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特許7233383アルミニウム基板、配向カーボンナノチューブ及び導電性有機ポリマーを含む電極の調製方法、電極並びにそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】アルミニウム基板、配向カーボンナノチューブ及び導電性有機ポリマーを含む電極の調製方法、電極並びにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/86 20130101AFI20230227BHJP
   H01G 11/02 20130101ALI20230227BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20230227BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20230227BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20230227BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20230227BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20230227BHJP
【FI】
H01G11/86
H01G11/02
H01G11/26
H01G11/36
H01G11/60
H01G11/62
H01G11/70
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019568821
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 FR2018050473
(87)【国際公開番号】W WO2018158543
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】1751669
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519316520
【氏名又は名称】ナワテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】520433300
【氏名又は名称】シーワイ・セルジー・パリ・ユニヴェルシテ
(73)【特許権者】
【識別番号】506189113
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・トゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-アンリ・オベール
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・バネ
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン・ボワセ
(72)【発明者】
【氏名】レア・ダルシー
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・デカルパントリエ
(72)【発明者】
【氏名】フアド・ガムス
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト・アウフ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーヌ・メイヌ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ピノー
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・トラン・ヴァン
(72)【発明者】
【氏名】トマ・ヴィニャル
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-533383(JP,A)
【文献】特開平01-315418(JP,A)
【文献】特開2012-224530(JP,A)
【文献】特開2016-119409(JP,A)
【文献】特開2016-162993(JP,A)
【文献】特開2016-207641(JP,A)
【文献】FAN HUANG,EXPLORING ALIGNED-CARBON-NANOTUBES@POLYANILINE ARRAYS ON HOUSEHOLD AL AS SUPERCAPACITORS,CHEMSUSCHEM,ドイツ,2012年03月12日,VOL:5, NR:5,PAGE(S):888 - 895,http://dx.doi.org/10.1002/cssc.201100553
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00-11/86
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムベース材料製の支持体、垂直配向カーボンナノチューブ、及び導電性ポリマーマトリックスを含む電極の調製方法であって、以下の逐次工程:
a)アルミニウムベース材料製の支持体上に、650℃以下の温度でCVD(化学蒸着)技術に従って垂直配向カーボンナノチューブのカーペットを合成する工程と、
b)チオフェン及びその前駆体からなる群から選択された前記マトリックスの少なくとも1種の前駆体モノマーと、少なくとも1種のイオン液体及びアセトニトリルを含む電解液から、前記カーボンナノチューブ上に前記ポリマーマトリックスを電気化学的に堆積させる工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(a)における前記合成を、500℃~620℃の間に含まれる温度で実施することを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記工程(a)の後であって前記工程(b)の前に、前記垂直配向カーボンナノチューブを酸化処理に供することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン液体が、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、アンモニウム、ピロリジニウム、ピロリニウム、ピロリウム、ピペリジニウム、のファミリーから選択される、置換又は非置換の少なくとも1つのプロトン性又は非プロトン性カチオン、並びにF;Cl,Br;I;NO ;N(CN) ;BF ;ClO ;PF ;RSO ;RSO ;RCOO(式中、Rはアルキル又はフェニル基であり)、(CFPF ;(CFPF ;(CFPF ;(CFPF;(CF;(CFSO ;(CFCFSO ;(CFSO;CFCF(CFCO;(CFSOCH;(SF;(CFSO;[O(CF(CFO]PO;CF(CFSO ;CNSe;CNS;ビス(オキサラト)ボレート、及びイミダゾールのアニオン誘導体から選択される、有機又は非有機、置換又は非置換の少なくとも1つのアニオンを有するイオン液体であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン液体が、ジアルキルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([DAPyr][TFSI])、ジアルキルピロリジニウムビス(フルオロメチルスルホニル)イミド([DAPyr][FSI])、ジアルキルピロリジニウムテトラフルオロボレート([DAPyr][BF4])、ジアルキルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート([DAPyr][PF6])、ジアルキルピロリジニウムセレノシアネート([DAPyr][SeCN])、ジアルキルピロリジニウムチオシアネート([DAPyr][SCN])、ジアルキルピロリジニウムブロミド([DAPyr][Br])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([EMI][TFSI])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメチルスルホニル)イミド([EMI][FSI])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([EMI][BF4])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([EMI][PF6])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムセレノシアネート([EMI][SeCN])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート([EMI][SCN])、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([BMI][TFSI])、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMI][BF4])、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([BMI][PF6])、1-メチル-3-n-ヘキシルイミダゾリウムヨージド([MHIm][I])、及びブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([BtMA][TFSI])によって構成される群から選択されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電解液の粘度が、温度及び圧力の標準条件において、0.37mPa.s~200mPa.sの間、有利には1.0mPa.s~36mPa.sの間に含まれることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックスを電気化学的に堆積させる工程を、サイクル式及び/若しくはパルス式若しくは連続式定電流法、並びに/又はパルス式若しくは連続式定電位法によって実施することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性ポリマーマトリックスが、この導電性ポリマーマトリックスでコーティングされた垂直配向カーボンナノチューブに対応する複合体の総質量と比較して、最大99%までの質量百分率を相当することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(b)の後に、すすぎ工程、及び任意に乾燥工程を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法により調製することができる電極。
