(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20230227BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20230227BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20230227BHJP
F24F 1/0076 20190101ALI20230227BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F1/0007 401C
F24F13/14 F
F24F1/0076
(21)【出願番号】P 2019099388
(22)【出願日】2019-05-28
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小塩 豪
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-164052(JP,A)
【文献】特開平11-051444(JP,A)
【文献】特開2005-315538(JP,A)
【文献】特開2019-045025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/79
F24F 13/20
F24F 13/14
F24F 1/0076
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹出口を有し、送風ファンおよび熱交換器を内蔵した本体部と、
前記吹出口を開閉し、前記吹出口から吹き出される風を案内する導風板と、
前記導風板を駆動する導風板駆動機構と、
空気を清浄化する空気清浄部と、
制御部と、を備え、
前記導風板が前記吹出口を覆う閉位置にある状態で、前記導風板と前記吹出口との間には所定の距離以上の隙間が存在し、
前記導風板を前記閉位置として前記吹出口から吹き出した風を前記隙間より機外へ送出する閉位置モードを有し、
前記制御部は、前記熱交換器を用いずに空気清浄部を用いる空気清浄運転時、前記閉位置モードにて運転し、
前記制御部は、前記閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に前記熱交換器を用いる空調運転への移行が指示されると、導風板駆動機構を用いて前記導風板を前記閉位置から開いて空調運転を行うことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記熱交換器を用いずに空気清浄部を用いる空気清浄運転を常時行う常時空気清浄モードを有し、
前記制御部は、常時空気清浄モード時、前記閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に空調運転の実行が指示されると、前記導風板駆動機構を用いて前記閉位置から前記導風板を開いて空調運転を行い、空調運転の停止が指示されると、前記導風板駆動機構を用いて前記導風板を前記閉位置に戻し、前記閉位置モードにて空気清浄運転を再開することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、常時空気清浄モード時、空気清浄運転から空調運転への移行および空調運転から空気清浄運転への移行において、前記送風ファンは停止させないことを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記閉位置が、前記導風板駆動機構による前記導風板の開駆動の初期位置であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記吹出口は、前記本体部における上方から下方に向かって後面側に傾斜した前面部に配された前面パネルに設けられ、
