(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体製造方法、および、基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
H01L21/304 645C
H01L21/304 651B
(21)【出願番号】P 2019084091
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小林 健司
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-009037(JP,A)
【文献】特開2005-327960(JP,A)
【文献】特表2014-523636(JP,A)
【文献】特開2019-046939(JP,A)
【文献】特開2006-066501(JP,A)
【文献】特開2014-011426(JP,A)
【文献】特開平09-162147(JP,A)
【文献】特開2006-303075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構造物
によってパターン
が形成された基板を処理する基板処理方法であって、
前記基板の表面に処理液を供給する工程と、
前記処理液を洗い流すリンス液を前記基板の表面に供給する工程と、
前記基板の表面を乾燥する工程と
を含
み、
前記基板の表面を乾燥する前記工程は、
前記リンス液を前記基板の表面に供給する前記工程よりも後に、前記基板を回転させながら、前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に大気圧プラズマを照射して前記複数の構造物を同極性に帯電させ、前記複数の構造物の相互間に斥力を働かせる工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記基板の表面を乾燥する前記工程では
、前記基板
の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面における前記大気圧プラズマの照射位置を、前記基板の中心部から縁部に向かって移動する
ことを含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板の表面を乾燥する前記工程は、
前記大気圧プラズマを気流に乗せて、前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に照射することを含む、請求項1または請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記リンス液を供給する前記工程よりも後であって、前記基板の表面を乾燥する前記工程よりも前において、前記基板の表面に第1有機溶剤を供給して、前記基板の表面の前記リンス液を前記第1有機溶剤で置換する工程をさらに含む、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記基板の表面を乾燥する前記工程と並行して実行され、前記基板の表面に第2有機溶剤を供給する工程をさらに含み、
前記第2有機溶剤を供給する前記工程では、前記基板の回転中に、前記基板の表面における前記第2有機溶剤の供給位置を、前記基板の中心部から縁部に向かって移動し、
前記第2有機溶剤の供給位置は、前記大気圧プラズマの照射位置よりも、前記基板の径方向外側である、請求項
4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板の表面を乾燥する前記工程では、前記基板の表面と対向する対向部材が前記基板の表面の上方を覆っているときに、
前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に前記大気圧プラズマを照射する、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記大気圧プラズマは、前記複数の構造物の各々の表面を酸化させる、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記大気圧プラズマは、前記複数の構造物の各々の表面を還元させる、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記基板の表面を乾燥する前記工程では、前記基板の表面と液体との境界部分に前記大気圧プラズマを照射する、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
複数の構造物
によってパターン
が表面に形成された半導体基板を処理して、処理後の前記半導体基板である半導体を製造する半導体製造方法であって、
前記半導体基板の表面に処理液を供給する工程と、
前記処理液を洗い流すリンス液を前記半導体基板の表面に供給する工程と、
前記半導体基板
の表面を乾燥する工程と
を含
み、
前記半導体基板の表面を乾燥する前記工程は、
前記リンス液を前記半導体基板の表面に供給する前記工程よりも後に、前記半導体基板を回転させながら、前記半導体基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に大気圧プラズマを照射して前記複数の構造物を同極性に帯電させ、前記複数の構造物の相互間に斥力を働かせる工程を含む、半導体製造方法。
【請求項11】
前記半導体基板の表面を乾燥する前記工程では、前記半導体基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面における前記大気圧プラズマの照射位置を、前記半導体基板の中心部から縁部に向かって移動することを含む、請求項10に記載の半導体製造方法。
【請求項12】
前記半導体基板の表面を乾燥する前記工程は、
前記大気圧プラズマを気流に乗せて、前記半導体基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に照射することを含む、請求項10または請求項11に記載の半導体製造方法。
【請求項13】
複数の構造物
によってパターン
が表面に形成された基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板の表面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液を洗い流すリンス液を前記基板の表面に供給するリンス液供給部と、
前記基板を保持して回転させる基板保持回転部と、
前記リンス液を前記基板の表面に供給する時よりも後に、
前記基板を乾燥する際に、前記基板保持回転部に保持されて回転している前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に大気圧プラズマを照射し、前記複数の構造物を同極性に帯電させ、前記複数の構造物の相互間に斥力を働かせるプラズマ照射部と
を備える、基板処理装置。
【請求項14】
前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面における前記大気圧プラズマの照射位置が、前記基板の中心部から縁部に向かって移動するように前記プラズマ照射部を移動させる移動部をさらに備える、請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記プラズマ照射部は、
前記大気圧プラズマを気流とともに出射するプラズマノズルを含む、請求項13または請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記リンス液を供給する時よりも後であって、前記大気圧プラズマを照射する時よりも前において、前記基板の表面に第1有機溶剤を供給して、前記基板の表面の前記リンス液を前記第1有機溶剤で置換する第1有機溶剤供給部をさらに備える、請求項
13から請求項15のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記大気圧プラズマの照射と並行して、前記基板の表面に第2有機溶剤を供給する第2有機溶剤供給部
と、
前記第2有機溶剤供給部を移動させる移動部と
をさらに備え、
前記第2有機溶剤の供給位置が、前記大気圧プラズマの照射位置よりも、前記基板の径方向外側に位置するように前記第2有機溶剤供給部を配置し、
前記第2有機溶剤供給部を移動させる前記移動部は、
回転している前記基板の表面における前記第2有機溶剤の供給位置が、前記基板の中心部から縁部に向かって移動するように前記第2有機溶剤供給部を移動させる、請求項
16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板の表面に対向して、前記基板の表面の上方を覆う対向部材をさらに備え、