【請求項11】
前記垂直配向カーボンナノチューブの密度が、ナノチューブ10~1013/cm電極の間、有利にはナノチューブ10~1012/cmのオーダー、特にナノチューブ1011~1012/cmのオーダーに含まれることを特徴とする、請求項10に記載の電極。
【請求項12】
スーパーキャパシタ又は電池等の電気を貯蔵及び復元するためのデバイスの正/負極としての、光起電デバイス用の電極としての、COの貯蔵用の材料における、又は電気化学センサーの電極としての、請求項10又は11に記載の電極又は請求項1から9のいずれか一項に記載の方法により調製することができる電極の使用。
【請求項13】
電気を貯蔵及び復元するためのデバイスであって、
(1)前記正極用の請求項10又は11に記載の電極又は請求項1からのいずれか一項に記載の方法により調製することができる電極、及び単層又は二重層の活性炭電極を備えた非対称組立体、又は、
(2)請求項10又は11に記載の2つの電極又は請求項1からのいずれか一項に記載の方法により調製することができる、2つの電極を備えた非対称タイプ2組立体、又は、
(3)請求項10又は11に記載の2つの電極又は請求項1からのいずれか一項に記載の方法により調製することができる2つの電極であり、p及びnドープ可能な共役ポリマーが前記電極のそれぞれの上に存在する、2つの電極を備えた非対称タイプ3組立体、又は、
(4)請求項10又は11に記載の電極又は請求項1からのいずれか一項に記載の方法により調製することができる電極のそれぞれの上に異なる2つのp及びnドープ可能な共役ポリマーを備えた非対称タイプ4組立体
を含む、デバイス。
【請求項14】
少なくとも2つの電極と、前記2つの電極を分離する電解質とを含む、スーパーキャパシタ等の電気を貯蔵及び復元するためのデバイスの製造方法であって、前記電極のうちの少なくとも1つが、請求項10又は11に記載の電極又は請求項1からのいずれか一項に記載の方法により調製することができる電極であり、
前記製造方法が、前記電解質との界面に前記2つの電極を組み立てる異なる工程を含み、前記電解質との界面に組み立てられた2つの電極が、電気を貯蔵及び回復するための前記デバイスを形成するための封入パッケージに含まれる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを貯蔵及び復元するためのデバイスの分野、より詳細には、スーパーキャパシタに特に有用な電極の分野に属する。
【0002】
実際に、本発明は、(i)アルミニウムを含む材料で作製された支持体、(ii)前記支持体上の垂直配向カーボンナノチューブ、及び(iii)導電性有機ポリマーを有する電極の調製方法に関する。
【0003】
本発明はまた、それにより調製された前記電極、及びその種々の使用、特にスーパーキャパシタにおける使用に関する。
【背景技術】
【0004】
再生可能エネルギーの急速な拡大を可能にするために、電力の貯蔵は、直面する最大の課題の1つである。多数の自律的な電力源中、炭素表面のイオンの急速な充電/放電サイクルに基づくスーパーキャパシタは、キャパシタと電池との間にある。スーパーキャパシタは、それらの高い貯蔵効率(>95%)、それらの安全性、それらの信頼性、及びそれらの寿命により、既存のソリューションを完成するための、又は置き換えるための有力な候補となる。
【0005】
その市場が活況を呈しているスーパーキャパシタは、セパレータによって電気的に絶縁された2つの電極、すなわちアノード及びカソードを有し、電解質が各電極とセパレータとの間に配置されている。
【0006】
スーパーキャパシタの重要なパラメータの1つは、システムの静電容量である。システムの静電容量は、主に、電極用に選択された材料間の相関、これらの電極の設計、及び電解質に依存する。
【0007】
市販のスーパーキャパシタでは、電極の表面は活性炭で構成されている。活性炭は多孔質材料であり、導電性があり、電気化学的に安定しており、単位体積あたりの表面積が大きい、すなわち、500m.g-1を超える。しかし、活性炭の気孔率を制御するのは困難であり、気孔率は、一方で、使用される原料の気孔率、例えば炭素が豊富な植物性有機物、及び他方で実施される物理的又は化学的活性化方法に依存する。活性炭における複雑で制御が不十分な気孔率の存在だけでなく、その表面上の望ましくない官能基の存在は、活性炭製のスーパーキャパシタの静電容量及び性能に影響する。
【0008】
これに関連して、ナノメートルスケールで十分に組織化されたナノ材料、例えば垂直配向カーボンナノチューブ(又はVACNT)の使用は非常に有望である。VACNTに基づくいくつかの電極材料は、興味深い特定の静電容量を示し、それにより、エネルギー節約、及び特にスーパーキャパシタの電力に関して、このような構成(材料内のナノチューブの配向と規則的なスペース)の利益を検証した。
【0009】
VACNTを製造するための既知の方法の中で、CVD(化学蒸着)技術は、非常に高温で動作することが知られている他の製造方法(レーザーアブレーション及びアーク放電)と比較して、かつスーパーキャパシタ用の電極の製造を工業化する必要性に関し、比較的低コストであるために有利であり得る。既知の方法で、CVD技術の代替手段の1つは、異なる材料、例えば石英、シリカ、炭素で作製された支持体、又は鋼鉄等の金属製の支持体等の、異なる材料で作製することができる支持体上の炭素前駆体及び触媒前駆体を、加熱された反応器に同時に連続的に注入すること(同時注入として知られている)で構成される。
【0010】
スーパーキャパシタとの関連においては、VACNTが調製される金属支持体を、集電体として使用する。電極の質量、ひいてはスーパーキャパシタの質量を最小限に抑えるために、アルミニウム支持体等の軽金属支持体が有利であり得る。
【0011】
しかし、アルミニウム支持体上でCVD技術によりVACNTを成長させるには、そのような支持体の特異性、特に660℃であるアルミニウムの融解温度を考慮することが望ましい。成長プロセスが熱活性化され、合成温度が下がると、成長速度が低下する。この現象を制限するために、前駆体に向かう必要があり、前駆体の熱及び触媒分解は、600℃のオーダーの温度でより有利である。この目的のために、国際出願WO2015/071408は、成長温度を下げ、好適な炭素源を使用することにより、例えばアルミニウム支持体等の異なる支持体上でVACNTを成長させる方法を提案している[1]。Yoshikawa等、2008年は、アルゴン/水素の流れの下で、約650℃の成長温度でエタノールを使用して触媒鉄及びコバルト粒子と混合して、アルミニウムシート上で、長さが90μmに達するVACNTを得た[2]。Dorfler等、2013年は、エチレンを炭素源として使用し、大気圧及び645℃でCVDにより触媒でコーティングされたアルミニウムシート上にVACNTを調製する方法もまた提案している[3]。同様に、Arcila-Velez等、2014年は、ガス(アルゴン及び水素)の存在下で、炭素(キシレン、アセチレン)と触媒(フェロセン)前駆体との混合物から、非常に薄い厚さ(16μm)のアルミニウム基板上に、CVDによりVACNTを堆積させることを開示している[4]。更に、Liatard等、2015年は、ガス(アルゴン及び水素)の存在下で、炭素前駆体としてアセチレンを用いて700Wの熱フィラメントによる加熱と組み合わせて、450℃の成長温度でCVD法により、鉄でコーティングされたアルミニウム上にVACNTを調製した[5]。最後に、Huang等、2012年は、VACNTが合成されたアルミニウム支持体を含む電極について記載している[6]。この合成は、2つの化学蒸着代替法によって実施し、一方の方法は640℃の温度で実施して短いVACNTを得て、もう一方の方法は、「フローティング触媒CVD技術」と呼ばれ、より長いVACNT用に645℃で実施する。これにより、約10μm又は約50μmのVACNTが得られる。これらの方法、特に[1]及び[5]に記載の方法により、非常に高密度のVACNTを取ることができるという点に留意すべきである。
【0012】
VACNTの貯蔵エネルギーを増やすための解決策の1つは、それらを電子伝導性ポリマー(ECP)等の電気活性材料と組み合わせることで構成される。これは、擬似容量として知られている。この場合、エネルギーは、静電プロセス及び酸化還元プロセスの2つの同時プロセスによって貯蔵される。最近、ECPによって改質されたVACNTに基づく新規な擬似容量性正極材料は、高い比容量を示した[7、8、9]。
【0013】
国際出願WO2012/004317[7]では、電解重合は、溶媒としてプロトン性若しくは非プロトン性溶媒、又はイオン液体のいずれかを含む種々の電解液を使用して、パルス定電流モードで実施する。更に、溶媒がイオン液体である電解液を使用してこれらのポリマーを電解重合すると、特定の条件において、ECPのナノ構造化及び静電容量特性の向上が示された[10、11]。
【0014】
[7、10、11]に記載されている電着技術を、[1]で特に記載されているプロトコルに従って、アルミニウム基板上で得られるような表面密度が非常に高いVACNTに適用すると、問題が生じることを確認し得る。このような密度は、VACNTカーペットの深さ全体にわたってECPの堆積を得ることが妨げられる場合がある。
【0015】
実際、これらの電気化学的方法において一般的に使用される溶媒、特にイオン液体に基づく溶媒は、高粘度又はアルミニウム基板の腐食リスク等、アルミニウム基板上で得られる非常に高密度のVACNTに対していくつかの欠点がある[12]。この場合、貯蔵静電容量及びサイクル性の性能は、特に大幅に低下する。この目的のために、[6]では、サイクリックボルタンメトリーにより、1Mの硫酸及び0.1Mのアニリンを含む水溶液からアルミニウム支持体上で合成されたVACNTにポリアニリンを電着させることに、留意すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】WO2015/071408
【文献】WO2012/004317
【文献】WO2008/016990
【文献】WO2015/071408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
