項13に記載の作動方法。
【請求項15】
前記複数の変更されるパルス期間は、0.3Hzから300Hz、0.1Hzから50Hz、および、0.05Hzから10Hzのいずれか1つの範囲で複数の変更される周波数を決定する、請求項12に記載の作動方法。
【請求項16】
前記視覚疾患は、黄斑変性を含む、請求項12に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年3月16日に出願された米国非仮出願第15/071,912号に基づいてその優先権を主張し、その全体は参照によりここに援用される。
【0002】
本発明は、一般には電気刺激療法のための装置および方法に関し、より詳細には黄斑変性および他の視覚疾患の治療のために目領域の組織に微小電流刺激を適用する電気刺激療法機器および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気刺激治療は、人体の数々の病気および疾患の実行可能な治療法として出現した。電気刺激治療を提供する方法の1つに、治療の対象となる人体の領域またはその近傍領域の組織に微小電流を送達するものがある。微小電流は、典型的には1ミリアンペア未満の電流と定義される。例えば、黄斑変性および他の視覚疾患の治療のため、閉じた眼瞼またはその近傍の組織に、100マイクロアンペアから1000マイクロアンペア(ピーク)の範囲の微小電流が加えられる。
【0004】
正常な網膜細胞の機能は、光エネルギーを電気インパルスに変換する光化学反応を含む。この電気インパルスは、視神経から視覚情報を処理する視覚野(脳の後端に位置する)へと伝達される。黄斑変性および他の視覚疾患では、罹患した網膜細胞は細胞機能を最終的に失い、アデノシン三リン酸(ATP)レベルが低下し、タンパク質の合成および輸送が悪化し、細胞が毒性の増加に圧倒されるようになり、細胞膜の電位が低下し、血流が悪化する。基本的に、網膜細胞は死滅前の所定期間、休眠状態となるようである。細胞が死滅する前に網膜細胞に微小電流の刺激が与えられると、ATPレベルが上昇し、タンパク質の合成および輸送が回復し、細胞の毒性が軽減し、血管透過性が向上し、正常な細胞膜の電位がより高くなり、正常な細胞の代謝が回復すると考えられている。加えて、微小電流の刺激は、網膜の微小血管の治癒効果を有し、網膜細胞への栄養の送達をより効率的とし、網膜に蓄積されるタンパク質の摂取をより効率的とするものと考えられている。こうして、微小電流の刺激は、網膜細胞を再生させ、黄斑変性および他の視覚疾患による目の変性を遅らせまたは停止させる。加えて、動物実験では、網膜細胞に加えられた微小電流の刺激は、特定の神経栄養素(成長因子およびサイトカインを含む)の生成/放出に一部起因して、神経防護および光受容体防護に関して、網膜防護の側面を呈することが示されている。
【0005】
視覚疾患を治療するために電気刺激を提供する初期の電気療法機器は、1700年代末から1800年代末までに開発された。これらの機器は、電池電極に接続された電極を有する大量の湿式電池を備え、直流(DC)により神経障害および網膜色素変性の治療に用いられた。このような型の電気刺激療法機器を記述したより近年の特許には、ウォレス(Wallace)らによる米国特許第5,522,864号「目の治療のための装置および方法(Apparatus and Method for Ocular Treatment)」があり、黄斑変性および他の目の病変を治療するための200マイクロアンペアの直流電流生成器の使用を開示している。これらの電気刺激療法機器は、出力(すなわち直流のみ)および性能に関しては範囲が非常に制限されている。
【0006】
視覚疾患を治療するために用いられてきた電気刺激療法機器には、他に、経皮電気神経刺激(TENS)機器がある。TENS機器の一例がロッセン(Rossen)による米国特許第4,989,605号「経皮電気神経刺激(TENS)機器(Transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) device)」に記載されており、疼痛処理のために25マイクロアンペアから900マイクロアンペアの電流レベルを用いて変調された単相直流搬送信号を生成する機器が開示されている。ロッセンの機器は、多くの黄斑変性治療の研究に使用されてきた。例えば、G.D.オクロック(G.D. O'Clock)とJ.B.ジャーディング(J.B. Jarding)による「視覚疾患治療のための電気刺激療法機器/手続の設計検討(Electrotherapeutic Device/Protocol Design Considerations for Visual Disease Applications"、第31回国際IEEE医療・生理部会学会(EMBC '09)議事録(Proceedings of the 31st Annual International IEEE Engineering in Medicine and Biology Society Conference)、2133ページから2136ページ、2009年9月2日-6日、ミネアポリス、ミネソタ を参照。視覚疾患の治療における臨床的効果および治療効果の観点から、ロッセンの機器は、直流オフセットおよび波形の低周波数要素に起因すると信じられている肯定的な結果を示している。
【0007】
ロッセンの機器の一般設計に続く他のTENS機器には、ロゴジンスキー(Rogozinski)による米国特許第5,395,398号「外傷および慢性皮膚潰瘍の、消毒、治癒の普及、および鎮痛のための微小電力機器(Microelectric Apparatus for the Antisepsis, Promulgation of Healing and Analgesia of Wound and Chronic Skin Ulcers)」、ポール(Paul)による米国特許出願公開第2003/0233137号明細書「微小電流を用いた経皮電気神経刺激機器および方法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation Device and Method Using Microcurrent)」、および、ハロルド(Harold)による米国特許第7,251,528号「電気、光および/または音響エネルギーを用いた視覚障害の治療(Treatment of Vision Disorders Using Electrical, Light, and/or Sound Energy)」がある。
【0008】
TENS機器に伴う問題の1つは、それらの多くが、視覚障害の治療における治療効果に有害となり得る、複雑で重複した波形を用いることである。他の問題は、TENS機器には比較的高い初期ピーク電流を送達するものがあり、例えば網膜に関連するもののような、脆弱または過敏な細胞および組織を含む適用に安全上の懸念があることである。加えて、TENS機器によっては、持続的な電流制御、信頼性、および電極界面の欠陥(または接触の完全性)に問題を有している。さらに、ほとんどのTENS機器は周波数固有であり、個々の周波数で多くの出力を送達する。例えば、機器の出力信号を周波数領域から観察すると、信号からの出力の大部分は離散周波数に存在している。また、ユーザは、周波数を時々手動で調整しなければならない。従って、これらの機器の生成する信号の治療効果は、最適化されたものではなく、一貫したものでないことがしばしばある。
