(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システム及び関連する位置決め方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
H04R3/00 320
(21)【出願番号】P 2020554412
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2019052128
(87)【国際公開番号】W WO2019193440
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】102018000004280
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102018000009569
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517444584
【氏名又は名称】レオナルド・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】LEONARDO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・ヴィネッリ
(72)【発明者】
【氏名】アンナリータ・ディ・ラッロ
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0277863(US,A1)
【文献】特開2007-180953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
G01S 1/00-19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査エリア(IN)における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システム(100)であって、
上記音源によって生成された音響信号を検出して上記音響信号を表すデータを生成する音響センサ(2)の組(1)と、
上記検出された音響信号を表すデータを受信して解析するように構成された電子的受信機ブロック(20)と、
上記音響センサ(2)によって検出された上記音響信号を表すデータを上記電子的受信機ブロック(20)に送信する無線通信手段(15)と、
上記電子的受信機ブロック(20)に機能的に関連付けられた処理装置(30)とを備え、
上記処理装置(30)は、
上記音響センサ(2)から受信された音響信号を時間的に整列させるように上記組(1)に含まれる音響センサ(2)を較正する動作と、
上記音響センサ(2)によって検出された上記音響信号を表すデータを組み合わせて上記調査エリアの音像を生成するディジタルビームフォーミングを実行し、上記微弱かつ低周波数の音源を位置決めする動作とを順に実行するように構成され
、
上記音響センサの組(1)は音響センサ(2)の1つよりも多くのグループ(4)を含み、センサの各グループ(4)は、共通のサポート(6)に沿って直線的に配置された複数の音響センサ(2)を含むことを特徴とする、
音響システム(100)。
【請求項2】
音響センサ(2)を較正する電子装置(5)であって、上記無線通信手段(15)を介して上記処理装置(30)に接続され、上記較正する動作の開始命令を受信する電子装置(5)をさらに備える、
請求項1記載の音響システム(100)。
【請求項3】
上記音響センサ(2)の組(1)は、互いに最も遠隔した上記音響センサ(2)の2つのグループ(4)の間の直線距離は、10メートルから20メートルの範囲に含まれるように構成される、
請求項1記載の音響システム(100)。
【請求項4】
上記組(1)に含まれる音響センサ(2)のグループ(4)は、上記10メートルから20メートルの範囲に含まれる距離に等しい直径を有する球の内部に配置される、
請求項3記載の音響システム(100)。
【請求項5】
上記電子的較正装置(5)は、上記処理装置(30)から受信された上記開始命令に基づいて、時間的に線形に変化する周波数を有する波形を有する少なくとも1つの較正テスト信号(S(t))を放射するように構成される、
請求項2記載の音響システム(100)。
【請求項6】
上記少なくとも1つの較正テスト信号(S(t))は、時間的に線形に増大する周波数を有する、
請求項5記載の音響システム(100)。
【請求項7】
上記電子的較正装置(5)は、上記少なくとも1つの較正テスト信号(S(t))を放射するようにそれぞれ構成された3つの較正音源を含む、
請求項5又は6記載の音響システム(100)。
【請求項8】
上記音響センサー(2)はマイクロホンである、
請求項1~7のうちの1つに記載の音響システム(100)。
【請求項9】
上記微弱かつ低周波数の音源は、1000Hz未満の周波数成分を有するヒトの音声である、
請求項1~8のうちの1つに記載の音響システム(100)。
【請求項10】
音響システム(100)を用いることにより調査エリア(IN)における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めする方法であって、
上記音響システム(100)は、
音響センサ(2)の1つよりも多くのグループ(4)を含む音響センサの組(1)であって、センサの各グループ(4)は、共通のサポート(6)に沿って直線的に配置された複数の音響センサ(2)を含む、音響センサの組(1)と、
電子的受信機ブロック(20)と、
無線通信手段(15)と、
上記電子的受信機ブロック(20)に機能的に関連付けられた処理装置(30)とを備え、
上記方法は
、
上記処理装置(30)により、上記音響センサ(2)から受信された各音響信号を時間的に整列させるように上記組(1)に含まれる音響センサ(2)を較正する動作を実行するステップと、
上記音響センサ(2)によって、上記音源によって生成された音響信号を検出して上記音響信号を表すデータを生成するステップと、
上記無線通信手段(15)によって、上記音響センサ(2)が検出した上記音響信号を表すデータを上記電子的受信機ブロック(20)に送信するステップと、
上記電子的受信機ブロック(20)によって、上記検出された音響信号を表すデータを受信して解析するステップと、
上記処理装置(30)によって、上記音響センサ(2)が検出した上記音響信号を表すデータを組み合わせて上記調査エリアの音像を生成するディジタルビームフォーミングの動作を実行し、上記微弱かつ低周波数の音源を位置決めするステップとを含む、
方法。
【請求項11】