スーパーキャパシタへの関心が高まっているため、発明者らは、(i)アルミニウム支持体、(ii)前記支持体上のVACNT、及び(iii)前記VACNT上に堆積した導電性有機ポリマーを有するスーパーキャパシタにおいて使用することを特に意図した電極を得ることが可能にする工業化可能な方法を提案するという目的を自ら設定した。このような方法は、アルミニウム支持体のいかなる腐食も引き起こしてはならず、高密度VACNTに好適でなくてはならず、このような方法によって、従来技術の電極と同一の特性を有し、従来技術の電極と比較して更に改善された電極を得ることが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の説明
本発明により、既に述べた技術的課題を解決し、発明者らが自ら設定した目的を達成することが可能になる。
【0019】
実際、発明者らの研究により、カーボンナノチューブが垂直に配向し、導電性有機ポリマーでコーティングされたアルミニウムに基づく支持体を有する電極であって、特にスーパーキャパシタにおいて適用する場合の静電容量に関して興味深い性能を有する前記電極を得ることが可能となる、工業化可能な方法を開発することが可能になった。念のため、静電容量は、特定の電位に対して特定のレベルの電荷を含有する導電体の特性である。
【0020】
より具体的には、本発明は、アルミニウムベース材料製の支持体、垂直配向カーボンナノチューブ及び導電性ポリマーマトリックスを含む電極の調製方法であって、以下の逐次工程:
a)アルミニウムベース材料製の支持体上に、650℃以下の温度でCVD(化学蒸着)技術に従って垂直配向カーボンナノチューブのカーペットを合成する工程と、
b)前記マトリックスの少なくとも1種の前駆体モノマーと、少なくとも1種のイオン液体及び少なくとも1種のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒を含む電解液から、前記カーボンナノチューブ上に前記マトリックスポリマーを電気化学的に堆積させる工程と
を含む、方法に関する。
【0021】
本発明者らは、アルミニウムに基づく軽量支持体上に適用するのに適合した650℃以下の温度でのCVD技術によるVACNTカーペットの合成に関連して、特定の条件における導電性ポリマーの電気化学堆積により、VACNTカーペットの厚さの堆積物を得ることが可能であり、前記支持体を腐食させることなくそうすることが可能である。これらの特定の条件は、電解液の物理化学的特性に関連している。更に、この電気化学堆積技術は、[7]に記載されているパルス定電流技術にもはや限定されない。逆に、本発明では、この方法がサイクル式であるか、又はパルス式、後者の場合、電流又は電圧が印加されるパルス式であるかにかかわらず、任意の電気化学堆積技術を使用することができる。
【0022】
本発明の範囲内で、電気化学堆積中に実施される特定の溶媒は、少なくとも1種のイオン液体と少なくとも1種のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒との混合物である。イオン液体にプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒を加えることによって、電解液の粘度を低下させることができるとしても、そのような混合物が本発明で定義される電極の調製に好適であることは全く明らかではなかった。逆に、驚くべきことに、[12]から知られており、以下の実験部のパラグラフIIに示されている、この電解液がアルミニウムに対して含有し得る塩の腐食性にもかかわらず、この電解液によって、良好な性能を有する電極を調製することが可能であり、したがって、この電解液は、スーパーキャパシタにおいて使用するのに特に好適である。更に、溶媒として、少なくとも1種のイオン液体と少なくとも1種のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒との混合物を使用することにより、[6]で実施される硫酸水溶液と比較して、電解重合性モノマーの範囲を増大させることができる。
【0023】
本発明による方法では、アルミニウムベース材料製の支持体を前述の理由、すなわち、電極の軽量化のために使用し、この支持体を、軽量化スーパーキャパシタを得るために使用する。「アルミニウムベースの材料」とは、非合金化アルミニウム製の材料だけでなく、アルミニウムとマグネシウムの合金、アルミニウムとマンガンの合金、アルミニウムと銅の合金、アルミニウムとシリコンの合金、アルミニウム、マグネシウム及びシリコンの合金、又はアルミニウムと亜鉛の合金等のアルミニウム合金製の材料も意味するとみなされる。
【0024】
本発明で実施される支持体は、任意の形状、すなわち、電極のその後の使用に適合した形状を有する。例示的な例として、この支持体は、平坦な形状、ワイヤ形状(ワイヤ又はグリッド)、ストリップ形状、中空円筒形状又は気胞形状(泡)を有し得る。通常は、本発明で実施される支持体は、1μm~500μmの間、特に2μm~200μmの間、特に5μm~100μmの間、特に10μm~75μmの間に含まれる厚さを有する。
【0025】
本発明による方法の工程(a)は、アルミニウムベースの支持体上に、垂直配向カーボンナノチューブであって、支持体の表面に垂直に延び、それにより、ベースが支持体に対応するナノチューブのカーペットを形成する、カーボンナノチューブを合成する工程で構成される。
【0026】
650℃以下の温度でCVD(化学蒸着)技術を使用して実施される合成方法は、特に[1、2、3、4、5、6]に記載されている方法の1つである。これらの技術は、バッチツーバッチ技術/ロールツーロール技術によって実施することができるため、容易に工業化できる。
【0027】
要約すると、この合成は、触媒源及び炭素源の存在下で実施する。触媒源は、支持体上に事前に堆積してもよく、逆に、炭素源と同時注入してもよい。触媒源は、特に、例えばフェロセン、ニッケルセン、コバルトセン又はそれらの混合物のいずれか等の遷移金属メタロセンから選択する。液体、固体又は気体であり得る炭素源は、特に炭化水素、アルコール、一酸化炭素、ハロゲン化炭素、トルエン、シクロヘキサン、植物油、ベンジルアミン、アセトニトリル、エチレン、アセチレン、キシレン、メタン、及びそれらの混合物から選択する。この合成の特定の実施形態では、フェロセンは、エアロゾルの形態のトルエン溶液によって反応器に運搬する。
【0028】
本発明による方法の工程(a)の範囲内で、この合成は、500℃~620℃の間に含まれる温度で有利に実施する。同様に、この合成は、通常、10Pa~10Paの間、特に0.9.10Pa~10Paの間に含まれる圧力で実施する。
【0029】
本方法の工程(a)中にカーボンナノチューブの合成に使用する特定のプロトコルに応じて、アルミニウムベース材料製の支持体に垂直に延びる、垂直配向カーボンナノチューブの密度は、可変であり得る。後者は、有利には、ナノチューブ10~1013/支持体cmの間に含まれる。それにより、ナノチューブ10~1012/cmのオーダー、特にナノチューブ1011~1012/cmのオーダーの、垂直配向カーボンナノチューブの高密度カーペットを有する材料を有することが可能である。
【0030】
同様に、垂直配向カーボンナノチューブの合成後、ステップ(b)の前に、垂直配向カーボンナノチューブを酸化処理(又は前処理)に供してもよく、これはつまり、実施されたナノチューブの表面を酸化することを目的とする、及び/又は、ラジカルの形成により将来の酸化のために表面を調製することを目的とする。酸化は、特にナノチューブの末端又は欠陥に、カルボキシル基(-COOH)、ヒドロキシル基(-OH)、アルコキシル基(-OXでXはアルキル基、アシル基、又はアロイル基を表す)、カルボニル(-C=O)基、過炭酸(-C-O-OH)、時にはアミド(-CONH)タイプ等の酸素リッチ基を固定及び/又は導入することにより、ナノチューブの表面を改質する。
【0031】
このような酸化処理は、
- 特にプラズマによる酸素の処理、UV処理、X線若しくはγ線処理、電子及び重イオンの照射による処理等の物理的処理、又は
- アルコールカリによる処理、強酸(HCl、HSO、HNO、HClO)による処理、ソーダによる処理、強酸化剤(塩酸、硫酸又は硝酸中のKMnO、KCr、KClO又はCrO)による処理、オゾン処理及び酸素化雰囲気(O、HO等)下における熱処理等の化学処理
に基づく、2つの主要なタイプの表面改質に基づく。
【0032】
そのようなナノチューブは、この酸化処理を実施すると、例えば、負に帯電したナノチューブ等の表面改質ナノチューブの形態であり得る。
【0033】
本発明による方法の工程(b)は、工程(a)の間にアルミニウムベース材料製の支持体上に合成されたカーボンナノチューブのカーペット上に、導電性ポリマーマトリックスを電気化学的な方法で適用することで構成される。
【0034】
「導電性ポリマーマトリックス」とは、本発明の範囲内で、本発明の方法において実施されるカーボンナノチューブの表面上の、多孔質又は非多孔質膜(又はシース)の形態の構造であり、本質的に1種(又は複数の)の導電性(コ)ポリマーから構成されるということを意味すると解釈される。本方法の工程(a)に従って得られるカーボンナノチューブのカーペットにおいて、ポリマーマトリックスはカーボンナノチューブに会合し、一方カーボンナノチューブの側面上に及び側面のレベルに堆積し、有利には、ナノチューブの周りにシースを形成することができる。通常、有利には、このシースの厚さはカーボンナノチューブに対して均一であり、より有利な方法では、カーペットのすべてのカーボンナノチューブに対して均一である。
【0035】
「導電性(コ)ポリマー」とは、本発明の範囲内で、主ポリマー鎖及び任意に側鎖が少なくとも1つの二重結合又は少なくとも1つの芳香族環を有する(コ)ポリマーを意味すると解釈される。通常は、導電性(コ)ポリマーは、二重結合及び/又は芳香族環及び任意に酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又はフッ素原子等のヘテロ原子を有する1種(又は複数)のモノマーの重合によって得られる。
【0036】
本発明の範囲内で実施されるポリマーマトリックスは、ポリフルオレン、ポリピレン、ポリナフタレン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリチオフェン、又は、ベンゼン、チオフェン、ピロール、カルバゾール、フルオレン等であり、アルキル、アルコキシ、オリゴエーテル、チオエーテル鎖、又は共役アルケン若しくはアルキンにより任意に官能化された芳香族単位B、並びに、チオフェン、アルキルチオフェン、3,4-アルキレンジオキシチオフェン型及びその誘導体、又はピロール、アルキルピロール、N-アルキルピロール、3,4-アルキレンジオキシピロール型及びそれらの誘導体である電解重合性単位A、から構成される、ABAタイプのポリマーから選択される1種(又は複数)の(コ)ポリマーから有利に構成される。
【0037】
