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特許7233466磁性ターゲット材料を用いたスパッタリング源の磁力解放
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】磁性ターゲット材料を用いたスパッタリング源の磁力解放
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20230227BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
C23C14/35 D
C23C14/34 C
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021078478
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2020504358の分割
【原出願日】2018-07-16
(65)【公開番号】P2021120488
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】15/678,962
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513159066
【氏名又は名称】スパッタリング・コンポーネンツ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】モース,パトリック・ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】クロウリー,ダニエル・セオドア
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514207(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0129561(US,A1)
【文献】国際公開第2016/136121(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ターゲットカソードのための磁石バーアセンブリであって、前記磁石バーアセンブリは、
支持構造と、
前記支持構造に移動可能に取り付けられる磁石バー構造であって、前記磁石バー構造が、複数の磁石を含む、磁石バー構造と、
前記支持構造および前記磁石バー構造に動作可能に連結される位置決め機構であって、前記位置決め機構は、前記磁石バー構造を格納位置と展開位置との間で移動させるように構成されており、前記位置決め機構は、前記支持構造および前記磁石バー構造に連結されるブラダアセンブリを備え、前記ブラダアセンブリは、
前記磁石バー構造とは反対の前記支持構造の側に位置決めされる格納用ブラダと、
前記格納用ブラダを磁石バー作動プレートと前記支持構造との間に挟持するように配置される磁石バー作動プレートであって、前記磁石バー作動プレートは、前記磁石バー構造に、前記支持構造内を通過する複数のボルトで連結される、磁石バー作動プレートと、
を備える、位置決め機構と、
を備え、
前記磁石バー構造の前記格納位置は、前記磁石バーアセンブリがターゲットシリンダに挿入されるとき、または前記ターゲットシリンダから取り出されるときに、前記磁石と前記ターゲットシリンダの磁性ターゲット材料との間の磁力を実質的に低減させ、
前記磁石バー構造の前記展開位置は、前記磁石バーアセンブリが前記ターゲットシリンダ内にあるときに、前記磁石と前記磁性ターゲット材料との間の前記磁力を実質的に増加させて、前記磁石バー構造からの磁場が前記磁性ターゲット材料内を貫通することができるようにする、磁石バーアセンブリ。
【請求項2】
前記支持構造に移動可能に接続される複数のローラをさらに備え、前記ローラは、前記磁石バー構造を前記ターゲットシリンダの内面から離して保持するように構成される、請求項1に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項3】
力歪み緩和アセンブリを更に備え該磁力歪み緩和アセンブリは、
前記支持構造第1のエンドプレートの第1の端部に遊隙を有して連結されるエンドブロック接続部と、
前記支持構造の第2のエンドプレートの、前記第1の端部とは反対側の第2の端部に遊隙を有して連結されるエンドキャップ接続部と、を備え、
前記エンドブロック接続部とエンドキャップ接続部の各々における前記遊隙は、それぞれOリングによりもたらされており、
