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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20230227BHJP
   B05B 12/00 20180101ALN20230227BHJP
   B05B 13/04 20060101ALN20230227BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05B12/00 A
B05B13/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019035354
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138132
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮太
(72)【発明者】
【氏名】小倉 和秀
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】須藤 弘之
(72)【発明者】
【氏名】真田 睦郎
(72)【発明者】
【氏名】横澤 光隆
(72)【発明者】
【氏名】岸 晃
(72)【発明者】
【氏名】富原 誠人
(72)【発明者】
【氏名】根本 陵
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159911(JP,A)
【文献】特開2015-195211(JP,A)
【文献】特開2013-169762(JP,A)
【文献】特表2015-520011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00-17/08
B05C1/00-21/00
B05D1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布物に塗布剤を塗布する塗布方法であって、
被塗布物に表示された該被塗布物の形状を認識するための形状認識表示を撮像手段によって撮像する撮像工程と、
前記撮像手段による撮像結果に基づいて前記被塗布物の形状に応じた塗布剤の塗布経路の指示を行う経路指示工程と、
指示された塗布経路に沿って前記被塗布物に塗布剤を塗布する塗布剤塗布工程と、を含み、
前記経路指示工程における塗布経路の指示は、透過型ディスプレイに映る前記被塗布物に重畳して塗布経路を逐次AR表示することによって行われ、
前記AR表示は、前記被塗布物の形状に応じて設定される基準線と、該基準線の両側に表示されて該基準線に対する許容範囲位置を示す補助線とからなり、
前記塗布剤塗布工程において、前記基準線と重なるように前記被塗布物に塗布剤を塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記基準線と前記補助線とは、線の種類及び/又は色が異なることを特徴とする請求項に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記経路指示工程において、AR表示は、前記被塗布物の形状に応じて予め設定された塗布困難領域では、その他の領域よりも表示速度が遅くなることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記透過型ディスプレイは、塗布作業者に装着される拡張現実用のスマートグラスであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項5】
被塗布物に塗布剤を塗布する塗布方法であって、
被塗布物に表示された該被塗布物の形状を認識するための形状認識表示を撮像手段によって撮像する撮像工程と、
前記撮像手段による撮像結果に基づいて前記被塗布物の形状に応じた塗布剤の塗布経路の指示を行う経路指示工程と、
指示された塗布経路に沿って前記被塗布物に塗布剤を塗布する塗布剤塗布工程と、を含み、
前記撮像工程において、被塗布物に表示された形状認識表示は、映像投影手段によって被塗布物の表面に投影されたグリッド線であることを特徴とする塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤等の塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車体の組立作業では、部材を接合するために接着剤等の塗布剤が塗布される。
【0003】
例えば、自動車のフロント側やリヤ側には、ガラス製のウインドシールドが取り付けられており、組立作業において、ウインドシールドを他の車体パネルに取付ける際には、ウインドシールドの周縁部に接着剤や接着剤塗布の前処理としてのプライマーが塗布される。