有利には、本発明の範囲内で実施されるマトリックスポリマーは、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリアニリン、及びポリチオフェンから選択される1種(又は複数)の(コ)ポリマーから、有利に構成される。
【0038】
当業者は、上に挙げたポリマーを重合により得るために使用することができる異なる前駆体モノマーを知っている。
【0039】
例として、ポリピロールは、ピロール及びピロールの誘導体から選択される1種(又は複数)のモノマーの重合により得ることができる。ピロール誘導体は、有利には、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、ハロゲン原子、-OH基、-COOH基で任意に置換された、C1~C10、特にC1~C5(ヘテロ)アルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、ポリアルコキシルエーテル、ポリアルキレンエーテルで任意に置換されたC2~C20、特にC2~C10アルコキシアルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、任意に置換されたC3~C20、特にC4~C16(ヘテロ)アリール、又は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、任意に置換されたC3~C20、特にC4~C16(ヘテロ)アラルキルから選択される少なくとも1つの置換基で置換されたピロールである。そのようなピロール誘導体は、特にアルキルピロール、N-アルキルピロール、又は3,4-アルキレンジオキシピロールである。ピロール誘導体はまた、任意にヘテロ原子を含むC1~C10、特にC1~C5架橋基を形成する少なくとも2つの置換基により置換されたピロールであってもよい。使用することができるピロール誘導体の例として、3-メチルピロール、3-エチルピロール、3-ブチルピロール、3-ブロモピロール、3-メトキシピロール、3,4-ジクロロピロール、及び3,4-ジプロポキシピロールを挙げることができる。
【0040】
「任意に置換された」とは、本発明の範囲内で、-OH、-COOH、ハロゲン原子、又はC1~C4アルキルにより置換することができる基を意味すると解釈される。
【0041】
例として、ポリカルバゾールは、カルバゾール及びカルバゾールの誘導体から選択される1種(又は複数)のモノマーの重合により得ることができる。カルバゾール誘導体は、有利には、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、ハロゲン原子、-OH基、-COOH基で任意に置換された、C1~C10、特にC1~C5(ヘテロ)アルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、ポリアルコキシルエーテル、ポリアルキレンエーテル、で任意に置換されたC2~C20、特にC2~C10アルコキシアルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、任意に置換されたC3~C20、特にC4~C16(ヘテロ)アリール、又は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、任意に置換されたC3~C20、特にC4~C16(ヘテロ)アラルキルから選択される少なくとも1つの置換基で置換されたカルバゾールである。カルバゾール誘導体はまた、任意にヘテロ原子を含むC1~C10、特にC1~C5架橋基を形成する少なくとも2つの置換基により置換されたカルバゾールであってもよい。
【0042】
例として、ポリアニリンは、アニリン及びアニリンの誘導体から選択される1種(又は複数)のモノマーの重合により得ることができる。アニリン誘導体は、有利には、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、ハロゲン原子、-OH基、-COOH基で任意に置換された、C1~C10、特にC1~C5(ヘテロ)アルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、ポリアルコキシルエーテル、ポリアルキレンエーテル、で任意に置換されたC2~C20、特にC2~C10アルコキシアルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、任意に置換されたC3~C20、特にC4~C16(ヘテロ)アリール、又は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、任意に置換されたC3~C20、特にC4~C16(ヘテロ)アラルキルから選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアニリンである。アニリン誘導体はまた、任意にヘテロ原子を含むC1~C10、特にC1~C5架橋基を形成する少なくとも2つの置換基により置換されたアニリンであってもよい。
【0043】
例として、ポリチオフェンは、チオフェン及びチオフェンの誘導体から選択される1種(又は複数)のモノマーの重合により得ることができる。チオフェン誘導体は、有利には、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、ハロゲン原子、-OH基、-COOH基で任意に置換された、C1~C10、特にC1~C5(ヘテロ)アルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、ポリアルコキシルエーテル、ポリアルキレンエーテル、で任意に置換されたC2~C20、特にC2~C10アルコキシアルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、任意に置換されたC3~C20、特にC4~C16(ヘテロ)アリール、又は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、任意に置換されたC3~C20、特にC4~C16(ヘテロ)アラルキルから選択される少なくとも1つの置換基で置換されたチオフェンである。少なくとも1つのC3~C20(ヘテロ)アリールにより置換されたチオフェンの中で、少なくとも1つのC3~C20過フッ素化アリールにより置換されたチオフェンを挙げることができる。チオフェン誘導体はまた、任意にヘテロ原子を含むC1~C10、特にC1~C5架橋基を形成する少なくとも2つの置換基により置換されたチオフェンであってもよい。使用することができるチオフェン誘導体の例として、3-チオフェン酢酸、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3-メチルチオフェン、3,4-ジメチルチオフェン、3-エチルチオフェン、3-ブチルチオフェン、3-ブロモチオフェン、3-メトキシチオフェン、3,4-ジメトキシチオフェン、3,4-ジクロロチオフェン、3,4-ジプロポキシチオフェン及び3-ペルフルオロフェニルチオフェンを挙げることができる。
【0044】
有利には、本発明による方法の工程(b)は、
)既に述べたように、アルミニウムベース材料製の支持体上で合成されたカーボンナノチューブを、前記導電性ポリマーマトリックスの前駆体モノマー、少なくとも1種のイオン液体、及び少なくとも1種のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒を含む電解液と接触させることと、
)前記カーボンナノチューブを分極させることにより、前記導電性ポリマーマトリックスを前記カーボンナノチューブ上に電気化学的に堆積させることと
で構成されるサブ工程を含む。
【0045】
先に説明したように、本発明による方法で実施する電解液の主要成分は、1種又は複数の異なるモノマー、導電性ポリマーマトリックスの前駆体、少なくとも1種のイオン液体、及び少なくとも1種のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒である。
【0046】
本発明の範囲内で、「イオン液体」は、100℃未満の温度で液体状態、特に室温(すなわち、22℃±5℃)で液体状態にある有機塩である。
【0047】
これらのイオン液体の中で、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、アンモニウム、ピロリジニウム、ピロリニウム、ピロリウム、ピペリジニウム、のファミリーから選択される、置換又は非置換の少なくとも1つのプロトン性又は非プロトン性カチオン、並びにF;Cl,Br;I;NO ;N(CN) ;BF ;ClO ;PF ;RSO ;RSO ;RCOO(式中、Rはアルキル又はフェニル基であり)、(CFPF ;(CFPF ;(CFPF ;(CFPF;(CF;(CFSO ;(CFCFSO ;(CFSO;CFCF(CFCO;(CFSOCH;(SF;(CFSO;[O(CF(CFO]PO;CF(CFSO ;CNSe;CNS;ビス(オキサラト)ボレート、及びイミダゾールのアニオン誘導体から選択される、有機又は非有機、置換又は非置換の少なくとも1つのアニオンを有するイオン液体を挙げることができる。
【0048】
本発明で実施されるイオン液体に使用できるカチオンの他の例は、国際特許WO2012/004317[7](24ページ、1~22行目)に記載されている。同様に、本発明の範囲内で使用することができる他のイオン液体は、国際特許WO2008/016990[13](18ページ、5~23行目)に記載されている。
【0049】
