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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/02 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
H01H50/02 N
H01H50/02 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019032933
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020140763
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】松元 聡志
(72)【発明者】
【氏名】宮永 和明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勝之
(72)【発明者】
【氏名】望月 将英
(72)【発明者】
【氏名】北島 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】中山 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 夏美
(72)【発明者】
【氏名】小林 超
(72)【発明者】
【氏名】小日向 寛明
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-087133(JP,U)
【文献】実開昭63-118143(JP,U)
【文献】実開昭61-186146(JP,U)
【文献】特開昭55-016384(JP,A)
【文献】実開昭58-002840(JP,U)
【文献】国際公開第2012/002201(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/00 - 9/28
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
H01H 89/00 - 89/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁駆動部と、電気接点部と、前記電磁駆動部および前記電気接点部を収容する内部空間を有する筐体とを具備し、
前記筐体は、前記内部空間に通じる通気孔と、前記通気孔を塞ぐ封止体とを具備し、
前記通気孔の内面にらせん溝が形成され、
前記内部空間の圧力変動に伴い前記封止体の少なくとも一部分が移動する、電磁継電器。
【請求項2】
電磁駆動部と、電気接点部と、前記電磁駆動部および前記電気接点部を収容する内部空間を有する筐体とを具備し、
前記筐体は、前記内部空間に通じる通気孔と、前記通気孔を塞ぐ封止体とを具備し、前記内部空間の圧力変動に伴い前記封止体の少なくとも一部分が移動し、
前記筐体は、更に、前記通気孔を有する突出部を具備し、
前記封止体は、弾性体で形成され、前記突出部の先端に取り付けられて前記通気孔を塞ぎ、前記内部空間の圧力変動に伴い弾性変形し、
前記突出部の前記先端に、前記封止体が係合するフランジを有する、
電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器では、電磁駆動部と、電気接点部と、ベースとを備えるリレー本体部がカバーで覆われ、リレー本体部とカバーとの嵌め合い部およびベースに形成された端子穴と端子との間の隙間をシール用樹脂で封止する構成が一般的である。封止には熱硬化樹脂が用いられることが多く、封止工程で電磁継電器を加熱する必要が生じるため、カバーには電磁継電器の内圧を調整するための通気孔が設けられる。密封型の電磁継電器では、通気孔はリレー本体部を外環境から保護するために封止され出荷される。通気孔の封止方法としては、煙突状に形成した通気孔を熱せられたコテで溶融させた後、再硬化させ(この工程は熱かしめと呼ばれる)、熱かしめされた部分を硬化樹脂で保護する方法が一般的である。特許文献1には、電磁継電器のカバーに形成された通気孔を熱かしめする封止方法について記載している。
【0003】
また、熱かしめ以外にも電磁継電器のケースの封止方法が提案されている。特許文献2は、継電器本体を収容するケースに通気孔を形成する突出部を設け、突出部の先端に張出部を形成し、張出部と係合し且つ突出部に着脱自在な封止栓を装着することで、電磁継電器を密閉あるいは開放構造にすると共に、気密性に優れた密閉構造を保持し得るようにした電磁継電器について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-321239号公報