前記歪み緩和アセンブリは、前記磁バーアセンブリと前記磁性ターゲットシリンダとの間の磁力が、前記エンドブロック接続部および前記エンドキャップ接続部に伝達されることを防止する、請求項に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項4】
前記支持構造は、前記展開位置にあるときの前記磁石バー構造と前記ターゲットシリンダとの間の距離を制限するように、実質的に剛性である、請求項1に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項5】
前記支持構造は、複数の支持プレートを挟持構成で含む、請求項1に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項6】
前記支持プレートは、前記支持構造内を通って延在する内部冷媒通路を画定する、請求項に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項7】
前記支持プレートは、1組の支持構造ねじで一緒に保持される、請求項に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項8】
前記支持構造は、前記磁石バー作動プレートの展開運動を制限する、請求項に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項9】
前記磁石バーアセンブリが前記ターゲットシリンダの外部にある状態で、前記支持構造の長さに沿った個々の調整を行って、前記ターゲットシリンダの表面の磁場を均一に調整するように構成されている1つ以上の調整機構をさらに備える、請求項1に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項10】
前記格納用ブラダを膨張させるために、ガスをガス源から提供するように前記格納用ブラダに連結されているブラダ充填ポートをさらに備える、請求項1に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項11】
膨張すると、前記格納用ブラダが前記磁石バー作動プレートを押すことにより今度は、前記ボルトおよび前記磁石バー構造を前記格納位置に引き込み、
前記格納用ブラダが収縮すると、前記磁石バー作動プレートが前記ボルトおよび前記磁石バー構造を前記展開位置に押し出す、請求項1に記載の磁石バーアセンブリ。
【請求項12】
各磁石バー均一性調整ナットが前記ボルト群のうちの該当するボルトに連結される1組の磁石バー均一性調整ナットをさらに備えて、前記磁石バー構造の長さに沿った調整を行い、前記ターゲットシリンダの表面の磁場を均一に調整することが可能になる、請求項1に記載の磁石バーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
スパッタリング装置は通常、磁性ターゲット材料を含むターゲット管と、ターゲット管に挿入される磁石バーと、を含む。磁性ターゲット材料の磁気特性により、吸引力がターゲット材料と磁石バーとの間に発生する。この吸引力は、かなりの力をターゲット管の内面と磁石バーとの間に発生させるのに十分に大きく、これにより、磁石バーをターゲット管に挿入して、ターゲット管から取り出すことを困難にしている。
【発明の概要】
【0002】
回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリは、支持構造と、支持構造に移動可能に取り付けられ、複数の磁石を含む磁石バー構造と、支持構造および磁石バー構造に動作可能に連結される位置決め機構と、を備える。位置決め機構は、磁石バー構造を格納位置と展開位置との間で移動させるように構成されている。磁石バー構造の格納位置は、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダに挿入されるとき、またはターゲットシリンダから取り出されるときに、磁石とターゲットシリンダの磁性ターゲット材料との間の磁力を実質的に低減する。磁石バー構造の展開位置は、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダ内にあるとき、磁石と磁性ターゲット材料との間の磁力を実質的に増加させて、磁石バー構造からの磁場が磁性ターゲット材料内を貫通することができるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1A】1つの実施形態による回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリの斜視図である。