【0009】
視覚障害の治療に用いられてきた他の電気刺激治療機器が、ジャーディン(Jarding)らによる米国特許第6,035,236号および6,275,735号「電気的微小電流刺激治療の方法および装置(Methods and Apparatus for Electrical Microcurrent Stimulation Therapy)に記載されている。この機器は、周波数変調された、すなわち信号の周波数が経時変化する、掃引波信号を生成する波形生成器を含む。この機器により生成された波形は、いくつかのTENS機器に用いられる波形と比較して形が単純(すなわち、比較的単純な周波数変調されたパルス列)であり、そして、このようにして、視覚障害の所定の疾患に関連する治療手順に適合する。また、この機器は、手動で周波数調整を行う必要なく動作周波数範囲にわたって信号を送達する波形変調に、掃引周波数のアプローチを用いる。この機器は、他の電気刺激治療機器と比較して視覚障害の治療により適している一方で、その周波数変動はアナログの周波数掃引技術により制限されており、そのためにスペクトルの品質に欠陥が内在している。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、黄斑変性および他の視覚障害に罹患する患者を治療するための微小電流刺激療法に用いる少なくとも1つの波形を生成する電気刺激療法機器を対象とする。
【0011】
ある実施形態では、電気刺激療法機器は、1マイクロアンペアと450マイクロアンペアとの間、典型的には180マイクロアンペアと220マイクロアンペアとの間のピーク電流振幅を有する一連の電流パルスを含むハイブリッド波形を生成するよう構成された信号生成器を含む。この実施形態では、視覚障害の治療のための手順に従って、ハイブリッド波形の3以上の波形パラメータが変更される。変更される波形パラメータは、例えば、パルス幅、パルス間隔、パルス位置、パルス符号、ピーク電流振幅、デューティサイクル、および/またはパルス波形を含む。ある例では、ハイブリッド波形は第1パルス配列と第2パルス配列とを有し、第1および第2パルス配列の極性が変更されて2極波形を生成する。第1パルス配列の波形パラメータの変更は、第2パルス配列の波形パラメータの変更と同じであってもよく、異なっていてもよい。電気刺激療法機器は、さらに、信号生成器に接続され、目領域内の少なくとも1つの刺激点にハイブリッド波形を適用するよう構成された取付具を含む。
【0012】
他の実施形態では、電気刺激療法機器は、1マイクロアンペアと450マイクロアンペアとの間、典型的には180マイクロアンペアと220マイクロアンペアとの間のピーク電流振幅を有する一連の電流パルスを含む波形を生成するよう構成された信号生成器を含む。この実施形態では、信号生成器は、視覚障害の治療のための手順に従って電流パルスを提供するために配列されたデジタル変調技術を用いる。好ましくは、電流パルスは、0.01Hzから500Hzの、典型的には0.1Hzと100Hzの間の規定の周波数範囲における複数の離散周波数で提供される。上述したスペクトル成分問題を軽減するため、周波数は不必要に繰り返されず、波形により多くの周波数が提供される。ある例では、電流パルスは、75%以上が0.3Hzから300Hzの周波数範囲における離散周波数で提供される。他の例では、電流パルスは、75%以上が0.1Hzから50Hzの周波数範囲またはその部分範囲における離散周波数で提供される。さらに他の例では、電流パルスは、75%以上が0.05Hzから10Hzの周波数範囲またはその部分範囲における離散周波数で提供される。治療機器は、さらに、信号生成器に接続され、目領域内の少なくとも1つの刺激点にハイブリッド波形を適用するよう構成された取付具を含む。
【0013】
本発明の治療機器は、従来の電気刺激療法機器が生成する波形では提供されないスペクトル特性(例えば変調波形パラメータのさまざまな組み合わせ、および/または、より大きい周波数成分)を有する波形を生成する。目領域内の少なくとも1つの刺激点へのこれらの波形の適用は、黄斑変性および他の視覚障害の安定化または改善をもたらすと考えられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明のさまざまな典型的実施形態が、添付図面を参照して以下に詳細に記載される。
図1A】本発明の典型的実施形態に従った電気刺激療法機器の前面パネルを示す図である。
図1B図1の電気刺激療法機器の背面パネルである。
図2A】パルス幅変調(PWM)技術を用いて変調された一連の電流パルスを示す図である。
図2B】パルス位置変調(PPM)技術を用いて変調された一連の電流パルスを示す図である。
図2C】パルス周波数変調(PFM)技術を用いて変調された一連の電流パルスを示す図である。
図2D】パルス符号変調(PCM)技術を用いて変調された一連の電流パルスを示す図である。
図2E】パルス振幅変調(PWM)技術を用いて変調された一連の電流パルスを示す図である。
図3A】PFM、PWM、PPMおよびPCMの組み合わせを含んでハイブリッド波形を提供する、図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器によって生成された、典型的な2極持続ピーク電流波形を示す図である。
図3B】PAM、PFM、およびPWMの組み合わせを含んでハイブリッド波形を提供する、図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器によって生成された、典型的な2極持続ピーク電流波形を示す図である。
図4A】自動アナログ周波数掃引技術を用いて信号源が制御される従来技術の機器により生成された典型的な波形を示す図である。
図4B】デジタル変調技術を用いて信号源が制御される、図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形を示す図である。
図5図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器のための信号生成器のブロック図である。
図6図5の信号生成器における、負荷インピーダンスの範囲に関する出力電流レベルを示す図である。
図7図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された波形が視覚障害の治療のための典型的な方法に従って適用され得る、閉じた眼瞼上およびその周囲の8つの刺激点を示す図である。
