(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】吸気同期式の流体吐出装置
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020521920
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 FR2018052594
(87)【国際公開番号】W WO2019077276
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ダヴィッド
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-528863(JP,A)
【文献】特表2016-509897(JP,A)
【文献】米国特許第05119806(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気同期式の流体吐出装置であって、
マウスピース(400)を有する本体(10)と、
前記本体(10)に対して軸方向に摺動し、流体および推進用ガスが収容された流体用容器(100)と、
前記流体を選択的に吐出するためにクリンプキャップのような固定要素(5)を用いて前記容器(100)に組み付けられ、弁部材(210)を含む計量弁(200)と、
前記計量弁(200)が作動不可能である阻止位置と前記計量弁(200)が作動可能である作動位置との間で、揺動軸Bを中心として揺動する阻止要素(500)と、
前記阻止要素(500)の移動を前記阻止位置に阻止する係止位置と前記阻止要素(500)の移動を阻止しない解除位置との間で、揺動軸Cを中心として揺動するトリガ要素(600)と、
吸気に反応して変形および/または移動可能な吸気反応部材(60,61)を含む吸気制御式トリガ機構と
を備え、
前記吸気反応部材(60,61)は、変形および/または移動して前記トリガ要素(600)を前記解除位置に向けて移
動させることにより、前記阻止要素(500)を前記阻止位置から前記作動位置に向けて移
動させ、
前記流体吐出装置は、さらに、
静止位置と吐出位置との間で軸方向の移
動が可能なように前記本体(10)に装着されたアクチュエータ(800)を備え、
前記アクチュエータ(800)と
、前記容器(100
)に固定される要素(900;950)との間には、バネ(850)が配置され、
前記アクチュエータ(800)が前記吐出位置に向かって移動すると、前記バネ(850)が圧縮されることにより、軸方向の力(F)が前記容器(100)
に固定される要素(900;950)を介して前記阻止位置に存する前記阻止要素(500)に、前記阻止要素(500)の前記揺動軸Bに垂直な
方向であり且つ前記軸方向に平行な軸Yに沿って伝達し、
前記軸Yは、前記揺動軸Bから0ではない距離dに位置し、
前記距離dは、2.5mm未
満である
ことを特徴とする流体吐出装置。
【請求項2】
前記固定要素(5)の周囲
に固定されるリング(900)を
さらに備え、
前記リング(900)は、
前記阻止要素(500)と協働する軸方向突起部(901)を有し、
前記軸方向突起部(901)は、
前記阻止位置にある前記阻止要素(500)の軸方向阻止伸長部(501)と協働して、前記容器(100)の軸方向への移動を阻止し、
前記作動位置にある前記阻止要素(500)の軸方向凹部(502)と協働して、前記容器(100)の軸方向への移動を可能にする
ことを特徴とする請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記リング(900)の前記軸方向突起部(901)は、前記阻止位置にある前記阻止要素(500)を前記作動位置に向けて付勢する
ことを特徴とする請求項2に記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記リング(900)の周囲には、フープ(950)が係合する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記阻止要素(500)は、
前記係止位置にある前記トリガ要素(600)の係止肩部(610)と協働してラッチを構成する係止突起部(510)を有し、
前記ラッチは、前記阻止要素(500)が前記阻止位置から移
動することを阻止する
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項6】
前記トリガ要素(600)の前記係止肩部(610)に対して、前記阻止位置にある前記阻止要素(500)の前記係止突起部(510)が作用させる力(F′)は、前記トリガ要素(600)の前記揺動軸Cに垂直な軸Zに沿って伝達する
ことを特徴とする請求項5に記載の流体吐出装置。
【請求項7】
前記軸Zは、前記揺動軸Cから0ではない距離d′に位置し、
前記距離d′は、2mm未
満である
ことを特徴とする請求項6に記載の流体吐出装置。
【請求項8】
前記ラッチは、前記阻止要素(500)および前記係止位置にある前記トリガ要素(600)が接触する第1接触点を形成し、
前記阻止要素(500)は、