図1B】格納位置にある図1Aの磁石バーアセンブリの側部断面斜視図である。
図1C】展開位置にある図1Aの磁石バーアセンブリの側部断面斜視図である。
図1D】格納位置にある図1Aの磁石バーアセンブリの図1Aの線1E-1Eに沿った端部断面斜視図である。
図1E】展開位置にある図1Aの磁石バーアセンブリの図1Aの線1E-1Eに沿った端部断面斜視図である。
図2A】別の実施形態による回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリの斜視図である。
図2B】格納位置にある図2Aの磁石バーアセンブリの側部断面斜視図である。
図2C】展開位置にある図2Aの磁石バーアセンブリの側部断面斜視図である。
図2D】格納位置にある図2Aの磁石バーアセンブリの図2Aの線2E-2Eに沿った端部断面斜視図である。
図2E】展開位置にある図2Aの磁石バーアセンブリの図2Aの線2E-2Eに沿った端部断面斜視図である。
図3A】さらなる実施形態による回転可能なターゲットカソードの磁石バーアセンブリの斜視図である。
図3B】格納位置にある図3Aの磁石バーアセンブリの側部断面斜視図である。
図3C】展開位置にある図3Aの磁石バーアセンブリの側部断面斜視図である。
図3D】格納位置にある図3Aの磁石バーアセンブリの図3Aの線3E-3Eに沿った端部断面斜視図である。
図3E】展開位置にある図3Aの磁石バーアセンブリの図3Aの線3E-3Eに沿った端部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
磁性ターゲット材料を用いたスパッタリング源の磁力解放をもたらす様々な装置および方法が本明細書において開示され、説明される。本技術は、磁石バーの磁石を磁性ターゲ
ット材料から離すように格納させて、回転ターゲットカソードのターゲットシリンダへの磁石バーの挿入、およびターゲットシリンダからの磁石バーの取り出しを容易にすることができる機構を提供する。
【0005】
磁石バーを磁性ターゲット材料に対して移動させて、磁石バーが、磁石バーと磁性ターゲット材料との間の磁力を減少させる格納位置にあるときに、ターゲットシリンダへの磁石バーの挿入、およびターゲットシリンダからの磁石バーの取り出しを容易にすることができる、代替的な位置決め機構が提供される。位置決め機構はまた、磁石バーをターゲットシリンダにより近くなるように展開位置に移動させるように動作して、磁場がターゲット材料内を貫通して、スパッタリング処理がターゲットシリンダの外面で行われることを可能にする。
【0006】
本技術は、様々な利点および恩恵をもたらす。例えば、外部磁石バー挿入ツールまたは取り出しツールは、固定磁石バーをターゲット管に取り付ける、またはターゲット管から取り出すために必要ではない。加えて、ターゲットシリンダがエンドブロックに取り付けられていない状態で磁石バーを機械的に展開または格納させるので、高価な遠隔制御機器は必要ではない。
【0007】
本技術は、回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリ内で実施することができ、磁石バーアセンブリは、支持構造に移動可能に取り付けられる磁石バー構造と、支持構造および磁石バー構造に動作可能に連結された位置決め機構と、を含む。位置決め機構は、磁石バー構造を格納位置と展開位置との間で移動させるように構成されている。磁石バー構造の格納位置は、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダに挿入されるとき、またはターゲットシリンダから取り出されるときに、磁石バー構造と磁性ターゲット材料との間の磁力を実質的に低減する。磁力が低減することにより、磁石バーアセンブリとターゲットシリンダの内面との間の摩擦力が大幅に低減して、オペレータによる挿入および取り出しをより容易にすることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、磁石バー構造が展開位置にある場合、約1mm~約3mmの隙間が、磁石バー構造とターゲットシリンダとの間に存在する。磁石バー構造が展開位置から格納位置に移動する場合、磁石バー構造とターゲットシリンダとの間の隙間は、約10mm~約20mmだけ増加する。
【0009】
磁石バーアセンブリの支持構造は、展開位置にあるときの磁石バー構造とターゲットシリンダとの間の距離を正確に制限するように、実質的に剛性であり得る。冷媒経路を設けて冷媒供給部および冷媒戻し部をターゲットシリンダの一方の側にのみ位置付けさせることもできる。
【0010】
