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特許7233519不織布積層体、複合積層体、及び被覆シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】不織布積層体、複合積層体、及び被覆シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20230227BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230227BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20230227BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20230227BHJP
   D06M 101/20 20060101ALN20230227BHJP
【FI】
B32B5/26
B32B27/32 E
D04H3/16
D06M13/224
D06M101:20
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021504971
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009186
(87)【国際公開番号】W WO2020184335
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2019042943
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019196708
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関岡 裕佑
(72)【発明者】
【氏名】税田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】太田 康介
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】市川 泰一郎
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-286863(JP,A)
【文献】国際公開第2002/061192(WO,A1)
【文献】特開2001-340382(JP,A)
【文献】特開2005-146503(JP,A)
【文献】特開平10-226966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0281088(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
D04H 1/00 - 18/04
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性重合体の繊維であり、平均捲縮径が800μm以下である捲縮繊維(A)を含む第1の不織布層を備え、
親水化剤を含有し、
下記(1)又は(2)のいずれか1つを満たす不織布積層体。
(1) 熱可塑性重合体の繊維であり、前記捲縮繊維(A)の平均捲縮径とは異なる平均捲縮径を有し、平均捲縮径が500μm以上である捲縮繊維(B)、又は非捲縮繊維(C)を含む第2の不織布層をさらに備え、
前記第1の不織布層及び前記第2の不織布層に含まれる前記熱可塑性重合体の繊維が、プロピレン系重合体を含む繊維であり、
前記第1の不織布層に含まれる前記捲縮繊維(A)の表面に、プロピレン系重合体が露出しており、
前記第2の不織布層に含まれる前記捲縮繊維(B)又は非捲縮繊維(C)の表面に、プロピレン系重合体が露出しており、
前記捲縮繊維(A)の表面に露出しているプロピレン系重合体と、前記捲縮繊維(B)又は前記非捲縮繊維(C)の表面に露出しているプロピレン系重合体との融点差が、±15℃以内である。
(2)エチレン系重合体を含む非捲縮繊維(C)を含む第2の不織布層を備え、非捲縮繊維(C)は鞘部及び芯部を備え、鞘部と芯部との質量比(芯部/鞘部)は、95/5~75/25である
【請求項2】
前記第1の不織布層が、最外層であり、
前記捲縮繊維(A)の平均捲縮径が600μm以下である、請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項3】
前記(2)を満たす場合、前記捲縮繊維(A)における前記熱可塑性重合体がオレフィン系重合体を含む、請求項1又は請求項2に記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記(2)を満たす場合、前記捲縮繊維(A)における前記熱可塑性重合体がオレフィン系重合体としてプロピレン系重合体及びエチレン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項3に記載の不織布積層体。
【請求項5】
不織布積層体のMD方向に、0.1N/mmの引張応力を加えた場合の幅保持率が75%以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項6】
不織布積層体のMD方向の5%延伸時の引張強度が2.2N/50mm以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項7】
不織布積層体から被転写不織布への親水化剤の転写量が0.015g/m以下である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項8】
窒素吸着等温線のBET式より得られる窒素吸着試験における表面窒素吸着面積に対する水蒸気吸着等温線のBET式により得られる水蒸気吸着試験における表面水蒸気吸着面積の比(表面水蒸気吸着面積/表面窒素吸着面積)が1.5~9.0である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項9】
前記親水化剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、及び多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項10】
前記(1)を満たす場合、前記第2の不織布層に含まれる前記繊維が、前記非捲縮繊維(C)である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項11】
前記(1)を満たす場合、前記捲縮繊維(A)の表面に露出しているプロピレン系重合体と、前記捲縮繊維(B)又は前記非捲縮繊維(C)の表面に露出しているプロピレン系重合体とが、それぞれプロピレン/α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体とプロピレン/α-オレフィン共重合体との混合物、又はその組み合わせである請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項12】
前記第1の不織布層がスパンボンド不織布の層であり、前記第2の不織布層がスパンボンド不織布の層であり、圧着部と非圧着部とを有し、前記圧着部の面積率が7%~20%である、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項13】
熱可塑性重合体の繊維を含むメルトブローン不織布層をさらに備える、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項14】
前記メルトブローン不織布層における前記熱可塑性重合体は、メルトフローレートが800g/10分以上のプロピレン単独重合体であり、前記メルトブローン不織布層における前記繊維の平均繊維径は、3μm未満であり、前記メルトブローン不織布層の目付は、3g/m未満である請求項13に記載の不織布積層体。
【請求項15】
前記メルトブローン不織布層における前記熱可塑性重合体は、メルトフローレートが200g/10分以上のプロピレン/α-オレフィン共重合体、又はプロピレン・α-オレフィン共重合体を含むプロピレン系重合体の混合物であり、前記メルトブローン不織布層の目付は、5g/m未満である請求項13又は請求項14に記載の不織布積層体。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の不織布積層体を有する、複合積層体。
【請求項17】
請求項12~請求項15のいずれか1項に記載の不織布積層体、又は請求項16に記載の複合積層体を含む、被覆シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布積層体、複合積層体、及び被覆シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は通気性及び柔軟性に優れることから各種用途に幅広く用いられている。そのため、不織布には、その用途に応じた各種の特性が求められるとともに、その特性の向上が要求されている。
【0003】
例えば、肌に直接触れる部材に用いられる不織布(吸収性物品のトップシートなど)は、柔軟性に優れることとともに、親水性に優れることが要求される。例えば、特許文献1には、熱可塑性繊維からなる特定の親水性嵩高不織布が提案されている。また、この親水性嵩高不織布には、特定の捲縮繊維が適用されている。さらに、特許文献1には、親水性嵩高不織布に透水剤を含有させること又は塗布することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、不織布ウェブであって、複数の連続スパンボンド捲縮繊維を含み、複数の開口部が前記不織布ウェブを貫いて延在する、不織布ウェブが開示されており、不織布ウェブが柔軟性のための添加剤、親水性添加剤、疎水性添加剤等を含むことが開示されている。
[特許文献1]国際公開第2017/145999号
[特許文献2]米国特許出願公開第2016/0166443号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、不織布に親水性を付与する方法としては、練り込み法、及び、塗布法が知られている。練り込み法は、親水性を付与するための薬剤(以下、親水性を付与するための薬剤を親水化剤と称する)を練り込んだ熱可塑性重合体の繊維で不織布を形成することにより、不織布に親水性を付与する方法である。塗布法は、親水化剤を繊維表面に付着させて不織布に親水性を付与する方法である。
【0006】
親水化剤が付与された不織布を、例えば、おむつのトップシートに適用した場合、おむつのトップシートと接触する部材(ギャザー等)に親水化剤が移行する場合がある。例えば、ギャザーに親水化剤が移行することにより、ギャザーが親水化されてしまうと、おむつに液漏れが生じることがある。
【0007】
また、親水化剤が付与された不織布を、おむつ等の後加工(例えば、延伸加工、穴あけ加工)が伴う用途に適用した場合、加工機に親水化剤が移行する場合がある。親水化剤が長期にわたり加工機に移行し続けると、親水化剤の移行に起因する腐食が発生することが考えられる。
【0008】
本開示の目的は、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制可能な不織布積層体を提供することにある。本開示の目的は、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制可能な不織布積層体を有する複合積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の態様に関係する。
【0010】
<1> 熱可塑性重合体の繊維であり、平均捲縮径が800μm以下である捲縮繊維(A)を含む第1の不織布層を備え、
親水化剤を含有する不織布積層体。
<2> 前記第1の不織布層が、最外層であり、
前記捲縮繊維(A)の平均捲縮径が600μm以下である、<1>に記載の不織布積層体。
<3> 前記熱可塑性重合体がオレフィン系重合体を含む、<1>又は<2>に記載の不織布積層体。
<4> 前記熱可塑性重合体がオレフィン系重合体としてプロピレン系重合体及びエチレン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、<3>に記載の不織布積層体。
<5> 不織布積層体のMD方向に、0.1N/mmの引張応力を加えた場合の幅保持率が75%以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<6> 不織布積層体のMD方向の5%延伸時の引張強度が2.2N/50mm以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<7> 不織布積層体から被転写不織布への親水化剤の転写量が0.015g/m以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<8> 窒素吸着等温線のBET式より得られる窒素吸着試験における表面窒素吸着面積に対する水蒸気吸着等温線のBET式により得られる水蒸気吸着試験における表面水蒸気吸着面積の比(表面水蒸気吸着面積/表面窒素吸着面積)が1.5~9.0である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<9> 前記親水化剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、及び多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<10> 熱可塑性重合体の繊維であり、前記捲縮繊維(A)の平均捲縮径とは異なる平均捲縮径を有し、平均捲縮径が500μm以上である捲縮繊維(B)、又は非捲縮繊維(C)を含む第2の不織布層をさらに備える<1>~<9>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<11> 前記第2の不織布層に含まれる前記繊維が、前記非捲縮繊維(C)である、<10>に記載の不織布積層体。
<12> 前記第1の不織布層及び前記第2の不織布層に含まれる前記熱可塑性重合体の繊維が、プロピレン系重合体を含む繊維であり、
前記第1の不織布層に含まれる前記捲縮繊維(A)の表面に、プロピレン系重合体が露出しており、
前記第2の不織布層に含まれる前記捲縮繊維(B)又は非捲縮繊維(C)の表面に、プロピレン系重合体が露出しており、
