(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】竪型射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/03 20060101AFI20230227BHJP
B29C 45/54 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
B29C45/03
B29C45/54
(21)【出願番号】P 2021118399
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利美
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】実公昭41-005266(JP,Y1)
【文献】実開平07-035019(JP,U)
【文献】特開2012-006297(JP,A)
【文献】特開昭61-094730(JP,A)
【文献】特開平10-235701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締め軸が鉛直であり金型を型締めする型締装置と、この型締装置の上に配置され樹脂材料を前記金型へ射出する射出装置とで構成される竪型射出成形装置であって、
前記射出装置は、回転自在のスクリューを内蔵し前記樹脂材料を撹拌しつつ所定の温度に加熱する加熱筒と、この加熱筒に繋がり前記樹脂材料を貯留する材料貯留部材と、この材料貯留部材に設けられ前記金型へ延びるノズルと、前記材料貯留部材に設けられ前記樹脂材料を前記ノズルから射出する射出シリンダとを備え、
前記スクリューのスクリュー軸は、鉛直に延び、
前記射出シリンダのシリンダ軸は、水平に延びて
おり、
前記射出装置は、前記型締装置の上に配置される射出盤と、この射出盤の上方に配置され前記加熱筒及び前記射出シリンダを懸架するスクリュー駆動盤と、前記射出盤及び前記スクリュー駆動盤を上下方向に移動する射出位置決め手段とを、さらに備え、
前記射出位置決め手段は、シリンダと、このシリンダに対して軸方向へ移動するピストンロッドとを備え、
前記シリンダは、前記射出盤に前記スクリュー駆動盤を連結する連結部材を兼ねていることを特徴とする竪型射出成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の竪型射出成形装置であって、
前記スクリューの有効長さをL、前記スクリューの外径をDとしたときに、L/Dは、3を超えないことを特徴とする竪型射出成形装置。
【請求項3】
請求項2記載の竪型射出成形装置であって、
前記L/Dは、1.0であることを特徴とする竪型射出成形装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の竪型射出成形装置であって、
前記加熱筒は、底に樹脂材料を流出させる出口及びこの出口を開閉する出口弁を備え、この出口弁を出口弁駆動手段で移動するようにしたことを特徴とする竪型射出成形装置。
【請求項5】
請求項1記載の竪型射出成形装置であって、
前記射出シリンダは、プランジャを備え、
前記材料貯留部材は、水平に延びつつ前記プランジャを収納する第1横筒と、この第1横筒の先端から下へ延びる縦筒と、この縦筒の高さ方向途中から前記加熱筒へ延びる第2横筒とを備えていることを特徴とする竪型射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型射出成形装置において、高さを低くすることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形装置は、金型を開閉しつつ型締めする型締装置と、型締めされた金型へ樹脂材料を射出する射出装置とを、主要素とする。
型締め軸が水平であるものは横型射出成形装置と呼ばれ、型締め軸が鉛直であるものは竪型射出成形装置と呼ばれる。
【0003】
竪型射出成形装置は、各種のものが知られている(例えば、特許文献1(
図9)参照。)。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10は従来の竪型射出成形装置の正面図である。
竪型射出成形装置100は、型締め軸101が鉛直であって、金型102を開閉しつつ型締めする型締装置110と、型締めされた金型102へ樹脂材料を射出する射出装置120とを、主要素とする。