前記係止位置にある前記トリガ要素(600)の当接面(620)と協働して、前記阻止要素(500)および前記トリガ要素(600)が接触する第2接触点を形成する当接突起部(520)を有し、
前記トリガ要素(600)が前記係止位置にある間は、
前記第1接触点より前記第2接触点のほうが、前記揺動軸Cからの距離が長い
ことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項9】
静止位置と作用位置との間で揺動しつつ並進して動くことが可能なように前記本体(10)に装着された、横方向に駆動されるプッシャ(20)を
さらに備え、
前記プッシャ(20)が前記作用位置に向かって移動することにより、前記アクチュエータ(800)が前記吐出位置に向かって軸方向に移動する
ことを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項10】
前記プッシャ(20)は、前記アクチュエータ(800)に当接する第1当接領域(P1)および前記本体(10)に当接する第2当接領域(P2)を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の流体吐出装置。
【請求項11】
前記第1当接領域(P1)は揺動中心であり、
前記第2当接領域(P2)は半径方向摺動面である
ことを特徴とする請求項10に記載の流体吐出装置。
【請求項12】
阻止位置と非阻止位置との間で移動および/または変形が可能である阻止部材(980)を
さらに備え、
前記阻止部材(980)は、前記阻止位置において、前記トリガ要素(600)が前記解除位置に向かって移動することを阻止し、
前記プッシャ(20)は、
前記作用位置に向かって移動するときに前記阻止部材(980)を前記非阻止位置に向けて移動および/または変形させる突起部(29)を有する
ことを特徴とする請求項9から11までのいずれか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項13】
前記吸気反応部材(60,61)は、変形可能な膜体(61)を含み、
前記膜体(61)は、
変形可能な空気室(60)を構成し、
前記トリガ要素(600)に固定され、
吸気中に変形して、前記トリガ要素(600)を前記係止位置から前記解除位置に向けて移動させる
ことを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項14】
前記マウスピース(400)は、前記本体(10)の内部に連通させる開口(410)を有し、
前記吸気により生じる吸気流の大部分が前記トリガ機構を最初に通るように、前記吸気の開始時点では、前記開口(410)は逆止弁(420)により閉鎖されている
ことを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項15】
前記リング(900)が前記容器(100)とともに軸方向に移動することにより、前記逆止弁(420)が開放される
ことを特徴とする請求項14に記載の流体吐出装置。
【請求項16】
前記距離dは、1mm未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項17】
前記距離dは、約0.4mmである
ことを特徴とする請求項16に記載の流体吐出装置。
【請求項18】
前記距離d′は、1mm未満である
ことを特徴とする請求項7に記載の流体吐出装置。
【請求項19】
前記距離d′は、約0.25mmである
ことを特徴とする請求項18に記載の流体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気に同期して吐出を行う吸気同期式の流体吐出装置に関し、特に吸気同期式のエアゾール吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸作動型吸入器(Breath Actuated Inhaler(BAI))は従来から公知である。この種の装置では、患者の吸気に流体の吐出を同期させるので、患者の気道に流体を適切に投与できることがその主な利点として挙げられる。そのため、推進用ガスを用いて流体を吐出するエアゾール装置の分野では、多種多様な呼吸作動型吸入器が提案されてきた。しかしながら、このような装置は、部品数が多いために製造および組立が複雑で高価であるという明らかに不利な欠点も有する。また、作動閾値を過度に高く設定することなく吸気ごとの吸入を確実にしつつ、偶発的なまたは不所望な作動が生じない程度にラッチを堅牢にすることも、困難である。運悪くラッチが偶発的に解除されると、ユーザの意に反して装置が勝手に作動して流体が吐出されてしまう。
【0003】
特許文献1~9には従来の装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2004/028608号
【文献】米国特許第3456646号明細書
【文献】米国特許第5119806号明細書
【文献】国際公開第2017/176704号
【文献】ニュージーランド特許出願第562769号公報
【文献】米国特許出願公開第2008/156321号明細書