【文献】実開昭58-2840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電磁継電器の実装でも、半田ディップ方式から実装性の高いリフロー方式に対応することへの要求が高まっている。リフロー方式による実装では、電磁継電器はいっそう高温の状況下に置かれる。電磁継電器が高温にさらされるとカバー内部の圧力の上昇をまねく。また、異物や水滴等の通気孔からカバー内部への侵入を防ぐと共にカバー内部の圧力上昇を簡易な構造により防ぐことができる電磁継電器が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、電磁駆動部と、電気接点部と、前記電磁駆動部および前記電気接点部を収容する内部空間を有する筐体とを具備し、前記筐体は、前記内部空間に通じる通気孔と、前記通気孔を塞ぐ封止体とを具備し、前記通気孔の内面にらせん溝が形成され、前記内部空間の圧力変動に伴い前記封止体の少なくとも一部分が移動する、電磁継電器である。本開示の別の態様は、電磁駆動部と、電気接点部と、前記電磁駆動部および前記電気接点部を収容する内部空間を有する筐体とを具備し、前記筐体は、前記内部空間に通じる通気孔と、前記通気孔を塞ぐ封止体とを具備し、前記内部空間の圧力変動に伴い前記封止体の少なくとも一部分が移動し、前記筐体は、更に、前記通気孔を有する突出部を具備し、前記封止体は、弾性体で形成され、前記突出部の先端に取り付けられて前記通気孔を塞ぎ、前記内部空間の圧力変動に伴い弾性変形し、前記突出部の前記先端に、前記封止体が係合するフランジを有する、電磁継電器である。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成によれば、異物や水滴等が通気孔からカバー内部に侵入することを防ぐと共にカバー内部の圧力の上昇を簡易な構造により防ぐことができるようにした電磁継電器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態に係る電磁継電器の斜視図である。
図1B】電磁継電器の側面図である。
図2】リレー本体部の構成例を表す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る電磁継電器の通気孔の縦断面図である。
図4】第1実施形態に係る電磁継電器の通気孔と封止体を示した縦断面図である。
図5】筐体の内圧が上昇した状態の通気孔の縦断面図である。
図6】筐体の内圧が下降した状態の通気孔の縦断面図である。
図7】軸部にらせん突起が形成された封止体を示す図である。
図8A】第2実施形態の第1実施例に係る通気孔部の平面図である。
図8B】第2実施形態の第1実施例に係る通気孔部の断面図である。
図8C】封止体が装着された状態の通気孔部の断面図である。
図9A】第2実施形態の第2実施例に係る通気孔部の平面図である。
図9B】第2実施形態の第2実施例に係る通気孔部の断面図である。
図9C】封止体が装着された状態の通気孔部の断面図である。
図10A】第2実施形態の第3実施例に係る通気孔部の平面図である。
図10B】第2実施形態の第3実施例に係る通気孔部の断面図である。
図10C】封止体が装着された状態の通気孔部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0010】
以下で説明する各実施形態は、電磁継電器の樹脂製の筐体に形成された通気孔および通気孔を封止する封止体の構成に関するものである。以下で詳細に説明するように、各実施形態によれば、筐体の内部空間の圧力変動に伴い封止体の少なくとも一部分が移動して筐体の容積が変化し、それにより筐体の内圧を調整する。
【0011】
第1実施形態
図1A-1Bは、第1実施形態に係る電磁継電器50の外観を表している。図1は電磁継電器50の斜視図、図1Bは電磁継電器50の図1A中手前側の側面図である。図1A-1Bに示す電磁継電器50は、リレーの本体部がボックス型の樹脂成型品であるカバー11に覆われた構成を有する。電磁継電器50は、樹脂成型品であるベース9とカバー11との嵌め合い部およびベース9に形成された端子穴と端子18との隙間が熱硬化樹脂で封止されている。これにより電磁継電器50の底面9b側の気密性が確保されている。ベース9とカバー11により電磁継電器50の筐体20が構成されている。ベース9が筐体20の底壁を構成し、カバー11が筐体20の周壁を構成している。
【0012】
カバー11の上側の壁部111には上記の封止工程において筐体20の内圧の上昇を防ぐための通気孔90が形成されている。従来の密封型の電磁継電器の場合には、通気孔が熱かしめにより封止される。他方、本実施形態に係る電磁継電器50の場合には、後述する封止体により通気孔90を封止することで、通気孔90からの異物や水滴等の侵入を防止すると共に、筐体内部の圧力上昇を簡易な構成により防止する。
【0013】
図2は電磁継電器50の本体部の構成例を表す斜視図である。図2では内部構成を示すためにカバー11を透明に示し、通気孔90を塞ぐ封止体120は省略している。なお、図2では一例として電磁継電器50はヒンジタイプの電磁継電器としているが、他のタイプの電磁継電器であっても良い。説明の便宜のため、ベース9の長手方向を図2に示す前後方向と定義し、この前後方向を基準として左右方向および上下方向を図2に示す通り定義する。
【0014】