前記捲縮繊維(A)の表面に露出しているプロピレン系重合体と、前記捲縮繊維(B)又は前記非捲縮繊維(C)の表面に露出しているプロピレン系重合体との融点差が、±15℃以内である、<10>又は<11>に記載の不織布積層体。
<13> 前記捲縮繊維(A)の表面に露出しているプロピレン系重合体と、前記捲縮繊維(B)又は前記非捲縮繊維(C)の表面に露出しているプロピレン系重合体とが、それぞれプロピレン/α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体とプロピレン/α-オレフィン共重合体との混合物、又はその組み合わせである<12>に記載の不織布積層体。
<14> 前記第1の不織布層がスパンボンド不織布の層であり、前記第2の不織布層がスパンボンド不織布の層であり、圧着部と非圧着部とを有し、前記圧着部の面積率が7%~20%である、<10>~<13>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<15> 熱可塑性重合体の繊維を含むメルトブローン不織布層をさらに備える、<1>~<14>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<16> 前記メルトブローン不織布層における前記熱可塑性重合体は、メルトフローレートが800g/10分以上のプロピレン単独重合体であり、前記メルトブローン不織布層における前記繊維の平均繊維径は、3μm未満であり、前記メルトブローン不織布層の目付は、3g/m未満である<15>に記載の不織布積層体。
<17> 前記メルトブローン不織布層における前記熱可塑性重合体は、メルトフローレートが200g/10分以上のプロピレン/α-オレフィン共重合体、又はプロピレン・α-オレフィン共重合体を含むプロピレン系重合体の混合物であり、前記メルトブローン不織布層の目付は、5g/m未満である<15>又は<16>に記載の不織布積層体。
<18> <1>~<17>のいずれか1つに記載の不織布積層体を有する、複合積層体。
<19> <14>~<17>のいずれか1つに記載の不織布積層体、又は<18>に記載の複合積層体を含む、被覆シート。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制可能な(移行抑制効果と称する場合がある)不織布積層体が提供される。本開示によれば、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制可能な不織布積層体を有する複合積層体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「MD」(Machine Direction)方向とは、不織布製造装置における不織ウェブの進行方向を指す。「CD」(Cross Direction)方向とは、MD方向に垂直で、主面(不織布の厚さ方向に直交する面)に平行な方向を指す。
本開示において、主体として含むとは、対象となる物質が、全体に対して最も多く含まれることを表す。例えば、全体に占める割合として、対象となる物質の含有割合が50質量%以上であることを示す。
【0013】
<不織布積層体>
本開示の不織布積層体は、熱可塑性重合体の繊維であり、平均捲縮径が800μm以下である捲縮繊維(A)を含む第1の不織布層を備え、親水化剤を含有する。
【0014】
捲縮繊維(A)の平均捲縮径が大きいことは、繊維の捲縮の度合いが小さいことを表す。本発明者らは、捲縮繊維(A)の平均捲縮径を特定の値よりも小さくすることにより、不織布積層体に含まれる親水化剤の移行抑制効果が好適に発揮されることを見出した。この移行抑制効果が好適に発揮される理由としては、以下のように推測される。平均捲縮径が大きすぎると、繊維の捲縮の度合いが小さいため、不織布積層体に含まれる親水化剤の移行抑制効果が低くなる。一方、平均捲縮径が小さいと、繊維の捲縮の度合いが大きいため、親水化剤の移行抑制効果が発揮される。
【0015】
第1の不織布層は、熱可塑性重合体の繊維である捲縮繊維(A)を含む。そして、捲縮繊維(A)の平均捲縮径は800μm以下であり、700μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、550μm以下であることがさらに好ましく、500μm以下であることが特に好ましく、400μm以下であることが極めて好ましい。捲縮繊維(A)の平均捲縮径が、800μm以下であると、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制可能な不織布積層体が得られる。捲縮部分のクッション性を高くし、柔軟性を向上させる観点から、捲縮繊維(A)の平均捲縮径は200μm以上であることが好ましく、220μm以上であることがより好ましく、250μm以上であることがさらに好ましく、270μm以上であることが特に好ましい。
【0016】
本開示において、捲縮径とは、1周以上のクリンプを形成する捲縮繊維において、クリンプの大きさを表し、平均捲縮径は、クリンプの大きさの平均値を表す。本開示において、平均捲縮径は、以下のようにして測定される。
【0017】
まず、測定対象となる不織布層から、測定用サンプルを採取する。次に、測定用サンプルを、光学式顕微鏡(ニコン社製、「ECLIPSE E400」)の顕微鏡ステージに配置する。次いで、倍率4倍にて、不織布の表面(平面)を観察し、捲縮繊維のうち、捲縮繊維のクリンプ形状が、半円以上の円の形状になっている捲縮繊維について、無作為に50点を選択する。次に、選択した捲縮繊維の直径を、光学式顕微鏡に付属の画像解析ソフト「Pixs2000」により測定する。捲縮繊維の直径は、画像解析ソフトの直径測定機能により、円周上の3点を選択して計測する。捲縮繊維の直径を50箇所計測し、この平均値を算出して、平均捲縮径とする。
【0018】
本開示の不織布積層体は、第2の不織布層を備えていてもよい。第2の不織布層は、熱可塑性重合体の繊維を含む不織布の層であることが好ましい。第2の不織布層は、特に限定されず、例えば、従来公知の不織布の層であってもよい。
【0019】
第2の不織布層は、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、カード式エアスルー不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ式スパンボンド不織布、湿式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等を含む不織布の層であってもよい。
【0020】
第2の不織布層には、捲縮繊維(A)の平均捲縮径とは異なる平均捲縮径を有しており、平均捲縮径が500μm以上である捲縮繊維(B)、又は非捲縮繊維(C)が含まれていることが好ましい。柔軟性と親水性とを兼ね備えた不織布とするために捲縮繊維から構成される不織布に親水化剤を含ませた場合、不織布がCD方向に縮む傾向が見られる。一方、本開示の不織布積層体が前述の捲縮繊維(B)又は非捲縮繊維(C)を含むことにより、本開示の不織布積層体を製造する際に、CD方向の縮みが抑制され、安定した生産が可能となる。このため、第2の不織布層を備える不織布積層体は、優れた寸法安定性を備える傾向にある。
【0021】
第2の不織布層は、熱可塑性重合体の繊維である非捲縮繊維(C)を主体として含む不織布の層であってもよい。第2の不織布層が、熱可塑性重合体の繊維である非捲縮繊維(C)を主体として含む不織布の層の場合、捲縮繊維(A)の平均捲縮径は、700μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、550μm以下であることがさらに好ましく、500μm以下であることが特に好ましい。さらに、第2の不織布層が、熱可塑性重合体の繊維である非捲縮繊維(C)を主体として含む不織布の層の場合、前記第1の不織布層が、最外層であってもよい。この場合、捲縮繊維(A)の平均捲縮径が600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。本開示の不織布積層体は、このような層構造であると、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制しつつ、優れた寸法安定性を備える不織布積層体がより得られやすくなる。
【0022】
第2の不織布層が非捲縮繊維(C)を主体として含む不織布の層である場合、第2の不織布層は非捲縮繊維(C)以外のその他の繊維を含んでいてもよい。その他の繊維としては、例えば、前述の捲縮繊維(B)、捲縮繊維(B)以外の捲縮繊維等が挙げられる。その他の繊維は、長繊維であってもよく、短繊維であってもよい。
なお、本開示において「短繊維」とは、おおむね平均繊維長200mm以下の繊維を意味する。
第2の不織布層は、非捲縮繊維(C)及び非捲縮繊維(C)以外のその他の繊維を含む不織布の層であって、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、カード式エアスルー不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ式スパンボンド不織布、湿式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等を含む不織布の層であってもよい。
【0023】
また、第2の不織布層は、熱可塑性重合体の繊維である前述の捲縮繊維(B)を主体として含む不織布の層であってもよい。第2の不織布層は、熱可塑性重合体の繊維である捲縮繊維(B)を主体として含む不織布の層である場合、優れた柔軟性と優れた寸法安定性とを両立させる観点から、捲縮繊維(B)の平均捲縮径は、500μm以上であることが好ましく、550μm以上であることがより好ましく、600μm以上であることがさらに好ましく、650μm以上であることが特に好ましい。捲縮繊維(B)の平均捲縮径は1,500μm以下であることが好ましく、1,000μm以下であることがより好ましい。捲縮繊維(A)と捲縮繊維(B)との平均捲縮径が互いに異なり、捲縮繊維(A)と捲縮繊維(B)との平均捲縮径が上記範囲であることで、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制しつつ、優れた寸法安定性を備える不織布積層体がより得られやすくなる。なお、第2の不織布層に捲縮繊維(B)を含む場合、捲縮繊維(A)と捲縮繊維(B)との平均捲縮径の差は、特に限定されず、例えば、100μm以上であってもよい。
【0024】
第2の不織布層が前述の捲縮繊維(B)を主体として含む不織布の層である場合、第2の不織布層は捲縮繊維(B)以外のその他の繊維を含んでいてもよい。その他の繊維としては、例えば、捲縮繊維(B)以外の捲縮繊維、前述の非捲縮繊維(C)等が挙げられる。その他の繊維は、長繊維であってもよく、短繊維であってもよい。
第2の不織布層は、捲縮繊維(B)及び捲縮繊維(B)以外のその他の繊維を含む不織布の層であって、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、カード式エアスルー不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ式スパンボンド不織布、湿式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等を含む不織布の層であってもよい。
【0025】
第2の不織布層が、熱可塑性重合体の繊維である捲縮繊維(B)を主体として含む不織布の層の場合、第1の不織布層は、不織布積層体における最外層であってもよい。この場合、第1の不織布層に含まれる捲縮繊維(A)の平均捲縮径が600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。不織布積層体を、このような構造とすることで、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制しつつ、優れた寸法安定性を備える不織布積層体がより得られやすくなる。
【0026】
本開示の不織布積層体は、第1の不織布層を複数有していてもよく、第2の不織布層を複数有していてもよい。例えば、第1の不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層の層構成であってもよく、第1の不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層の層構成であってもよく、第1の不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層の層構成であってもよく、第1の不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層の層構成であってもよく、第1の不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層の層構成であってもよく、第1の不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層の層構成であってもよく、第1の不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層の層構成であってもよく、第1の不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層の層構成であってもよく、第1の不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層の層構成であってもよい。さらに、本開示の不織布積層体は、後述するメルトブローン不織布層を含んでいてもよく、例えば、第1の不織布層上、第2の不織布層上、2層の第1の不織布層の間、2層の第2不織布層の間、第1の不織布層と第2の不織布層との間等にメルトブローン不織布層が設けられていてもよい。また、本開示の不織布積層体は、後述するメルトブローン不織布層を複数有していてもよい。
【0027】
本開示の不織布積層体は、第1の不織布層がスパンボンド不織布の層であることが好ましく、前述の不織布積層体が第2の不織布層を備える場合、第1の不織布層がスパンボンド不織布の層であり、第2の不織布層がスパンボンド不織布の層であることが好ましい。
【0028】