請求項10記載の調査エリア(IN)における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めする方法であって、
上記音響システムは、上記無線通信手段(15)を介して上記処理装置(30)に接続され、音響センサ(2)を較正する電子装置(5)をさらに備え、
上記組(1)に含まれる音響センサ(2)の較正を実行するステップは、上記電子的較正装置(5)によって、時間的に線形に変化する周波数を有する波形を有する少なくとも1つの較正テスト信号(S(t))を放射するステップを含む、
方法。
【請求項12】
請求項11記載の調査エリア(IN)における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めする方法であって、
上記少なくとも1つの較正テスト信号(S(t))は、時間的に線形に増大する周波数を有する、
方法。
【請求項13】
請求項11記載の調査エリア(IN)における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めする方法であって、
上記組(1)に含まれる音響センサ(2)の較正を実行するステップは、
上記電子的較正装置(5)の3つの較正音源によって、予め設定された時間間隔で上記少なくとも1つの較正テスト信号(S(t))を順に放射するステップと、
上記組(1)に含まれる音響センサ(2)のうちのいずれかによって、上記音源のそれぞれから発信された3つのテスト信号(S(t))を受信して、上記処理装置(30)に送られる3つのディジタル信号(Sd)を生成するステップと、
上記処理装置(30)によって、受信された上記3つのディジタル信号(Sd)のそれぞれと、放射された上記テスト信号(S(t))のコピーとの間の畳み込みを実行して、3つの自己相関信号(AC)を生成するステップと、
上記較正音源間の既知の距離(d1)から、上記3つの自己相関信号の-3デシベルの部分の間の各距離を計算して、上記受信されたテスト信号(S(t))のサンプル間の時間シフトを推定するステップと、
上記組(1)に含まれる各音響センサ(2)に対して上記実行及び計算するステップを繰り返すステップと、
上記処理装置(30)によって、上記微弱かつ低周波数の音源によって放射されて上記組(1)に含まれる各音響センサ(2)から受信された信号のサンプルに対して適用可能である時間シフトの補正を表す要素を有する補正行列を生成するステップとをさらに含む、
方法。
【請求項14】
請求項
11記載の調査エリア(IN)における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めする方法であって、
上記微弱かつ低周波数の音源は、1000Hz未満の周波数成分を有するヒトの音声である、
方法。
【請求項15】
請求項11記載の調査エリア(IN)における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めする方法であって、
上記音響センサ(2)の組(1)は、互いに最も遠隔した上記音響センサ(2)の2つのグループ(4)の間の直線距離は、10メートルから20メートルの範囲に含まれるように構成される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システム及び関連する位置決め方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、災害イベント、例えば地震の発生の後に建物の瓦礫の下に閉じ込められた生存者であって、その救援要請によって存在及び位置が検出されうる人々を識別することに効果的である音響システムを利用可能にするという必要性を満たす。
【背景技術】
【0003】
今日、多数の会社が商用の音響アレイ又はマイクロホンアレイを提案し、それらは受動オーディオイメージングの分野において使用可能であるこれらの中で、下記のものに注目する価値がある。Norsonic、CAE Systems、Acoustic Camera、Dual Cam。
【0004】
そのような音響アレイは、関連する各方向の個々のマイクロホンから受信された信号を組み合わせることで、アレイ自体を物理的に移動させることなく聴取方向を変更することを可能にする。特に、光学画像の上に配置される音像を発生するための音のパワーは、そのような画像の主方向に沿ってオプションのカムコーダーによって利用可能にされた光学画像を走査することにより、各方向について測定されてもよい。
【0005】
マイクロホンアレイを備え、オプションでカメラ又はディジタルカムコーダーを備えるアセンブリは、一般に、「音響カメラ」と呼ばれる。
【0006】
既知のタイプの商用の音響カメラは、約2メートルの最大開口、すなわち最大の長手方向の寸法によって特徴づけられる。そのような音響カメラは、2kHzを超える周波数を有する音源を十分に正確に位置決めするように構成される。
【0007】
より低い周波数における音源、特にヒトの音声を正確に位置決めするためには、より広い開口を備えた音響カメラを用いる必要がある。特に、300Hzのオーダーの周波数を有する音源を検出するために、少なくとも10メートルの開口を備えた音響カメラを用いる必要がある。
【0008】
閉じ込められた人々を検出するために、ACOUFINDと呼ばれる音響ネットワークシステムが使用可能である。そのような音響システムは非特許文献1で説明されている。
【0009】
ACOUFIND音響システムは3つの主な構成要素からなる:
- 特定の既知の場所における音響データを記録するためにマイクロホンセンサとして使用される複数のスマートフォン;
- すべてのスマートフォンの記録から音響データを収集し、次いで、ディジタル信を処理して生存者の位置を計算することによりそれらを解析するコンピュータ;及び
- スマートフォン及び中央コンピュータの間を接続するルータ。
【0010】
そのようなシステムは一貫性のある音響アレイを使用せず、音源の発信方向の評価は三角測量技術によって取得される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Menachem Friedman, Yoram Haddad, Alex Blekhman, "ACOUFIND: Acoustic Ad-Hoc Network System for Trapped Person Detection", IEEE International Conference on Microwaves, Communications, Antennas and Electronic Systems (COMCAS 2015), 2-4 November 2015, Tel Aviv, Israel.
