(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】カーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20230227BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/12 D
B60C11/03 100A
(21)【出願番号】P 2021092700
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0066290
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514040088
【氏名又は名称】ハンコック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANKOOK TIRE & TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】286,Pangyo-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do,13494,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イム、ジェ ウク
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ウ ヘン
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-001921(JP,A)
【文献】特開2009-202705(JP,A)
【文献】特開2016-043924(JP,A)
【文献】特開2002-321509(JP,A)
【文献】特開2017-087859(JP,A)
【文献】特開2016-068719(JP,A)
【文献】特表2012-526704(JP,A)
【文献】特開2009-292382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーフ溝に挿入される部材であるカーフ挿入部材を少なくとも1つと、
トレッド及び前記トレッドの側面に形成されるショルダーを含むタイヤとを含み、
前記トレッドは、
前記トレッドの中心に向かって陥入し、前記タイヤの周方向に形成される少なくとも1つのグルーブと、
前記トレッドの中心に向かって陥入し、前記タイヤの中心軸方向に形成される少なくとも1つのカーフ溝と、
前記少なくともグルーブと前記少なくとも1つのカーフ溝により区画される少なくとも1つのブロックとを含み、
前記少なくとも1つのカーフ挿入部材は、前記少なくとも1つのカーフ溝に挿入され、前記少なくとも1つのブロックの間に密着して固定され
、
前記少なくとも1つのブロックと平行な前記カーフ挿入部材の側面は、少なくとも1回交互に折り曲げられる台形形状を有し、
隣接する2つの前記台形形状の下底の長さの和は、2~3mmである
ことを特徴とするカーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーフ挿入部材は、
平板状を有する少なくとも1つの水平部材を含む水平部と、
所定の曲率を有して前記周方向の一方向に凹状に形成される少なくとも1つの凹部材を含む凹部と、
所定の曲率を有して前記周方向の他方向に凸状に形成される少なくとも1つの凸部材を含む凸部とを含み、
前記水平部、前記凹部及び前記凸部は、連続して連結される
請求項1に記載のカーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記水平部は、
前記カーフ溝の一側内部に位置する第1の水平部材と、
前記第1の水平部材に結合する第2の水平部材と、
前記カーフ溝の他側内部に位置する第3の水平部材と、
前記第3の水平部材に結合する第4の水平部材とを含み、
前記水平部は、前記少なくとも1つのブロックのうち隣接する一対のブロックの間に密着して固定される
請求項2に記載のカーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記凹部は、
前記第1の水平部材に連結される第1の凹部材と、
前記第2の水平部材に連結されて前記第1の凹部材に結合する第2の凹部材とを含み、
前記凸部は、
前記第1の凹部材に連結される第1の凸部材と、
前記第2の凹部材に連結されて前記第1の凸部材に結合する第2の凸部材とを含み、
前記第1の水平部材及び前記第2の水平部材、前記第1の凹部材及び前記第2の凹部材、前記第1の凸部材及び前記第2の凸部材は、順次連結され、
前記第1の凹部材及び前記第2の凹部材の両端の最短距離は、前記第1の凸部材及び前記第2の凸部材の両端の最短距離と同一である
請求項3に記載のカーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記凹部は、
前記第3の水平部材に連結される第3の凹部材と、
前記第4の水平部材に連結されて前記第3の凹部材に結合する第4の凹部材とを含み、
前記凸部は、
前記第3の凹部材に連結される第3の凸部材と、