【0004】
このウインドシールドは、防水性の観点から、接着剤等によって密閉状態で固着される。密閉性を高めるために、ウインドシールドに塗布されるプライマーや接着剤等の塗布剤は、ウインドシールドの周縁部に沿うように、一定の塗布幅かつ連続するライン状に塗布されることが求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、ロボットアームの先端にプライマーを塗布するための塗布ガンが装着された塗布ロボットが記載されている。この際、塗布ロボットは、該ロボットに予め設定されたプログラムにより、塗布ガンの先端に位置する塗布ヘッドと、ウインドシールドの表面との距離とをほぼ一定に保ちながら、所定の塗布経路に従ってウインドシールドにプライマーを塗布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-317808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
塗布作業において、被塗布物であるウインドシールドは、位置決め手段を用いて位置決めされた状態でプライマーや接着剤等の塗布剤が塗布される。
【0008】
ウインドシールドは、一般に、エアシリンダを用いた吸盤装置等の位置決め手段によって位置決めされるが、気温の変化等の様々な条件によってエアシリンダの圧力が変化することから、位置決めされた状態において、ウインドシールドの曲率に差異が発生する。それ故、量産工程において塗布剤の塗布作業を行う際に、位置決めされたウインドシールドの形状にバラつきが生じていた。
【0009】
このように、被塗布物の形状にバラつきが生じ得る環境下において、ロボットや作業者によって塗布作業が行われると、塗布ヘッドからウインドシールドまでの距離を一定に保つことが困難になり、ウインドシールドの周縁部に塗布される塗布剤の塗布ラインが、所望の塗布ラインから外れることが懸念される。適切な塗布ラインが達成できていない場合、塗布ラインの修正を行う必要が生じて塗布作業の効率が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、接着剤等の塗布剤を被塗布物に塗布する際の塗布作業性を向上することができる塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、被塗布物に塗布剤を塗布する塗布方法であって、被塗布物に表示された該被塗布物の形状を認識するための形状認識表示を撮像手段によって撮像する撮像工程と、前記撮像手段による撮像結果に基づいて前記被塗布物の形状に応じた塗布剤の塗布経路の指示を行う経路指示工程と、指示された塗布経路に沿って前記被塗布物に塗布剤を塗布する塗布剤塗布工程と、を含み、前記経路指示工程における塗布経路の指示は、透過型ディスプレイに映る前記被塗布物に重畳して塗布経路を逐次AR表示することによって行われ、前記AR表示は、前記被塗布物の形状に応じて設定される基準線と、該基準線の両側に表示されて該基準線に対する許容範囲位置を示す補助線とからなり、前記塗布剤塗布工程において、前記基準線と重なるように前記被塗布物に塗布剤を塗布することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、被塗布物に表示された形状認識表示の撮像結果に基づいて被塗布物の形状に応じた塗布剤の塗布経路の指示を行い、指示された塗布経路に沿って塗布剤を塗布するので、被塗布物の形状にバラつきがある場合であっても、個々の被塗布物に応じた適切な塗布剤の塗布ラインを実現することができ、塗布作業性が向上する。
【0014】
この構成によれば、透過型ディスプレイに映る被塗布物に、塗布経路を指示する基準線及び補助線を逐次AR表示し、作業者が透過型ディスプレイを通して基準線に重なるように被塗布物に塗布剤を塗布することで適切な塗布剤の塗布ラインを実現することができるので、塗布作業性に優れている。
【0015】
また、本発明の一実施形態は、前記塗布方法において、前記基準線と前記補助線とは、線の種類及び/又は色が異なることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、線の種類や色の相違によって、基準線と補助線とを容易に識別することができ、作業性が向上する。
【0017】