磁石バー構造の展開位置は、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダ内にあるとき、磁石と磁性ターゲット材料との間の磁力を実質的に増加させて、磁石バー構造からの磁場が磁性ターゲット材料内を貫通することができるようにする。磁石バー構造が展開位置になっている状態では、磁性ターゲット材料の表面に生成される磁場は、プラズマを磁気的に閉じ込めて、磁気的に閉じ込めた標準的なスパッタリング処理を可能にするのに十分な強度である必要がある。磁性ターゲット材料を十分な磁場で飽和させてターゲット表面に磁気的に閉じ込めるために、磁石バー構造の強力磁石をターゲット表面の近くに保持する必要があり、これにより実質的に大きな吸引力が磁石と磁性ターゲット材料との間に発生する。
【0011】
磁石バー構造と磁性ターゲット材料との間の磁力を低減させるために、位置決め機構の代替的な実施形態を実装することができ、磁石バー構造をターゲットシリンダの内面から
離れるように格納して挿入および取り出しを行うことができるようにする。次に、磁石バーがターゲットシリンダ内の正しい位置にきたら、位置決め機構を用いて磁石バー構造を展開位置に移動させる。磁石バー構造の位置決めは、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダの内部にある状態で、ターゲットシリンダを回転ターゲットカソードのエンドブロックに取り付ける前に行うことができる。磁石バー構造を展開位置に位置決めすることは、ターゲットシリンダを回転ターゲットカソードのエンドブロックに取り付けた後に行うこともできる。位置決めは、機械力、電気力、空圧力、油圧力、または磁力を任意に組み合わせて行うことができる。位置決め機構は、磁石バー構造の完全展開位置または完全格納位置のいずれかをもたらすように構成されている。
【0012】
位置決め機構に加えて、1つ以上の調整機構を設けて、磁石バー構造がターゲットシリンダの外部にある状態で磁場の微調整を行うことができる。例えば、調整機構は、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダの外部にある状態で個々の調整を支持構造の長さに沿って行って、ターゲットシリンダの表面の磁場を均一に調整することを可能にする。
【0013】
1つの実施形態では、位置決め機構は、機械結合アセンブリにより提供される。別の実施形態では、位置決め機構は、ゴムばねおよび膨張可能なブラダアセンブリにより提供される。さらに別の実施形態では、位置決め機構は、ばね無しの膨張可能なブラダにより提供される。
【0014】
代替的な実施形態では、回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリは、支持構造と、支持構造に取り付けられた磁石バー構造と、磁力歪み緩和アセンブリと、を備える。歪み緩和アセンブリは、支持構造に第1の端部で連結される歪み緩和エンドブロック接続部と、支持構造に第1の端部とは反対側の第2の端部で連結される歪み緩和エンドキャップ接続部と、を含む。歪み緩和アセンブリは、磁石バーアセンブリと磁性ターゲットシリンダとの間の磁力がエンドブロック接続部およびエンドキャップ接続部に伝達されることを防止する。
【0015】
様々な例示的な実施形態が、図面を参照して以下の通りに説明される。
【0016】
図1A図1Eは、1つの実施形態による回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリ100の様々な図を示している。一般に、磁石バーセンブリ100は、剛性長尺支持構造102と、支持構造102に移動可能に取り付けられた磁石バー構造104と、を含む。磁石バー構造104は、ヨーク108に取り付けられた、実質的に平行な行の磁石106のアレイを含む。磁石バー構造104は、格納位置(図1Bおよび図1D)と展開位置(図1Cおよび図1E)との間で、以下に説明される位置決め機構を使用して移動可能である。位置決め機構は、磁石バー構造104を回転可能なターゲットシリンダの内面に対して移動させて、磁石バー構造104が格納位置と展開位置との間で移動可能となるように構成されている。
【0017】
支持構造102は、一対の対向するサイドプレート110、112と、サイドプレート110と112との間に、1組のボルト116などで連結されるトッププレート114と、を含む。一対の対向するエンドプレート118、120はそれぞれ、トッププレート114に、1組のボルト122などで移動可能に連結される。複数のローラ124が、サイドプレート110、112に移動可能に接続される。ローラ124は、磁石バー構造104を回転ターゲットカソードの動作中にターゲットシリンダの内面から離して保持するように構成されている。移動制限ガイドピン126は、サイドプレート110のスロット128内に配置され、磁石バー構造104が正しく位置決めされた状態を保持するように動作する。