前記第4の凹部材に連結されて前記第3の凸部材に結合する第4の凸部材とを含み、
前記第3の水平部材及び前記第4の水平部材、前記第3の凹部材及び前記第4の凹部材、前記第3の凸部材及び前記第4の凸部材は、順次連結され、
前記第3の凹部材及び前記第4の凹部材の両端の最短距離は、前記第3の凸部材及び前記第4の凸部材の両端の最短距離と同一である
請求項3に記載のカーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1の水平部材及び前記第2の水平部材に連結される前記第1の凹部材及び前記第2の凹部材の一端から、前記第1の凸部材及び前記第2の凸部材の他端までの最短距離は、5~12mmである
請求項4または5に記載のカーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記カーフ挿入部材の厚さは、0.2~0.4mmである
請求項1に記載のカーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドの表面と平行な前記カーフ挿入部材の上面は、少なくとも1回交互に折り曲げられる波形状を有する
請求項1に記載のカーフ挿入部材を適用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dカーフを適用した空気入りタイヤに関し、より詳細には、スノー性能を向上させるための3Dカーフを適用した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、タイヤの内部を構成するインナーライナーと、インナーライナーの外部に積層されるボディフライと、ボディフライの外部に積層されるベルトと、ベルトの外部に積層されるトレッドと、タイヤの両側部を構成するサイドウォールと、ホイールに結合されるビードとから構成される。
【0003】
また、路面に接地するトレッドには、グリップ力、排水力、制動力、騒音分散などのために特定の形態のパターンを形成するが、そのパターンの形態が雨、雪道でのハンドリング性能に大きな影響を与えるので、それはタイヤ開発の要因となる。カーフとは、トレッドブロックに主に横方向に1mm以下の幅で細くかつ深く掘られた溝であり、接地面を均等にし、グリップ力を向上させると共に、緩衝作用により快適な乗り心地を与えるものである。また、排水を促進し、駆動力と制動力を増加させる機能も有する。
【0004】
近年、パターン設計は、シンプルなデザインと外観より、性能を中心に設計する傾向となっている。タイヤの性能のためにパターン性能技術が細分化されており、微細に変化している。
【0005】
また、スノータイヤにおいては、路面での回転時のカーフのエッジ効果により駆動及び制動を行い、移動時のスノー性能を確保することができる。
【0006】
スノータイヤにエッジ効果のために適用されるカーフは、トレッドゴムブロックの剛性低下を招き、乾燥した(Dry)路面でのタイヤ性能を低下させる原因となる。よって、タイヤの表面から垂直方向のカーフによる拘束性能を改善し、ブロックの剛性を確保するために、3Dカーフの適用が増加している。一般に、スノータイヤに適用されるカーフにより、スノータイヤ挙動の際にブロックが過度に倒れる現象や、タイヤの移動方向にリーディング部が巻き込まれる現象が発生し、路面との摩擦による摩擦力が減少することが多くある。
【0007】
トレッドブロックは、駆動時にはブロックリディーング部に、ブレーキング時にはブロックテーリング部にエッジ効果が生じ、ブロック内の他の部分より接地圧が増加する現象が発生する。路面とタイヤ間に水膜やスノー層が形成されて摩擦係数が低下している条件において、接地圧の増加は、水膜やスノー層の破壊により摩擦係数を高める役割を果たす。従来のカーフ構造は、カーフの密度が増加するにつれてブロックの剛性が低下するので、ブロックスライドの増加及び接地面の増加による接地圧の減少によりエッジ効果が減少し、過湿(wet)及びスノー(snow)性能に影響を及ぼすことができず、異常摩耗現象が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-1739506号公報
【文献】韓国登録特許第10-1711130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記問題を解決するために、本発明は、3Dカーフの上面が波形状を有し、3Dカーフの側面が台形形状を有する3Dカーフをタイヤトレッドのカーフ溝に挿入してスノー性能を向上させる、3Dカーフを適用した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0010】