有利には、本発明の範囲内で実施されるイオン液体は、ジアルキルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([DAPyr][TFSI])、ジアルキルピロリジニウムビス(フルオロメチルスルホニル)イミド([DAPyr][FSI])、ジアルキルピロリジニウムテトラフルオロボレート([DAPyr][BF4])、ジアルキルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート([DAPyr][PF6])、ジアルキルピロリジニウムセレノシアネート([DAPyr][SeCN])、ジアルキルピロリジニウムチオシアネート([DAPyr][SCN])、ジアルキルピロリジニウムブロミド([DAPyr][Br])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([EMI][TFSI])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメチルスルホニル)イミド([EMI][FSI])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([EMI][BF4])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([EMI][PF6])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムセレノシアネート([EMI][SeCN])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート([EMI][SCN])、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([BMI][TFSI])、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMI][BF4])、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([BMI][PF6])、1-メチル-3-n-ヘキシルイミダゾリウムヨージド([MHIm][I])、及びブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([BtMA][TFSI])によって構成される群から選択される。
【0050】
「プロトン性溶媒」は、本発明の範囲内で、プロトンの形態で放出することができる少なくとも1つの水素原子を含み、水、脱イオン水、蒸留水、酸性化又は塩基性、酢酸、メタノール及びエタノール等のヒドロキシル化溶媒、エチレングリコール等の低分子量液体グリコール、並びにそれらの混合物により構成される群から有利に選択される、溶媒を意味すると解される。
【0051】
「非プロトン性溶媒」は、本発明の範囲内で、非極限条件においてプロトンを放出することもプロトンを受容することもできない溶媒を意味し、ジクロロメタン等のハロゲン化アルカン;ジメチルホルムアミド(DMF);アセトン又は2-ブタノン等のケトン;アセトニトリル;炭酸プロピレン、γ-ブチロラクトン(GBL)、テトラヒドロフラン(THF);N-メチルピロリドン(NMP);ジメチルスルホキシド(DMSO)及びそれらの混合物、から有利に選択される。
【0052】
特定の実施形態では、本発明による方法において実施する電解液の溶媒は、既に述べた少なくとも1種のイオン液体と、既に述べた少なくとも1種のプロトン性溶媒との混合物である。
【0053】
別の特定の実施形態では、本発明による方法において実施する電解液の溶媒は、既に述べた少なくとも1種のイオン液体と、既に述べた少なくとも1種の非プロトン性溶媒との混合物である。特に、この実施形態では、非プロトン性溶媒はアセトニトリルであり、イオン液体は、先に想定したイオン液体のいずれかであり得る。
【0054】
本発明において実施する電解液中のイオン液体とプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒の割合は、この溶液の低い全体粘度を維持して、液体媒質内で種が良好に拡散してチューブ間スペースを埋めることを保証するために、イオン液体の粘度の関数として変化する。これらの割合は、プロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒では30~85体積%であり、イオン液体では100%に対するその補数である。したがって、混合物は、65~85体積%の間のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒と、15~35体積%の間のイオン液体、特に約75体積%(すなわち、75体積%±5%)のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒と、約25体積%(すなわち、25体積%±5%)のイオン液体とを含み得る。そのような混合物の特定の例は、約75体積%のアセトニトリルと、約25体積%の[EMI][TFSI]又は[EMI][BF4]との混合物である。或いは、混合物は、40~60体積%の間のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒と、40~60体積%の間のイオン液体、特に約50体積%(すなわち、50体積%±5%)のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒と、約50体積%(すなわち、50体積%±5%)のイオン液体とを含み得る。そのような混合物の特定の例は、約50体積%のアセトニトリルと、約50体積%の[EMI][TFSI]又は[EMI][BF4]との混合物である。
【0055】
導電性ポリマーマトリックスの前駆体モノマーは、使用される溶媒、すなわち、少なくとも1種のイオン液体と、少なくとも1種のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒との混合物における溶解度に関して決定される最大量で、電解液中に存在する。
【0056】
既に言及したように、電解液は、一般に、数ミクロン~数百ミクロンの間に含まれるカーペットの厚さ全体にわたって均一な方法で、カーボンナノチューブの間(数nm~100nmの間のチューブ間スペース)に浸透できるように適合された粘度を有さなければならない。本発明の範囲内で実施される電解液の粘度は、後者におけるイオン液体の性質及び割合に大きく依存する。通常は、この粘度は、温度及び圧力の標準条件において、0.37mPa.s~200mPa.sの間、有利には1.0mPa.s~36mPa.sの間に含まれる。
【0057】
先に示したように、本発明による方法の工程(b)中又はサブ工程(b)中の、カーボンナノチューブ上への導電性ポリマーマトリックスの電気化学堆積は、サイクル式、又はパルス式であるか又は印加される電圧若しくは電流のいずれかを用いない静的方法のいずれかを含み得る。特定の実施形態では、これらの異なる方法を組み合わせることにより、この電気化学堆積を実施することが可能である。換言すれば、電気化学プロセスによる堆積方法は、サイクル式及び/若しくはパルス式若しくは連続定電流法並びに/又はパルス式若しくは連続定電位法によって実施することができる。堆積方法は、電解質中に存在する前駆体モノマーを酸化して重合させ、カーボンナノチューブの周囲及びカーボンナノチューブ上に、導電性ポリマーの形態でその堆積を確実にすることで構成される。
【0058】
本発明による方法の工程(b)又はサブ工程(b)中の電気化学堆積は、通常、2つの電極(作用電極及び対極)又は3つの電極(作用電極、対極及び参照電極)を装備した電気化学セルにおいて実施する。作用電極(又はアノード)は、カーボンナノチューブを備えたアルミニウム支持体に対応し、一方、対極(又はカソード)は、例えば、プラチナグリッド又はプラチナチタンプレート、又はステンレス鋼グリッドに封入されたカーボンブラック及び活性炭のペースト、又は電気接点用のステンレス鋼グリッドに封入されたカーボンブラック、活性炭、及びテフロン(登録商標)のペーストである。対極は、表面と、表面及び作用電極の静電容量に適合した静電容量とを有する。参照電極は、存在する場合、この参照電極により、いつでも作用電極のレベルでの電圧値を知ることができ、通常は、例えば銀線又は白金線等の金属で作製されている。
【0059】
本発明において実施される電気化学デバイスは、電流又は電圧発生器に関連して既に述べた電気化学セルを含む。
【0060】
電気化学堆積のサイクル方式又はサイクリックボルタンメトリーは、所定の走査速度で作用電極の電位を変化させることで構成される。印加電圧範囲は、作用電極の望ましい範囲の電位の関数として選択される。有利には、本発明による方法の工程(b)又はサブ工程(b)の間、電圧は、選択されたモノマー及び電解質の関数として-3Vから+3Vまで変えることができる。電流密度が10mA/cmのオーダーになるように、電流はサンプルサイズの関数として変化する。走査速度は、特に2~500mV/sの間、特に3~100mV/sの間、より詳細には5~20mV/sの間に含まれる。サイクル数は、特に15~200の間、特に25~150の間に含まれる。3-メチルチオフェン(3MT)モノマーのサイクリックボルタンメトリー中に使用する条件の例示的例として、
- 20mV/sのスキャン速度で-0.5~1.5Vの間で、50サイクルにわたって電圧を印加すること、又は
- 5mV/sのスキャン速度で-0.2~1.4Vの間で、100サイクルにわたって電圧を印加すること
が挙げられる。
【0061】
パルス定電位法又はパルス定電流法は、カソードとアノードとの間に電圧又は電流をそれぞれ印加することにより、導電性ポリマーの堆積時間(tON)と休止時間(tOFF)とを順番に並べることで構成される。本発明による方法の範囲内で、堆積時間は前駆体モノマーの酸化に対応する。この酸化は、一定時間(tON)にある電流を印加することによって(クロノポテンショメトリー)又は一定時間(tON)にある電圧を印加することによって(クロノアンペロメトリー)実施する。tOFFの間、モノマーは酸化されないため、モノマーがカーボンナノチューブのカーペット内で拡散する時間が残る。この休止時間tOFFは、電気回路を開くことにより、又は堆積時間tON中に印加される電流又は電圧よりも低い電流又は電圧を印加して、モノマーが酸化できないようにすることにより得ることができる。この休止時間tOFFの間、電解液の撹拌を実施して、垂直配向カーボンナノチューブのカーペット内でのモノマーの拡散を促進することができる。
【0062】
デバイスの電流又は電圧発生器は、特に5ミリ秒~10秒のオーダー、例えば250ミリ秒のオーダー(すなわち、250ミリ秒±20ミリ秒)の期間tONの間に、及び50ミリ秒~10秒の間等、例えば1.50秒のオーダー(すなわち、1.50秒±150ミリ秒)の期間tOFFの間に、パルス電流又は電圧を不連続的に送達することができる。比率tON/tOFFは、一般に1/60~2の間、特に1/10~1の間に含まれる。
【0063】
パルス式又は非パルス式クロノポテンショメトリーの場合、堆積時間tON中に印加される電流は、前駆体モノマーを酸化するのに十分な電圧を得るために適合された決定値に対応する。この決定値は、実施される前駆体モノマーのタイプ及び電解液の粘度の関数である。例えば、1cmのオーダーのカーボンナノチューブによる被覆表面積、並びに溶媒がアセトニトリル(75体積%)及びEMITFSI(25体積%)で構成される電解液に対して、3MTモノマーの場合、電流決定値は約4mAである。比率tON/tOFFは、例えば0.05から1まで変化してもよい。
【0064】