【0005】
型締装置110は、機台111に載っている固定盤112と、この固定盤112の上に上下動可能に配置される可動盤113と、この可動盤113から下へ延びて固定盤112を貫通するタイバー114と、このタイバー114を昇降するトグル機構115とからなる。
【0006】
トグル機構115で、タイバー114及び可動盤113が引き下げられると、金型102が型締めされ、タイバー114及び可動盤113が押し上げられると、金型102が開く。
【0007】
射出装置120は、可動盤113の上に配置される加熱筒121と、この加熱筒121を上下に移動する射出機移動シリンダ122と、加熱筒121に内蔵されるスクリュー123と、このスクリュー123を回すスクリュー回転モータ124と、スクリュー123を鉛直軸(型締め軸101)に沿って移動する射出モータ125を、主要素とする。
【0008】
加熱筒121へ投入した樹脂材料は、スクリュー回転モータ124でスクリュー123を回すことで可塑化・計量される。
射出機移動シリンダ122で加熱筒121が下げられ、先端(下端)のノズル126が、金型102に当てられる。
射出モータ125で、スクリュー123が鉛直軸に沿って下げられ、樹脂材料が金型102へ射出される。
【0009】
このような構造の竪型射出成形装置100は、床面積が小さいため、複数機を並べて設置することができなどの理由から、広く採用されている。
ただし、竪型射出成形装置100の高さ(全高)H1は、かなり大きい。既存の建屋に設置できないときは、建屋を新規に建てる、または大幅に改修する必要がある。
【0010】
比較的低い既存の建屋に設置することを考えると、竪型射出成形装置であっても高さを低くすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高さが大幅に低い竪型射出成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、型締め軸が鉛直であり金型を型締めする型締装置と、この型締装置の上に配置され樹脂材料を前記金型へ射出する射出装置とで構成される竪型射出成形装置であって、
前記射出装置は、回転自在のスクリューを内蔵し前記樹脂材料を撹拌しつつ所定の温度に加熱する加熱筒と、この加熱筒に繋がり前記樹脂材料を貯留する材料貯留部材と、この材料貯留部材に設けられ前記金型へ延びるノズルと、前記材料貯留部材に設けられ前記樹脂材料を前記ノズルから射出する射出シリンダとを備え、
前記スクリューのスクリュー軸は、鉛直に延び、
前記射出シリンダのシリンダ軸は、水平に延びており、
前記射出装置は、前記型締装置の上に配置される射出盤と、この射出盤の上方に配置され前記加熱筒及び前記射出シリンダを懸架するスクリュー駆動盤と、前記射出盤及び前記スクリュー駆動盤を上下方向に移動する射出位置決め手段とを、さらに備え、
前記射出位置決め手段は、シリンダと、このシリンダに対して軸方向へ移動するピストンロッドとを備え、
前記シリンダは、前記射出盤に前記スクリュー駆動盤を連結する連結部材を兼ねていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の竪型射出成形装置であって、
前記スクリューの有効長さをL、前記スクリューの外径をDとしたときに、L/Dは、3を超えないことを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の竪型射出成形装置であって、
前記L/Dは、1.0であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれか1項記載の竪型射出成形装置であって、
前記加熱筒は、底に樹脂材料を流出させる出口及びこの出口を開閉する出口弁を備え、この出口弁を出口弁駆動手段で移動するようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1記載の竪型射出成形装置であって、
前記射出シリンダは、プランジャを備え、
前記材料貯留部材は、水平に延びつつ前記プランジャを収納する第1横筒と、この第1横筒の先端から下へ延びる縦筒と、この縦筒の高さ方向途中から前記加熱筒へ延びる第2横筒とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、竪型射出成形装置の射出装置において、加熱筒及びスクリューは鉛直に延びるようにし、射出シリンダは水平に延びるように配置した。