図8A図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形における10秒間のパルス列を示す図である。
図8B図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形における10秒間のパルス列を示す図である。
図8C図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形における10秒間のパルス列を示す図である。
図8D図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形における10秒間のパルス列を示す図である。
図8E図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形における10秒間のパルス列を示す図である。
図8G図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形における10秒間のパルス列を示す図である。
図8H図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形における10秒間のパルス列を示す図である。
図8I図1Aおよび1Bの電気刺激療法機器により生成された典型的なハイブリッド波形における10秒間のパルス列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、黄斑変性および他の視覚障害の患者を治療する微小電流刺激療法に用いる少なくとも1つの波形を生成する電気刺激療法機器を対象とする。機器は、視覚障害の治療のための手順に従って目領域の組織に送達される波形を生成するためにデジタル変調技術を用いて直接制御される信号源を含む。波形のスペクトル特性(例えば変調波形パラメータのさまざまな組み合わせ、および/または、より大きい周波数成分であり、後述する)は、黄斑変性および他の視覚障害の安定化または改善をもたらすと考えられている。
【0016】
以下、さまざまな典型的実施形態を参照して発明を説明するが、発明が、特定の機器構成、波形、波形パラメータ(パルス幅、パルス期間、パルス位置、パルス符号、ピーク電流振幅、デューティサイクル、および/またはパルス形状)、またはこれらの実施形態の方法論に限定されないことを理解されたい。加えて、いくつかの異なる発明の特徴を備えた典型的な実施形態が説明されるが、これらの特徴はそれぞれ、他の特徴がなくても本発明に従って実施することができることを、当業者は理解するだろう。
【0017】
[電気刺激療法機器]
図1Aおよび1Bを参照すると、本発明の典型的な実施形態に従った電気刺激療法機器が符号10で示されている。電気刺激療法機器10は、少なくとも1つの波形(詳細は後述する)を生成する信号生成器12と、図1Bに示すように、刺激プローブ14およびカウンタ電極16を備える取付具を備えている。刺激プローブ14は、信号生成器12の背面パネルにあるプローブ接続部20に接続可能な電気コネクタ18に取り付けられている。同様に、カウンタ電極16は、信号生成器12の背面パネルにあるカウンタ電極接続部24に接続可能な電気コネクタ22に取り付けられている。また、信号生成器12の背面パネルには、操作者が機器の電源をオンおよびオフにするためのオン/オフスイッチ26が設けられている。機器は、好ましくは電池により動作するが、その電力源のために電気コンセントに接続されてもよい。
【0018】
引き続き図1Bを参照して、刺激プローブ14は、患者の目領域の組織、および、典型的には閉じた眼瞼の上または近傍の組織に微小電流の刺激を投与するよう構成された被覆手持ちプローブを備える。プローブ14は、最も基本的な構成で、導電ジェル、ヒドロゲル、および/または、半導体ポリマー材料に浸され、または湿らされた綿球を備えるプローブ端14aを含む。湿った綿球により、過度の不快感なく患者に微小電流を穏やかに投与することができる。もちろん、本発明に従って他の形式のプローブ端も用いることができることを、当業者は理解するだろう。例えば、プローブ端14aは、医療グレードのステンレス鋼、金メッキの真鍮、他の金属の組み合わせといったさまざまな異なる金属、または他の導電材料により作成されてもよい。また、プローブの構造が単極接触に限定されないことを、当業者は理解するだろう。
【0019】
典型的な実施形態では、電気コネクタ18は、一端が刺激プローブ14に接続され、他端がバナナプラグ18aを有する伸縮性のコイルワイヤを備える。プローブ接続部20は、バナナプラグ18aを受けるバナナジャックを備える。このようにして、プローブ14は、伸縮性のコイルワイヤおよびバナナ接続を介して、信号生成器12と容易に接続することができる。もちろん、本発明に従ってプローブ14を信号生成器12に接続するために、他の形式の電気コネクタを使用することができることを、当業者は理解するだろう。例えば、コイルワイヤに代えて十分な長さのリード線を用い、および/または、バナナコネクタに代えてピンコネクタを用いることができる。これに代えて、プローブ14は、信号生成器12に配線接続されていてもよい。
【0020】
カウンタ電極16は、患者の身体部分への取り付けのために構成された電極を備える。典型的な実施形態では、カウンタ電極16は、患者の右のこめかみに粘着剤で固定されるスナップ電極を備える。もちろん、本発明に従って他の形式の電極、および/または、1より多い電極を用いることができることを、当業者は理解するだろう。また、カウンタ電極16は、首や頭の後ろ、肩、腕、手首、または手といった、体の他の部分に固定されてもよい。
【0021】
典型的な実施形態では、電気コネクタ22は、一端にカウンタ電極16に取り付けられるスナップコネクタ22(本実施形態におけるスナップ電極)を有し、他端にバナナプラグ22aを有するリード線を備える。カウンタ電極接続部24は、バナナプラグ22aを受けるバナナジャックを備える。このようにして、カウンタ電極16は、リード線およびバナナ接続を介して、信号生成器12と容易に接続することができる。もちろん、本発明に従ってカウンタ電極16を信号生成器12に接続するために、他の形式の電気コネクタを使用することができることを、当業者は理解するだろう。例えば、バナナコネクタに代えてピンコネクタを用いることができる。これに代えて、カウンタ電極16は、信号生成器12に配線接続されていてもよい。
【0022】
図1Aに示すように、信号生成器12の前面パネルは、機器の簡単な使用および制御を可能にするための様々なボタン、ツマミ、ダイヤル等を含んでいる。例えば、操作者が治療セッションを開始または終了することを可能にする開始/終了ボタン28が設けられる。メインメニューボタン30と、操作者がメニューシステム内で左および右に移動できるようにする左/右移動ボタン32と、操作者がメニューシステム内で上および下に移動できるようにする上/下移動ボタン34とを含むメニューシステムも含まれる。メニューシステムによって操作者は所定の治療パラメータを調整することができるが、治療効果の一貫性のため、可能な調整の数を最小限にするのが好ましい。例えば、典型的な実施形態では、信号生成器12により生成される波形のピーク電流における周波数範囲調整およびコース調整を、個別の治療の数および治療セッションにおける治療時間とともに、メニューシステムで設定することができる。操作者は、メニューシステムにより、ソフトウェアまたはファームウェアを介して機器に読み込まれている、複数の事前にプログラムされた治療手順から1つを選択することもできる。しかし、機器は、所定の視覚障害に専用に設定された単一の治療手順のみを提供するのが好ましい。