第1の不織布層及び第2の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の繊維(つまり、第1の不織布層に含まれる捲縮繊維(A)、及び第2の不織布層に含まれる捲縮繊維(B)又は非捲縮繊維(C))は、不織布を構成することが可能な繊維であれば、特に限定されない繊維を構成する熱可塑性重合体としては、例えば、オレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、これら重合体を複数種含む熱可塑性重合体組成物等が挙げられる。本開示において、熱可塑性重合体は、熱可塑性重合体組成物を含む概念である。
【0029】
第1の不織布層に捲縮繊維(A)以外のその他の繊維が含まれる場合、あるいは、第2の不織布層に捲縮繊維(B)又は非捲縮繊維(C)以外のその他の繊維が含まれる場合、当該その他の繊維を構成する熱可塑性重合体としては、例えば、それぞれ独立にオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、これら重合体を複数種含む熱可塑性重合体組成物等が挙げられる。
【0030】
オレフィン系重合体は、オレフィン由来の構造単位を主体として含む重合体であり、ポリエステル系重合体は、ポリエステルを構造単位として含む重合体であり、ポリアミド系重合体は、ポリアミドを構造単位として含む重合体である。熱可塑性重合体は、オレフィン系重合体を含むことが好ましく、オレフィン系重合体として、プロピレン系重合体及びエチレン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0031】
プロピレン系重合体は、プロピレン由来の構造単位を主体とする重合体であり、プロピレン単独重合体及びプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体(プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体)を含む概念である。例えば、プロピレン単独重合体、及びプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体のいずれでもよく、両方を含んでいてもよい。プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体は、例えば、プロピレンと、プロピレン以外の炭素数2~10の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム共重合体が好ましく、プロピレンと、プロピレン以外の炭素数2~8の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム共重合体がより好ましい。柔軟性に優れる観点で、プロピレンと共重合する、好ましいα-オレフィンの具体例としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体などが挙げられる。プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体におけるα-オレフィンに由来する構造単位の含有量は、特に限定されず、例えば1モル%~10モル%であることが好ましく、1モル%~5モル%であることがより好ましい。プロピレン系重合体は、異なるプロピレン系重合体を2種以上含んでもよく、プロピレン系重合体とエチレン系重合体とを含んでもよい。
なお、本開示では、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体について、プロピレン由来の構造単位の含有量と、エチレン由来の構造単位の含有量とが等しい場合、このような共重合体はプロピレン系重合体に分類する。
【0032】
エチレン系重合体は、エチレン由来の構造単位を主体とする重合体であり、エチレン単独重合体及びエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体を含む概念である。例えば、エチレン単独重合体、及びエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体(エチレン/α-オレフィンランダム共重合体)のいずれでもよい。エチレン/α-オレフィンランダム共重合体は、例えば、エチレンと、エチレン以外の炭素数2~10の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム共重合体が好ましい。柔軟性に優れる観点で、エチレンと共重合するα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。エチレン/α-オレフィンランダム共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体などが挙げられる。エチレン系重合体は、異なるエチレン系重合体を2種以上含んでもよく、エチレン系重合体とプロピレン系重合体とを含んでもよい。
【0033】
エチレン/α-オレフィンランダム共重合体の密度は、900kg/m~980kg/mであることが好ましく、紡糸性の観点から、910kg/m~980kg/mであることがより好ましく、950kg/m~980kg/mであることがさらに好ましい。前述の密度は、捲縮径の観点から、900kg/m~960kg/mであることが好ましく、900kg/m~940kg/mであることがより好ましい。前述の密度は、紡糸性と捲縮径とのバランスの観点から910kg/m~940kg/mであることが好ましい。例えば、エチレン/α-オレフィンランダム共重合体におけるα-オレフィンの含有量を調整することで、エチレン/α-オレフィンランダム共重合体の融点及び密度を前述の範囲にそれぞれ調整することができる。なお、エチレン/α-オレフィンランダム共重合体において、密度と融点との間には相関があることが知られている。
【0034】
プロピレン系重合体の融点(Tm)は、125℃以上であることが好ましく、125℃~165℃であることがより好ましい。プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)は、紡糸性の観点から、10g/10分~100g/10分であることが好ましく、20g/10分~70g/10分であることがより好ましい。
【0035】
エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、190℃、荷重2,160g)は、紡糸性の観点から、1g/10分~100g/10分であることが好ましく、20g/10分~70g/10分であることがより好ましい。
【0036】
第2の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の繊維が、非捲縮繊維(C)である場合、非捲縮繊維(C)は、1種の熱可塑性重合体を含む繊維であってもよく、2種以上の熱可塑性重合体を含む繊維であってもよい。非捲縮繊維(C)は、プロピレン系重合体を含むことが好ましい。
【0037】
第2の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の繊維が、捲縮繊維(B)である場合、第1の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の捲縮繊維(A)、及び捲縮繊維(B)は、1種の熱可塑性重合体を含む繊維であってもよく、2種以上の熱可塑性重合体を含む複合繊維であってもよい。第1の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の捲縮繊維(A)、及び第2の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の捲縮繊維(B)が複合繊維である場合、複合繊維は、例えば、サイドバイサイド型、同芯芯鞘型又は偏芯芯鞘型であってもよい。偏芯芯鞘型の複合繊維は、芯部が表面に露出している露出型でもよく、芯部が表面に露出していない非露出型でもよい。
【0038】
第1の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の捲縮繊維(A)及び第2の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の捲縮繊維(B)は、プロピレン系重合体を含む複合繊維であることが好ましく、プロピレン系重合体を含む捲縮複合繊維であることがより好ましく、プロピレン系重合体を含む偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維であることがさらに好ましい。プロピレン系重合体を含む複合繊維を用いることで、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制しつつ、寸法安定性と柔軟性を両立する不織布積層体が得られやすくなる。
【0039】
第1の不織布層及び第2の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の繊維は、プロピレン系重合体を含む繊維であり、第1の不織布層に含まれる前記捲縮繊維(A)の表面に、プロピレン系重合体が露出しており、第2の不織布層に含まれる捲縮繊維(B)又は非捲縮繊維(C)の表面に、プロピレン系重合体が露出しており、捲縮繊維(A)の表面に露出しているプロピレン系重合体と、捲縮繊維(B)又は非捲縮繊維(C)の表面に露出しているプロピレン系重合体との融点差が、±15℃以内であることが好ましい。
【0040】
高温でエンボス処理を施した際に低融点側の重合体部分が比較的柔らかくなる観点、及び、低温でエンボス処理を施した際に高融点側の重合体部分が好適に熱交絡をし、充分な強度が得られる観点から、第1の不織布層に含まれる前記捲縮繊維(A)の表面に露出しているプロピレン系重合体と、第2の不織布層に含まれる捲縮繊維(B)又は非捲縮繊維(C)の表面に露出しているプロピレン系重合体との融点差を小さくすることが好ましい。重合体部分が熱交絡をしやすくするために、第1の不織布層に含まれる捲縮繊維(A)の表面に露出している側のプロピレン系重合体と、第2の不織布層に含まれる捲縮繊維(B)又は前記非捲縮繊維(C)の表面に露出している側のプロピレン系重合体とを、プロピレン/α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体とプロピレン/α-オレフィン共重合体の混合物、又はその組み合わせとしてもよい。
【0041】
なお、プロピレン/α-オレフィン共重合体としてのプロピレン/α-オレフィンランダム共重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
示差走査熱量計(DSC)で、昇温速度10℃/分で昇温したときの融解吸熱曲線の極値を与える温度より50℃程度高い温度まで昇温して、この温度で10分間保持する。その後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で所定の温度まで昇温したときの融解曲線を測定する。かかる融解曲線から、ASTM D3418の方法にならい、融解吸熱曲線の極値を与える温度(Tp)を求め、かかるピーク温度の吸熱ピークを融点(Tm)として求めることができる。
【0042】
捲縮繊維(A)及び捲縮繊維(B)が複合繊維である場合、捲縮繊維の表面に露出するとは、複合繊維の表面に露出する部分が多い側を指す。表面に露出する部分が多い側とは、複合繊維において、熱可塑性重合体がより多く露出している側を表す。本開示において、表面に露出する部分が多い側を総称して、鞘部と称する。また、表面に露出する部分が少ない側を総称して、芯部と称する。なお、表面に露出する部分が最も多くなる複合繊維(つまり、鞘部が最も大きい複合繊維)は、芯部の露出が最も小さくなるため、非露出型の複合繊維となる。
【0043】
複合繊維が芯鞘型である場合、鞘部と芯部との質量比(芯部/鞘部)としては、例えば、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~10/90であることがより好ましく、90/10~40/60であることがさらに好ましい。鞘部と芯部との質量比は、鞘部と芯部とに用いる樹脂の種類、及び目的とする平均捲縮径によって選択できる。
【0044】
第1の不織布層及び第2の不織布層に含まれる熱可塑性重合体の繊維の平均繊維径は、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましい。また、前述の平均繊維径は、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。本開示において、平均繊維径は、次のようにして求められる。得られた不織布積層体から、10mm×10mmの試験片を10点採取し、ニコン社製ECLIPSE E400顕微鏡を用い、倍率20倍で、繊維の直径をμm単位で小数点第1位まで読み取る。1試験片毎に任意の20箇所の径を測定し、平均値を求める。これを各不織布層、例えば、スパンボンド不織布の層、メルトブローン不織布層等で行う。
【0045】
本開示の不織布積層体は、熱可塑性重合体の繊維を含むメルトブローン不織布層をさらに備えることが好ましい。
【0046】
メルトブローン不織布層における繊維の平均繊維径は、バリア性の観点から、3.0μm未満であることが好ましく、2.8μm以下であることがより好ましく、2.6μm以下であることがさらに好ましい。
【0047】
メルトブローン不織布層における繊維の平均繊維径は、下限値は特に限定されず、0μm超であればよく、0.5μm以上であることが好ましい。
メルトブローン繊維の平均繊維径の測定方法は、顕微鏡の倍率を適宜調整(例えば1,000倍とし、走査型電子顕微鏡で観察)すること以外は既述の通りである。
【0048】
メルトブローン不織布層を構成する熱可塑性重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等のα-オレフィンの単独若しくは共重合体である高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、プロピレン系重合体(プロピレン単独重合体、ポリプロピレンランダム共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等)、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体等のオレフィン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタンあるいはこれらの混合物等が挙げられる。
上記の中でも、メルトブローン不織布層を構成する熱可塑性重合体としては、オレフィン系重合体が好ましく、プロピレン系重合体がより好ましい。