パルス式又は非パルス式クロノアンペロメトリーの場合、堆積時間tON中に印加される電圧は、前駆体モノマーを酸化するのに十分な電流を得るために適合された決定値に対応する。この決定値は、実施される前駆体モノマーのタイプ及び電解液の粘度の関数である。例えば、1cmのオーダーのカーボンナノチューブによる被覆表面積、並びに溶媒がアセトニトリル(75体積%)及びEMITFSI(25体積%)で構成される電解液に対して、3MTモノマーの場合、電圧決定値は約1.5V(すなわち、1.5V±0.2V)である。比率tON/tOFFは、0.05から1まで変化してもよい。
【0065】
サイクリックボルタンメトリー法、又は定電位法又は定電流法、パルス法又は非パルス法のいずれかを実施する本発明による方法の工程(b)又はサブ工程(b)の所要時間は、数分から数時間まで変更可能である。通常は、この所要時間は5分~8時間の間、有利には10分~4時間の間、特に15分~2時間の間に含まれる。垂直配向カーボンナノチューブの周囲に均一な堆積を有するには、堆積するポリマーの量に依存する。当業者は、発明的努力(inventive effort)なしに、この所要時間を、垂直配向カーボンナノチューブの密度及び長さ、並びに堆積させるマトリックスポリマーの量の関数として調整する方法を知っているであろう。
【0066】
最後に、パルス定電位法又はパルス定電流法を組み合わせることができる。例えば、最初に電圧を設定して(クロノアンペロメトリー)、前のサイクル中に既に堆積した導電性ポリマーを酸化させ、次に電流を設定し(クロノポテンショメトリー)、モノマーを酸化させ、次に電気回路を開いたままにすることにより、垂直配向カーボンナノチューブ内でモノマーが拡散することができる。
【0067】
本発明による方法の工程(b)、特にサブ工程(b)は、15℃~100℃の間に含まれる温度で、有利には室温(すなわち、22℃±5℃)で実施する。温度は、電解液に望ましい粘度の関数として適合させることができる。
【0068】
更に、本発明による方法の工程(b)、特にサブ工程(b)は、非制御雰囲気下で実施することができる。或いは、本発明による方法の工程(b)、特にサブ工程(b)は、可能な限り酸素及び水が少ない雰囲気において実施することができる。この目的のために、この工程及びこのサブ工程を、不活性雰囲気下で実行することを想定することができる。そうするために、アルゴン又は窒素等の不活性ガスを使用して、この不活性雰囲気を生成してもよい。不活性ガスの電解液へのバブリングに関連する不活性雰囲気の使用により、電解液に潜在的に存在する酸素を除去することが可能になる。
【0069】
本発明による方法の工程(b)、特にサブ工程(b)における電気化学堆積は、例えば、既に述べたように、アルミニウムベース材料製の支持体を電解液に浸して、バッチツーバッチ又はロールツーロール技術によって工業化し得るという点に留意すべきである。
【0070】
本発明による方法の工程(b)、特にサブ工程(b)の所要時間によって、この導電性ポリマーマトリックスでコーティングされた垂直配向カーボンナノチューブに相当する複合材料の総質量に対する、導電性ポリマーマトリックスの質量百分率を調整して、製造後、複合材料の静電容量を最大化することが可能になり、製造後、複合材料の静電容量を最大化して、そのような複合材料を可能な限り高い静電容量を有する電極として使用するスーパーキャパシタを提供することが可能になる。導電性ポリマーマトリックスは、前記複合材料の総質量と比較して、最大99%間で可能な、特に5~95%の間、特に10~80%の間に含まれる質量百分率に相当する。導電性ポリマーマトリックスの質量及び複合材料の質量は、GTA(重量熱分析)及び/又は質量測定及び/又は重合工程中に電気回路を通過した電流の積分によって得られる。
【0071】
工程(b)の後に、特にサブ工程(b)の後に、本発明による方法は、すすぎ工程、及び任意に乾燥工程を有してもよい。
【0072】
すすぎ工程は、支持体、カーボンナノチューブ又はマトリックスポリマーの一部に残り、堆積しなかったモノマー又はオリゴマータイプの残留物/不純物を洗浄して除去することを主な目的としている。そのような残留物/不純物は、封入工程中に問題をもたらし、スーパーキャパシタの機能障害をもたらす可能性がある。有利には、すすぎ工程は、アセトニトリル、ケトン、エタノール又はイソプロパノール等の有機溶媒中に、カーボンナノチューブ及び導電性ポリマーマトリックスを備えたアルミニウムベースの材料の支持体を浸漬することにより実施する。すすぎは、カーボンナノチューブと導電性ポリマーマトリックスとを備えたアルミニウムベースの材料の支持体を、溶媒中に2~30分の可変時間浸漬し、必要に応じて例えば最大5回まで操作を更新することで構成される。
【0073】
更に、カーボンナノチューブと導電性ポリマーマトリックスとを備えたアルミニウムベース材料製の支持体の乾燥のオプション工程は、洗浄に使用する溶媒を蒸発させるために、すすいだ後、この支持体を外気中に放置することによって実施してもよい。或いは、この乾燥は、真空下又は赤外線ランプを用いて、カーボンナノチューブ及び導電性ポリマーマトリックスを備えたアルミニウムベース材料製の支持体を加熱することにより実施してもよい。この代替方法は、連続方法の場合に実施することができる。
【0074】
本発明はまた、既に述べたような本発明の方法により調製することができる電極に関する。この電極は、その表面上に導電性ポリマーマトリックスでコーティングされた垂直配向カーボンナノチューブが見出される、アルミニウムベース材料製の支持体を有する。したがって、これは単層電極である。
【0075】
このような電極は、[6]で得られた電極とは明らかに異なっている。実際、先に説明したように、本発明において、溶媒が少なくとも1種のイオン液体と少なくとも1種のプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒との混合物である電解液から、ECPが電解重合されるという事実により、このECPのナノ構造化がもたらされ、[6]のようなプロトン性溶媒のみを溶媒として含む電解液から得られたECPと比較して、その特性[10、11]の改善がもたらされる。ECPの特性のこの改善により、ECPを含む電極の特性の改善がもたらされる。電極の特性の改善の例として、ポリアニリンに基づく[6]に記載された電極は、1V未満の範囲でしか使用できない([6]の図3(a))が、本発明では2Vの、電極が使用されてもよい電位範囲を考慮することができる(以下の図3)。
【0076】
アルミニウムベース材料製の支持体上に、先に示されたものはすべて、本発明による電極にも当てはまる。
【0077】
有利には、本発明による電極における垂直配向カーボンナノチューブの密度は、変更可能であり得る。後者は、有利には、ナノチューブ10~1013/電極cmに含まれる。それにより、ナノチューブ10~1012/cmのオーダー、及び特にナノチューブ1011~1012/cmのオーダーの、垂直配向カーボンナノチューブの高密度カーペットを有する材料を有することが可能である。
【0078】
カーボンナノチューブ及びこのポリマーマトリックスを含む複合材料の総質量と比較して表される導電性ポリマーマトリックスの質量百分率は、5~80%の間に含まれる。特定の例示的な例として、この百分率は、20%のオーダー(すなわち、20%±5%)又は40%のオーダー(すなわち、40%±5%)であり得る。
【0079】
本発明による電極では、カーボンナノチューブは、有利には10μm超の長さを有する。ある種の実施形態では、この長さは20μm超でもよく、30μm超又は50μm超でもよい。
【0080】
最後に、本発明による電極は、有利には少なくとも15mF/cmの静電容量を有する。
【0081】
本発明はまた、スーパーキャパシタ又は電池等の電気を貯蔵及び復元するためのデバイスの正/負極としての、光起電デバイス用の電極としての、COの貯蔵用の材料における、又は電気化学センサーの電極としての、本発明の電極又は本発明の方法により調製可能な電極の使用に関する。したがって、本発明は、本発明による電極を含むか、又は本発明の方法によって調製することができるデバイスであって、スーパーキャパシタ又は電池等の電気を貯蔵及び復元するためのデバイス;光起電装置;CO2の貯蔵用材料、及び電気化学センサーからなる群から選択される、デバイスに関する。
【0082】
特定の実施形態では、本発明による電気を貯蔵及び復元するためのデバイスは、少なくとも2つの単層電極(正及び負)又は2つの単層電極(正)及び1つの二重層電極(負)を有する少なくとも3つの電極を含む。念のため、単層電極は単一の活性面のみを含むが、二重層電極は2つの活性面をその2つの反対面にそれぞれ含む。
【0083】
例示的かつ非限定的な例として、本発明による電気を貯蔵及び復元するためのデバイスは、
1)本発明による電極、例えば、正極用にポリ(3-メチルチオフェン)で作製されたマトリックスでコーティングされた垂直配向カーボンナノチューブを有するアルミニウムベースの材料(Al/VACNT/P3MT)で作製された支持体及び、単層又は二重層の活性炭電極を備えた非対称組立体、又は、
2)本発明による2つの電極であり、正極は、Al/VACNT/P3MT型であり得、負極は、ピロールマトリックスでコーティングされた垂直配向カーボンナノチューブを有するアルミニウムベースの材料(Al/VACNT/PPy)で作製された支持体に対応することができる、電極を備えた非対称2型組立体、又は、
3)本発明による2つの電極であり、p及びnドープ可能な共役ポリマーが各VACNT電極上に存在するもの、例えば、負極及び正極用のAl/VACNT/ポリ(フルオロフェニルチオフェン)を備えた非対称3型組立体、又は、
4)各VACNT電極上に2つの異なるp及びnドープ可能な共役ポリマー、例えば、負極にAl/VACNT/Poly(フルオロフェニルチオフェン)及び正極にAl/VACNT/P3MTを含む、非対称4型組立体
を含み得る。
【0084】
最後に、本発明は、スーパーキャパシタ等の電気を貯蔵及び復元するためのデバイス、例えば、少なくとも2つの電極と、2つの電極を分離する電解質を含み、電極のうちの少なくとも1つは、本発明による電極であるか、本発明による方法により調製することができる、デバイスの製造方法であって、
電解質との界面に2つの電極を組み立てる異なる工程を含み、組立体が、電気を貯蔵及び回復するための前記デバイスを形成するための封入パッケージに含まれる、
方法に関する。
【0085】
組立体は、公知の方法で、例えば、以下の方法で、電極及び電解質を配置するための容器を構成するパッケージを考慮することにより実施する:
a’)組立体タイプ(対称又は非対称)に応じて所望の寸法に、かつ封入パッケージの幾何学的形状及び寸法(円筒形型電池、ボタン型電池、又はパウチセル等として知られる型の電池)に、少なくとも1つが本発明による電極であるか、又は本発明による調製方法により調製可能な電極である電極を切断し、セパレータを切断する工程、