【0023】
信号生成器12により生成される波形のピーク電流を操作者に微調整可能とする電流調整ダイヤル36も提供される。また、機器に内蔵されたスピーカにより生成される音声出力の音量をユーザに調整可能とする音量ダイヤル38も設けられる。機器が発生する音声出力の形式の例は、治療セッションの開始を示す開始ビープ音、治療セッションの終了を示す終了ビープ音、および、治療セッション中に電流が適用されていることを示す電流追跡連続ビープ音(周期的ビープ音)を含む。
【0024】
1以上の治療セッションパラメータを表示するディスプレイ40がさらに提供される。典型的な実施形態では、ディスプレイ40は治療時間インジケータと電流レベルインジケータの2パラメータディスプレイを備える。治療時間インジケータは、治療セッションの持続時間の情報を提供し、好ましくは、刺激プローブ14が患者の刺激点に当てられるたびにリセットされ、それぞれの点で当てられた秒数をカウントダウンする(図7を参照して後述する)。電流レベルインジケータは、患者に適用されている電流の平均またはピークの操作者によるモニタを可能とする。もちろん、本発明に従って他の形式の治療情報も表示されてよいことを、当業者は理解するだろう。
【0025】
再び図1Bの信号生成器12の背面パネルを参照すると、1以上のオシロスコープ、スペクトラムアナライザ、または波形ディスプレイへの接続のためのテスト接続部42が設けられる。この接続部により、生成器の回路内のさまざまな位置における電流レベルおよび他の波形パラメータをテスト目的でモニタすることが可能となる。さらに、図示されていないが、信号生成器12は、外部データ分析システムおよび/または請求システムに接続するための出力ポートを提供してもよい。本発明のこの態様に従うと、信号生成器12は、好ましくは、他の患者への機器の使用におけるさまざまな形式のデータまたは情報を記録し、そしてデータ分析システムおよび/または請求システムにデータをダウンロードするよう構成される。このようにして、医師または施術者は、特定の患者または患者間の、そして異なる視覚障害および病状における、電流レベルおよび他の波形パラメータの差異に関するデータを分析することができる。そして、医師または施術者は、このデータを、特定の患者の治療の進捗を追跡し、異なる視覚障害のよりよい治療手続を開発し、治療点の変動性をモニタすることができる。加えて、機器は費用解析とスループット最適化機能とを提供し、請求目的での情報の送信を可能とする。
【0026】
もちろん、信号生成器12が異なる制御機能とデバイス出力を提供するものとして上述したが、本発明に従って、所定の制御機能またはデバイス出力を省略可能であり、他の制御機能またはデバイス出力を追加可能であることを、当業者は理解するだろう。
【0027】
次に図2A-2E、3A-3B、4A-4Dを参照して、信号生成器12の詳細な説明を行う(そして、図5を参照して回路の説明を記載する)。一般的には、信号生成器12は、変更される電流振幅および治療時間の一連の電流パルスを含む少なくとも1つの波形を自動的に生成するよう構成される。信号生成器12が生成する波形は、パルス幅、パルス期間(周波数を決定する)、パルス期間におけるパルス位置、パルス符号(あれば)、ピーク電流振幅、デューティサイクル、パルス形状、および極性(例えば単極または双極)を含む、一連の電流パルスに関連づけられたさまざまな波形パラメータを含む。以下に記載するように、これらのどの波形パラメータ、またはこれらの波形パラメータのどの組み合わせも、本発明に従って波形を生成するために、視覚障害の治療の手続に従って、変調され、または、変更されてよい。
【0028】
波形パラメータを変調または変更するために用いられ得るパルス変調技術形式の例の概要が図2A-2Eに示されており、ここでは変調信号波は、各図において点線の正弦波で示される。各例において、最大電流振幅(I)は縦座標方向に示され、時間(t)は横座標に沿って示される。もちろん、以下に説明するパルス変調技術は単なる例示であり、他の形式のパルス変調技術も本発明に従って使用可能であることを、当業者は理解するだろう。
【0029】
図2Aは、異なるパルス期間(T)の間でパルス幅(W)が変調され、または変更されるパルス幅変調(PWM)技術の例を示している。例えば、パルス期間T1におけるパルス幅W1はパルス期間T2におけるパルス幅T2よりも大きく、同様に、パルス期間T2におけるパルス幅W2はパルス期間T3におけるパルス幅T3よりも大きいことが見られる。パルスのピーク電流振幅、パルスの位置、およびパルス期間(これにより周波数が決定される)は、この例では一定に保たれていることに留意されたい。
【0030】
図2Bは、異なるパルス期間(T)の間で個々のパルスの位置が変調され、または変更されるパルス位置変調(PPM)技術の例を示している。例えば、パルス期間T1、T2およびT3はそれぞれ2つのパルスを含み、第1パルスはパルス期間の最初に位置している。しかし、第2のパルスの位置は異なるパルス期間の間で変動している。すなわち、パルス期間T1における第1パルスと第2パルスとの間の時間差は、パルス期間T2における第1パルスと第2パルスとの間の時間差よりも大きく、同様に、パルス期間T2における第1パルスと第2パルスとの間の時間差は、パルス期間T3における第1パルスと第2パルスとの間の時間差よりも大きい。パルスのピーク電流振幅、パルス幅、およびパルス期間(周波数を決定する)は、この例では一定に保たれていることに留意されたい。
【0031】
図2Cは、パルス期間(周波数を決定する)が変調され、または変更されるパルス周波数変調(PFM)技術の例を示している。例えば、パルス期間T1は、パルス期間T2よりも大きいことが見られる。パルスのピーク電流振幅、パルス幅、および、正弦波の正となる半周期のそれぞれにおける5つのパルスの位置は、この例では一定に保たれていることに留意されたい。
【0032】
図2Dは、パルスがコード形式で提供されるパルスコード振幅(PCM)技術の例を示している。例えば、各パルス期間(T)に、「オン」または「オフ」となり得る5つのパルス候補が見られる。この例では、パルス期間T1において、パルス2-5が「オン」であり、パルス期間T2において、パルス5が「オン」であり、パルス期間T3において、パルス1および2が「オン」である。パルスのピーク電流振幅、パルス幅、5つのパルス候補の位置、およびパルス期間(周波数を決定する)は、この例では一定に保たれていることに留意されたい。