前記対向部材が前記基板の表面の上方を覆っているときに、前記プラズマ照射部は、前記基板の表面に前記大気圧プラズマを照射する、請求項
13から請求項
17のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記大気圧プラズマは、前記複数の構造物の各々の表面を酸化させる、請求項
13から請求項
18のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記大気圧プラズマは、前記複数の構造物の各々の表面を還元させる、請求項
13から請求項
18のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記プラズマ照射部は、前記基板の表面と液体との境界部分に前記大気圧プラズマを照射する、請求項
13から請求項
20のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法、半導体製造方法、および、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている基板処理方法では、電荷供給工程と、第1の電圧印加工程と、第2の電圧印加工程と、乾燥工程とが実行される。電荷供給工程では、シリコン基板を含む基板に負電荷を供給する。第1の電圧印加工程では、電荷供給工程に並行して、基板の下面に誘電体を介して配置された第1の電極に正極性の電圧を印加する。第2の電圧印加工程では、第1の電圧印加工程の後、基板のアース接続が解除された状態を保ちながら、第1の電極に負極性の電圧を印加する。乾燥工程では、第2の電圧印加工程に並行して、基板の上面から絶縁液体を除去することにより基板を乾燥させる。
【0003】
第2の電圧印加工程において、負極性の電圧を第1の電極に印加することより、基板の内部に蓄積されている負電荷が、第1の電極に反発して基板の上面に集まる。従って、基板の薄膜パターンに電気的な偏りが発生し、負電荷が各薄膜パターンの先端部に集まって、各薄膜パターンの先端部が負極性に帯電する。その結果、隣接する薄膜パターンの間に斥力が働く。
【0004】
一方、隣接する薄膜パターンの間に液面があると、液面と薄膜パターンとの境界位置に液体の表面張力が働く。つまり、引力が隣接する薄膜パターンの間に働く。しかしながら、引力は、薄膜パターンの帯電に起因する斥力によって打ち消される。従って、薄膜パターンに働く力を低減しながら、基板の上面から絶縁液体を除去することができる。その結果、薄膜パターンの倒壊を抑制しながら、基板を乾燥させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の発明者は、特許文献1に記載された基板処理方法と異なる観点から、基板において薄膜パターン等の構造物の倒壊を抑制するための鋭意研究を行った。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板において構造物が倒壊することを抑制できる基板処理方法、半導体製造方法、および、基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、基板処理方法においては、複数の構造物によってパターンが形成された基板が処理される。基板処理方法は、前記基板の表面に処理液を供給する工程と、前記処理液を洗い流すリンス液を前記基板の表面に供給する工程と、前記基板の表面を乾燥する工程とを含む。前記基板の表面を乾燥する前記工程は、前記リンス液を前記基板の表面に供給する前記工程よりも後に、前記基板を回転させながら、前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に大気圧プラズマを照射して前記複数の構造物を同極性に帯電させ、前記複数の構造物の相互間に斥力を働かせる工程を含む。
【0009】
本発明の基板処理方法において、前記基板の表面を乾燥する前記工程では、前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面における前記大気圧プラズマの照射位置を、前記基板の中心部から縁部に向かって移動することを含むことが好ましい。
本発明の基板処理方法において、前記基板の表面を乾燥する前記工程は、前記大気圧プラズマを気流に乗せて、前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に照射することを含むことが好ましい。
【0010】
本発明の基板処理方法は、前記リンス液を供給する前記工程よりも後であって、前記基板の表面を乾燥する前記工程よりも前において、前記基板の表面に第1有機溶剤を供給して、前記基板の表面の前記リンス液を前記第1有機溶剤で置換する工程をさらに含むことが好ましい。
【0011】
本発明の基板処理方法は、前記基板の表面を乾燥する前記工程と並行して実行され、前記基板の表面に第2有機溶剤を供給する工程をさらに含むことが好ましい。前記第2有機溶剤を供給する前記工程では、前記基板の回転中に、前記基板の表面における前記第2有機溶剤の供給位置を、前記基板の中心部から縁部に向かって移動することが好ましい。前記第2有機溶剤の供給位置は、前記大気圧プラズマの照射位置よりも、前記基板の径方向外側であることが好ましい。
【0012】
本発明の基板処理方法において、前記基板の表面を乾燥する前記工程では、前記基板の表面と対向する対向部材が前記基板の表面の上方を覆っているときに、前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に前記大気圧プラズマを照射することが好ましい。
【0013】
本発明の基板処理方法において、前記大気圧プラズマは、前記複数の構造物の各々の表面を酸化させることが好ましい。
【0014】
本発明の基板処理方法において、前記大気圧プラズマは、前記複数の構造物の各々の表面を還元させることが好ましい。
【0015】
本発明の基板処理方法において、前記基板の表面を乾燥する前記工程では、前記基板の表面と液体との境界部分に前記大気圧プラズマを照射することが好ましい。
【0016】
本発明の他の局面によれば、半導体製造方法においては、複数の構造物によってパターンが表面に形成された半導体基板を処理して、処理後の前記半導体基板である半導体が製造される。半導体製造方法は、前記半導体基板の表面に処理液を供給する工程と、前記処理液を洗い流すリンス液を前記半導体基板の表面に供給する工程と、前記半導体基板の表面を乾燥する工程とを含む。前記半導体基板の表面を乾燥する前記工程は、前記リンス液を前記半導体基板の表面に供給する前記工程よりも後に、前記半導体基板を回転させながら、前記半導体基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に大気圧プラズマを照射して前記複数の構造物を同極性に帯電させ、前記複数の構造物の相互間に斥力を働かせる工程を含む。
本発明の半導体製造方法において、前記半導体基板の表面を乾燥する前記工程では、前記半導体基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面における前記大気圧プラズマの照射位置を、前記半導体基板の中心部から縁部に向かって移動することを含むことが好ましい。
本発明の半導体製造方法において、前記半導体基板の表面を乾燥する前記工程は、前記大気圧プラズマを気流に乗せて、前記半導体基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に照射することを含むことが好ましい。
【0017】
本発明のさらに他の局面によれば、基板処理装置は、複数の構造物によってパターンが表面に形成された基板を処理する。基板処理装置は、処理液供給部と、リンス液供給部と、基板保持回転部と、プラズマ照射部とを備える。処理液供給部は、前記基板の表面に処理液を供給する。リンス液供給部は、前記処理液を洗い流すリンス液を前記基板の表面に供給する。基板保持回転部は、前記基板を保持して回転させる。プラズマ照射部は、前記リンス液を前記基板の表面に供給する時よりも後に、前記基板を乾燥する際に、前記基板保持回転部に保持されて回転している前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面に大気圧プラズマを照射し、前記複数の構造物を同極性に帯電させ、前記複数の構造物の相互間に斥力を働かせる。
【0018】
本発明の基板処理装置は、移動部をさらに備えることが好ましい。移動部は、前記基板の前記パターンを構成する前記複数の構造物の表面における前記大気圧プラズマの照射位置が、前記基板の中心部から縁部に向かって移動するように前記プラズマ照射部を移動させることが好ましい。
本発明の基板処理装置において、前記プラズマ照射部は、前記大気圧プラズマを気流とともに出射するプラズマノズルを含むことが好ましい。