【文献】国際公開第2008/070516号
【文献】国際公開第2010/003846号
【文献】国際公開第2013/178951号
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上述した欠点のない吸気同期式の流体吐出装置を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、吸気のたびに有効に作動することにより動作信頼性が改善された、吸気同期式の流体吐出装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、偶発的にまたは不所望に作動する危険が最小限に抑えられた、吸気同期式の流体吐出装置を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、作動閾値を過度に高く設定しないことにより、有病者や高齢者などの比較的身体が弱いユーザでも安全に信頼して使用できる、吸気同期式の流体吐出装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、製造および組立が容易で安価な吸気同期式の流体吐出装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、作動後に流体が弁室に適切に満たされないことで弁が故障する危険を回避した、吸気同期式の流体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
よって本発明は、吸気同期式の流体吐出装置であって、マウスピースを有する本体と、前記本体に対して軸方向に摺動し、流体および推進用ガスが収容された流体用容器と、前記流体を選択的に吐出するためにクリンプキャップのような固定要素を用いて前記容器に組み付けられ、弁部材を含む計量弁と、前記計量弁が作動不可能である阻止位置と前記計量弁が作動可能である作動位置との間で、揺動軸Bを中心として揺動する阻止要素と、前記阻止要素の移動を前記阻止位置に阻止する係止位置と前記阻止要素の移動を阻止しない解除位置との間で、揺動軸Cを中心として揺動するトリガ要素と、吸気に反応して変形および/または移動可能な吸気反応部材を含む吸気制御式トリガ機構とを備える。前記吸気反応部材は、変形および/または移動して前記トリガ要素を前記解除位置に向けて移動および/または変形させることにより、前記阻止要素を前記阻止位置から前記作動位置に向けて移動および/または変形させる。前記流体吐出装置は、さらに、静止位置と吐出位置との間で軸方向の移動、特には摺動が可能なように前記本体に装着されたアクチュエータを備える。前記アクチュエータと前記容器またはこれに固定される要素との間には、バネが配置される。前記アクチュエータが前記吐出位置に向かって移動すると、前記バネが圧縮されることにより、軸方向の力Fが前記容器に、前記阻止要素の前記揺動軸Bに垂直な軸Yに沿って伝達する。前記軸Yは、前記揺動軸Bから0ではない距離dに位置する。前記距離dは、2.5ミリメートル(mm)未満であり、好ましくは1mm未満であり、さらに好ましくは約0.4mmである。
【0012】
有利には、前記流体吐出装置は、前記固定要素の周囲に、特にスナップ留めにより固定されるリングをさらに備え、前記リングは、前記阻止要素と協働する軸方向突起部を有し、前記軸方向突起部は、前記阻止位置にある前記阻止要素の軸方向阻止伸長部と協働して、前記容器の軸方向への移動を阻止し、前記作動位置にある前記阻止要素の軸方向凹部と協働して、前記容器の軸方向への移動を可能にする。
【0013】
有利には、前記リングの前記軸方向突起部は、前記阻止位置にある前記阻止要素を前記作動位置に向けて付勢する。
【0014】
有利には、前記リングの周囲には、フープが係合する。
【0015】
有利には、前記阻止要素は、前記係止位置にある前記トリガ要素の係止肩部と協働してラッチを構成する係止突起部を有し、前記ラッチは、前記阻止要素が前記阻止位置から移動および/または変形することを阻止する。
【0016】
有利には、前記トリガ要素の前記係止肩部に対して、前記阻止位置にある前記阻止要素の前記係止突起部が作用させる力F′は、前記トリガ要素の前記揺動軸Cに垂直な軸Zに沿って伝達する。
【0017】
有利には、前記軸Zは、前記揺動軸Cから0ではない距離d′に位置し、前記距離d′は、2mm未満であり、好ましくは1mm未満であり、さらに好ましくは約0.25mmである。
【0018】
有利には、前記ラッチは、前記阻止要素および前記係止位置にある前記トリガ要素が接触する第1接触点を形成し、前記阻止要素は、前記係止位置にある前記トリガ要素の当接面と協働して、前記阻止要素および前記トリガ要素が接触する第2接触点を形成する当接突起部を有し、前記トリガ要素が前記係止位置にある間は、前記第1接触点より前記第2接触点のほうが、前記揺動軸Cからの距離が長い。
【0019】
有利には、前記流体吐出装置は、静止位置と作用位置との間で揺動しつつ並進して動くことが可能なように前記本体に装着された、横方向に駆動されるプッシャをさらに備え、前記プッシャが前記作用位置に向かって移動することにより、前記アクチュエータが前記吐出位置に向かって軸方向に移動する。