【0033】
図2Eは、異なるパルス(T)の間でパルスのピーク電流振幅(I)が変調され、または変更されるパルス振幅変調(PAM)技術の例を示している。例えば、パルス期間T1におけるピーク電流振幅I1はパルス期間T2におけるピーク電流振幅I2よりも小さく、パルス期間T2におけるピーク電流振幅I2はパルス期間T4におけるピーク電流振幅I4よりも大きい(この例では、I1 = I4かつI2 = I3)ことが見られる。パルス幅、パルスの位置、およびパルス期間(周波数を決定する)は、この例では一定に保たれていることに留意されたい。
【0034】
さらに、パルス変調技術の組み合わせによっては位相遅延が生ずることが留意されるべきである。例えば、図2Bおよび2Cを参照すると、PPMパルス列におけるパルスをPFMパルス列におけるパルスと比較すると、位相遅延が見られる。最後から2つ目のPPMパルスは、最後から2つ目のPFMパルスの後に発生し、最後のPPMパルスは最後のPFMパルスと同時に発生していることに留意されたい。周期信号では、秒で示される時間はラジアンで示される位相に変換される。このように、時間遅延は位相遅延に対応する。この位相遅延(パルス位置変調の異なる形態と考えられる)は、本発明に従った所定の波形において用いられてよい。
【0035】
図2A-2Eを参照して以上に詳述され図示されたパルス変調技術は、本発明に従って変調され、または変更され得る波形パラメータの異なる形式を示すだけの目的で提示されていることを理解されたい。図2A-2Eに示された実際の波形は、波形のデューティサイクルが低く、そのため平均電流およびエネルギーが低くなるので、好ましくない。治療効果は平均電流が70マイクロアンペアを下回ると落ち込むことが知られている。このように、許容範囲の平均電流レベルを維持しようとすると、図2A-2Eに示される波形の最大電流は、非常に高くなければならず、安全上の懸念から視覚疾患の治療には望ましくない。
【0036】
上述したように、信号生成器12が生成する波形は、パルス幅、パルス期間(周波数を決定する)、パルス期間におけるパルス位置、パルス符号(あれば)、ピーク電流振幅、デューティサイクル、パルス形状、および極性(例えば単極または双極)を含む、さまざまな異なる波形パラメータを有する、一連の電流パルスを含む。典型的な実施形態では、パルスの幅は1.43ミリ秒から10秒の範囲にあり、特に10ミリ秒から1秒の間である。また、全パルス期間は2ミリ秒から100秒の範囲にあり、これは0.01Hzから500Hzの範囲の周波数に対応する。視覚疾患の治療において、出力周波数は典型的には0.1Hzと100Hzの間である。加えて、パルスのピーク電流振幅は1マイクロアンペアから450マイクロアンペアの範囲であり、特に180マイクロアンペアと220マイクロアンペアの間である。
【0037】
波形は10%から90%の範囲のデューティサイクルを有し、典型的には50%と75%との間である。また、波形は70マイクロアンペアから200マイクロアンペアの範囲の平均電流を有し、視覚疾患の治療において、典型的には90マイクロアンペアと100マイクロアンペアの間である。平均電流は波形のピーク電流振幅およびデューティサイクルに依存することを当業者は理解するだろう。例えば、ピーク電流が一定の波形において、デューティサイクルが増加すると平均電流は増加する。各電流パルスの形状は、一般には矩形であり、矩形パルスの端部は、スパイクを最小化するため、好ましくは台形状および/または指数関数滴に丸められる(とがった角がない)。各波形は、単極(単一の極性)または双極(2つの極性)であってよい。もちろん、本発明に従って、他の値、範囲およびパルス形状を、上述の波形パラメータに使用することができることを、当業者は理解するだろう。
【0038】
本発明に従って、上述のいずれかの波形パラメータまたはこれらの波形パラメータの組み合わせは、視覚疾患の治療の手順に従い変調され、または変更されてよい。生成可能な異なる波形の数が非常に多いことを理解されたい。例えば、3つの波形パラメータ-パルス幅、パルス期間(周波数を決定する)、およびパルス位置-を、異なる組み合わせで変更することにより、以下の7つの異なる典型的な波形を生成することができる:(1)パルス幅のみ変更される波形;(2)パルス期間のみ変更される波形;(3)パルス位置のみ変更される波形;(4)パルス幅およびパルス期間が変更される波形;(5)パルス幅およびパルス位置が変更される波形;(6)パルス期間およびパルス位置が変更される波形;(7)パルス幅、パルス期間、およびパルス位置が変更される波形。もちろん、本発明に従って他の典型的な波形を生成するために、他の波形パラメータおよび波形パラメータの組み合わせが変調され、または変更されてよいことを、当業者は理解するだろう。
【0039】
さらに、信号生成器12により生成される波形は、非電流フロー期間により分離され、または分離されない、複数のパルス配列を有してよい。各パルス配列は、その波形の他のパルス配列の波形パラメータと同じ、または異なる波形パラメータを伴う複数の電流パルスを備える。例えば、図3A(後述する)に示される波形は、極性以外の波形パラメータが同一の(すなわち、現在のパルスの極性が次の配列で反転する)2つのパルス配列を含む。さらに、パルス配列は、変調形式の線形、非線形、ランダム、またはカオス的特徴を含むように変更されてよい。
【0040】
上述の説明の一般性を限定することなく、図3Aは、正と負の極性パルス配列の波形パラメータが同一である双極の一定ピーク電流の波形を有する、典型的なハイブリッド波形を示している。正極のパルス配列は「配列1」と識別され、負極のパルス配列は「配列2」と識別される。各パルス配列は、約10から20秒の時間間隔で提供される。この例では、図示されるように、各パルス配列は、パルス周波数変調(PFM)、パルス幅変調(PWM)、パルス位置変調(PPM)およびパルス符号変調(PCM)の組み合わせからなるデジタル変調技術を用いて生成される。
【0041】
図3Bは、正と負の極性パルス配列の波形パラメータが同一である双極の可変ピーク電流の波形を有する、他の典型的なハイブリッド波形を示している。正極のパルス配列は「配列1」と識別され、負極のパルス配列は「配列2」と識別される。ここでも、各パルス配列は、約10から20秒の時間間隔で提供される。この例では、図示されるように、各パルス配列は、パルス振幅変調(PAM)、パルス周波数変調(PFM)、およびパルス幅変調(PWM)の組み合わせからなるデジタル変調技術を用いて生成される。
【0042】
図3Aおよび3Bに示されたハイブリッド波形は単なる例示であり、本発明に従って他のハイブリッド波形も生成可能であることを、当業者は理解するだろう。また、波形における正と負の極性パルス配列は、必ずしも(図3Aおよび3Bに示される波形がそうであるような)同一のものに限定されず、パルス変調の組み合わせ、周波数範囲、配列長等に関して異なっていてよい。
【0043】