【0019】
本発明の基板処理装置は、第1有機溶剤供給部をさらに備えることが好ましい。第1有機溶剤供給部は、前記リンス液を供給する時よりも後であって、前記大気圧プラズマを照射する時よりも前において、前記基板の表面に第1有機溶剤を供給して、前記基板の表面の前記リンス液を前記第1有機溶剤で置換することが好ましい。
【0020】
本発明の基板処理装置は、第2有機溶剤供給部と、移動部とをさらに備えることが好ましい。第2有機溶剤供給部は、前記大気圧プラズマの照射と並行して、前記基板の表面に第2有機溶剤を供給することが好ましい。移動部は、前記第2有機溶剤供給部を移動させることが好ましい。前記第2有機溶剤の供給位置が、前記大気圧プラズマの照射位置よりも、前記基板の径方向外側に位置するように前記第2有機溶剤供給部を配置することが好ましい。前記第2有機溶剤供給部を移動させる前記移動部は、回転している前記基板の表面における前記第2有機溶剤の供給位置が、前記基板の中心部から縁部に向かって移動するように前記第2有機溶剤供給部を移動させることが好ましい。
【0021】
本発明の基板処理装置は、対向部材をさらに備えることが好ましい。対向部材は、前記基板の表面に対向して、前記基板の表面の上方を覆うことが好ましい。前記対向部材が前記基板の表面の上方を覆っているときに、前記プラズマ照射部は、前記基板の表面に前記大気圧プラズマを照射することが好ましい。
【0022】
本発明の基板処理装置において、前記大気圧プラズマは、前記複数の構造物の各々の表面を酸化させることが好ましい。
【0023】
本発明の基板処理装置において、前記大気圧プラズマは、前記複数の構造物の各々の表面を還元させることが好ましい。
【0024】
本発明の基板処理装置において、前記プラズマ照射部は、前記基板の表面と液体との境界部分に前記大気圧プラズマを照射することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基板において構造物が倒壊することを抑制できる基板処理方法、半導体製造方法、および、基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態1に係る基板処理装置を示す模式的断面図である。
【
図2】(a)は、実施形態1に係る基板の表面に付着したリンス液の状態を示す模式的断面図ある。(b)は、実施形態1に係る基板の表面が同極性に帯電された状態を示す模式的断面図である。(c)は、実施形態1に係る基板の表面が同極性に帯電されて基板からリンス液が除去された状態を示す模式的断面図である。
【
図3】(a)は、実施形態1に係るプラズマノズルによるスキャン処理を示す模式的平面図である。(b)は、実施形態1に係るプラズマノズルによるスキャン処理を示す模式的断面図である。
【
図4】実施形態1に係るプラズマノズルを示す模式的断面図である。
【
図5】実施形態1に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態2に係る基板処理装置を示す模式的断面図である。
【
図7】実施形態2に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態3に係る基板処理装置を示す模式的断面図である。
【
図9】(a)は、実施形態3に係るプラズマノズルおよび第2有機溶剤ノズルによるスキャン処理を示す模式的平面図である。(b)は、実施形態3に係るプラズマノズルおよび第2有機溶剤ノズルによるスキャン処理を示す模式的断面図である。
【
図10】実施形態3に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態4に係る基板処理装置を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、本発明の実施形態において、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交し、X軸及びY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。なお、図面の簡略化のため、断面を示す斜線を適宜省略する。また、「平面視」は、鉛直上方から対象を見ることを示す。
【0028】
(実施形態1)
図1~
図5を参照して、本発明の実施形態1に係る基板処理装置100を説明する。基板処理装置100は処理液によって基板Wを処理する。以下、処理液を「処理液LQ」と記載する。基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、電界放出ディスプレイ(Field Emission Display:FED)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、又は、太陽電池用基板である。基板Wは、例えば、略円板状である。以下の実施形態1の説明では、基板Wは半導体基板である。
【0029】
まず、
図1を参照して基板処理装置100を説明する。
図1は、基板処理装置100を示す模式的断面図である。
図1に示すように、基板処理装置100は、チャンバー1と、スピンチャック3と、スピン軸5と、スピンモーター7と、処理液ノズル9と、ノズル移動部11と、バルブV1と、配管P1と、リンス液ノズル13と、バルブV2と、配管P2と、プラズマノズル15と、ノズル移動部17と、バルブV3と、配管P3と、複数のガード19と、制御装置21とを備える。
【0030】
処理液ノズル9は「処理液供給部」の一例に相当する。リンス液ノズル13は「リンス液供給部」の一例に相当する。プラズマノズル15は「プラズマ照射部」の一例に相当する。
【0031】
チャンバー1は略箱形状を有する。チャンバー1は、基板W、スピンチャック3、スピン軸5、スピンモーター7、処理液ノズル9、ノズル移動部11、バルブV1、配管P1の一部、リンス液ノズル13、バルブV2、配管P2の一部、プラズマノズル15、ノズル移動部17、バルブV3、配管P3の一部、および、複数のガード19を収容する。
【0032】
スピンチャック3は、基板Wを保持して回転する。具体的には、スピンチャック3は、チャンバー1内で基板Wを水平に保持しながら、スピンチャック3の回転軸線AXの回りに基板Wを回転させる。
【0033】
スピンチャック3は、複数のチャック部材31と、スピンベース33とを含む。複数のチャック部材31はスピンベース33に設けられる。複数のチャック部材31は基板Wを水平な姿勢で保持する。スピンベース33は、略円板状であり、水平な姿勢で複数のチャック部材31を支持する。
【0034】
スピン軸5は、スピンベース33に固定される。また、スピン軸5は、スピンモーター7の駆動軸に固定される。そして、スピンモーター7は、スピン軸5を回転させることによって、スピンベース33を回転軸線AXの回りに回転させる。その結果、スピンベース33に設けられた複数のチャック部材31に保持された基板Wが回転軸線AXの回りに回転する。
【0035】
処理液ノズル9は、回転中の基板Wの表面に処理液LQを供給する。その結果、処理液LQによって基板Wが処理される。具体的には、処理液ノズル9は、回転中の基板WのパターンPTを構成する複数の構造物の表面に処理液LQを供給する。
【0036】
処理液LQは、例えば、薬液(例えばエッチング液)である。薬液は、例えば、フッ酸(HF)、フッ硝酸(フッ酸と硝酸(HNO3)との混合液)、バファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム、HFEG(フッ酸とエチレングリコールとの混合液)、燐酸(H3PO4)、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、希フッ酸(DHF)、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えば、クエン酸、シュウ酸)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合液(SC1)、塩酸過酸化水素水混合液(SC2)、界面活性剤、または、腐食防止剤である。なお、処理液LQの種類は、基板Wを処理できる限りにおいては、特に限定されない。
【0037】
ノズル移動部11は、処理位置と退避位置との間で処理液ノズル9を移動する。処理位置は、基板Wの上方の位置を示す。処理液ノズル9は、処理位置に位置するときに、基板Wの表面に処理液LQを供給する。退避位置は、基板Wよりも基板Wの径方向外側の位置を示す。
【0038】