【0018】
一対の剛性冷媒管130、132はそれぞれ、エンドプレート110と112との間に、かつトッププレート114の上方に接続される。歪み緩和エンドブロック接続部134は、エンドプレート118に連結され、歪み緩和エンドキャップ接続部138は、エンドプレート120に連結される。図1Bおよび図1Cに示すように、冷媒管130、132は、エンドプレート118内の通路136を介して、エンドブロック接続部134と連通している。加えて、冷媒管130、132は、エンドプレート120内の通路140を介して、エンドキャップ接続部138と連通している。
【0019】
エンドブロック接続部134およびエンドキャップ接続部138の歪み緩和は、回転ターゲットカソードの動作中にボルト122に沿って上下に移動することができるエンドプレート118および120により提供される。この構成により、エンドブロック接続部134、エンドキャップ接続部138、および冷媒管130、132がエンドプレート118および120と一緒に移動することができる。これにより、ターゲットシリンダと磁石との間の磁力の応力が、回転ターゲットカソードのエンドブロックまたはエンドキャップブッシングの中央ユーティリティシャフトに伝達されないようにすることができる。代わりに、磁力は、磁石から支持構造102に伝達され、次にローラ124を介してターゲットシリンダに伝達される。
【0020】
磁石バーアセンブリ100の位置決め機構は、支持構造102および磁石バー構造104に連結される機械結合アセンブリを含む。機械結合アセンブリは、磁石バー構造104の1組の位置決め結合部材146(図1Bおよび図1C)と支持構造102で連結される一組の結合ピン148(図1Dおよび図1E)との間に移動可能に接続される一組の結合連結バー144を備える。位置決めねじ150は、磁石バー構造104の位置を格納位置と展開位置との間で変化させるように、機械結合アセンブリに移動可能に連結されている。複数の磁石バー捻じれリミッ152(図1Bおよび図1C)は、回転ターゲットカソードの動作中に磁石バー構造104の横方向運動を防止するように、磁石バー構造104のヨーク108に連結されている。
【0021】
図2A図2Eは、別の実施形態による回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリ200の様々な図を示している。一般に、磁石バーアセンブリ200は、剛性長尺支持構造202と、支持構造202に移動可能に取り付けられる磁石バー構造204と、を含む。磁石バー構造204は、ヨーク208に取り付けられた、実質的に平行な行の磁石206のアレイを含む。磁石バー構造204は、格納位置(図2Bおよび図2D)と展開位置(図2Cおよび図2E)との間で、以下に説明される位置決め機構を使用して移動可能である。位置決め機構は、磁石バー構造204を回転可能なターゲットシリンダの内面に対して移動させて磁石バー構造204が格納位置と展開位置との間で移動可能となるように構成されている。
【0022】
支持構造202は、一対の対向するサイドプレート210、212と、サイドプレート210と212との間に、一組の締結具216などで連結される支持ブロック214と、を含む。一対の対向するエンドプレート218、220はそれぞれ、サイドプレート210と212との間に、それぞれのスロット223内に配置される一組のボルト222などで移動可能に連結される。複数のローラ224は、サイドプレート210、212に移動可能に接続されて、磁石バー構造204をターゲットシリンダの内面から離して保持する。
【0023】
歪み緩和エンドブロック接続部226は、エンドプレート218に連結され、歪み緩和エンドキャップ接続部228は、エンドプレート220に連結される。エンドブロック接続部226およびエンドキャップ接続部228の歪み緩和は、回転ターゲットカソードの動作中にボルト222を有するスロット223に沿って上下に移動することができるエン
ドプレート218および220により提供される。
【0024】