本発明に従って信号生成器12により生成され得るさまざまなタイプの波形は、従来の電気刺激療法機器により生成される波形とは異なるスペクトル特性を有することを理解されたい。これらのスペクトル特性(後述するように、波長変調パラメータのさまざまな組み合わせ、および/または、多様な周波数成分)は、黄斑変性および他の視覚疾患の安定化または改善をもたらすと信じられている。発明のこの側面を説明するため、図4Aおよび4Bに示す波形の比較を参照する。
【0044】
図4Aは、アキュイティ メディカル インターナショナル、インク(Acuity Medical International, Inc.)により開発されたセラマック(TheraMac)により生成された、双極の一定ピーク電流の波形である。この機器は、所定の周波数範囲内で周波数変調された波形を生成するために、アナログ電圧周波数により電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator, VCO)の発振を変調させるアナログ周波数掃引技術を利用する。しかし、このアナログ周波数掃引技術を用いて生成される波形では、周波数は度々繰り返され、大きな範囲の周波数(スペクトル成分)が完全に失われる。
【0045】
図4Bは、本発明に従った信号生成器12により生成される典型的な双極の一定ピーク電流の波形である。信号生成器12は、図4Aに示される波形よりも多くのパルス変調信号成分が含まれるように、1以上の波形パラメータ(この例では、変調される波形パラメータはパルス幅、パルス位置、およびパルス周波数)を変調させるデジタル変調技術(後述)を用いて直接制御される信号源を有する。図4Aに示される波形と異なり、周波数は不要に繰り返されず、より多くの周波数が波形の中で提供され、上述のスペクトル成分の問題が軽減される。換言すると、信号生成器12は、アナログ周波数掃引技術により生じ得る周波数範囲の制限およびスペクトル欠損のレベルの影響を受けにくい。
【0046】
上述したように、セラマック機器により提供される周波数の多様性はアナログ周波数掃引技術により制限されており、それ故、波形はスペクトルの品質に欠陥を内在している。対照的に、信号生成器12は、所定の周波数範囲内の離散周波数の75%以上(例えば、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%またはそれ以上)を提供するよう配列されるデジタル変調技術を使用する。所定の周波数範囲は治療により変更され、視覚疾患の治療において一般には、0.01Hzから500Hzの周波数範囲、典型的には0.1Hzから100Hzの間に含まれる。
【0047】
典型的な実施形態では、信号生成器12は、少し異なる周波数に反応する患者に異なる範囲の周波数範囲を提供するよう機器にプログラムされた、広帯域動作モード、中帯域動作モード、および狭帯域動作モードを提供する。
【0048】
広帯域動作モードでは、生成器は4つの10から20秒のパルス配列を含む波形(すなわち40から80秒の治療)を提供し、各パルス配列における個々のパルスは、下限を毎秒約0.3パルスとし上限を毎秒約300パルスとする範囲、すなわち0.3Hzと300Hzとの間の周波数範囲で時間により周波数が変更される。好ましくは、電流パルスは0.3Hzから300Hzの周波数範囲内の離散周波数の75%以上(例えば、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%またはそれ以上)で提供される。
【0049】
中帯域動作モードでは、生成器は4つの10から20秒のパルス配列を含む波形(すなわち40から80秒の治療)を提供し、各パルス配列における個々のパルスは、下限を毎秒約0.1パルスとし上限を毎秒約10から50パルスとする範囲、すなわち0.1Hzと10から50Hzとの間の周波数範囲で時間により周波数が変更される。好ましくは、電流パルスは0.1Hzから50Hzの周波数範囲内またはその部分範囲(例えば、0.1Hzから50Hz、0.1Hzから45Hz、0.1Hzから40Hz、0.1Hzから35Hz、0.1Hzから30Hz、0.1Hzから25Hz、0.1Hzから20Hz、0.1Hzから15Hz、0.1Hzから10Hzなど)の離散周波数の75%以上(例えば、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%またはそれ以上)で提供される。
【0050】
狭帯域動作モードでは、生成器は4つの10から20秒のパルス配列を含む波形(すなわち40から80秒の治療)を提供し、各パルス配列における個々のパルスは、下限を毎秒約0.05パルスとし上限を毎秒約1から10パルスとする範囲、すなわち0.05Hzと1から10Hzとの間の周波数範囲で時間により周波数が変更される。好ましくは、電流パルスは0.05Hzから10Hzの周波数範囲内またはその部分範囲(例えば、0.05Hzから10Hz、0.05Hzから9Hz、0.05Hzから8Hz、0.05Hzから7Hz、0.05Hzから6Hz、0.05Hzから5Hz、0.05Hzから4Hz、0.05Hzから3Hz、0.05Hzから2Hz、0.05Hzから1Hzなど)の離散周波数の75%以上(例えば、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%またはそれ以上)で提供される。
【0051】
加えて、信号生成器12は、好ましくは、特定の生化学的事象、処理または作用機構に増大した効果を有すると信じられている所定の周波数またはパルスレートを提供するために、「保持」動作モードを提供する。例えば、直流はアデノシン三リン酸(ATP)の生成/放出に顕著な影響を有すると信じられており、1Hzまたはそれ以下の周波数は電気浸透に効果があり液体の輸送(糖尿病性網膜症における黄斑浮腫の圧力を軽減するための)に影響すると信じられており、10HzはDNAの複製に効果を有すると信じられている。この「保持」動作モードは、特定の視覚疾患に関連する、または特定の視覚疾患に固有の問題に治療効果を瞬間的に集中させるために用いることができる。
【0052】
次に図8A-8Iを参照して、黄斑変性の治療にあたり治療効果があると信じられる、信号生成器12により生成される他の典型的なハイブリッド波形が説明される。この波形は、正の極性を有する第1の10秒パルス配列、負の極性を有する第2の10秒パルス配列、正の極性を有する第3の10秒パルス配列、および負の極性を有する第4の10秒パルス配列を含む40秒の双極一定ピーク電流波形を含む。正と負の極性パルス配列の波形パラメータは同一である。
【0053】
第1の10秒パルス配列が図8A-8Iに示される。すなわち、図で1秒(1s)および11秒(11s)と示された時間の目印の間の電流パルスである。具体的には、1秒から4秒は図8Aに示され、4秒から5秒は図8B(4sから5s)に示され、5秒から5.9秒は図8Cに示され、5.9秒から6.8秒は図8Dに示され、6.8秒から7.7秒は図8Eに示され、7.7秒から8.6秒は図8Fに示され、8.6秒から9.5秒は図8Gに示され、9.5秒から10.4秒は図8Hに示され、10.4秒から11秒は図8Iに示される。もちろん、第2、第3および第4のそれぞれのパルス配列は図8A-8Iに示される配列と同一(第2および第4のパルス配列が負の極性を有することを除き)であることを理解されたい。