【0049】
メルトブローン不織布層を構成するプロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、及び、プロピレンと、炭素数2以上の1種又は2種以上のα-オレフィン(プロピレンは除く)と、の共重合体であるプロピレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。炭素数2以上の1種又は2種以上のα-オレフィン(プロピレンは除く)としては、炭素数2~10の1種又は2種以上のα-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等)が好ましく、炭素数2~8の1種又は2種以上のα-オレフィンがより好ましい。
【0050】
プロピレン単独重合体の融点(Tm)は、155℃以上であることが好ましく、157℃~165℃であることがより好ましい。
【0051】
プロピレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンに由来する構造単位の含有量は、全構造単位に対し、0.5質量%~25質量%であることが好ましく、1.0質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0052】
また、熱可塑性重合体は、複数のプロピレン系重合体を混合した混合物であってもよい。前述の混合物としては、例えば、プロピレン・α-オレフィン共重合体とプロピレン単独重合体との混合物、プロピレン・α-オレフィン共重合体とプロピレン系重合体ワックスとの混合物、プロピレン・α-オレフィン共重合体とプロピレン単独重合体とプロピレン系重合体ワックスとの3種の混合物などが挙げられる。なお、プロピレン系重合体ワックスは、比較的分子量が低いプロピレン系重合体、すなわち、ワックス状のプロピレン系重合体である。
【0053】
プロピレン系重合体ワックスの重量平均分子量(Mw)は400~30,000であることが好ましく、400~25,000であることがより好ましく、1,000~10,000であることがさらに好ましい。
ワックスの分子量及び分子量分布の測定は、GPC法を用いて行う。
測定は、市販の単分散標準ポリスチレンを標準とし、以下の条件で行う。
装置:ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤:o-ジクロルベンゼン
カラム:TSKgelカラム(東ソー社製)×4
流速:1.0ml/分
試料:0.3%o-ジクロルベンゼン溶液
温度:140℃
プロピレン系重合体ワックスのMwが上記範囲にあることで、メルトブローン不織布を構成する繊維をより細くし易くなり、また溶融繊維吐出時のショットの発生をより抑制することができる。
【0054】
プロピレン系重合体ワックスは、JIS K2207:1996に従って測定される軟化点が90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
上記軟化点が90℃以上であると、熱処理時、使用時等における耐熱安定性をより向上させ、結果としてメルトブローン不織布の耐熱性をより向上させることができる。
上記軟化点の上限は、特に限定されず、例えば168℃以下が挙げられる。
【0055】
プロピレン系重合体ワックスとしては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと炭素数2又は炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体、等が挙げられる。
【0056】
メルトブローン不織布層を構成するプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR:ASTM D 1238、230℃、荷重2,160g)は例えば、繊維を細くし、柔軟な不織布積層体を得る観点から、200g/10分以上であることが好ましく、800g/10分以上であることがより好ましい。また、前述のメルトフローレートは紡糸安定性の観点から、2,000g/10分以下であることが好ましく、1,600g/10分以下であることがより好ましい。
【0057】
メルトブローン不織布層の目付は、不織布積層体にした後の柔軟性の観点から、5g/m未満であることが好ましく、3g/m未満であることがより好ましい。また、メルトブローン不織布層の下限値は特に限定されず、例えばバリア性の観点から、0.2g/m以上であることが好ましく、0.5g/m以上であることがより好ましく、0.7g/m以上であることがさらに好ましい。
なお、本開示における目付の測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
【0058】
本開示の不織布積層体では、メルトブローン不織布層における熱可塑性重合体は、メルトフローレートが800g/10分以上のプロピレン単独重合体であり、メルトブローン不織布層における繊維の平均繊維径は、3μm未満であり、メルトブローン不織布層の目付は、3g/m未満であることが好ましい。これにより、不織布積層体にした後の柔軟性が優れる傾向にある。
【0059】
本開示の不織布積層体では、メルトブローン不織布層における熱可塑性重合体は、メルトフローレートが200g/10分以上のプロピレン/α-オレフィン共重合体又はプロピレン・α-オレフィン共重合体を含むプロピレン系重合体の混合物であり、メルトブローン不織布層の目付は、5g/m未満であることが好ましい。これにより、不織布積層体にした後の柔軟性が優れる傾向にある。
【0060】
本開示の不織布積層体において、第1の不織布層は、スパンボンド不織布の層であることが好ましい。また、本開示の不織布積層体は、スパンボンド不織布の層である第2の不織布層、メルトブローン不織布層等を含んでいてもよい。この場合、不織布積層体の好ましい形態としては、例えば、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層、第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層、第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層/メルトブローン不織布層、第1の不織布層/第1の不織布層/メルトブローン不織布層/メルトブローン不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第1の不織布層、第1の不織布層/メルトブローン不織布層/メルトブローン不織布層/第2の不織布層/第2の不織布層、等が挙げられる。
【0061】
不織布積層体がメルトブローン不織布層を含むことによって、通気性が低下し、バリア性(粒子捕捉性)が向上するため、フィルター用途、細かい粒子物を包む用途(おむつ、ペットシートの吸収体の包装材)等にも好適に使用することができる。
一方で、メルトブローン不織布層を含む不織布積層体とする場合、メルトブローン不織布層を含まない不織布積層体に比べて柔軟性、特にカンチレバー値が悪化する傾向にある。第1の不織布層と、第2の不織布層と、メルトブローン不織布層と、を組み合わせることにより、前述の柔軟性の悪化を好適に抑制することができ、さらにはメルトブローン不織布層にて、目付、繊維の平均繊維径等を前述の範囲にすること、前述の熱可塑性重合体を使用すること等で、前述の柔軟性の悪化をより好適に抑制することができる。
【0062】
第1の不織布層、第2の不織布層及びメルトブローン不織布層に含まれる熱可塑性重合体の繊維は、必要に応じて、通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の種々公知の添加剤が挙げられる。
【0063】
本開示の不織布積層体は親水化剤を含む。親水化剤は、さらに分類すると浸透剤と湿潤剤とに分類できる。本開示の不織布積層体は浸透剤及び湿潤剤の両方を含んでいてもよく、浸透剤は含まず、湿潤剤を含んでいてもよい。親水性に優れ、親水化剤の移行抑制効果をより一層発揮する観点で、親水化剤として、浸透剤及び湿潤剤の両方を含むことが好ましい。
【0064】
親水化剤は、浸透剤として、スルホン酸塩及び硫酸エステル塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。スルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。これらスルホン酸塩は、アルカリ金属塩が好ましい。硫酸エステル塩としては、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩などが挙げられる。これら硫酸エステル塩は、アルカリ金属塩が好ましい。これらの中でも、親水化剤は、浸透剤として、スルホン酸塩を含むことが好ましく、スルホン酸のアルカリ金属塩を含むことがより好ましい。
【0065】
浸透剤としてのスルホン酸塩は、他の部材に接触したときの親水化剤の移行が抑制される観点で、アルキルスルホコハク酸塩であることが好ましい。アルキルスルホコハク酸塩は、ジアルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩であることが好ましく、炭素数が8~16であるアルキル基を2つ持つジアルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩がより好ましい。ジアルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩としては、そのリチウム塩、そのナトリウム塩、そのカリウム塩等が挙げられ、そのナトリウム塩が好ましい。炭素数が8~16であるアルキル基を2つ持つジアルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩としては、具体的には、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジドデシルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジテトラデシルスルホコハク酸リチウム(Li)塩、ジヘキサデシルスルホコハク酸カリウム(K)塩等が挙げられる。これらの中でも、他の部材に接触したときの親水化剤の移行が抑制される観点で、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩が好ましい。
【0066】
親水化剤は、湿潤剤として、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤のいずれを含んでいてもよく、湿潤剤は、特に限定されない
【0067】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライドに代表される4級アンモニウム塩、及びアルキルアミン塩、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリルリン酸ナトリウムに代表されるリン酸エステル塩や、ラウリン酸ナトリウムに代表される脂肪酸塩が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、これらカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との塩が挙げられる。
【0068】
湿潤剤は、優れた親水性を付与する観点で、非イオン界面活性剤が好ましい。湿潤剤である非イオン界面活性剤としては、例えば、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルポリオキシエチレンアルコール、多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物、アルコキシ化アルキルフェノール、脂肪酸アミド、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシアルキレン等の非イオン界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、優れた親水性を付与する観点で、親水化剤は、湿潤剤として、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、及び多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、及び多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物は、それぞれ、モノエステル、ジエステル、及びトリエステルのいずれでもよい。多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、及び多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物は、それぞれ、モノエステル、ジエステル、及びトリエステルのうち、1種を単独で含んでもいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0069】
多価アルコール脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。グリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルのいずれも、グリセリン又はソルビタンと、炭素数10~20の脂肪酸とのエステルが好ましい。具体的には、グリセリンラウリン酸モノエステル、グリセリンオレイン酸ジエステル、グリセリンオレイン酸トリエステル、ソルビタンラウリン酸モノエステル、ソルビタンラウリン酸ジエステル、ソルビタンラウリン酸トリエステルなどが挙げられる。
【0070】
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが好ましい。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が10~20であり、エチレンオキシド鎖(EO鎖ともいう)の付加モル数が5~20であることが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンステアリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンラウリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオレイン酸モノエステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル等が挙げられる。