加熱筒を縦置きすることで、樹脂材料の均一加熱を図りつつ液状の樹脂材料を加熱筒の底に溜めることができる。射出シリンダは全体が長い。この長い射出シリンダを横置きすることで、射出装置の高さ寸法を小さくすることができる。
結果、樹脂材料の品質を維持しつつ、射出装置の高さ寸法を小さくすることができる。
すなわち、本発明により、高さが低い竪型射出成形装置が提供される。
加えて、請求項1に係る発明では、射出位置決め手段のシリンダで、射出盤にスクリュー駆動盤を連結する連結部材を兼ねさせた。連結部材を別途設ける場合に比較して、本発明により、部品点数の低減を図りつつ、射出装置の軽量化が図れる。
【0020】
請求項2に係る発明では、スクリューのL/Dは、3を超えないようにした。スクリューの有効長さLを3以下にすることで、射出装置の高さ寸法が大きくなることを防ぐ。
【0021】
請求項3に係る発明では、L/Dは、1.0である。スクリューの有効長さLが1.0であれば、スクリューの長さは十分に短くなり、射出装置の高さ寸法をより小さくすることできる。
【0022】
請求項4に係る発明では、加熱筒は、底に樹脂材料を流出させる出口及びこの出口を開閉する出口弁を備え、この出口弁を出口弁駆動手段で強制的に移動するようにした。
仮に、加熱筒の出口に逆止弁を設けても、樹脂材料の逆流は防ぐことができる。しかし、樹脂材料のカスが逆止弁の要部に堆積すると、逆止弁がリークし、逆流防止作用が低下する。
この点、本発明では、出口弁駆動手段で出口弁を強制的に移動する。強制的に移動される出口弁で、樹脂材料のカスを押出す又は削る。結果、信頼性の高い逆流防止作用が長期間にわたって維持できる。
【0024】
請求項5に係る発明では、材料貯留部材は、水平に延びつつプランジャを収納する第1横筒と、この第1横筒の先端から下へ延びる縦筒と、この縦筒の高さ方向途中から加熱筒へ延びる第2横筒とを備えている。
加熱筒の高さ方向途中に、射出シリンダを横置きすることができ、射出装置をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る竪型射出成形装置の全体構成を示す図である。
【
図9】竪型射出成形装置の高さを説明する図である。
【
図10】従来の竪型射出成形装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、シリンダにおいて、「伸動」は、ピストンロッドを前進させてシリンダ全長が伸びることを意味し、「縮動」はピストンロッドを後退させてシリンダ全長が縮むことを意味する。
【0028】
図1に示すように、竪型射出成形装置10は、型締め軸20aが鉛直であって、下型13と上型14とからなる金型12を型締めする型締装置20と、この型締装置20の上に配置される射出装置50とを、主要素とする装置である。
【0029】
型締装置20は、床(又は機台)16に固定されるベッド21と、このベッド21に固定される圧受盤22と、この圧受盤22に載せられるターンテーブル23と、圧受盤22より下に配置され圧受盤22に設けたハーフナット位置調整手段24で昇降される牽引盤25と、牽引盤25の下に配置されるハーフナット26と、圧受盤22より上に配置され圧受盤22に設けた型開閉手段27で昇降される可動盤28と、この可動盤28から下げられ圧受盤22及び牽引盤25を貫通するタイバー31と、ハーフナット位置調整手段24や型開閉手段27等へ圧油を制御しつつ供給するポンプモータユニット32を備えている。
【0030】
ハーフナット位置調整手段24は、ハーフナット位置調整油圧シリンダ24Aが好適である。同様に、型開閉手段27は、型開閉油圧シリンダ27Aが好ましい。
【0031】
なお、圧受盤22は、ボルト等を緩めることでベッド21から外すことができる。よって、本発明における「固定」は、完全固定の他、分離可能に結合されている形態を含む。
また、ハーフナット位置調整手段24や型開閉手段27を、ベッド21に設けることは差し支えない。
【0032】
牽引盤25は、例えば、上に開口する型締シリンダ33を有する。この型締シリンダ33に圧受盤22から下へ延びるピストン部34を収納する。型締シリンダ33とピストン部34との間に圧油室35が形成される。圧油室35に圧油が供給されると、牽引盤25が下がる。
【0033】
