(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】患者インタフェースシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021132247
(22)【出願日】2021-08-16
(62)【分割の表示】P 2018502697の分割
【原出願日】2016-07-18
【審査請求日】2021-09-03
(32)【優先日】2015-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ハリー・フィンチ
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/013761(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0014007(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲空気圧力に対して連続的な陽圧において少なくとも患者の鼻孔入口を含む患者の気道への入口へ密閉された様態で空気流れを送達するための患者インターフェースであって、当該患者インターフェースは、使用時において患者の睡眠時の患者の呼吸サイクル全体において周囲空気圧力よりも約4cmH
2O~約30cmH
2Oの範囲高い治療圧力を維持し、睡眠時呼吸障害が改善されるように構成され;
当該患者インターフェースは:
患者の鼻および/または口腔の周囲のシールを形成するように適合されたクッションアセンブリであって、使用時において周囲圧力を超える治療圧力で加圧されるプレナムチャンバを規定する、クッションアセンブリと;
患者が呼息したCO
2の再呼吸を最小化させるために、患者が呼息したCO
2が当該患者インターフェースの外部へ流れることを可能にするように構成されたガス逃がし孔と;
患者の気道と前記ガス逃がし孔との間で、前記プレナムチャンバ内に設けられた熱/水分交換器と;
前記熱/水分交換器の前側に設けられた少なくとも1つの漏洩ポートと;
前記プレナムチャンバの内容積を低減させるように前記プレナムチャンバ内に設けられた少なくとも1つの隔壁部材と、を含み、
少なくとも1つの前記隔壁部材は、前記プレナムチャンバを主要チャンバと少なくとも1つの周辺チャンバに分離し、前記主要チャンバが前記治療圧力を伝達するための前記プレナムチャンバの主要体積を含み、前記周辺チャンバが前記プレナムチャンバのデッドスペース体積を含み、
前記主要体積が、少なくとも患者の鼻孔入口、前記熱/水分交換器、および、ガス逃がし孔と直接流体連通するように構成され、
少なくとも1つの前記漏洩ポートは、すべての吸気流れが少なくとも1つの前記周辺チャンバ内に流れ込むことを可能にし、少なくとも1つの前記周辺チャンバ内に流れ込む前に前記熱/水分交換器をバイパスするように構成されていることを特徴とする、患者インターフェース。
【請求項2】
少なくとも1つの前記隔壁部材が、患者の顔から離間するように適合された端部を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項3】
少なくとも1つの前記隔壁部材は、患者の呼吸サイクル全体を通して患者の吸気および患者の呼気が前記主要体積を介して生じるように流れを方向付けるように構成および配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の患者インターフェース。
【請求項4】
少なくとも1つの前記隔壁部材は、前記熱/水分交換器を通って少なくとも1つの前記周辺チャンバから離れるように吸気流を方向付けるように構成および配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項5】
少なくとも1つの前記隔壁部材は、前記熱/水分交換器を通って少なくとも1つの前記周辺チャンバから患者の気道に向かってすでに流れている吸気流を方向付けるように構成および配置されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項6】
少なくとも1つの前記漏洩ポートは、呼気流が少なくとも1つの前記周辺チャンバに流入する前に、すべての呼気流が、前記熱/水分交換器を通過して少なくとも1つの前記周辺チャンバへ流入することを可能にするように配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項7】
前記熱/水分交換器からの水分損失を制限するように、少なくとも1つの前記漏洩ポートが配置されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項8】
少なくとも1つの前記隔壁部材は、患者によって再呼吸されるCO
2の量を減らすように配置されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項9】
少なくとも1つの前記隔壁部材は、前記シールを変更することなく前記プレナムチャンバの前記内容積を減少させるように配置されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項10】
少なくとも1つの前記隔壁部材は、前記熱/水分交換器が加熱および加湿する前記主要チャンバの容積を減らすように配置されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項11】
前記デッドスペース体積は、患者の鼻孔入口より上方に設けられていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項12】
前記デッドスペース体積は、患者の口腔入口の下方に設けられていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項13】
少なくとも1つの前記隔壁部材は、患者の鼻孔の上に概して位置するように適合された上部周辺チャンバを確立するように配置された、上部または上方隔壁部材を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項14】
少なくとも1つの前記漏洩ポートは、前記上部周辺チャンバと連通するように適合された上部または上方漏洩ポートを含むことを特徴とする、請求項13に記載の患者インターフェース。
【請求項15】
少なくとも1つの前記隔壁部材は、患者の下唇の下に概して位置するように適合された下部周辺チャンバを確立するように配置された、下部または下部隔壁部材を含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項16】
少なくとも1つの前記漏洩ポートは、前記下部周辺チャンバと連通するように適合された下部または下方漏洩ポートを含むことを特徴とする、請求項15に記載の患者インターフェース。
【請求項17】
前記熱/水分交換器は、前記クッションアセンブリの前壁部位によって支持さられていることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項18】
周囲空気圧力に対して連続的な陽圧において少なくとも患者の鼻孔入口を含む患者の気道への入口へ密閉された様態で空気流れを送達するための患者インターフェースであって、当該患者インターフェースは、使用時において患者の睡眠時の患者の呼吸サイクル全体において周囲空気圧力よりも約4cmH
2O~約30cmH
2Oの範囲高い治療圧力を維持し、睡眠時呼吸障害が改善されるように構成され;
当該患者インターフェースは:
患者の鼻および/または口腔の周囲のシールを形成するように適合されたクッションアセンブリであって、使用時において周囲圧力を超える治療圧力で加圧されるプレナムチャンバを規定する、クッションアセンブリと;
患者が呼息したCO
2の再呼吸を最小化させるために、患者が呼息したCO
2が当該患者インターフェースの外部へ流れることを可能にするように構成されたガス逃がし孔と;
患者の気道と前記ガス逃がし孔との間で、前記プレナムチャンバ内に設けられた熱/水分交換器と;
前記熱/水分交換器の前側に設けられた少なくとも1つの加圧ポートと;
前記プレナムチャンバの内容積を低減させるように前記プレナムチャンバ内に設けられた少なくとも1つのシール部材と、を含み、
少なくとも1つの前記シール部材は、前記プレナムチャンバを主要チャンバと少なくとも1つの周辺チャンバに分離し、前記主要チャンバが前記治療圧力を伝達するための前記プレナムチャンバの主要体積を含み、前記周辺チャンバが前記プレナムチャンバのデッドスペース体積を含み、
前記主要体積が、少なくとも患者の鼻孔入口、前記熱/水分交換器、および、ガス逃がし孔と直接流体連通するように構成され、
少なくとも1つの前記加圧ポートは、前記主要チャンバとは独立して、少なくとも1つの前記周辺チャンバの加圧を可能にするように構成されていることを特徴とする、患者インターフェース。
【請求項19】
少なくとも1つの前記シール部材が、患者の顔とシールを形成するように適合された端部を備えていることを特徴とする、請求項
18に記載の患者インターフェース。
【請求項20】
少なくとも1つの前記シール部材が変形および/または屈曲して患者の顔に一致することを可能にするように、少なくとも1つの前記シール部材は比較的柔軟であることを特徴とする、請求項
18または
19に記載の患者インターフェース。
【請求項21】
少なくとも1つの前記シール部材は、患者の呼吸サイクル全体を通して患者の吸気および患者の呼気が前記主要体積を介して生じるように、前記主要体積と前記デッドスペース体積との間の流れを妨げるように構成および配置されていることを特徴とする、請求項
18~
20のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項22】
少なくとも1つの前記シール部材は、前記熱/水分交換器を通って少なくとも1つの前記周辺チャンバから離れるように吸気流を方向付けるように構成および配置されていることを特徴とする、請求項
18~
21のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項23】
少なくとも1つの前記シール部材は、前記熱/水分交換器を通って少なくとも1つの前記周辺チャンバから患者の気道に向かってすでに流れている吸気流を方向付けるように構成および配置されていることを特徴とする、請求項
18~
22のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項24】
少なくとも1つの前記加圧ポートは、呼気流が少なくとも1つの前記周辺チャンバに流入する前に、すべての呼気流が、前記熱/水分交換器を通過して少なくとも1つの前記周辺チャンバへ流入することを可能にするように配置されていることを特徴とする、請求項
18~
23のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項25】
少なくとも1つの前記加圧ポートは、呼気流が少なくとも1つの前記周辺チャンバに流入する前に、すべての呼気流が、前記熱/水分交換器をバイパスして少なくとも1つの前記周辺チャンバへ流入することを可能にするように配置されていることを特徴とする、請求項
18~
24のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項26】
前記熱/水分交換器からの水分損失を制限するように、少なくとも1つの前記加圧ポートが配置されていることを特徴とする、請求項
18~
25のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項27】
少なくとも1つの前記シール部材は、患者によって再呼吸されるCO
2の量を減らすように配置されていることを特徴とする、請求項
18~
26のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項28】
少なくとも1つの前記シール部材は、前記シールを変更することなく前記プレナムチャンバの前記内容積を減少させるように配置されていることを特徴とする、請求項
18~
27のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項29】
少なくとも1つの前記シール部材は、前記熱/水分交換器が加熱および加湿する前記主要チャンバの容積を減らすように配置されていることを特徴とする、請求項
18~
28のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項30】
前記デッドスペース体積は、患者の鼻孔入口より上方に設けられていることを特徴とする、請求項
18~
29のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項31】
前記デッドスペース体積は、患者の口腔入口の下方に設けられていることを特徴とする、請求項
18~
30のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項32】
少なくとも1つの前記シール部材は、患者の鼻孔の上に概して位置するように適合された上部周辺チャンバを確立するように配置された、上部または上方シール部材を含むことを特徴とする、請求項
18~
31のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項33】
少なくとも1つの前記加圧ポートは、前記上部周辺チャンバと連通するように適合された上部または上方加圧ポートを含むことを特徴とする、請求項
32に記載の患者インターフェース。
【請求項34】
少なくとも1つの前記シール部材は、患者の下唇の下に概して位置するように適合された下部周辺チャンバを確立するように配置された、下部または下部シール部材を含むことを特徴とする、請求項
18~
33のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【請求項35】
少なくとも1つの前記加圧ポートは、前記下部周辺チャンバと連通するように適合された下部または下方加圧ポートを含むことを特徴とする、請求項
34に記載の患者インターフェース。
【請求項36】
前記熱/水分交換器は、前記クッションアセンブリの前壁部位によって支持されていることを特徴とする、請求項
18~
35のいずれか一項に記載の患者インターフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 関連出願の相互参照
本出願は、2015年7月20日に出願された米国仮出願第62/194、451号の恩恵を主張する。本明細書中、同文献それぞれの全体を参考のため援用する。
【背景技術】
【0002】
2 技術の背景
2.1 技術の分野
本技術は、呼吸関連疾患の検出、診断、治療、防止および改善のうち1つ以上に関する。本技術はまた、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する。
【0003】
2.2 関連技術の説明
2.2.1 ヒトの呼吸系およびその疾患
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進させる。鼻および口腔は、患者の気道への入口を形成する。
【0004】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、伝導のための気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の肺胞領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸ゾーンと呼ぶ。以下を参照されたい:「Respiratory Physiology」, by John B. West, Lippincott Williams & Wilkins, 9th edition published 2011。
【0005】
一定範囲の呼吸疾患が存在している。特定の疾患は、特定の発症(例えば、無呼吸、呼吸低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0006】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の1つの形態であり、睡眠時の上通気道の閉鎖または閉塞などの発症によって特徴付けられる。睡眠時の異常に小さな上側気道および舌領域における筋緊張の正常欠損、軟口蓋および後中咽頭壁の組み合わせに起因する。このような状態に起因して、患者の呼吸停止が典型的には30~120秒にわたり、ときには一晩に200~300回も呼吸が停止する。その結果、日中の眠気が過度になり、心血管疾患および脳損傷の原因になり得る。この症候は一般的な疾患であり、特に中年の過体重の男性に多いが、患者に自覚症状は無い。米国特許第4、944、310号(Sullivan)を参照されたい。
【0007】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、別の形態の睡眠呼吸障害である。CSRは、患者の呼吸調節器の疾患であり、CSRサイクルとして知られる換気の漸増および漸減が交互に周期的に続く。CSRは、動脈血の脱酸素および再曝気の繰り返しによって特徴付けられる。CSRは、低酸素の繰り返しに起因して有害になる可能性がある。患者によっては、CSRに関連して睡眠から何度も目覚める者もおり、不眠が深刻化し、交感神経作用が増加し、後負荷が増加する。米国特許第6、532、959号(Berthon-Jones)を参照されたい。
【0008】
呼吸不全とは、呼吸器障害の総称であり、患者の需要を満たすための充分な酸素吸気または充分なCO2呼気を肺が行うことができていないことを指す。呼吸不全は、以下の疾患のうちいくつかまたは全てを包含し得る。
【0009】
呼吸不全(一種の呼吸不全)の患者は、運動時に異常な息切れを経験することがある。
【0010】
肥満過換気症候群(OHS)は、低換気の原因が他に明確に無い状態における、深刻な肥満および覚醒慢性高炭酸ガス血症の組み合わせとして定義される。症状を挙げると、呼吸困難、起床時の頭痛および日中の過度の眠気がある。
【0011】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の共通する特性を有する下部気道疾患のグループのうちのいずれも包含する。そのような特性を挙げると気動に対する抵抗増加、呼吸の呼気相の増加、および肺の通常の弾性の喪失がある。COPDの実施例として、気腫および慢性気管支炎がある。COPDの原因としては、慢性喫煙(第一危険因子)、職業被ばく、空気汚染および遺伝因子がある。症状を挙げると、労作時の呼吸困難、慢性咳および痰生成がある。
【0012】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理を直接介してまたは神経病理を間接的に介して筋肉機能を損なう多数の疾病および病気を包含する広範な用語である。NMD患者の中には、進行性の筋肉障害によって特徴付けられる者もあり、結果的に歩行不可能、車椅子への束縛、嚥下困難、呼吸筋肉の弱体化に繋がり、最終的には呼吸不全による死亡に繋がる。神経筋肉障害は、以下の急速進行性と緩徐進行性とに区分され得る:(i)急速進行性障害:数ヶ月かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、数年内に死亡に繋がる(例えば、ティーンエージャーにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD));(ii)可変性または緩徐進行性障害:数年かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、平均余命が若干低減するだけである(例えば、肢帯、顔面肩甲上腕型および筋緊張性筋ジストロフィー)。NMDにおける呼吸不全症状を以下に挙げる:全般的衰弱の増加、嚥下障害、労作および安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、および集中および気分の変化の困難。
【0013】