また、本発明の一実施形態は、前記塗布方法において、前記経路指示工程において、AR表示は、前記被塗布物の形状に応じて予め設定された塗布困難領域では、その他の領域よりも表示速度が遅くなることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、AR表示の表示速度の変化に合わせて塗布剤を塗布することにより、正確な塗布ラインを達成することができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態は、前記塗布方法において、塗布方法において、前記透過型ディスプレイは、塗布作業者に装着される拡張現実用のスマートグラスであることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、スマートグラスを介して基準線及び補助線を容易に視認することができる。
【0021】
また、本発明の一実施形態は、前記塗布方法において、前記塗布剤塗布工程は、塗布剤を塗布する塗布ガンを備えたロボットによって行われ、前記撮像工程の後に、前記撮像結果から前記被塗布物の形状に応じて、前記ロボットの制御部に予め設定された基準となる塗布経路の補正を行う塗布経路補正工程を含み、前記塗布剤塗布工程において、前記ロボットは、前記制御部によって指示された補正後の塗布経路に沿って、前記塗布ガンを移動させて前記被塗布物に塗布剤を塗布することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、塗布作業を行うロボットの制御部によって、予め設定された基準となる塗布経路の補正を行い、補正後の塗布経路に沿って被塗布物に塗布剤を塗布することで適切な塗布剤の塗布ラインを実現することができる。
【0023】
また、本発明の一実施形態は、被塗布物に塗布剤を塗布する塗布方法であって、被塗布物に表示された該被塗布物の形状を認識するための形状認識表示を撮像手段によって撮像する撮像工程と、前記撮像手段による撮像結果に基づいて前記被塗布物の形状に応じた塗布剤の塗布経路の指示を行う経路指示工程と、指示された塗布経路に沿って前記被塗布物に塗布剤を塗布する塗布剤塗布工程と、を含み、前記撮像工程において、被塗布物に表示された形状認識表示は、映像投影手段によって被塗布物の表面に投影されたグリッド線であることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、被塗布物の表面に投影されたグリッド線を用いて被塗布物の形状を認識させて塗布経路を指示することができる。
【0025】
また、本発明の一実施形態は、前記塗布方法において、前記撮像工程において、被塗布物に表示された形状認識表示は、該被塗布物に付されたマーカーであることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、被塗布物に付されたマーカーを用いて被塗布物の形状を認識させて塗布経路を指示することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る塗布方法によれば、接着剤等の塗布剤を被塗布物に塗布する際の塗布作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態の塗布方法に使用される塗布システムの概略説明図。
図2】ウインドシールドを所定位置に配置する位置決め装置を示す側面図である。
図3】スマートグラスに表示されるAR表示を説明する図である。
図4】接着剤の塗布方法の手順を示すフローチャート図。
図5】本発明の第2の実施の形態の塗布方法に使用される塗布システムの概略説明図。
図6】ウインドシールドにグリッド線が投影された状態を示す斜視図。
図7】接着剤の塗布方法の手順を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の塗布方法を行う際に使用される塗布システムの概略説明図である。本実施の形態の塗布システム10は、被塗布物であるウインドシールド20に塗布剤である接着剤42を塗布するためのシステムであり、位置決め装置30と、撮像装置(撮像手段)12と、制御装置14と、作業者50に装着される電子機器である拡張現実用のスマートグラス16と、接着剤42を塗布する塗布装置である塗布ガン40とを備える。
【0030】
ウインドシールド20の表面には、ウインドシールド20の形状を認識させるためのAR(Augmented Reality:拡張現実)マーカー(マーカー)22が付されている。ARマーカー22はウインドシールド20に少なくとも1つ付されており、本実施の形態では、略四角形状のウインドシールド20の4つの角部にそれぞれ付されている。
【0031】
塗布ガン40は、作業者50が把持する把持部及び接着剤42を吐出させる操作スイッチを有する本体部44と、接着剤42が吐出される吐出口を有する塗布ノズル46とを有する。
【0032】
図2は、ウインドシールド20を所定位置に配置する位置決め装置30を示す側面図である。図2において破線で示すウインドシールド20は、位置決め前の形状を示し、実線は位置決めされて所定位置に配置された状態のウインドシールド20の形状を示している。
【0033】