【0020】
有利には、前記プッシャは、前記アクチュエータに当接する第1当接領域P1および前記本体に当接する第2当接領域P2を有する。
【0021】
有利には、前記第1当接領域P1は揺動中心であり、前記第2当接領域P2は半径方向摺動面である。
【0022】
有利には、前記流体吐出装置は、阻止位置と非阻止位置との間で移動および/または変形が可能である阻止部材をさらに備え、前記阻止部材は、前記阻止位置において、前記トリガ要素が前記解除位置に向かって移動することを阻止し、前記プッシャは、前記作用位置に向かって移動するときに前記阻止部材を前記非阻止位置に向けて移動および/または変形させる突起部を有する。
【0023】
有利には、前記吸気反応部材は、変形可能な膜体を含み、前記膜体は、変形可能な空気室を構成し、前記トリガ要素に固定され、吸気中に変形して、前記トリガ要素を前記係止位置から前記解除位置に向けて移動させる。
【0024】
有利には、前記マウスピースは、前記本体の内部に連通させる開口を有し、前記吸気により生じる吸気流の大部分が前記トリガ機構を最初に通るように、前記吸気の開始時点では、前記開口は逆止弁により閉鎖されている。
【0025】
有利には、前記リングが前記容器とともに軸方向に移動することにより、前記逆止弁が開放される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下に示す詳細な説明および添付図面は、非限定的な例に基づいて本発明の特徴や利点を明確にするものである。
【
図1】有利な実施形態に係る流体吐出装置の一部を示す分解斜視図である。
【
図2】組立後の待機状態にある
図1の装置の一部を示す切欠斜視図である。
【
図3】組立後の待機状態にある
図1の装置の別の一部を示す断面図である。
【
図4】組立後の待機状態にある
図1の装置の切欠斜視図である。
【
図5】作動プッシャが作動した後の
図1の装置を示す、
図4に類似する図である。
【
図7】作動プッシャが作動してからユーザが吸気するまでの装置を示す、
図6に類似する図である。
【
図12】吸気開始時の装置を示す、
図7に類似する図である。
【
図14】作動サイクルの段階を示す、
図13に類似する図である。
【
図15】作動サイクルの段階を示す、
図13に類似する図である。
【
図16】作動サイクルの段階を示す、
図13に類似する図である。
【
図17】作動サイクルの段階を示す、
図13に類似する図である。
【
図18】待機状態にある
図1の装置の一部を示す側面断面図である。
【
図19】待機状態にある
図1の装置の一部を示す正面断面図である。
【
図22】待機状態にある
図1の装置の一部を示す断面図である。
【
図23】作動中の
図1の装置の一部を示す断面図である。
【
図24】待機状態に戻る
図1の装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明では、用語「上」、「下」、「上方」および「下方」は、
図6~
図8および
図12~
図24に具体的に示す吸入器の位置を表す。また、用語「軸方向」および「半径方向」は、特記する場合を除いて
図6に示す弁の縦中心軸Aに対する方向を表す。さらに、用語「基端」および「先端」は、マウスピースに対する位置を表す。
【0028】
本発明は、以下に詳述するとおり、エアゾール弁式の経口吸入器に特に適用されるが、経鼻吸入器のような他の種類の吸入器にも適用可能である。
【0029】
本発明の望ましい実施形態を図面に示すが、下記の構成要素のうち1以上を、類似または同一の機能を提供しつつ何らかの方法で実施することが可能である。
【0030】
図面によれば、吸入器は本体10を備える。本体10はマウスピース400を含む。
【0031】
本体10は、単一部品として製造されてもよいし、複数部品を組み立てて製造されてもよい。図示の非限定的な例では、本体10は、中央部分10′、下側部分10′′および上側部分10′′′の3つの部分で構成される。以下の説明では、本体の全体を示す場合に参照符号10を付す。
【0032】
ユーザが吸入器を使用するには、マウスピース400の吸入口を介して吸入する。マウスピース400は本体10と一体形成されてもよく、図示の実施形態では下側部分10′′に形成される。吸入器の保管時には特に、マウスピース400に取り外し可能な保護キャップ(図示せず)が取り付けられてもよい。ユーザは吸入器の使用時にこの保護キャップを取り外す。
【0033】
本体10は容器100を含む。容器100には、吐出用の流体およびハイドロフルオロアルカン(HFA)類のような推進用ガスが収容される。また、容器100には、流体を選択的に吐出するための計量弁200が装着される。計量弁200は弁本体および弁部材210を含む。吸入器が作動する間、弁部材210は、弁本体ひいては容器100に対して、軸方向に移動可能である。計量弁200は任意の適切な種類のものを用いることができる。計量弁200は、好ましくはクリンプキャップである固定要素5を用いて、容器100に固定される。なお、固定要素5と容器100の間には、ネックガスケットが挿入されることが好ましい。