【0071】
多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物としては、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの中でも、多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物は、グリセリンと、炭素数10~20の脂肪酸とのエステルであって、エチレンオキシドの付加モル数が5~20であることが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレングリセリンラウリン酸モノエステル、ポリオキシエチレングリセリンラウリン酸ジエステル、ポリオキシエチレングリセリンラウリン酸トリエステル等が挙げられる。
【0072】
湿潤剤は、優れた親水性を付与する観点で、多価アルコール脂肪酸エステルと、多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物と、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとの組み合わせで含むことが好ましい。また、湿潤剤は、多価アルコール脂肪酸エステルと、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとの組み合わせで含むことも好ましい。
【0073】
多価アルコール脂肪酸エステルと、多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物と、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとの組み合わせとしては、グリセリン脂肪酸エステルと、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物と、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとの組み合わせであることがより好ましい。グリセリンオレイン酸ジエステルと、ポリオキシエチレングリセリンラウリン酸ジエステル及びトリエステルと、ポリオキシエチレンラウリン酸ジエステルとの組み合わせであることがさらに好ましい。
【0074】
多価アルコール脂肪酸エステルと、多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物との組み合わせとしては、グリセリン脂肪酸エステルと、多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物との組み合わせであることが好ましく、グリセリンオレイン酸ジエステル及びグリセリンオレイン酸トリエステルと、ポリオキシエチレンオレイン酸モノエステル及びポリオキシエチレンオレイン酸ジエステルとの組み合わせであることがより好ましい。
また、多価アルコール脂肪酸エステルと、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとの組み合わせとしては、ソルビタンラウリン酸モノエステル、ジエステル及びトリエステルと、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエステル及びジエステルとの組み合わせであることが好ましく、これらのソルビタンラウリン酸エステル、及びポリオキシエチレンラウリン酸エステルに加えて、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸モノエステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸ジエステル及びポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸トリエステルを組み合わせることも好ましい。
【0075】
湿潤剤に対する浸透剤の比(浸透剤/湿潤剤)は、質量比で、1/99~60/40であることが好ましく、5/95~50/50であることがより好ましく、10/90~40/60であることがさらに好ましい。湿潤剤/浸透剤の質量比がこの範囲であると、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行が抑制されやすい。
【0076】
親水化剤は、ヘキサン/水の1/1(質量比)混合液20mlに対して、上記の親水化剤を0.02g加え、親水化剤が加えられた後の混合液を撹拌したとき、1分後に油相と水相とに分離することが好ましい(以下、親水化剤の分離試験とも称する。)。この分離試験は、親水化剤全体として、水又は熱可塑性重合体の繊維に対する親和性の指標となると考えられる。親水化剤が油相と水相とに分離する場合は、より水への親和性が高く、分離しない場合は、より熱可塑性重合体の繊維に対する親和性が高いと考えられる。そのため、上記分離試験によって分離する親水化剤を用いることで、親水性がより向上する傾向にある。このような性質を示す親水化剤は、浸透剤/湿潤剤の質量比が1/99~60/40であることが好ましく、10/90~40/60であることがより好ましい。
【0077】
例えば、親水化剤の分離試験は、測定対象となる不織布から分析する場合、例えば、次のようにして測定すればよい。まず、100g以上の不織布を準備する。次に、準備した不織布をエタノールに浸漬して25℃で24時間静置して抽出液Aを得る。不織布を別のエタノールに浸漬して25℃で24時間静置して抽出液Bを得る。抽出液A及び抽出液Bを脱気しつつ80℃に加温して、エタノールを十分に除去し、残渣を得る。次いで、残渣を混合し、残渣を親水化剤の分離試験に供する。
【0078】
親水化剤の塗布量は、0.1質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~1.5質量%であることがより好ましく、0.3質量%~1.2質量%であることがさらに好ましい。親水化剤の塗布量がこの範囲であると、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行が抑制されやすい。なお、親水化剤の塗布量は、親水化剤を塗布した後の不織布の質量から、親水化剤を塗布する前の不織布の質量を差し引き、これを親水化剤を塗布した後の不織布の質量で除した百分率で表される。なお、本開示では、親水化剤の塗布量は、練り込み法の場合も塗布量として包含される概念である。
【0079】
本開示の不織布積層体には、必要に応じて、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、耐光安定剤、ブロッキング防止剤、分散剤、核剤、柔軟剤、撥水剤、充填剤、天然油、合成油、ワックス、抗菌剤、防腐剤、艶消し剤、防錆剤、芳香剤、消泡剤、防黴剤、防虫剤等の種々公知の添加剤が挙げられる。これら他の成分は、不織布を構成する繊維の内部に含まれていてもよく、繊維の表面に付着していてもよい。
【0080】
本開示の不織布積層体は、不織布積層体から被転写不織布への親水化剤の転写量(以下、転写量とも称する。)が、0.015g/m以下であることが好ましく、0.013g/m以下であることがより好ましく、0.011g/m以下であることがさらに好ましい。転写量が上記範囲であると、不織布積層体は、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行が抑制される。転写量の測定方法は、後述の実施例で説明する。なお、転写量の上記範囲は、例えば、不織布積層体に含有させる親水化剤の種類、量及び塗布方法などの製造条件を調整することにより、満たすことが可能である。
また、本開示の不織布積層体は、不織布積層体から被転写不織布への親水化剤の転写量が、0g/m以上であれば特に限定されず、例えば、0.001g/m以上であってもよい。
【0081】
本開示の不織布積層体は、窒素吸着等温線のBET式より得られる窒素吸着試験における表面窒素吸着面積に対する水蒸気吸着等温線のBET式により得られる水蒸気吸着試験における表面水蒸気吸着面積の比(表面水蒸気吸着面積/表面窒素吸着面積、以下、面積比とも称する。)が、1.5以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることがさらに好ましい。また、面積比は、9.0以下であることが好ましく、8.5以下であることがより好ましい。面積比は、不織布表面積あたりの親水性と疎水性のバランスの指標となる。面積比が上記範囲であると、不織布は、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行が抑制される。水蒸気吸着等温線のBET式により得られる水蒸気吸着試験における表面水蒸気吸着面積の測定方法及び窒素吸着等温線のBET式により得られる窒素吸着試験における表面窒素吸着面積の測定方法は、後述の実施例で説明する。なお、表面窒素吸着面積に対する表面水蒸気吸着面積の比の上記範囲は、例えば、不織布積層体に含有させる親水化剤の種類、量及び塗布方法などの製造条件を調整することにより、満たすことが可能である。
【0082】
本開示の不織布積層体は、不織布積層体のMD方向に、0.1N/mmの引張応力を加えた場合の幅保持率が75%以上であることが好ましく、77%以上であることがより好ましい。0.1N/mmの引張応力を加えた場合の幅保持率が75%以上であることで、寸法安定性が優れたものとなる。
【0083】
本開示の不織布積層体は、不織布積層体のMD方向の5%延伸時の引張強度が2.2N/50mm以上であることが好ましく、2.5N/50mm以上であることがより好ましい。
【0084】
本開示の不織布積層体は、柔軟性に優れる観点で、圧着部と非圧着部とを有していてもよい。圧着部の面積率は、7%~20%であることが好ましく、8%~18%であることがより好ましい。圧着部の面積率は、不織布積層体から10mm×10mmの大きさの試験片を採取し、試験片のエンボスロールとの接触面を、電子顕微鏡(倍率:100倍)で観察し、観察した試験片に対し、熱圧着された部分の面積の割合とする。
【0085】
本開示の不織布積層体は、柔軟性の観点から、下記特性を有することが好ましい。
KES法で測定した圧縮仕事量WCが0.15以上であることが好ましい。また、KES法で測定した圧縮特性試験における圧力0.5gf/cmにおける厚みTOと、KES法で測定した圧力50gf/cmにおける厚みTMとの差(TO-TM)が0.2以上であることが好ましい。
【0086】
KES(Kawabata Evaluation System)法とは、不織布の風合いを計測し、客観的に評価するための方法の一つである。
圧縮仕事量WC、圧力0.5gf/cmにおける厚みTO、及び圧力50gf/cmにおける厚みTMは、カトーテック株式会社製の試験機KES-FB3-Aにより測定する。具体的には、圧縮面積2cmの円形平面をもつ鋼製加圧板間で、圧縮変形速度0.020mm/secにて、0gf/cmから最大圧力50gf/cmまで試料を圧縮し、元に戻す間で測定を行う。
【0087】
圧縮仕事量WCは、KES法による圧縮試験における圧縮仕事量を表す。不織布積層体の柔軟性が優れる観点から、圧縮仕事量WCは、0.15gf・cm/cm以上であることが好ましく、0.17gf・cm/cm以上であることがより好ましい。圧縮仕事量WCの上限値は特に限定されず、例えば、1.00gf・cm/cm以下であることが好ましい。
【0088】
圧力0.5gf/cmにおける厚みTOは、KES法による圧縮試験における圧力0.5gf/cmでの厚みであり、初期厚みを表す。TOは、0.40mm以上であることが好ましく、0.50mm以上であることがより好ましい。
圧力50gf/cmにおける厚みTMは、KES法による圧縮試験における圧力50gf/cmでの厚みであり、最大圧縮時の厚みを表す。TMは、0.10mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがより好ましい。
TO-TMは、上記TOと上記TMとの差である。TO-TMが大きいほど、嵩高さに優れる。TO-TMは、0.20mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましい。TO-TMの上限値は、特に限定されず、例えば、1.00mm以下であることが好ましい。
【0089】
本開示の不織布積層体は、JIS L 1096:2010に準じたフラジール通気度測定機による圧力差125Paでの流量の条件で測定した通気度が500cm/cm/sec以下であることが好ましく、400cm/cm/sec以下がより好ましく、300cm/cm/sec以下がさらに好ましい。また、通気度の下限値は特に限定されず、20cm/cm/sec以上であってもよく、50cm/cm/sec以上であってもよい。
不織布積層体の通気度が上記範囲であると、適度な通気性及びバリア性が得られる。また、得られた不織布積層体は強度に優れる。本開示の不織布積層体がメルトブローン層を備える場合に、上記範囲の通気度が得られやすい。
【0090】
本開示の不織布積層体の製造方法は、特に限定されない。
ここで、不織布積層体に、親水化剤を含ませる方法は、例えば、下記の方法が挙げられる。
(1):親水化剤を練り込んだ熱可塑性重合体の繊維で不織布を形成することにより、不織布に親水性を付与する方法(練り込み法)。
(2):親水化剤を繊維表面に付着させて不織布に親水性を付与する方法(塗布法)。
【0091】
本開示の不織布積層体の製造方法は、例えば、以下の方法が挙げられる。
方法1(練り込み法):熱可塑性重合体の原料に親水化剤を混合する工程と、親水化剤を含む熱可塑性重合体の繊維を含む不織布積層体を形成する工程と、を有する方法。
方法2(塗布法):熱可塑性重合体の繊維を含む不織布を形成する工程と、前記不織布に、親水化剤を付着させる工程と、を有する方法。
【0092】
不織布を形成する工程は、例えば、公知の長繊維不織布の製造法、公知の短繊維不織布の製造法により不織布積層体を形成すればよい。本開示の不織布積層体が、スパンボンド不織布で構成された第1の不織布層と、スパンボンド不織布で構成された第2の不織布層である場合、本開示の不織布積層体の製造方法の一例としては、下記の工程を有することが好ましい。
【0093】
第1の熱可塑性重合体を溶融紡糸して第1の連続繊維を形成する工程(第1紡糸工程)
移動捕集部材上に、第1の連続繊維を堆積させて第1の不織ウェブを形成する工程(不織ウェブ形成工程)