【文献】インターネット<URL:http://www.labbookpages.co.uk/audio/beamforming/delaySum.html>
【文献】インターネット<URL:https://www.med.ira.inaf.it/Medichats/29_01_2008/Medichat_29.01.2008.ppt>
【文献】YAO et al.: Blind Beamforming on a Randomly Distributed Sensor Array System, IEEE JOURNAL ON 15 SELECTED AREAS IN COMMUNICATIONS, VOL. 16, NO. 8, OCTOBER 1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
今日、予め設定されたエリアにおいて、特に、そのようなエリアにおける例えば地震のような災害イベントの発生の後に、弱い音源、すなわち、小さな強度及び振幅かつ低周波数の音源の音響検出及び位置決めを実現することの必要性が特に感じられる。
【0013】
上述したように、今日この目的のために使用可能であるソリューションは、音響カメラによって、また、ACOUFIND音響システムによって表される。
【0014】
しかしながら、そのような既知のソリューションは制限及び欠点を有する。
【0015】
実際に、商用の音響カメラは、その低減された開口(最大2メートル)に起因して、上述したアプリケーションには不適切である。そのような低減された開口は低い角度分解能をもたらし、これにより、そのような音響カメラは、低周波数の音響信号、すなわち1000Hz未満の周波数を有する音響信号の発信方向を十分に正確な方法で位置決めすることができなくなる。
【0016】
ACOUFIND音響システムは、その代わりに、音源を検出する能力が、スマートフォンに取り付けられたマイクロホンの感度によって限定されるという欠点を有する。
【0017】
本発明の目的は、微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための、配備可能かつ再構成可能な軽量の音響システム及び関連する方法であって、既知のソリューションに関して上述した制限を克服できるようにするものを考案して利用可能にすることにある。
【0018】
本発明は、好ましくは、ただし網羅的にではなく、災害イベント、例えば地震の発生の後に例えば建物の瓦礫の下の生存者であって、その救援要請によって存在及び位置が検出されうる閉じ込められた人々を発見するために使用可能である音響システムを利用可能にする。
【0019】
より詳しくは、本発明の目的は、微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システムであって、ACOUFIND及び他のものに係る単一マイクロホンのソリューションによって取得できるものより、弱い信号に対して増大した感度を有する音響システムを利用可能にすることにある。本音響システムは、商用タイプの音響カメラに関して増大した方向精度を保証するように構成されうる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
提案する発明は、ヒトの音声の低周波成分、すなわち、1000Hz未満の周波数を有する音声成分に焦点を合わせている。そのような音声成分は、実際、増大したエネルギー量を示し、送信手段の減衰に対して、より耐性を有する。
【0021】
本発明の音響システムは、特に、既知のソリューションよりも広い音響アレイ、すなわち、3メートルを超える開口を有する音響アレイであって、最適な結果、具体的には1000Hz未満の周波数を有するヒトの音声のスペクトル成分を検出するためには、好ましくは10~20メートルの範囲における音響アレイを実装する。
【0022】
さらに、本発明は、マイクロホンを時間的に整列させ、それにより感度を増大するように構成されるので、仮想的な音響カメラを実現する。
【0023】
本発明の音響システムは、3メートルを超える幅、最適な結果のためには好ましくは10~20メートルの範囲の幅を有する等価な音響アレイを実現しながら、また、従って、古典的なディジタルビームフォーミング技術を適用することにより、より現代的なセンサ及び音響システムに対して増大した検出能力及び位置決め精度をもたらす。
【0024】
そのようなビームフォーミング技術は、所与の方向から発信される音を空間的に分離することにより受信機の音ビームが形成されることを可能にする、音響信号を処理するアルゴリズムを使用する。
【0025】
災害イベント、例えば地震の発生によって生じるもののような環境的コンテキストにおける特定のアプリケーションは、環境に関して容易に配備及び構成されうる軽量なソリューションの使用を必要とする。本発明のシステムは、特に、音響システムのセンサ又はマイクロホンが平面上に配置されることを必要とせず、むしろ、マイクロホン自体の迅速な配備を可能にし、このことは、その位置とは独立であり、システムの性能に影響しない。この目的のために、本発明の音響システムは、所定エリアにおいて散らばって配置されるように構成された音響センサ又はマイクロホンのアセンブリを備える。これらは、互いに無線接続され、簡単なルールに従って配置されることが可能である。
【0026】