具体的には、ノズル移動部11は、アーム111と、回動軸113と、ノズル移動機構115とを含む。アーム111は略水平方向に沿って延びる。アーム111の先端部には処理液ノズル9が取り付けられる。アーム111は回動軸113に結合される。回動軸113は、略鉛直方向に沿って延びる。ノズル移動機構115は、回動軸113を略鉛直方向に沿った回動軸線のまわりに回動させて、アーム111を略水平面に沿って回動させる。その結果、処理液ノズル9が略水平面に沿って移動する。例えば、ノズル移動機構115は、回動軸113を回動軸線のまわりに回動させるアーム揺動モーターを含む。アーム揺動モーターは、例えば、サーボモータである。また、ノズル移動機構115は、回動軸113を略鉛直方向に沿って昇降させて、アーム111を昇降させる。その結果、処理液ノズル9が略鉛直方向に沿って移動する。例えば、ノズル移動機構115は、ボールねじ機構と、ボールねじ機構に駆動力を与えるアーム昇降モーターとを含む。アーム昇降モーターは、例えば、サーボモータである。
【0039】
配管P1は処理液ノズル9に処理液LQを供給する。バルブV1は、処理液ノズル9に対する処理液LQの供給開始と供給停止とを切り替える。
【0040】
リンス液ノズル13は、処理液LQによって基板Wが処理された時よりも後に、回転中の基板Wの表面にリンス液を供給する。具体的には、リンス液ノズル13は、回転中の基板WのパターンPTを構成する複数の構造物の表面にリンス液を供給する。以下、リンス液を「リンス液LN」と記載する。リンス液LNは処理液LQを洗い流す。リンス液LNは、例えば、脱イオン水、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、または、希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水である。リンス液LNの種類は、基板Wをリンスできる限りにおいては、特に限定されない。
【0041】
配管P2はリンス液ノズル13にリンス液LNを供給する。バルブV2は、リンス液ノズル13に対するリンス液LNの供給開始と供給停止とを切り替える。
【0042】
配管P3はプラズマノズル15に気体を供給する。バルブV3は、プラズマノズル15に対する気体の供給開始と供給停止とを切り替える。気体は、例えば、空気、不活性ガス、または、酸素である。不活性ガスは、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、または、水素である。なお、プラズマを生成できる限りにおいては、気体の種類は特に限定されない。
【0043】
プラズマノズル15は、リンス液LNを基板Wに供給する時よりも後に、回転中の基板Wの表面に大気圧プラズマを照射して基板Wの表面を乾燥する。具体的には、プラズマノズル15は、回転中の基板WのパターンPTを構成する複数の構造物の表面に大気圧プラズマを照射する。従って、実施形態1によれば、基板Wを乾燥する際に、大気圧プラズマによって基板Wのパターンを構成する複数の構造物が同極性に帯電される。その結果、基板Wの複数の構造物の相互間に斥力が働いて、基板Wにおいてリンス液LNの表面張力に起因する複数の構造物の倒壊を抑制できる。大気圧プラズマとは、大気圧中で発生されるプラズマのことである。
【0044】
具体的には、プラズマノズル15はプラズマを出射する。つまり、プラズマノズル15は、配管P3から供給された気体を電離してプラズマを生成して、プラズマを気体とともに出射する。換言すれば、プラズマノズル15は、プラズマを気流に乗せて出射する。さらに換言すれば、プラズマノズル15は、プラズマ流を生成して出射する。
【0045】
ノズル移動部17は、照射位置と退避位置との間でプラズマノズル15を移動する。照射位置は、基板Wの上方の位置を示す。プラズマノズル15は、照射位置に位置するときに、基板Wにプラズマを照射する。退避位置は、基板Wよりも基板Wの径方向外側の位置を示す。具体的には、ノズル移動部17は、アーム171と、回動軸173と、ノズル移動機構175とを含む。アーム171の先端部にはプラズマノズル15が取り付けられる。アーム171は、回動軸173およびノズル移動機構175によって駆動されて、略水平面に沿って回動され、または、略鉛直方向に沿って昇降される。その他、アーム171、回動軸173、およびノズル移動機構175の構成は、それぞれ、アーム111、回動軸113、およびノズル移動機構115の構成と同様である。
【0046】
複数のガード19の各々は略筒形状を有する。複数のガード19の各々は、基板Wから排出された液体(処理液LQまたはリンス液LN)を受け止める。なお、ガード19は、基板Wから排出される液体の種類に応じて設けられる。
【0047】
制御装置21は、基板処理装置100の各構成を制御する。制御装置21はコンピューターを含む。具体的には、制御装置21は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーと、記憶装置とを含む。記憶装置は、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。記憶装置は、半導体メモリーのような主記憶装置と、半導体メモリー及び/又はハードディスクドライブのような補助記憶装置とを含む。記憶装置は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。制御装置21のプロセッサーは、制御装置21の記憶装置が記憶しているコンピュータープログラムを実行して、スピンチャック3、スピンモーター7、ノズル移動部11、バルブV1、バルブV2、プラズマノズル15、ノズル移動部17、バルブV3、および、複数のガード19を制御する。
【0048】
次に、
図2(a)~
図2(c)を参照して、基板W、および、基板Wの表面の状態を説明する。
図2(a)は、基板Wの表面に付着したリンス液LNの状態を示す模式的断面図ある。
図2(b)は、基板Wの表面が同極性に帯電された状態を示す模式的断面図である。
図2(c)は、基板Wの表面が同極性に帯電されて基板Wからリンス液LNが除去された状態を示す模式的断面図である。
図2(a)~
図2(c)では、基板Wの表面の一部を拡大して示している。
【0049】
図2(a)に示すように、基板Wは、表面にパターンPTを有する。具体的には、基板Wは、基板本体W1と、パターンPTとを有する。基板本体W1は、シリコンによって形成される。パターンPTは、例えば、微細パターンである。パターンPTは、複数の構造物W2を含む。構造物W2は、例えば、微細構造物である。
【0050】
複数の構造物W2の各々は、所定方向Dに沿って延びている。所定方向Dは、基板本体W1の表面W11に対して交差する方向を示す。実施形態1では、所定方向Dは、基板本体W1の表面W11に対して略直交する方向を示す。
【0051】
複数の構造物W2の各々は、単層または複数層によって構成される。構造物W2が単層によって構成される場合、構造物W2は、絶縁層、半導体層、または、導体層である。構造物W2が複数層によって構成される場合、構造物W2は、絶縁層を含んでもよいし、半導体層を含んでもよいし、導体層を含んでもよいし、絶縁層と半導体層と導体層とのうちの2以上を含んでもよい。
【0052】
絶縁層は、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜である。半導体層は、例えば、ポリシリコン膜、または、アモルファスシリコン膜である。導体層は、例えば、金属膜である。金属膜は、例えば、チタン、タングステン、銅、および、アルミニウムのうちの少なくとも1つを含む膜である。
【0053】
図2(a)に示すように、処理液LQによる処理後に、基板Wの表面にリンス液LNが供給されると、基板Wの表面にリンス液LNが付着する。例えば、基板Wの複数の構造物W2の相互間の間隙にリンス液LNが浸透する。
【0054】
そして、
図2(b)に示すように、回転中の基板Wの表面に大気圧プラズマPMが照射されると、基板Wからリンス液LNが排出されながら、複数の構造物W2の表面が同極性に帯電する。従って、基板Wの複数の構造物W2の相互間に斥力RFが働く。その結果、基板Wにおいてリンス液LNの表面張力に基づく引力AFに起因する複数の構造物W2の倒壊を抑制できる。
【0055】
例えば、基板Wの乾燥の際に、リンス液LNの表面張力に基づく引力AFが構造物W2の倒壊を引き起こす前に、大気圧プラズマPMによって構造物W2の相互間に働く斥力RFが大きくなる。その結果、引力AFに起因する複数の構造物W2の倒壊を抑制できる。
【0056】
図2(c)に示すように、基板Wの複数の構造物W2の相互間の間隙からリンス液LNが除去されて、複数の構造物W2が乾燥した状態では、例えば、複数の構造物W2の各々の表面全体が同極性に帯電する。その結果、複数の構造物W2の乾燥後においても、複数の構造物W2の相互間の斥力RFによって、複数の構造物W2の倒壊を抑制できる。
【0057】
引き続き、
図1および
図2(c)を参照して、大気圧プラズマPMによる帯電後の構造物W2の極性を説明する。
【0058】