【0054】
図8A-8Iに示される電流パルスは、示されているように、パルス周波数変調(PFM)、パルス幅変調(PWM)、パルス位置変調(PPM)、およびパルス符号変調(PCM)の組み合わせを提供するデジタル変調技術を用いて信号生成器12により生成される。波形の始めには、視覚疾患の治療に有益であることが示されている直流での小さな余剰強勢のために、非常に短いバースト電流(約0.699秒)が提供されることに留意されたい。その後、電流パルスは、周波数をf(Hz)、t′を0.699秒のパルスの終わりから始まる時間(秒)(すなわち、0.699秒のパルスの終わりでは t′ = 0)としたとき、f = [10 + (9.68)(t′)]という式により近似可能な異なる周波数で提供される。
【0055】
次に、図5を参照して、信号生成器12の典型的な回路のブロック回路図を説明する。回路は、波形制御部52によりデジタル制御される波形信号源50を含む。典型的な実施形態では、波形信号源50は、基本パルス電流出力を提供する周波数可変発振器を備える。もちろん、波形信号源50は他の既知の適切な信号源を備えてよいことを、当業者は理解するだろう。
【0056】
典型的な実施形態において、波形制御部52は、視覚疾患の治療のための手順に従って波形信号源50をデジタル制御するように、出力に適切な波形パラメータを提供するようプログラムされたマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを備える。波形制御部52により制御され得る波形パラメータは、パルス幅、パルス期間(周波数を決定する)、パルス期間におけるパルス位置、パルス符号(あれば)、ピーク電流振幅、デューティサイクル、波形信号源50からのパルス電流出力のパルス形状を含む(極性は波形配列制御部62により制御可能であり、後述する)。上述したように、これらの波形パラメータのいずれか1つまたは組み合わせは、本発明に従った異なる組み合わせのパルス配列を生成するために、波形制御部52により変更され得る。こうして、異なるパルス変調技術(PWM、PPM、PFM、PCM、PAM等)を用いて、波形制御部52は波形信号源50により提供されるパルス電流の変調形式を、波形パラメータの適切な組が提供されるように、自動的に調整することができる。波形パラメータの適切な組(すなわち、視覚疾患の治療のための手順)は、後述するように、異なる視覚疾患の間で異なり、同じ視覚疾患でも患者によって異なり、同じ視覚疾患の同じ患者についても時間によって異なり得る。
【0057】
波形制御部52は、出力が、変更または変調される波形パラメータにおける大きな差異と小さな差異との両方を有するように、波形信号源50をデジタル制御することができることに留意されたい。これにより、信号生成器12は、従来の電気刺激療法機器により生成される波形では提供されない波形のスペクトル特性を提供することができる。例えば、上述したように、波形に様々なレベルの周波数成分(スペクトル出力)をもたらすように、周波数の漸増が行われ得る。
【0058】
他の形式のパルス変調技術を自動的に引き起こす、ある形式のパルス変調技術を採用することもまた可能である。例えば、パルス周波数変調(PFM)およびパルス位置変調(PPM)が用いられるとき、デューティサイクルが50%(配列される周波数範囲に依存する)に達すると、パルス幅変調(PWM)が自動的に開始される。もしパルス幅変調(PWM)が望まれないならば、周波数範囲および/またはデューティサイクルを単に減少すればよい。このやり方によると、平均電流レベルが変動しているときに、一定ピーク電流の波形を維持することもできる。
【0059】
さらに図5を参照して、回路は、外部制御回路56および検出システム58からデータを受信するデータ取得制御システム54をさらに含む。外部制御回路56から受信するデータは、特定の治療手順用に動作パラメータを設定するために、機器製造者または機器の操作者により(ソフトウェアまたはファームウェアを介して)入力された外部制御設定を含む。例えば、所定の外部制御設定が、図1Aに示されるような、ボタン30、32および34、および電流調整ダイヤル36により提供されるメニューシステム、といった、信号生成器12の前面パネルに設けられた設定機能を介して入力されてよい。検出システム58により受信されたデータは、電流制御整合回路64により提供される出力電流レベルのサンプルを含む。検出システム58は、後述するように、これらのサンプルを(アナログおよび/またはデジタル信号の形式で)、情報の収集と機器制御のために(すなわち、情報は最終的には波形制御部52に提供される)データ取得制御システム54に、および、監視と目的の検証のために情報送信システム60に、送信する。
【0060】
治療の間、データ取得制御システム54は、出力電流レベル、治療時間、および治療回数を含む様々な治療パラメータを監視する。所定の治療パラメータは、操作者(例えばヘルスケア施術者)が治療回数および投与量の処方制御を維持できるように、機器に表示されてもよい。例えば、典型的な実施形態において、図1Aに示すように、信号生成器12の前面パネルにあるディスプレイ40は、治療時間インジケータおよび電流レベルインジケータを備える。また、データ取得制御システム54は、波形制御部52に制御情報を提供し、波形制御部52は、上述したように、波形信号源50により提供されるパルス電流の波形パラメータを制御するために、この情報を使用する。
【0061】
好ましくは、データ取得制御システム54は、異なる患者の様々な形式のデータを記録し、そのデータを情報送信システム60に送信してよい。これにより、情報がクリニックからダウンロード可能となり、監視と分析のためのリモートサーバまたは他のネットワーク機器に、有線または無線通信ネットワーク(例えばインターネットクラウド)を介して送信可能となる。このようにして、医師または施術者は、電流レベルおよび他の波形パラメータの、ある特定の患者における、または異なる視覚疾患および病状の患者間における、変動に関するデータを分析することができる。そして、医師または施術者は、特定の患者の治療の進展の追跡、異なる視覚疾患のよりよい治療手続の開発、および、治療箇所のばらつきの監視を行うために、このデータを使用することができる。
【0062】
さらに図5を参照して、回路は、波形信号源50により提供されるパルス配列の極性を制御する波形配列制御部62も含む。典型的な実施形態では、パルス配列の極性を必要に応じ反転させるために、タイマーが波形配列制御部62に信号を提供する。これにより、図3A、3B、4Bに示される典型的な波形といった、双極波形の提供が可能となる。
【0063】