b’)超音波溶接等により、各電極に一体の外部電気接続ストリップを作製する工程、
c’)電極をセパレータに組み込む工程、
d’)超音波溶接等により、外部電気接続ストリップをパッケージの外側の正及び負の端子に一体化する工程、
e’)電極/セパレータ組立体をパッケージ内の所定の位置に配置する工程、工程(d’)及び(e’)の順序は、逆にすることができ、
f’)電極/セパレータ組立体に電解質を添加し、拡散させる工程、並びに
g’)パッケージングを密封する工程、である。
【0086】
電気を貯蔵及び復元するためのデバイスの望ましい性質、すなわち、対称か又は非対称かに応じて、負極と正極を所望の寸法に切断する。対称システムは、既知の方法で、ほぼ同一の、又はまさに同一の性質及び質量である負極及び正極を有する。逆に、非対称システムの場合、負極は、正極の性質又は質量とは異なる性質又は質量を有する。
【0087】
電気を貯蔵及び復元するデバイスの正極は、本発明による電極、すなわち、カーボンナノチューブ及び導電性ポリマーマトリックスを有するアルミニウムベース材料製の支持体で構成される。負極は、例えば、活性炭から作製される。
【0088】
組立体のために、セパレータは、セルロースに基づくか、又はポリエチレン若しくはポリプロピレン(ナフィオン(Nafion)(登録商標)、セルガード(Celgard)(登録商標)等)、又はガラス繊維に基づく多孔質膜であってもよい。セパレータ及び電解質は、特に電解質が固体又はゲル状の場合、時には単一の組立体のみを形成することがある。
【0089】
有利には、本発明の製造方法は、液体電解質又はゲル電解質を有する1つ又は複数の多孔質膜セパレータを使用する。
【0090】
電気を貯蔵及び復元するためのデバイスの最適な体積比容量を得るには、パッケージ、電極、電解質の体積を最小限に抑えながら、負極及び正極と電解質との間の幾何学的接触面を最大化する必要がある。この目的のために、2種類の組立体:
- スーパーキャパシタ等のデバイスが複数の正極を含む場合、同一タイプの電極(負又は正)に共通の溶接を伴う電極をスタックしたもの、又は
- 円筒状システム又は巻回柱状システムを形成する、1つ又は2つの軸に正極又は負極を巻回したもの
が有利である。
【0091】
有利には、デバイスの電解質は、本発明による調製方法の工程(b)中で、電気化学プロセスにより導電性ポリマーマトリックスを堆積させるために実施される電解液用に選択される化合物と同じ化合物から選択する。したがって、電解液で使用される溶媒の混合物について先に説明したすべてのものは、デバイスの電解質にも適用される。
【0092】
或いは、2つの電極間の電解質は、
- 少なくとも1種のプロトン性溶媒及び/若しくは非プロトン性溶媒、並びにイミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩又はアンモニウム塩等の溶媒に溶解した少なくとも1種の塩、
- 又は、少なくとも1種の純粋なプロトン性及び/若しくは非プロトン性イオン液体
のいずれかを含むことができる。
【0093】
電解質が電極/セパレータ組立体に添加され、拡散すると、パッケージは、熱可塑性接着(例えば、パウチセル用)により、又は機械的密封(金属及び/又はプラスチックカバー、特にボタン及び円筒形電池)若しくは特に大きな寸法の角形及び円筒形電池用の金属溶接により、密封される。
【0094】
金属製円筒形電池等の特定の型のパッケージングでは、電気的安全性の理由から、電気絶縁コーティングを付加することにより、金属パッケージを外部接点から絶縁する必要がある。
【0095】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、例示的かつ非限定的な目的で以下に示される実施例を読むと、当業者に更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】本発明の範囲内で使用されるAl成長支持体の表面に垂直に配向したCNTのカーペットの典型的な形態を示す図である。
図2A】支持体の表面に垂直に配向しているが導電性ポリマーを有していないCNTを備えたアルミニウム支持体を含む電極で電気化学的に観察された、腐食の影響についての走査電子顕微鏡画像を示す図である。
図2B】支持体の表面に垂直に配向しているが導電性ポリマーを有していないCNTを備えたアルミニウム支持体を含む電極で電気化学的に観察された、腐食の影響についての走査電子顕微鏡画像を示す図である。
図2C】支持体の表面に垂直に配向しているが導電性ポリマーを有していないCNTを備えたアルミニウム支持体を含む電極で電気化学的に観察された、腐食の影響についての走査電子顕微鏡画像を示す図である。
図2D】支持体の表面に垂直に配向しているが導電性ポリマーを有していないCNTを備えたアルミニウム支持体を含む電極で電気化学的に観察された、腐食の影響についての走査電子顕微鏡画像を示す図である。
図3】導電性ポリマーの堆積前(Al/VACNT)又はこの堆積後(Al/VACNT/P3MT)に、カーボンナノチューブを備えたアルミニウム支持体について得られたサイクリックボルタンメトリー(cyclic voltamperometry)曲線を示すグラフである。
図4A】このカーペットの3つのそれぞれのゾーンにおけるカーボンナノチューブのカーペットの断面図である。支持体の反対側のカーペットの上部(図4A)、中央部(図4B)、及び下部(図4C)の断面図である。
図4B】このカーペットの3つのそれぞれのゾーンにおけるカーボンナノチューブのカーペットの断面図である。支持体の反対側のカーペットの上部(図4A)、中央部(図4B)、及び下部(図4C)の断面図である。
図4C】このカーペットの3つのそれぞれのゾーンにおけるカーボンナノチューブのカーペットの断面図である。支持体の反対側のカーペットの上部(図4A)、中央部(図4B)、及び下部(図4C)の断面図である。
図4D】支持体の反対側のカーペットの上部(図4D)、中央部(図4E)、及び下部(図4F)における対応するEDXマッピングを示すグラフである。
図4E】支持体の反対側のカーペットの上部(図4D)、中央部(図4E)、及び下部(図4F)における対応するEDXマッピングを示すグラフである。
図4F】支持体の反対側のカーペットの上部(図4D)、中央部(図4E)、及び下部(図4F)における対応するEDXマッピングを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0097】
I.前文
以下に記載する本発明による電極の例示的な実施形態は、それらの静電容量に関する性能を強調し、その目的は、スーパーキャパシタタイプの電気を貯蔵及び復元するためのデバイスにおいて使用される高静電容量電極を提案することである。
【0098】
以下に説明するすべての例示的な実施形態及び比較例について、アルミニウム支持体上のCNTの合成は、水素及びアルゴンの存在下で、触媒前駆体としてのフェロセンに結合した炭素源としてのアセチレンから、615℃でCVDによって実施する。フェロセンは、0.7~7mL/hの範囲の流量範囲で、エアロゾル形態のトルエン溶液(トルエンに溶解した10質量%のフェロセン)を使用して反応器中に運搬する。それによって得られたAl成長支持体の表面に垂直に配向したCNTのカーペットの典型的な形態を、図1に示す。
【0099】
以下に記載する例示的な実施形態を通じて記載するアルミニウム支持体上に配向したCNTの異なる長さの制御は、前駆体の注入所要時間又は反応雰囲気を構成するガスの比率(Ar/H/C)等の、合成パラメータの調整によって確立する。これらのパラメータは、例のそれぞれについて記載されず、当業者は、国際出願WO2015/071408[1]においてアルミニウム支持体上に配向したCNTの合成を実施し、制御するために必要な補足情報を見出すことができる。
【0100】
II.アルミニウム集体電を備えたスーパーキャパシタに対する電解質の影響
電極が循環する電解質の影響を試験するために、カーボンナノチューブを備え、導電性ポリマーを含まないアルミニウム支持電極を使用した。
【0101】
この電極は、より具体的には、1.13cmの活性表面と、65μmの長さで1011~1012CNT/cmのオーダーの高いナノチューブ表面密度の、垂直配向カーボンナノチューブを有するアルミニウム支持体とを含む。この電極は、上記のポイントIで記載したように調製した。
【0102】
この電極が循環する電解質は、アルミニウム電極基板に対して非常に腐食性があることが知られている混合物[12]、すなわち、アセトニトリル中の1mol/Lのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドである。
【0103】
図2は、2000サイクル後に試験された電極上で観察された電気化学腐食の影響についての、走査型電子顕微鏡画像を示す。電極の腐食は、CNTカーペットの亀裂(図2A)、カーペットの剥離(図2B)及び腐食ピット(図2C)、並びに支持体の表面の亀裂(図2D)をもたらす。
【0104】
III.本発明による電極の調製及び特性評価
III.1.操作手順
1.13cmの活性表面を有し、25μmの長さで1011~1012CNT/cmのオーダーの高いナノチューブ表面密度の、垂直配向カーボンナノチューブを含むアルミニウム支持体を、上記のポイントIで記載したように調製した。
【0105】
ポリ(3-メチルチオフェン)(又はP3MT)タイプの導電性ポリマーを、電気化学プロセスによってCNTを備えたこのアルミニウム支持体上に堆積させる。
【0106】
電気化学プロセスによってこの堆積を実施するために使用する電気化学デバイスは、例えば、既知の方法で、テフロン(登録商標)製の円筒体を載せてサンプルを堆積させるステンレス鋼ベースを含む。
【0107】
使用する電気化学技術では、3つの電極を用いる。作用電極はカーボンナノチューブを含むサンプルで構成され、一方、対極はカーボンブラックと活性炭の複合ペーストである。組立体をステンレス鋼グリッドに閉じ込める。参照電極は銀線である。
【0108】
電気化学デバイスに含まれる電解質は、アセトニトリルとEMITFSIとの50:50体積の混合物であり、0.4Mの濃度で3-メチルチオフェンモノマーを添加する。
【0109】
選択された電気化学的手法は、サイクリックボルタンメトリーである。電圧を、20mV/sのスキャン速度で-0.5V~1.5Vの間で、50サイクルにわたって印加する。
【0110】
これらの条件において、複合体、すなわちカーボンナノチューブと導電性ポリマーとの複合体と比較して導電性ポリマーの割合が50質量%未満である電極が得られる。
【0111】
III.2.ポイントIII.1で調製された電極の静電容量の試験