前記導風板は、前記吹出口よりも大きく、前記閉位置で前記前面パネルに重畳して配され、前記隙間が前記導風板と前記前面パネルとの間に形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記導風板は、前記本体部の内側に向かって凹をなすR形状を有することを特徴とする請求項5に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記前面パネルにおける前記吹出口の下方、あるいは前記導風板における前記吹出口の下方と対向する部分に、前記隙間を前記吹出口の上方および左右の側方よりも狭める、あるいはシールするための凸形状を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気清浄機能を搭載した空気調和機(エアコン)が開発されている。また、空気調和機は、省エネ化の観点から大型化する傾向にあり、空気調和機からの風を案内する導風板も大型化している。導風板を大型化することで、より広範囲に風を送ることができ、空調範囲や空気清浄範囲を広くすることができる。このような大型の導風板は、空気調和機の前面に配置される場合が多く、空気調和機の外観の大部分を占めることになる(例えば、特許文献1)。
【0003】
なお、空気調和機には、室外機が分離された分離型と、室外機が一体化された一体型とがあるが、本明細書においては空気調和機とは、分離型の場合は室内機を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、空気調和機において導風板は、空気調和機の停止時に閉じられ、空気調和機の運転時に開かれる。導風板が閉じている停止時の空気調和機は、落ち着いた風貌を呈するが、導風板が開いた運転時の空気調和機は、厳つい風貌を呈し、ユーザが圧迫感を感じる場合がある。空気調和機は、省エネ化の観点から今後も大型化すると考えられるため、運転時におけるユーザが感じる圧迫感を低減することが望まれている。
【0006】
特に、空気調和機の空気清浄運転を、床面に設置されるタイプの空気清浄機と同様に常時実行させようとすると、導風板3は常に開いた状態となる。そのため、圧迫感を嫌うユーザの場合、空気調和機による空気清浄運転は利用し難いものとなる。
【0007】
本発明の一態様は、空気清浄運転時にユーザに与える圧迫感を低減し得る空気調和機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る空気調和機は、吹出口を有し、送風ファンおよび熱交換器を内蔵した本体部と、前記吹出口を開閉し、前記吹出口から吹き出される風を案内する導風板と、前記導風板を駆動する導風板駆動機構と、空気を清浄化する空気清浄部と、制御部と、を備え、前記導風板が前記吹出口を覆う閉位置にある状態で、前記導風板と前記吹出口との間には所定の距離以上の隙間が存在し、前記導風板を前記閉位置として前記吹出口から吹き出した風を前記隙間より機外へ送出する閉位置モードを有し、前記制御部は、前記熱交換器を用いずに空気清浄部を用いる空気清浄運転時、前記閉位置モードにて運転し、前記制御部は、前記閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に前記熱交換器を用いる空調運転への移行が指示されると、導風板駆動機構を用いて前記導風板を前記閉位置から開いて空調運転を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、閉位置モードを有することで、空気清浄運転時にユーザに与える圧迫感を低減し得る空気調和機を提供することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る空気調和機の、導風板が閉位置にある状態の正面図である。
【
図2】実施の形態1に係る空気調和機の、導風板が閉位置にある状態の側面図である。
【
図3】実施の形態1に係る空気調和機の、導風板が閉位置にある状態の縦断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る空気調和機の、導風板が上開きした状態の側面図である。
【
図5】実施の形態1に係る空気調和機の、導風板が上開きした状態の正面図である。
【
図6】実施の形態1に係る空気調和機の、導風板が下開きした状態の側面図である。
【
図7】(a)(b)は、実施の形態1に係る空気調和機の閉位置モード時の風の吹き出しを説明する図であり、(a)は正面より見た図、(b)は側面より見た図である。
【
図8】実施の形態1に係る空気調和機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】実施の形態1に係る空気調和機における常時空気清浄モード時の動作を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態2に係る空気調和機の、導風板が閉位置にある状態の側面図である。
