(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】掘削可能な対象物への凹所形成方法
(51)【国際特許分類】
E21C 37/08 20060101AFI20230227BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
E21C37/08
E21D9/00 D
(21)【出願番号】P 2019113598
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】橘高 豊明
(72)【発明者】
【氏名】山田 直敏
(72)【発明者】
【氏名】松田 晃典
(72)【発明者】
【氏名】城井 光雄
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-228595(JP,A)
【文献】特開昭49-032433(JP,A)
【文献】特開2009-019393(JP,A)
【文献】特開2013-023921(JP,A)
【文献】特開2003-090136(JP,A)
【文献】特開平01-190892(JP,A)
【文献】特開平06-346679(JP,A)
【文献】実開昭61-202583(JP,U)
【文献】特開平07-317489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 37/08
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤やコンクリート体などの掘削可能な対象物に、外部から奥行き方向や深さ方向の内奥へ向けて、ブロックの切り出しにより凹所を形成する方法であって、
上記対象物の外部から内奥に向け、上記凹所の輪郭形状で輪郭溝を掘削する作業及び該凹所の輪郭形状で包囲される内方の該対象物の外部から内奥に向け、該輪郭溝につながるように、切り出す上記ブロック個々に区分けする区分け溝を掘削する作業を行って、切り出す該ブロックを、その内奥側のみが該対象物とつながっている状態にする溝形成工程と、
上記区分け溝に、溝幅を広げる拡開力を加える割岩装置を設置し、内奥側が上記対象物とつながっている状態の上記ブロックを該割岩装置で該対象物から破断するブロック破断工程と、
上記対象物から破断された上記ブロックを該対象物から撤去して、該対象物に上記凹所を形成する凹所形成工程とを
含み、
前記輪郭溝及び前記区分け溝はともに、掘削形成される孔が隣り合うもの同士で一連につなげられた連続孔で形成され、
前記区分け溝には、大出力の前記割岩装置の設置を可能とするために、該割岩装置よりも長い当該区分け溝の掘削寸法と同じ長さであって、前記孔の孔径よりも大きな穴径の設置用穴が形成されることを特徴とする掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【請求項2】
前記ブロック破断工程は、前記区分け溝を介して隣接する前記ブロック同士のうち、一方の該ブロックで拡開力を支持して、他方の該ブロックを前記対象物から破断することを特徴とする
請求項1に記載の掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【請求項3】
前記輪郭溝に、溝幅を広げる拡開力を加える前記割岩装置を設置し、内奥側が前記対象物とつながっている状態の前記ブロックを該割岩装置で該対象物から破断する追加のブロック破断工程を含むことを特徴とする
請求項1または2に記載の掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【請求項4】
前記追加のブロック破断工程は、前記対象物で拡開力を支持して、前記ブロックを該対象物から破断することを特徴とする
請求項3に記載の掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【請求項5】
前記輪郭溝には、大出力の前記割岩装置の設置を可能とするために、
該割岩装置よりも長い当該輪郭溝の掘削寸法と同じ長さであって、前記孔の孔径よりも大きな穴径の設置用穴が形成されることを特徴とする請求項1~4いずれかの項に記載の掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【請求項6】
上記孔は、少なくとも2つ以上を同時に掘削可能な削孔装置によって形成されることを特徴とする
請求項1~5いずれかの項に記載の掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【請求項7】
前記削孔装置には、複数の前記孔を同時に掘削するための複数の削孔用ビットが設けられ、少なくともいずれかの上記削孔用ビットには、上記孔の掘削と同時に前記設置用穴を掘削するための削穴用ビットが着脱自在に装着されることを特徴とする
請求項6に記載の掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【請求項8】