そのようなセンサのアセンブリを真の音響アレイとするために、本発明は、基準に関するセンサ自体の関連する位置を推定するように適応され、また、音信号、特に微弱かつ低周波数の音信号を聴取するステップにおいて適用される補正値としてこれらの位置を保存するようにに適応された較正手順のアプリケーションを提供するという利点を有する。
【0027】
本発明の目的は、請求項1に係る微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための再構成可能な音響システムによって達成される。
【0028】
そのような音響システムの好ましい実施形態が従属請求項に記載される。
【0029】
本発明の目的はまた、請求項10に係る較正処理を用いて微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めする方法にある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするために音響システムを概略的に示す図である。
【
図2】矩形の場面に関して受動的なオーディオ受信機ビームの形成の例を示す図である。
【
図3A】直線的な音響アレイにおいて使用可能な既知の較正方法のステップを示す図である。
【
図3B】直線的な音響アレイにおいて使用可能な既知の較正方法のステップを示す図である。
【
図4】較正方法において、
図1における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システムによって使用可能である、時間に関するテスト信号の例を示す図である。
【
図5】
図4におけるテスト信号から生成される自己相関信号を、矩形信号から得られる別の自己相関信号と比較して示す図である。
【
図6】
図4における同じテスト信号から生成され、帯域周波数B=10kHzにおいて変調され、2つの別個の音源によって放射された第1及び第2の自己相関信号を示す図である。
【
図7】
図1における微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システムの簡単化された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の音響システム及び方法のさらなる特徴及び利点は、添付図面を参照して、非限定的な表示例としてのみ与えられた、以下の好ましい実施形態の説明から明らかになる。
【0032】
同じ又は同様の構成要素は、上述した
図1~
図7において同じ番号で示される。
【0033】
図1及び
図7を参照して、本発明に係る調査エリアINにおける微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システムの全体を、番号100で示す。
【0034】
そのような音響システム100は、音響センサ又は受信機2の組1を備える。そのようなセンサの組1は、特に、調査エリアINにおいて分散されたセンサ2のM個のグループ4を備え、ここで、センサの組1は幅又は開口APを有する。
【0035】
組に含まれる各センサグループ4は、好ましくは、ただし網羅的にではなく、N個の音響センサ2、例えば、共通のサポート6に沿って、例えば地面7に連結されたマイクロホンサポートに沿って垂直に配置されたN個のマイクロホンを含む。それによって、音響システム100は、M個×N個の音響センサ2を含む組1を備える。
【0036】
組に含まれる音響センサ2は、特に、微弱かつ低周波数の音源によって生成された音響信号を検出してそのような音響信号を表すデータを生成するために、調査エリアINにおいてランダムに分散されてもよい。組に含まれる音響センサ2は、実際、調査エリアINにおいて任意に配置される、すなわち、それらは特定の面又は構造物に属するように束縛されない。本発明の組に含まれる音響センサ2の分布に関連する原因項は、センサが「適切な」方法で分散されていること、すなわち、特定のルール又は義務に従わされることなく、ただし、エンドユーザの必要に従うように、しかしながら幾何学的なタイプの制限又は義務なしで分散されていることを意味する。このことは、本発明の音響システム100の使用の柔軟性を向上させる。
【0037】
後述する音響センサ2の組1の幅又は開口は、互いに最も遠隔したセンサ2の2つのグループ4の間の直線距離を意味する。
【0038】
さらに、組1に含まれるセンサ2のグループ4は、
図1に示すように、必ずしも、同じ方向に沿って地面7の上に整列されなくてもよく、調査エリアINにおいてランダムに分散されてもよい。いずれにせよ、そのようなセンサグループ4は、上述したセンサの組1の幅又は開口APに等しい直径を有する球の内部に配置される。
【0039】
1つの例示的な実施形態では、そのようなセンサ2の組1の幅又は開口APは、3メートルよりも大きい。好ましい例示的な実施形態では、そのようなセンサの組1の幅又は開口APは、最適な結果のために、10~20メートルの範囲にある。
【0040】
言いかえれば、使用されるマイクロホン2の個数が等しいとき、本発明のシステム100は、各開口APを有する、組の異なるレイアウトに従ってマイクロホン2を単に配備することで、複数の様々な構成が実現されることを可能にする。シミュレーション及び実験的試験に基づいて、本願出願人は、システム100が、上述したセンサ2の組1の開口APを用いて音響スペクトルの様々な部分に対する増大した感度を保証することを確かめた。
【0041】
さらに、音響システム100は、電子的較正装置5、すなわち、音源として動作し、音響センサの組1を較正するように構成された装置を備える。
【0042】