図2に示されるように、電磁継電器50は、コイル4、不図示の鉄心、継鉄12、接極子3、ヒンジばね10およびカード6を含む電磁駆動部30と、それぞれ弾性部材である可動接点の電極7および固定接点の電極8を含む接点部40とを具備する。導電性の板部材で形成される電極7は、その下端がベース9に固定され、自由端に可動接点1を有する。電極8は、その下端がベース9に固定され、自由端に固定接点2を有する。カバー11の後方壁内面に設けられた電極を支持する突起15は、固定接点2に当接することで固定接点2を後方側から支持する。コイル4への通電がなされておらず接点部40が開いている状態では、ヒンジばね10の復元力により、接極子3は接点開位置に保持されている。その状態からコイル4に通電がなされると、接極子3は鉄心5に吸引され揺動する。それに伴い、カード6は後方側に押されて移動し、電極7を電極8側に押し込む。それにより、可動接点1が固定接点2と接触し、接点部40は閉じた状態となる。ベース9の底面9bからは、コイル4、電極7、電極8等の電気部品を外部と接続するための端子18が引き出されている。
【0015】
図3から図7は、通気孔および通気孔90を封止する封止体の構成を表している。図3から図6は、カバー11の通気孔90近辺を前後方向に垂直な面で切断した縦断面図である。図3では説明の便宜のために封止体120を省略している。図1Aおよび図3に示されるように、カバー11の上面11bと右側面11aとの角部の上面11b上には下方に向かってへこむ凹部91が形成されている。凹部91の底面からは上方に向かって突出する柱状の突出部93が形成されている。通気孔90は、突出部93の中心軸線に沿って筐体20の内部空間に通じるように形成されている。
【0016】
図3および図4に示すように、突出部93の内周面93a上にはらせん状の溝94が形成されている。図4に示すように、通気孔90は、硬化樹脂の封止体120で封止される。封止体120は、頭部121と通気孔90内に嵌め込まれる円柱状の軸部122とを有している。軸部122は、内周面93aの内径とほぼ等しい外径を有しており、内周面93aとの摩擦力により通常想定される振動等では通気孔90から外れない。更に、軸部122は、電磁継電器50が半田リフロー等の高温にさらされる状況において、筐体20の内圧の上昇に伴い通気孔90内部を上方にずれ、筐体20の内部圧力の低下に伴って通気孔90内部で下方にずれる。頭部121の外径は軸部122の外径よりも大きい。この構成は、筐体20の内圧の変動に伴い筐体20の容積を変化させ、筐体20の内圧を調整することを可能とする。
【0017】
図5は、筐体20の内圧が上昇した状態を示している。図5に示されるように、筐体20の内圧が上昇すると、封止体120は筐体20内部の空気に押されて上方へずれる。このとき、頭部121の底面121aと突出部93の先端面93cとの間に隙間が形成される。これにより、図5の矢印Eで示すように筐体20内部の空気は主として溝94を通って外部に流れ出ることができ、筐体20内部の圧力の上昇が回避される。
【0018】
その後、筐体20の内圧が低下すると、図6に示すように、外部から空気が溝94を通って筐体20内部へ流れ込み、封止体120は筐体20内部に向かって引き込まれ下方にずれ、図4に示した元の位置に戻る。図4の状態では、底面121aが先端面93cに密着し、封止体120により筐体20は気密封止された状態となる。したがって、図4の状態では、異物や水滴等が筐体20内部に侵入することが防止される。
【0019】
上述の第1実施形態の変形例として、軸部122の外周面に溝94と螺合するらせん状の突起を形成しても良い。図7は、軸部122の外周面にらせん状の突起125が形成された封止体120Aを示している。このような構成の場合には、筐体20の内圧の上昇時、筐体20内部の空気は溝94と封止体120Aの外周面との間のわずかな隙間を通って外部に流れ出る。このとき、封止体120Aは、突起125と溝94が係合していることにより空気に押されて回転しながら上方に移動する。また、筐体20の内圧の低下時には、封止体120Aは、筐体20内部に引き込まれる空気の流れと共に、圧力上昇時とは逆向きに回転しながら下方に移動する。
【0020】
変形例の場合にも、筐体20の内圧の上昇を回避することができる。また、封止体120Aが図4に示した位置にある状態では、筐体20を気密封止することができる。
【0021】
封止体120は、通気孔90を塞ぐ弾性力のある栓の役割を果たすようにするため、弾力性の樹脂などの部材であることが好ましい。他方、封止体120Aは比較的硬度が高い部材であることが好ましい。突起125と溝94とが係合しつつ封止体125Aが回転しながらスムーズに上下に移動できるようにするためである。
【0022】
封止体120、120Aは、樹脂成型品として作成しても良く、樹脂を通気孔90部分に塗布することによって作成しても良い。樹脂の塗布によって封止体を作成する場合には、通気孔90内部に入り込む軸部122と、軸部122の先端側に頭部121が形成されるように適量の樹脂を通気孔90部分に塗布する。
【0023】