【
図11】実施の形態2に係る空気調和機の、導風板が閉位置にある状態の正面図である。
【
図12】(a)(b)は、実施の形態2に係る空気調和機の閉位置モード時の風の吹き出しを説明する図であり、(a)は正面より見た図、(b)は側面より見た図である。
【
図13】実施の形態3に係る空気調和機の、導風板が閉位置にある状態の模式図である。
【
図14】
図13における矢印Yにて示す方向から実施の形態3に係る空気調和機の吹出口を見た要部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、本実施の形態では、吹出口よりも大きな大型の導風板を備えた空気清浄機能付きの空気調和機を例示する。しかしながら、本願発明は、吹出口と同等サイズの導風板を備えた空気調和機であってもよく、また、空気清浄機能を備えていない空気調和機に適用することもできる。また、本実施の形態では、分離型の空気調和機を例示するが、一体型にも適用可能である。
【0012】
(空気調和機1の概要)
図1は、本実施の形態に係る空気調和機(室内機)1の、導風板3が閉位置にある状態の正面図である。
図2は、空気調和機1の、導風板3が閉位置にある状態の側面図である。
図3は、空気調和機1の、導風板3が閉位置にある状態の縦断面図である。
図4は、空気調和機1の、導風板3が上開きした状態の側面図である。
図5は、空気調和機の、導風板3が上開きした状態の正面図である。
図6は、空気調和機1の、導風板3が下開きした状態の側面図である。
【0013】
図1から
図6に示すように、空気調和機1は、本体部2と、本体部2の前面部に配置される導風板3とを備えている。本体部2の内部には、送風ファン13、熱交換器14等が配されている。なお、本体部2を前面(正面)から見て幅方向を左右方向とし、本体部2の奥行き方向を前後方向とし、本体部2の高さ方向を上下方向とする。
【0014】
本体部2の上面部には上吸込口8が形成され、本体部2の下面部には下吸込口9が形成されている。このうち、上吸込口8には上吸込口8を開閉する蓋部12が設けられ、該蓋部12は、蓋部12を開閉駆動する蓋駆動モータ33(
図8参照)にて開閉される。
【0015】
本体部2の前面部には吹出口7が形成されている。本実施の形態では、本体部2の前面部は、上方から下方に向かって後面側に傾斜しており、この傾斜面に前面パネル4が配されている。吹出口7は、前面パネル4に形成されており、
図5に示すように、前面パネル4においては、左右および上下に大きく吹出口7が開口されている。
【0016】
本体部2の内部には、上吸込口8から吹出口7に至る上空気通路と、下吸込口から吹出口7に至る下空気通路とが形成されている。送風ファン13および熱交換器14は、これら上下の空気通路が共通する部分に配置されている。これら上下の空気通路が共通する部分には、後述するイオン発生器38(
図8参照)も配置されている。
【0017】
また、図示してはいないが、上吸込口8には通常機能のフィルタが配設され、下吸込口9には例えばHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)等の空気清浄効果の高いフィルタが設置されている。HEPAフィルタによる空気清浄Aを伴う運転(空気清浄A運転、空気清浄Aを伴う冷房,暖房,除湿運転等)では、下吸込口9から空気が吸い込まれる。HEPAフィルタを用いない運転では、上吸込口8から空気が吸い込まれる。HEPAフィルタを用いない運転としては、空気清浄を伴わない運転(冷房,暖房,除湿運転等)、イオン発生器38にて発生したイオンを含むイオン風にて空気を浄化する空気清浄Bを伴う運転(空気清浄B運転、空気清浄Bを伴う冷房,暖房,除湿運転等)が含まれる。
【0018】
HEPAフィルタおよびイオン発生器38が空気清浄部に相当する。なお、本実施の形態では、HEPAフィルタおよびイオン発生器38の両方を備える構成を例示するが、何れか一方を備える構成であってもよい。
【0019】
導風板3は、吹出口7を開閉し、吹出口7から吹き出される風を案内する。
図1、
図2に示すように、導風板3は、閉位置にある状態(閉状態とも称する)で吹出口7を覆い、
図4、
図6に示すように開いた状態で吹出口7を開放する。
図4は、導風板3が下端側を軸として上端側が開いた上開きの状態を示している。上開きの状態では風は上吹きとなる。