第2の熱可塑性重合体を溶融紡糸して第2の連続繊維を形成する工程(第2紡糸工程)
第1の不織ウェブ上に、第2の連続繊維を堆積させて第2の不織ウェブを形成して積層不織ウェブを形成する工程(積層不織ウェブ形成工程)
積層ウェブを交絡する工程(交絡工程)
【0094】
方法1では、第1の熱可塑性重合体及び第2の熱可塑性重合体の少なくとも一方に、親水化剤を混合する工程を有する。例えば、この工程では、第1の熱可塑性重合体及び第2の熱可塑性重合体の少なくとも一方の紡糸原液に親水化剤を混合することが挙げられる。
【0095】
第1紡糸工程では、移動捕集部材上に第1の連続繊維を堆積させるまでの間に、冷却して延伸する公知の過程が含まれる。第2紡糸工程も同様に、第1の不織ウェブ上に第2の連続繊維を堆積させるまでの間に、冷却して延伸する公知の過程が含まれる。
【0096】
交絡工程は、特に限定されず、公知の交絡処理が挙げられる。柔軟性と強度(ライン適性)の両立の観点で、交絡処理は、エンボスロールによる熱圧着が好ましい。凸部の面積率が7%~20%であるエンボスロールを適用することが好ましい。
【0097】
方法2では、交絡処理を経た後の不織布積層体に、親水化剤を不織布に付着させる工程を有する。また、必要に応じて、絞り工程、乾燥工程を設けてもよい。親水化剤を不織布に付着できれば、付着させる方法は特に限定されない。例えば、親水化剤の付着は、親水化剤を溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの揮発性有機溶剤や水)に溶解した溶液を不織布に対して塗布する方法により付着させることが好ましい。親水化剤を不織布に付着させる方法としては、ディッピング(浸漬)、ロールコーティング(グラビアコーティング、キスコーティング)、スプレーコーティング、ダイコーティング等の公知の方法が挙げられる。なお、本開示において「塗布」は、「ディッピング(浸漬)」を含む概念である。
【0098】
なお、不織布積層体に親水化剤を付着させるに当たり、親水化剤を水等の溶媒に溶解して親水化剤の溶液とし、親水化剤の溶液を不織布に塗布することが好ましい。親水化剤の溶液を塗布しやすくする観点で、親水化剤の溶液は、浸透剤及び湿潤剤を有効成分とし、有効成分の総量として、0.1質量%~30質量%の溶液とすることが好ましい。親水化剤の溶液は、目的に応じて、抗菌剤、酸化防止剤、防腐剤、艶消し剤、顔料、防錆剤、芳香剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0099】
本開示の不織布積層体の製造方法では、例えば、メルトブローン法による溶融紡糸を行い、繊維を堆積させて第1の不織ウェブ上にメルトブローンウェブを形成し、メルトブローンウェブ上に、第2の連続繊維を堆積させて第2の不織ウェブを形成して積層不織ウェブを形成してもよい。また、前述の方法1では、メルトブローン不織布層を構成する熱可塑性重合体に、親水化剤を混合してもよい。
【0100】
<複合積層体>
本開示の複合積層体は、本開示の不織布積層体を備えていればよい。本開示の複合積層体は、本開示の不織布積層体と、本開示の不織布積層体以外の他の層が積層された複合構造であってもよい。他の層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。なお、本開示において、本開示の不織布積層体以外の他の層が設けられた積層体を、「複合積層体」と称する。
【0101】
他の層としては、編布、織布、本開示の不織布積層体以外の不織布(短繊維不織布、長繊維不織布)等の繊維集合体が挙げられる。本開示の不織布積層体以外の不織布としては、種々公知の不織布(スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等)が挙げられる。また、繊維集合体は、コットン等の天然繊維のシート状物であってもよい。また「長繊維」とは、不織布便覧(INDA米国不織布工業会編、株式会社不織布情報、1996年)等、当技術分野で一般的に用いられている「連続長繊維(continuous filament)」をいう。
【0102】
また、他の層としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂フィルムなども挙げられる。これらは組み合わせて積層してもよい。例えば、本開示の不織布積層体と、樹脂フィルムと、コットン等の天然繊維の繊維集合体とがこの順で積層されたものであってもよい。
【0103】
本開示の不織布積層体と積層するフィルムとしては、積層体が通気性を必要とする場合には、通気性フィルム、透湿性フィルムが好ましい。
通気性フィルムとしては、種々の公知の通気性フィルムが挙げられる。例えば、透湿性を有するポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーのフィルム、無機粒子又は有機粒子を含む熱可塑性樹脂フィルムを延伸して多孔化してなる多孔フィルム等が挙げられる。多孔フィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、これらの組み合わせ等のポリオレフィンが挙げられる。
不織布積層体が通気性を必要としない場合には、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上の多孔化されていない熱可塑性樹脂フィルムを用いてもよい。
【0104】
本開示の不織布積層体に他の層をさらに積層する(貼り合せる)方法は特に限定されず、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤を用いる方法、押出しラミネート等の種々の方法が挙げられる。
【0105】
<被覆シート>
本開示の被覆シートは、本開示の不織布積層体を含む。また、本開示の被覆シートは、本開示の不織布積層体又は複合積層体を含んでいれば特に限定されるものではない。本開示の被覆シートは、対象となる物体の少なくとも一部を被覆するためのシートを指す。被覆シートは、特に限定されず、各種用途が挙げられる。被覆シートが適用される用途としては、具体的には、吸収性物品(使い捨ておむつ、使い捨てパンツ、生理用品、尿取りパッド、ペット用シートなどのトップシート、セカンドシート、吸収体用(パルプ・高分子吸収体粒子)の包装材(コアラップ)等);化粧用材料(フェイスマスク等);衛生材料(湿布材、シーツ、タオル、産業用マスク、衛生用マスク、ヘアキャップ、ガーゼ、使い捨て下着等);包装用材料(脱酸素剤、カイロ、温シップ、食品包装材)などが挙げられる。さらに、衣服カバーなどの生活資材全般に適用可能である。自動車内装材や各種バッキング材としても好適に使用できる。液体フィルター、エアフィルターなどのフィルター資材としても広く適用可能である。
【実施例
【0106】
以下、実施例により、本開示の不織布積層体について説明するが、本開示の不織布積層体は、以下の実施態様により何ら限定されない
なお、以下の実施例において、「%」は質量%を表す。
【0107】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0108】
(1)目付〔g/m
得られた不織布積層体から、100mm(流れ方向:MD)×100mm(流れ方向と直交する方向:CD)の試験片を10点採取した。試験片の採取場所は、CD方向にわたって10箇所とした。次いで、23℃、相対湿度50%RH環境下で、採取した各試験片に対して上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量〔g〕を測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた平均値から1m当たりの質量〔g〕に換算し、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの目付〔g/m〕とした。
【0109】
(2)厚み〔mm〕
得られた不織布積層体から、100mm(MD)×100mm(CD)の試験片を10点採取した。試験片の採取場所は、目付け測定用の試験片と同様の場所とした。次いで、採取した各試験片に対して荷重型厚み計(尾崎製作所社製)を用いて、JIS L 1096:2010に記載の方法で厚み〔mm〕を測定した。各試験片の厚みの平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの厚み〔mm〕とした。
【0110】
[柔軟性の評価]
(3)WC値(圧縮仕事量)〔gf・cm/cm
得られた不織布積層体から、150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を2点採取した。なお、採取場所はCD方向にわたって2箇所とした。次いで、試験片をカトーテック(株)製のKES-FB3-Aにより、測定条件として、20℃、相対湿度50%RH環境下で、圧縮子(圧縮面積2cmの円形平面をもつ鋼製加圧板)を用い、圧縮変形速度0.020mm/sec、最大圧力50gf/cmにて圧縮試験を行い、小数点第3位を四捨五入して各不織布サンプルのWC値〔gf・cm/cm〕とした。
【0111】
[嵩高性の評価]
(4)TO(圧力0.5gf/cmにおける厚み)-TM(圧力50gf/cmにおける厚み)〔mm〕
得られた不織布積層体から、150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を2点採取した。なお、採取場所はCD方向にわたって2箇所とした。次いで、試験片をカトーテック(株)製のKES-FB3-Aにより、測定条件として、20℃、相対湿度50%RH環境下で、圧縮子(圧縮面積2cmの円形平面をもつ鋼製加圧板)を用い、圧縮変形速度0.020mm/sec、最大圧力50gf/cmにて圧縮試験を行い、TO〔mm〕及びTM〔mm〕を測定した。
各試験片のTO〔mm〕及びTM〔mm〕の平均値を求め、小数点第3位を四捨五入して各不織布サンプルのTO〔mm〕及びTM〔mm〕とした。各不織布サンプルのTO―TM〔mm〕を計算した。
【0112】
(5)カンチレバー法
得られた不織布積層体について、JIS L 1913:2010のカンチレバー法(ISO法)に準拠して、MD方向及びCD方向のそれぞれについて、剛軟度を測定した。
【0113】
[強度の評価]
(6)引張強度、及び5%延伸時の強度〔N/50mm〕
得られた不織布積層体について、JIS L 1906に準拠して測定した。不織布から、幅50mm×長さ200mmの試験片を採取し、引張試験機を用いてチャック間距離100mm、ヘッドスピード100mm/minでMD:5点を測定し、平均値を算出し、引張強度(N/50mm)を求めた。また測定プログラムにて、5%延伸時(チャック間:105mm)時に記録された強度を5%延伸時の強度とした。
【0114】
[寸法安定性の評価]
(7)幅保持率〔%〕
得られた不織布積層体について、幅200mm×長さ450mm(採取できない場合は、幅100mm×長さ450mm)の試験片を採取し、均一に近い状態で引っ張ることが可能な冶具により幅方向の両端を挟む。なお、冶具間の距離は350mmとする。引張試験機にセットし、0.1N/mmの張力で引っ張り、その際の幅を測定する。そして、以下の式により、幅保持率(%)を求める
幅保持率(%) = {引張時の幅(mm)/初期の幅(mm)}×100
【0115】
(8)乾燥炉適性
幅保持率が75%未満の場合は、乾燥炉適性不良と判断した(表中「B」と表記)。幅保持率が75%以上の場合は、乾燥炉適性良好と判断した(表中「A」と表記)。
【0116】
[親水性の評価]
(9)液流れ距離〔mm〕
得られた不織布積層体を100mm×200mmのサイズにカットし、試料とした。水平方向に対して45度に傾斜させて固定した板上に、濾紙(No.2、アドバンテック社製)を5枚重ねて置き、濾紙の上に試料を置いて、試料の長手方向の両端を濾紙と一緒に板上に固定した。25℃の環境下で、試料面に対して垂直方向に約10mmの高さから、スポイトにて人工尿を0.1ml落下させ、液滴の落下点から液滴が完全に吸収された点までの距離を計測し、液流れ距離(mm)とした。
液流れ距離は、下記の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
なお、上記人工尿は、表面張力が70±2mN/mである塩化ナトリウムの水溶液(9g/リットル)を用いた。
【0117】
(10)ストライクスルー試験
EDANA(欧州不織布工業会)規格 NWSP 070.8.R0(15)に準拠して測定した。そのうち1回目の結果と、3回目の結果を記録した。
【0118】
[親水化剤の移行性評価]
(11)移行性評価
各例で得られた不織布積層体を、100mm×100mmのサイズにカットした。また目付25g/mのホモポリプロピレンからなる親水化剤が含まれていない不織布(被転写不織布)を100mm×100mmのサイズにカットした。2つの不織布を合わせ、さらに断面積100mm×100mmの4kgの錘を乗せた。なお、錘及び床面に対する親水化剤の転移を防ぐため、フィルムで包んでもよい。錘を乗せた不織布を60℃、相対湿度80%の環境下に1週間放置した。被転写不織布を取り出し、水を0.2ml滴下し、水の浸み込みを評価した。浸み込んだ場合は、親水性が強く発現しており、親水化剤移行性不良と判断した(表中「C」と表記)。浸み込んでいるが、親水性の発現が弱い場合は、親水化剤移行性不良と判断した(表中「B」と表記)。浸み込まなかった場合は、親水性が発現しておらず、親水化剤移行性良好と判断した(表中「A」と表記)。
【0119】
(12)不織布積層体から被転写不織布への親水化剤の転写量
上記の通り作製した被転写不織布を、メタノールを用いて、迅速残脂抽出装置OC-1型(インテック株式会社製)で抽出し、抽出液から完全に溶剤を留去させ、転写した親水化剤の質量を求めた。そして下記の式より、親水化剤付着率C%、及び不織布積層体から被転写不織布へ転写した親水化剤量W3(g/m)を求めた。なお、本測定に最適な不織布質量は2g前後であることから、上記被転写不織布を8~10枚作製し、測定を行った。
C(%)=(W2/W1)×100
W1:被転写不織布の不織布質量(g)
W2:抽出液中の親水化剤(=転写した親水化剤)の質量(g)
W3(g/m):不織布積層体から被転写不織布への親水化剤の転写量(C(%)×25(g/m)×100)
【0120】
(13)表面窒素吸着面積に対する表面水蒸気吸着面積の比
マイクロトラック・ベル株式会社製装置・BELSORP-maxを用いて測定した。