【0034】
有利には、吸入器が作動する間、弁部材210は本体10に対して静止し、容器100は待機位置である先端位置と作動位置である基端位置の間で本体10に対して軸方向に移動する。
【0035】
計量弁200の弁部材210の開口は、流路を介してマウスピース400に連通する。ユーザは、このマウスピース400を介して、吐出流体を吸入する。公知技術によれば、弁部材210は弁受け700に受け止められる。弁受け700には少なくとも部分的に流路が含まれる。
【0036】
吸入器はリング900を備える。有利には、リング900は、固定要素5の周囲に、例えばスナップ留めタブ905を用いたスナップ留めにより固定される。また有利には、リング900の周囲にフープ950が係合することにより、スナップ留めタブ905はそのスナップ留め位置に固定される。リング900は軸方向突起部901を有する。軸方向突起部901の機能は後述する。
【0037】
有利には、容器100の周囲には、アクチュエータ800が組み付けられる。アクチュエータ800は、容器100を取り囲んで本体10に配置された中空のスリーブ801を含む。中空のスリーブ801の底部と、容器100またはこれに固定されるリング900やフープ950のような要素との間には、バネ850が配置される。中空のスリーブ801は、静止位置と吐出位置の間で、容器100に対して軸方向の移動、特には摺動が可能である。よってユーザは、計量弁200を作動させるためにアクチュエータ800を押圧する。そうすると、中空のスリーブ801が吐出位置に向かって軸方向に移動してバネ850を圧縮するので、軸方向の力Fが、特に図示の実施形態ではフープ950を介して、容器100に伝達する。吸気ごとに生じるこの軸方向の力Fは略一定である。ユーザがアクチュエータ800を押圧し続ける間はバネ850が圧縮されているので、容器100は作動位置に向かって軸方向に付勢される。
【0038】
有利には、本体10には、横方向に駆動されるプッシャ20が揺動しつつ並進して動くことが可能なように装着される。プッシャ20が、特に
図6に示す静止位置から特に
図7に示す作用位置まで移動することにより、アクチュエータ800を軸方向に移動させてバネ850を圧縮する。
【0039】
有利には、横方向に駆動されるプッシャ20は、アクチュエータ800に当接する第1当接領域P1および本体10に当接する第2当接領域P2を有する。
【0040】
図示の実施形態では、第1当接領域P1は揺動中心であり、第2当接領域P2は半径方向摺動面である。プッシャ20が作動する間、揺動中心P1は本体10に対して軸方向下向きに摺動し、第2当接領域P2内の接触点は本体10に対して半径方向内向きに移動する。
【0041】
このように、本実施形態ではプッシャ20が揺動しつつ並進して動くことが可能であるので、小型のままでもユーザが必要な力は小さくて済む。したがってユーザは、容器100の底部を軸方向に押圧しなければならない場合よりも小さい力で、計量弁200を作動させることができる。
図4および
図5に明示する実施形態では特に、計量弁200を軸方向に作動させるのに必要な力が一般的には(バネ850の剛性によって)約40ニュートン(N)~45Nであるのに対し、横方向に駆動されるプッシャ20を作動させるのに必要な力はわずか約15Nである。よって本実施形態では、作動に必要な力の減少率は約3倍である。各種部品の形状の決め方によって、この減少率をさらに大きくすることができる。
【0042】
ユーザがプッシャ20を押圧し続ける間は、バネ850が圧縮されているので、容器100は作動位置に向かって軸方向に付勢される。
【0043】
各作動が終了するとユーザはプッシャ20の押圧を自然に解除する。そうするとプッシャ20はバネ850の作用で自動的に静止位置に戻るので、計量弁200が作動後も作動位置に保持されたままとなる危険を回避できる。このような危険が生じれば、弁室に空気が充満して以後の投与が不完全になったり、流体が弁から漏出したりするおそれある。これは、市販の吸入器が現在抱える問題の一つである。
【0044】
吸入器は阻止要素500を備える。阻止要素500は、計量弁200の作動に係る阻止位置と作動位置の間で移動および/または変形可能である。計量弁200は、阻止要素500が阻止位置にある間は作動不可能であり、阻止要素500が作動位置にある間は作動可能である。吸入器が待機状態にあるときは、阻止要素500は阻止位置にある。ユーザがマウスピース400を介して吸気すると、阻止要素500は作動位置に向かって移動および/または変形する。つまり、ユーザが吸気しないかぎり計量弁200を作動させることはできない。ユーザが吸気したときにのみ、容器100が本体10の内部を軸方向に移動することによって計量弁200が作動する。
【0045】
以下にさらに詳述するとおり、阻止要素500は阻止位置では、容器100が本体10の内部を軸方向に移動することを阻止する。ユーザが吸気すると阻止要素500が移動および/または変形するので、容器100は本体10の内部を軸方向に移動可能になる。吸気が完了すると、容器100の軸方向移動によって計量弁200が作動する。こうして、吸気に同期して1回分の流体が吐出される。