前記割岩装置が設置される前記区分け溝に隣接する他の前記区分け溝または前記輪郭溝には、該割岩装置の拡開力に対する反力を得るための詰め物が設けられることを特徴とする
請求項1~7いずれかの項に記載の掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【請求項9】
前記輪郭溝または前記区分け溝の掘削寸法は、これら溝に設置される前記割岩装置の長さ寸法の2倍以上であることを特徴とする
請求項1~8いずれかの項に記載の掘削可能な対象物への凹所形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤やコンクリート体などの掘削可能な対象物に、外部から奥行き方向や深さ方向の内奥へ向けて、確実かつ適切にブロックの切り出しを行うことが可能で、対象物の大きさによらず、効率よく凹所を形成することが可能な掘削可能な対象物への凹所形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
岩盤等を掘削して凹所を形成するのに利用可能な技術が、例えば特許文献1~3に開示されている。特許文献1の「掘削法」は、シリンダーを略平行に並べ、その一部又は全部をスベリ板の上に配置したものを岩盤等に予め掘削した孔に挿入し、シリンダーに圧力を加えて岩盤等を破砕して、掘削するようにしている。その際、岩盤にクサビを押し込むシリンダーを同時に装置して掘削したり、孔内に予めウォータージェット等でスリットを切って掘削するようにしている。特許文献1は、自由面で囲まれた岩盤等に適用することで、岩盤ブロックを扱えるというものであった。
【0003】
特許文献2の「岩石等の破砕方法」は、岩石等に複数の孔を穿ち、上記複数の孔のうちの一部の孔に、内部に供給される液体で膨張する弾性部材を挿入すると共に、上記複数の孔のうちの他の一部の孔に、流体シリンダで駆動されるくさびを挿入し、上記弾性部材と流体シリンダに同時に加圧流体を供給して弾性部材とくさびで岩石等を破砕すると共に、破砕後の岩石等の間隙をくさびで保持するようにしている。
【0004】
特許文献3の「割岩装置を用いたトンネル掘削方法」は、トンネル掘進軸と平行に水平のスリット孔及びトンネル外周スリット孔を穿設し、前記水平スリット孔と平行に複数の割岩孔を穿設して同各孔に弾性膨張体を用いた破砕装置を挿入し同装置に連結された液圧発生装置を制御して岩盤に亀裂を発生せしめるとともに、割岩孔と破砕装置との間隙を生起せしめ、液圧発生装置の取り出しを容易ならしめるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭61-202583号全文明細書
【文献】特公平4-28080号公報
【文献】特開平7-317489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術はいずれも、岩盤等に間隔を隔てて横並びに形成した複数の孔それぞれに、岩盤等を破砕することができる破砕装置等を設け、各破砕装置等で孔から亀裂を生じさせることで、岩盤等を破砕して掘削が行えるようにしている。
【0007】
岩盤等の外部からその内奥へ向けて凹所を形成するにあたり、自由面があることを前提とする特許文献1を除き、特許文献2及び3の適用を検討すると、孔から生じさせる亀裂は、必ずしも隣接する孔に向かうとは限らず、すなわち孔間を結ぶ一連の亀裂が得られて岩盤等をブロック化できるとは限らず、凹所の形成にあたっては結局、亀裂を利用しながらブレーカ等で破砕する作業が必要となり、多大な時間と手間を要するという課題があった。
【0008】
岩盤等をブロック化して凹所を形成できるように、孔間を結ぶ一連の亀裂を的確に生じさせる場合には、間隔を狭めるように多数の孔を密に掘削し、そしてこれら多数の孔に対し、数多くの破砕装置等を設置して操作を行う必要があって、掘削作業及び破砕作業に多大な時間と手間を要するという課題があった。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、岩盤やコンクリート体などの掘削可能な対象物に、外部から奥行き方向や深さ方向の内奥へ向けて、確実かつ適切にブロックの切り出しを行うことが可能で、効率よく凹所を形成することが可能な掘削可能な対象物への凹所形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる掘削可能な対象物への凹所形成方法は、岩盤やコンクリート体などの掘削可能な対象物に、外部から奥行き方向や深さ方向の内奥へ向けて、ブロックの切り出しにより凹所を形成する方法であって、上記対象物の外部から内奥に向け、上記凹所の輪郭形状で輪郭溝を掘削する作業及び該凹所の輪郭形状で包囲される内方の該対象物の外部から内奥に向け、該輪郭溝につながるように、切り出す上記ブロック個々に区分けする区分け溝を掘削する作業を行って、切り出す該ブロックを、その内奥側のみが該対象物とつながっている状態にする溝形成工程と、上記区分け溝に、溝幅を広げる拡開力を加える割岩装置を設置し、内奥側が上記対象物とつながっている状態の上記ブロックを該割岩装置で該対象物から破断するブロック破断工程と、上記対象物から破断された上記ブロックを該対象物から撤去して、該対象物に上記凹所を形成する凹所形成工程とを含み、前記輪郭溝及び前記区分け溝はともに、掘削形成される孔が隣り合うもの同士で一連につなげられた連続孔で形成され、前記区分け溝には、大出力の前記割岩装置の設置を可能とするために、該割岩装置よりも長い当該区分け溝の掘削寸法と同じ長さであって、前記孔の孔径よりも大きな穴径の設置用穴が形成されることを特徴とする。