図1に示すように、プラズマノズル15に対して、配管P3から、例えば、空気、酸化を促進する不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、または、ヘリウム)、または、酸素が供給されると、プラズマノズル15は、空気、酸化を促進する不活性ガス、または、酸素を電離して、大気圧プラズマPMを生成する。この場合に、大気圧プラズマPMが基板Wの構造物W2の表面に照射されると、大気圧プラズマPMは、基板Wの複数の構造物W2の各々の表面を酸化させる。その結果、
図2(c)に示すように、複数の構造物W2の各々の表面が、負極性(マイナス)に帯電される。酸化を促進する大気圧プラズマPMの元になる空気、酸化を促進する不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、または、ヘリウム)、および、酸素は、比較的取り扱いが容易である。従って、実施形態1によれば、大気圧プラズマPMを容易に生成できる。
【0059】
一方、プラズマノズル15に対して、配管P3から、例えば、還元を促進する不活性ガス(例えば、水素)が供給されると、プラズマノズル15は、還元を促進する不活性ガスを電離して、大気圧プラズマPMを生成する。この場合に、大気圧プラズマPMが基板Wの構造物W2の表面に照射されると、大気圧プラズマPMは、基板Wの複数の構造物W2の各々の表面を還元させる。その結果、複数の構造物W2の各々の表面が、正極性(プラス)に帯電される。例えば、構造物W2がシリコンであり、構造物W2の表面に自然酸化膜(シリコン酸化膜)が形成されている場合は、大気圧プラズマPMによって自然酸化膜が還元されてシリコンになる。従って、この場合は、自然酸化膜を除去するためだけの工程を省略できる。
【0060】
次に、
図3(a)および
図3(b)を参照して、プラズマノズル15による基板Wのスキャン処理を説明する。
図3(a)は、プラズマノズル15による基板Wのスキャン処理を示す模式的平面図である。
図3(b)は、プラズマノズル15による基板Wのスキャン処理を示す模式的断面図である。
図3(a)および
図3(b)では、図面を分かり易くするため、基板Wに付着しているリンス液LNがドットハッチングによって示されている。
【0061】
図3(a)に示すように、プラズマノズル15によるスキャン処理とは、実施形態1では、平面視において、基板Wの表面に対する大気圧プラズマPMの照射位置が円弧状の軌跡TJを形成するように、プラズマノズル15を移動しながら、大気圧プラズマPMを基板Wの表面に照射する処理のことである。軌跡TJは、基板Wの中心部CTと縁部EGとを通る。中心部CTは、基板Wのうち回転軸線AXが通る部分を示す。縁部EGは、基板Wの周縁部を示す。プラズマノズル15による基板Wのスキャン処理中は、プラズマノズル15の移動速度(例えば角速度)は一定である。
【0062】
プラズマノズル15による基板Wのスキャン処理は、基板Wの回転中に実行される。つまり、プラズマノズル15は、基板Wの回転中に、基板Wの表面における大気圧プラズマPMの照射位置を、基板Wの中心部CTから縁部EGに向かって移動する。従って、実施形態1によれば、大気圧プラズマPMによって基板Wの中心部CTから縁部EGに向かってリンス液LNを排出しながら、大気圧プラズマPMによって基板Wの複数の構造物W2を同極性に帯電させることができる。その結果、複数の構造物W2の倒壊を抑制しながら、基板Wの複数の構造物W2の表面を効果的に乾燥できる。
【0063】
具体的には、リンス液LNは、主に大気圧プラズマPMによって基板Wから排出されるため、基板Wは、大気圧プラズマPMによって主に乾燥される。換言すれば、プラズマノズル15は、リンス液LNが遠心力によって基板Wから排出される前に、大気圧プラズマPMによってリンスLNが基板Wから排出されるように、基板Wのスキャン処理を実行する。さらに換言すれば、リンス液LNが遠心力によって基板Wから排出されないうちに、プラズマノズル15は、スキャン処理によって基板Wの表面に大気圧プラズマPMを照射して、基板Wの表面を同極性に帯電させる。従って、リンス液LNが遠心力によって基板Wから排出される前に複数の構造物W2の相互間に斥力が働く。その結果、基板Wにおいてリンス液LNの表面張力に起因する複数の構造物W2の倒壊を効果的に抑制できる。
【0064】
また、
図3(b)に示すように、プラズマノズル15は、基板Wの表面とリンス液LNとの境界部分BDに大気圧プラズマPMを照射する。従って、基板Wの複数の構造物W2の表面が乾くことと略同時に、複数の構造物W2の表面を同極性に帯電できる。その結果、基板Wの乾燥時に複数の構造物W2の倒壊をさらに効果的に抑制できる。リンス液LNは「液体」の一例に相当する。
【0065】
なお、実施形態1では、プラズマノズル15は、所定方向DAに移動して基板Wに対するスキャン処理を実行する。所定方向DAは、基板Wの中心部CTから縁部EGに向かう方向を示す。また、プラズマノズル15による基板Wのスキャン処理は、軌跡TJを形成するようにプラズマノズル15を移動する場合に限定されず、例えば、プラズマノズル15は、基板Wの中心部CTから縁部EGに向かって(つまり、所定方向DAに向かって)直線状に移動してもよい。
【0066】
次に、
図4を参照して、プラズマノズル15の詳細を説明する。
図4は、プラズマノズル15を示す模式的断面図である。
図4に示すように、プラズマノズル15は、第1電極151と、第2電極153とを含む。第1電極151は、略柱状である。第1電極151は、プラズマノズル15内の流路FWに配置される。流路FWには、配管P5から気体が供給される。第2電極453は、略円筒状である。第2電極153は、プラズマノズル15の外周面に設置される。
【0067】
基板処理装置100は、交流電源16をさらに含む。交流電源16は、第1電極151と第2電極153との間に交流電圧を印加する。その結果、配管P3から供給される気体が電離して大気圧プラズマPMが生成される。大気圧プラズマPMは、気体とともに、プラズマノズル15から出射される。第1電極151と第2電極153と交流電源16とは、プラズマ生成器18を構成する。なお、プラズマが発生できる限りにおいては、プラズマ生成器18の構成は特に限定されない。また、基板Wに大気圧プラズマPMを照射できる限りにおいては、プラズマ生成器18の配置は特に限定されない。プラズマ生成器18は、例えば、チャンバー1の外部に配置されていてもよいし、チャンバー1の内部に配置されていてもよい。
【0068】
第1電極151および第2電極153の各々は、例えば、炭素を含有する樹脂によって形成される。炭素は、例えば、カーボンナノチューブである。樹脂は、例えば、フッ素樹脂である。フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)、または、ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)である。このように第1電極151および第2電極153を構成することで、導電性を確保しつつ、耐薬性を向上できる。
【0069】
次に、
図1および
図5を参照して、実施形態1に係る基板処理方法を説明する。基板処理装置100が基板処理方法を実行する。基板処理方法においては、複数の構造物W2を含むパターンPTを有する基板Wが処理される。
図5は、基板処理方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、基板処理方法は、工程S1~工程S5を含む。工程S1~工程S5は、制御装置21による制御に従って実行される。
【0070】
図1および
図5に示すように、工程S1において、搬送ロボット(不図示)は、基板処理装置100に基板Wを搬入する。そして、スピンチャック3は基板Wを保持する。さらに、スピンモーター7がスピンチャック3を駆動して、スピンチャック3が基板Wの回転を開始する。
【0071】
次に、工程S2において、処理液ノズル9は、回転中の基板Wの表面に処理液LQを供給する。具体的には、処理液ノズル9は、基板Wの複数の構造物W2に処理液LQを供給する。その結果、基板Wが処理液LQによって処理される。処理液LQは、例えば、フッ酸である。工程S2での基板Wの回転数は、例えば、400rpmである。
【0072】
次に、工程S3において、リンス液ノズル13は、リンス液LNを回転中の基板Wに供給する。具体的には、リンス液ノズル13は、基板Wの複数の構造物W2にリンス液LNを供給する。その結果、基板W上の処理液LQがリンス液LNによって洗い流されて、基板Wが洗浄される。工程S3での基板Wの回転数は、例えば、800rpm~1000rpmである。そして、工程S4の実行直前では、基板Wの回転数は、例えば、超低速またはゼロrpmにされる。このような基板Wの状態を「パドル状態」と記載する。