タイバー31は、下端部に係合部36が設けられている。この係合部36は、例えば、鋸歯部である。以下、係合部36を鋸歯部36と読み替える。
ハーフナット26は係合部としての鋸歯部36に係合する(噛み合う)半割ナットである。ハーフナット26は、牽引盤25に設けたハーフナット開閉手段37で開閉される。ハーフナット開閉手段37はハーフナット開閉油圧シリンダ37Aが好ましい。
【0034】
鋸歯部36は、歯が竹の節(ふし)のように、等ピッチで並んでいるものが好ましい。歯は、矩形断面、台形断面、三角断面の何れでもよい。ハーフナット26には対応する歯が設けられている。
【0035】
タイバー31及びハーフナット26は、丈夫で硬い鋼で造られる。鋼同士の接触を円滑にするため、鋸歯部36とハーフナット26との間にグリース潤滑を施す。鋸歯部36より高い位置にて、タイバー31の外周面に給脂する。グリースは流れ落ちて、鋸歯部36に達する。給脂は、自動、手動の何れでもよい。
【0036】
好ましくは、ハーフナット26の作動を監視するハーフナット作動監視機構38を、ハーフナット26の近傍に設ける。しかし、型開閉手段27及びハーフナット位置調整手段24の位置制御が精密に行えることを条件に、ハーフナット作動監視機構38を省くことは差し支えない。
【0037】
ハーフナット作動監視機構38は、近接スイッチ、リミットスイッチなど任意のセンサが使用できる。そのうちで、近接スイッチは、相手金属が一定距離内に接近したときに「物体あり」、相手金属が一定距離を超えて離れているときに「物体なし」と判別する非接触型センサである。ハーフナット26は廃グリースで濡れているが、非接触型センサであれば、誤検出の心配がない。その上、安価である。よって、近接スイッチが推奨される。
【0038】
好ましくは、ハーフナット26の下に且つ床16上に、廃グリースを受けるトレイ41を配置する。トレイ41は皿状の容器である。定期的又は随時、トレイ41を引き出し、溜まった廃グリースを処理することにより、床16上の汚れを防止する。
【0039】
好ましくは、ベッド21をカバー42で囲う。このカバー42は安全カバーの役割を果たす。ベッド21をカバー42で囲うことにより、型締装置20の外観性が高まる。ただし、安全柵等で代替できるため、カバー42は必須ではない。
【0040】
図2は、
図1の2-2矢視図である。
図2に示すように、タイバー31は、三角形の頂点に各々配置されている。うち、1本のタイバー31が、ターンテーブル23の回転中心を構成する。
製品取り出し位置17にて、下型13から樹脂成形品を取り出す。空になった下型13はターンテーブル23を180°回転させることにより、型締め位置18に移される。
製品取り出し作業と型締め作業とが並行して行えるため、ターンテーブル23を採用することにより、生産性を高めることができる。
【0041】
ただし、ターンテーブル23は、型締め位置18と製品取り出し位置17とを往復する往復台に代えることができる。この場合は、タイバー31は、4本にすることが望ましい。
または、ターンテーブル23や往復台を省いてもよい。この場合も、タイバー31は、4本にすることが望ましい。
【0042】
よって、型締装置20において、タイバー31の本数は自由に決めることができると共にターンテーブル23を設けるか否かや往復台を設けるか否かは任意である。
【0043】
図1の型締装置20において、ハーフナット26を開いて、鋸歯部36から分離する。次に、型開閉手段27を伸動して、可動盤28を上昇させる。可動盤28が上昇することに伴って、下型13から上型14が分離すると共にタイバー31が上昇する。
【0044】
次に、射出装置50を説明する。
図3に示すように、射出装置50は、可動盤28の上方に可動盤28から所定の距離を保って配置される射出盤51と、ピストンロッド52aが下へ延びるようにして射出盤51に固定される射出位置決め手段52と、この射出位置決め手段52のシリンダ52bで連結されるようにして射出盤51の上方に射出盤51から一定の距離を保って配置されるスクリュー駆動盤53と、このスクリュー駆動盤53に取付けられる射出シリンダ54、スクリュー回転モータ55及び加熱筒56と、射出シリンダ54及び加熱筒56に架け渡され下端にノズル57を備えている材料貯留部材58とを、主要素とする。
【0045】
射出シリンダ54は、ボルト等によりスクリュー駆動盤53に固定されている。なお、射出シリンダ54と下の射出盤51との間に脚(またはスペーサや座)を噛ませて、射出シリンダ54を下位の射出盤51にも固定することは差し支えない。