位置決め機構は、支持構造202および磁石バー構造204に連結されるばねおよびブラダアセンブリを含む。ばねおよびブラダアセンブリは、支持ブロック214内の複数の垂直溝234内に配置される1組の圧縮ばね232を備える。1組の作動ボルト236は、垂直溝234の各垂直溝を通って延在しており、磁石バー構造204にも連結されている状態でばね232に係合する。ばねおよびブラダアセンブリは、膨張可能なブラダとしても機能する可撓性冷媒管240をさらに含む。可撓性冷媒管240は、エンドブロック接続部226とエンドキャップ接続部228との間に支持ブロック214の下方で連結される(図2Bおよび図2C)。
【0025】
可撓性冷媒管240が両方の端部で開放されている場合、圧縮ばね232が付勢されて、ボルト236および磁石バー構造204を格納位置に引っ張り上げる(図2Bおよび図2D)。可撓性冷媒管240が両方の端部で閉塞されていて加圧される場合、磁石バー構造204は支持構造202から離れて展開位置に押し下げられる(図2Cおよび図2E)。
【0026】
展開位置にあって、ばね232が圧縮されている状態では、支持構造202に連結される位置ロック機構を係合させて、ばね232を展開位置に保持することができ、可撓性冷媒管240を減圧して両方の端部で開放することができる。例えば、位置ロック機構は、1組の展開用ロックバー242を含むことができ、これらの展開用ロックバーは、ボルト236の上を摺動して、ばね232を所定の位置にロックすることができる。磁石バー構造204が展開位置にあって、可撓性冷媒管242の端部が開放している状態では、可撓性冷媒管242は、冷媒供給経路または冷媒戻り経路として機能することができる。位置ロック機構を係合解除して、ばね232で必要に応じて、磁石バー構造204を移動して格納位置に戻すことができる。
【0027】
ばねおよびブラダアセンブリは、可撓性冷媒管240が加圧状態で破損した場合に、ばね232の蓄積エネルギーが解放されて、ボルト236および磁石バー構造204を自動的に引き込んで格納位置に戻してしまうため、フェイルセーフ動作を提供する。
【0028】
加えて、磁石バー構造204と、ばね232との間の展開距離は、ボルト236を磁石バー構造204に螺合させて、磁石バー構造204から螺合解除することにより調整可能である。これにより、磁石バー構造204の長さに沿った調整を行うことができ、ターゲットシリンダの表面の磁場を均一に調整できる。
【0029】
図3A図3Eは、さらなる実施形態による回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリ300の様々な図を示している。一般に、磁石バーセンブリ300は、剛性長尺支持構造302と、支持構造302に移動可能に取り付けられる磁石バー構造304と、を含む。磁石バー構造304は、ヨーク308に取り付けられた、実質的に平行な行の磁石306のアレイを含む。磁石バー構造304は、格納位置(図3Bおよび図3D)と展開位置(図3Cおよび図3E)との間で、以下に説明される位置決め機構を使用して移動可能である。位置決め機構は、磁石バー構造304を回転可能なターゲットシリンダの内面に対して移動させて磁石バー構造304が格納位置と展開位置との間で移動可能となるように構成されている。
【0030】
支持構造302は、複数の支持プレート310を挟持構成で含み、これらの支持プレートは、1組の支持構造ねじ312で一緒に保持される。支持プレート310は、支持構造302内を通って延在する内部冷媒通路314を画定する。一対の対向するエンドプレート316、318はそれぞれ、支持プレート310の各端部に、1組のねじ320で連結
される。複数のローラ322は、支持プレート310に移動可能に接続されて磁石バー構造304をターゲットシリンダの内面から離して保持する。
【0031】
遊隙を有する歪み緩和エンドブロック接続部324はエンドプレート316に連結され、遊隙を有する歪み緩和エンドキャップ接続部326はエンドプレート318に連結される。接続部324、326の各々における遊隙は、例えば、ゴム製センタリングoリング328によってもたらされ得る。
【0032】
位置決め機構は、支持構造302および磁石バー構造304に連結されるブラダアセンブリを含む。ブラダアセンブリは、支持プレート310の上に位置決めされる格納用ブラダ332と、格納用ブラダ332の上に配置される磁石バー作動プレート334と、を備える。磁石バー作動プレート334は、磁石バー構造304のヨーク308に、支持プレート310を通過する複数のボルト336で連結される。1組の磁石バー均一性調整ナット338は、各々がボルト群336のそれぞれのボルトに連結され、磁石バー作動プレート334を格納用ブラダ332の上の所定の位置に保持し、磁石バー構造304の長さに沿った調整を行い、ターゲットシリンダの表面の磁場を均一に調整することができる。ブラダ充填ポート340は、格納用ブラダ332を膨張させるために、ガスをガス源から提供するように、格納用ブラダ332に連結されている。支持構造ねじ312は、図3Eに示すように、磁石バー作動プレート334の展開運動を制限する。