胸壁障害は、胸郭変形の1つのグループであり、呼吸筋肉と胸郭との間の連結の無効性の原因となる。これらの障害は、拘束性障害によって主に特徴付けられ、長期の炭酸過剰性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症および/または脊柱後側弯症は、深刻な呼吸不全を引き起こし得る。呼吸不全の症状を以下に挙げる:労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性胸部感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質の低下、および食欲不振。
このような状態を治療または改善するために、一定範囲の治療が用いられている。さらに、その他の点では健康な個人も、呼吸疾患の予防治療を有利に利用することができる。しかし、これらにおいては、複数の欠陥がある。
【0014】
2.2.2 治療法
経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)療法が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療において用いられている。その作用機構としては、例えば軟口蓋および舌を押して後中咽頭壁へ前進または後退させることにより、経鼻的持続陽圧呼吸療法が空気スプリントとして機能し、これにより上側気道の閉鎖を回避する。CPAP治療によるOSAの治療は自発的なものであり得るため、このような患者が治療の提供に用いられるデバイスについて以下のうち1つ以上に気づいた場合、患者が治療を遵守しないことを選択する可能性がある:不快、使用困難、高価、美観的な魅力の無さ。
【0015】
非侵襲的換気(NIV)は、換気補助を上気道を通じて患者へ提供して、呼吸機能の一部または全体を行うことにより患者の呼吸の補助および/または身体中の適切な酸素レベルの維持を提供する。換気補助が、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0016】
侵襲的換気(IV)は、自身で有効に呼吸することができなくなった患者に対して換気補助を提供し、気道開口チューブを用いて提供され得る。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0017】
2.2.3 治療システム
これらの治療は、治療システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、症状を治療することなく診断するためにも、用いられ得る。
【0018】
治療システムは、呼吸圧力療法デバイス(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフェース、およびデータ管理を含み得る。
【0019】
別の形態の治療システムとして、下顎再位置決めデバイスがある。
【0020】
2.2.3.1 患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することにより呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するために、用いられ得る。空気流れは、鼻および/または口腔へのマスク、口腔への管、または患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域との密閉部を形成し得、これにより、療法実行のための雰囲気圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば雰囲気圧力に対して約10cmH2Oの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmH2Oの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。
【0021】
特定の他のマスクシステムは、本分野において機能的に不適切であり得る。例えば、純然たる装飾目的のマスクの場合、適切な圧力を維持することができない場合がある。水中水泳またはダイビングに用いられるマスクシステムは、外部からのより高い圧力からの水侵入から保護することと、周囲よりも高い圧力において内部の空気を維持しないこととを行うように、構成され得る。
【0022】
特定のマスクは、本技術において臨床的に好ましく無い場合があり得る(例えば、マスクが鼻を介して気流を遮断し、口を介した気流のみを通過させる場合)。
【0023】
特定のマスクにおいて、患者がマスク構造の一部を口に挿入し、唇を介して密閉状態を生成および維持しなければならない場合、本技術において不快であるかまたは非実際的である場合がある。
【0024】
特定のマスクは、睡眠時(例えば、横向きにベッドに寝て枕の上に頭を置いた状態で睡眠する場合)における使用においては非実際的である場合がある。
【0025】
患者インターフェースの設計においては、複数の課題がある。顔は、複雑な三次元形状を有する。鼻および頭のサイズおよび形状は、個人によって大きく異なる。頭部には骨、軟骨および軟組織が含まれるため、顔の異なる領域は、機械的力に対して異なる反応を示す。すなわち、顎部または下顎は、頭蓋骨の他の骨に相対して動き得る。頭部全体は、呼吸治療期間を通じて動き得る。
【0026】
これらの課題に起因して、いくつかのマスクの場合、特に装着時間が長い場合または患者がシステムに不慣れである場合、押しつけがましい、美観的に望ましくない、コストが高い、フィット感が悪い、使用が困難、および不快感があるなどの理由のうち1つ以上がある。誤ったサイズのマスクが用いられた場合、適応性の低下、快適性の低下および患者予後の低下に繋がり得る。飛行士専用のマスク、個人用保護装具(例えば、フィルターマスク)、SCUBAマスクの一部として設計されたマスク、または麻酔投与用マスクは、その元々の用途には耐えられるものの、このようなマスクの場合、長時間(例えば、数時間)にわたって装着するには望ましくないほど不快な場合がある。このような不快感に起因して、治療に対する患者の承諾が低下する可能性がある。これは、マスクを睡眠時に装着する必要がある場合、特に当てはまる。
【0027】
CPAP治療は、患者が治療を承諾している場合、特定の呼吸疾患の治療においては極めて効果的である。マスクが不快である場合または使用が難しい場合、患者は、治療を承諾しない場合がある。患者はマスクを定期的に洗浄するよう推奨されることが多いため、マスクの清浄が難しい(例えば、組立または分解が困難である場合)、患者は、マスクを清浄することができず、患者の承諾に影響が出る場合がある。
【0028】
他の用途(例えば、飛行士)用のマスクの場合、睡眠呼吸障害の治療の使用には不適である場合があるため、睡眠呼吸障害の治療の使用のために設計されたマスクは、他の用途に適している場合がある。
【0029】
これらの理由のめ、睡眠時のCPAP送達のための患者インターフェースは、明瞭な分野を形成する。
【0030】
2.2.3.1.1 密閉形成部分
患者インターフェースは、密閉形成部分を含み得る。患者インターフェースは、患者の顔と直接接触するため、密閉形成部分の形状および構成は、患者インターフェースの有効性および快適性に直接影響を持ち得る。
【0031】
患者インターフェースは、使用時に密閉形成部分を顔と係合させる場所の設計意図に従って、部分的に特徴付けられ得る。一形態の患者インターフェースにおいて、密閉形成部分は、各左鼻孔および右鼻孔と係合する2つのサブ部分を含み得る。一形態の患者インターフェースにおいて、密閉形成部分は、使用時において双方の鼻孔を包囲する単一の要素を含み得る。このような単一の要素は、例えば顔の上唇領域および鼻梁領域上に載置されるように、設計され得る。一形態の患者インターフェースにおいて、密閉形成部分は、使用時に例えば顔の下唇領域上に密閉を形成することにより口腔領域を包囲する要素を含み得る。一形態の患者インターフェースにおいて、密閉形成部分は、使用時に双方の鼻孔および口腔領域を包囲する単一の要素を含み得る。これらの異なる種類の患者インターフェースは、その製造業者によって鼻マスク、フルフェース型マスク、鼻枕、鼻パフおよび口鼻マスクなどの多様な名称によって公知であり得る。
【0032】
患者の顔の一領域において有効であり得る密閉形成部分は、例えば患者の顔の異なる形状、構造、変化性および感受性領域に起因して、別の領域において不適切であり得る。例えば、患者の額上に載置される水泳用ゴーグルの密閉部は、患者の鼻上における使用には不適切である場合がある。
【0033】
特定の密閉形成部分は、広範囲の異なる顔形状およびサイズに対して1つの設計が適合し、快適でありかつ有効になるように、大量製造用に設計され得る。密閉部を形成するためには、患者の顔の形状と、大量製造された患者インターフェースの密閉形成部分との間の不整合がある範囲まで、一方または双方を適合させる必要がある。
【0034】
1つの種類の密閉形成部分は、患者インターフェースの周囲を包囲して延び、密閉形成部分が患者の顔に対向して係合している状態で力が患者インターフェースへ付加された際、患者の顔を密閉することを意図する。この密閉形成部分は、空気または流体充填クッションを含み得るか、または、ゴムなどのエラストマーによって構成された弾力性のある密閉要素の成形されたかまたは形成された表面を含み得る。この種の密閉形成部分により、フィット感が不適切である場合、密閉形成部分と顔との間に隙間が発生し、密閉を達成するには、患者インターフェースを顔に押しつけるためにさらなる力が必要になる。
【0035】
別の種類の密閉形成部分は、陽圧がマスク内に付加された際に患者の顔に対して自己気密作用を提供するように、マスクの周囲の周辺に配置された薄材のフラップシールを使用する。先述の種類の密閉形成部分と同様に、顔とマスクとの間の整合が良くない場合、密閉を達成するために必要なさらなる力が必要になり得るか、またはマスクから漏洩が発生し得る。さらに、密閉形成部分の形状が患者の形状と整合しない場合、使用時において密閉形成部分に折り目または座屈が発生し、漏洩の原因になる。
【0036】
別の種類の密閉形成部分は、例えば鼻孔中へ挿入される摩擦嵌め要素を含み得るが、これらの密閉形成部分を不快であると感じる患者も存在する。
【0037】
別の形態の密閉形成部分は、密閉を達成するために接着部を用い得る。患者の中には、常に接着部を自身の顔に貼り付けるかまたは取り外すことが不便であると感じる患者もいる。
【0038】
一定範囲の患者インターフェース密閉形成部分の技術について、(ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願:WO1998/004、310;WO2006/074、513;WO2010/135、785)に開示がある。
【0039】
一形態の鼻枕が、Puritan Bennettによって製造されたAdam回路において見受けられる。別の鼻枕または鼻パフが、Puritan-Bennett Corporationへ譲渡された米国特許第4、782、832号(Trimbleら)の主題になっている。
【0040】
ResMed Limitedは、鼻枕を用いた以下の製品を製造している:SWIFT(登録商標)鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)II鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)LT鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)FX鼻枕マスクおよびMIRAGELIBERTY(登録商標)フルフェース型マスク。ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願において、鼻枕マスクの実施例についての記載がある:国際特許出願WO2004/073、778号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)鼻枕の様相を記載)、米国特許出願第2009/0044808号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)LT鼻枕の様相を記載);国際特許出願WO2005/063、328号およびWO2006/130、903号(特に、ResMed LimitedのMIRAGE LIBERTY(登録商標)フルフェース型マスクの様相を記載);国際特許出願WO2009/052、560号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)FX鼻枕の様相を記載)。
【0041】
2.2.3.1.2 位置決めおよび安定化
陽圧空気治療に用いられる患者インターフェースの密閉形成部分は、密閉を妨害する空気圧力の対応する力を受ける。そのため、密閉形成部分を位置決めすることと、顔の適切な部分に対して密閉を維持することとを行うために、多様な技術が用いられている。
【0042】
1つの技術において、接着部が用いられる。例えば、米国特許出願公開US2010/0000534号を参照されたい。しかし、接着部を用いた場合、不快感がある場合がある。
【0043】
別の技術において、1つ以上のストラップおよび/または安定化ハーネスが用いられる。多数のこのようなハーネスの場合、フィット感が悪い、かさばる、不快および扱いにくいなどの点のうち1つ以上が当てはまる。
【0044】
2.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)デバイス
空気圧生成器は、広範な用途(例えば、工業規模通気システム)において公知である。しかし、医療用途のための空気圧生成器は、より一般的な空気圧生成器(例えば、医療機器の信頼性要件、サイズ要件および重量要件)では満足できない特定の要件を有する。加えて、医療治療向けに設計されたデバイスであっても、以下のうち1つ以上に関連して欠陥を免れない場合がある:快適性、ノイズ、使いやすさ、有効性、サイズ、重量、製造可能性、コストおよび信頼性。
【0045】
特定のRPTデバイスの特殊な要件の一例として、音響ノイズがある。
従来のRPTデバイスのノイズ出力レベルの表(試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmH2Oにて測定)。
【0046】
【0047】
睡眠呼吸障害の治療に用いられる1つの公知のRPTデバイスとして、S9睡眠治療システム(製造元:ResMed Limited)がある。RPTデバイスの別の実施例として、人工呼吸器がある。人工呼吸器(例えば、成人および小児用人工呼吸器のResMed Stellar(登録商標)シリーズ)の場合、複数の状態(例を非限定的に挙げると、NMD、OHSおよびCOPD)の治療のための一定範囲のための患者のための侵襲的および非侵襲的な非依存的呼吸のための補助を提供し得る。
【0048】
ResMed Elise(アキュートアクセント)e(登録商標)150人工呼吸器およびResMedVSIII(登録商標)人工呼吸器は、複数の状態の治療のための成人患者または小児用患者に適した侵襲的および非侵襲的な依存的呼吸の補助を提供し得る。これらの人工呼吸器により、単一または二重の肢回路を用いた容積通気モードおよび気圧通気モードが得られる。RPTデバイスは典型的には、圧力生成器(例えば、電動送風機または圧縮ガスリザーバ)を含み、患者の気道へ空気流れを供給するように構成される。場合によっては、空気流れは、患者の気道へ陽圧で供給され得る。RPTデバイスの出口は、空気回路を介して上記したような患者インターフェースへ接続される。
【0049】
デバイスの設計者には、無数の選択肢が提示され得る。設計基準同士が対立することが多くあるため、特定の設計選択肢が慣例からほど遠くなるかあるいは避けられないことがある。さらに、特定の態様の快適性および有効性は、1つ以上のパラメータの些細な変更から大きく影響を受ける可能性もある。
【0050】
2.2.3.3 加湿器
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。加湿器をRPTデバイスおよび患者インターフェースと共に用いた場合、加湿ガスが生成されるため、鼻粘膜の乾燥が最小化され、患者気道の快適性が増加する。加えて、より冷涼な気候においては、概して患者インターフェースの周囲の顔領域へ温風を付加すると、冷風の場合よりも快適性が高まる。一定範囲の人工的加湿機器およびシステムが公知であるが、医療加湿器の特殊な要件を満たせていない。
【0051】
医療加湿器は、典型的には患者が(例えば病院において)睡眠時または安静時にあるときに、必要な場合に周囲空気に相対して空気流れの湿度および/または温度を増加させるように、用いられる。枕元に置かれる医療加湿器は、小型である場合がある。医療加湿器は、患者へ送達される空気流れの加湿および/または加熱のみを行うように構成され得、患者の周囲の加湿および/または加熱は行わない。例えば、部屋ベースのシステム(例えば、サウナ、エアコン、または蒸発冷却器)は、呼吸により患者体内に取り込まれる空気も加湿し得るものの、これらのシステムの場合、部屋全体も加湿および/または加熱するため、占有者にとって不快になり得る。さらに、医療加湿器の場合、工業用加湿器よりも安全面での制約がより厳しい場合もある。
【0052】
多数の医療加湿器が公知であるものの、このような医療加湿器の場合、1つ以上の欠陥を被り得る。すなわち、このような医療加湿器の場合、加湿が不適切なものもあれば、患者にとって使用が困難または不便であるものもある。
【0053】
2.2.3.4 データ管理
臨床的理由により、呼吸治療が処方された患者が「コンプライアンスを遵守している」(例えば、患者が自身のRPTデバイスを特定の「コンプライアンスルール」に則っている)かを決定するためのデータを入手する場合がある。CPAP治療についてのコンプライアンスルールの一例として、患者がコンプライアンスを遵守しているとみなすためには、患者が連続30日間のうち少なくとも21日間にわたってRPTデバイスを一晩あたり少なくとも4時間にわたって使用する必要がある。患者のコンプライアンスを決定するためには、RPTデバイスのプロバイダ(例えば、ヘルスケアプロバイダ)は、RPTデバイスを用いた患者の治療を記述するデータを手作業で入手し、所定期間にわたる使用率を計算し、これをコンプライアンスルールと比較し得る。ヘルスケアプロバイダが患者が自身のRPTデバイスをコンプライアンスルールに則って使用したと決定すると、当該ヘルスケアプロバイダは、患者がコンプライアンスを遵守している旨を第三者に通知し得る。
患者の治療において、治療データの第三者または外部システムへの通信から恩恵を受ける他の態様があり得る。
【0054】
このようなデータを通信および管理するための既存のプロセスの場合、高コスト、時間がかかること、エラーの発生し易さのうち1つ以上が発生し得る。
【0055】
2.2.3.5 下顎の再位置決め
下顎再位置決めデバイス(MRD)または下顎前方固定デバイス(MAD)は、睡眠時無呼吸およびいびきの治療選択肢の1つである。これは、歯科医または他の供給業者から利用可能である調節可能な口腔用器具であり、下顎部(下顎)を睡眠時に前方位置に保持する。MRDは、取り外し可能なデバイスであり、患者の睡眠前に口腔内に挿入され、睡眠後に取り外される。そのため、MRDは、常時装着用途を想定した設計はされていない。MRDは、カスタム仕様にしてもよいし、あるいは、標準形態で製造してもよく、患者の歯に適合するように設計された咬合印象部位を含む。この下顎からの機械的突出部は、舌の後ろ側の空間を拡張させ、咽頭壁上へ張力を付加して、気道崩壊を低減させ、口蓋振動を低減させる。
【0056】
特定の実施例において、下顎前方固定デバイスは、上顎または上顎骨上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された上側スプリントと、上顎または下顎上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された下側スプリントとを含み得る。上側スプリントおよび下側スプリントは、一対の接続ロッドを介して相互に横方向に接続される。この1組の接続ロッドは、上側スプリントおよび下側スプリント上において対称に固定される。
【0057】
このような設計において、接続ロッドの長さは、MRDが患者の口腔中に配置されたときに下顎が前方位置に保持されるように、選択される。接続ロッドの長さは、下顎の突出レベルを変化させるように、調節され得る。歯科医は、突出レベルを下顎に合わせて決定することができ、その結果、接続ロッドの長さが決定される。