図4は、導風板3が最大限に上開きした状態を示しており、導風板3の上開きの角度(風向角度)は、導風板3が吹出口7を覆う閉位置から、
図4に示す最大角度まで段階的に設定可能である。
【0020】
図6は、導風板3が上端側を軸として下端側が開いた下開きの状態を示している。下開きの状態では風は下吹きとなる。
図6も、導風板3が最大限に下開きした状態を示しており、導風板3の下開きの角度(風向角度)も、閉位置から
図6に示す最大角度まで段階的に設定可能である。
【0021】
このような導風板3は、アーム15を構成要素の一部として含む、本体部2の左右の側面に設けられた図示しない導風板駆動機構にて駆動される。導風板駆動機構は、導風板3を駆動する導風板駆動モータ34(
図8参照)と、該モータの力を導風板3に伝達する駆動ギア等を備えている。
【0022】
(閉位置にある導風板3と吹出口7との間に形成される隙間10)
図2、
図3に示すように、空気調和機1においては、導風板3が吹出口7を覆っている閉位置にある状態で、導風板3と吹出口7との間に所定の距離X以上の隙間10が存在している。本実施の形態では、隙間10を保持した閉位置にある状態が、導風板の開駆動の初期位置である。導風板駆動機構は閉位置を基準として導風板3を駆動して、上開き又は下開きする。導風板駆動モータ34は、導風板3が閉位置にある状態を基準(ホームポジション)として回転する。
【0023】
この隙間10は、後述する閉位置モードにおいて、吹出口7から吹き出された空気を機外へ送出するために設けられており、空気調和機1は、吹出口7から吹き出した風を隙間10から機外へ送出する閉位置モードを有している。隙間10は、導風板3が閉位置にある状態での空気調和機1の運転を可能にするために設けられている。
【0024】
隙間10の寸法となる上記所定の距離Xは、10mm以上とすることが好ましい。これは、上記所定の距離Xが10mm未満となると、隙間10の寸法が不十分となるためである。隙間10の寸法が不十分となると、吹出口7から吹き出される風が機外へ送出され難くなり、送風ファン13にかかる負荷が大きくなる。本実施の形態では、上記所定の距離Xは15mm~20mmに設定されている。
【0025】
また、本実施の形態では、導風板3は、吹出口7よりも大きく、閉位置で前面パネル4の全体を覆う大きさに形成されている。そして、導風板3は、閉位置で前面パネル4に重畳して配され、隙間10が導風板3と前面パネル4の間に形成されている。
【0026】
このような構成とすることで、吹出口7から吹き出された風は導風板3に沿って案内され、導風板3の端部から空気調和機1の外部(機外)へと送出される。これにより、吹出口7と同程度の大きさで、吹出口7に嵌り込むようにして吹出口7を塞ぐ小型の導風板に比べて、隙間10から送出する風を効果的に空気調和機1の周囲に広めることができる。
【0027】
さらに、本実施の形態では、より好ましい構成として、導風板3は、本体部2の内側に向かって凹をなすR形状を有している。これにより、隙間10から送出される風は、導風板3のR形状に沿って送出され、イオンを含むイオン風やHEPAフィルタで浄化された空気を、より遠くへ送ることができる。
【0028】
また、本実施の形態においては、前面パネル4にも閉位置に位置する導風板3に沿う形状が付与されているので、隙間10から送出される風をより効果的に導風板3のR形状に沿わせて、より遠くへ送ることができる。
【0029】
(閉位置モード)
図7の(a)(b)は、空気調和機1の閉位置モード時の風の吹き出しを説明する図であり、(a)は正面より見た図、(b)は側面より見た図である。
図7の(a)(b)に示すように、吹出口7から吹き出された風は、導風板3の裏面に当たることで隙間10を専ら上下方向に進み、導風板3の上端部および下端部から機外へ送出される。吹出口7の左右方向には、前面パネル4が存在しているため、左右の側端部から機外へ送出される風は少なくなる。
【0030】
特に、
図7の(b)に示すように、導風板3が上述したR形状を有しているので、導風板3の上端部から送出される風は、導風板3のR形状に沿うことで自ずと天井100に沿って進む風となり、コアンダ効果にて遠くへ送り出すことができる。
【0031】
(空気調和機1の制御装置)
図8は、空気調和機1の制御装置の構成を示すブロック図である。