本発明による電極の表面単位当たりの静電容量を特徴付け、それを、同じ電極(カーボンナノチューブ及び同じ比表面積を備えた同じアルミニウム支持体)であるが導電性ポリマーを含まない電極の表面単位当たりの静電容量と比較するために、サイクリックボルタンメトリー技術を使用して、電圧を、10mV/sのスキャン速度で-0.5V~1.5Vの間で、5サイクルにわたって印加した。
【0112】
静電容量の特性評価により、本発明による電極(P3MTにより機能化されたカーボンナノチューブを備えたアルミニウム支持体)に204mF/cmの静電容量が与えられ、一方、導電性ポリマーを含まない比較電極の静電容量は29mF/cmである(図3)。アルミニウム支持体上の垂直配向カーボンナノチューブに会合する導電性ポリマーを有する本発明による電極の静電容量は、7倍に増加する。
【0113】
導電性ポリマーにより、ポリマーが存在しない場合よりもはるかに大きな静電容量を提供することが可能になる。
【0114】
IV.本発明による電極の代替物の調製及び特性評価
IV.1.操作手順
ポイントIII.1の操作手順と比較して、この例では、高さがより高いカーボンナノチューブを備えたアルミニウム支持体と別の電解質を実施して、P3MTによりカーボンナノチューブを機能化する。
【0115】
この目的のために、1.13cmの活性表面を有し、70μmの長さで1011~1012CNT/cmのオーダーの高いナノチューブ表面密度の、垂直配向カーボンナノチューブを含むアルミニウム支持体を、上記のポイントIで記載したように調製した。
【0116】
実施される電気化学デバイス及び技術は、ポイントIII.1の操作手順で使用されるものと同一である。
【0117】
逆に、電気化学デバイスに含まれる電解質は、アセトニトリルとEMI-BF4(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)との50:50体積の混合物であり、これに、0.2mol/Lの濃度で3-メチルチオフェンモノマーを添加する。更に、サイクリックボルタンメトリー中に、電圧を、5mV/sのスキャン速度で-0.2V~1.4Vの間で、100サイクルにわたって印加する。
【0118】
これらの条件において、複合体、すなわちカーボンナノチューブと導電性ポリマーとの複合体と比較して導電性ポリマーの割合が少なくとも85質量%である電極が得られる。
【0119】
IV.2.ポイントIV.1で調製された電極の静電容量の試験
本発明による電極の表面単位当たりの静電容量を特徴付け、それを、同じ電極(カーボンナノチューブ及び同じ比表面積を備えた同じアルミニウム支持体)であるが導電性ポリマーを含まない電極の表面単位当たりの静電容量と比較するために、サイクリックボルタンメトリー技術を使用して、電圧を、10mV/sのスキャン速度で-0.2V~1.4の間で、5サイクルにわたって印加した。
【0120】
静電容量の特性評価により、本発明による電極(P3MTにより機能化されたカーボンナノチューブを備えたアルミニウム支持体)に1077mF/cmの静電容量が与えられ、一方、導電性ポリマーを含まない比較電極の静電容量は27mF/cmである。アルミニウム支持体上の垂直配向カーボンナノチューブに会合する導電性ポリマーを有する本発明による電極の静電容量は、40倍増加する。
【0121】
この調製代替物でもまた、導電性ポリマーにより、ポリマーが存在しない場合よりもはるかに大きな静電容量を提供することが可能になる。
【0122】
IV.3.ポイントIV.1のプロトコルによるP3MTの堆積の特性評価。
ポイントIV.1のプロトコルに従って調製した電極に対して、エネルギー分散型X線(EDX)による分析に関連する走査型電子顕微鏡(SEM)分析を実施した。
【0123】
支持体の反対側のカーボンナノチューブのカーペットの上部(図4D)、カーペットの中央部(図4E)、及びナノチューブのカーペットの下部(図4F)のEDXマッピングはすべて、主ピークとして、試験したナノチューブのカーペットのすべてのゾーンにP3MTが存在することを証明する硫黄のピークを有し、したがってカーボンナノチューブの高さ全体にわたるP3MTの堆積の均一性を示す。フッ素ピークに関しては、実質上存在せず、このことにより、複合材料では、P3MTの堆積に使用される電解質中にテトラフルオロボレートイオンが最初は実質上存在しないことを確認することができる。
【0124】
したがって、本発明の方法により、垂直配向カーボンナノチューブの密度、これらの垂直配向カーボンナノチューブの長さ、及び導電性ポリマーの割合を、電極に望まれる静電容量の関数として適合させた電極の製造が可能になり、最終的に、この静電容量は、本発明による少なくとも1つの電極を含むスーパーキャパシタに望ましい。
【0125】
V.本発明による電極を含むスーパーキャパシタ
V.1.本発明によるスーパーキャパシタS1の調製。
スーパーキャパシタ又は電池S1と呼ばれるスーパーキャパシタは、非対称電極を備えたタイプCR2032のボタン電池の形態であり、
- 電極NTC1として知られる、3-メチルチオフェンから得られた導電性ポリマーに会合したアルミニウム支持体上の垂直配向カーボンナノチューブの電極、
- 活性炭電極、
- Celgard(登録商標)2500という名前で販売されている製品等、25μmの2つのポリプロピレン電極間のセパレータ、
- アセトニトリル及びEMITFSIに基づく2つの電極を分離する電解質
を含む。
【0126】
電極NTC1は、1.13cmの表面と、1.13cmの活性表面全体にわたってP3MTの堆積表面を含む、高さ約84μm、(1011~1012CNT/cmのオーダーの)高いナノチューブ表面密度である、垂直配向カーボンナノチューブを有する。
【0127】
電極NTC1の調製に関して、P3MTの電気化学堆積デバイスに含まれる電解質は、アセトニトリルとEMITFSIとの75:25体積の混合物であり、これに0.4Mの濃度で3-メチルチオフェンモノマーを添加する。選択された電気化学的技術はクロノアンペロメトリーである。20%のポリマー/複合材料質量比が得られるまで、電圧を、250ミリ秒パルスあたり1.55Vで印加して、各パルス間で、1.5秒の回路開放を行う。
【0128】
電池の電極及びセパレータは、50~80℃の間の真空下で、Bucchi(登録商標)タイプのガラスオーブン中で乾燥させた。
【0129】
電池S1の電解質は、防食添加剤として10質量%のLiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)塩を含むアセトニトリルとEMITFS1の40:60質量混合物である。この電解質は、上記のポイントIIで使用した腐食性の高い電解質、すなわち同じアニオン、同じ溶媒、及び同様の輸送特性に相当するという点に留意すべきである。
【0130】
電解質を、不活性アルゴン雰囲気下で、電極及びセパレータを含むパッケージに配置した。
【0131】
V.2.本発明によるスーパーキャパシタS2の調製。
スーパーキャパシタ又は電池S2と呼ばれるスーパーキャパシタは、カーボンナノチューブ、P3MTの質量比、及び防食添加剤を含まない電池の電解質に対する特性のレベルで、スーパーキャパシタS1と区別される。
【0132】
電池S2は、電池NTC2と呼ばれる電極を含み、この電極は、1.13cmの表面、1.13cmの活性表面全体にわたってP3MTの堆積表面を含む、高さ約80μm、(1011~1012CNT/cmのオーダーの)高いナノチューブ表面密度である、垂直配向カーボンナノチューブを有し、これは、ポリマー/複合材料質量比が40%である。
【0133】
2つの電極NTC1及びNTC2は、カーボンナノチューブの長さ及び密度(2.25mg/cm及び3.48mg/cm)に関して非常に類似している。他方では、導電性ポリマーの量は、電極NTC2に対して2倍である。
【0134】
電池S2の電解質は、電池S1の電解質と同じであり、すなわち、アセトニトリルとEMITFSIの40:60質量混合物であるが、一方で、防食添加剤は含まない。
【0135】
V.3.比較スーパーキャパシタS比較の調製。
スーパーキャパシタ又は電池S比較と呼ばれる比較スーパーキャパシタは、カーボンナノチューブを備えたアルミニウム支持電極を除き、電池S1及びS2等のボタン電池に相当する、つまり、正極及び負極NTC比較は、導電性ポリマーを一切含まない。
【0136】
電極NTC比較は、1.13cmの表面と、高さ約65μm、(1011~1012CNT/cmのオーダーの)高いナノチューブ表面密度である、垂直配向カーボンナノチューブとを有する。
【0137】
2つの電極NTC比較は、カーボンナノチューブの長さ並びに電極NTC1及びNTC2の単位面積当たりの質量に関して類似している。
【0138】
電池S比較の電解質は、電池S2の電解質と同じであり、すなわち、アセトニトリルとEMITFSIの40:60質量混合物であり、防食添加剤を含まない。
【0139】
V.4.スーパーキャパシタS1、S2、S比較の充電/放電容量及びクーロン効率。
以下のTable I(表1)、Table II(表2)、及びTable III(表3)は、電池S1、電池S2、電池S比較mpの、1サイクル目と1500サイクル後の充放電容量及びクーロン効率、並びに静電容量維持率をそれぞれまとめている。静電容量維持率は、サイクリング後の静電容量の正規化された百分率である。「サイクル」とは、システムを完全に充電及び放電することを意味する。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
したがって、電池S1及びS2は、1500サイクル超にわたって機能障害を生じずにサイクル性を提供する。
【0144】
充電及び放電サイクルに関する電池S2の性能は、電池S1の性能に相当する。更に、アルミニウム集電体に対して潜在的に腐食性の電解質を使用しているにもかかわらず、防食添加剤の存在は厳密に必要ではない。
【0145】
充電及び放電サイクルに関する、実施された電解質に防食添加剤が存在しない場合の電池S比較の性能は、電池S1及びS2の性能をはるかに下回っている。
【0146】
アルミニウム支持体に基づく本発明の電極は、導電性ポリマーに会合した垂直配向カーボンナノチューブの存在のおかげで、電極の腐食のリスクなしに静電容量に関して良好な性能を提供しながら、本発明の電極により、軽量スーパーキャパシタを提供することが可能になる。
【0147】
[参考文献]
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図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
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図4E
図4F