実際、調査エリアINにおいて音響システム100の音響センサ2を迅速に分散させるために、そのような音響センサ2は、近似的な「実用ルール」に従って配置されてもよい。
図1の例を参照すると、互いに最も遠隔したセンサ2の2つのグループ4の間の距離がAP=10に設定され、センサ2の残りのグループ4が、そのような最も遠隔したセンサのグループの間における中間の位置おいて多かれ少なかれ一様に配置される。
【0043】
本発明の目的のための微弱かつ低周波数の音源は、1000Hz未満の周波数成分を有するヒトの音声であることに注目する価値がある。
【0044】
音響システム100は無線通信手段15、特に無線リンクをさらに備え、これにより、一方ではセンサ2の組1と電子的較正装置5との間で、また、他方では電子的受信機ブロック20、特にマルチチャネルブロックと音響システム100の処理装置30との間で、無線タイプの通信を可能にする。
【0045】
より詳しくは、上述した無線リンク15を介して、音響システム100は以下のことを行うように構成される:
- センサ2の組1によって取得されたデータをマルチチャネル受信機ブロック20に送信することを可能にする;
- 組に含まれるセンサ2の制御及び時間整列を実行する。
【0046】
上述したマルチチャネル電子的受信機ブロック20は、検出された音響信号を表すデータを受信して解析するように構成される。そのようなマルチチャネル受信機ブロック20は、特に、無線マルチリンク及び処理ブロックを備え、これらの両方は標準的なハードウェア構成要素を用いて作られる。マルチチャネル受信機ブロック20は、音響センサ2の組1によって取得された音響信号を表すデータを収集してそのような信号をサンプリングするように構成されたソフトウェア構成要素をさらに備える。
【0047】
音響システム100は、マルチチャネル電子的受信機ブロック20に機能的に関連付けられた上述の処理装置30をさらに備える。そのような処理装置30は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)として具体化され、以下のことを順に実行するように構成される:
- 上記調査エリアINにおいてランダムに分散された音響センサ2から受信された音響信号を時間的に整列させるように、組1に含まれる音響センサ2を「測定及び制御」する動作、
- 音響センサ2によって検出された音響信号を表すデータを組み合わせて調査エリアの音像を生成する「ディジタルビームフォーミング」を実行し、微弱かつ低周波数の音源を位置決めする動作。
【0048】
実際、上述したセンサ2のアセンブリを真の音響アレイとするために、上述した電子的較正装置5は、処理装置30に機能的に関連付けられ、処理装置30自体によって与えられた表示及び命令に基づいて適切な音波形を放射するように構成される。
【0049】
処理装置30による適切な較正手順を実行することにより、三次元空間3D(x,y,z)においてアレイ1の各センサ2間の関連する位置を推定することが可能になる。
【0050】
処理装置30は、特に、「較正及び制御」の動作によって、較正手順を管理するように適応化され、また、詳細後述するように、較正装置5によって刺激されたときにセンサ2の組1によって取得されたデータを処理するように適応化される。
【0051】
音響システム100は、調査エリアINにおけるセンサ2の組1を配備した後に少なくとも一度、上述した較正動作が実行されることを必要とする。
【0052】
そのような較正動作の後に、音響システム100は、音響アレイ1によって検出された音信号に対して、当業者には既知であるビームフォーミング技術を用いるように構成される。
【0053】
処理装置30は、そのような「ディジタルビームフォーミング」動作によって、音信号の単一の取得に係るすべての方向について(
図2に示すような)受信機ビームを形成することで受動的なオーディオイメージングを実施するように適応化される。
【0054】
より詳しくは、そのような
図2が音響アレイ1を概略的に示し、ここで、走査面50からの距離を矢印Fで示し、そのような音響アレイ1によって放射されたビームモデル40を示す。
【0055】
図3A、
図3B、
図4、
図5、及び
図6を参照して、提案する微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システム100によって実行される較正方法の例示的な実施形態について以下に説明する。
【0056】
既知のように、較正は、
図1の音響アレイ1のような、調査エリアにおいてランダムに配置された音響センサ又は受信機2のアレイに対して、古典的なビームフォーミングアルゴリズム、例えば「データ独立」なアルゴリズムを適用するために必要になる動作である。
【0057】
特に、センサ2のアセンブリがアレイを形成するように配置される場合、アレイの幾何学的形状、すなわち、他のものに関するアレイの各センサの関連する位置を知る必要がある。
【0058】
音響カメラの場合、アレイに含まれるマイクロホンは、実質的に平坦な形状を有する剛体構造物を形成するために、フレームの上に配置される。従って、アレイにおける各センサの位置は既知である。
【0059】
代わりに、調査エリアINの上にマイクロホン2がレイアウトされる場合、そのようなマイクロホン2は、概して、観察される環境の特異性と、受信される情報のタイプとに従って、基準面に関してランダムに配置される。
【0060】
概して、二次元アレイ、特に