また、前記問題を解決するために、本発明は、少なくとも1つの3Dカーフが少なくとも1つのカーフ溝に挿入され、少なくとも1つのブロックの間に密着して固定されることにより、ブロック間のインターロッキング(interlocking)現象を発生させ、タイヤのグリップ力、ハンドリング及びブレーキング性能を向上させる、3Dカーフを適用した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0011】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した技術的課題に限定されるものではなく、言及していない他の技術的課題は、以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つの3Dカーフと、トレッド及び前記トレッドの側面に形成されるショルダーを含むタイヤとを含み、前記トレッドは、前記トレッドの中心に向かって陥入し、前記タイヤの周方向に形成される少なくとも1つのグルーブと、前記トレッドの中心に向かって陥入し、前記タイヤの中心軸方向に形成される少なくとも1つのカーフ溝と、前記少なくともグルーブと前記少なくとも1つのカーフ溝により区画される少なくとも1つのブロックとを含み、前記少なくとも1つの3Dカーフは、前記少なくとも1つのカーフ溝に挿入され、前記少なくとも1つのブロックの間に密着して固定されることを特徴とする3Dカーフを適用した空気入りタイヤを提供する。
【0013】
本発明の実施形態において、前記3Dカーフは、平板状を有する少なくとも1つの水平部材を含む水平部と、所定の曲率を有して前記周方向の一方向に凹状に形成される少なくとも1つの凹部材を含む凹部と、所定の曲率を有して前記周方向の他方向に凸状に形成される少なくとも1つの凸部材を含む凸部とを含み、前記水平部、前記凹部及び前記凸部は、連続して連結されることを特徴とする。
【0014】
本発明の実施形態において、前記水平部は、前記カーフ溝の一側内部に位置する第1の水平部材と、前記第1の水平部材に結合する第2の水平部材と、前記カーフ溝の他側内部に位置する第3の水平部材と、前記第3の水平部材に結合する第4の水平部材とを含み、前記水平部は、前記少なくとも1つのブロックのうち隣接する一対のブロックの間に密着して固定されることを特徴とする。
【0015】
本発明の実施形態において、前記凹部は、前記第1の水平部材に連結される第1の凹部材と、前記第2の水平部材に連結されて前記第1の凹部材に結合する第2の凹部材とを含み、前記凸部は、前記第1の凹部材に連結される第1の凸部材と、前記第2の凹部材に連結されて前記第1の凸部材に結合する第2の凸部材とを含み、前記第1の水平部材及び前記第2の水平部材、前記第1の凹部材及び前記第2の凹部材、前記第1の凸部材及び前記第2の凸部材は、順次連結され、前記第1の凹部材及び前記第2の凹部材の両端の最短距離は、前記第1の凸部材及び前記第2の凸部材の両端の最短距離と同一であることを特徴とする。
【0016】
本発明の実施形態において、前記凹部は、前記第3の水平部材に連結される第3の凹部材と、前記第4の水平部材に連結されて前記第3の凹部材に結合する第4の凹部材とを含み、前記凸部は、前記第3の凹部材に連結される第3の凸部材と、前記第4の凹部材に連結されて前記第3の凸部材に結合する第4の凸部材とを含み、前記第3の水平部材及び前記第4の水平部材、前記第3の凹部材及び前記第4の凹部材、前記第3の凸部材及び前記第4の凸部材は、順次連結され、前記第3の凹部材及び前記第4の凹部材の両端の最短距離は、前記第3の凸部材及び前記第4の凸部材の両端の最短距離と同一であることを特徴とする。
【0017】
本発明の実施形態において、前記第1の水平部材及び前記第2の水平部材に連結される前記第1の凹部材及び前記第2の凹部材の一端から、前記第1の凸部材及び前記第2の凸部材の他端までの最短距離は、5~12mmであることを特徴とする。
【0018】
本発明の実施形態において、前記3Dカーフの厚さは、0.2~0.4mmであることを特徴とする。
【0019】
本発明の実施形態において、前記トレッドの表面と平行な前記3Dカーフの上面は、少なくとも1回交互に折り曲げられる波形状を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の実施形態において、前記少なくとも1つのブロックと平行な前記3Dカーフの側面は、少なくとも1回交互に折り曲げられる台形形状を有し、前記3Dカーフの側面のうち凹状の部分の一端から、前記3Dカーフの側面のうち凸状の部分の一端までの最短距離は、2~3mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
前記構成による本発明は、3Dカーフの上面が波形状を有し、3Dカーフの側面が台形形状を有する3Dカーフをタイヤトレッドのカーフ溝に挿入してスノー性能を向上させるという効果を有する。
【0022】
また、前記構成による本発明は、少なくとも1つの3Dカーフが少なくとも1つのカーフ溝に挿入され、少なくとも1つのブロックの間に密着して固定されることにより、ブロック間のインターロッキング(interlocking)現象を発生させ、タイヤのグリップ力、ハンドリング及びブレーキング性能を向上させるという効果を有する。
【0023】