具体的には、以下のようにして行った。まず、不織布から0.50g~1.0g程度のサンプルを採取して、装置にセットした。次いで、室温(25℃)にて真空排気による乾燥処理を8時間行った。その後、水蒸気を25℃にて、導入圧力を変えて吸着させて、導入圧力ごとの水蒸気吸着量をプロットした水蒸気吸着等温線を測定した。そして、下記BET式を適用し、表面水蒸気吸着面積としての比表面積〔m/g〕を求めた。
次いで、水蒸気のかわりに窒素を用いた以外は、水蒸気吸着試験と同様の手順で、サンプル採取から試験を行い、窒素吸着等温線を測定した。そして、下記BET式により、表面窒素吸着面積としての比表面積を求めた。上記で得られた表面水蒸気吸着面積としての比表面積と、得られた表面窒素吸着面積としての比表面積から、「(水蒸気での比表面積)÷(窒素での比表面積)」により、その比を求めた。
【0121】
BET式とは、一定温度で、吸着平衡状態である時、吸着平衡圧Pと、その圧力での吸着量Vの関係を表した式である。
(BET式) : P/(V(P-P))=1/(Vm×C)+{((C-1)/(Vm×C))×(P/P)}
式中、P:飽和水蒸気圧(Pa)、Vm:単分子層吸着量(mg/g)、C:吸着熱などに関するパラメーター(-)<0である。本関係式は、特にP/P=0.05~0.35の範囲で良く成り立つ。
【0122】
[通気度の測定]
不織布から、150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を採取し、JIS L 1096:2010に準じたフラジール通気度測定機によって圧力差125Paでの流量の条件で行った。n=5の平均値を測定値とした。
【0123】
[塗布量の測定]
親水化剤を塗布する前の不織布の質量(塗布前質量)と、親水化剤を塗布・乾燥した後の不織布の質量(塗布後質量)とを測定し、親水化剤の塗布量を下記式より算出した。
塗布量(%)=[(塗布後質量-塗布前質量)/塗布後質量]×100
【0124】
[平均捲縮径の測定]
平均捲縮径は、既述の測定方法にしたがって、光学式顕微鏡に付属の画像解析ソフト「Pixs2000」により測定した。
【0125】
<実施例1>
(1層目及び2層目)
下記の芯成分としての熱可塑性重合体と下記の鞘成分としての熱可塑性重合体とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。そして、芯成分/鞘成分の質量比が40/60である偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維(以下、「捲縮繊維(C1)」とする)から、第1不織ウェブ(1層目)及び第2不織ウェブ(2層目)を形成し、第1不織ウェブ上に第2不織ウェブが設けられた積層不織ウェブを移動捕集面上に堆積させた。この捲縮複合繊維は、平均繊維径が14.2μmであった。
【0126】
-芯成分-
MFR:60g/10分、融点162℃、のプロピレン単独重合体(hPP1)
-鞘成分-
MFR:60g/10分、融点142℃、エチレン含量4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP1)
【0127】
(3層目)
MFR60g/10分、融点142℃、エチレン含量4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP1)をスパンボンド法により溶融紡糸を行い、非捲縮型繊維(以下、「非捲縮繊維(NC1)」とする))から形成される第3不織ウェブ(3層目)を、第2の不織ウェブ上に積層し、3層構造の積層ウェブを形成した。
【0128】
3層構造の積層ウェブの目付は17g/mであり、各層の目付はほぼ均等であった。次に、3層構造の積層ウェブを、1層目の不織布層側にエンボスロールが接触し、3層目の不織布層側に鏡面ロールを接触するように、125℃で熱圧着し、スパンボンド不織布積層体を得た。スパンボンド不織布積層体の総目付は17g/mであり、圧着部の面積率は、11%であった。実施例1の不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層に相当し、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0129】
下記親水化剤Aを水溶液に溶解させ、有効成分の総量が5%希釈の水溶液を得た。次に、得られたスパンボンド不織布積層体に、下記親水化剤Aの水溶液に浸した後にスパンボンド不織布積層体を絞った。次いで、100℃の乾燥炉にて、MD方向に5N/mの張力をかけた状態で1分間乾燥させた。親水化剤を付着させて得られたスパンボンド不織布積層体(以下、親水化不織布積層体という。)の物性を既述の方法にしたがって測定した。親水化不織布積層体に付着している親水化剤の質量を前記塗布量の測定に従って、乾燥前後の質量差と親水化剤の濃度より求めたところ、塗布量は0.5質量%であった。
【0130】
(親水化剤A)
ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸Na : 20質量%
ソルビタンラウリン酸モノエステル/ソルビタンラウリン酸ジエステル/ソルビタンラウリン酸トリエステル=2:3:5(質量比) : 20質量%
ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル(EO鎖8モル付加物)/ポリオキシエチレンラウリン酸ジエステル(EO鎖8モル付加物)=4:6(質量比) : 30質量%
ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸モノエステル(EO鎖8モル付加物)/ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸ジエステル(EO鎖8モル付加物)/ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸トリエステル(EO鎖8モル付加物)=1:6:3(質量比): 30質量%
なお、上記の配合割合(質量%)は、親水化剤A中の、すなわち親水化剤Aの水溶液における有効成分全質量に対する各成分の割合である。
【0131】
<実施例2>
親水化剤Aの塗布量を、1.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例2の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層に相当し、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0132】
<実施例3>
総目付を20g/mとした他は、実施例2と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例3の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層に相当し、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0133】
<実施例4>
3層目の不織布層を下記のように変更し、さらに、親水化剤Aの塗布量を、0.9%とした以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例4の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層に相当し、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0134】
(3層目)
下記の芯成分としての熱可塑性重合体と下記の鞘成分としての熱可塑性重合体とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。そして、芯成分/鞘成分の質量比が85/15である偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維(以下、「捲縮繊維(C2)」とする)から第3不織ウェブ(3層目)を、第2不織ウェブ(2層目)上に積層し、3層構造の積層ウェブを形成した。この捲縮複合繊維は、平均繊維径が14.7μmであった。
【0135】
-芯成分-
MFR:60g/10分、融点162℃、のプロピレン単独重合体(hPP1)
-鞘成分-
MFR:60g/10分、融点142℃、エチレン含量4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP1)
【0136】
<実施例5>
実施例1における2層目の不織布層を設けない以外は、実施例2と同様にして、スパンボンド不織布積層体を得た。すなわち、第1不織ウェブ(1層目)上に、第2不織ウェブ(2層目)を積層した2層構造の積層ウェブとした以外は、実施例1と同様にして、スパンボンド不織布積層体を作製し、実施例1と同様にして親水化剤を塗布して、親水化不織布積層体を得た。実施例5の不織布積層体は、1層目が第1の不織布層、2層目が第2の不織布層に相当する。
【0137】
<実施例6>
2層目の不織布層を形成するための繊維を非捲縮繊維(NC1)に変更し、さらに、親水化剤Aの塗布量を、0.9質量%とした以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例6の親水化不織布積層体は、1層目が第1の不織布層に相当し、2層目及び3層目が第2の不織布層に相当する。
【0138】
<実施例7>
2層目の不織布層を形成するための繊維を非捲縮繊維(NC1)に変更し、3層目の不織布層を形成するための繊維を捲縮繊維(C1)に変更し、さらに、親水化剤Aの塗布量を、1.1質量%とした以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例7の親水化不織布積層体は、1層目及び3層目が第1の不織布層に相当し、2層目が第2の不織布層に相当する。
【0139】
<実施例8>
1層目及び2層目の不織布層を下記のように変更し、3層目の不織布層を形成するための繊維を捲縮繊維(C2)に変更し、平均捲縮径を変更し、さらに、親水化剤Aの塗布量を、0.8%とした以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。実施例8の不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0140】
(1層目及び2層目)
下記の芯成分としての熱可塑性重合体と下記の鞘成分としての熱可塑性重合体とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。そして、芯成分/鞘成分の質量比が60/40である偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維(以下、「捲縮繊維(C3)」とする)から、第1不織ウェブ(1層目)及び第2不織ウェブ(2層目)を形成し、第1不織ウェブ上に第2不織ウェブが設けられた積層不織ウェブを移動捕集面上に堆積させた。この捲縮複合繊維は、平均繊維径が14.5μmであった。
【0141】
-芯成分-
MFR:60g/10分、融点162℃、のプロピレン単独重合体(hPP1)
-鞘成分-
MFR:60g/10分、融点142℃、エチレン含量4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP1)
【0142】
<実施例9>
3層目の不織布層を形成するための繊維を捲縮繊維(C4)に変更し、さらに、親水化剤Aの塗布量を、1.0%とした以外は、実施例8と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。実施例9の不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0143】
(3層目)
下記の芯成分としての熱可塑性重合体と下記の鞘成分としての熱可塑性重合体とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。そして、芯成分/鞘成分の質量比が80/20である偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維(以下、「捲縮繊維(C4)」とする)から、第3の不織ウェブ(3層目)を、第2の不織ウェブ(2層目)上に積層し、3層構造の積層ウェブを形成した。この捲縮複合繊維は、平均繊維径が14.3μmであった。
【0144】
-芯成分-
MFR:60g/10分、融点162℃、のプロピレン単独重合体(hPP1)
-鞘成分-
MFR:60g/10分、融点142℃、エチレン含量4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP1)
【0145】
<実施例10>
圧着部の面積率を18%となるように、エンボスで熱圧着した以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例10の親水化不織布積層体は、1層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0146】
<実施例11>
1層目及び2層目を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例11の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0147】
(1層目及び2層目)
下記の芯成分としての熱可塑性重合体と下記の鞘成分としての熱可塑性重合体とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。そして、芯成分/鞘成分の質量比が40/60である偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維(以下、「捲縮繊維(C5)」とする)から、第1不織ウェブ(1層目)及び第2不織ウェブ(2層目)を形成し、第1不織ウェブ上に第2不織ウェブが設けられた積層不織ウェブを移動捕集面上に堆積させた。この捲縮複合繊維は、平均繊維径が14.3μmであった。
【0148】
-芯成分-
MFR:35g/10分、融点160℃のプロピレン単独重合体(hPP2)
-鞘成分-
MFR:35g/10分、融点160℃のプロピレン単独重合体(hPP2)を60%と、MFR20g/10分、エチレン含量15質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP2)とを40%含む混合物
【0149】
<実施例12>