【0033】
膨張すると、格納用ブラダ332が、磁石バー作動プレート334を押し上げ、これにより今度は、ボルト336および磁石バー構造304を格納位置に押し上げる(図3Bおよび図3D)。格納用ブラダ332が収縮すると、磁石バー作動プレート334がボルト336および磁石バー構造304を展開位置に押し下げる。(図3Cおよび図3E)。
例示的な実施形態
【0034】
実施例1は、回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリを含み、磁石バーアセンブリは、支持構造と、支持構造に移動可能に取り付けられる磁石バー構造であって、磁石バー構造が複数の磁石を含む、磁石バー構造と、支持構造および磁石バー構造に動作可能に連結される位置決め機構であって、位置決め機構が、磁石バー構造を格納位置と展開位置との間で移動させるように構成されている、位置決め機構と、を備え、磁石バー構造の格納位置は、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダに挿入されるとき、またはターゲットシリンダから取り出されるときに、磁石とターゲットシリンダの磁性ターゲット材料との間の磁力を実質的に低減し、磁石バー構造の展開位置は、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダ内にあるときに、磁石と磁性ターゲット材料との間の磁力を実質的に増加させて、磁石バー構造からの磁場が磁性ターゲット材料内を貫通することができる。
【0035】
実施例2は、実施例1に記載の磁石バーアセンブリを含み、支持構造に移動可能に接続される複数のローラをさらに備え、ローラは、磁石バー構造をターゲットシリンダの内面から離して保持するように構成されている。
【0036】
実施例3は、実施例1~実施例2のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、磁力歪み緩和アセンブリをさらに備える。
【0037】
実施例4は、実施例3に記載の磁石バーアセンブリを含み、磁力歪み緩和アセンブリは、支持構造に第1の端部で連結される歪み緩和エンドブロック接続部と、支持構造に第1の端部とは反対側の第2の端部で連結される歪み緩和エンドキャップ接続部と、を備え、歪み緩和アセンブリは、磁石バーアセンブリと磁性ターゲットシリンダとの間の磁力が、エンドブロック接続部およびエンドキャップ接続部に伝達されることを防止する。
【0038】
実施例5は、実施例1~実施例4のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、支持構造は、展開位置にあるときの磁石バー構造とターゲットシリンダとの間の距離を正確に制限するように、実質的に剛性である。
【0039】
実施例6は、実施例1~実施例5のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、冷媒供給部および冷媒戻り部をターゲットシリンダの一方の側にのみ配置することができる冷媒通路をさらに備える。
【0040】
実施例7は、実施例1~実施例6のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、磁石バーアセンブリがターゲットシリンダの外部にある状態で個々の調整を支持構造の長さに沿って行い、ターゲットシリンダの表面の磁場を均一に調整するように構成されている1つ以上の調整機構をさらに備える。
【0041】
実施例8は、実施例1~実施例7のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、位置決め機構は、機械的機構、電気的機構、空圧機構、油圧機構、または磁力機構のうちの1つ以上の機構を使用して作動させる。
【0042】
実施例9は、実施例1~実施例8のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、位置決め機構は、支持構造および磁石バー構造に連結される機械結合アセンブリを備える。
【0043】
実施例10は、実施例9に記載の磁石バーアセンブリを含み、磁石バー構造の位置を格納位置と展開位置との間で変化させるように、機械結合アセンブリに移動可能に連結されている位置決めねじをさらに備える。
【0044】