位置決め装置30は、床に固定された下部フレーム31及び上部フレーム32と、下部フレーム31に取付けられたリフトアップ機構33a,33b及び吸盤機構34a,34bと、上部フレーム32に取付けられた上下方向位置決め機構35a,35bと、横方向位置決め機構36a,36bとを備える。
【0034】
リフトアップ機構33a,33b及び吸盤機構34a,34bは、それぞれ、上下方向に延びており、下端部が下部フレーム31に固定され、上端側が図示していないコントローラによって、その上部に載置されたウインドシールド20に向かって伸縮駆動するように構成されている。吸盤機構34a,34bの駆動は、エアシリンダを用いて行われる。
【0035】
上下方向位置決め機構35a,35bは、左右に対を成して配置されたリフトアップ機構33a,33b及び吸盤機構34a,34bの間に位置するように上部フレーム32の中央部分に配置され、ウインドシールド20の上下方向の位置を決定する。この上下方向位置決め機構34a,34bは上下方向に移動可能に構成されている。横方向位置決め機構36a,36bは、上下方向及び横方向(図2の左右方向)に移動可能な円筒状の接触筒部37a,37bを有し、この接触筒部37a,37bはウインドシールド20の位置決め状態において、ウインドシールド20の外周縁部に接触して横方向の位置を決定する。
【0036】
撮像装置12は、撮像レンズと、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子とを含んで構成され、光学像を電気信号に変換する。撮像装置12は、ウインドシールド20が位置決めされた状態で、ウインドシールド20に付されたARマーカー22の全てを撮像可能な位置に配置され、本実施の形態では位置決め装置30の上部フレーム32に固定されている。
【0037】
なお、撮像装置12の配置位置はこれに限られず、例えば、制御装置14とともにスマートグラス16と一体的に構成されていてもよい。
【0038】
スマートグラス16は、メガネ型のウェアラブル端末であって、作業者50の耳や頭部に装着される装着部16aと、透過型のディスプレイ16bとを有する。
【0039】
制御装置14は、例えば、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス等からなるマイクロコンピュータを備えて構成される電子制御装置である。制御装置14は、撮像装置12及びスマートグラス16と有線又は無線で通信可能に接続されており、撮像装置12の撮像結果、例えば、撮像装置12が撮像したウインドシールド20やウインドシールド20に付されたARマーカーや、その周辺の位置決め装置30に関する撮像データ等は、制御装置14に送信される。制御装置14は、この撮像結果に基づいてスマートグラス16の表示画面に、ウインドシールド20に重畳して接着剤42を塗布するための塗布経路を逐次AR(Augmented Reality:拡張現実)表示する。
【0040】
図3はスマートグラス16に表示されるAR表示を説明する図であり、(a)、(b)、(c)の順で塗布作業が行われる。なお、図3(b)(c)では、(a)に記載している塗布ノズル46の記載を省略している。塗布経路を指示するAR表示は、ウインドシールド20の形状に応じて設定される基準線60と、基準線60の両側に表示されて基準線60に対する許容範囲位置を示す2本の補助線61,62とからなる。この基準線60及び補助線61,62は、ウインドシールド20の周縁部に沿って一周するように表示されるが、図3(a)~(c)に示すように、予め設定された表示速度に合わせて所定の領域に逐次表示されることが好ましい。
【0041】
基準線60と補助線61,62とは、線の種類及び/又は色が異なっていることが好ましく、本実施の形態では、基準線60を赤色の実線で表示し、補助線61,62を青色の破線で表示している。なお、基準線60と補助線61,62は同一の種類及び色の線で表示されてもよい。
【0042】
次に、図4を用いて、上述した塗布システム10を用いてウインドシールド20に接着剤42を塗布する方法について説明する。塗布作業は、作業者50がスマートグラス16を装着した状態で行われる。
【0043】
まず、位置決め装置30にウインドシールド20を載置して、リフトアップ機構33a,33b、吸盤機構34a,34b、上下方向位置決め機構35a,35b及び横方向位置決め機構36a,36bを作動させて、ウインドシールド20の位置決めを行う(位置決め工程:ステップS11)。
【0044】
次に、撮像装置12によりウインドシールド20に付されたARマーカーを撮像する(撮像工程:ステップS12)。
【0045】