図8に示すように、空気調和機1の制御装置は、例えばマイクロコンピュータからなる制御部31および記憶部39を備えている。制御部31には受信部36が接続され、受信部36は、ユーザが操作するリモートコントローラ(以下、単にリモコンと称する)37からの指令を受信する。制御部31は、リモコン37からの指令に応じて、イオン発生器38、空調部32、蓋駆動モータ33、導風板駆動モータ34および送風機モータ35の動作を制御する。記憶部39は、イオン発生器38、空調部32、蓋駆動モータ33、導風板駆動モータ34および送風機モータ35の動作を制御するために必要な各種の情報を記憶している。
【0032】
空調部32は、冷凍サイクルを実行する部分であり、蒸発器、凝縮機および圧縮機等、冷凍サイクルを実行するための構成を有する。空調部32は、室内機である空気調和機1および室外機5に亘って構成されている。
【0033】
蓋駆動モータ33は、蓋部12を駆動して開閉動作を行わせる。導風板駆動モータ34は、例えば暖房や冷房の設定、あるいはユーザ設定に応じて、導風板3をそれぞれの位置に配置されるように駆動する。送風機モータ35は、送風ファン13を回転させる。
【0034】
制御部31は、冷凍サイクルを動作させない空気清浄運転(熱交換器14を用いずに空気清浄部を用いる空気清浄運転)時、閉位置モードにて運転する。つまり、導風板駆動モータ34を動作させることなく導風板3を閉位置としたままで、送風機モータ35に指示して送風ファン13を回転させる。これにより、閉位置モードでの空気清浄運転が実行される。
【0035】
閉位置モードで行う空気清浄運転としては、HEPAフィルタを用いる空気清浄A運転でも、イオン発生器38で発生したイオンを用いる空気清浄B運転でもよい。HEPAフィルタによる空気清浄A運転であれば、制御部31は、蓋駆動モータ33を駆動させて蓋部12を閉じる。イオン発生器38を用いた空気清浄B運転では、蓋部12は開放したままとし、イオン発生器38をオンする。もちろん、空気清浄A運転と空気清浄B運転の両方を一緒に行ってもよく、その場合は、制御部31は、蓋駆動モータ33を駆動させて蓋部12を閉じ、イオン発生器38をオンする。
【0036】
制御部31は、閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に、リモコン37から導風板3の風向角度が設定された場合は、導風板3が設定された風向角度となるように導風板駆動モータ34を駆動させる。
【0037】
そして、制御部31は、閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に、冷凍サイクルを動作させる(熱交換器14を用いる)空調運転への移行が指示されると、導風板駆動モータ34を動作させて導風板駆動機構を用いて導風板3を閉位置から開いて空調運転を行う。
【0038】
さらに、本実施の形態では、空気調和機1は、冷凍サイクルを動作させない空気清浄運転(熱交換器14を用いずに空気清浄部を用いる空気清浄運転)を常時行う常時空気清浄モードを有している。制御部31は、常時空気清浄モード時、閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に空調運転の実行が指示されると、導風板駆動機構を用いて閉位置から導風板を開いて空調運転を行い、空調運転の停止が指示されると、導風板駆動機構を用いて導風板を閉位置に戻し、閉位置モードにて空気清浄運転を再開する。なお、制御部31は、例えば、リモコンの停止ボタンが2度押しされるなどの特別な停止指示を受け付けることで、常時空気清浄モードを停止する。
【0039】
また、本実施の形態において、制御部31は、常時空気清浄モード時、空気清浄運転から空調運転への移行および空調運転から空気清浄運転への移行において、送風ファン13は停止させないようになっている。
【0040】
(空気調和機1の動作)
図9は、空気調和機1における常時空気清浄モード時の動作を示すフローチャートである。
図9に示すように、空気調和機1の制御部31は、常時空気清浄モードによる運転の開始指示の有無を判断している(S1)。なお、
図9のフローチャートでは図示してはいないが、制御部31は、S1の前後に冷凍サイクルを用いる空調運転の開始指示の有無も判断している。常時空気清浄モードによる運転の開始指示よりも前に空調運転の開始指示が成された場合は、空調運転を実行し、停止が指示されると空調運転を停止する。