【0058】
下顎を上顎骨に対して前方に押し出すように構成されているMRDもあれば、ResMed Narval CC(登録商標)MRDなどの他のMADのように、下顎を前方位置に保持するように設計されているものもある。このデバイスにより、歯科的副作用および側頭/下顎間の関節(TMJ)の副作用も低下または最小化される。そのため、このデバイスは、歯のうち1つ以上の任意の移動を最小化または回避するように構成される。
【0059】
2.2.3.6 通気技術
いくつかの形態の治療システムは、吐き出された二酸化炭素を押し出すための通気部を含み得る。この通気部により、患者インターフェースの内部空間(例えば、プレナムチャンバ)から患者インターフェースの外部(例えば、周囲)への流れが可能になり得る。この通気部は、オリフィスを含み得、マスク使用時において、ガスがオリフィスを通じて流れ得る。多数のこのような通気部の場合、音がうるさい。他の場合、使用時において閉塞し得るため、押し出しが不十分になる。いくつかの通気部の場合、例えば音または気流集中に起因して、患者1000と同床者1100の睡眠を妨げる場合がある。
【0060】
ResMed Limitedは、複数の向上したマスク通気技術を開発している。下記を参照されたい:国際特許出願公開第WO1998/034、665;国際特許出願公開第WO2000/078、381;米国特許第6、581、594号;米国特許出願公開第US2009/0050156;米国特許出願公開第2009/0044808。
【0061】
従来のマスクのノイズの表(ISO17510-2:2007、1mにおける10cmH2O圧力)
【0062】
【0063】
2.2.4 診断システムおよび監視システム
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺疾患の診断および監視のための従来のシステムであり、典型的には、システム適用のために専門家臨床スタッフを必要とすることが多い。PSGにおいては、多様な身体信号(例えば、脳波検査(EEG)、心電図検査(ECG)、電気眼球図記録(EOG)、筋電図描画法(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚センサーを人体上に配置する。睡眠時呼吸障害のPSGのめには、患者を専門病院において二晩にわたって観察する必要があった。すなわち、第一夜は純然たる診断のためであり、第二夜は、臨床医による治療パラメータのタイトレーションのために必要であった。そのため、PSGは高コストであり、利便性も低い。PSGは、家庭における睡眠テストには特に不向きである。
【0064】
臨床専門家は、患者の診断または監視をPSG信号の視覚的観察に基づいて適切に行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況がある。患者の状態について臨床専門家によって意見が異なる場合がある。さらに、或る臨床専門家は、時期によって異なる基準を適用し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0065】
3 技術の簡単な説明
本技術は、呼吸疾患の診断、改善、治療または回避において用いられる医療デバイスの提供に関連し、これらの医療デバイスは、向上した快適性、コスト、有効性、使い易さおよび製造可能性のうち1つ以上を有する。
【0066】
本技術の第1の様態は、呼吸障害の診断、改良、治療または回避に用いられる装置に関連する。
【0067】
本技術の別の様態は、呼吸障害の診断、改良、治療または回避において用いられる方法に関連する。
【0068】
本技術の特定の形態の一態様は、呼吸治療についての患者の承諾を向上させる方法および/または装置を提供することである。
【0069】
本技術の一形態は、プレナムチャンバと、プレナムチャンバの有効内容積を低減させるためのプレナムチャンバ内の1つ以上の減容部材とを含む患者インターフェースを含む。
【0070】
本技術の一形態の別の態様は、プレナムチャンバの有効内容積を低減させ、不要なデッドスペース体積を呼吸圧力治療の送達に必要な体積から分離させるプレナムチャンバおよび構造を含む患者インターフェースを含む。
【0071】
本技術の一形態の別の態様は、プレナムチャンバの有効内容積を低減させ、患者によって再呼吸されるCO2の体積を低減させるためのプレナムチャンバおよび構造を含む患者インターフェースを含む。
【0072】
本技術の一形態の別の態様は、密閉形成構造を変化させることまたは密閉形成構造へ影響を与えること無しに、プレナムチャンバの有効内容積を低減させるためのプレナムチャンバおよび構造を含む患者インターフェースを含む。
【0073】
本技術の一形態の別の態様は、呼吸圧力治療の送達のためのプレナムチャンバの主要体積をプレナムチャンバの不要なデッドスペース体積(例えば、患者の鼻通路への入口の上側、患者の口腔への入口の下側、患者の鼻および/または口腔の側部の周囲、および/または患者の鼻通路それぞれの周囲および/または患者の口腔の周囲に設けられた不要なデッドスペース体積)から分離させるためのプレナムチャンバおよび構造を有するフルフェース型の患者インターフェースを含む。
【0074】
本技術の一形態の別の態様は、プレナムチャンバと、プレナムチャンバの有効内容積を低減させ、患者によって再呼吸されるCO2の体積を低減させるためのプレナムチャンバおよび構造内の熱/水分交換器とを有する患者インターフェースを含む。
【0075】
本技術の一形態の別の態様は、空気流れを周囲空気圧力に対して連続的に陽圧において少なくとも患者の鼻孔入口を含む患者の気道への入口へ密閉された様態で送達するための患者インターフェースに関する。この患者インターフェースは、使用時において患者の睡眠時の患者の呼吸サイクル全体において周囲空気圧力よりも高い約4cmH2O~約30cmH2Oの範囲の治療圧力を維持し、睡眠時呼吸障害が改善されるように構成される。この患者インターフェースは、クッションアセンブリを含む。このクッションアセンブリは、患者の鼻および/または口腔の周囲のシールと、患者が呼息したCO2が患者インターフェースの外部へ流れることを可能にするように構成されたガス逃がし孔とを形成されるように適合され、これにより、患者が呼息したCO2が最小化される。クッションアセンブリにより、使用時において周囲圧力を超える圧力で加圧されるプレナムチャンバが規定される。少なくとも1つの減容部材が、プレナムチャンバの有効内容積を低減させるように、プレナムチャンバ内に設けられる。少なくとも1つの減容部材は、治療圧力を送達するためのプレナムチャンバの主要体積を患者の鼻通路への入口の上側および/または患者の口腔への入口の下側に設けられたデッドスペース体積から分離するように、配置される。主要体積は、患者の鼻および/または口腔ならびに孔と直接流体連通するように、適合される。
【0076】
本技術の別の形態は、プレナムチャンバを含む患者インターフェースと、プレナムチャンバ内の少なくとも1つの流れ方向付け部材とを含む。プレナムチャンバは、デッドスペース体積と流体連通した有効内容積を有し、有効内容積は、少なくとも1つの流れ方向付け部材によりデッドスペース体積から分離される。少なくとも1つの流れ方向付け部材は、有効内容積とデッドスペース体積との間の流れを塞ぐような構造である。有効内容積は、患者の気道への入口へ加圧空気を送達するように、患者の気道への入口と直接流体連通し得る。有効内容積は、CO2を有効内容積から直接逃がすための孔を含み得る。
【0077】
本技術の別の形態は、少なくとも1つのデッドスペース体積と流体連通する有効内容積を有するプレナムチャンバを含む患者インターフェースを含む。有効内容積は、少なくとも1つの流れ方向付け部材により、デッドスペース体積から分離される。少なくとも1つの流れ方向付け部材は、プレナムチャンバ内に配置された孔へ呼気流を方向付けるように、適合される。孔は、有効内容積内に配置され得、少なくとも1つの流れ方向付け部材によりデッドスペース体積から分離され得る。
【0078】
本技術の一形態の別の態様は、密閉形成構造およびプレナムチャンバを含む患者インターフェースを含む。プレナムチャンバは、デッドスペース体積と流体連通した有効内容積を有する。プレナムチャンバは、有効内容積中へのプレナムチャンバおよびデッドスペース体積を分離させる少なくとも1つの流れ方向付け部材を含む。少なくとも1つの流れ方向付け部材は、密閉形成構造を変化させることまたは密閉形成構造へ影響を与えること無しに、有効内容積とプレナムチャンバのデッドスペース体積との間の呼気流および吸気流を塞ぐように、適合される。
【0079】
本技術の一形態の別の態様は、デッドスペース体積と流体連通した有効内容積を有するプレナムチャンバを含むフルフェース型の患者インターフェースを含む。有効内容積は、有効内容積とデッドスペース体積との間の流れを塞ぐように、流れ方向付け部材によってデッドスペース体積から分離される。プレナムチャンバのデッドスペース体積は、患者の鼻通路への入口の上側、患者の口腔への入口の下側、患者の鼻および/または口腔の側部の周囲、および/または患者の鼻通路それぞれの周囲および/または患者の口腔の周囲に設けられる。
【0080】
本技術の一形態の別の態様は、プレナムチャンバおよび少なくとも1つの流れ方向付け部材を含むフルフェース型の患者インターフェースを含む。少なくとも1つの流れ方向付け部材は、プレナムチャンバを呼吸圧力治療の送達のための主要体積および不要なデッドスペース体積に分離させる。少なくとも1つの流れ方向付け部材は、デッドスペース体積中に流れる呼気流を塞ぐように、適合される。
【0081】
本技術の一形態の別の態様は、プレナムチャンバを含む患者インターフェースと、有効内容積中へのプレナムチャンバおよび少なくとも1つのデッドスペース体積を分離させる少なくとも1つの流れ方向付け部材とを含む。有効内容積は、HMEと、CO2を逃がすための孔とを含む。少なくとも1つの流れ方向付け部材は、有効内容積からデッドスペース体積内へ流れる呼気流を塞ぐように適合され、少なくとも1つの流れ方向付け部材は、呼気流をHMEを通過させた後に孔から退出させるように、適合される。流れ方向付け部材は、呼気からの水分損失を低減させるように、呼気流を密閉形成部材から離隔方向に移動させた後にHMEを通じて流動させ得る。
【0082】
本技術の一形態の別の態様は、プレナムチャンバを含む患者インターフェースと、有効内容積中へのプレナムチャンバおよび少なくとも1つのデッドスペース体積を分離させる流れ方向付け部材とを含む。少なくとも1つのデッドスペース体積は、患者インターフェースの密閉形成部位に隣接して設けられる。デッドスペース体積は、有効内容積を包囲し、有効内容積は、鼻孔および/または口腔を含む患者の気道入口を包囲するように適合される。有効内容積は、患者インターフェースの入口と直接流体連通し得る。デッドスペース体積は、CO2を逃がすための孔と有効内容積を介して流体連通し得る。
【0083】
本技術の一形態の別の態様は、患者インターフェースを含む。患者インターフェースは、密閉形成部材と、プレナムチャンバと、加圧空気の送達のための有効内容積中へのプレナムチャンバを患者の気道の入口および少なくとも1つのデッドスペース体積に分離させるための少なくとも1つの流れ方向付け部材とを含む。有効内容積は、HMEと、CO2を逃がすための孔とを含む。流れ方向付け部材は、呼気流がHMEを通じて流れる前にデッドスペース体積中に流入するのを塞ぐように、適合される。デッドスペース体積は、密閉形成部材の少なくとも一部を含み得る。流れ方向付け部材は、呼気流がデッドスペース体積に進入する前にHMEへ方向付けられるように適合され得、これにより、密閉形成部材に起因する不完全な密閉からの水分損失が回避される。
【0084】
本技術の一形態の別の態様は、患者インターフェースを含む。患者インターフェースは、密閉形成部材と、プレナムチャンバと、患者の気道への加圧空気送達のための有効内容積中へのプレナムチャンバおよび少なくとも1つのデッドスペース体積を分離させる少なくとも1つの流れ方向付け部材とを含む。有効内容積は、HMEおよびCO2を逃がすための孔を含む。流れ方向付け部材は、吸息が患者の気道へ送達される前にデッドスペース体積中へ流動することを塞ぐように、適合される。デッドスペース体積は、密閉形成部材の少なくとも一部を含み得る。流れ方向付け部材は、吸気流れをデッドスペース体積に進入する前にHMEへ方向付けるように適合され得、これにより、密閉形成部材に起因する不完全な密閉を介して水分損失が漏洩することを回避する。
【0085】
本技術の一形態の別の態様は、空気流れを周囲空気圧力に対して連続的に陽圧において少なくとも患者の鼻孔入口を含む患者の気道への入口へ密閉された様態で送達するための患者インターフェースに関する。この患者インターフェースは、使用時において患者の睡眠時の患者の呼吸サイクル全体において周囲空気圧力よりも高い約4cmH2O~約30cmH2Oの範囲の治療圧力を維持し、睡眠時呼吸障害が改善されるように構成される。この患者インターフェースは、クッションアセンブリを含む。このクッションアセンブリは、患者の鼻および/または口腔の周囲のシールと、患者が呼息したCO2が患者インターフェースの外部へ流れることを可能にするように構成されたガス逃がし孔とを形成されるように適合され、これにより、患者が呼息したCO2が最小化される。クッションアセンブリにより、使用時において周囲圧力を超える圧力で加圧されるプレナムチャンバが規定される。少なくとも1つの流れ方向付け部材が、患者の気道の入口の周囲の有効内容積中へのプレナムチャンバと、有効内容積を少なくとも部分的に包囲するデッドスペース体積とを分離させるように、プレナムチャンバ内に設けられる。デッドスペース体積は、クッションアセンブリの少なくとも一部により、部分的に形成される。少なくとも1つの流れ方向付け部材は、吸息および呼気流がデッドスペース体積中に流入するように吸息および呼気流を方向付けるように、配置される。プレナムチャンバのデッドスペース体積は、患者の鼻通路への入口の上側、患者の口腔への入口の下側、患者の鼻および/または口腔の側部の周囲、および/または患者の鼻通路それぞれの周囲および/または患者の口腔の周囲に設けられ得る。
【0086】
本技術の特定の形態の一態様は、例えば医療トレーニングを受けたことの無い人、あまり器用ではない人や洞察力の欠いた人、またはこの種の医療デバイスの使用経験が限られた人にとって使い易い医療デバイスである。
【0087】
もちろん、上記様態の一部は、本技術の下位様態を形成し得る。また、下位様態および/または様態のうち多様な1つを多様に組み合わせることができ、本技術のさらなる様態または下位様態も構成し得る。
【0088】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報を鑑みれば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
4 図面の簡単な説明
本技術を、添付図面中に非限定的に一実施例として例示する。図面中、類似の参照符号は、以下の類似の要素を含む:
4.1 治療システム
【
図1A】
図1Aは、患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻枕の形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイス4000からの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。同床者1100も図示される。
【
図1B】
図1Bは、患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻マスクの形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。
【
図1C】
図1Cは、患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを含む。患者インターフェース3000は、全面式マスクをとり、陽圧の空気供給をRPTデバイス4000から受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。4.2 呼吸システムおよび顔の解剖学的構造
【
図2A】
図2Aは、鼻および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒト呼吸系の概要を示す。
【
図2B】
図2Bは、鼻腔、鼻骨、外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨、鼻孔、上唇、下唇、喉頭、硬口蓋、軟口蓋、中咽頭、舌、喉頭蓋、声帯ひだ、食道および気管を含むヒトの上気道の図である。
【
図2C】
図2Cは、上唇、上赤唇、下赤唇、下唇、口腔幅、心内膜、鼻翼、鼻唇溝および口角点を含む表面解剖学的構造のいくつかの特徴を含む顔の正面図である。上側、下側、ラジアル内方およびラジアル外方の方向も記載される。
【
図2D】
図2Dは、眉間、セリオン、鼻尖点、鼻下点、上唇、下唇、頤、鼻堤、狭長頂点、下耳上縁点および下耳下縁点を含む表面解剖学的構造のいくつかの特徴を含む頭部の側面図である。上側および下側と、前方および後方との方向も記載される。
【
図2E】
図2Eは、頭部のさらなる側面図である。フランクフォート水平および鼻唇角の大まかな位置が記載されている。前額面も記載される。
【
図2F】
図2Fは、鼻唇溝、下唇、上赤唇、鼻孔、鼻下点、鼻柱、鼻尖点、鼻孔の主軸および矢状面を含むいくつかの特徴を含む鼻の底面図である。
【
図2H】
図2Hは、外側軟骨、隔膜軟骨、大鼻翼軟骨、小鼻翼軟骨、種子骨軟骨、鼻骨、表皮、脂肪組織、上顎骨の前頭突起および線維性脂肪組織を含む鼻の皮下構造を示す。
【
図2I】
図2Iは、鼻の中間切開、矢状面からおよそ数ミリメートルの位置における鼻の中間切開を示し、特に隔膜軟骨および大鼻翼軟骨の内側脚を示す。
【
図2J】
図2Jは、前頭骨、鼻骨および頬骨を含む頭蓋骨の骨正面図である。鼻甲介が上顎骨および下顎と共に図示されている。
【
図2K】
図2Kは、頭蓋骨を頭部表面の外形およびいくつかの筋肉と共に示す側面図である。以下の骨が図示されている:前頭、蝶形骨、鼻、頬骨、上顎骨、下顎、頭頂、側頭および後頭。オトガイ隆起が図示されている。以下の筋肉が図示されている:二腹、咬筋、胸鎖乳突筋および僧帽筋。
【
図2L】
図2Lは、鼻の前外側を示す。4.3 患者インターフェース
【
図3A】
図3Aは、本技術の一形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。
【
図3B】
図3Bは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、3Cに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
【
図3C】
図3Cは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、
図3Bに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
【
図3D】
図3Dは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率の値はゼロである。
【
図3E】
図3Eは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、
図3Fに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
【
図3F】
図3Fは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、
図3Eに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
【
図3G】
図3Gは、2つの枕を含むマスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。ドーム領域およびサドル領域が図示される。
【
図3H】