撮像装置12による撮像結果は制御装置14に送信され、制御装置14は、撮像結果に基づいて位置決めされたウインドシールド20の形状を認識し、認識されたウインドシールド20の形状に基づいて、作業者50が装着したスマートグラス16に映るウインドシールド20上に接着剤52の塗布経路の指示を行う(経路指示工程:ステップS13)。塗布経路の指示は、図3に示すように、スマートグラス16に映るウインドシールド20上に基準線60と補助線61,62とを逐次AR表示することによって行われる。
【0046】
作業者50は、塗布ガン40を用いて指示された塗布経路に沿って接着剤42を塗布する(塗布剤塗布工程:ステップS14)。本実施の形態では、AR表示の基準線60に重なり、かつ2本の補助線61,62の範囲内に収まるように、接着剤42を塗布することで適切な接着剤42の塗布ラインを達成することができる。
【0047】
基準線60及び補助線61,62は、作業者50の作業スピードに合わせるように逐次表示され、本実施の形態では、ウインドシールド20の形状に応じて予め設定された塗布困難領域において、表示速度がその他の領域よりも遅くなるように表示される。具体的には、図3(c)に示すように塗布経路が屈曲する領域では、図3(a)及び(b)に示す塗布経路が直線状になる領域に比べて、基準線60及び補助線61,62の表示速度が遅くなるように設定されている。このAR表示は、ウインドシールド20の周縁部に沿って一周するように逐次表示され、作業者50は、この塗布経路に沿って接着剤42を塗布して作業を完了する。
【0048】
上述した塗布方法によれば、撮像装置12による撮像結果に応じて、その都度、位置決めされたウインドシールド20の形状を認識・特定し、特定されたウインドシールド20の形状に応じてスマートグラス16に映されたウインドシールド20に塗布経路を重畳させるので、ウインドシールド20の形状にバラつきがある場合であっても、個々のウインドシールド20に応じた適切な塗布経路を指示することができ、また、作業者50が指示された塗布経路に沿って接着剤42を塗布することで、適切な接着剤42の塗布ラインを実現することができ、塗布作業性を向上させることができる。
【0049】
本実施の形態では、特に、塗布経路を基準線60と補助線61,62とによって示すことで、より正確な塗布ラインを実現することができる。また、塗布経路を指示する基準線60と補助線61,62の線の種類や色の相違させることにより、作業者50が基準線60と補助線61,62とを容易に視覚的に識別することができ、作業性をより向上することができる。また、塗布ラインが屈曲する領域において、AR表示の表示速度を遅くすることで、塗布ラインの形成が困難な領域においても、より正確な塗布ラインを達成することができる。
【0050】
なお、位置決め工程S11は必須の工程ではなく、省略することも可能である。また、AR表示を行う表示装置は、スマートグラス16に限られず、例えば、制御装置14に通信可能に接続された非装着型の透過型ディスプレイを作業者30とウインドシールド20との間に配置して、この透過型ディスプレイにAR表示を行う構成であってもよい。
【0051】
さらに、AR表示を行うスマートグラス16等の透過型ディスプレイにおいて、塗布経路を重畳表示させるとともに、拡張現実化させた塗布ノズルの位置を重畳させてもよい。これにより、ウインドシールド20と塗布ノズル16との距離がより適切になるように導くことができる。
【0052】
なお、上述した実施の形態では、作業者50により塗布作業を行う例を説明したが、作業者ではなく、ロボットが塗布作業を行ってもよい。かかる場合、ロボットアームの先端に塗布ガン40が装着し、ロボットに装着されたカメラによって、基準線60と補助線61,62とを認識し、認識結果に基づいてロボットアームを動かす構造とすることができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
次に、図5図7を用いて本発明に係る塗布方法の第2の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する第2の実施の形態では、第1の実施の形態と対応する部位に同一の符号を付し、第1の実施の形態と同一の構成についての詳細を省略する。
【0054】
図5は、第2の実施の形態の塗布方法に使用される塗布システムの概略説明図である。本実施の形態の塗布システム10は、位置決め装置30と、映像投影装置(映像投影手段)11と、撮像装置12と、制御装置14と、塗布ガン40とを備える。制御装置14は、塗布作業を行う図示していないロボットに組み込まれており、塗布ガン40はこのロボットのロボットアームの先端に取り付けられている。
【0055】