【0011】
前記ブロック破断工程は、前記区分け溝を介して隣接する前記ブロック同士のうち、一方の該ブロックで拡開力を支持して、他方の該ブロックを前記対象物から破断することを特徴とする。
【0012】
前記輪郭溝に、溝幅を広げる拡開力を加える前記割岩装置を設置し、内奥側が前記対象物とつながっている状態の前記ブロックを該割岩装置で該対象物から破断する追加のブロック破断工程を含むことを特徴とする。
【0014】
前記追加のブロック破断工程は、前記対象物で拡開力を支持して、前記ブロックを該対象物から破断することを特徴とする。
【0015】
前記輪郭溝には、大出力の前記割岩装置の設置を可能とするために、該割岩装置よりも長い当該輪郭溝の掘削寸法と同じ長さであって、前記孔の孔径よりも大きな穴径の設置用穴が形成されることを特徴とする。
【0016】
上記孔は、少なくとも2つ以上を同時に掘削可能な削孔装置によって形成されることを特徴とする。
【0017】
前記削孔装置には、複数の前記孔を同時に掘削するための複数の削孔用ビットが設けられ、少なくともいずれかの上記削孔用ビットには、上記孔の掘削と同時に前記設置用穴を掘削するための削穴用ビットが着脱自在に装着されることを特徴とする。
【0018】
前記割岩装置が設置される前記区分け溝に隣接する他の前記区分け溝または前記輪郭溝には、該割岩装置の拡開力に対する反力を得るための詰め物が設けられることを特徴とする。
【0019】
前記輪郭溝または前記区分け溝の掘削寸法は、これら溝に設置される前記割岩装置の長さ寸法の2倍以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる掘削可能な対象物への凹所形成方法にあっては、岩盤やコンクリート体などの掘削可能な対象物に、外部から奥行き方向や深さ方向の内奥へ向けて、確実かつ適切にブロックの切り出しを行うことができ、効率よく凹所を形成することができる。詳細には、区分け溝には、大出力の割岩装置の設置を可能とするために、割岩装置よりも長い当該区分け溝の掘削寸法と同じ長さであって、孔の孔径よりも大きな穴径の設置用穴が形成されるので、区分け溝の溝幅に制限を受けることなく、大出力の割岩装置で効率的にブロックを対象物から破断することができ、また、割岩装置を設置する設置用穴を別途形成するので、区分け溝の溝幅は幅狭でよく、効率よく掘削することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る掘削可能な対象物への凹所形成方法が適用される凹所形成部位の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る掘削可能な対象物への凹所形成方法の好適な一実施形態における溝形成工程の説明図である。
【
図4】
図2に示した溝形成工程に用いられる削孔装置の一例を説明する説明図である。
【
図5】
図4に示した削孔装置で形成される輪郭溝及び区分け溝と、設置用穴の要部拡大図である。
【
図6】
図4に示した削孔装置の削孔用ビットに削穴用ビットを装着した様子を説明する説明図である。
【
図7】本発明に係る掘削可能な対象物への凹所形成方法の好適な一実施形態におけるブロック破断工程の説明図である。
【
図8】
図7に示したブロック破断工程に用いられる割岩装置の一例を説明する説明図である。
【
図10】本発明に係る掘削可能な対象物への凹所形成方法の好適な一実施形態における凹所形成工程の説明図である。
【
図11】
図10に示した凹所形成工程によって対象物に形成された凹所を示す断面図である。
【
図12】本発明に係る掘削可能な対象物への凹所形成方法が適用される凹所形成部位の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる掘削可能な対象物への凹所形成方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1~
図11には、本実施形態に係る掘削可能な対象物への凹所形成方法の実施手順が順次に示されている。
【0023】
本実施形態に係る凹所形成方法は、
図1に示すように、岩盤やコンクリート体など、種々の掘削可能な対象物1の上下左右方向に広がる立面、例えば壁面1aに、当該対象物1の外部から所望の輪郭形状で、奥行き方向の内奥へ向けて横向きの凹所2(