【0073】
次に、工程S4において、プラズマノズル15は、回転中の基板Wの表面に大気圧プラズマPMを照射して基板Wを乾燥する。つまり、プラズマノズル15は、リンス液LNを基板Wの表面に供給する工程S3よりも後に、回転中の基板Wの表面に大気圧プラズマPMを照射して基板Wを乾燥する。具体的には、プラズマノズル15は、基板Wの複数の構造物W2の表面に大気圧プラズマPMを照射して基板Wの複数の構造物W2の表面を乾燥する。そして、スピンモーター7がスピンチャック3を停止して、スピンチャック3が基板Wの回転を停止する。
【0074】
さらに具体的には、工程S4では、基板Wの回転中に、基板Wの表面における大気圧プラズマPMの照射位置を、基板Wの中心部CTから縁部EGに向かって移動する。また、工程S4では、基板Wの表面とリンス液LNとの境界部分BDに大気圧プラズマPMを照射する。工程S3での基板Wの回転数は、例えば、5rpm~10rpmである。なお、一般的なスピンドライ処理では、基板Wの回転数は、例えば、1600rpm~2000rpmである。工程S4での基板Wの回転数は、例えば、工程S2での基板Wの回転数よりも低い。また、工程S4での基板Wの回転数は、例えば、工程S3での基板Wの回転数よりも低い。ただし、工程S4での基板Wの回転数は、例えば、工程S3でのパドル状態の基板Wの回転数と同等、または、パドル状態の基板Wの回転数よりも高い。
【0075】
次に、工程S5において、搬送ロボット(不図示)は、基板処理装置100から基板Wを搬出する。そして、処理が終了する。
【0076】
以上、
図1および
図5を参照して説明したように、実施形態1に係る基板処理方法によれば、大気圧プラズマPMによって基板Wの複数の構造物W2が同極性に帯電される。その結果、基板Wの複数の構造物W2の相互間に斥力が働いて、リンス液LNの表面張力に起因する複数の構造物W2の倒壊を抑制できる。
【0077】
また、実施形態1に係る半導体製造方法では、複数の構造物W2を含むパターンPTを有する半導体基板Wを、工程S1~工程S5を含む基板処理方法によって処理して、処理後の半導体基板Wである半導体を製造する。
【0078】
なお、処理液LQによる処理とリンス液LNによる洗浄とを1工程としたときに、工程S4よりも前に、複数工程が含まれてもよい。例えば、工程S2での処理液LQがフッ酸であり、次に、工程S3が実行され、さらに、工程S3の次に、処理液LQとしてSC1を使用した処理を行う工程が実行され、次に、リンス液LNを使用した洗浄を行う工程が実行され、次に工程S4が実行されてもよい。
【0079】
(実施形態2)
図6および
図7を参照して、本発明の実施形態2に係る基板処理装置100Aを説明する。実施形態2では、基板Wにリンス液LNを供給した後に有機溶剤を基板Wに供給する点で、実施形態2は実施形態1と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0080】
図6は、実施形態2に係る基板処理装置100Aを示す模式的断面図である。
図6に示すように、基板処理装置100Aは、
図1に示す基板処理装置100の構成に加えて、流体供給ユニット41と、ユニット動作部42と、バルブV4と、配管P4とをさらに備える。チャンバー1は、流体供給ユニット41、ユニット動作部42、および、配管P4の一部を収容する。
【0081】
流体供給ユニット41は、スピンチャック3の上方に位置する。流体供給ユニット41は、遮断板411と、支軸413と、第1有機溶剤ノズル415とを含む。第1有機溶剤ノズル415は、「第1有機溶剤供給部」の一例に相当する。
【0082】
遮断板411は、例えば、略円板状である。遮断板411の直径は、例えば、基板Wの直径と略同一である。ただし、遮断板411の直径は、基板Wの直径よりも若干小さくてもよいし、若干大きくてもよい。遮断板411は、遮断板411の下面が略水平になるように配置されている。さらに、遮断板411は、遮断板411の中心軸線がスピンチャック3の回転軸線AX上に位置するように配置されている。遮断板411の下面は、スピンチャック3に保持された基板Wに対向している。遮断板411は、水平な姿勢で支軸413の下端に連結されている。
【0083】
ユニット動作部42は、近接位置と退避位置との間で、流体供給ユニット41を上昇又は下降させる。近接位置は、遮断板411が下降して基板Wの上面に所定間隔をあけて近接する位置を示す。近接位置では、遮断板411は、基板Wの表面を覆って、基板Wの表面の上方を遮断する。つまり、近接位置では、遮断板411は、基板Wの表面と対向して、基板Wの表面の上方を覆う。退避位置は、近接位置よりも上方であって、遮断板411が上昇して基板Wから離間している位置を示す。
図6では、遮断板411は退避位置に位置する。例えば、ユニット動作部42は、ボールねじ機構と、ボールねじ機構に駆動力を与える昇降モーターとを含む。昇降モーターは、例えば、サーボモータである。また、ユニット動作部42は、近接位置において、流体供給ユニット41を回転させる。例えば、ユニット動作部42は、モーターと、モーターの回転を流体供給ユニット41に伝達する伝達機構とを含む。
【0084】
流体供給ユニット41の第1有機溶剤ノズル415は、遮断板411および支軸413の内部に配置される。第1有機溶剤ノズル415の先端は遮断板411の下面から露出している。配管P4は第1有機溶剤ノズル415に第1有機溶剤を供給する。バルブV4は、第1有機溶剤ノズル415に対する第1有機溶剤の供給開始と供給停止とを切り替える。バルブV4が開かれると、第1有機溶剤が第1有機溶剤ノズル415に供給される。
【0085】
流体供給ユニット41が近接位置に位置するときに、バルブV4が開かれると、第1有機溶剤ノズル415は、回転中の基板Wの表面に第1有機溶剤を供給する。具体的には、リンス液LNを供給する時よりも後であって、大気圧プラズマPMを照射する時よりも前において、第1有機溶剤ノズル415は、基板Wの表面に第1有機溶剤を供給して、基板Wの表面のリンス液LNを第1有機溶剤で置換する。つまり、第1有機溶剤ノズル415は、基板Wの複数の構造物W2の表面に第1有機溶剤を供給して、複数の構造物W2の表面に付着しているリンス液LNを第1有機溶剤で置換する。
【0086】
第1有機溶剤は、例えば、液体である。第1有機溶剤の表面張力は、リンス液LNの表面張力よりも小さい。従って、実施形態2によれば、リンス液LNを第1有機溶剤に置換することで、基板Wの複数の構造物W2の倒壊をさらに効果的に抑制できる。第1有機溶剤は、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)、または、HFE(ハイドロフルオロエーテル)である。
【0087】
次に、
図6および
図7を参照して、実施形態2に係る基板処理方法を説明する。基板処理装置100Aが基板処理方法を実行する。基板処理方法においては、複数の構造物W2を含むパターンPTを有する基板Wが処理される。
図7は、基板処理方法を示すフローチャートである。
図7に示すように、基板処理方法は、工程S11~工程S16を含む。工程S11~工程S16は、制御装置21による制御に従って実行される。
【0088】
図6および
図7に示すように、工程S11~工程S13は、それぞれ、
図5に示す工程S1~工程S3と同様であり、説明を省略する。
【0089】
工程S14において、第1有機溶剤ノズル415は、回転中の基板Wの表面に第1有機溶剤を供給する。つまり、第1有機溶剤ノズル415は、リンス液LNを供給する工程S13よりも後であって、基板Wの表面を乾燥する工程S15よりも前において、基板Wの表面に第1有機溶剤を供給して、基板Wの表面のリンス液LNを第1有機溶剤で置換する。具体的には、第1有機溶剤ノズル415は、基板Wの複数の構造物W2の表面に第1有機溶剤を供給して、複数の構造物W2に付着しているリンス液LNを第1有機溶剤で置換する。工程S14での基板Wの回転数は、例えば、800rpm~1000rpmである。そして、工程S15の実行直前では、基板Wの回転数は、例えば、超低速またはゼロrpmにされる。このような基板Wの状態を「パドル状態」と記載する。
【0090】
次に、工程S15において、プラズマノズル15は、基板Wの表面に大気圧プラズマPMを照射して基板Wを乾燥する。具体的には、プラズマノズル15は、基板Wの複数の構造物W2の表面に大気圧プラズマPMを照射して基板Wの複数の構造物W2の表面を乾燥する。そして、スピンモーター7がスピンチャック3を停止して、スピンチャック3が基板Wの回転を停止する。
【0091】