映像投影装置11は、ウインドシールド20の表面に所定の形状認識表示を投影するものであり、例えば、プロジェクタを用いることができる。本実施の形態において、映像投影装置11は、位置決め装置30の上方に配置されており、図6に示すように、形状認識表示として、位置決めされたウインドシールド20の表面にグリッド線18を投影する。なお、図6では位置決め装置30の記載を省略している。
【0056】
制御装置14には、位置決めされたウインドシールド20の基準となる形状(以下、基準形状とも称する)と、この基準形状の際にロボットが行う接着剤42の塗布作業の塗布経路(以下、基準塗布経路とも称する)とが予め記憶されている。
【0057】
制御装置14は、撮像装置12が撮像した撮像データ、具体的には、グリッド線18が投影されたウインドシールド20の画像データから、ウインドシールド20の形状を認識し、その形状を特定する。映像投影装置11によって投影されたグリッド線18の映り方(例えば、線の長さや線の曲率等)は、位置決めされたウインドシールド20の曲率に依存し、これを撮像した撮像結果に基づき、制御装置14はウインドシールド20の形状を算出することができる。制御装置14には、記憶されたウインドシールド20の基準形状と、撮像結果から特定されたウインドシールド20の形状とを比較し、これらの形状の差分から、基準塗布経路の補正を行うとともに、補正された塗布経路に基づいて塗布作業を行う。
【0058】
次に、図7を用いて、第2の実施の形態の塗布方法の手順について説明する。
【0059】
まず、位置決め装置30にウインドシールド20を載置して、リフトアップ機構33a,33b、吸盤機構34a,34b、上下方向位置決め機構35a,35b及び横方向位置決め機構36a,36bを作動させて、ウインドシールド20の位置決めを行う(位置決め工程:ステップS21)。
【0060】
次に、映像投影装置11により、ウインドシールド20の表面にグリッド線18を投影する(投影工程:ステップS22)。
【0061】
次に、撮像装置12によりウインドシールド20及び投影されたグリッド線18を撮像する(撮像工程:ステップS23)。
【0062】
撮像装置12による撮像結果は制御装置14に送信され、制御装置14は、撮像結果に基づいて位置決めされたウインドシールド20の形状を認識して、その形状を特定し、予め設定された基準形状と撮像結果から特定された形状との差分から、予め設定された基準塗布経路の補正を行う(塗布経路補正工程:ステップS24)。その後、制御装置14は、ロボットアームの駆動機構に対し、補正後の塗布経路に従って塗布作業を行うように指示を行う(経路指示工程:ステップS25)。
【0063】
ロボットアームに装着された塗布ガン40は、指示された塗布経路に沿ってウインドシールド20に接着剤42を塗布する(塗布剤塗布工程:ステップS26)。
【0064】
本実施の形態の塗布方法では、ウインドシールド20の表面に投影されたグリッド線18を用いて、位置決めされたウインドシールド20の形状をその都度特定し、制御装置14に予め設定された塗布経路の補正を行うことにより、気温の変化等によって位置決め装置30の固定力に差異が生じ、ウインドシールド20の曲率が変わる等、ウインドシールド20の形状にバラつきが生じる場合であっても、適切な塗布ラインを実現することができる。これにより、塗布ラインの修正作業を低減して塗布作業性が向上することができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、映像投影装置11によって表示したグリッド線を用いてウインドシールド20の曲率の補正を行っているが、グリッド線に代えて、ウインドシールド20に予め付されたマーカーを撮像装置12によって撮像し、撮像結果からウインドシールド20の曲率の補正や塗布経路の補正を行う構成であってもよい。
【0066】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、各実施の形態において、塗布ガンによって塗布される塗布剤は、接着剤の前処理として塗布されるプライマーであってもよい。
【0068】
また、被塗布物はウインドシールドに限られず、例えば、車両のドアを構成するドアパネルであって、塗布剤は、このドアパネルの周縁部に塗布される粘着性を有するブチルゴムであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 塗布システム
11 映像投影装置(映像投影手段)
12 撮像装置(撮像手段)
14 制御装置(制御部)
16 スマートグラス
18 グリッド線(形状認識表示)
20 ウインドシールド(被塗布物)
22 ARマーカー(形状認識表示)
30 位置決め装置
40 塗布ガン
42 接着剤(塗布剤)
46 塗布ノズル
60 基準線
61、62 補助線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7