図3Hは、マスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。点Aと点Bとの間の表面上の経路が図示される。is図示される。AとBとの間の直線距離が図示される。2つのサドル領域およびドーム領域が図示される。
【
図3I】
図3Iは、構造の表面を示し、この表面中には一次元穴が開いている。平面曲線301Dは、一次元穴の境界を形成する。
【
図3K】
図3Kは、二次元穴および一次元穴を含む
図3Iの構造の斜視図である。
図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける表面302Dが図示される。
【
図3L】
図3Lは、クッションとしての可膨張性ブラダーを有するマスクを示す。
【
図3S】
図3Sは、マスクの異なる領域内の密閉膜の縁部によって規定された空間曲線のねじれのサインを含むマスクの図である。4.4 患者インターフェースのための減容部材
【
図4】
図4は、患者呼気時の例示的な空気流れ経路を示すフルフェース型マスクの模式図である。
【
図5】
図5は、患者吸気時の例示的な空気流れ経路を示すフルフェース型マスクの模式図である。
【
図6】
図6は、HMEを含むフルフェース型マスクの模式図である。
【
図7】
図7は、患者呼気時の例示的な空気流れ経路を示すHMEを含むフルフェース型マスクの模式的側面図である。
【
図8】
図8は、患者吸気時の例示的な空気流れ経路を示すHMEを含むフルフェース型マスクの模式的側面図である。
【
図9】
図9は、本技術の一実施例によるクッションアセンブリの記プレナムチャンバ中の例示的なデッドスペース体積を示す側面図である。
【
図10】
図10は、本技術の一形態によるフルフェース型マスク形態の患者インターフェースの斜視図である。
【
図11】
図11は、本技術の一実施例による減容部材を含むクッションアセンブリを示す側面図である。
【
図12】
図12は、本技術の別の実施例による減容部材を含むクッションアセンブリを示す側面図である。
【
図13】
図13は、本技術の一実施例による減容部材を含むクッションアセンブリを示す模式的正面図である。
【
図14】
図14は、本技術の一実施例による減容部材を含むクッションアセンブリを示す模式的正面図である。
【
図15】
図15は、本技術の一実施例による減容部材を含むクッションアセンブリを示す模式的正面図である。
【
図16】
図16は、本技術の一実施例による減容部材を含むクッションアセンブリを示す模式的正面図である。
【
図17】
図17は、本技術の一実施例によるさらなる密閉部材および加圧ポートを含む患者インターフェースの模式的側面図である。
【
図18】
図18は、本技術の一実施例による患者呼気時の例示的な空気流れ経路を示す
図17の患者インターフェースの模式的側面図である。
【
図19】
図19は、は、本技術の一実施例による患者吸気時の例示的な空気流れ経路を示す
図17の患者インターフェースの模式的側面図である。
【
図20】
図20は、隔壁部材を含む患者インターフェースの模式的側面図であり、本技術の一実施例による患者呼気時の例示的な空気流れ経路を示す。
【
図21】
図21は、
図20の患者インターフェースの模式的側面図であり、本技術の一実施例による患者吸気時の例示的な空気流れ経路を示す。
【
図22】
図22は、本技術の一実施例による熱/水分交換器および減容部材を含むクッションアセンブリを示す側面図である。
【
図23】
図23は、本技術の一実施例によるさらなる密閉部材および加圧ポートを含むHMEを用いた患者インターフェースの模式的側面図である。
【
図24】
図24は、
図23の患者インターフェースの模式的側面図であり、本技術の一実施例による患者呼気時の例示的な空気流れ経路を示す。
【
図25】
図25は、
図23の患者インターフェースの模式的側面図であり、本技術の一実施例による患者吸気時の例示的な空気流れ経路を示す。
【
図26】
図26は、本技術の一実施例による隔壁部材および漏洩ポートを含む、HMEを用いた患者インターフェースの模式的側面図である。
【
図27】
図27は、
図26の患者インターフェースの模式的側面図であり、本技術の一実施例による患者呼気時の例示的な空気流れ経路を示す。
【
図28】
図28は、
図26の患者インターフェースの模式的側面図であり、本技術の一実施例による患者吸気時の例示的な空気流れ経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
5 技術の実施例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり得る特定の実施例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられる用語は、本明細書中に記載される特定の実施例を説明する目的のためのものであり、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0091】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有し得る多様な実施例に関連して提供される。任意の1つの実施例の1つ以上の特徴は、別の実施例または他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの実施例のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成し得る。
【0092】
5.1 治療法
一形態において、本技術は、呼吸疾患の治療方法を含む。本方法は、患者1000の気道の入口へ陽圧を付加するステップを含む。
【0093】
本技術の特定の実施例において、陽圧における空気供給が鼻孔の片方または双方を介して患者の鼻通路へ提供される。
【0094】
本技術の特定の実施例において、口呼吸が制限されるか、限定されるかまたは妨げられる
【0095】
5.2 治療システム
一形態において、本技術は、呼吸障害の治療のための装置またはデバイスを含む。装置またはデバイスは、圧縮空気を患者インターフェース3000への空気回路4170を介して患者1000へ供給するRPTデバイス4000を含み得る(例えば、
図1A~
図1Cを参照されたい)。
【0096】
5.3 患者インターフェース
図3Aに示したように、本技術の一様態による非侵襲的患者インターフェース3000は、以下の機能様態を含む:密閉形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気孔3400、空気回路4170への接続のための一形態の接続ポート3600、および前額支持部3700。いくつかの形態において、機能様態が、1つ以上の物理的コンポーネントによって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントは、1つ以上の機能様態を提供し得る。使用時において、密閉形成構造3100は、気道への陽圧での空気供給を促進するように、患者の気道の入口を包囲するように配置される。
【0097】
5.3.1 密閉形成構造
本技術の一形態において、密閉形成構造3100は、密閉形成表面を提供し、クッション機能をさらに提供し得る。
【0098】
本技術による密閉形成構造3100は、柔らかく、可撓性でありかつ弾力性のある材料(例えば、シリコーン)から構成され得る。
【0099】
一形態において、密閉形成構造3100は、密閉フランジおよび支持フランジを含む。密閉フランジは、厚さが約1mm未満(例えば、約0.25mm~約0.45mm)の比較的肉薄の部材を含む。この部材は、プレナムチャンバ3200の周辺長さの周囲に延びる。支持フランジは、密閉フランジよりも比較的肉厚であり得る。支持フランジは、密閉フランジと、プレナムチャンバ3200の周縁部との間に配置され、周辺長さの周囲の少なくとも一部に延びる。支持フランジは、バネ様要素であるかまたはバネ様要素を含み、密閉フランジを使用時に座屈しないように支持するよう機能する。使用時において、密閉フランジは、プレナムチャンバ3200中のシステム圧力に容易に応答してその下側上に作用して、面と緊密な密閉係合を形成させ得る。
【0100】
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000の密閉形成部分は、一対の鼻パフまたは鼻枕を含む。各鼻パフまたは鼻枕は、患者の鼻の各鼻孔との密閉を形成するように構成および配置される。
【0101】
本技術の一態様による鼻枕は、円錐台を含む。円錐台のうち少なくとも一部は、患者の鼻の下側、柄部、円錐台の下側上の可撓性領域上に密閉を形成し、円錐台を柄部へ接続させる。加えて、本技術の鼻枕が接続される構造は、柄部のベースに隣接する可撓性領域を含む。可撓性領域は、自在接合構造を促進するように機能し得る。自在接合構造は、円錐台の変位および角度双方と、鼻枕が接続される構造との相互移動に対応する。例えば、円錐台は、柄部が接続された構造に向かって軸方向に変位し得る。
【0102】
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、患者の顔の上唇領域(すなわち、上唇)上に密閉を形成する密閉形成部分を含む。
【0103】
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、患者の顔の顎領域上に密閉を形成する密閉形成部分を含む。
【0104】
本技術の特定の形態において、密閉形成構造3100は、特定のサイズの頭部および/または形状の顔に対応するように構成される。例えば、密閉形成構造3100の一形態は、小さなサイズの頭ではなく大きなサイズの頭に適している。別の実施例において、密閉形成構造3100の一形態は、大きなサイズの頭ではなく小さなサイズの頭に適している。
【0105】
5.3.2 プレナムチャンバ
プレナムチャンバ3200は、使用時に密閉が形成される領域において平均的な人の顔の表面外形に対して相補的である形状の周囲を有する。使用時において、プレナムチャンバ3200の周辺縁部は、顔の隣接する表面に近接して位置決めされる。顔との実際の接触は、密閉形成構造3100によって提供される。密閉形成構造3100は、使用時においてプレナムチャンバ3200の周囲全体の周りに延び得る。
【0106】
以下に述べるように、本技術の態様は、デッドスペース体積の低減(例えば、CO
2の再呼吸の向上および/または熱/水分交換器(HME)の有効性の増加)のための、内容積の大きな患者インターフェース(例えば、フルフェース型マスク)への特定の用途を有する。例示の実施例において、フルフェース型マスクは、密閉形成構造を含む。この密閉形成構造は、鼻および口腔を包囲することと、鼻ブリッジ領域、鼻領域の側部、頬領域、口腔領域の側部、および下唇の下側(例えば、顎領域)に沿って密閉を形成することとを行うように適合される。例えば
図9、
図11および
図12に示すように、顎領域に沿った密閉は、患者の顔の下唇領域(すなわち、下唇)に沿って設けられ得る。
図4~
図8および
図17~
図28に示すような他の実施例において、顎領域に沿った密閉は、患者の顎の下側に沿って設けられ得る。下唇の下側の密閉の位置は、例えば、HMEおよび/または1つ以上の減容部材を収容するように、選択され得る。
呼気および吸気時の例示的な空気流れ経路
【0107】
図4は、フルフェース型マスクの模式的側面図であり、患者呼気時の例示的な空気流れ経路を示す。呼気時において、患者は、一定体積のCO
2を豊富に含む空気をマスクのプレナムチャンバ中に呼気する。患者およびマスクの流れ動態に起因して、一定体積の呼気された空気は、マスクのプレナムチャンバ内において多数の流路をとり得る。例えば、呼気された体積のうち一部は、通気流れ1Aであり得る。通気流れ1Aは、一定体積の呼気された空気であり、CO
2をプレナムチャンバから逃がすために、孔3400を通じて流れる。呼気された体積のうち一部は、マスクのプレナムチャンバ内に残留する乱流呼気流れ2Aまたは2Bであり得る。加えて、呼気された体積の一部は、さらなる呼気された流れ1Bであり得る。呼気された流れ1Bは、一定体積の呼気された空気であり、孔3400を通過し、続いて空気送達導管の下流を移動して、流れ生成器に向かう。マスクのプレナムチャンバ内の空気の体積は一定のままであるため、呼気流からのCO
2を豊富に含む空気の流れで充填され得る。
【0108】
図5は、フルフェース型マスクの模式的側面図であり、患者吸気時の例示的な空気流れ経路を示す。吸気時において、流れ生成器は、空気の吸気流れを陽圧で生成し、この流れを空気送達導管を介してマスクのプレナムチャンバ中へ送達させる。この吸気流れは、CO
2を実質的に含まない一定体積の加圧空気を吸気流路6Bを介して送達させる。吸気流路6Bの一部は、吸息通気流れ6Aを通じて失われ、残りの体積は、プレナムチャンバ中へ送達され、吸気マスク流れ6Cを介して患者の気道の入口へ向かう。吸息通気流れ6A時において、さらなる呼気された流れ1Bからの空気送達導管中に残っている体積の一部も、孔3400を通じて変位される。しかし、さらなる呼気された流れ1Bからの呼気された空気の残りの体積の一部も、吸気マスク流れ6Cにより、患者の気道の入口へ方向付けられる。さらに、乱流呼気流れ2Aおよび2Bの体積も、吸気マスク流れ6Cを介して、気道の入口へ再度送達され得る。そのため、この場合、さらなる呼気された流れ1Bおよび/または乱流呼気流れ2Aおよび2Bからの呼気された空気の体積の結果、患者によってさらなるCO
2が再呼吸される。密閉形成構造は常に完全な密閉を達成できるわけではない(例えば、
図4および
図5を参照)ため、CO
2を豊富に含む呼気された空気および吸気流れの体積のうち一部が、漏洩流れ5を通じて失わる場合がある。
熱/水分交換器(HME)を備えた、例示的なフルフェース型マスク
【0109】
図6は、プレナムチャンバ内に配置されたHME15を含むフルフェース型マスクの模式的側面図である。HMEは、患者の呼気時の呼気された空気流れの体積から熱および水分を獲得および保持する機能を果たす。その後、この熱および水分は、呼気時に患者へ再度送達される。HMEを含むフルフェース型マスクのプレナムチャンバ内において流れ動態が発生すると、CO
2を豊富に含む呼気空気が使用時にプレナムチャンバ内に残留し得るため、CO
2を豊富に含む空気が再呼吸される。
【0110】
図7は、HMEを含むフルフェース型マスクの模式的側面図であり、患者呼気時の例示的な空気流れ経路を示す。呼気時に熱および水分を獲得するためには、呼気流がHME15を通過することが必要である。しかし、HMEは一定レベルの流れインピーダンスを含むため、通気流れ1Aおよびさらなる呼気された流れ1Bが妨げられるため、
図4および
図5に示すようにHME無しのフルフェース型マスクと比較すると、増加した体積の呼気空気がプレナムチャンバ中に残留する可能性がある。このように流れが妨げられると、さらなる体積の呼気された空気が乱流呼気流れ2Aおよび2Bの経路をとる結果になり得る。加えて、妨げられた流れの一部に起因して、一定体積の呼気が漏洩流れ5を通じてプレナムチャンバから呼気漏洩流路2Cおよび2Dを介して失われる場合がある。一定体積の呼気された空気が呼気漏洩流路2Cおよび2Dを介して失われた場合、この体積の呼気流れが漏洩流れ5を通じて失われた後にHMEを通過するため、呼気された流れから熱および水分が失われる。
【0111】
図8は、HMEを含むフルフェース型マスクの模式的側面図であり、患者吸気時の例示的な空気流れ経路を示す。上記したように、吸気流路6Bの一部が吸息通気流れ6Aを通じて失われ、残りの体積がプレナムチャンバ中へ送達され、吸気マスク流れ6Cを介して患者の気道の入口へ向かう。また、乱流呼気流れ2Aおよび2Bの体積は、吸気マスク流れ6Cを介して気道の入口へ再度送達され得る。
【0112】
1つ以上の減容部材を備えたプレナムチャンバ
本技術の一実施例によれば、1つ以上の減容部材(体積分割部材または流れ方向付け部材とも呼ばれる)をプレナムチャンバ内に設けることで、プレナムチャンバの有効内容積が低減し得る。1つ以上の減容部材または流れ方向付け部材は、有効内容積中へのプレナムチャンバおよびデッドスペース体積への分割を行い、有効内容積とデッドスペース体積との間の流れを塞ぐするような構造および配置にされる。プレナムチャンバの有効内容積が低減すると、不要なデッドスペース体積が呼吸圧力治療の送達に必要な体積から分離され、これにより、患者が治療時に吸気する空気の体積が低減する。
【0113】
プレナムチャンバの体積が低下すると、特に、内容積が比較的大きいために患者の顔の一部を収容するためにさらなる不要なデッドスペース体積を持つ傾向のある患者インターフェース(例えば、フルフェース型マスク)の場合、患者が再呼吸し得るCO
2の体積が低下する。例えば、
図9は、プレナムチャンバ6200を規定する患者インターフェースのための例示的なフルフェース型のクッションアセンブリ6175を示す。クッションアセンブリ6175は、接続ポート6600を包囲する多孔穴6800を含む。このような実施例において、余分なデッドスペース体積DS1が、患者の鼻通路への入口の上側に設けられ、余分なデッドスペース体積DS2が、患者の口腔への入口の下側に設けられる。デッドスペース体積は、患者の鼻および/または口腔の側部の周囲に設けてもよいことが理解されるべきである。理論的実施例において、フルフェース型マスクは、各鼻通路周囲を密閉する2つの別個のチャンバと、口腔の周囲を密閉する第3のチャンバとを含む。鼻通路患者の口腔それぞれの周囲の残りの体積は、デッドスペース体積とみなされる。よって、本技術の態様は、プレナムチャンバを含む患者インターフェースに関連する。この患者インターフェースにより、加圧ガスを患者の気道の入口へ有効に送達させるために必要な最小体積が、患者の気道周囲の密閉を変化させるかまたは影響すること無く得られる。
【0114】
一般的に、プレナムチャンバの内容積が増加すると、CO2の再呼吸が増加する。例えば、フルフェース型マスクを使用している患者が再呼吸するCO2の体積は、より小さなプレナムチャンバを有する鼻マスクを使用している患者が再呼吸するCO2の体積よりも大きい。呼息CO2の有効逃げが内容積から孔を介して低減する(例えば、患者の気道と孔との間に配置されたプレナムチャンバ内の任意選択の熱/水分交換器(HME)が設けられる)と、CO2の再呼吸がさらに悪化し得、その結果、孔への呼息CO2の直接流れが妨げられる。すなわち、プレナムチャンバ内のHMEにより、通気流れの流れインピーダンスが発生し、その結果CO2逃げの有効性が低下し、これにより、プレナムチャンバ内のCO2蓄積が増加し、そのためCO2再呼吸が増加する。
【0115】
呼吸圧力治療を可能にするために受容可能な特定の通気流れが存在するため、孔サイズの増加のみによりCO2逃げの向上を可能にすることは必ずしも可能ではない。また、患者インターフェースにより患者の顔の所望の領域の周囲を密閉するために最小体積が必要になるため、プレナムチャンバの体積を低減することができない場合がある。例えば、例示的なフルフェース型マスクは、鼻ブリッジ、鼻の側部、頬、口腔の側部および顎上の下唇の下側に沿って密閉して最適な密閉を提供するように、適合される。
【0116】
CO2逃げに影響を与え得る別の態様として、孔の位置がある。例えば、呼息流れが孔を通じて周囲へ直接逃げることができるようにするための最適な位置に孔を配置することにより、CO2逃げ性能が向上し得る。しかし、孔位置にも制約がある。例えば、患者および患者と同床者から離隔方向に方向付けるように孔を配置する必要もある。HMEを用いた患者インターフェースの実施例において、通気時および患者送達前の水分損失を最小化させることによりHMEの最大性能を確保するために、患者に対してHMEの反対側に孔を配置する必要がある場合がある。
【0117】
そのため、本技術の一実施例による患者インターフェースは、CO2再呼吸の低減のためにプレナムチャンバの内容積を低減させつつ、呼吸圧力治療のために患者の鼻および/または口腔を密閉するような構造にされる。
【0118】
本技術の一実施例について、
図10に示すインターフェース型に関連して以下に説明する。