本発明の効果は、これらに限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載されている発明の構成から推論できるあらゆる効果が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態による3Dカーフを適用した空気入りタイヤを示す一方向からの斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による3Dカーフを適用した空気入りタイヤにおける3Dカーフの形状を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による3Dカーフを適用した空気入りタイヤにおける3Dカーフの実際の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明について説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現されるので、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面において、本発明を明確に説明するために説明に関係のない部分は省略し、明細書全体を通して類似の部分には類似の符号を付した。
【0026】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続,接触,結合)」されているという場合、それには「直接的に連結」されているものだけでなく、その中間にさらに他の部材を介して「間接的に連結」されているものも含まれる。また、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに備えてもよいことを意味する。
【0027】
本明細書に用いる用語は、単に特定の実施形態について説明するために用いるものであり、本発明を限定するものではない。単数の表現には、特に断らない限り、複数の表現が含まれる。本明細書における「含む」や「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はそれらの組み合わせが存在することを示すものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はそれらの組み合わせの存在又は付加可能性を予め排除するものではない。
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態による3Dカーフを適用した空気入りタイヤを示す一方向からの斜視図である。
【0030】
まず、3Dカーフ100が挿入されるタイヤ200、及びタイヤ200を支持するタイヤホイール10について説明する。
【0031】
図1に示すように、タイヤ200は、トレッド210と、トレッド210の側面に形成されるショルダー220とを含む。また、タイヤ200には、
図1に示していないが、ベルト、インナーライナー、ギャップフライ、カーカス、ビードなどが形成されてもよい。これらの構成要素は公知技術であるので具体的な説明を省略する。
【0032】
トレッド210は、グルーブ211と、カーフ溝212と、ブロック213とを含む。
【0033】
グルーブ211は、トレッド210の中心に向かって陥入し、タイヤ200の周方向に形成されることにより、排水機能を果たすものである。
図1に示すように、少なくとも1つ(
図1においては3つ)のグルーブ211が形成される。
【0034】
カーフ溝212は、トレッド210の中心に向かって陥入し、タイヤ200の中心軸方向に形成される。
図1に示すように、トレッド210が形成される方向を縦方向とすると、カーフ溝212は横方向に形成され、少なくとも1つ(
図1においては36個)のカーフ溝212が形成される。
【0035】
また、カーフ溝212の形状は、
図1に示すものに限定されるものではなく、後述する3Dカーフ100が挿入され、少なくとも1つのブロック213に密着するように、それらに対応して形成される。
【0036】
そのための少なくとも1つのブロック213の側面は、3Dカーフ100の側面と平行になるように、少なくとも1つのブロック213と平行に形成されてもよい。
【0037】
ブロック213は、少なくともグルーブ211と少なくとも1つのカーフ溝212により区画されるものである。
図1に示すように、少なくとも1つ(
図1においては18個、第1のブロックや第2のブロックなどの個々のブロックは57個)のブロック213が形成される。
【0038】
ブロック213は、路面に接地し、摩擦力により車両を停止させる。
【0039】
本発明においては、説明のために、隣接するブロックの任意の一対のブロックに符号を付した。
【0040】
前記任意の一対のブロックを、第1のブロック213a及び第2のブロック213bとする。
【0041】
第1のブロック213aと第2のブロック213bは、グルーブ211及びカーフ溝212により区画されるので、第1のブロック213aと第2のブロック213bは、カーフ溝212が形成される分だけ離隔して位置する。
【0042】
ショルダー220は、トレッド210の側部に形成され、タイヤ200がタイヤホイール10に装着されると、タイヤ200に密着する。
【0043】
図1に示すように、タイヤホイール10は、両側が開放された円筒状のリム11と、リム11の中央部に位置するディスク12と、リム11とディスク12を連結する少なくとも1つのスポーク13とを含む。
【0044】
以下、
図1ないし
図5を参照して、本発明の一実施形態による3Dカーフを適用した空気入りタイヤについて説明する。
【0045】