【0041】
制御部31は、S1にてYESと判断すると、送風機モータ35をONして、空気清浄運転を開始する(S2)。空気清浄運転では、導風板駆動モータ34はONされず、導風板3は閉位置を保持する(閉位置モード)。これにより、導風板3と前面パネル4(導風板3と吹出口7)との間の隙間10から、HEPAフィルタで浄化された清浄風、又はイオンを含むイオン風、又はイオンを含む清浄風が送出される。上述したように、HEPAフィルタを用いる空気清浄Aの場合は、制御部31は、蓋駆動モータ33をONして蓋部12を閉塞する。
【0042】
制御部31は、常時空気清浄モードで空気清浄運転を実行中に当該モードの停止指示の有無(S3)、および空調運転の開始指示の有無(S4)を繰り返し判断している。S3にてYESと判断すると、送風機モータ35をOFFして常時空気清浄モードを停止する(S11)。
【0043】
また、S4にてYESと判断すると、冷凍サイクルをONして空調運転を開始し(S5)、導風板駆動モータをONして空調運転に応じた位置に導風板3を駆動する(S6)。
なお、空調運転中、HEPAフィルタを用いる空気清浄Aまたはイオン風を用いる空気清浄Bを一緒に行ってもよい。
【0044】
制御部31は、空調運転実行中、空調運転の停止指示の有無を判断している(S7)。S7にてYESと判断すると、冷凍サイクルをOFFして空調運転を停止し(S8)、導風板駆動モータ34をONして導風板3を閉位置に戻す(S9)。S10では、必要に応じた蓋駆動モータ33をONして蓋部12を開閉駆動する。その後、空気清浄運転の開始が指示されなくても、空気清浄運転を再開し(S11)、S3に移行する。本実施の形態では、S5、S8、S11において、送風ファン13は停止されず、送風が継続される。
【0045】
(空気調和機1の利点)
空気調和機1は、導風板3が閉位置にある状態で、導風板3と吹出口7との間に所定の距離X以上の隙間10を有し、該隙間より吹出口7から吹き出した風を機外へ送出する閉位置モードを有し、閉位置モードにて空気清浄運転を行う。したがって、導風板3が閉位置にある圧迫感の少ない風貌にて、空気調和機1にて空気清浄運転を行うことが可能となる。
【0046】
また、床面に設置されるタイプの空気清浄機においては、常時スイッチを入れた状態で使用されることがあるが、同様の使い方を従来の空気清浄機能を有する空気調和機にて実行しようとすると、常に導風板が開いた状態となるため、圧迫感を嫌うユーザには受け入れられない恐れがある。
【0047】
しかしながら、上述したように、本実施の形態の空気調和機1では、空気清浄運転を閉位置モードにて実行するようになっているので、床置きのタイプの空気清浄機と同様の使い方としても、ユーザに与える圧迫感を低減することができる。これにより、空気調和機1による空気清浄運転の実行を受け入れやすくして、空気調和機1による空気清浄運転の普及に貢献できる。
【0048】
しかも、上記構成では、閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に、空調運転への移行が指示されると、導風板3を閉位置から開いて空調運転を行うようになっている。このように、導風板3を前面パネル4との間に隙間10を保持した状態から開くことで、導風板3を吹出口7側に動かして一旦隙間10を無くしてから開く構成に比べて、導風板3を素早く開いて、空調運転による風を送出することができる。
【0049】
さらに、上記構成では、冷凍サイクルを動作させない空気清浄運転を常時行う、空気清浄モードを有している。常時空気清浄モードでは、閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に空調運転の実行が指示されると、閉位置から導風板を開いて空調運転を行い、空調運転の停止が指示されると、導風板を閉位置に戻し、閉位置モードにて空気清浄運転を再開するようになっている。
【0050】
これにより、常時空気清浄モードを選択しておくことで、リモコン37等から必要に応じて空調運転の開始および停止を指示するといった従来通りの利用方法で、常に、空調空間の空気を清浄な状態に保つこことができる。
【0051】
また、常時空気清浄モード時、空気清浄運転から空調運転への移行および空調運転から空気清浄運転への移行において、送風ファン13は停止されず、送風が継続される。これにより、切り替えがスムーズに行え、空調運転および空気清浄運転が遅延なく開始される。その結果、ユーザ操作に対する応答性に優れたものとなり、ユーザの満足度を上げることができる。