図10は、フルフェース型の患者インターフェース6000(例えば、フルフェース型マスク)を示す。フルフェース型の患者インターフェース6000は、フレーム部材6050と、クッションアセンブリ(例えば、フルフェース型のクッションアセンブリ6175)と、位置決め/安定化構造6300と、エルボーまたは回りエルボー6500とを含む。エルボー6500は、患者インターフェースのプレナムチャンバ6200との流体連通のためのガス送達管4180へ接続される。このようなインターフェース型のさらなる詳細および実施例について、PCT公開第WO2015/006826号に開示がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0119】
(例えば、ポリカーボネートなどの比較的硬質のプラスチック材料によって構成された)フレーム部材6050により、クッションアセンブリ6175と位置決め/安定化構造6300との間の接続が取り外し可能な様態またはより恒久的な様態によって行われて、密閉力が位置決め/安定化構造6300からクッションアセンブリ6175へ送られる。フレーム部材6050は、一般的にシュラウド、ヘッドギア接続構造またはシャーシと呼ばれる場合もある。位置決め/安定化構造6300のためのアームがフレーム部材6050へ設けられているため、クッションアセンブリ6175へ接続構造を設ける必要は無い。
【0120】
図示の実施例において、クッションアセンブリ6175により、前壁部位6150(例えば、前壁部位)を含む一体ユニットが得られる。前壁部位6150は、プレナムチャンバ6200を形成するように密閉形成構造6100へ接続されるかまたは別の場合に密閉形成構造6100に設けられる。例えば、前壁部位6150は、密閉形成構造6100へ恒久的に接続(例えば、ワンピースモールド、コモールド)してもよいし、あるいは取り外し可能に(例えば、機械的相互ロックにより)密閉形成構造6100に接続してもよい。一実施例において、密閉形成構造6100は、比較的可撓性のまたはしなやかな材料(例えば、シリコーンなどの弾性材料)によって構成され、前壁部位6150は、比較的剛性の材料(例えば、ポリカーボネート、ナイロン)によって構成される。
【0121】
前壁部位6150は、接続ポート6600を包囲する多孔穴6800を含む。多孔穴6800は、エルボーまたは回りエルボー6500へ接続される。
【0122】
患者によって再呼吸されるCO2の体積を低減するために、本技術の一実施例による1つ以上の減容部材は、プレナムチャンバ6200内の不要なデッドスペース体積を低減させるように、プレナムチャンバ6200内に設けられる。1つ以上の減容部材は、プレナムチャンバ6200を少なくとも2つの別個の異なるチャンバ(例えば、主要チャンバおよび少なくとも1つの周辺チャンバ)に分離、分割または区分するような構造にされる。
【0123】
図11に示す図示の実施例において、減容部材は、可動フラップまたは隔壁6900Aおよび6900Bの形態でプレナムチャンバ6200内に設けられて、プレナムチャンバ6200を主要チャンバMCと、第1の周辺チャンバPC1および第2の周辺チャンバPC2とに分離、分割または区分する。
【0124】
可動フラップ6900Aおよび6900Bによって確立される主要チャンバMCは、CO2逃げのために接続ポート6600、患者の気道および孔6800と直接流体連通する。主要チャンバMCは、呼吸圧力治療時に呼吸可能なガスの流れを患者の気道の入口へ送達させるために必要である。
【0125】
可動フラップ6900Aおよび6900Bによって確立される第1の周辺チャンバPC1および第2の周辺チャンバPC2は、不要なデッドスペース体積をプレナムチャンバ6200内に含む。第1の周辺チャンバPC1および第2の周辺チャンバPC2は、主要チャンバMCと別個の異なるものである(例えば、プレナムチャンバ6200の全体的有効内容積が主要チャンバMCの体積まで低下するように、第1の周辺チャンバおよび第2の周辺チャンバが主要チャンバから区分けされる)。そのため、主要チャンバMCによって設けられた有効体積により、再呼吸されるCO2の体積が低減するため、CO2の再呼吸が低減する。
【0126】
図示の実施例において、各可動フラップ6900Aおよび6900Bは、接続部位6905を提供する第1の端部を含む。接続部位6905は、クッションアセンブリ6175の前壁部位6150の内面へ設けられるかまたは別の様態で接続される。各可動フラップ6900Aおよび6900Bは、端部6910を提供する第2の自由端も含む。端部6910は、患者の顔に向かって方向付けられるような構成または構造にされる。
【0127】
一実施例において、各可動フラップ6900Aおよび6900Bは、クッションアセンブリ6175(例えば、挿入可能なまたはレトロフィット可能な可動フラップ)と別個に形成され、取り付けられる(例えば、接着剤、機械式キーインターロック。)あるいは、各可動フラップ6900Aおよび6900Bは、クッションアセンブリ6175と一体にまたはワンピースとして形成してもよい(例えば、ワンピースモールド、コモールディング)。接続部位は、前壁部位へおよび/またはクッションアセンブリの密閉形成構造へ設けられるかまたは別の様態で取り付けられ得る点が理解されるべきである。
【0128】
一実施例において、各可動フラップ6900Aおよび6900Bの端部6910は、端部6910が端部6910と患者の顔との間に隙間または空間を形成するように、患者の顔に向かって方向付けられるような構成または構造にされ、これにより、主要チャンバMCを第1の周辺チャンバPC1および第2の周辺チャンバPC2から分離させる隔壁または区画が得られる。可動フラップ6900Aおよび6900Bは、呼吸圧力治療時の患者吸気および患者呼気全てが主要チャンバMCを介して発生するように、流れバイアスを生成する。このような配置構成により、より小さな体積のCO2を逃がす孔が得られ、これにより、再呼吸されるCO2の体積が低減される。周辺チャンバPC1およびPC2が加圧されると、患者の顔に対して密閉形成構造6100の空気圧式密閉を提供するが、停滞状態のままである。すなわち、患者の呼吸サイクル時において周辺チャンバPC1およびPC2において空気は必ずしも出入りしないため、周辺チャンバPC1およびPC2中にCO2は蓄積せず、その後吸気時に再呼吸される。
【0129】
一実施例において、可動フラップ6900Aおよび6900Bのうち片方または双方は、端部6910が患者の顔と軽く係合しかつ主要チャンバMCを第1の周辺チャンバPC1および第2の周辺チャンバPC2から完全に密閉および分離しないように、患者の顔へ方向付けられ得る。別の実施例において、可動フラップ6900Aおよび6900Bのうち片方または双方は、患者の顔に対して完全気密シールを形成するように患者の顔と係合するような構成または構造にされ得る。
【0130】
一実施例において、各可動フラップ6900Aおよび6900Bは、比較的可撓性(例えば、シリコーンなどのエラストマー材料製)であり得、これにより、使用時に可動フラップが変形および/または撓むことが可能になる。図示の実施例において、各可動フラップ6900Aおよび6900Bは、テーパー形状をその長さに沿って含む(例えば、より肉薄の端部6910へ向かってテーパー状に形成されたより肉厚の接続部位6905)。しかし、可動フラップは、主要チャンバMCと各周辺チャンバPC1およびPC2との間に障壁または区画を提供する他の適切な構造を持ち得ることが理解されるべきである。加えて、可動フラップは、その可撓性および/または密閉特性を向上させるための構造を含み得る(例えば、その長さに沿ったベローズまたはガセット、外形端部)。
【0131】
例えば、可動フラップは、接触圧力を低減させるような構造の肉薄の可撓性の膜フラップの形態をとり得、これにより、可動フラップが患者の顔に接触したときのあらゆる不快感が低減され得る。この可撓性により、可撓性の膜フラップが患者の顔の外形により良く適合することも可能になる。フラップ厚さは、例えば破裂の回避、分割されたチャンバ間の充分な分離の維持、および/または患者の顔への適合のための充分な可撓性の提供が可能になるように充分な剛性を提供するように、調整され得る。
【0132】
図示の実施例において、可動フラップ6900Aは、第1の周辺チャンバPC1を確立するように配置された上側または上部可動フラップであり、可動フラップ6900Bは、第2の周辺チャンバPC2を確立するように配置された下側または下部可動フラップである。
【0133】
図11に示すように、上側可動フラップ6900Aは、概して患者の鼻の鼻尖点領域に沿ってかつ鼻の各側部に沿って患者の顔へ方向付けられて、第1の周辺チャンバPC1を主要チャンバMCから区画するようにな構成または構造にされる。しかし、上側可動フラップ6900Aは、患者の鼻の他の領域に向かって方向付けられるような構成または構造にしてもよいことが理解されるべきである。例えば、
図12は、鼻尖点領域の上方に(すなわち患者の鼻の鼻梁および患者の鼻の各側部に沿って)方向付けられるような構成または構造にされた上側可動フラップ6900Aの実施例を示す。一般的に、上側可動フラップ6900Aは、主要チャンバMCと患者の鼻通路との連通を塞がないかまたは回避しないように、患者の顔に向かって構成または構造にする必要がある。
【0134】
図11に示すように、下側可動フラップ6900Bは、概して患者の下唇の下側の領域に沿って(例えば、患者の顎領域に沿って)患者の顔に向かって方向付けられるような構成または構造にされる。一般的に、下側可動フラップ6900Bは、主要チャンバMCと患者の口腔との間の連通を塞がないまたは妨げないように、患者の顔に向かって方向付けられるような構成または構造にされるべきである。
【0135】
図示のように、上側可動フラップ6900Aおよび下側可動フラップ6900Bはそれぞれ、適切な長さ(例えば、接続部位から端部への経路に沿って測定された長さ)と、患者の顔のその各領域へ向かって方向付けられるような構成または構造にされた方向付け(例えば、前壁部位6150に対する接続点および方向付け角度)とを含む。上側可動フラップ6900Aおよび下側可動フラップ6900Bは、患者の顔との所望の方向付けの調節および/またはチャンバ体積の調節および/またはチャンバ間の境界の調節を行うために、他の適切な長さ、形状、前壁部位との接続点および/または前壁部位に対する方向付け角度を含み得ることが理解されるべきである。また、長さおよび/または方向付けは、患者の顔の外形に適合するよう、フラップ幅に沿って変動し得る。
【0136】
図示の実施例において、上側可動フラップ6900Aおよび下側可動フラップ6900Bは、第1の周辺チャンバPC1および第2の周辺チャンバPC2を規定する。第1の周辺チャンバPC1および第2の周辺チャンバPC2は、主要チャンバMCから分離されかつ相互に分離される。例えば、
図13を参照されたい。
【0137】
別の実施例において、
図14に示すように、単一の周辺可動フラップ6900は、主要チャンバMCと、主要チャンバMCから分離された周辺チャンバPCとを確立するように、設けられ得る。本実施例において、可動フラップ6900は、周辺区画を確立することと、側部を介して連通する上側部位および下側部位を含む単一の周辺チャンバPCを確立することとを行うように、適合される。
【0138】
1つ以上の可動フラップが、主要チャンバから分離された1つ以上の周辺チャンバを確立するような他の適切な様態でプレナムチャンバ内に配置され得ることが理解されるべきである。例えば、
図15は、主要チャンバMCおよび単一の上側周辺チャンバPCを規定する可動フラップ6900を示す。
図16は、主要チャンバMCならびに周辺の上側チャンバPC1、下側チャンバPC2ならびに側部チャンバPC3およびPC4を規定する可動フラップ6900A、6900B、6900Cおよび6900Dを示す。
【0139】
1つ以上の減容部材(例えば、1つ以上の可動フラップ6900)をプレナムチャンバ6200内に設けると、プレナムチャンバ6200の内容積を密閉形成構造6100の改変または変更無しに低減させることが可能になるため、有利である。このような配置構成の場合、CO
2の再呼吸の低減のためにプレナムチャンバ6200の有効内容積を低減させつつ、密閉性能へのあらゆる影響も回避される。例えば、フルフェース型マスクの場合、密閉形成構造6100は、鼻および口腔を包囲することと、鼻ブリッジ領域、鼻領域の側部、頬領域、口腔領域の側部および患者の顔の顎領域上の下唇の下側に沿って密閉を形成することとを行うように、適合される。この典型的な構成において、プレナムチャンバ6200の不要な余分な体積またはデッドスペース体積(例えば、
図9中のデッドスペース体積DS1およびDS2を参照)が鼻孔の入口の上方および患者の口腔の下方に配置され、呼吸可能なガスの流れを患者の気道の入口へ送達させる際には不要であることが多い。この余分な体積またはデッドスペース体積により、プレナムチャンバ6200の内部のCO
2ガスの体積が増加し、その結果、再呼吸されるCO
2の体積も増加する。しかし、この余分の体積またはデッドスペース体積は、患者の顔の一部を収容することと、密閉形成構造が例えば鼻孔の入口の上方において鼻ブリッジおよび患者の顔の鼻領域の側部に沿って密閉を形成することとのために必要になり得る。鼻の骨部を密閉すると、密閉を維持するための充分な力を(鼻通路を塞ぐこと無く)付加することが一般的に可能になる。そのため、フルフェース型マスクは、密閉安定性の維持および鼻閉塞の回避のためのこの密閉構成に限られることが多い。よって、1つ以上の減容部材を設けると、フルフェース型マスクの場合に一般的な再呼吸されるCO
2の体積を低減させるための実行可能な解決法が得られる。
【0140】
図17は、本技術の別の実施例による患者インターフェースを示す。
図18および
図19は、患者の呼気および吸気それぞれの時のこのような患者インターフェースのための例示的な空気流れ経路を示す。図示のように、患者インターフェースは、密閉部材AS1およびAS2と、加圧ポートPP1およびPP2とをさらに含む。
【0141】
密閉部材AS1およびAS2により、患者インターフェースの機能デッドスペース体積を低減させるように、プレナムチャンバ6200が主要チャンバMCと、第1の周辺チャンバPC1および第2の周辺チャンバPC2とに分離される。本実施例において、加圧ポートPP1およびPP2により、周辺チャンバまたは体積PC1およびPC2が流路3Bおよび3Cそれぞれによって加圧される(
図19を参照)。これらの周辺体積PC1およびPC2の加圧は、患者の顔上への有効密閉を提供するために必要になり得る。別の実施例において、プレナムチャンバは、それぞれ少なくとも1つの加圧ポートを備えた単一の周辺体積または3つ以上の周辺体積を含み得る。
【0142】
呼気時(
図18を参照)において、呼気流の一部がガス逃がし孔6800(例えば、流路1A)から直接流出する場合がある。加えて、この流れのうち一部は、空気送達導管(例えば、流路1B)へ流れ落ち得る。さらに、密閉漏洩5を介して漏洩経路が発生した場合、差圧に起因してこの流れの一部が加圧ポートPP1およびPP2(例えば、流路4Aおよび4B)を介して周辺体積PC1およびPC2に流入し得る。
【0143】
吸気時(
図19)において、流れ1Bのうち少なくとも一部が吸気流れ6Aによってガス逃がし孔6800から変位するため、CO
2をより多く含む呼気流が再呼吸時に患者へ再度送達されることが回避されるかまたは少なくとも低減される。さらに、流路4Aおよび4Bを介して周辺体積PC1およびPC2中に残留しているCO
2をより多く含む呼気流は全て、密閉部材AS1およびAS2によって患者の気道の入口へ再度送達されることが回避されるため、再呼吸が回避される。一実施例において、周辺体積PC1およびPC2中に残留しているCO
2をより多く含む呼気流は、実質的な差圧(すなわち、主要チャンバMC中のより低い相対圧力)が有った場合に呼吸不快感を引き起こすレベルで主要チャンバMC中のみに流れ得る。このようなレベルは、吸気時において流れ生成器からの吸気流れ6Cによって回避される。そのため、密閉部材AS1およびAS2は、患者インターフェース内のCO
2の再呼吸を低減させるための多数の様態で機能する。例えば、密閉部材AS1およびAS2は、患者の気道と孔6800との間の体積を低減させるように機能する。さらに、密閉部材AS1およびAS2は、呼気時にプレナムチャンバ中に残留した可能性のあるCO
2をより多く含むあらゆる呼気流がその後再配達されて患者によって再呼吸される自体を回避する。すなわち、密閉部材AS1およびAS2は、本実施例において物理的な障壁として機能する。
【0144】
図20および
図21は、患者の呼気時および吸気時それぞれにおけるこのような患者インターフェースのための例示的な空気流れ経路を含む、本技術の別の実施例による患者インターフェースを示す。図示のように、患者インターフェースは、隔壁部材BF1およびBF2を含む。
【0145】
上記の実施例と同様に、隔壁部材BF1およびBF2は、呼気流(例えば、
図20中の流路1Cおよび1Dを参照)を周辺体積PC1およびPC2から離隔方向にかつガス逃がし孔6800(例えば、
図20中の流路1Aを参照)へ向かって再方向付けするような構造および配置にされる。一部の呼気流は、孔6800を迂回し、空気送達導管(例えば、
図20中の流路1Bを参照)を流れ落ち得る。
【0146】
吸気(
図21)時において、CO
2をより多く含む呼気流の大部分または全ては、流れ生成器からの吸気流れによって変位し(例えば流路6Aを参照)、方向付けられて孔6800から出て行く(例えば流路6A~1Bを参照)。一実施例において、密閉漏洩5が少しでも発生した場合、周辺体積PC1およびPC2中の圧力が低下し得、その結果、流れ3Bおよび3Cが主要チャンバMCからこれらの周辺体積中へ流入し得る。しかし、隔壁部材BF1およびBF2は、CO
2をより多く含む呼気流がこれらの周辺体積中へ流入することを回避するかまたは少なくとも制限するような構造および配置にされる。CO
2をより多く含む呼気流が周辺体積PC1およびPC2中に流入する実施例において、隔壁部材BF1およびBF2は、流れが主要チャンバMC中に戻って患者によって再呼吸される事態を回避し得る。さらに、周辺体積PC1およびPC2中に残留しているCO
2をより多く含む呼気流が漏洩5を介して周辺に通気することが予期される。
【0147】
そのため、隔壁部材BF1およびBF2は、呼気流を孔に向かってかつさらなる体積(例えば、周辺体積またはチャンバPC1およびPC2)から離隔方向に方向付けることにより、患者によって再呼吸されるCO2を低減させる機能をする。さらに、隔壁部材BF1およびBF2は、吸気時にプレナムチャンバ内に残留し得るCO2をより多く含む呼気流の再呼吸を最小化または回避するための流れ障壁として機能する。
【0148】
HMEおよび1つ以上の減容部材
上記したように、1つ以上の減容部材を設けることにより、熱/水分交換器(HME)がプレナムチャンバ内に設けられた場合におけるCO2の再呼吸の低減に対する実行可能な解決方法も提供される。HMEは、患者気道と孔との間の流路内に配置され、(プレナムチャンバ内のCO2蓄積の原因となり得る)孔を介して退出する呼気流れを妨げる。このような問題の可能性は、より大きな内容積のプレナムチャンバ(例えば、フルフェース型マスク)においてより一般的である。本技術の一実施例による1つ以上の減容部材を設ければ、プレナムチャンバの有効内容積を低減させて、HME付き患者インターフェース内において再呼吸されるCO2の体積を低減させることができる。
【0149】
例えば、
図22に示す患者インターフェース6000は、例えば交換可能なカートリッジの形態の任意選択のHME6005を収容するような構造にされ、これにより、治療時において充分な熱および湿度が患者へ提供される。一実施例において、HME6005は、クッションアセンブリ6175の前壁部位によって一体化されるかまたは別の様態で支持され得る。図示の実施例において、孔6800は、エルボーまたは回りエルボー6500へ設けられる。
【0150】
上記実施例と同様に、上側可動フラップ6900Aおよび下側可動フラップ6900Bは、プレナムチャンバ6200の有効内容積を低減させるために主要チャンバMCならびに主要チャンバMCから分離された周辺チャンバPC1およびPC2を確立するように、プレナムチャンバ6200内に設けられる。
【0151】
CO2の再呼吸の低減のためにプレナムチャンバ6200の有効体積を低減させることに加えて、HME付きシステム中の体積を低減させることにより別の恩恵として、加熱および加湿のためにHMEを必要とする主要チャンバMCの体積が低減することがある。そのため、可動フラップ6900Aおよび6900Bは、患者が吸気するガスの体積を加湿および加熱するためのHMEの有効性も増加させる。加えて、患者とHMEとの間の体積を低減させると、呼気時においてより多くの熱および水分がこの体積中に捕獲される。