図1に示すように、本発明の一実施形態による3Dカーフを適用した空気入りタイヤは、3Dカーフ100と、タイヤ200とを含む。
【0046】
3Dカーフ100は、隣接する一対のブロック間に形成されるカーフ溝212に挿入されて固定されるものであり、少なくとも1つのカーフ溝212に挿入されるように少なくとも1つ形成される。
【0047】
前述した少なくとも1つの3Dカーフ100は、少なくとも1つのカーフ溝212に挿入され、少なくとも1つのブロック213間に密着して固定されることにより、ブロック間のインターロッキング(interlocking)現象を発生させ、タイヤ200のグリップ力、ハンドリング及びブレーキング性能を向上させる。
【0048】
このような3Dカーフ100は、ステンレス(SUS304,SUS301,SUS420J2,SUS630)素材のいずれかを用いて、折り曲げることにより製造される。前述したステンレス素材以外にも、3Dカーフ100は、マレージング鋼、SUS630及びTi粉末のいずれかを3Dプリントして製造してもよい。
【0049】
また、3Dカーフ100は、形状により摩擦力が変化するが、それについての具体的な説明は後述する。
【0050】
このような3Dカーフ100は、水平部110と、凹部120と、凸部130とを含む。
【0051】
【0052】
水平部110は、少なくとも1つのブロック213のうち隣接する一対のブロック213a、213b間に密着して固定される。
【0053】
図2に示すように、水平部110は、平板状を有する少なくとも1つの水平部材である、第1の水平部材111と、第2の水平部材112と、第3の水平部材113と、第4の水平部材114とを含む。
【0054】
第1の水平部材111は、平板状を有し、カーフ溝212の一側内部に位置する。
【0055】
第2の水平部材112は、第1の水平部材111と形状及び大きさが同一であり、第1の水平部材111に結合する。
【0056】
第3の水平部材113は、平板状を有し、第1の水平部材111及び第2の水平部材112と形状及び大きさが同一であり、カーフ溝212の他側内部に位置する。
【0057】
第4の水平部材114は、第3の水平部材113と形状及び大きさが同一であり、第3の水平部材113に結合する。
【0058】
第1の水平部材111及び第2の水平部材112は、
図2の左側に位置し、第3の水平部材113及び第4の水平部材114は、
図2の右側に位置する。
【0059】
凹部120は、所定の曲率を有し、タイヤ200の周方向の一方向に凹状に形成される。このような凹部120は、少なくとも1つの凹部材である、第1の凹部材121と、第2の凹部材122と、第3の凹部材123と、第4の凹部材124とを含む。
【0060】
図2に示すように、第1の凹部材121は、第1の水平部材111に連結される。具体的には、第1の凹部材121の一側は、第1の水平部材111の他側に連結され、第1の凹部材121の他側は、第1の凸部材131の一側に連結される。
【0061】
また、第1の凹部材121は、
図2に示すように、下方に所定の曲率を有して凹状に形成される。
【0062】
ここで、第1の凹部材121の半径R1は6.6021mmであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0063】
第2の凹部材122は、第2の水平部材112に連結され、第1の凹部材121に結合する。具体的には、第2の凹部材122の一側は、第2の水平部材112の他側に連結され、第2の凹部材122の他側は、第2の凸部材132の一側に連結される。
【0064】
また、第2の凹部材122は、
図2に示すように、下方に所定の曲率を有して凹状に形成される。
【0065】
図2に示すように、第3の凹部材123は、第3の水平部材113に連結される。また、第3の凹部材123は、
図2に示すように、下方に所定の曲率を有して凹状に形成される。
【0066】
ここで、第3の凹部材123の半径R1は、第1の凹部材121と同じく6.6021mmであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0067】
第4の凹部材124は、第4の水平部材114に連結され、第3の凹部材123に結合する。また、第4の凹部材124は、
図2に示すように、下方に所定の曲率を有して凹状に形成される。
【0068】
トレッド210の表面と平行な3Dカーフ100の上面は、少なくとも1回交互に折り曲げられる波形状を有する。
【0069】
具体的には、第1の凹部材121及び第2の凹部材122、第1の凸部材131及び第2の凸部材132、第3の凹部材123及び第4の凹部材124、第3の凸部材133及び第4の凸部材134は、順次結合され、
図2に示すように、全体的には波形状を有する。
【0070】
【0071】
少なくとも1つのブロック213と平行な3Dカーフ100の側面は、少なくとも1回交互に折り曲げられる台形形状を有する。
【0072】
前述した特徴に関連して、第1のブロック213aと第2のブロック213b間に形成される第3の凹部材123及び第4の凹部材124の例を
図3に示す。以下、これに基づいて詳細に説明する。
【0073】