図3Aに例示するような直線アレイを参照する既知の較正方法によれば、センサ又は受信機のうちの1つ、例えばセンサr4が基準センサ(又はピボットセンサ)であると仮定されている。第1の音源Aは、直線Xから既知の距離dに配置される。ここで、直線Xは、そのような基準センサr4と交差し、同じ基準センサr4及び第1の音源Aを両端に有する線分に直交する。
【0061】
アレイの2次センサr1,r2,r3,r5,r6,r7は、直線Xから空間的に離隔される。
【0062】
既知のように、較正手順の目的は、第1の音源A、基準センサr4、及び直線Xによって定義された基準系A-r4-Xにおいてこれらの2次センサr1,r2,r3,r5,r6,r7の位置を測定し、また、検出された音信号に適用される正又は負の時間遅延に関して、そのような2次センサのそれぞれに適用される補正値を推定し、整列したアレイを模擬することにある。
【0063】
再び
図3Aを参照すると、この目的のために、第1の音源A及び基準センサr4に加えて、第2の音源Bが考慮される。基準系A-r4-Xにおける2次センサのうちの1つ、例えば2次センサr5の位置は、第1の音源A及び第2の音源Bからそのような2次センサr5までの第1の距離dr5A及び第2の距離dr5Bをそれぞれ測定することにより取得される。
【0064】
次いで、本手順は、第1の音源A及び第2の音源Bの位置をそれぞれ中心とし、第1の距離dr5A及び第2の距離dr5Bをそれぞれ半径とする、2つの円周C1,C2の式を計算する。2次センサr5の位置は、上述した円周C1及びC2の式の交点として取得される。
【0065】
いったん2次センサr5の位置がわかると、較正手順は、アレイのすべての要素を整列させるために、2次センサr5の位置と、直線Xに直交するそのようなセンサの位置の射影r5との間の空間的距離を表す時間シフトΔt5を計算するステップを行う。
【0066】
図3Bを参照すると、直線アレイr1,r2,r3,r5,r6,r7のすべての2次センサについて上述した動作を繰り返すことによって、第1の時間シフトベクトル(Δt1,Δt2,…,Δt7)及び第2のベクトルが計算されてもよい。ここで、各要素は、上述した2次センサr1,r2,r3,r5,r6,r7の実際の位置と、基準センサr4に対して(直線Xに沿って)整列したそのようなセンサの位置との間の差、すなわち、ベクトルΔx1,Δx2,…,Δx7)を表す。第1のベクトルの各時間シフト(Δt1、Δt2、…、Δt7)は、2次センサr1,r2,r3,r5,r6,r7の整列状態からの距離の大小を表す。
【0067】
直線アレイに係る上述した処理は、実際の場合、すなわち、
図1のアレイ1のような三次元空間において分散されたアレイにに拡張されてもよい。
この処理は3つの較正音源を用いる。
【0068】
音響アレイ1の各センサ2の空間的位置は、予め選択された基準音響センサ(ピボットセンサ)と、これら3つの較正音源のそれぞれとの間における3つの距離を測定することにより取得可能である。さらに、上述した音源のうちの1つを中心とし、測定された3つの距離を半径とする3つの球の交点が計算される。
【0069】
本発明の音響システム100において実現された較正方法をより詳細に見ると、上述した3つの較正音源と組1に含まれるセンサ又はマイクロホン2との間の距離を測定するために同じ音響波が使用される。
【0070】
いったん空気中の音速がわかると、音源によって放射された同じ波形は、様々な時間に様々な距離で受信される。従って、時間シフトの測定値は、基準センサからアレイ1の様々なセンサ2までの距離の測定値に比例する。
【0071】
距離を測定する際の精度を向上させるために、本発明の較正方法は、「チャープ」タイプの周波数で変調された波形を有するテスト信号、すなわち、時間的に線形に増大又は減少して変化する周波数を有する信号を使用する。
【0072】
図4に、本発明の較正方法において使用可能であるテスト信号(S(t))の一例を示す。
【0073】
そのようなテスト信号(S(t))、特に増大する周波数の信号を次式で表すことができる。
【0074】
【0075】
ここで、|t|≦T/2かつB=KTである。ここで、Tは変調されたパルスの継続時間であり、Bはそのようなパルスの周波数範囲である。上述した周波数変調波形(S(t))を変調するを使用することにより、較正精度が増大される。
【0076】
そのようなテスト信号(S(t))のうちの少なくとも1つは、3つの較正音源のそれぞれによって放射され、システム100のすべてのマイクロホン2によって受信される。3つの較正音源は、特に、較正装置5において位置決めされる。
【0077】
較正中に、テスト信号(S(t))は、これらの3つの較正源のそれぞれによって、他の2つ源のうちの1つによって放射された同じ信号に関して、予め設定された送信時間間隔で順に放射される。そのような送信時間間隔は、例えば、変調されたパルスの継続時間Tより大きい。
【0078】
本方法は、3つの較正源によって放射されてアレイ1の各マイクロホン2によって受信されたテスト信号(S(t))がディジタル化されて、処理装置30に送られる各ディジタル信号Sdを生成するステップを提供する。
【0079】
そのような処理装置30における方法は、受信された各ディジタル信号Sdと、処理装置30の各メモリに保存されたテスト信号(S(t))のコピーとの間の畳み込み演算を実行するステップを提供する。
【0080】
そのような畳み込み演算は、
図5に示したものに類似した自己相関信号ACを生成する。そのような
図5は、特に、自己相関信号ACの例を、矩形信号から得られた別の自己相関信号ARと比較して示す。
【0081】