【0152】
図23は、本技術の別の実施例によるHME6005を備えた患者インターフェースを示す。
図24および
図25は、患者呼気時および吸気時それぞれにおけるこのような患者インターフェースのための例示的な空気流れ経路を示す。図示のように、患者インターフェースは、さらなる密閉部材AS1およびAS2と、加圧ポートPP1およびPP2とを含む。
【0153】
図示の実施例において、密閉部材AS1は、鼻孔入口の上側を密閉し得、密閉部材AS2は、口腔入口の下側を密閉し得る。あるいは、さらなる密閉部材は単一のシールであり得、クッションアセンブリのプレナムチャンバ内において口腔および鼻周囲を密閉する。別の実施例において、密閉部材AS1は、鼻孔入口の周囲を密閉し得、密閉部材AS2は、口腔入口周囲を密閉し得る。
図12に示すように、密閉部材AS1は、プレナムチャンバ6200を分離して周辺チャンバPC1を形成し、密閉部材AS2は、プレナムチャンバを分離して周辺チャンバPC2を形成する。主要チャンバMCは、加圧空気流れを患者の気道の入口へ送達させるための有効内容積を含むように、密閉部材AS1と密閉部材AS2との間に形成される。プレナムチャンバは、HME6005も含む。HME6005は、支持構造によって主要チャンバMC内に配置され、患者の気道の入口と直接流体連通する。主要チャンバMCは、HME6005の前側(流れ生成器側)に配置された各加圧ポートPP1およびPP2を介して周辺チャンバPC1およびPC2と流体連通する。加圧ポートPP1およびPP2により、周辺チャンバPC1およびPC2の加圧を主要チャンバMCから独立して行うことができる。周辺チャンバPC1の加圧により、鼻孔の上側の領域における密閉形成構造による密閉が支援される。同様に、周辺チャンバPC2の加圧により、口腔の下側の領域における密閉形成構造による密閉が支援される。
【0154】
図24に示す呼気時において、密閉部材AS1およびAS2により、一定体積の呼気された空気がHME6005を通じて(周辺チャンバPC1またはPC2いずれかに流入すること無く)主要チャンバMCに流入することが保証される。その結果、呼気された空気中の水分および湿度が主要チャンバMCの患者側内において獲得されるかまたは再送達のためにHME6005内に保持される。
図24に示すように、呼気された空気の体積は、未だ下流において前進し得、通気流れ1Aを通じて孔6800から退出し得るか、または、さらなる呼気された流れ1Bを介して空気送達導管を下降し得る。本実施例において、密閉部材AS1およびAS2により、通気流れ1Aおよびさらなる呼気された流れ1Bの水分および熱をHME6005内に保持した後、孔6800から退出させることが保証される。密閉形成構造を介して漏洩流れ5が存在する場合、主要チャンバMCと比較して、周辺チャンバPC1またはPC2のいずれかの間に差圧が発生し得る。すなわち、周辺チャンバPC1またはPC2から漏洩流れ5を介して圧力が失われ得る。この場合、加圧流路4Aおよび4Bが、差圧に起因して加圧ポートPP1~PP2を通じて退出し得る。
図24に示すように、呼気時に加圧流路4Aおよび4Bが発生した場合、HME6005の前側(流れ生成器側)に加圧ポートPP1およびPP2を配置すると、HME6005を通じて既に流れた一定体積の呼気空気から加圧流路4Aおよび4Bが発生することが保証される。よって、この構成により、漏洩流れ5を通じて失われるガスの体積が、熱および水分がHME6005によって既に保持された場合の体積に限定されることが保証される。
【0155】
図25に示す吸気時において、吸気マスク流れ6CがHME6005を通過している間に加熱および再加湿されて、加熱および加湿された空気を圧力において患者の気道の入口へ送達させる。上記したように、CO
2をより多く含む呼気流のうちほとんどまたは全てが流れ生成器からの吸気流れ(例えば、流路6Aを参照)によって変位され、孔6800から方向付けられる(例えば、流路6A~1Bを参照)。漏洩流れ5が発生した場合、周辺チャンバPC1およびPC2が加圧されて、各吸息加圧流路3Bおよび3Cを介して圧力損失を補償する。ここでも、この構成により、HME6005によって加熱または加湿されていない一定体積の空気から吸息加圧流路3Bおよび3Cが発生することが保証される。
【0156】
図26は、本技術の別の実施例によるHME6005付きの患者インターフェースを示す。
図27および
図28は、患者の呼気時および吸気時それぞれにおける。このような患者インターフェースのための例示的な空気流れ経路を示す。図示のように、患者インターフェースは、隔壁部材sBF1およびBF2と、漏洩ポートLP1およびLP2を含むHME6005とを含む。
【0157】
図27に示すような呼気時において、隔壁BF1およびBF2は、呼気流を周辺チャンバPC1およびPC2から離隔方向に方向付け得、これにより、呼気流のうち大部分は熱および水分獲得のためにHME6005を通じて方向付けられる。すなわち、隔壁BF1およびBF2は、流路LP1またはLP2と比較して、通気流れ1Aに対する抵抗が最も小さな経路を提供し得る。それででも、呼気された一定体積の空気は、下流に進み、通気流れ1Aを通じて孔6800から退出し得るかまたはさらなる呼気された流れ1Bを介して空気送達導管を下方に進み得る。隔壁BF1およびBF2は、密閉漏洩経路5を通じて呼気流からの水分損失を最小化する流れ方向付け器として機能する。呼気時に漏洩経路5を通じて漏洩が発生した場合、その結果発生した周辺チャンバPC1およびPC2中の差圧に起因して、(流路1Cまたは1Dを介した主要チャンバMCからではなく)流路4Aおよび4Bを介して漏洩が発生する。すなわち、隔壁BF1およびBF2は、主要チャンバMCからの呼気流の漏洩が、熱および水分保持のために既にHME6005を通過してきた流れに限定されるように、流れを方向付ける。よって、漏洩を通じた水分損失が呼気流から最小化される。
【0158】
図28に示すような吸気時において、隔壁部材BF1およびBF2は、HME6005を通じて周辺チャンバPC1およびPC2から離隔方向かつ患者の気道の入口へ向かう方向に既に流れた吸気流れ6Cを方向付けるように機能する。さらに、漏洩ポートLP1およびLP2により、吸気時の周辺チャンバPC1およびPC2中ヘの流れがHME6005(例えば、流路3Bおよび3C)を通過していない流れから発生することが促進される。すなわち、密閉漏洩5に起因して周辺チャンバPC1およびPC2中の圧力が主要チャンバMCと比較して低下した場合、漏洩ポートLP1およびLP2を患者に対してHME6005の反対側に配置することにより、吸気流れがHME6005を迂回して、周辺チャンバPC1およびPC2中に流入した後周囲に流れることが可能になる。よって、漏洩ポートLP1およびLP2により、HME6005からの水分損失が制限される。
【0159】
本技術の一実施例により1つ以上の減容部材は、任意の適切なサイズおよび構成の患者インターフェースのプレナムチャンバに適用することが可能であることが理解されるべきである。例えば、プレナムチャンバは、多様な様態で確立され得、1つ以上の多様な材料特性を有する1つ以上の多様な材料によって形成され得る(例えば、一体型のワンピースプレナムチャンバ、プレナムチャンバを規定するように取り付けられたかまたは別の様態で形成された1つ以上の別個の構成要素)ことが理解されるべきである。このような別の実施例において、1つ以上の減容部材は、チャンバの前壁部位および/またはチャンバの密閉形成構造へ設けられ得る(例えば、接続され得る)。
【0160】
また、本技術の態様について、より大きな内容積の患者インターフェース(例えば、フルフェース型マスク)への特定の用途を持つものとして述べてきた。しかし、本技術の1つ以上の態様は、他の適切なインターフェース種類(例えば、デッドスペース体積の低減(例えば、CO2の再呼吸の改善および/またはHMEの有効性向上)のための鼻マスク)に適用され得ることが理解されるべきである。
【0161】
5.3.3 位置決めおよび安定化構造
本技術の患者インターフェース3000の密閉形成構造3100は、使用時において位置決めおよび安定化構造3300によって密閉位置において保持され得る。
【0162】
本技術の一形態において、患者が睡眠時に装着されるように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、装置の感知される嵩または実際の嵩を低減するように、目立たない外形または断面厚さを有する。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、矩形断面を有する少なくとも1つのストラップを含む。一実施例において、位置決めおよび安定化構造3300は、少なくとも1つの平坦ストラップを含む。
【0163】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、織物患者接触層、発泡材料内側層および織物外側層の積層物から構成されたストラップを含む。一形態において、発泡材料は、湿気(例えば、汗)がストラップを通過できるような多孔性である。一形態において、織物外側層は、フック材料部分と係合するループ材料を含む。
【0164】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、伸張可能である(例えば、弾力性と共に伸張可能である)ストラップを含む。例えば、ストラップは、使用時にはピンと張った状態にされて、クッションを患者の顔の一部と密着させる力を方向付けるように、構成され得る。一実施例において、ストラップは、タイとして構成され得る。
【0165】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、屈曲可能であり例えば非剛性であるストラップを含む。本態様の利点として、患者が睡眠時に体を横たえたときにストラップがより快適になっている点がある。
【0166】
本技術の特定の形態において、位置決め/安定化構造3300により、特定のサイズの頭部および/または形状の顔に対応するように構成された保持力が得られる。例えば、一形態の位置決め/安定化構造3300により、小さなサイズの頭ではなく大きなサイズの頭に適した保持力が得られる。別の実施例において、位置決め/安定化構造3300の一形態により、大きなサイズの頭ではなく小さなサイズの頭に適した保持力が得られる。
【0167】
5.3.4 通気
一形態において、患者インターフェース3000は、吐き出されたガス(例えば、二酸化炭素)の押し出しを可能にするように構成および配置された通気部3400を含む。
【0168】
本技術による一形態の通気部3400は、複数の穴(例えば、約20個~約80個の穴または約40個~約60個の穴または約45個~約55個の穴)を含む。
【0169】
通気部3400は、プレナムチャンバ3200内に配置され得る。あるいは、通気部3400は、非連動構造(例えば、回り継ぎ手)内に配置される。
【0170】
5.3.5 非連動構造(単数または複数)
一形態において、患者インターフェース3000は、少なくとも1つの非連動構造(例えば、回り継ぎ手または球窩)を含む。
【0171】
5.3.6 接続ポート
接続ポート3600は、空気回路4170への接続を可能にする。
【0172】
5.3.7 前額支持部
一形態において、患者インターフェース3000は、前額支持部3700を含む。
【0173】
5.3.8 窒息防止弁
一形態において、患者インターフェース3000は、窒息防止弁を含む。
【0174】
5.3.9 ポート
本技術の一形態において、患者インターフェース3000は、プレナムチャンバ3200内の量へのアクセスを可能にする1つ以上のポートを含む。一形態において、これにより、臨床医が補充酸素を供給することが可能になる。一形態において、これにより、プレナムチャンバ3200内のガス(例えば、圧力)の特性を直接測定することが可能になる。
【0175】
5.4 用語集
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
【0176】
5.4.1 一般
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態において、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味し得る。
【0177】
雰囲気:本技術の特定の形態において、「雰囲気」という用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者を直接包囲するものを意味するものとしてとられるべきである。
【0178】
例えば、加湿器に対する雰囲気湿度とは、加湿器を直接包囲する空気の湿度であり得る(例えば、患者が睡眠をとっている部屋の内部の湿度)。このような雰囲気湿度は、患者が睡眠をとっている部屋の外部の湿度と異なる場合がある。
【0179】
別の実施例において、雰囲気圧力は、身体の直接周囲または外部の圧力であり得る。
【0180】
特定の形態において、雰囲気(例えば、音響)ノイズは、例えばRPTデバイスから発生するかまたはマスクまたは患者インターフェースから発生するノイズ以外の、患者の居る部屋の中のバックグラウンドノイズレベルとみなすことができる。雰囲気ノイズは、部屋の外のソースから発生し得る。
【0181】
自動的な気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の通知の存在または不在に応じて、例えば、呼吸間に最小限界と最大限界との間で治療圧力を自動的に調節することが可能なCPAP療法。
【0182】
経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)療法:治療圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である呼吸圧療法。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼気時において若干上昇し、吸入時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上側気道妨害の通知の検出に応答して増加され、部分的な上側気道妨害の通知の不在時において低減される)。
【0183】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量とは、瞬間の量を指し得る。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。流量には、符号Qが付与され得る。「流量」を簡略的に「流れ」と呼ぶ場合もある。
【0184】
患者の呼吸の実施例において、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに陽圧であり得るため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。合計流量Qtは、RTデバイスから送出される空気の流量である。合計流量Qtは、RPTデバイスから退出する空気の流量である。通気孔流量Qvは、吐き出されたガスの流出を可能にするために通気孔から退出する空気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムまたは他の場所からの漏洩の流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸系中に受容される空気の流量である。
【0185】
漏洩:「漏洩」という用語は、意図しない空気流れとしてとられる。一実施例において、漏洩は、マスクと患者の顔との間のシールが不完全であることに起因して発生し得る。別の実施例において、漏洩は、周囲に対する回りエルボーにおいて発生し得る。
【0186】
ノイズ伝導(音響):本文書において、伝導ノイズとは、空気圧式経路(例えば、空気回路および患者インターフェースおよびその内部の空気)によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、伝導ノイズは、空気回路の端部における音圧レベルを測定することにより、定量化され得る。
【0187】
ノイズ放射(音響):本文書において、放射ノイズとは、周囲空気によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、放射ノイズは、当該対象の音響パワー/圧力レベルをISO3744に従って測定することにより、定量化され得る。
【0188】
ノイズ通気(音響):本文書において、通気ノイズとは、任意の通気(例えば、患者インターフェース中の通気穴)を通じた空気流れにより生成されるノイズを指す。
【0189】
患者:呼吸疾患に罹患しているかまたはしていない人。
【0190】
圧力::単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で表現測定され得る(例えば、cmH2O、g-f/cm2、及びヘクトパスカル)。1cmH2Oは、1g-f/cm2に等しく、およそ0.98ヘクトパスカルである。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmH2Oの単位で付与される。
【0191】
患者インターフェース中の圧力には記号Pmが付与され、現時点においてマスク圧力Pmが達成すべき目標値を表す治療圧力には記号Ptが付与される。
【0192】
呼吸圧力治療(RPT):雰囲気に対して典型的には陽圧である治療圧力における空気供給の気道入口への付加。
【0193】
人工呼吸器:患者が呼吸動作の一部または全てを行い際に圧力補助を提供する機械的デバイス。
【0194】
5.4.1.1 材料
シリコーンまたはシリコーンエラストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコーンについて言及される場合、液体シリコーンゴム(LSR)または圧縮成形シリコーンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの一形態として、Dow Corningによって製造されるSILASTIC(この登録商標下において販売される製品群に含まれる)がある。別のLSR製造業者として、Wackerがある。他に逆の明記無き限り、例示的形態のLSRのASTMD2240によって測定した場合のショアA(またはタイプA)押込み硬さは、約35~約45である。
【0195】
ポリカーボネート:典型的には、ビスフェノールAカーボネートの透明な熱可塑性ポリマーである。
【0196】
5.4.1.2 機械的特性
弾性:弾性変形時にエネルギーを吸収することおよび除荷時にエネルギーを解放することが可能な材料の能力。
【0197】
「弾性」:除荷時に実質的に全てのエネルギーを解放する。例えば特定のシリコーンおよび熱可塑性エラストマーを含む。
【0198】
硬度:材料自体の変形に抵抗する能力(例えば、ヤング係数または規格化されたサンプルサイズ上において測定された押込硬さスケールによって記述されたもの)。
【0199】
「軟性」材料は、シリコーンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)を含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得る。
【0200】
「硬質」材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、鋼またはアルミニウムを含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得ない。
【0201】
構造または構成要素の剛度(または剛性):構造または構成要素が負荷を受けたときに変形に抵抗する能力。負荷は、力またはモーメントであり得る(例えば、圧縮、張力、屈曲またはねじれ)。構造または構成要素は、異なる方向において異なる抵抗を提供し得る。
【0202】
「フロッピー」構造または構成要素:自重を支持させられた際に比較的短期間(例えば、1秒)以内に形状を変化させる(例えば、屈曲する)構造または構成要素。
【0203】