図10及び
図11参照)を形成する場合や、対象物の前後左右方向に広がる平面、例えば床面に、当該対象物の外部から所望の輪郭形状で、深さ方向の内奥へ向けて縦向きの凹所を形成する場合に適用される。
【0024】
以下、対象物1の壁面1aに、外部から奥行き方向の内奥へ向けて、横向きの凹所2を形成する場合を例示して説明する。対象物の床面に、外部から深さ方向の内奥へ向けて、縦向きの凹所を形成する場合も同様である。
【0025】
本実施形態に係る掘削可能な対象物への凹所形成方法は、対象物1からブロック3を切り出すことにより、凹所2を形成するようになっている。
【0026】
図2及び
図3に示すように、最初に、対象物1の壁面1aに外部から、幅の狭いスロット状の溝P,Qを形成する溝形成工程を行う。溝P,Qは2種類形成される。
【0027】
一つの溝Pは、対象物1の外部から内奥に向けて、水平方向横向きに掘削する作業を行い、凹所2の輪郭形状X(
図1参照)で形成される輪郭溝Pである。
【0028】
輪郭溝Pは、凹所2の輪郭形状Xに沿って途切れることなく連続的に一連に形成される。図示例では、輪郭溝Pは、壁面1aの下縁に沿って延びる底部溝部分Paの両端から上方向へ一対の上向き溝部分Pbが延ばされ、これら上向き溝部分Pbが壁面1aの上方で弧状形態を呈するようにしてつなげられて、一連に形成されている。
【0029】
上向き溝部分Pbよりも先に、底部溝部分Paを形成することが望ましい。上向き溝部分Pbを先に形成すると、後から底部溝部分Paを形成する箇所に沈降荷重が作用し、掘削し難くなるためである。
【0030】
また、底部溝部分Paを形成することで、対象物1に発生し得る想定外の割れが、周囲に広がることを防止することができる。
【0031】
もう一つの溝Qは、凹所2の輪郭形状X(輪郭溝P)で包囲される内方の対象物1の外部から内奥に向けて、水平方向横向きに掘削する作業を行い、当該輪郭形状Xの内方を、切り出すブロック3個々に区分けする複数の区分け溝Qである。
【0032】
区分け溝Qは、例えば上下方向及び左右方向それぞれに互いに間隔を隔てて直線状に形成され、その始端及び終端を輪郭溝Pにつなげるようにして形成される。区分け溝Qは、上下方向及び左右方向に限らず、その他の方向に向けて形成されてもよく、また、曲線状に形成してもよい。
【0033】
図示例では、区分け溝Qは、輪郭溝Pで取り囲まれた範囲に、上下の縦方向に2本、左右の横方向に3本で、互いに交差する格子状に形成されている。
【0034】
輪郭溝P及び区分け溝Qは、どちらを先行させて形成してもよい。輪郭溝Pを先行して形成すれば、当該輪郭溝Pによる縁切りにより、区分け溝Qの掘削時に生じる振動が対象物1に伝搬することを防止できる。
【0035】
切り出すブロック3の大きさは、区分け溝Q同士で取り囲まれた、あるいは区分け溝Qと輪郭溝Pで取り囲まれた大きさに規定される。図示例では、左右方向3列、上下方向4列で、区分け溝Qの間隔寸法に応じた大きさで、12個のブロック3が切り出されるようになっている。
【0036】
輪郭溝P及び複数の区分け溝Qは、
図3に示すように、壁面1aから奥行き方向へほぼ同じ掘削寸法で形成される。
【0037】
輪郭溝P及び区分け溝Qで取り囲まれ、その大きさが規定されたすべての各ブロック3は、その内奥側3aのみが対象物1につながっている片持ち状態の四角柱状もしくは三角柱状の形態とされる。
【0038】
溝形成工程で形成される輪郭溝P及び区分け溝Qはともに、対象物1に孔4を掘削する削孔装置5を用いて形成される。
【0039】
この削孔装置5は、
図4に示すように、削孔用ビット6が複数、少なくとも2つ以上、横並びに隣接させて設けられ、一度の削孔操作で、掘削形成される孔4が隣り合うもの同士で一連につながった連続孔を形成するようになっている。
【0040】
図4(A)は、削孔装置5の平面図、
図4(B)は、削孔装置5で形成される連続孔の正面図である。図は、2つの孔4を同時に掘削するために、2個の削孔用ビット6を有する削孔装置5の例を示している。
【0041】
この種の削孔装置5の一例として、株式会社奥村組製の「スロットスター」(商品名)が知られている。
【0042】
「スロットスター」では、前もって形成したパイロット孔にガイド7を挿入し、削孔用ビット6がそれぞれ装着された2本のロッド8を同時にドリフタで前後方向に往復駆動することで、隣接する2つの孔4が互いにつながった状態で同時に掘削形成される。
【0043】
その後は、掘削を終えた孔4にガイド7を挿入し、ドリフタで同様にロッド8を駆動することで、後続する孔4がつながった状態で2つずつ形成される。
【0044】
この作業を繰り返すことで、
図5に示すように、一連につながった連続孔、すなわち孔4の孔径dがほぼ溝幅寸法となる幅狭なスロット状の輪郭溝Pや区分け溝Qが形成されるようになっている。
【0045】