【0052】
また、導風板駆動機構にて隙間10を確保した閉位置にまで導風板を移動させる構成とすることも考えられるが、その場合、閉位置に保持している間、導風板駆動機構に負荷がかかる。床置きのタイプの空気清浄機のように、常時空気清浄運転を実行し続ける使い方を考えた場合、導風板3が閉位置にある状態で導風板駆動機構に係る負荷は極力小さくすることが好ましい。
【0053】
上記構成によれば、隙間10を有する閉位置が、導風板駆動機構による導風板3の開駆動の初期位置であるので、導風板駆動機構に含まれる駆動ギア等に負荷を掛けずに隙間10を確保した状態を保持できる。また、導風板駆動モータ34のホームポジションであるので、導風板3の開駆動を迅速に開始できるといった利点もある。
【0054】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施の形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0055】
図10、本実施の形態に係る空気調和機1’の、導風板3が閉位置にある状態の側面図である。
図11は、空気調和機1’の、導風板3が閉位置にある状態の正面図である。
図10、
図11に示すように、前面パネル4における吹出口7の下方に、導風板3と前面パネル4との間に形成される隙間10を狭めるための凸形状25が形成されている。凸形状25は、左右方向に長く形成されている。このような凸形状25が形成されることで、隙間10は、吹出口7の下方においてその上方および左右の側方よりも狭くなっている。また、このような凸形状25は、導風板3における吹出口7の下方と対向する部分に設けてもよい。
【0056】
凸形状25は、前面パネル4あるいは導風板3の一部として形成してもよいが、軟質材料を採用して別部品として形成し、前面パネル4又は導風板3に取り付けてもよい。軟質材料からなる凸形状25とすることで、対向する導風板3又は前面パネル4に当接した状態で上記隙間10を完全にシールすることができる。
【0057】
図12の(a)(b)は、空気調和機1’の閉位置モード時の風の吹き出しを説明する図であり、(a)は正面より見た図、(b)は側面より見た図である。
図12の(a)(b)に示すように、凸形状25によって隙間10が狭められることで、導風板3の下端部から送出される風量が少なくなり、導風板3の上端部から送出される風量が多くなる。
【0058】
導風板3の下端部から送出される風は、空気調和機1の下方に向かうため、空気調和機1の下方に居るユーザに直接当たることがあり、ユーザによっては、風が直に当たることを好まないことがある。このような構成として下方に向かう風量を抑えることで、風が当たることを好まないユーザにも閉位置モードによる運転を好適に利用してもらうことが可能になる。また、導風板3の上端部から送出される風量が増えることでより多くの風を遠くへ送り出すことができる。
【0059】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施の形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0060】
図13は、本実施の形態に係る空気調和機11の、2枚の導風板3A,3Bが閉位置にある状態の模式図である。
図14は、
図13における矢印Yにて示す方向から空気調和機11の吹出口7を見た要部の図である。
【0061】
図13、
図14に示すように、空気調和機11においては、空気調和機11の本体部2の前面に吸込口16が設けられ、本体部2の前面下部が上方から下方に向かって後面側に傾斜しており、この部分の前面パネル4に吹出口7が形成されている。2枚の導風板3A,3Bは、閉位置で吹出口7の内部が矢印Y方向より視認できないように上下に取り付けられ、閉位置にある状態で、2枚の導風板3A,3Bと吹出口7との間には所定の距離X以上の隙間10が存在している。
【0062】
このように、実施の形態1、2で例示した大型の導風板3を備える空気調和機1,1’に限らず、このような小型の導風板3A,3Bを備えた空気調和機11においても、隙間10から風を送出する閉位置モードによる運転を適用することができる。要は、空気調和機における吹出口を導風板で覆って、空気調和機の停止時に内部が見えないようにし、空気調和機の運転時に導風板を動かして吹出口を開放する空気調和機であればよい。