「剛性」の構造または構成要素:使用時において典型的に遭遇する負荷を受けた際に実質的に形状変化の無い構造または構成要素。このような使用の一実施例として、患者気道への入口との密閉関係を持つ患者インターフェースをおよそ20~30cmH2Oの圧力の負荷において設定および維持することがあり得る。
【0204】
一実施例として、I型鋼は、第2の直角方向と比較して第1の方向におい異なる屈曲剛度(屈曲負荷に対する抵抗)を含み得る。別の実施例において、構造または構成要素は、第1の方向においてはフロッピーであり得、第2の方向においては剛性であり得る。
【0205】
5.4.2 呼吸サイクル
無呼吸:いくつかの定義によれば、無呼吸とは、所定の閾値を下回った流れが例えば10秒間の継続期間にわたって継続した場合に発生したと言われる。閉塞性無呼吸とは、患者の努力にもかかわらず、何らかの気道閉塞により空気の流れが許されないときに発生すると言われる。中枢性無呼吸とは、気道が開通しているにも関わらず呼吸努力の低下または呼吸努力の不在に起因して無呼吸が検出された状態を指すと言われる。混合無呼吸とは、呼吸努力の低下または不在が気道閉塞と同時発生した状態を指すと言われる。
【0206】
呼吸数:通常は1分当たりの呼吸回数で測定される、患者の自発呼吸数。
【0207】
負荷サイクル:吸入時間Tiの合計呼吸時間Ttotに対する比。
【0208】
労作(呼吸):呼吸努力は、呼吸しようとしている人の自発呼吸によって行われる動きを指すと言われる。
【0209】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流れの開始から吸気流れの開始までの期間。
【0210】
流量制限:流量制限は、患者による努力の増大が流量の対応する増大を引き起こさない患者の呼吸における状況であると解釈される。呼吸サイクルの吸気部分において流量制限が発生した場合、当該流量制限は吸気流量制限と称することができる。呼吸サイクルの呼気部分において流量制限が発生した場合、当該流量制限は呼気流量制限と称することができる。
【0211】
流れ制限吸息の波形の種類:
(i)平坦化:上昇の後に比較的平坦な部位が続いた後、下降が発生すること。
(ii)M字型:立ち上がりにおいて1つおよび立ち下がりにおいて1つの2つの局所的ピークを持ち、これら2つのピークの間に比較的平坦な部位がある。
(iii)椅子状:単一の局所的ピークを持ち、このピークが立ち上がり部分に発生した後、比較的平坦な部位が続く。
(iv)逆椅子状:比較的平坦な部位の後に単一の局所的ピークが続き、このピークが立ち下がり部分に発生する。
【0212】
呼吸低下:一部の定義によれば、呼吸低下は、流れの中断ではなく、流れの低下を意味する。一形態において、閾値速度を下回った流れ低下が継続期間にわたって続いた場合、呼吸低下が発生したと言われる。呼吸努力の低下に起因して呼吸低下が検出された場合、中枢性呼吸低下が発生したと言われる。成人の一形態において以下のうちいずれかが発生した場合、呼吸低下と見なされ得る:
(i)患者呼吸の30%の低下が少なくとも10秒+関連する4%の脱飽和、または、
(ii)患者呼吸の(50%未満の)低下が少なくとも10秒間継続し、関連して脱飽和が少なくとも3%であるかまたは覚醒が発生する。
【0213】
過呼吸:流れが通常の流量よりも高いレベルまで増加すること。
【0214】
呼吸サイクルの呼気部分:吸気流れの開始から吸気流れの開始までの期間が、呼吸サイクルの吸気部分としてとられる。
【0215】
開通性(気道):気道が開いている度合いまたは気道が開いている範囲。気道開通性とは、開口である。気道開通性の定量化は、開通性を示す値(1)と、閉鎖(閉塞)を示す値(0)と共に行われ得る。
【0216】
呼吸終末陽圧(PEEP):肺中の大気を越える圧力であり、呼気終了時に存在する。
【0217】
ピーク流量(Qpeak):呼吸流れ波形の吸気部分における流量最大値。
【0218】
呼吸気流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸気空気流量(Qr):これらの用語は、RPTデバイスの呼吸空気流量の推定を指すものとして理解され得、通常リットル/分で表される患者の実際の呼吸流量である「真の呼吸流量」または「真の呼吸気流量」と対照的に用いられる。
【0219】
1回換気量(Vt):余分な努力をせずに通常の呼吸時に吸い込まれたかまたは吐き出された空気の量である。
【0220】
(吸気)時間(Ti):呼吸流量波形の吸気部分の継続期間。
【0221】
(呼気)時間(Te):呼吸流量波形の呼気部分の継続期間。
【0222】
(合計)時間(Ttot):呼吸流量波形の一つの吸気部分の開始と呼吸流量波形の次の吸気部分の開始との間の合計継続期間。
【0223】
典型的な最近の換気:所定の間スケールにわたる換気Ventの直近値が密集する傾向となる換気値(すなわち、換気の直近値の中心の傾向の度合い)。
【0224】
上気道閉塞(UAO):部分的な上気道閉塞および合計上気道閉塞両方を含む。上側気道上の圧力差の増加(スターリングレジスタ挙動)と共に流量がわずかに増加するかまたは低下し得る流量制限の状態と関連し得る。
【0225】
換気(Vent):患者の呼吸システムによって行われるガス交換率の測定。換気の測定は、単位時間あたりの吸息および呼気流のうち片方または双方を含み得る。1分あたりの体積として表される場合、この量は、「分換気」と呼ばれることが多い。分換気は、単に体積として付与されることもあり、1分あたりの体積として理解される。
【0226】
5.4.3 換気
適応サーボ人工呼吸器(ASV):一定の目標換気を持つのではなく変更が可能なサーボ人工呼吸器。変更可能な目標換気は、患者の何らかの特性(例えば、患者の呼吸特性)から学習され得る。
【0227】
バックアップレート:人工呼吸器のパラメータであり、(自発呼吸努力によってトリガされない場合に)人工呼吸器から患者へ送達される最小呼吸速度(典型的には、1分あたりの呼吸数)を確立させる。
【0228】
サイクル:人工呼吸器の吸息フェーズの終了。自発呼吸をしている患者へ人工呼吸器から呼吸を送達する場合、呼吸サイクルの吸息部分の終了時において、当該人工呼吸器は、呼吸送達を停止するようサイクルされると言われる。
【0229】
呼気の気道陽圧(EPAP):、人工呼吸器が所与の時期に達成しようとする所望のマスク圧力の生成のために、呼吸内において変化する圧力が付加される基本圧力。
【0230】
終了時呼気圧力(EEP):呼吸の呼気部分の終了時において人工呼吸器が達成しようとする所望のマスク圧力。圧力波形テンプレートΠ(Φ)が呼気終了時にゼロの値である(すなわち、 Φ=1のときに Π(Φ)=0である場合)、EEPはEPAPに等しい。
【0231】
吸息の気道陽圧(IPAP):呼吸の吸息部分時に人工呼吸器が達成しようとする最大の所望のマスク圧力。
【0232】
圧力補助:人工呼吸器吸気時における当該人工呼吸器呼気時における圧力増加を示す数であり、吸気時の最大値と、基本圧力との間の圧力差を主に意味する(例えば、PS=IPAP-EPAP)。いくつかの文脈において、圧力補助とは、(人工呼吸器が実際に達成する差ではなく)人工呼吸器が達成しようとする差を意味する。
【0233】
サーボ人工呼吸器:患者換気を有しかつ目標換気を有する人工呼吸器であり、患者換気を目標換気に近づけるために圧力補助レベルを調節する。
【0234】
自発/タイミング(S/T):自発呼吸している患者の呼吸の開始を検出しようとする、人工呼吸器または他のデバイスのモード。しかし、デバイスが所定期間の間に呼吸を検出できない場合、デバイスは、呼吸送達を自動的に開始する。
【0235】
スイング:圧力補助に相当する用語。
【0236】
トリガ:人工呼吸器が自発呼吸する患者へ空気の呼吸を送達する場合、患者自身が呼吸サイクルの呼吸部分を開始したとき、当該人工呼吸器が呼吸送達を行うようトリガされたと言う。
【0237】
典型的な最近の換気:典型的な最近の換気Vtypは、一定の所定の時間スケールにわたって最近の換気測定が密集する傾向となる一定範囲の値である。例えば、最近の履歴にわたる換気測定の中心的傾向の測定は、典型的な最近の換気の適切な値であり得る。
【0238】
5.4.4 解剖学的構造
5.4.4.1 顔の解剖学的構造
翼:外部の外壁または各鼻孔の「翼」(複数形:alar)
【0239】
Alare:鼻翼上の最外側の点。
【0240】
翼曲率(または翼頂)点:各翼の曲線状基準線における最後方点であり、翼および頬の結合によって形成される折り目において見受けられる。
【0241】
耳介:耳の視認できる部分全体。
【0242】
(鼻)骨格:鼻の骨格は、鼻骨、上顎骨の前頭突起および前頭骨の鼻部分を含む。
【0243】
(鼻)軟骨格:鼻の軟骨格は、中隔軟骨、外側軟骨、大軟骨および小軟骨を含む。
【0244】
鼻柱:鼻孔を分離する皮膚片であり、鼻尖点から上唇へ延びる。
【0245】
鼻柱角度:鼻孔の中点を通じて引かれる線と、鼻下点と交差しつつフランクフルト水平に対して垂直に引かれる線との間の角度。
【0246】
フランクフォート水平面:眼窩縁の最下側点から左耳点へ延びる線。耳点は、ノッチ上側から耳介の耳珠への最も深い点である。
【0247】
眉間:軟組織中に配置され、前額部の正中矢状において最も顕著な点。
【0248】
外側鼻軟骨:軟骨の概して三角形の板。その上側周縁は鼻骨および上顎骨の前頭突起へ取り付けられ、その下側周縁は大鼻翼軟骨へ接続される。
【0249】
唇、下側(下唇中点):
【0250】
唇、上側(上唇点):
大鼻翼軟骨:軟骨の板であり、外側鼻軟骨の下側に配置される。これは、鼻孔の前方部分の周囲において曲線状になる。その後端は、3つまたは4つの翼の小軟骨を含む強靱な線維膜により、上顎骨の前頭突起へ接続される。
【0251】
鼻孔(小鼻):概して楕円体の翼穴であり、鼻腔への入口を形成する。鼻孔の単数形は鼻孔(小鼻)である。これらの鼻孔は、鼻隔膜によって分離される。
【0252】
鼻唇溝または鼻唇折り目:皮膚の折り目または溝であり、鼻の各側から口腔の角部へ延びて、頬を上唇から分離させる。
【0253】
鼻唇角:鼻柱と上唇との間の角度であり、鼻下点と交差する。
【0254】
下耳下縁点:耳介の顔の皮膚への取り付けの最低点。
【0255】
下耳上縁点:耳介の顔の皮膚への取り付けの最高点。
【0256】
鼻尖点:鼻の最も突出した点または先端であり、頭部の部分の残り部分の側面図中に確認され得る。
【0257】
人中:鼻隔膜の下側境界から上唇領域中の唇の上部へ延びる正中線溝。
【0258】
ポゴニオン:軟組織上に配置された、顎の最前方中点。
【0259】
鼻梁(鼻):鼻堤は、鼻の正中線隆起であり、セリオンから鼻尖点へ延びる。
【0260】
矢状面:前方(前)から後方(後)へ続く垂直面であり、本体を右半分および左半分に分割する。
【0261】
セリオン:軟組織上に配置された、前頭鼻骨縫合の領域上の最も凹状の点である。
【0262】
中隔軟骨(鼻):鼻中隔軟骨は、隔膜の一部であり、鼻腔の前部分を分割する。
【0263】
鼻翼最下点:翼ベースの下側周縁における点であり、翼ベースは上(上)唇の皮膚と接合する。
【0264】
鼻下点:軟組織上に配置され、鼻柱が正中矢状における上唇と合体する点。
【0265】
スプラメンターレ:下唇中点と軟組織ポゴニオンとの間の下唇の正中線中の最も凹状の点。
【0266】
5.4.4.2 頭蓋骨の解剖学的構造
前頭骨:前頭骨は、前額部として知られる領域に対応する大型垂直部分である前頭鱗を含む。
【0267】
下顎:下顎は、下側顎部を形成する。オトガイ隆起は、顎部の骨隆起であり、顎を形成する。
【0268】
上顎骨:上顎骨は、上側顎部を形成し、下顎の下側および眼窩の下側に配置される。上顎骨の前頭突起は、鼻の側部によって上方に突出し、その外側境界の部分を形成する。
【0269】
鼻骨:鼻骨は、2つの小さな長方形骨であり、個人によってサイズおよび形態が異なる。鼻骨は、顔の中間部分および上部分に並んで配置され、その接合により鼻の「ブリッジ」を形成する。
【0270】
ナジオン:前頭骨および2本の鼻骨の交差であり、眼と鼻のブリッジの上側との間に直接設けられた凹領域である。
【0271】
後頭骨:後頭骨は、頭蓋の裏および下側部分に配置される。後頭骨は、楕円穴である大後頭孔を含み、この穴を通じて、頭蓋内腔が椎管と連痛する。大後頭孔の後側の曲面板は、後頭鱗である。
【0272】
眼窩:頭蓋骨中の骨空洞であり、眼球を含む。
【0273】
頭頂骨:頭頂骨は、相互に接合されると頭蓋の頂部および側部を形成する骨である。
【0274】
側頭骨:側頭骨は、頭蓋骨のベースおよび側部上に配置され、こめかみとして知られる顔の部分を支持する。
【0275】
頬骨:顔に含まれる2つの頬骨は、顔の上側部分および外側部分中に配置され、頬の隆起を形成する。
【0276】
5.4.4.3 呼吸系の解剖学的構造
横隔膜:シート状の筋肉であり、胸郭下部上に延びる。横隔膜は、心臓、肺および肋骨を含む胸腔を腹腔から分離させる。横隔膜が収縮すると、胸腔の容量が増加し、肺中に空気が引き込まれる。
【0277】
喉頭:声帯ひだを収容する喉頭または発声器であり、咽頭の下部(下咽頭)を気管へ接続させる。
【0278】
肺:ヒトにおける呼吸臓器。肺の伝導性ゾーンは、気管、気管支、気管支、および終末細気管支を含む。呼吸ゾーンは、呼吸気管支、肺胞管および肺胞を含む。
【0279】
鼻腔:鼻腔(または鼻窩)は、顔の中央の鼻の上方および後方の空気が充填された大きな空間である。鼻腔は、鼻中隔と呼ばれる垂直フィンによって2つに分割される。鼻腔の側部には、鼻甲介(単数形は「甲介」)または鼻甲介と呼ばれる3つの水平伸長物がある。鼻腔の前方には鼻があり、後方は後鼻孔を介して鼻咽頭内に繋がる。
【0280】
咽頭:鼻腔の直接下側(下方)に配置されかつ食道および喉頭の上方に配置された咽喉の部分。咽頭は、従来から以下の3つの部分へ区分される:鼻咽頭(上咽頭)(咽頭の鼻部分)、中咽頭(中咽頭)(咽頭の口部分)、および咽喉(下咽頭)。
【0281】
5.4.5 患者インターフェース
窒息防止弁(AAV):マスクシステムの構成要素またはサブアセンブリであり、フェールセーフ様態での雰囲気中への開口により、患者による過度のCO2の再呼吸の危険性を低減させる。
【0282】
エルボー:エルボーは、内部を移動する空気の流れの軸を方向付けて、角度を通じて方向を変化させる構造の実施例である。一形態において、角度はおよそ90度であり得る。別の形態において、角度は、90度超過または未満であり得る。肘は、ほぼ円形の断面を持ち得る。別の形態において、肘は、楕円または矩形の断面を持ち得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素に対して例えば約360度で回転可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素から例えばスナップ接続を介して取り外すことが可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、製造時にワンタイムスナップを介して噛み合い構成要素へ組み付けることが可能である一方、患者が取り外すことはできない。
【0283】
フレーム:フレームは、ヘッドギアを接続する2つ以上の点間の引張荷重を支持するマスク構造を意味するものとしてとられる。マスクフレームは、マスク中の非気密負荷支持構造であり得る。しかし、いくつかの形態のマスクフレームは、気密であってもよい。
【0284】
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭部上において使用されるように設計された、一形態の位置決めおよび安定化構造を意味するものとしてとられる。例えば、ヘッドギアは、患者インターフェースを呼吸治療の送達のために患者の顔上の所定位置に配置および保持するように構成された1つ以上の支柱、タイおよび補剛材の集合を含み得る。いくつかのタイは、柔らかい可撓性の弾性材料(例えば、発泡材料および織物の層状複合材)によって形成される。
【0285】
膜:膜は、典型的には肉薄の要素を意味するものとしてとられ、好適には屈曲に対して実質的に抵抗せずかつ伸縮に対しては抵抗する。
【0286】
プレナムチャンバ:マスクプレナムチャンバは、空間の容積を少なくとも部分的に封入する壁を有する患者インターフェースの一部を意味するものとしてとられ、容積中の空気は、加圧されて使用時において気圧を超える。シェルは、マスクプレナムチャンバの壁の一部を形成し得る。
【0287】
シール:名詞(「シール」)として用いられる場合は構造を指し得、動詞(「密閉(する)」)として用いられる場合はその効果を指し得る。2つの要素は、別個の「シール」要素自体を必要とすることなく両者間において「シール」するかまたは「密閉」効果を得るように、構築および/または配置され得る。
【0288】
シェル:シェルは、屈曲、引っ張りおよび圧縮剛性を有する曲線状の比較的肉薄構造を意味するものとしてとられる。例えば、マスクの曲線状構造壁は、シェルであり得る。いくつかの形態において、シェルはファセットされ得る。いくつかの形態において、シェルは気密であり得る。いくつかの形態において、シェルは気密でない場合もある。
【0289】
補剛材:補剛材は、別の構成要素の剛軟度を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0290】
支柱:支柱は、別の構成要素の圧縮抵抗を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0291】
回り継ぎ手(名詞)構成要素のサブアセンブリであり、共通軸の周囲において好適には独立して好適には低トルク下において回転するように構成される。一形態において、回り継ぎ手は、少なくとも360度の角度で回転するように構成され得る。別の形態において、回り継ぎ手は、360度未満の角度で回転するように構成され得る。空気送達導管の文脈において用いられる場合、構成要素のサブアセンブリは好適には、一対組み合わせの円筒導管を含む。使用時において、回り継ぎ手からの空気漏れはほとんど無い。
【0292】
結び目(名詞):張力に抵抗するように設計された構造。
【0293】
通気:(名詞):マスクまたは導管の内部の周囲空気への空気流れを可能にする構造であり、吐き出されたガスの臨床的に有効な洗い流しを可能にする。例えば、臨床的に有効な洗い流しにおいては、約10リットル/分~約100リットル/分の流量がマスク設計および治療圧力に応じて用いられ得る。
【0294】
5.4.6 密閉形成構造
本技術による製品は、1つ以上の三次元機械構造(例えば、マスククッションまたはインペラ)を含み得る。三次元構造は、二次元表面によって制限され得る。これらの表面は、関連付けられた表面の方向、位置、機能または他の何らかの特性を記述するためのラベルを用いて区別され得る。例えば、構造は、前表面、後表面、内面および外面のうち1つ以上を含み得る。別の実施例において、クッション構造は、顔を含む(例えば、外側の)表面と、別個の顔を含まない(例えば、下側または内側の)表面を含み得る。別の実施例において、構造は、第1の表面および第2の表面を含み得る。
【0295】
三次元構造の形状および表面の説明を容易にするために、構造の表面を通じた点pにおける断面について先ず検討する。
図3B~
図3Fを参照されたい。
図3B~
図3Fは、表面上における点pにおける断面例と、その結果得られる平面曲線の例とを示す。
図3B~
図3Fは、pにおける外向き法線ベクトルも示す。pにおける外向き法線ベクトルは、表面から離隔方向に延びる。いくつかの実施例において、架空の小さな人が表面上に直立している観点から、この表面について説明する。
【0296】
5.4.6.1 一次元における曲率
pにおける平面曲線の曲率は、符号(例えば、正、負)および大きさ(例えば、pにおいて曲線に接する円形の1/半径)を持つものとして記述され得る。
【0297】
正の曲率:pにおける曲線が外向き法線に向かって曲がる場合、その点における曲率は、正の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上り坂を歩行する必要がある)。
図3B(
図3Cと比較して比較的大きな正の曲率)および
図3C(
図3Bと比較して比較的小さな正の曲率)を参照されたい。このような曲線を、凹状と呼ぶことが多い。
【0298】