【0046】
したがって、ユーザが吸気していないのにもかかわらず吸入器が偶発的にまたは不完全に作動して有効な流体が失われる危険はない。つまり、ユーザが吸気と同時に作動プッシャ20を作動させないかぎり、流体は吐出されない。変形例として、直接ユーザが容器100の底部を軸方向に押圧してもよい。または、自動作動機構を用いて、ユーザとは無関係に容器100を軸方向に押圧してもよい。
【0047】
吸入器は吸気制御式のトリガ機構を備える。ユーザがマウスピース400を介して吸気すると、トリガ機構は、阻止要素500を阻止位置から作動位置に向けて移動および/または変形させる。
【0048】
トリガ機構は、ユーザの吸気に反応して変形および/または移動可能な吸気反応部材60を含む。吸気反応部材60が変形および/または移動すると、阻止要素500は阻止位置から作動位置に向かって移動および/または変形する。
【0049】
以下にさらに詳述するとおり、吸気反応部材は、例えば蛇腹や変形可能な袋からなる、変形可能な空気室60でもよい。
【0050】
このように、吸気制御式のトリガ機構は、ユーザの吸引流の途中にあるのではなく、特定の室である空気室60により構成される。吸引流において移動/変形するフラップにより動作する機構では、ユーザはトリガ後にフラップの両側にある空気を吸い込むが、本実施形態のトリガ機構はこれとは異なり、吸気下で動作し、ユーザは変形前の空気室60にある少量の空気しか吸引しない。したがって、本発明に係るトリガ機構はより一層安定的で効果的である。
【0051】
有利には阻止要素500は、阻止位置と作動位置の間で揺動軸Bを中心として揺動可能に本体10に装着される。図示の実施形態では、揺動軸Bは、本体10の底面に設けられた突起部でもよい。この場合、阻止要素500の軸受面511が突起部を軸承する。また、その他の実施形態も可能である。
【0052】
阻止要素500は、阻止伸長部501を少なくとも1つ、好ましくは2つ有する。各阻止伸長部501は、阻止位置で、容器100に固定されたリング900の対応する軸方向突起部901と協働する。
図11は阻止要素500の斜視図である。
【0053】
阻止要素500が、具体的には揺動軸Bを中心として揺動することで作動位置に向かって移動すると、阻止伸長部501は軸方向突起部901から離れる。特に阻止要素500は、各阻止伸長部501に隣接する軸方向凹部502を有する。軸方向突起部901が対応する軸方向凹部502内を軸方向に摺動可能であることにより、容器100は本体10の内部を軸方向に摺動可能である。よって計量弁200が作動して1回分の流体が吐出される。
【0054】
阻止要素500は、トリガ要素600によって阻止位置に保持される。
図10はトリガ要素600の斜視図である。有利にはトリガ要素600は、係止位置と解除位置の間で揺動軸Cを中心として揺動可能に本体10に装着される。トリガ要素600は、係止位置では阻止要素500の移動を阻止位置に阻止し、解除位置では阻止要素500の移動を阻止しない。
【0055】
有利には、揺動軸BおよびCは互いに平行である。
【0056】
阻止要素500およびトリガ要素600はラッチを構成する。具体的には、トリガ要素600が係止位置にある間は、その係止肩部610が、阻止要素500の係止突起部510を係止する。これにより、阻止要素500は阻止位置からの揺動を阻止される。すなわち、トリガ要素600は係止位置では、阻止要素500の作動位置に向かう移動を阻止するので、容器100の軸方向移動ひいては計量弁200の作動も阻止される。
【0057】
このように、本発明に係る阻止機構は、阻止要素500およびトリガ要素600がラッチを構成する第1段階と、リング900を介して阻止要素500および容器100を阻止する第2段階との二段階からなる。
【0058】
この阻止機構によれば、吸気により生じる小さな力によって、大きな力(一般的には約40N~45N)を解除できる。阻止要素500は、アクチュエータ800がユーザに押圧されて生じる力F(例えば45N)を、好ましくは作動プッシャ20を介して受けると、並進して移動する容器100を停止させる。阻止要素500およびトリガ要素600は相互に作用し、トリガ要素600が阻止要素500の移動の阻止およびその解除を行う。なお、トリガ要素600の移動は吸気により制御される。
【0059】
阻止機構を構成すれば、一般的には100倍程度のきわめて大きな増幅(係止力/係止解除力)が可能になる。
【0060】
以下に述べるとおり、好ましくは阻止要素500およびトリガ要素600は、離れた2つの接触点で互いに接触する。
【0061】
・第1接触点は、係止肩部610および係止突起部510が構成するラッチにより形成され、有利にはトリガ要素600の揺動軸Cの近傍にある。
【0062】
・第2接触点は、第1接触点から離れており、阻止要素500の側方突起部520およびトリガ要素600の当接面620により形成される。有利には、トリガ要素600が係止位置にある間は、第1接触点より第2接触点のほうが、トリガ要素600の揺動軸Cからの距離が長い。また有利には、ユーザが吸気を開始して吸入器が作動するときに阻止要素500およびトリガ要素600の接触が先に解除されるのは、第2接触点である。