削孔装置5は、3つ以上の複数の孔4を同時に掘削できるように、3個以上の複数の削孔用ビット6を有する構成であってもよいことはもちろんである。
【0046】
溝形成工程では、区分け溝Qには、
図2及び
図5に示すように、後述する割岩装置9の設置、特に大出力の割岩性能が高い割岩装置9の設置が可能なように、孔4の孔径d(区分け溝Qのほぼ溝幅寸法)よりも大きな穴径Dの設置用穴10が形成される。
【0047】
後述するブロック破断工程で説明するように、対象物1の壁面1aに、外部から奥行き方向の内奥へ向けて、横向きの凹所2を形成する場合、内奥側3aのみが対象物1につながっている片持ち状態のブロック3を破断するには、ブロック3の自重を利用することが好ましく、このため、割岩装置9は、各ブロック3の上側に位置する区分け溝Qに設置することが望ましい。
【0048】
従って、各ブロック3それぞれについて、それらブロック3の上側の区分け溝Qに、割岩装置9を設置するための設置用穴10が形成される(
図2中、ブロック(ロ)であれば、区分け溝Qaの設置用穴10aとなる)。
【0049】
図4に示した既述の削孔装置5には、少なくともいずれかの削孔用ビット6に、
図6に示すように、当該削孔用ビット6よりも大型で、大きな穴径の穴(設置用穴10)の掘削が可能な削穴用ビット11が着脱自在に装着される。
【0050】
削孔装置5は、この削穴用ビット11により、
図2及び
図5に示すように、隣接する削孔用ビット6による孔4の掘削(区分け溝Qの形成)と同時に、すなわち区分け溝Qの形成作業中の適宜タイミングで、設置用穴10を形成するようになっている。
【0051】
設置用穴10の形成が完了した後は、削穴用ビット11が削孔用ビット6から取り外されて、孔4の掘削(区分け溝Qの形成)が継続される。
【0052】
図示例では、左右方向中央で最も上段に位置するブロック3(
図2及び
図3中、ブロック(ニ))の上側は、区分け溝Qではなく、輪郭溝Pであるため、この輪郭溝Pにも同様にして、輪郭溝Pの形成作業中の適宜タイミングで、設置用穴10が形成される。設置用穴10は、輪郭溝P及び区分け溝Qの形成終了後にまとめて形成するようにしてもよい。
【0053】
設置用穴10はさらに、割岩装置9を利用したブロック破断工程を効率的に進めるために、必要に応じて、輪郭溝Pの上向き溝部分Pbや、各ブロック3それぞれについて、それらブロック3の右側や左側の区分け溝Qにも追加的に形成される。しかしながら、孔4に割岩装置9を挿入できる場合は、追加的に形成される設置用穴10は、必ずしも設ける必要はない。
【0054】
割岩装置9によって対象物1から破断される各ブロック3を区分けする区分け溝Qが図示例のように、左右の横方向に形成され、これによりブロック3が上下に隣接するように壁面1aの上下方向に間隔を隔てて形成される場合、上のブロック3の大きさが下のブロック3の大きさよりも大きくなる(
図2及び
図3中、ブロック(イ)とブロック(ロ)や、ブロック(ロ)とブロック(ハ)の関係など参照)ように、間隔の寸法(上下方向の間隔寸法:H,H1<H2<H3<H4)が下方で狭く上方で広く設定される。
【0055】
各ブロック3は、その内奥側3aのみが対象物1につながっている片持ち状態であって、ブロック3の対象物1との結合強度は、大きさ(結合面積)だけで言えば、上のブロック3の方が下のブロック3よりも大きい。
【0056】
図示例では、最下段のブロック3(ブロック(イ))から最上段のブロック3(ブロック(ニ))にわたり、順次に結合強度が大きくなるように、区分け溝Qの上下方向の間隔寸法Hが、下のものから上のものに向かって順次に大きくなるように設定されている(H1<H2<H3<H4)。
【0057】
このように上下のブロック3で、対象物1に対する結合強度が異なるようにすることで、割岩装置9でブロック3を破断するとき、一方のブロック3(上のブロック)を、力を受ける支持側として、他方のブロック3(下のブロック)に、破断する力を効果的に作用させることができる。
【0058】
溝形成工程により、輪郭溝P及び区分け溝Qを形成した後、各ブロック3すべてを対象物1から破断するブロック破断工程を行う。
【0059】
ブロック破断工程では、区分け溝Qに、具体的には
図7に示すように、設置用穴10に、溝幅の狭い区分け溝Qの溝幅を広げる拡開力Fを加える割岩装置9が設置される。
【0060】
割岩装置9は、区分け溝Qの奥行き方向寸法が長く、所定の長い距離にわたって溝幅を拡開できるものが好ましい。
【0061】
この種の割岩装置9の一例として、株式会社中部ロックドリルサービス製の「油圧式割岩機ロックスプリッター」(商品名)が知られている。
【0062】
割岩装置9の一例である「ロックスプリッター」は、
図8に示すように、油圧ポンプ12から油圧が導入される竿状のシリンダー13の長さ方向(区分け溝Qの奥行き方向)に、当該シリンダー13から油圧で突出駆動されるピストン14がシリンダー13の長さ方向に複数配列され、シリンダー13を割岩対象部位に差し入れ、ピストン14をシリンダー13から突出させることで、割岩対象部位に割れを生じさせるようになっている。