射出シリンダ54は剛性に富む強度部材であるため、射出盤51とスクリュー駆動盤53との連結部材となる。
【0046】
射出シリンダ54は、ピストン61を内蔵し、ピストン61の一面からプランジャ62が材料貯留部材58内まで延びている。また、ピストン61の他面からロッド63がシリンダ外まで延びている。このロッド63は計量センサ64で位置が監視される。すなわち、プランジャ62が後退して、樹脂材料の「計量」が完了したことを、ロッド63及び計量センサ64で検知する。
【0047】
射出シリンダ54は、油圧シリンダが好適であり、シリンダ軸54aが水平になるように配置される。射出シリンダ54は、ピストンロッド(プランジャ62)を含めると全体が長くなる。この長い射出シリンダ54を横置きすることで、射出盤51からスクリュー駆動盤53までの高さ寸法を小さくすることができる。
【0048】
スクリュー回転モータ55はサーボモータが好適である。スクリュー回転モータ55のモータ軸に小径プーリ65が設けられ、スクリュー66に大径プーリ67が設けられ、プーリ間にベルト68が渡されている。大径プーリ67のプーリ経は、小径プーリ65のプーリ経の5~10倍とする。すると、減速比が1/5~1/10となり、低速でスクリュー66が回される。ベルト68はタイミングベルトが好適である。
【0049】
加熱筒56は、軸(スクリュー軸66a)が鉛直になるようにして、ボルト等によりスクリュー駆動盤53に固定されている。
また、スクリュー66は軸受71を介して、スクリュー駆動盤53に回転自在に取付けられている。なお、スクリュー66は、所定距離だけ軸方向(上下方向)へ移動が可能となるようにしてもよい。
【0050】
加熱筒56は、ホッパ72を備え、このホッパ72を用いて、加熱筒56内へ樹脂材料が投入される。なお、ホッパ72は、大径プーリ67及びベルト68と干渉しない部位に配置されている。
【0051】
図3では、ノズル57が金型(
図1、符号12)にタッチしている。この状態から、射出位置決め手段52を伸動させる。すると、可動盤28に対して、射出盤51等が離れるように、上へ移動する。結果、
図4に示すように、ノズル57が金型から十分に離れる。射出位置決め手段52を縮動すると、
図3に戻る。
なお、
図4は、
図3の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
【0052】
また、射出位置決め手段52のシリンダ52bで、射出盤51にスクリュー駆動盤53を連結する連結部材を兼ねさせた。連結部材を別途設ける場合に比較して、本実施例により、部品点数の低減を図りつつ、射出装置50の軽量化が図れる。
【0053】
材料貯留部材58と、スクリュー66との詳細を、
図5に基づいて説明する。
図5に示すように、材料貯留部材58は、水平に延びつつプランジャ62を収納する第1横筒74と、この第1横筒74の先端から下へ延びつつシャット弁75を収納する縦筒76と、この縦筒76の高さ方向途中から加熱筒56へ延びる第2横筒77とからなる。
【0054】
加熱筒56の高さ方向途中の高さに、プランジャ62を横置きすることができる。すなわち、
図4に示すように、加熱筒56の高さ方向途中に、射出シリンダ54を横置きすることができ射出装置50の高さ寸法を小さくすることができる。
【0055】
図5に示すように、加熱筒56の外周に、ヒータ78が巻かれており、このヒータ78で、加熱筒56が所定の温度に保たれる。
また、材料貯留部材58の外周に、加熱ヒータ84が巻かれており、この加熱ヒータ84で、材料貯留部材58が所定の温度に保たれる。
【0056】
縦筒76の上面にシャット弁駆動手段79が設けられており、このシャット弁駆動手段79でシャット弁75が弁閉位置から弁開位置へ移動される。
【0057】
圧受けブロック89をスクリュー駆動盤53から下ろし、この圧受けブロック89で、材料貯留部材58(特に縦筒76)が、上方へ移動することを防ぐ。ノズル57が金型(
図1、下型14)にタッチしたときの背圧(又は上向き力)を、圧受けブロック89で受けさせることができる。
【0058】
加熱筒56の底には、出口56c及び第2横筒77に繋がる出口通路81が設けられ、この出口通路81に、出口弁82が置かれる。この出口弁82は、出口弁駆動手段83で出口弁82が弁閉位置から弁開位置へ移動される。