【0063】
阻止要素500は、阻止位置では、容器100に固定されたフープ950がアクチュエータ800により軸方向に押圧されて生じる力Fを、リング900の軸方向突起部901を介して、阻止伸長部501で受け止めて方向S1に揺動する。よって、ラッチはしっかりと係止されるので安定する。具体的には
図13および
図14にこの阻止位置を示す。
【0064】
ユーザが吸気すると生じる係止解除力が、好ましくは揺動軸Cから離れた位置630で、変形可能な膜体61を介してトリガ要素600に作用する。この係止解除力は、
図15に示すように、方向S1の反対方向S2にトリガ要素600を揺動させようとする。
【0065】
阻止要素500の阻止伸長部501に力Fを伝達する軸から阻止要素500の揺動軸Bまでの距離に応じて、阻止要素500にかかるトルクが制御される。この距離dを可能な限り短くしてトルクを小さくすることが好ましい。
図13に示す距離dは、0ではなく、2mm未満であり、好ましくは1mm未満であり、さらに好ましくは約0.4mmである。
【0066】
また、阻止要素500からトリガ要素600に力F′を伝達する軸からトリガ要素600の揺動軸Cまでの距離に応じて、トリガ要素600にかかるトルクが制御される。ここでも、この距離d′を可能な限り短くしてトルクを小さくすることが好ましい。
図14に示す距離d′は、0ではなく、2mm未満であり、好ましくは1mm未満であり、さらに好ましくは約0.25mmである。
【0067】
このラッチ機構を用いれば、トリガ要素600の揺動に必要な力はきわめて小さくて済むので、変形可能な膜体61で生じさせてもよい。この場合、吸気により生じる吸引力を係止解除力に変換することができる。
【0068】
マウスピース400は有利には、本体10の内部に連通する開口410を有する。吸入器が待機状態にあるときおよびユーザが吸気を開始する時点では、開口410は逆止弁420に閉鎖されているので、吸気流の大部分はトリガ機構を最初に通る。本実施形態では、トリガ機構は変形可能な空気室60である。このように、吸気によってトリガを最適化できる。ユーザの吸気により阻止要素500が作動位置に向かって移動すると、容器100は本体10に対して軸方向に移動するので、1回分の流体吐出のために計量弁200が作動する。このとき、容器100に固定されたリング900が逆止弁420を開放位置に向けて移動させる。これにより開口410が開放されて、作動中に空気が流入して吸気流が増加する。このようにしてユーザの吸気と流体の吐出を最適に同期できるので、流体が良好にユーザの肺に到達しやすくなる。
【0069】
有利には、ユーザは本体10および/または下側部分10′′の外からトリガ要素600を操作可能である。このように構成すれば、例えばユーザが流体の服用を必要とするものの十分に吸気できない場合などに、必要に応じて吸気がなくともトリガ要素600を手動で移動させて計量弁200を作動させることができる。このようにトリガ要素600は安全策である。
【0070】
図示の実施形態では、吸気反応部材60は変形可能な空気室である。有利には空気室は変形可能な膜体61からなる。膜体61は下側部分10′′およびトリガ要素600に連通する。図面から分かるように、有利には膜体61は実質的に気密状態の蛇腹である。また、膜体61はその他の構造でもよく、具体的には単なる袋やダイヤフラムなどでもよい。さらには、膜体61は突起によりトリガ要素600の開口または縁部630に固定されてもよい。
【0071】
ユーザが吸気すると、その吸気で生じる吸引力によって、変形可能な膜体61が変形および/または収縮するので、トリガ要素600が係止位置から解除位置に向かって移動する。そうすると、阻止要素500およびトリガ要素600が構成するラッチが解除されて、阻止要素500が阻止位置から作動位置に向かって移動する。
【0072】
このように、ユーザの吸気中にのみ計量弁200が作動するので、吸気に同期して1回分の流体が吸入口を介して吐出される。
【0073】
吸入器は、有利には、阻止位置と非阻止位置の間で移動および/または変形可能な阻止部材980を備える。阻止部材980は阻止位置では、トリガ要素600が解除位置に向かって移動することを阻止する。横方向に駆動されるプッシャ20は、有利には、作用位置に向かって移動するときに阻止部材980を非阻止位置に向けて移動および/または変形させる突起部29を有する。
【0074】
よって、ユーザが容器100を軸方向に押圧せずに吸気してもトリガ要素600は揺動できないので、ラッチは解除されない。空気室60は実質的に気密状態であり、開口410は逆止弁420に閉鎖されている。このことから、ユーザは、マウスピース400を介して適切に吸入できないことにすぐに気付き、吸気の前にプッシャ20を作動させなければならないことが分かる。そしてユーザがプッシャ20を押圧すると、阻止部材980が非阻止位置に移動する。上述したとおり、吸気に反応してトリガ要素600が揺動することによって吸入器が作動する。
【0075】