【0063】
図8(A)は、割岩装置9(ロックスプリッター)の斜視図、
図8(B)は、割岩装置9(ロックスプリッター)のピストン14の突出動作を示す側面図である。
【0064】
本実施形態のブロック破断工程では上述したように、区分け溝Qを介して上下に隣接する上下のブロック3同士のうち、上のブロック3を支持側とし、下のブロック3に破断力を作用させるようにしていて、割岩装置9は、
図7及び
図9に示すように、拡開力Fを支持する上のブロック3の下面にシリンダー13が当てられ、突出駆動されるピストン14が、破断作用を受ける下のブロック3に面するようにして、設置用穴10に差し入れて設置される。
【0065】
設置用穴10の穴径Dが、区分け溝Qを形成する孔4の孔径dよりも大きく形成されているので、大出力の割岩装置9を設置して、ブロック3を破断することができる。
【0066】
割岩装置9は、上下のブロック3に対し、区分け溝Qの溝幅を広げる拡開力Fを加える。この拡開力Fにより、
図9に示すように、上のブロック3に対して、下のブロック3が押し下げられ、対象物1と内奥側3aのみで当該対象物1につながっている片持ち状態のブロック3に、割岩装置9の先端部位置で割りCが入れられ、ブロック3が対象物1から破断される。この際、上のブロック3の自重も、拡開力Fを支持するのに寄与させることができる。
【0067】
割岩装置9は、区分け溝Qに浅く差し入れるだけで、ピストン14の突出による下のブロック3の押し下げに伴って、割岩装置9の先端部に最大せん断力を発生させることができ、その位置から効率的にブロック3を破断することができる。輪郭溝Pや区分け溝Qの掘削寸法は、これら溝P,Qに設置される割岩装置9の長さ寸法より長いこと、特に、割岩装置9の長さ寸法の2倍以上であることが好ましい。すなわち、溝P,Qの掘削寸法を、割岩装置9の長さ寸法の2倍よりも長くすれば、割岩装置9のほぼ長さ寸法にわたりブロック3に割りCが入れられ、これにより破断されたブロック3を撤去した後、奥に残っている孔4内に割岩装置9を挿入することで、既に形成した孔4を利用して、さらにもう一度、対象物1からブロック3を破断することができ、効率的に作業を進めることができる。
【0068】
この際、上のブロック3は、下のブロック3よりも、対象物1に対する結合強度が大きいので、割岩装置9を安定的に支持して、動作させることができる。
【0069】
また、ブロック破断工程では、破断対象のブロック3の上側に位置する区分け溝Qに割岩装置9を設置するようにする。
【0070】
このように、破断対象である下のブロック3の上で割岩装置9を作動して当該下のブロック3を押し下げると、この下のブロック3自体の自重も、割れCの発生に寄与させることができる。
【0071】
加えて、破断対象の下のブロック3上側の区分け溝Qに割岩装置9を設置して作業を行うので、割岩装置9が、破断されたブロック3の下敷きになってしまって、取り出しが困難になることを避けることができる。
【0072】
最上段のブロック3(
図2及び
図3中、例えばブロック(ニ))の破断は、上記ブロック破断工程の実施後、追加のブロック破断工程として実施される。
【0073】
追加のブロック破断工程は、輪郭溝Pの溝幅を広げる拡開力Fを加えるように、輪郭溝Pに形成した設置用穴10に上記割岩装置9を設置することで、ブロック破断工程の場合と同様に実施される。
【0074】
具体的には、輪郭溝Pを挟んで上下に隣接する対象物1とブロック3のうち、対象物1を支持側としてブロック3に破断力を作用させるように、割岩装置9は、拡開力Fを支持する対象物1の下面にシリンダー13が当てられ、突出駆動されるピストン14が破断作用を受けるブロック3に面するようにして、設置用穴10に差し入れて設置される。
【0075】
割岩装置9は、対象物1とブロック3に対し、輪郭溝Pの溝幅を広げる拡開力Fを加える。この拡開力Fにより、対象物1に対して、ブロック3が押し下げられ、対象物1と内奥側3aのみで当該対象物1につながっている片持ち状態の当該ブロック3に割りCが入れられ、ブロック3が対象物1から破断される。
【0076】
この際、ブロック3は、対象物1に片持ち状態でつながっているだけで結合強度が小さいので、割岩装置9の拡開力Fを対象物1側で安定的に支持して、ブロック3を破断することができる。
【0077】
さらに、割岩装置9でブロック3を押し下げるとき、当該ブロック3の自重も、割れCの発生に寄与させることができる。
【0078】
追加のブロック破断工程では、輪郭溝Pに割岩装置9を設置するので、対象物1の崩落はなく、何ら支障なく設置箇所から取り出すことができる。
【0079】
以上のブロック破断工程は、上下に隣接するブロック3のうち、下のブロック3を対象物1から破断した後に、上のブロック3を対象物1から破断するようにし、追加のブロック破断工程は、最後に行うようにしている。