ゼロ曲率:pにおける曲線が直線である場合、曲率はゼロとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上向きでも下向きでもない水平面を歩行することができる)。
図3Dを参照されたい。
【0299】
負の曲率:pにおける曲線が外向き法線から離隔方向に曲がる場合、その点およびその方向における曲率は、負の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、下り坂を歩行する必要がある)。
図3E(
図3Fと比較して比較的小さな負の曲率)および
図3F(
図3Eと比較して比較的大きな負の曲率)を参照されたい。このような曲線は、凸状と呼ばれることが多い。
【0300】
5.4.6.2 二次元表面の曲率
本技術による二次元表面上の所与の点における形状の記述は、複数の垂直断面を含み得る。複数の断面は、外向き法線(「法平面」)を含む面において表面を切断し得、各断面は、異なる方向においてとられ得る。各断面の結果、対応する曲率を有する平面曲線が得られる。その点における異なる曲率は、同一符号または異なる符号を持ち得る。その点における曲率はそれぞれ、(例えば、比較的小さな)大きさを有する。
図3B~
図3F中の平面曲線は、特定の点におけるこのような複数の断面の例であり得る。
【0301】
主要な曲率および方向:曲線の曲率が最大値および最小値をとる法平面の方向を主要な方向と呼ぶ。
図3B~
図3Fの実施例において、最大曲率は
図3Bにおいて発生し、最小は
図3Fにおいて発生するため、
図3Bおよび
図3Fは、主要な方向における断面である。pにおける主要な曲率は、主要な方向における曲率である。
【0302】
表面の領域:表面上の連結された点の集合。領域内のこの1組の点は、類似の特性(例えば、曲率または符号)を持ち得る。
【0303】
サドル領域:(上り坂または下り坂を歩行し得る架空の人が向く方向に応じて)各点において主要な曲率が反対の符号(すなわち、片方が正の符号および他方が負の符号)を有する領域。
【0304】
ドーム領域:各点において主要な曲率が同一符号(双方とも正(「凹状ドーム」)または双方とも負(「凸状ドーム」))を持つ領域。
【0305】
円筒領域:1つの主要な曲率がゼロ(または例えば製造交差内のゼロ)をとり、他方の主要な曲率が非ゼロである領域。
【0306】
平面領域:主要な曲率双方がゼロであるか(または例えば製造交差内のゼロである)表面の領域。
【0307】
表面の縁部:表面または領域の境界または限界。
【0308】
経路:本技術の特定の形態において、「経路」は、数学的-トポロジー的意味合いにおける経路(例えば、表面上におけるf(0)からf(1)への連続空間曲線)を意味するものとしてとられる。本技術の特定の形態において、「経路」は、例えば表面上の1組の点を含むルートまたはコースとして記述され得る。(架空の人の経路は、表面上において歩行する場所であり、庭の経路に類似する)。
【0309】
経路長さ:本技術の特定の形態において、「経路長さ」とは、表面に沿ったf(0)からf(1)への距離(すなわち、表面上の経路に沿った距離)を指すものとしてとられる。表面上の2つの点間において1つよりも多くの経路があり得、このような経路は、異なる経路長さを持ち得る。(架空の人の経路長さは、表面上を経路に沿って歩行する距離である)。
【0310】
直線距離:直線距離は、表面上の2つの点間の距離であるが、表面は考慮しない。平面領域上において、表面上の2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する表縁上の距離がある。非平面表面上において、2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する経路は存在し得ない。(架空の人にとって、直線距離は、「カラスが飛ぶ」距離に対応する)。
【0311】
5.4.6.3 空間曲線
空間曲線:平面曲線と異なり、空間曲線は、任意の特定の平面内に必ずしも存在しない。空間曲線は、三次元空間の一次元ピースとみなされ得る。DNA螺旋の鎖上を歩行している架空の人物は、空間曲線に沿って歩行する。典型的なヒトの左耳は、左手螺旋を含む(
図3Pを参照)。典型的なヒトの右耳は、右手螺旋を含む(
図3Qを参照)。
図3Rは、右手螺旋を示す。構造の縁部(例えば、膜または羽根車の縁部)は、空間曲線をたどり得る。一般的に、空間曲線は、空間曲線上の各点における曲率およびねじれによって記述され得る。ねじれとは、平面から発生する曲線の様態の尺度である。ねじれは、符号および大きさを有する。空間曲線上の点におけるねじれは、当該点における接線ベクトル、法線ベクトルおよび従法線ベクトルに対して特徴付けられ得る。
【0312】
接線単位ベクトル(または単位接線ベクトル):曲線上の各点について、当該点におけるベクトルは、当該点からの方向および大きさを指定する。接線単位ベクトルとは、当該点における曲線と同じ方向を向く単位ベクトルである。架空の人物が曲線に沿って飛行しており、特定の点において自身の車両から落ちた場合、接線ベクトルの方向は、その人物が移動しているはずの方向である。
【0313】
単位法線ベクトル:架空の人物が曲線に沿って移動している場合、この接線ベクトルそのものが変化する。接線ベクトルが変化している方向と同じ方向を向く単位ベクトルは、単位主法線ベクトルと呼ばれる。これは、接線ベクトルに対して垂直である。
【0314】
従法線単位ベクトル:従法線単位ベクトルは、接線ベクトルおよび主法線ベクトル双方に対して垂直である。その方向は、右手の法則(例えば
図3Oを参照)または表すあるいは左手の法則(
図3N)によって決定され得る。
【0315】
接触平面:単位接線ベクトルおよび単位主法線ベクトルを含む平面。
図3Nおよび
図3Oを参照されたい。
【0316】
空間曲線のねじれ:空間曲線の点におけるねじれとは、当該点における従法線単位ベクトルの変化速度の大きさである。これは、曲線の接触平面からの逸脱の程度を測定する。平面内にある空間曲線のねじれはゼロである。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的少量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的小さい(例えば、緩やかに傾斜する螺旋状経路)。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的大量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的大きい(例えば、急勾配に傾斜する螺旋状経路)。
図3Rを参照して、T2>T1であるため、
図3Rの螺旋の最上部コイルの近隣のねじれの大きさは、
図3Rの螺旋の最下部コイルのねじれの大きさよりも大きい。
【0317】
図3Oの右手の法則を参照して、右手従法線の方向に向かって曲がる空間曲線は、右手方向に正のねじれとしてみなされ得る(例えば、
図3Rに示すような右手螺旋)。右手従法線方向から離隔方向を向く空間曲線は、右手の負のねじれを持つものとしてみなされ得る(例えば、左手螺旋)。
【0318】
同様に、左手の法則(
図3Nを参照)を参照して、左手従法線方向を向く空間曲線は、左手の正のねじれ(例えば、左手螺旋)を持つものとしてみなされ得る。よって、左手の正の方向は、右手の負の方向に相当する。
図3Sを参照されたい。
【0319】
5.4.6.4 穴
表面は、一次元穴を持ち得る(例えば、平面曲線または空間曲線によって境界付けられた穴)。穴を含む肉薄構造(例えば、膜)の場合、この構造は、一次元穴を有するものとして記述され得る。例えば、
図3Iに示す構造の表面中の一次元穴が平面曲線301Dによって境界付けられる様子を参照されたい。
【0320】
構造は、二次元穴(例えば、表面によって境界付けられた穴)を持ち得る。例えば、可膨張性タイヤは、タイヤ内面によって境界付けられた二次元穴を有する。別の実施例において、空気またはゲルのための空洞を備えたブラダーは、二次元穴を持ち得る。例えば、
図3Lのクッションと、
図3M中のその例示的断面図とを参照されたい。さらに別の実施例において、導管は、(例えばその入口またはその出口において)一次元穴を含み得、導管の内面によって境界付けられた二次元穴を含み得る。
図3Kに示す構造を通じておりかつ表面302Dによって境界付けられた二次元穴も参照されたい。
【0321】
5.5 他の注意事項
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的については全ての著作権を保持する。
【0322】
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値または介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立的に含まれるこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超えた場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0323】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として実行される場合、他に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であると理解される。
【0324】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法および材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験において用いることが可能であるが、限られた数の例示的方法および材料が本明細書中に記載される。
【0325】
特定の材料が構成要素の構築に好適に用いられるものとして記載されているが、特性が類似する明白な代替的材料が代替物として用いられる。さらに、それとは反対に記載無き限り、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解されるため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0326】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、その複数の均等物を含む点に留意されたい。
【0327】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法および/または材料の開示および記載、参考のために援用される。本明細書中に記載の公開文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していない、認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0328】
詳細には、「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0329】
詳細な説明において用いられる見出しは、読者の便宜のためのものであり、本開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべきではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解釈において用いられるべきではない。
【0330】
本明細書中の技術について、特定の実施形態を参照して述べてきたが、これらの実施形態は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る。例えば、「first(第1の)」および「second(第2の)」(など)という用語が用いられるが、他に明記無き限り、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために用いられる。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このような順序が変更可能でありかつ/またはその様態を同時にまたはさらに同期的に行うことが可能であることを認識する。
【0331】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示的な実施例において多数の変更例が可能であり、また、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【0332】
さらに、本発明では以下の例を含むことも好ましい。
[第1項]
空気流れを周囲空気圧力に対して連続的に陽圧において少なくとも患者の鼻孔入口を含む前記患者の気道への入口へ密閉された様態で送達するための患者インターフェースであって、前記患者インターフェースは、使用時において前記患者の睡眠時の前記患者の呼吸サイクル全体において周囲空気圧力よりも高い約4cmH2O~約30cmH2Oの範囲の治療圧力を維持し、睡眠時呼吸障害が改善されるように構成され;
前記患者インターフェースは:
前記患者の鼻および/または口腔の周囲のシールを形成するように適合されたクッションアセンブリであって、前記クッションアセンブリは、使用時において周囲圧力を超える圧力で加圧されるプレナムチャンバを規定する、クッションアセンブリと;
患者が呼息したCO2の再呼吸を最小化させるために、前記患者が呼息したCO2が前記患者インターフェースの外部へ流れることを可能にするように構成されたガス逃がし孔と;および
前記プレナムチャンバの有効内容積を低減させるように前記プレナムチャンバ内に設けられた少なくとも1つの減容部材と、を含み、
前記少なくとも1つの減容部材は、前記治療圧力を送達するための前記プレナムチャンバの主要体積を少なくとも前記患者の鼻通路への前記入口の上側に設けられたデッドスペース体積から分離するように、配置され、前記主要体積は、前記患者の鼻および/または口腔ならびに前記孔と直接流体連通するように適合される、患者インターフェース。
[第2項]
前記少なくとも1つの減容部材は、前記患者が再呼吸するCO2の体積を低減させるように配置される、第1項に記載の患者インターフェース。
[第3項]
前記少なくとも1つの減容部材は、前記シールを変化させることなく前記プレナムチャンバの有効内容積を低減させるように配置される、第1~2項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第4項]
前記少なくとも1つの減容部材は、1つ以上の可動フラップを含む、第1~3項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第5項]
前記1つ以上の可動フラップは、前記プレナムチャンバを主要チャンバと、前記主要チャンバから分離されかつ前記主要チャンバと別個である少なくとも1つの周辺チャンバとに分離または分割し、前記主要チャンバは、前記患者の鼻および/または口腔ならびに前記孔と直接流体連通するように適合される、第4項に記載の患者インターフェース。
[第6項]
前記少なくとも1つの周辺チャンバは、前記デッドスペース体積を前記プレナムチャンバ内に含む、第5項に記載の患者インターフェース。
[第7項]
前記少なくとも1つの周辺チャンバは、前記主要チャンバから区画される、第5~6項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第8項]
前記プレナムチャンバの有効内容積は、前記主要チャンバの体積まで低減される、第5~7項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第9項]
前記1つ以上の可動フラップは、前記患者の鼻通路の概して上方に配置されるように適合された周辺チャンバを確立するように配置された上側可動フラップまたは上部可動フラップを含む、第5~8項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第10項]
前記1つ以上の可動フラップは、前記患者の下唇の概して下側に配置されるように適合された周辺チャンバを確立するように配置された下側可動フラップまたは下部可動フラップを含む、第5~9項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第11項]
前記可動フラップはそれぞれ、前記患者の顔へ向かって方向付けられるように適合された自由端部を含む、第4~10項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第12項]
前記可動フラップはそれぞれ、比較的可撓性であり、前記可動フラップが前記患者の顔に適合するように変形および/または撓むことを可能にするように適合される、第11項に記載の患者インターフェース。
[第13項]
前記プレナムチャンバ内の熱/水分交換器をさらに含む、第1~12項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第14項]
前記クッションアセンブリは、前壁部位および密閉形成構造を含む、第1~13項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第15項]
前記前壁部位は前記孔を含む、第14項に記載の患者インターフェース。
[第16項]
前記少なくとも1つの減容部材は、前記前壁部位へ設けられる、第14~15項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第17項]
前記少なくとも1つの減容部材は、前記患者の口腔への前記入口の下側へ設けられた不要なデッドスペース体積から前記主要体積を分離させるように配置される、第1~16項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第18項]
前記少なくとも1つの減容部材は、エラストマー材料によって構成される、第1~17項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第19項]
前記少なくとも1つの減容部材により、患者吸気および患者呼気が前記患者の呼吸サイクル全体において前記主要体積を介して発生するように、流れバイアスが生成される、第1~18項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第20項]
前記少なくとも1つの減容部材は、前記患者の呼吸サイクル全体において前記デッドスペース体積から離隔方向に流れをバイアスする、第1~19項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第21項]
前記デッドスペース体積は加圧され、前記クッションアセンブリの空気圧式密閉を提供する、第1~20項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第22項]
前記少なくとも1つの減容部材は、前記主要体積と前記デッドスペース体積との間の流れを塞ぐような構造および配置にされた1つ以上の流れ方向付け部材を含む、第1~21項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第23項]
前記少なくとも1つの減容部材は、前記プレナムチャンバを主要チャンバと、前記主要チャンバから分離されかつ前記主要チャンバと別個である少なくとも1つの周辺チャンバとに分離または分割させ、前記主要チャンバは、前記患者の鼻および/または口腔ならびに前記孔と直接流体連通するように適合される、第1~22項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第24項]
前記少なくとも1つの周辺チャンバの加圧を可能にするように配置された1つ以上の加圧ポートをさらに含む、第23項のうちいずれか1つに記載の患者インターフェース。
[第25項]
前記プレナムチャンバ内の熱/水分交換器をさらに含み、前記1つ以上の加圧ポートは、前記熱/水分交換器の前側に配置される、第24項に記載の患者インターフェース。
[第26項]
前記少なくとも1つの減容部材は、前記患者の顔から間隔を空けて配置されるように適合された端部を含む隔壁部材を含む、第1項に記載の患者インターフェース。
[第27項]
前記少なくとも1つの減容部材は、患者の顔と共に密閉を形成するように適合された端部を含む密閉部材を含む、第1項に記載の患者インターフェース。
【0333】
【0334】