実施例11は、実施例1~実施例8のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、位置決め機構は、支持構造および磁石バー構造に連結されるばねおよび膨張可能なブラダアセンブリを備える。
【0045】
実施例12は、実施例11に記載の磁石バーアセンブリを含み、ばねおよび膨張可能なブラダアセンブリは、支持構造および磁石バー構造に連結される1組の圧縮ばねと、支持構造内および圧縮ばね内を通って延在し、圧縮ばねに係合する磁石バー構造に連結される1組の作動ボルトと、膨張可能なブラダを含み、支持構造と磁石バー構造との間に連結される可撓性冷媒管と、を備える。
【0046】
実施例13は、実施例12に記載の磁石バーアセンブリを含み、磁石バー構造と圧縮ばねとの間の展開距離は、作動ボルトを磁石バー構造に螺合させて、磁石バー構造から螺合解除することにより調整可能であり、磁石バー構造の長さに沿った調整を行い、ターゲットシリンダの表面の磁場を均一に調整することが可能になる。
【0047】
実施例14は、実施例12~実施例13のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、可撓性冷媒管が両方の端部で開放されている場合、圧縮ばねが付勢されて、作動ボルトおよび磁石バー構造を格納位置に引き込み、可撓性冷媒管が両方の端部で閉塞されていて加圧される場合、磁石バー構造は、支持構造から離れて展開位置に押し出される。
【0048】
実施例15は、実施例14に記載の磁石バーアセンブリを含み、磁石バー構造が展開位置に、加圧された可撓性冷媒管により移動する場合、支持構造に連結される位置ロック機構を係合させて圧縮ばねを展開位置に保持することができ、可撓性冷媒管を減圧して両方の端部で開放することができ、磁石バー構造が展開位置にあって可撓性冷媒管が開放している場合、冷媒管は、冷媒供給経路または冷媒戻り経路として機能し、磁石バー構造が展開位置にある場合、位置ロック機構を係合解除して磁石バー構造を移動して格納位置に戻
すことができる。
【0049】
実施例16は、実施例1~実施例8のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、位置決め機構は、支持構造および磁石バー構造に連結されるブラダアセンブリを備える。
【0050】
実施例17は、実施例16に記載の磁石バーアセンブリを含み、ブラダアセンブリは、磁石バー構造とは反対の支持構造の側に位置決めされる格納用ブラダと、格納用ブラダを磁石バー作動プレートと支持構造との間に挟持するように配置される磁石バー作動プレートと、を備え、磁石バー作動プレートは磁石バー構造に、支持構造内を通過する複数のボルトで連結される。
【0051】
実施例18は、実施例17に記載の磁石バーアセンブリを含み、膨張すると、格納用ブラダが、磁石バー作動プレートを押すことにより今度は、ボルトおよび磁石バー構造を格納位置に引き込み、格納用ブラダが収縮すると、磁石バー作動プレートが、ボルトおよび磁石バー構造を展開位置に押し出す。
【0052】
実施例19は、実施例17~実施例18のいずれかに記載の磁石バーアセンブリを含み、各磁石バー均一性調整ナットがボルト群のそれぞれのボルトに連結される1組の磁石バー均一性調整ナットを備え、磁石バー構造の長さに沿った調整を行い、ターゲットシリンダの表面の磁場を均一に調整することを可能にする。
【0053】
実施例20は、回転ターゲットカソードの磁石バーアセンブリを含み、磁石バーアセンブリは、支持構造と、支持構造に取り付けられる磁石バー構造であって、磁石バー構造が複数の磁石を含む、磁石バー構造と、支持構造に第1の端部で連結される歪み緩和エンドブロック接続部、および支持構造に第1の端部とは反対側の第2の端部で連結される歪み緩和エンドキャップ接続部を備える磁力歪み緩和アセンブリと、を備え、歪み緩和アセンブリは、磁石バーアセンブリと磁性ターゲットシリンダとの間の磁力がエンドブロック接続部およびエンドキャップ接続部に伝達されることを防止する。
【0054】
多くの実施形態が説明されてきたが、説明された実施形態は、限定ではなく例示としてのみ考慮されるべきであり、説明された実施形態に対する様々な修正が本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろうしたがって、本発明の範囲は、これまでの説明ではなく、添付の特許請求の範囲により示される。特許請求の範囲の均等物の意味および範囲に入る全ての変更は、特許請求の範囲に包含されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E