3Dカーフ100の厚さfは、0.2~0.4mmであり、好ましくは0.4mmである。
図3においては、第3の凹部材123と第4の凹部材124の厚さfであるが、それ以外の第1の水平部材111と第2の水平部材112、第3の水平部材113と第4の水平部材114、第1の凹部材121と第2の凹部材122、第1の凸部材131と第2の凸部材132、第3の凸部材133と第4の凸部材134の厚さfも同様である。
【0074】
また、3Dカーフ100の凹状の部分の一端から、3Dカーフ100の凸状の部分の一端までの最短距離(j+j)は、
図3の第3の凹部材123及び第4の凹部材124の両端までの最短距離jの2倍となり、2~3mmであり、好ましくは2.4mmである。
【0075】
また、
図3において、第3の凹部材123、第4の凹部材124の深さgは7mmである。
【0076】
さらに、第4の凹部材124が折り曲げられる部分の半径R2は0.4mmであり、
図3の左右方向の水平線と第3の凹部材123の接線がなす角度は30度である。
【0077】
凸部130は、所定の曲率を有し、タイヤ200の周方向の他方向に凸状に形成され、少なくとも1つの凸部材131、132、133を含む。
【0078】
すなわち、第1の凸部材131と、第2の凸部材132と、第3の凸部材133と、第4の凸部材134とを含む。
【0079】
第1の凸部材131は、第1の凹部材121に連結される。具体的には、第1の凸部材131の一側は、第1の凹部材121の他側に連結され、第1の凸部材131の他側は、第3の凹部材123の一側に連続して連結される。
【0080】
また、第1の凸部材131は、所定の曲率を有して形成される。
【0081】
第2の凸部材132は、第2の凹部材122に連結され、第1の凸部材131に結合する。具体的には、第2の凸部材132の一側は、第2の凹部材122の他側に連結され、第2の凸部材132の他側は、第4の凹部材124の一側に連続して連結される。
【0082】
ここで、第2の凸部材132は、所定の曲率を有して形成され、第2の凸部材132の半径R1は、第1の凹部材121、第3の凹部材123と同じく6.6021mmであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0083】
第3の凸部材133は、第3の凹部材123に連結される。具体的には、第3の凸部材133の一側は、第3の凹部材123の他側に連結され、第3の凸部材133の他側は、第3の水平部材113の一側に連続して連結される。
【0084】
また、第3の凸部材133は、所定の曲率を有して形成される。
【0085】
第4の凸部材134は、第4の凹部材124に連結され、第3の凸部材133に結合する。具体的には、第4の凸部材134の一側は、第4の凹部材124の他側に連結され、第4の凸部材134の他側は、第4の水平部材114の一側に連続して連結される。
【0086】
前述した水平部110、凹部120及び凸部130は、連続して連結される。具体的には、第1の水平部材111及び第2の水平部材112、第1の凹部材121及び第2の凹部材122、第1の凸部材131及び第2の凸部材132は、順次連結され、第1の凹部材121及び第2の凹部材122の両端の最短距離d1は、第1の凸部材131及び第2の凸部材132の両端の最短距離d2と同じく5.5mmである。
【0087】
また、第3の水平部材113及び第4の水平部材114、第3の凹部材123及び第4の凹部材124、第3の凸部材133及び第4の凸部材134は、順次連結され、第3の凹部材123及び第4の凹部材124の両端の最短距離d3は、第3の凸部材133及び第4の凸部材134の両端の最短距離d4と同じく5.5mmである。
【0088】
さらに、第1の水平部材111及び第2の水平部材112に連結される第1の凹部材121及び第2の凹部材122の一端から、第1の凸部材131及び第2の凸部材132の他端までの最短距離(d1+d2)は、5~12mmであり、好ましくは11mmである。
【0089】
さらに、第3の水平部材113及び第4の水平部材114に連結される第3の凹部材123及び第4の凹部材124の一端から、第3の凸部材133及び第4の凸部材134の他端までの最短距離(d3+d4)は、5~12mmであり、好ましくは11mmである。
【0090】
図4の(a)、(b)は本発明の一実施形態による3Dカーフを適用した空気入りタイヤにおける3Dカーフの形状を示す斜視図である。
図5の(a)、(b)、(c)、(d)は本発明の一実施形態による3Dカーフを適用した空気入りタイヤにおける3Dカーフの実際の形状を示す斜視図である。
【0091】
本発明の3Dカーフ100は、タイヤ200のトレッド210に形成されるパターンに適用されるブロック213間にインターロッキング(interlocking)現象を発生させ、タイヤ200のグリップ力、ハンドリング及びブレーキング性能を向上させるためのものであり、形状により摩擦力が変化する。
【0092】
そのために、本発明においては、3Dカーフ100の形状をジグザグ(zigzag)形状、台形(trapezoid)形状、波(wave)形状などにして実験を行った。それらのうち、
図4の(a)、(b)にジグザグ形状、台形形状の3Dカーフ100の例を示す。