図5を参照すると、テスト信号(S(t))から得られた自己相関信号ACの-3dBの主ループの幅が、そのような信号の帯域幅Bに反比例することに注目する価値がある。
【0082】
さらに、センサ2から受信される同じテスト信号(S(t))が、互いから距離d1を有して配置された第1及び第2の較正音源から発信された場合、処理装置30は、そのような源の間の距離d1に正比例する時間シフトを互いに有する第1の自己相関信号AC1及び第2の自己相関信号AC2を生成するように構成される。より詳しくは、vsが音速であるとき、そのような時間シフトは比d1/vsに等しい。
【0083】
例示として、
図6は、同じテスト信号(S(t))から生成され、帯域周波数B=10kHzで変調され、d1=30cmだけ互いに距離を有して配置された2つの別個の較正音源によって放射された第1の自己相関信号AC1及び第2の自己相関信号AC2を示す。
図6の例を参照して、自己相関関数AC1及びAC2のピーク部分は、約1ミリ秒だけ互いに離隔している。上述した関数に係る-3dBにおける自己相関の主ループの幅(-3dBを通過する水平直線をループに交差させることにより取得される)は、約0.1ミリ秒に等しく、これは約3cmに対応する。
【0084】
従って、関数のピーク位置は、少なくとも3/√12に等しい精度で推定されてもよく、これは提案されたアプリケーションにとって十分である。
【0085】
そのような手順は、3つの較正源によって放射された信号について、また、アレイ1の各マイクロホン2について繰り返され、これにより、処理装置30は、関連する自己相関関数のピークの間の推定された距離を収集して補正行列を生成できるようになる。
【0086】
上述した補正行列の要素は、ビームフォーミングステップの前に各マイクロホン2及び関連する受信機チャネルに適用される補正を表す。より詳しくは、そのような補正は、マイクロホン2の各受信機チャネルによって受信されてサンプリングされた微弱かつ低周波数の音響信号に適用され、そのような信号のサンプルの正又は負の時間シフトとして表現可能である。
【0087】
言いかえれば、組1の音響センサ2の較正は、以下のステップを含む:
- 電子的較正装置5の3つの較正音源によって少なくとも1つの較正テスト信号(S(t))を予め設定された時間間隔で順に放射するステップ;
- 組1の音響センサ2のうちのいずれかによって、上記音源のそれぞれから発信された3つのテスト信号S(t)を受信して、処理装置30に送られる3つのディジタル信号Sdを生成するステップ;
- 処理装置30によって、受信された上記3つのディジタル信号(Sd)のそれぞれと、放射されたテスト信号(S(t))のコピーとの間の畳み込みを実行して、3つの自己相関信号(AC)を生成するステップ;
- 較正音源間の既知の距離d1から、3つの自己相関信号の-3デシベルの部分の間の各距離を計算して、受信されたテスト信号S(t)のサンプル間の時間シフトを推定するステップ;
- 組1に含まれる各音響センサ2について実行及び計算するステップを繰り返すステップ;及び
- 処理装置30によって、微弱かつ低周波数の音源によって放射されて組1に含まれる各音響センサ2から受信された信号のサンプルに対して適用可能である時間シフトの補正を表す要素を有する補正行列を生成するステップ。
【0088】
本発明の音響システム100は、動作条件下で、音信号のすべての可能な受信機方向の走査を刺激するディジタルビームフォーミングアルゴリズムを実装して実行し、これにより、例えば、地震のような災害イベントの発生の後に建物の瓦礫の下に閉じ込められた個人によって放射された声又は叫びのような、微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするように構成される。
【0089】
既知のように、用語ビームフォーミングは、音響アレイ1のマイクロホン2によって受信される信号のさまざまな処理アルゴリズムを示すために使用される。ここで、後者は、アレイ1の構造物に対して、又は、アレイのマイクロホン2の個数又はレイアウトに対して実行されるいかなる介入もなしに、特定の方向に焦点を合わせて直面する。
【0090】
特に、ビームフォーミングは、それぞれから受信される信号の(空間的)ダイバーシティを考慮して、要素のアレイに適用可能である、調査中の場合では音響アレイのマイクロホンに適用可能である空間フィルタリングからなる。
【0091】
上述した空間フィルタを特徴づける係数を計算する基準によれば、ビームフォーミングアルゴリズムは次のものに分割されてもよい:
・データ独立なアルゴリズム;
・統計的な視点で優れたアルゴリズム。
【0092】
データ独立なアルゴリズムの係数は、データに依存せず、ビームフォーマの応答が既知の所望の応答に接近するように選択される。
【0093】
後述するビームフォーミングアルゴリズムのすべての例は、本発明の音響システム100によって実装可能であるという利点がある。
【0094】
データ独立のアルゴリズムのうち、最も一般的かつ堅実なソリューションのうちの1つは、バートレット(Bartlett)ビームフォーマ又は遅延和型(delay-and-sum:DAS)ビームフォーミングである。より詳しくは、DASビームフォーミングアルゴリズムは、アレイの各要素から受信された信号に対して遅延及び振幅の重み付けを適用し、次いで、このように処理されるすべての寄与を追加するように構成される。遅延は、特定の方向から発信される放射に対するアレイの感度を最大化するように選択される。実際に、遅延の適切な調整により、アレイの個々の要素によって収集された信号を強め合うように加算することができ、事実、アレイを特定の源の方向に向けることができる。DASビームフォーミングアルゴリズムについてのさらなる詳細事項は、非特許文献2に記載されている。