有利には阻止部材980は、ねじりバネのような弾性体(図示せず)を含む。阻止部材980は、弾性体により阻止位置に向けて弾性的に付勢される。よって、ユーザが作動プッシャ20を解除すると、阻止部材980は阻止位置に自動的に戻り、有利にはトリガ要素600も、例えば適切な可撓性ブレード981を介して、係止位置に戻る。
【0076】
有利には阻止部材980は、阻止要素500の補強部分582と協働する補強伸長部982を有する。これにより、阻止部材980が阻止位置に戻ると、阻止要素500もその阻止位置に戻る。
【0077】
ユーザが吸入器を使用するには、マウスピース400を口にくわえて、作動プッシャ20を手で軸方向に押圧する。このとき、リング900の軸方向突起部901を軸方向に阻止する阻止要素500の阻止伸長部501により、容器100は本体10の内部を軸方向に摺動することを阻止されている。特に
図6および
図7から分かるように、これと同時に阻止部材980が移動するので、トリガ要素600が移動可能になる。
【0078】
ユーザがマウスピース400を介して吸気すると、変形可能な膜体61が変形して、この膜体61に固定されたトリガ要素600が揺動する。
図14~
図17から分かるように、トリガ要素600が移動すると、トリガ要素600の係止肩部610および阻止要素500の係止突起部510により構成されるラッチが解除される。容器100から伝達する軸方向の力Fによって阻止要素500が揺動するので、容器100が本体10の内部を作動位置に向かって軸方向に摺動して計量弁200が作動する。これと同時にリング900は逆止弁420を開放する。
図17、
図20および
図21は、容器100が作動位置にあるときの吸入器を示す。
【0079】
吸気を終えたユーザが、プッシャ20に対する押圧を解除することによって容器100の底部に対する押圧を解除すると、容器100は計量弁200の戻しバネによって本体10の内部を待機位置に向かって軸方向に上昇する。これと同時に計量弁200の弁部材210も静止位置に戻るので、弁室が新たな1回分の流体で満たされる。トリガ要素600も、特には膜体61および/または阻止部材980の弾性ブレード981の弾性力によって、係止位置に戻る。阻止要素500も、阻止部材980の補強伸長部982を介して、阻止位置に戻る。
【0080】
このようにして吸入器は以後の使用に備える。
【0081】
特筆すべきは、電子ドーズカウンタを、有利には本体またはプッシャに組み付けることによって、吸入器に備えることができることである。電子ドーズカウンタは、容器の移動を検知可能である。さらに、電子ドーズカウンタを、吐出中の流体を検知するセンサに接続してもよい。このセンサは、具体的には膜体センサであり、例えば弁受けに設けられる。このような電子ドーズカウンタの作動は、例えば、弁本体に対する弁部材の移動を検知するような他の方法で行ってもよい。
【0082】
また、吸入器の作動に係る情報の通信を行う信号送信手段を、吸入器に備えることもできる。この通信は具体的には遠隔通信である。特に、基地局との遠隔通信を行う信号送信モジュールを、本体および/またはプッシャに含めることもできる。適切な電源手段が設けることができれば有利である。
【0083】
具体的には、電子モジュールに、パルス送信する電気スイッチがあるカードを含めることが好ましい。また、電子モジュールに表示装置を含めること、および/または、電子モジュールがBluetooth(登録商標)接続またはWi-Fi(登録商標)接続により情報を周辺機器に送信することも可能である。さらに、流速センサおよび/または圧力センサなどの適切なセンサを設けて、吸気流の各種パラメータを検知してもよい。
【0084】
電気スイッチは、阻止要素の移動により作動させることができる。
【0085】
本発明に係る吸気同期式の吸入器に、実投与回数を計数する電子ドーズカウンタとともに信号送信手段を用いれば、医師や吸入器のユーザによる使用状況を監視したい者に対して、流体の投与のたびに確実に信号を送信できる。吸入器が吸気同期式であるので、ユーザは吸入器を作動させるたびに流体を吸入できる。また、電子ドーズカウンタは、流体の投与のたびにその回数を、投与時刻のような投与に関連する各種のパラメータとともに記録できる。このようにすれば、ユーザによる吸入器の使用状況を、医師がきわめて正確に把握することができる。
【0086】
本発明は、サルブタモール、アクリジニウム、ホルモテロール、チオトロピウム、ブデソニド、フルチカゾン、インダカテロール、グリコピロニウム、サルメテロール、ウメクリジニウム臭化物、ビランテロール、およびオロダテロール(Striverdi(登録商標))の処方またはこれらの処方の組み合わせにより行われる、喘息発作や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に特に適用される。
【0087】
本発明について、各種の有利な実施形態および変形例に基づいて説明したが、当然ながら当業者は、添付の特許請求の範囲において定義した本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変形を適用してもよい。