【0080】
具体的には、最下段のブロック3(
図2及び
図3中、ブロック(イ))を破断すると、このブロック3は、輪郭溝Pの底部溝部分Paへ落とし込まれる。その後、直上のブロック3(
図2及び
図3中、ブロック(ロ))を破断すると、このブロック3は、既に破断されて底部溝部分Paに落とし込まれたブロック3の上に、区分け溝Qの溝幅分沈下するように落とされる。
【0081】
このような順番で、
図10に示すように、最下段のブロック3から最上段のブロック3まで順次破断することで、ブロック3を撤去する際、対象物1との間に大きな隙間を形成できて、最上段のブロック3(
図2及び
図3中、ブロック(ニ))から円滑に撤去することができる。
【0082】
さらに、ブロック破断工程では、上述したように必要に応じて追加的に形成される、輪郭溝Pの上向き溝部分Pb、そしてまたブロック3の右側や左側の区分け溝Qにも割岩装置9を設置して、ブロック3の破断作業を補助し、効率的に作業を進めるようにしてもよい。
【0083】
ブロック破断工程ではまた、
図9に示すように、割岩装置9が設置される区分け溝Qに隣接する他の区分け溝Qに、割岩装置9の拡開力Fに対する反力を得るための詰め物15を設けるようにしてもよい。
【0084】
具体的には、上述したように、区分け溝Qを介して上下に隣接する上下のブロック3同士のうち、上のブロック3を支持側とし、下のブロック3に破断力を作用させるようにしていて、割岩装置9は、破断対象である下のブロック3上の区分け溝Qの設置用穴10に設置されることから、詰め物15は、支持側となる上のブロック3が拡開力Fで持ち上がらないように、割岩装置9の拡開力Fに対する反力を得る目的で、上のブロック3上の他の区分け溝Qに差し入れて設けられる。
【0085】
詰め物15は、割岩装置9のシリンダー13長さよりも長く形成され、反力が十分に得られるように、割岩装置9の挿入深さよりも深い位置まで挿入される。
【0086】
詰め物15を設けることで、破断対象のブロック3ではなく、支持側のブロック3が破断してしまって、割岩装置9が下敷きになってしまうなど、意図しない事態が生じて作業に支障を来すことを避けることができる。
【0087】
割岩装置9が設置される区分け溝Qに輪郭溝Pが隣接する場合も、当該輪郭溝Pに、割岩装置9の拡開力Fに対する反力を得るための詰め物15を設ければ、破断対象のブロック3を的確に破断することができる。
【0088】
最後に、対象物1から破断されたブロック3を対象物1から撤去して、対象物1に凹所2を形成する凹所形成工程を行う。
【0089】
図10に示すように、下のものから順に破断されて積み上がっている切り出し可能となった上のブロック3から下のブロック3に向かって、順にワイヤ掛け16などして重機により引き出し、すべてのブロック3を撤去する。
【0090】
凹所形成工程におけるブロック3の撤去は、すべてのブロック3の破断が完了してから実施しても、あるいは、左右方向3列の各列個々でブロック3の破断が完了する毎に、各列個別に行うようにしても、いずれであってもよい。
【0091】
各列個別で撤去するようにすれば、左右方向に隣接する一方のブロック3が他方のブロック3側に転がり倒れることが無く、撤去作業を円滑に行うことができる。
【0092】
ブロック3が撤去されることにより、
図11に示すように、ブロック3撤去後の対象物1には、奥行き方向の内奥に向けて凹所2が形成される。
【0093】
対象物1には、さらに溝形成工程から始めて上記工程を再度実施することにより、凹所2を深堀することができる。
【0094】
以上説明した本実施形態に係る掘削可能な対象物への凹所形成方法にあっては、岩盤やコンクリート体など、種々の掘削可能な対象物1に、外部から奥行き方向や深さ方向の内奥に向け、凹所2の輪郭形状Xで輪郭溝Pを掘削する作業及び凹所2の輪郭形状Xで包囲される内方の対象物1の外部から内奥に向け、輪郭溝Pにつながるように、切り出すブロック3個々に区分けする区分け溝Qを掘削する作業を行って、切り出すブロック3を、その内奥側3aのみが対象物1とつながっている状態にする溝形成工程を実施するので、背景技術のように成り行きの割れに期待することなく、輪郭溝Pと区分け溝Qとで確実にブロック3を形成することができ、そして、区分け溝Qに、溝幅を広げる拡開力Fを加える割岩装置9を設置し、内奥側3aだけが対象物1とつながっている状態のブロック3を割岩装置9で対象物1から破断するブロック破断工程を実施することで、ブロック3の内奥側3aでブロック3を確実に破断できるので、適切にブロック3の切り出しを行うことができて、対象物1に効率よく凹所2を形成することができる。
【0095】
ブロック3の切り出しによるので、削孔装置5で孔4や設置用穴10を形成する溝形成工程を除き、ブレーカによる削岩や発破などの騒音や振動が発生する作業がなく、周辺環境に悪影響を及ぼすことなく、静的に凹所2を形成することができる。
【0096】