【0059】
仮に、加熱筒56の出口56cに汎用の逆止弁を設けても、樹脂材料の逆流は防ぐことができる。しかし、樹脂材料のカスが逆止弁の要部に堆積すると、逆止弁がリークし、逆流防止作用が低下する。
この点、本実施例では、出口弁駆動手段83で出口弁82を強制的に移動する。強制的に移動される出口弁82で、樹脂材料のカスを押出す又は削る。結果、信頼性の高い逆流防止作用が長期間にわたって維持できる。
【0060】
スクリュー66は、超短尺スクリューであって、有効長さをL、外径をDとしたときに、L/Dは、実施例では、L/Dを約1.0とした。
すなわち、スクリュー66の外周に設けた螺旋溝の長さを確保しつつ、LとDとを決めた。
スクリュー66のL/Dが1.0であれば、スクリュー66の長さは十分に短く、射出装置50の高さ寸法をより小さくすることできる。
【0061】
従来、射出装置に使用されるスクリューは、L/Dが10~20であり、外径Dは小径である。小径で長いスクリューを、高速で回転させる。
対して、本発明に係るスクリュー66では、外径Dはかなり大きく、長さLはかなり短い。
【0062】
樹脂材料は、スクリュー66が外周に形成した螺旋溝に沿って移動する。スクリュー66の周速は外径Dに正比例する。従来と本発明との周速を一致させる場合、本発明に係るスクリュー66は、十分に低速で回転させることができる。
【0063】
なお、スクリュー66のL/Dは、1.0に限定するものではない。
本発明者らが検討したところでは、L/Dは、0.5~3.0の範囲であれば、採用できる。L/Dが0.5未満では、有効長さLが小さくなり、外周に十分な条数の螺旋溝が形成できなくなる。また、L/Dが3.0を超えると、
図4に示す射出盤51とスクリュー駆動盤53との間隔を広くする必要があり、射出装置50の高さ寸法が許容高さから外れる。
よって、スクリュー66のL/Dは、0.5~3.0の範囲とし、好ましくは1.0とする。
【0064】
また好ましくは、スクリュー66の先端(下端)を円錐面とし、この円錐面に渦巻溝を設けてもよい。回転する渦巻溝で、加熱筒56の底に溜まった液状の樹脂材料に旋回力を付与することができる。旋回力により、液状の樹脂材料がさらに攪拌され、温度のさらなる均一化と材料のさらなる均質化とが図れる。
【0065】
次に、スクリュー66を縦向きに配置する理由を、
図6に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、スクリュー軸66aが水平になるように、スクリュー66及び加熱筒56を配置した(比較例)を検討する。
第1に、加熱筒56において、下部分56aに対して、上部分56bが高温になる。すなわち、上下方向で温度差が不可避的に発生する。結果、樹脂材料に温度むらが発生し、好ましくない。
第2に、樹脂材料は、固体であったものが、加熱されつつ混錬・圧縮されることで、軟化し、液状材料になる。この液状材料が、加熱筒56の下部56a付近に溜まる。加熱筒56の出口56cから、円滑に出すことが難しくなる。
【0066】
図6(b)に示すように、スクリュー軸66aが鉛直になるように、スクリュー66及び加熱筒56を配置した(実施例)を検討する。
第1に、樹脂材料は加熱筒56に投入された後、加熱、混錬・圧縮されつつ出口56cに向かって流下する。スクリュー軸66aに沿った上部分と下部分とでは温度差が発生するが、スクリュー軸66aに直交する面では、温度差は発生しない。よって、樹脂材料に温度むらが発生しない。
第2に、液状材料は、加熱筒56の底に溜まる。加熱筒56の出口56cから、円滑に出すことが容易になる。
以上により、スクリュー軸66aは、鉛直に配置することが好ましい。
【0067】
図3において、スクリュー軸66aが鉛直になるように配置した理由は
図6で述べた通りである。
また、
図3において、射出シリンダ54は、長く突き出ているプランジャ62(及びロッド63)を考慮すると、全長は横に長い。長い射出シリンダ54を、軸が水平になるようにして配置することにより、射出装置50の高さ寸法を小さくすることができる。
スクリュー66においても、L/Dを3以下に留めて、長さLを小さくしたことにより、軸が鉛直になるように配置したにも拘わらず、射出装置50の高さ寸法を小さくすることができる。
【0068】
図5の7-7線断面を展開した図を、
図7に示す。
好ましくは、加熱筒56に、上下に蛇行するカム溝85を設ける。蛇行の高さ(振幅)Wは、