【0063】
また、空気清浄部として、実施の形態1、2で例示した空気調和機1,1’においては、HEPAフィルタおよびイオン発生器38を例示したが、これらに限るものではなく、空調空間の空気を空気調和機から送出する風にて清浄できるものであれば、どのようなタイプでもよい。
【0064】
また、実施の形態1、2で例示した空気調和機1,1’においては、上吸込口8と下吸込口9とを設けた構成を例示したが、吸込口を1つとし、1つの吸込口にHEPAフィルタを設ける構成としてもよい。
【0065】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る空気調和機1は、吹出口7を有し、送風ファン13および熱交換器14を内蔵した本体部2と、前記吹出口7を開閉し、前記吹出口7から吹き出される風を案内する導風板3と、前記導風板3を駆動する導風板駆動機構と、空気を清浄化する空気清浄部(HEPAフィルタ、イオン発生器38)と、制御部31と、を備え、前記導風板3が前記吹出口7を覆う閉位置にある状態で、前記導風板3と前記吹出口7との間には所定の距離以上の隙間10が存在し、前記導風板3を前記閉位置として前記吹出口7から吹き出した風を前記隙間10より機外へ送出する閉位置モードを有し、前記制御部31は、前記熱交換器14を用いずに空気清浄部を用いる空気清浄運転時、前記閉位置モードにて運転し、前記制御部31は、前記閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に前記熱交換器14を用いる空調運転への移行が指示されると、導風板駆動機構を用いて前記導風板3を前記閉位置から開いて空調運転を行う。
【0066】
本発明の態様2係る空気調和機1は、上記態様1において、前記熱交換器14を用いずに空気清浄部を用いる空気清浄運転を常時行う常時空気清浄モードを有し、前記制御部31は、常時空気清浄モード時、前記閉位置モードにて空気清浄運転を実行中に空調運転の実行が指示されると、前記導風板駆動機構を用いて前記閉位置から前記導風板3を開いて空調運転を行い、空調運転の停止が指示されると、前記導風板駆動機構を用いて前記導風板3を前記閉位置に戻し、前記閉位置モードにて空気清浄運転を再開する構成とすることもできる。
【0067】
本発明の態様3係る空気調和機1は、上記態様1において、前記制御部31は、常時空気清浄モード時、空気清浄運転から空調運転への移行および空調運転から空気清浄運転への移行において、前記送風ファン13は停止させない構成とすることもできる。
【0068】
本発明の態様4係る空気調和機1は、上記態様1から3の何れかにおいて、前記閉位置が、前記導風板駆動機構による前記導風板の開駆動の初期位置である構成とすることもできる。
【0069】
本発明の態様5係る空気調和機1は、上記態様1から4の何れかにおいて、前記吹出口7は、前記本体部2における上方から下方に向かって後面側に傾斜した前面部に配された前面パネル4に設けられ、前記導風板3は、前記吹出口7よりも大きく、前記閉位置で前記前面パネル4に重畳して配され、前記隙間10が前記導風板3と前記前面パネル4との間に形成されている構成とすることもできる。
【0070】
本発明の態様6係る空気調和機1は、上記態様5において、前記導風板3は、前記本体部2の内側に向かって凹をなすR形状を有する構成とすることもできる。
【0071】
本発明の態様7係る空気調和機1は、上記態様5又は6において、前記前面パネル4における前記吹出口7の下方、あるいは前記導風板3における前記吹出口7の下方と対向する部分に、前記隙間10を前記吹出口7の上方および左右の側方よりも狭める、あるいはシールするための凸形状25を有する構成とすることもできる。
【0072】
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、1’、11 空気調和機
2 本体部
3、3A,3B 導風板
5 室外機
4 前面パネル
7 吹出口
8 上吸込口
9 下吸込口
10 隙間
12 蓋部
13 送風ファン
14 熱交換器
15 アーム
25 凸形状
31 制御部
32 空調部
33 蓋駆動モータ
34 導風板駆動モータ
35 送風機モータ
38 イオン発生器