【0093】
図5の3Dカーフは、タイヤに適用する前の3Dカーフ100の各形状における摩擦力を評価するために作製したものであり、ジグザグ(zigzag)形状、台形(trapezoid)形状、波・台形(wave-trapezoid)形状、セミ台形(semi-trapezoid)形状を有する。
【0094】
図5の(a)の3Dカーフは、タイヤ200のトレッド210表面がジグザグ(zigzag)形状に設計され、トレッド表面から深さ方向にジグザグ(zigzag)形状に設計されたものであり、
図5の(b)の3Dカーフは、タイヤ200のトレッド210表面が台形(trapezoid)形状に設計され、トレッド210表面から深さ方向に台形(trapezoid)形状に設計されたものであり、
図5の(c)の3Dカーフは、タイヤ200のトレッド210表面が波(wave)形状に設計され、トレッド210表面から深さ方向に台形(trapezoid)形状に設計されたものであり、
図5の(d)の3Dカーフは、タイヤ200のトレッド210表面が台形(trapezoid)形状に設計され、トレッド210表面から深さ方向にセミ台形(semi-trapezoid)形状に設計されたものである。
【0095】
その実験結果を表1及び表2に示す。
【0096】
【0097】
図5の(a)ジグザグ(zigzag)形状、(b)台形(trapezoid)形状、(C)波・台形(wave-trapezoid)形状、(d)セミ台形(trapezoid-semi trapezoid)形状は、SUS304板材を用いて折り曲げて(bending)作製したサンプルであり、それぞれの摩擦力を評価した。それを表1に示す。まず、Dry状態での3Dカーフ100の摩擦力の大きさは、波・台形(wave-trapezoid)形状>ジグザグ(zigzag)形状=セミ台形(trapezoid-semi trapezoid)形状>台形(trapezoid)形状であり、波・台形形状において最も大きな摩擦力が発生することが確認された。
【0098】
次に、Wet状態での3Dカーフ100の摩擦力の大きさは、波・台形(wave-trapezoid)形状=台形(trapezoid)形状=ジグザグ(zigzag)形状>セミ台形(trapezoid-semi trapezoid)形状であり、セミ台形形状において最も小さな摩擦力が発生することが確認された。
【0099】
最後にSnow状態での3Dカーフ100の摩擦力の大きさは、台形(trapezoid)形状>ジグザグ(zigzag)形状>波・台形(wave-trapezoid)形状>セミ台形(trapezoid-semi trapezoid)形状であり、台形形状において最も大きな摩擦力が発生することが確認された。
【0100】
摩擦力を評価した結果、ジグザグ(zigzag)形状と台形(trapezoid)形状において比較的摩擦力が高かったが、複雑な形状によりSUS304材質の折り曲げ(bending)作製時の不良率が高かった。
【0101】
また、波・台形(wave-trapezoid)形状とセミ台形(trapezoid-semi trapezoid)形状を作製して設計的な剛性を評価した結果、波・台形(wave-trapezoid)形状の剛性がセミ台形(trapezoid-semi trapezoid)形状より約5%高いことが確認されたので、波・台形(wavetrapezoid)形状の3Dカーフをモールドに適用することに決定した。
【0102】
【0103】
表2は、スノー性能を評価したものであり、ここで、タイヤ200はオールシーズン(all season)用235/45R18Vに作製した。性能評価の結果、Snow handlingは一般カーフより8%向上し、snow brakingは一般カーフより7.4%向上し、snow accelerationは一般カーフより5.3%向上した。
【0104】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形できる。よって、前述した実施形態はあくまで例示的なものであり、限定的なものではない。例えば、単一のものが説明されている各構成要素が分散した形態で実施されてもよく、同様に分散したものが説明されている各構成要素も結合した形態で実施されてもよい。
【0105】
本発明の範囲は特許請求の範囲に示されており、特許請求の範囲の意味及び範囲、さらにその均等概念から導かれるあらゆる変更又は変形された形態が本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
10 タイヤホイール
11 リム
12 ディスク
13 スポーク
100 3Dカーフ
110 水平部
111 第1の水平部材
112 第2の水平部材
113 第3の水平部材
114 第4の水平部材
120 凹部
121 第1の凹部材
122 第2の凹部材
123 第3の凹部材
124 第4の凹部材
130 凸部
131 第1の凸部材
132 第2の凸部材
133 第3の凸部材
134 第4の凸部材
200 タイヤ
210 トレッド
211 グルーブ
212 カーフ溝
213 ブロック
213a 第1のブロック
213b 第2のブロック
220 ショルダー