【0095】
統計的な視点で優れたアルゴリズムにおける空間フィルタの係数は、受信されたデータの統計情報に従って選択される。そのようなアルゴリズムによって提供される出力は、干渉信号及びノイズに起因して、最小とはいえ寄与を含む。これらは、応答が統計的に優れた解に収束するように設計された適応アルゴリズムである。
【0096】
最小分散無歪応答(Minimum Variance Distortionless Response:MVDR)は、この第2のカテゴリのアルゴリズムのうちで注目する価値がある。そのようなMVDRアルゴリズムは、直線指示の制約を有して出力信号の変動を最小化するように適応化される。アレイの要素から受信された信号は、特に、ノイズ及び干渉の影響を緩和するために空間的係数を計算するために使用される。MVDRアルゴリズムについてのさらなる詳細事項は、非特許文献3に記載されている。
【0097】
本発明の音響システム100のように、アレイの幾何学的形状が固定されていない又は未知である特定の場合において、較正動作は、構成要素のランダム分布に起因して計算上の視点から特に厄介となりうる。これらの場合、「ブラインドビームフォーミング」アルゴリズムが使用されてもよく、これは、アレイの要素によって収集されたデータのみを使用して、後者の焦点を合わせて特定の方向に向ける。ランダム分布した3つのセンサを備えるビームフォーミングアルゴリズムの例が、非特許文献4に説明されている。
【0098】
ブラインドビームフォーミングの利点は、アレイの要素の放射図と、較正誤差に対する感度の欠如との両方を無視することにある。
【0099】
以上に開示したものに基づいて、本発明の微弱かつ低周波数の音源を検出して位置決めするための音響システム100及び関連する方法は、実装速度、柔軟性、及び単純性を保証しながら、同時に、音源を検出する高度な機能と、人を位置決めする高精度な機能とを備えると結論付けられてもよい。
【0100】
既知のソリューションに関して、本発明の音響システム100は、特に、以下の革新的な態様を含む:
- 音響センサ2によって検出された音響信号を表すデータを組み合わせる「遠方界」におけるディジタルビームフォーミング技術及びアルゴリズム;
- 音響アレイ1の聴取方向を変更し、次いで、走査面50の各点によって測定されたパワーを補間することで取得される音像の生成;関連するエリア50の各方向について取得されたデータセットは、特に、一般的な方向に向けられた指向性マイクロホンの効果をもたらすように処理される;
- 例えばスマートフォンのように、他のアプリケーションにおいて現在使用されているマイクロホンに関して優れた感度特徴を有する音響センサ2の使用。
【0101】
さらに、本発明の音響システム100は以下の利点を有する。
- 既知のソリューションのうちの1つよりも広い、特に3メートルを超える、優れた結果のためには好ましくは10~20メートルの範囲の開口を有する音響アレイ1を実現する;
- マイクロホンアレイの寸法及びレイアウトの両方について柔軟性をもたらし、したがって、観察される環境に関しての最適化された性能を保証する;
- 音響センサ2を実質的にランダムに配置する可能性があるならば、音響センサ2の迅速なレイアウトを保証する。
【0102】
本発明の音響システム100は以下の利点を有する:
- 現在利用可能な装置に関して改善された位置決め感度及び精度を保証する;
- 例えば地震のような災害イベントの発生の後に建物の瓦礫の下に閉じ込められた生存者を位置決めしようとする場合には重要な要件となる、迅速、簡単、かつ柔軟な実施;
- 要素の寸法及びレイアウトに関して再構成可能であり、観察されるエリアから安全距離に配置されうるシステム;
- レーダ又は地震システムに対する効果的な補足としての音響技術の使用。
【0103】
例えば、レーダ検出システムは、解析される場所の周囲における小さな動作(水流、群衆の移動、など)から発生するノイズの影響を受ける。これは、偽警報及び電磁干渉(セルラー基地局を含む)の課題を引き起こす可能性がある。
【0104】
地震システムは、乗物、機械、又は人の振動によって引き起こされたノイズの影響を受け、限定された精度を有する。
【0105】
一方、上述した制限は本発明によって克服される。システム100の全検出能力は、ディジタルビームフォーミング技術により、音響センサ2から発信された取得された信号を組み合わせることによって改善され、このことは、アレイ1に関連付けられた個々のマイクロホン2に関してシステム15の感度を増大させる。言いかえれば、微弱な叫びをあげる及び/又はアレイ1から遠く離れた生存者が、いずれにせよ、音響システム100によって検出されうる。さらに、本発明のシステム100は、所与の部位の音像を生成することにより仮想的な音響カメラを生成するように適応化され、これは、(オプションの)カムコーダーによって提供された光学画像の上に配置されてもよい。
【0106】
当業者は、添付された特許請求の範囲から外れることなく、本発明のシステム及び方法の実施形態に対していくつかの変更及び適応化を行うことができ、又は、偶発的な必要性を満たすために構成要素を機能的に等価な他のもので置き換えることができる。可能な1つの実施形態に属するものとして説明した特徴のそれぞれは、説明した他の実施形態に関わりなく実施されてもよい。