なお、工程S15での基板Wの回転数は、例えば、5rpm~10rpmである。工程S15での基板Wの回転数は、例えば、工程S12での基板Wの回転数よりも低い。また、工程S15での基板Wの回転数は、例えば、工程S13での基板Wの回転数よりも低い。さらに、工程S15での基板Wの回転数は、例えば、工程S14での基板Wの回転数よりも低い。ただし、工程S15での基板Wの回転数は、例えば、工程S14でのパドル状態の基板Wの回転数と同等、または、パドル状態の基板Wの回転数よりも高い。
【0092】
次に、工程S16において、搬送ロボット(不図示)は、基板処理装置100Aから基板Wを搬出する。そして、処理が終了する。
【0093】
以上、
図6および
図7を参照して説明したように、実施形態2に係る基板処理方法によれば、大気圧プラズマPMによって基板Wの複数の構造物W2が同極性に帯電される。その結果、基板Wの複数の構造物W2の相互間に斥力が働いて、第1有機溶剤の表面張力に起因する複数の構造物W2の倒壊を抑制できる。加えて、第1有機溶剤の表面張力はリンス液LNの表面張力よりも小さい。従って、複数の構造物W2の倒壊を効果的に抑制できる。その他、実施形態2は実施形態1と同様の効果を有する。
【0094】
また、実施形態2に係る半導体製造方法では、複数の構造物W2を含むパターンPTを有する半導体基板Wを、工程S11~工程S16を含む基板処理方法によって処理して、処理後の半導体基板Wである半導体を製造する。
【0095】
なお、処理液LQによる処理とリンス液LNによる洗浄と第1有機溶剤による置換とを1工程としたときに、工程S15よりも前に、複数工程が含まれてもよい。例えば、工程S12での処理液LQがフッ酸であり、次に、工程S13および工程S14が実行され、さらに、工程S14の次に、処理液LQとしてSC1を使用した処理を行う工程が実行され、次に、リンス液LNを使用した洗浄を行う工程と第1有機溶剤による置換を行う工程とが実行され、次に工程S15が実行されてもよい。
【0096】
ここで、第1有機溶剤は、主に大気圧プラズマPMによって基板Wから排出されるため(工程S15)、基板Wは、大気圧プラズマPMによって主に乾燥される。換言すれば、プラズマノズル15は、第1有機溶剤が遠心力によって基板Wから排出される前に、大気圧プラズマPMによって第1有機溶剤が基板Wから排出されるように、基板Wのスキャン処理を実行する。さらに換言すれば、第1有機溶剤が遠心力によって基板Wから排出されないうちに、プラズマノズル15は、スキャン処理によって基板Wの表面に大気圧プラズマPMを照射して、基板Wの表面を同極性に帯電させる。従って、第1有機溶剤が遠心力によって基板Wから排出される前に複数の構造物W2の相互間に斥力が働く。その結果、基板Wにおいて第1有機溶剤の表面張力に起因する複数の構造物W2の倒壊を効果的に抑制できる。
【0097】
また、プラズマノズル15は、基板Wの表面と第1有機溶剤との境界部分に大気圧プラズマPMを照射する。従って、基板Wの複数の構造物W2の表面が乾くことと略同時に、複数の構造物W2の表面を同極性に帯電できる。その結果、基板Wの乾燥時に複数の構造物W2の倒壊をさらに効果的に抑制できる。第1有機溶剤は「液体」の一例に相当する。
【0098】
(実施形態3)
図8~
図10を参照して、本発明の実施形態3に係る基板処理装置100Bを説明する。実施形態3では、大気圧プラズマPMの照射と並行して有機溶剤を基板Wに供給する点で、実施形態3は実施形態2と主に異なる。以下、実施形態3が実施形態2と異なる点を主に説明する。
【0099】
図8は、実施形態3に係る基板処理装置100Bを示す模式的断面図である。
図8に示すように、基板処理装置100Bは、
図6に示す基板処理装置100Aの構成に加えて、第2有機溶剤ノズル43と、バルブV5と、配管P5とをさらに備える。チャンバー1は、第2有機溶剤ノズル43、および、配管P5の一部を収容する。第2有機溶剤ノズル43は、「第2有機溶剤供給部」の一例に相当する。
【0100】
プラズマノズル15に対する第2有機溶剤ノズル43の位置が一定に維持されるように、第2有機溶剤ノズル43はアーム171の先端に取り付けられる。第2有機溶剤ノズル43は、プラズマノズル15による大気圧プラズマPMの照射と並行して、基板Wの表面に第2有機溶剤を供給する。配管P5は第2有機溶剤ノズル43に第2有機溶剤を供給する。バルブV5は、第2有機溶剤ノズル43に対する第2有機溶剤の供給開始と供給停止とを切り替える。バルブV5が開かれると、第2有機溶剤が第2有機溶剤ノズル43に供給される。
【0101】
第2有機溶剤は、例えば、液体である。第2有機溶剤の表面張力は、リンス液LNの表面張力よりも小さい。第2有機溶剤は、例えば、IPAまたはHFEである。実施形態3では、第2有機溶剤は第1有機溶剤と同じである。
【0102】
次に、
図9(a)および
図9(b)を参照して、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43による基板Wのスキャン処理を説明する。
図9(a)は、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43による基板Wのスキャン処理を示す模式的平面図である。
図9(b)は、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43による基板Wのスキャン処理を示す模式的断面図である。
図9(a)および
図9(b)では、図面を分かり易くするため、基板Wに付着している第1有機溶剤SL1が「薄いドットハッチング」によって示されている。また、基板Wに付着している第2有機溶剤SL2が「濃いドットハッチング」によって示されている。プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43によるスキャン処理は、第1有機溶剤ノズル415によって第1有機溶剤SL1が基板Wの表面に供給された後に実行される。
【0103】
図9(a)に示すように、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43によるスキャン処理とは、平面視において、基板Wの表面に対する大気圧プラズマPMの照射位置と第2有機溶剤SL2の供給位置とが円弧状の軌跡TJを形成するように、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43を移動しながら、大気圧プラズマPMの照射と第2有機溶剤SL2の供給とを基板Wの表面に対して行う処理のことである。軌跡TJは、基板Wの中心部CTと縁部EGとを通る。プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43による基板Wのスキャン処理中は、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43の移動速度(例えば角速度)は一定である。また、第2有機溶剤ノズル43は、プラズマノズル15に対して、基板Wの径方向外側に位置する。
【0104】
具体的には、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43による基板Wのスキャン処理は、基板Wの回転中に実行される。つまり、プラズマノズル15は、基板Wの回転中に、基板Wの表面における大気圧プラズマPMの照射位置を、基板Wの中心部CTから縁部EGに向かって移動する。加えて、第2有機溶剤ノズル43は、基板Wの回転中に、基板Wの表面における第2有機溶剤SL2の供給位置を、基板Wの中心部CTから縁部EGに向かって移動する。第2有機溶剤SL2の供給位置は、大気圧プラズマPMの照射位置よりも、基板Wの径方向外側である。
【0105】
すなわち、大気圧プラズマPMによって基板Wの中心部CTから縁部EGに向かって第1有機溶剤SL1を排出しながら、第2有機溶剤ノズル43は、基板Wの表面と第1有機溶剤SL1との境界部分に、大気圧プラズマPMの照射位置よりも基板Wの径方向外側から第2有機溶剤SL2を供給する。従って、実施形態1によれば、基板Wに既に付着している第1有機溶剤SL1よりも新鮮な第2有機溶剤SL2を供給しつつ、第1有機溶剤SL1および第2有機溶剤SL2を基板Wから排出できる。新鮮な第2有機溶剤SL2の表面張力は基板Wに既に付着している第1有機溶剤SL1の表面張力よりも小さいため、基板Wの複数の構造物W2の倒壊をさらに効果的に抑制しながら、基板Wの複数の構造物W2の表面を乾燥できる。
【0106】
なお、基板Wに既に付着している第1有機溶剤SL1は、大気圧プラズマPMが照射されるまでに水分を吸収して、第1有機溶剤SL1の供給時点よりも、第1有機溶剤SL1の表面張力が若干大きくなる可能性がある。従って、新鮮な第2有機溶剤SL2の表面張力は、基板Wに既に付着している第1有機溶剤SL1の表面張力よりも小さい。特に、第1有機溶剤SL1の供給後に一旦基板Wの回転速度を超低速またはゼロにする場合には(つまり、基板Wをパドル状態にする場合には)、第1有機溶剤SL1は、水分を吸収し易くなって、第1有機溶剤SL1の表面張力が若干大きくなる可能性がある。従って、このような場合には、新鮮で表面張力の小さな第2有機溶剤SL2を供給しつつ大気圧プラズマPMを照射して基板Wを乾燥することは、基板Wの複数の構造物W2の倒壊を抑制する観点から特に有効である。