通気孔部への塗布により封止体120、120Aを作成する場合には、硬化前の粘度が低すぎない樹脂を選択することが好ましい。未硬化の接着剤が通気孔90内部から筐体20の内部に入ることを防ぐためである。硬化前の樹脂の粘度、濡れ性を適宜選択することによって、樹脂が溝94までは入り込まないようにして封止体120のように突起125を持たない形状を作り、或いは、樹脂が溝94まで入り込むようにして封止体120Aのような形状を作ることができる。
【0024】
塗布によりらせん突起のない封止体120を作る場合には、封止体120が通気孔90を塞ぐ弾性力のある栓の役割を果たすようにするため、硬化後の硬度が低く弾力性がある樹脂を選択することが好ましい。また、この場合には接着力が高すぎない樹脂を選択することが好ましい。筐体20の内圧の変動に応じて封止体120が通気孔90内部でずれるように移動することを許容するためである。
【0025】
他方、塗布によりらせん突起のある封止体120Aを作る場合には、硬度の高い樹脂を選択することが好ましい。突起125と溝94とが係合しつつ封止体120Aが回転しながらスムーズに上下に移動することを可能とするためである。また、この場合にも、筐体20の内圧の変動に応じて封止体120Aが通気孔90内部でずれるように移動することを許容するため、接着力が高すぎない樹脂を選択することが好ましい。
【0026】
以上説明した第1実施形態では通気孔90は柱状の突出部に形成されているが、通気孔90が筐体20の平面の壁部に形成される構成例も有り得る。また、通気孔90は、筐体20の壁部111以外の周壁に形成されていても良い。
【0027】
第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、通気孔を形成する突出部の先端に通気孔を塞ぐ弾性体の封止体を取り付ける構成に関する。本実施形態では、筐体20の内圧の上昇に伴い封止体が弾性変形して筐体20の容積を変化させ、それにより筐体20の内圧を調整する。第2実施形態における筐体20内の圧力変動に伴う封止体の「弾性変形」は、第1実施形態における筐体20内の圧力変動に伴う「封止体の移動」の一つの態様である。第2実施形態にかかる電磁継電器は、通気孔部および封止体以外の構成は図1A-1B、図2で説明した第1実施形態と同じであるため、第2実施形態の電磁継電器についても図1A-1B、図2に図示した各構成要素を適宜参照して説明する。以下、第2実施形態に係る3つの実施例を説明する。
【0028】
第1実施例
図8A-8Cは、第1実施例に係る通気孔および封止体による封止構造を示している。図8Aは通気孔90近辺を上方からみた平面図、図8Bおよび図8Cはカバー11の通気孔90近辺を図8AのラインA-A’で切断した縦断面図である。なお、図8A、8Bでは説明の便宜のため封止体220を省略している。図8A-8Cに示されるように、本実施例では、カバー11の上面11bと右側面11aとの角部に凹部191が形成されている。凹部191の底面には、上方に突出する柱状の突出部193が形成されている。通気孔90は、突出部193に沿って筐体20の内部空間に通じている。
【0029】
突出部193の先端には突出部19から径方向外側に突出するフランジ194が形成されている。フランジ194は上面視で環状に形成されている。突出部193の先端には、フランジ194の外面形状とほぼ等しい内面形状を有する蓋部220aと、蓋部220aの下端で内方に突出してフランジ194と係合する突起220bとを有する封止体220が装着される(図8C)。突起220bの内方先端の内径サイズは、フランジ194の外径サイズよりも小さい。この構成により、図4に示す筐体20の内圧が上昇していない状態では、封止体220は通気孔90を気密封止する。封止体220は、例えば弾性樹脂が硬化した弾性体からなる。封止体220は、突出部193に着脱自在に取り付けることができる。
【0030】
封止体220は弾性を有するため、図8Cの状態から筐体20内の圧力が上昇すると封止体220は弾性変形してフランジ194の上面と蓋部220aの内面との間に隙間が空き、筐体20内の圧力が下降すると封止体220は収縮してフランジ194と蓋部220aの内面とが密着した図8Cの状態に戻る。したがって、封止体220により筐体20内部の圧力の上昇を回避することができ、封止体220により筐体20の内部圧力を調整することができる。なお、筐体20の内圧の上昇または下降に伴い、封止体220の内面と突出部193及び突起部194の外面とのわずかな隙間を介して空気を流すこともできる。封止体220が通気孔90に装着された状態では、異物や水滴等が筐体20内部に侵入することが防止される。
【0031】
第2実施例
図9A-9Cは、第2実施例に係る通気孔および封止体による封止構造を示している。第2実施例は、第1の実施例におけるフランジ194の上面側に傾斜面を設けた構成に相当する。図9Aは通気孔90近辺を上方からみた平面図、図9B-9Cはカバー11の通気孔90近辺を図9AのラインB-B’で切断した縦断面図である。なお、図9A、9Bでは説明の便宜のため封止体320を省略している。図9A-9Cに示されるように、凹部191の底面には、上方に向かって突出する突出部293が形成されている。通気孔90は、突出部293に沿って筐体20の内部空間に通じている。