親水化剤Aを、下記親水化剤Bに変更し、親水化剤Bの塗布量を0.8質量%とした以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例12の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0150】
(親水化剤B)
ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸Na : 20質量%
グリセリンオレイン酸ジエステル : 30質量%
ポリオキシエチレングリセリンジラウリン酸エステル/ポリオキシエチレングリセリントリラウリン酸エステル=4:6(質量比)(EO鎖8モル付加物): 20質量%
ポリオキシエチレンジラウリン酸エステル(EO鎖8モル付加物) : 30質量%
なお、上記の配合割合(質量%)は、親水化剤B中の、すなわち親水化剤Bの水溶液における有効成分全質量に対する各成分の割合である。
【0151】
<実施例13>
親水化剤Bの塗布量を1.1質量%とした以外は、実施例12と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例13の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0152】
<実施例14>
親水化剤Aを、下記親水化剤Cに変更し、親水化剤Cの塗布量を1.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例14の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0153】
(親水化剤C)
ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸Na : 20質量%
グリセリンオレイン酸ジエステル/グリセリンオレイン酸トリエステル=5:5(質量比) : 50質量%
ポリオキシエチレンオレイン酸モノエステル(EO鎖10モル付加物)/ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル(EO鎖10モル付加物)=6:4(質量比) : 30質量%
なお、上記の配合割合(質量%)は、親水化剤C中の、すなわち親水化剤Cの水溶液における有効成分全質量に対する各成分の割合である。
【0154】
<実施例15>
親水化剤Aを下記親水化剤Dに変更し、捲縮複合繊維C1の紡糸原液の原料成分100%に対し、1.1質量%の割合で、親水化剤Dを混合して紡糸した以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。すなわち、実施例15のスパンボンド不織布積層体では、親水化剤Aは塗布されていない。実施例1の不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0155】
(親水化剤D)
ポリオキシエチレン(5モル)ステアリルエーテル : 50質量%
ポリオキシエチレン(10モル)ステアリン酸アミド : 25質量%
グリセリンモノステアリン酸エステル : 25質量%
なお、上記の配合割合(質量%)は、親水化剤D中における有効成分全質量に対する各成分の割合である。
【0156】
<実施例16>
3層目の不織布層を下記のように変更し、さらに、親水化剤Aの塗布量を0.9質量%とした以外は、実施例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例16の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層に相当し、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0157】
(3層目)
MFR:60g/10分、融点162℃、のプロピレン単独重合体(hPP1)をスパンボンド法により溶融紡糸を行い、非捲縮型繊維(以下、「非捲縮繊維(NC2)」とする))から形成される第3不織ウェブ(3層目)を、第2不織ウェブ上に積層し、3層構造の積層ウェブを形成した。
【0158】
なお、実施例同士でより高い基準で比較した場合、実施例16の親水化不織布積層体は、許容範囲ではあるが、実施例1~15に比べ、3層目のエンボスによる交絡が弱めであり、不織布の糸ほつれが生じやすいことが懸念された。
【0159】
<実施例17>
エンボス熱圧着温度を130℃とし、親水化剤Aの塗布量を1.0質量%とした以外は、実施例16と同様にして親水化不織布積層体を得た。実施例17の親水化不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層、3層目が第2の不織布層に相当する。
【0160】
なお、実施例同士でより高い基準で比較した場合、実施例17の親水化不織布積層体は、許容範囲ではあるが、実施例1~15に比べ、エンボスによる交絡で、1層目と2層目のエンボス部分が硬めとなり、感触が硬めとなった。
【0161】
<比較例1>
1層目~3層目の全ての層を形成するための繊維を、hPP1を使用した非捲縮繊維(NC2)に変更し、総目付けを15g/mに変更し、熱圧着の温度を135℃に変更し、親水化剤Aの塗布量を1.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして、親水化不織布積層体を得た。
【0162】
<比較例2>
1層目~3層目の不織布層の全ての層を下記のように変更し、総目付けを17g/mに変更し、エンボス熱圧着温度を125℃に変更した以外は、比較例1と同様にして、親水化不織布積層体を得た。
【0163】
(1層目~3層目)
下記の芯成分としての熱可塑性重合体と下記の鞘成分としての熱可塑性重合体とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。そして、芯成分/鞘成分の質量比が90/10である偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維(以下、「捲縮繊維(C6)」とする)から3層構造の積層不織ウェブを形成した。この捲縮複合繊維は、平均繊維径が14.2μmであった。
【0164】
-芯成分-
MFR:60g/10分、融点162℃、のプロピレン単独重合体(hPP1)
-鞘成分-
MFR:60g/10分、融点142℃、エチレン含量4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(rPP1)
【0165】
<比較例3>
親水化剤Aの塗布量を1.5質量%とした以外は、比較例2と同様にして、親水化不織布積層体を得た。
【0166】
<比較例4>
3層目を実施例1と同様に非捲縮繊維(NC1)に変更した以外は、比較例2と同様にして、親水化不織布積層体を得た。
【0167】
<実施例18>
1層目~3層目の不織布層の全ての層を形成するための繊維を捲縮繊維(C1)に変更した以外は、比較例2と同様にして、親水化不織布積層体を得た。
【0168】
<比較例5>
親水化剤Aを親水化剤Bに変更し、親水化剤Bの塗布量を1.1質量%とした以外は、比較例1と同様にして親水化不織布積層体を得た。
【0169】
<実施例19>
(1層目)
下記の芯成分としての熱可塑性重合体と下記の鞘成分としての熱可塑性重合体とを、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。そして、芯成分/鞘成分の質量比が60/40である偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維(以下、「捲縮繊維(C7)」とする)から、第1不織ウェブ(1層目)及び第2不織ウェブ(2層目)を形成し、第1不織ウェブ上に第2不織ウェブが設けられた積層不織ウェブを移動捕集面上に堆積させた。この捲縮複合繊維は、平均繊維径が16.2μmであった。
-芯成分-
MFR:60g/10分、融点162℃、のプロピレン単独重合体(hPP1)
-鞘成分-
MFR25g/10分、融点115℃、密度915kg/mのエチレン・1-ブテンランダム共重合体(PE1)
(2層目及び3層目)
芯成分としてプロピレン単独重合体(hPP1)、鞘成分としてエチレン・1-ブテンランダム共重合体(PE1)を、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行った。そして、芯成分/鞘成分の質量比が75/25である同芯芯鞘型の非捲縮複合繊維(以下、「非捲縮繊維(NC3)」とする)から形成される、第2不織ウェブ(2層目)及び第3不織ウェブ(3層目)を、第1の不織ウェブ上に積層し、3層構造の積層ウェブを形成した。
3層構造の積層ウェブの目付は18g/mであり、各層の目付はほぼ均等であった。次に、3層構造の積層ウェブを、1層目の不織布層側にエンボスロールが接触し、3層目の不織布層側に鏡面ロールを接触するように、90℃で熱圧着し、スパンボンド不織布積層体を得た。スパンボンド不織布積層体の総目付は18g/mであり、圧着部の面積率は、11%であった。実施例1の不織布積層体は、1層目が第1の不織布層に相当し、2層目及び3層目が第2の不織布層に相当する。
実施例1と同様にして求めた親水化剤Aの塗布量は1.0質量%であった。
【0170】
<実施例20>
実施例19における1層目の不織布の偏芯芯鞘型の捲縮複合繊維(以下、「捲縮繊維(C8)」とする)の芯成分/鞘成分の質量比が40/60とした以外は実施例19と同様にして、スパンボンド不織布積層体を得た。
【0171】
<実施例21>
1層目、2層目、及び3層目の不織布層を形成するための繊維を捲縮繊維(C2)に変更し、さらに、親水化剤Aの塗布量を、1.0%とした以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
【0172】
<実施例22>
1層目、及び2層目の不織布層を形成するための繊維を捲縮繊維(C4)に変更し、3層目の不織布層を形成するための繊維を捲縮繊維(C2)に変更し、さらに、親水化剤Aの塗布量を、1.0%とした以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布積層体を得た。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
【表3】
【0176】
【表4】
【0177】
以上の表1~表4の結果より、実施例の不織布積層体は、比較例の不織布積層体に比べ、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制しつつ、優れた寸法安定性を備えることが確認された。
【0178】
<実施例23~33>
(1層目及び2層目)
まず、実施例1と同様にして第1不織ウェブ(1層目、スパンボンド不織布の層)上に第2不織ウェブ(2層目、スパンボンド不織布の層)が設けられた積層不織ウェブを移動捕集面上に堆積させた。
【0179】
(3層目)
次に、以下に示すMB1~MB5の重合体を用いて、0.38mmφのノズルを有する紡糸口金から、溶融した重合体を吐出させメルトブローン法による溶融紡糸を行い、繊維を前述の積層不織ウェブにおける第2不織ウェブに堆積させた。これにより、それぞれ表5に示す目付を有するメルトブローンウェブ(3層目、MB)が第2不織ウェブ(2層目、スパンボンド不織布の層)上に設けられた積層ウェブを形成した。なお、表5に示すように、実施例27及び実施例28では、MB1及びMB2を質量比で90/10又は80/20(MB1/MB2)で混合した重合体を用い、実施例29及び実施例30では、MB3、MB2及びMB4を質量比で40/20/40(MB3/MB2/MB4)で混合した重合体を用い、実施例31では、MB3及びMB2を質量比で60/40(MB3/MB2)で混合した重合体を用い、実施例32では、MB2及びMB4を質量比で60/40(MB2/MB4)で混合した重合体を用いた。また、各実施例における紡糸温度は、実施例23~26のMB1では245℃であり、実施例27及び実施例28のMB1及びMB2を混合した重合体では250℃であり、実施例29及び実施例30のMB3、MB2及びMB4を混合した重合体では290℃であり、実施例31のMB3及びMB2を混合した重合体では300℃であり、実施例32のMB2及びMB4を混合した重合体では300℃であり、実施例33のMB5では300℃であった。
MB1:ポリプロピレン単独重合体(MFR:1,100g/10分、重量平均分子量(Mw):97,000)
MB2:プロピレン・エチレン共重合体〔ExxonMobil社製:製品名「VistamaxxTM6202」、MFR(230℃、2,160g荷重):20g/10分、エチレン含量:15質量%〕
MB3:プロピレン単独重合体〔MFR:1,500g/10分、重量平均分子量(Mw):54000〕
MB4:プロピレン系重合体ワックス〔密度:0.900g/cm、重量平均分子量:7,800、軟化点148℃、エチレン含量:1.7質量%〕
MB5:実施例1に記載のプロピレン-エチレンランダム共重合体(rPP1)
【0180】
(4層目)
次に、実施例1と同様にして第3不織ウェブ(3層目、スパンボンド不織布の層)を、メルトブローンウェブ上に積層し、4層構造の積層ウェブを形成した。
【0181】
4層構造の積層ウェブの3層目を除いた目付は17g/mである。次に、4層構造の積層ウェブを、1層目の不織布層側にエンボスロールが接触し、4層目の不織布層側に鏡面ロールを接触するように、125℃で熱圧着し、不織布積層体を得た。圧着部の面積率は、11%であった。実施例23~33の不織布積層体は、1層目及び2層目が第1の不織布層に相当し、4層目が第2の不織布層に相当する。さらに、実施例1と同様にして、不織布積層体に親水化剤を付着させた。不織布積層体に付着している親水化剤の質量を前記塗布量の測定に従って、乾燥前後の質量差と親水化剤の濃度より求めたところ、塗布量は0.5質量%であった。
【0182】
【表5】
【0183】
以上の表5の結果より、実施例の不織布積層体は、親水性に優れ、かつ、他の部材に接触したときの親水化剤の移行を抑制しつつ、優れた寸法安定性を備えることが確認された。さらには、表5に示すようにスパンボンド不織布の層及びメルトブローン不織布層を積層化した態様においても柔軟性が確保されていた。
【0184】
2019年3月8日に出願された日本国特許出願2019-42943号及び2019年10月29日に出願された日本国特許出願2019-196708号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。