図5に示すスクリュー66の螺旋溝の1ピッチを基準とする。Wは、(0.2~1.0)×螺旋溝ピッチの範囲から設定してもよい。
スクリュー66にピン86を設け、このピン86を、例えば、
図7に示す切欠き87からカム溝85に落とし込み、次に、切欠き87をリッド88で塞ぐようにしてもよい。
【0069】
スクリュー66は、一回転する間、ピン86が、「0°→180°→360°」と移動する。結果、スクリュー66はWだけ上下、すなわち、スクリュー軸66aに沿って移動する。
スクリュー66による螺旋運動に、この軸方向運動が加わることで、樹脂材料のより好ましい混錬が得られる。
したがって、カム溝85は、必須ではないが、設けることが望まれる。
【0070】
以上の構成からなる射出装置50の作用を、
図8に基づいて説明する。
図8のST01(ステップ番号01。以下同様)で、出口弁を開く。すなわち、
図5で、出口弁82を移動して出口56cを開く。
ST02で、シャット弁を閉じる。すなわち、
図5で、シャット弁75を移動してノズル57を閉じる。
ST03で、射出シリンダの背圧制御を実施する。すなわち、
図1で、ポンプモータユニット32により、プランジャに所定の反力(抵抗力)が加わるように、射出シリンダ54の背圧制御を開始する。
【0071】
ST04で、スクリューを回転しつつ樹脂材料を可塑化する。
図5において、樹脂材料は出口56c、出口通路81、第2横筒77、縦筒76の順に流れて、これらに充満する。この充満により、プランジャ62が徐々に後退(図右へ移動)する。プランジャ62の断面積×プランジャ62の移動距離=計量値の算式により、樹脂材料が計量される。計量値が所定値になったら、計量が完了し、背圧制御も終了する。
【0072】
ST05で、計量完了を調べ、計量が完了したら、出口弁を閉じる(ST06)。
ST07で、型締めが完了していることを確認し、確認ができたら、シャット弁を開く(ST08)。
シャット弁75が開けられ、プランジャ62は前進し、樹脂材料をノズル57から射出する(ST09)。
ST10で、射出が終了したことが確認できたら、シャット弁を閉じる(ST11)。
【0073】
次に、本発明に係る竪型射出成形装置10の利点を、
図9に基づいて説明する。
図9(a)に従来の竪型射出成形装置100を示す。
図9(b)に本発明に係る竪型射出成形装置10を示す。
竪型射出成形装置10の高さH2は、従来の竪型射出成形装置100の高さH1のほぼ1/2である。
高さが1/2であれば、本発明に係る竪型射出成形装置10は、天井高さが低い建屋や既存の建屋に、容易に設置することができる。
【0074】
また、
図9(a)に示す従来の型締装置110は、トグルリンク方式である。対して、
図9(b)に示す型締装置20はハーフナット方式である。トグルリンク方式より、ハーフナット方式の方が、高さ寸法を小さくすることができる。
この方式の違いが、竪型射出成形装置10の高さを低くすることに、寄与している。
【0075】
尚、ハーフナット位置決め手段24、型開閉手段27、ハーフナット開閉手段37は、油圧シリンダが好適であるが、ボールねじと電動モータとを組合わせてなる電動シリンダであってもよい。
同様に、射出位置決め手段52、シャット弁駆動手段79、出口弁駆動手段83は、油圧シリンダが好適であるが、ボールねじと電動モータとを組合わせてなる電動シリンダであってもよい。
【0076】
ハーフナット位置決め手段24、型開閉手段27、ハーフナット開閉手段37、射出位置決め手段52、シャット弁駆動手段79、出口弁駆動手段83が油圧シリンダである場合は、
図1に示すように、これらはポンプモータユニット32で制御される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、竪型射出成形装置に好適である。
【符号の説明】
【0078】
10…竪型射出成形装置、20…型締装置、20a…型締め軸、50…射出装置、51…射出盤、52…射出位置決め手段、52a…ピストンロッド、52b…シリンダ、53…スクリュー駆動盤、54…射出シリンダ、54a…シリンダ軸、56…加熱筒、56c…出口、57…ノズル、58…材料貯留部材、62…プランジャ、66…スクリュー、66a…スクリュー軸、74…第1横筒、76…縦筒、77…第2横筒、82…出口弁、83…出口弁駆動手段、D…スクリューの外径、L…スクリューの有効長さ、H2…竪型射出成形装置の高さ。