【0032】
突出部293の先端には径方向外側に突出するフランジ294が形成されている。フランジ294は上面視で環状に形成され、フランジ294上面の外縁部分には、径方向外側に向かうに従って下方に傾斜する環状の傾斜面294aが形成されている。突出部293の先端には、フランジ294の外径サイズとほぼ等しい内径サイズを有する円筒状部320aと、円筒状部320aの開口した下端部にフランジ294の底面と係合するように内方に向かって突出した突起部320bとを備える封止体320が装着されている。図9Cに示す筐体20の内圧が上昇していない状態では、封止体320は通気孔90を気密封止する。封止体320は、例えば弾性樹脂が硬化した弾性体で形成される。封止体320は、突出部293に着脱自在に取り付けることができる。本実施例の場合には、フランジ294に傾斜面294aが形成されているので、封止体320を突出部293に装着する際に、封止体320の下端を傾斜面294aに沿って滑らせるようにして封止体320をフランジ294に嵌め込むことができる。この構成により、封止体320を突出部293に対して嵌め易くすることができる。なお、筐体20の内圧の上昇または下降に伴い、封止体320の内面と突出部293及び突起部294の外面とのわずかな隙間を介して空気を流すこともできる。
【0033】
また、本実施例によれば、封止体320を突出部293に装着した図9Cに示す状態で、傾斜面294aと封止体320の上壁部321の内面との間に隙間Sが形成される。本実施例の場合にも、筐体20の内圧上昇時に封止体320が膨張するように弾性変形して筐体20内部からの空気を受け入れ、それにより筐体20内部の圧力が上昇するのを防止する。特に、本実施例の場合には、隙間Sにより筐体20内部から流出してきた空気を受け入れることができるため、筐体20の内圧調整の能力を高めることができる。
【0034】
第3実施例
図10A-10Cは、第3実施例に係る通気孔および封止体による封止構造を示している。第3実施例は、フランジ194に溝を形成した構成に対応する。図10Aは通気孔90近辺を上方からみた平面図、図10B-10Cはカバー11の通気孔90近辺を図10AのラインC-C’で切断した縦断面図である。なお、図10A、10Bでは説明の便宜のため封止体220を省略している。図10A-10Cに示されるように、凹部191の底面には、上方に向かって突出する突出部393が形成されている。通気孔90は、突出部393の中心軸線に沿って筐体20の内部空間に通じている。
【0035】
突出部393の先端には突出部393の径方向外側に突出するフランジ394が形成されている。フランジ394は上面視で環状に形成されており、また、フランジ394の左右の対向する箇所には上下方向に伸びる2つの溝394bが形成されている。突出部393の先端には、フランジ394の外径形状とほぼ等しい内面形状を有する蓋部220aと、蓋部220aの下端において内方に突出してフランジ394の底面と係合する突起部220bとを有する封止体220が装着される。封止体220は、通気孔90を塞いでいる。
【0036】
筐体20の内圧が上昇すると封止体220が膨張するように弾性変形する。このとき蓋部220aが上側に膨出するように変形することで、溝394bが通気孔90に連通する。この構成により、筐体20の内圧変動に伴い筐体20の容積を変化させ、筐体20の内圧を調整することが可能となる。なお、筐体20の内圧が上昇した場合、図10Cの矢印で示したように溝394bを通して空気の流れを形成し、筐体20の内圧の上昇を防止する。筐体20の内圧が低下する際には、溝394bを通して外部の空気を筐体20内部に引き込むこともできる。
【0037】
以上説明したように第2実施形態に係る電磁継電器の場合にも、異物や水滴等が通気孔からカバー内部に侵入することを防ぐと共にカバー内部の圧力の上昇を簡易な構造により防ぐことができる。
【0038】
以上説明した第2実施形態では、フランジは突出部の先端部に環状に形成されているが、この構成は適宜変形しても良い。例えば、フランジの平面形状も適宜変形することができ、それに合わせて、封止体の形状を変形することができる。
【0039】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【0040】
上述の実施形態で示したカバー、ベース、端子等の形状は一例であり、本発明は、通気孔が形成された筐体を有する様々な形状の電磁継電器に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
9 ベース
11 カバー
18 端子
20 筐体
50 電磁継電器
90 通気孔
91、191 凹部
93、193、293、393 突出部
94 溝
120、120A、220、320 封止体
121 頭部
122 軸部
194、294、394 フランジ
220a 蓋部
220b、320b 突起部
294a 傾斜面
320a 円筒部
394b 溝
S 隙間
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C