波形配列制御部62からの出力は、異なる患者、異なる組織特性、および異なる組織水和状態について生じ得る負荷インピーダンスの大きな変動を補正する電流制御整合回路64に提供される。この回路は、患者の閉じた瞼の上または近傍の繊細な組織への電流レベルを安全に維持する機器出力に設けられる。典型的な実施形態では、出力電流レベルは200マイクロアンペア以下に制限される。
【0064】
好ましくは、電流制御整合回路64は、5,000オームから70,000オームまでの範囲の負荷インピーダンスの変動(プローブおよびカウンタ電極と組織との間の接触面からの全負荷にあたる)に対して±10%より多く電流が変動しないように、治療の間出力電流レベルを一定に保つ。例えば、図6は典型的な実施形態に従った負荷インピーダンスの範囲に関する出力電流レベルを示す。示されるように、ピーク出力電流は、5,000オームから約68,000オームの範囲において、約200マイクロアンペアで比較的一定を保ち、80,000オームでは約18%低下する。この比較的安定した電流制御は、患者の快適と安全に望まれる。
【0065】
最後に、上述したように、テスト接続部42(図1B参照)が、機器出力をオシロスコープ、スペクトラムアナライザ、波形アナライザ、または他の種類のテスト機器に接続するために用いられてよい。好ましくは、テスト機器による出力波形および出力電流レベルへの影響を防止するため、電流制御整合回路64とテスト接続部42との間に分離回路が設けられる。
【0066】
[操作方法]
操作において、本発明に従った電気刺激療法機器(例えば上述した電気刺激療法機器10)は、様々な異なる視覚疾患に苦しむ患者を治療するための微小電流刺激療法を提供するために用いられる。治療の対象となる視覚疾患の例には、黄斑変性、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜色素変性、原発性開放隅角緑内障、スタルガルト病、視神経疾患(例えば、前部虚血性視神経症、遺伝性常染色体顕性視神経萎縮、MSに関連する視神経の炎症および障害、偽性脳腫瘍、視神経萎縮)、虚血性黄斑浮腫および虚血性網膜障害、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、網膜剥離、角膜浮腫、および、眼部帯状疱疹、眼外傷、眼瞼けいれん、脳卒中後の視野欠損、ベルまひ、および黒内障を含む他の角膜疾患が含まれる。もちろん、このリストは徹底的なものではなく、他の視覚疾患も本発明に従って治療可能であることを理解されたい。
【0067】
典型的な方法では、電気刺激療法機器10は、患者の目領域における1以上の刺激点に波形(上述のもの)を送達するために用いられる。刺激プローブ14が各刺激点に接触して配置され、カウンタ電極16が患者の右のこめかみまたは他の身体部位に取り付けられると、閉回路が形成される。信号生成器12により生成された波形は、プローブ14から患者の身体を通ってカウンタ電極16に流れ、信号生成器12に戻る。もちろん、電気刺激療法機器10は単なる典型的な機器であり、他の機器も本発明の方法を実行するために使用可能であることを理解されたい。
【0068】
刺激点が配置される患者の目領域は、好ましくは、目と、目から15センチメートル以内の組織、典型的には目から5センチメートル以内の組織を含む。多くの場合、各刺激点は、目領域内の患者の閉じた眼瞼の上または近傍に位置する。閉じた眼瞼を刺激しているとき、患者は好ましくはプローブを見ないよう目を閉じて、黄斑が最大刺激領域に近づくように動かす。
【0069】
ある例では、4つの刺激点が上眼瞼に提供され、4つの刺激点が下眼瞼に提供され、目領域内の刺激点は合計8つである。図7は、刺激される8つの刺激点と好ましい刺激の順序を示している。刺激は、好ましくは点1から点8の順に行なわれる。この例では、プローブは各刺激点で約40秒保持され、一回の治療が完了する。
【0070】
他の例では、2つの刺激点が上眼瞼に提供され、2つの刺激点が下眼瞼に提供され、目領域内の刺激点は合計4つである。上眼瞼の刺激点は、好ましくは下眼瞼の刺激点の前に刺激される。この例では、プローブは各刺激点で約40秒保持され、一回の治療が完了する。
【0071】
治療の回数と頻度は、治療の体操となる視覚疾患、疾患の進行に伴う網膜組織へ損傷の程度、患者の年齢、初回診断日、患者の健康状態、患者の生活習慣、環境および他の要因に応じて、患者間で顕著に変更される。例えば、ある症例では一日に1回の治療で十分であってよく、一方、他の症例では一日2から8回またはそれ以上の治療が必要であってもよい。また、ある症例では1週間に3日治療が提供されてよく、他の症例では1または2週間またはそれ以上の期間で毎日治療が提供されてよい。このように、好ましい治療手順は、患者ごとに異なり、同一の患者に対しても時間により変更され得る。
【0072】
各治療において各刺激点に送達される波形は、治療対象となる視覚疾患および病状に依存することも理解されたい。上述したように、各視覚疾患は、特定のパルス変調技術および関連する波形パラメータに反応し、これらは治療の対象となる特定の病状および特定の生化学的事象、処理または影響される作用機構に治療効果を有する。例えば、3つ以上の波形パラメータが変調または変更されるハイブリッド波形構造は、多くの視覚疾患の治療での微小電流刺激療法における好ましいアプローチであると信じられている。さらに、異なる患者は同一の視覚疾患に対してわずかに異なる電気刺激反応パラメータを有しているかもしれない。例えば、電気刺激療法中にある患者が反応する波形パラメータは、他の患者にとって最適な波形パラメータとまったく同じではないかもしれない。実際、同一の患者が、時間、加齢、健康状態、ホルモン値、他の薬物療法または内科的治療の使用および環境により、わずかに異なる波形パラメータに反応するかもしれない。このように、上述の波形パラメータのいずれか、またはこれらの波形パラメータの組み合わせは、視覚疾患の治療の手順に従って変調または変更され得る。
【0073】
電気刺激療法の有効性は、治療が完了した直後に視力検査表、または眼科および検眼に用いられる近赤外線回線走査レーザー検眼鏡および/または様々な形式の光コヒーレンス断層撮影法といった、多数の非侵襲性光診断器具による視力検査を行うことにより特定可能である。これらの検査は、治療効果を増大させるための治療パラメータの調整を行うために用いられてもよい。他の治療法が数週間で効果が現れないところ、網膜の電気刺激療法の効果は、ある条件では、1時間以内に検出され、観察され得る。
【0074】
以上、いくつかの典型的実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の範囲から離れることなく、これらの実施形態に様々な変更を加えることができることを理解されたい。従って、本発明は、限定が以下の請求項に含まれる場合を除き、特定の機器構成、波形、または典型的実施形態の手法に限定されるものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I