輪郭溝Pに、溝幅を広げる拡開力Fを加える割岩装置9を設置し、内奥側3aが対象物1とつながっている状態のブロック3を割岩装置9で対象物1から破断する追加のブロック破断工程を含むので、すべてのブロック3の切り出しを適切に行うことができる。
【0097】
輪郭溝P及び区分け溝Qはともに、掘削形成される孔4が隣り合うもの同士で一連につなげられた連続孔で形成され、孔4は、少なくとも2つ以上を同時に掘削可能な削孔装置5によって形成されるので、効率的かつ切れ目なく溝P,Qを掘削することができる。
【0098】
区分け溝Q及び輪郭溝Pには、大出力の割岩装置9の設置を可能とするために、孔4の孔径dよりも大きな穴径Dの設置用穴10が形成されるので、区分け溝Q及び輪郭溝Pの溝幅に制限を受けることなく、大出力の割岩装置9で効率的にブロック3を対象物1から破断することができる。
【0099】
割岩装置9を設置する設置用穴10を別途形成するので、区分け溝Q及び輪郭溝Pの溝幅は幅狭でよく、効率よく掘削することができる。
【0100】
割岩装置9により、割岩装置9の先端部位置で最大せん断力を発生させて、ブロック3を的確に破断することができる。
【0101】
削孔装置5には、複数の孔4を同時に掘削するための複数の削孔用ビット6が設けられ、少なくともいずれかの削孔用ビット6には、孔4の掘削と同時に設置用穴10を掘削するための削穴用ビット11が着脱自在に装着されるので、同一の削孔装置5を用いて、効率のよい盛り替えによって、ほぼ連続的な作業で、区分け溝Q及び輪郭溝Pと、これら溝P,Qの途中に設ける設置用穴10とを形成することができる。
【0102】
ブロック破断工程は、区分け溝Qを介して隣接するブロック3同士のうち、一方のブロック3で拡開力Fを支持して、他方のブロック3を対象物1から破断するようにしたので、破断対象のブロック3を特定して破断作業を進めることができ、意図しないブロック3が破断されて作業に支障が生じてしまうことを避けることができる。
【0103】
追加のブロック破断工程は、対象物1で拡開力Fを支持して、ブロック3を対象物1から破断するので、対象物1の強度を利用して、確実にブロック3を破断することができる。
【0104】
割岩装置9が設置される区分け溝Qに隣接する他の区分け溝Qまたは輪郭溝Pには、割岩装置9の拡開力Fに対する反力を得るための詰め物15が設けられるので、破断対象のブロック3を的確に破断することができ、支持側のブロック3が破断してしまって作業に支障を来すことを避けることができる。
【0105】
以上の説明では、対象物1の壁面1aに、外部から奥行き方向の内奥へ向けて、横向きの凹所2を形成する場合を例示して説明したが、
図12に示すように、対象物1の前後左右方向に広がる平面、例えば床面1bに、当該対象物1の外部から所望の輪郭形状Xで、深さ方向の内奥へ向けて縦向きの凹所2を形成する場合にも適用することができる。
【0106】
縦向きの凹所2を形成する場合には、対象物1の外部から深さ方向内奥に向け、凹所2の輪郭形状Xで輪郭溝Pを掘削する作業及び凹所2の輪郭形状Xで包囲される内方の対象物1の外部から深さ方向内奥に向け、輪郭溝Pにつながるように、切り出すブロック3個々に区分けする区分け溝Qを掘削する作業を行って、切り出すブロック3を、その深さ方向内奥側3aのみが対象物1とつながっている状態にする溝形成工程と、区分け溝Qに、溝幅を広げる拡開力Fを加える割岩装置9を設置し、深さ方向内奥側3aが対象物1とつながっている状態のブロック3を割岩装置9で対象物1から破断するブロック破断工程と、対象物1から破断されたブロック3を対象物1から引き上げて撤去して、対象物1に深さ方向の凹所2を形成する凹所形成工程とを実施すればよい。
【0107】
これにより、上記実施形態の横向きの凹所2と同様な凹所2を、ブロック3の切り出しによって深さ方向に形成することができる。
【0108】
以上の実施形態では、削孔用ビット6が複数、少なくとも2つ以上横並びに隣接配置される削孔装置5を例示して説明したが、削孔用ビット6が1つの削孔装置5を使用してもよいことはもちろんである。
【0109】
ブロック3の最大重量は、撤去作業に用いる揚重機で移動可能な重量以下に設定される。本実施形態では、最下段のブロック3から最上段のブロック3にわたり、順次に結合強度が大きくなるように、区分け溝Qの上下方向の間隔寸法Hを、下方から上方に向かって順次大きくなるように設定したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、間隔寸法Hは、すべて同じであってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 掘削可能な対象物
2 凹所
3 ブロック
3a ブロックの内奥側
4 孔
5 削孔装置
6 削孔用ビット
9 割岩装置
10 設置用穴
11 削穴用ビット
15 詰め物
D 設置用穴の穴径
d 孔の孔径
F 溝幅を広げる拡開力
P 輪郭溝
Q 区分け溝
X 凹所の輪郭形状