【0107】
なお、第1有機溶剤SL1および第2有機溶剤SL2は、主に大気圧プラズマPMによって基板Wから排出されるため、基板Wは、大気圧プラズマPMによって主に乾燥される。換言すれば、プラズマノズル15は、第1有機溶剤SL1および第2有機溶剤SL2が遠心力によって基板Wから排出される前に、大気圧プラズマPMによって第1有機溶剤SL1および第2有機溶剤SL2が基板Wから排出されるように、基板Wのスキャン処理を実行する。さらに換言すれば、第1有機溶剤SL1および第2有機溶剤SL2が遠心力によって基板Wから排出されないうちに、プラズマノズル15は、スキャン処理によって基板Wの表面に大気圧プラズマPMを照射して、基板Wの表面を同極性に帯電させる。従って、第1有機溶剤SL1および第2有機溶剤SL2が遠心力によって基板Wから排出される前に複数の構造物W2の相互間に斥力が働く。その結果、基板Wにおいて第1有機溶剤SL1および第2有機溶剤SL2の表面張力に起因する複数の構造物W2の倒壊を効果的に抑制できる。
【0108】
また、
図9(b)に示すように、プラズマノズル15は、基板Wの表面と第2有機溶剤SL2との境界部分BDに大気圧プラズマPMを照射する。従って、基板Wの複数の構造物W2の表面が乾くことと略同時に、複数の構造物W2の表面を同極性に帯電できる。その結果、基板Wの乾燥時に複数の構造物W2の倒壊をさらに効果的に抑制できる。第2有機溶剤SL2は「液体」の一例に相当する。
【0109】
なお、実施形態3では、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43は、所定方向DAに移動して基板Wに対するスキャン処理を実行する。所定方向DAは、基板Wの中心部CTから縁部EGに向かう方向を示す。また、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43による基板Wのスキャン処理は、軌跡TJを形成するようにプラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43を移動する場合に限定されず、例えば、プラズマノズル15および第2有機溶剤ノズル43は、基板Wの中心部CTから縁部EGに向かって(つまり、所定方向DAに向かって)直線状に移動してもよい。
【0110】
次に、
図8および
図10を参照して、実施形態3に係る基板処理方法を説明する。基板処理装置100Bが基板処理方法を実行する。基板処理方法においては、複数の構造物W2を含むパターンPTを有する基板Wが処理される。
図10は、基板処理方法を示すフローチャートである。
図10に示すように、基板処理方法は、工程S21~工程S27を含む。工程S21~工程S27は、制御装置21による制御に従って実行される。
【0111】
図8および
図10に示すように、工程S21~工程S24は、それぞれ、
図7に示す工程S11~工程S14と同様であり、説明を省略する。
【0112】
工程S24の後において、工程S25と工程S26とが並行して実行される。
【0113】
工程S25において、第2有機溶剤ノズル43は、回転中の基板Wの表面に第2有機溶剤SL2を供給する。具体的には、第2有機溶剤ノズル43は、基板Wの複数の構造物W2の表面に第2有機溶剤SL2を供給する。
【0114】
工程S26において、工程S25と並行して、プラズマノズル15は、基板Wの表面に大気圧プラズマPMを照射して基板Wを乾燥する。具体的には、プラズマノズル15は、基板Wの複数の構造物W2の表面に大気圧プラズマPMを照射して基板Wの複数の構造物W2の表面を乾燥する。そして、スピンモーター7がスピンチャック3を停止して、スピンチャック3が基板Wの回転を停止する。
【0115】
次に、工程S27において、搬送ロボット(不図示)は、基板処理装置100Cから基板Wを搬出する。そして、処理が終了する。
【0116】
以上、
図8および
図10を参照して説明したように、実施形態3に係る基板処理方法によれば、大気圧プラズマPMによって基板Wの複数の構造物W2が同極性に帯電される。その結果、基板Wの複数の構造物W2の相互間に斥力が働いて、第1有機溶剤SL1および第2有機溶剤SL2の表面張力に起因する複数の構造物W2の倒壊を抑制できる。加えて、第1有機溶剤SL1の表面張力はリンス液LNの表面張力よりも小さい。従って、複数の構造物W2の倒壊を効果的に抑制できる。加えて、第2有機溶剤SL2の表面張力は第1有機溶剤SL1の表面張力よりも小さい。従って、複数の構造物W2の倒壊をさらに効果的に抑制できる。その他、実施形態3は実施形態2と同様の効果を有する。
【0117】
また、実施形態3に係る半導体製造方法では、複数の構造物W2を含むパターンPTを有する半導体基板Wを、工程S21~工程S27を含む基板処理方法によって処理して、処理後の半導体基板Wである半導体を製造する。
【0118】
なお、処理液LQによる処理とリンス液LNによる洗浄と第1有機溶剤による置換とを1工程としたときに、工程S25および工程S26よりも前に、複数工程が含まれてもよい。
【0119】
また、実施形態3では、第2有機溶剤ノズル43が、プラズマノズル15が取り付けられるアーム171に取り付けられたが、第2有機溶剤SL2の供給位置が大気圧プラズマPMの照射位置よりも基板Wの径方向外側である限りにおいては、第2有機溶剤ノズル43は、プラズマノズル15とは別個に駆動されてもよい。例えば、第2有機溶剤ノズル43に専用のノズル移動部を設けてもよい。
【0120】
(実施形態4)
図11を参照して、本発明の実施形態4に係る基板処理装置100Cを説明する。実施形態4では、遮断板411の内部にプラズマノズル15が配置される点で、実施形態4は実施形態2と主に異なる。以下、実施形態4が実施形態2と異なる点を主に説明する。
【0121】
図11は、実施形態4に係る基板処理装置100Cを示す模式的断面図である。
図11に示すように、基板処理装置100Cは、
図6に示す基板処理装置100Aと同様の構成を備える。ただし、基板処理装置100Cは、基板処理装置100Aと比較して、プラズマノズル15が、遮断板411および支軸413の内部に配置される。遮断板411は、「対向部材」の一例に相当する。また、実施形態4では、
図7に示す基板処理方法と同様の基板処理方法が実行される。ただし、実施形態4では、プラズマノズル15による基板Wのスキャン処理は実行されない。
【0122】
具体的には、遮断板411が近接位置において基板Wの表面の上方を覆っているときに、プラズマノズル15は、基板Wの表面に大気圧プラズマPMを照射する。従って、大気圧プラズマPMは、基板Wの中心部CTに照射される。この場合、遮断板411が基板Wの表面の上方を覆っているため、大気圧プラズマPMは、基板Wの中心部CTから径方向外側に向かって拡がっていく。つまり、遮断板411が基板Wの表面の上方を遮断しているため、大気圧プラズマPMは、基板Wの中心部CTから径方向外側に向かって拡がっていく。従って、大気圧プラズマPMによって基板Wの中心部CTから縁部EGに向かって第1有機溶剤SL1を排出しながら、大気圧プラズマPMによって基板Wの複数の構造物W2を同極性に帯電させることができる。その結果、複数の構造物W2の倒壊を抑制しながら、基板Wの複数の構造物W2の表面を効果的に乾燥できる。その他、実施形態4では実施形態2と同様の効果を有する。
【0123】
なお、遮断板411は、近接位置において、基板Wの表面の上方を覆いつつ、基板Wの周縁にも対向するように基板Wを覆ってもよい。また、第1有機溶剤ノズル415は設けなくてもよい。この場合は、
図5に示す基板処理方法と同様の基板処理方法が実行される。ただし、プラズマノズル15による基板Wのスキャン処理は実行されない。
【0124】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0125】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、基板処理方法、半導体製造方法、および、基板処理装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0127】
9 処理液ノズル(処理液供給部)
13 リンス液ノズル(リンス液供給部)
15 プラズマノズル(プラズマ照射部)
43 第2有機溶剤ノズル(第2有機溶剤供給部)
411 遮断板(対向部材)
415 第1有機溶剤ノズル(第1有機溶剤供給部)
100、100A、100B、100C 基板処理装置
W 基板