IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シュトゥート・テオドールの特許一覧 ▶ モルス・アンドレアスの特許一覧

特許7233533第一の金属ストリップと少なくとも1つの更なる金属ストリップとからロールプロファイリングにより原線材を製造する方法
<>
  • 特許-第一の金属ストリップと少なくとも1つの更なる金属ストリップとからロールプロファイリングにより原線材を製造する方法 図1
  • 特許-第一の金属ストリップと少なくとも1つの更なる金属ストリップとからロールプロファイリングにより原線材を製造する方法 図2
  • 特許-第一の金属ストリップと少なくとも1つの更なる金属ストリップとからロールプロファイリングにより原線材を製造する方法 図3
  • 特許-第一の金属ストリップと少なくとも1つの更なる金属ストリップとからロールプロファイリングにより原線材を製造する方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】第一の金属ストリップと少なくとも1つの更なる金属ストリップとからロールプロファイリングにより原線材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 37/04 20060101AFI20230227BHJP
   B23K 35/40 20060101ALI20230227BHJP
   C23C 4/131 20160101ALN20230227BHJP
【FI】
B21C37/04 C
B23K35/40 320
B23K35/40 330
C23C4/131
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021526720
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2018000513
(87)【国際公開番号】W WO2019057335
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521208136
【氏名又は名称】シュトゥート・テオドール
(73)【特許権者】
【識別番号】521208147
【氏名又は名称】モルス・アンドレアス
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥート・テオドール
(72)【発明者】
【氏名】モルス・アンドレアス
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-160149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0047616(US,A1)
【文献】特開平05-042391(JP,A)
【文献】特開2011-230195(JP,A)
【文献】特開平05-305485(JP,A)
【文献】特開平10-128579(JP,A)
【文献】特開平02-011298(JP,A)
【文献】米国特許第06246008(US,B1)
【文献】中国実用新案第204866889(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第19916234(DE,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02974528(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/04
B23K 35/02
B23K 35/14
B23K 35/40
B23B 15/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属ストリップ(2)及び少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)から、ロールプロファイリングによって原線材(7)を製造する方法において、複数のロールスタンド(G1、G2)を用いたロールプロファイリングによって、複数回のパスで、前記第一の金属ストリップ(2)から外被部が形成され、前記外被部は、最終形態では、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)を周方向で完全に取り囲む方法であって、
先ず、第一のグループ(G1)のロールスタンドを用いて複数回のパスで、前記第一の金属ストリップ(2)だけが排他的に予形成物に成形され、そしてその後、第二のグループ(G2)のロールスタンドにおいて、前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が一緒に最終形態に成形され、この際、
前記第一の金属ストリップ(2)から前記予形成物への成形のための前記第一のグループ(G1)のロールスタンドを用いて、前記金属ストリップ(2)の長手方向に対して垂直な横断面で見て桶の形状が前記第一の金属ストリップ(2)から成形され、そしてその後、この桶形状の内部中に、桶形状の底部領域と接触するように前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が挿入され、その後、前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、前記第二のグループ(G2)のロールスタンドによって、互いに圧着した状態で一緒に成形され、及び
前記桶形状が、前記第一の金属ストリップ(2)の変形によって成形され、この成形は以下の変形ステップ、すなわち
a.前記第一の金属ストリップ(2)の相対する二つのストリップ縁部(2a)が、前記金属ストリップ(2)の表面上にそれぞれ180°で折り曲げられるステップ、
b.前記第一の金属ストリップ(2)の相対する二つの横側領域が折り曲げられ二つの立ち上がった脚部(2b)が形成され、この際、これらの両脚部(2b)は桶形状の側面外壁を形成し、そしてこれらの脚部を繋ぐ領域は桶形状の底部(2c)を形成するステップ、
を含む、
とを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、異なる金属から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、異なる降伏点を有する異なる金属から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記桶の形状が、横側の桶形状脚部(2b)とこれらを繋ぐ桶形状底部(2c)とを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
ステップa.において、前記ストリップ縁部(2a)が折り返されるステップを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記ステップb.において、前記第一の金属ストリップ(2)の相対する二つの横側領域が、元の金属ストリップ平面からそれぞれ90°±15°で折り曲げられ二つの立ち上がった脚部(2b)が形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、桶形状の底部(2c)と接触した状態で、桶中に中央に挿入されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記桶形状の底部(2c)において、桶形状の内側を向いた隆起部(2d)が形成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記桶形状の底部(2c)において、桶形状の内側を向いた凸型の隆起部(2d)が形成されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
W型の桶形状が形成されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、前記凸型の隆起部(2d)に沿って曲げられることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の金属ストリップ(2)の桶形状の脚部(2b)が、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)の表面上に内側に向けて折り返されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、それの横側領域において、前記第一の金属ストリップ(2)の曲げられたストリップ縁領域(2a)によって圧着された状態でそれと接触せしめられることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記桶形状の脚部(2b)の外側面(2e)が、複数回のパスで互いに接触せしめられることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
桶形状の底部(2c)と、それと桶形状脚部(2b)との間で圧着された少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)とを、前記桶形状の内部に対して凹型に成形/丸め曲げすることによって、前記桶形状の脚部(2b)の外側面(2e)が接触せしめられることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属ストリップ(2、4)が、それぞれコイル(1、3)から繰り出され、そして原線材(7)がコイル(6)に巻線されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
前記第一の金属ストリップ(2)が、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)の金属の降伏点と比べてより高い降伏点を有する金属を含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)の幅が、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)の各外側ストリップ縁部と前記桶形状の脚部(2b)の下端との間に材料の流れによって閉じることが可能な/閉じる自由空間(2f)が形成されるように寸法決めされることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
前記原線材(7)が、再結晶化アニールされることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
前記原線材(7)が、キャリブレーション及び/または減寸化の後に、再結晶化アニールされることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
前記第一の金属ストリップ(2)及び/または前記更に別の金属ストリップ(4)のために、比較的高い降伏点を有する金属として、Ni≧99.6重量%及びC含有率≦0.02重量%の純度の純ニッケルが選択され、及び比較的低い降伏点を有する材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金が選択されることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
比較的高い降伏点を有する金属が、前記第一の金属ストリップ(2)のための金属であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
比較的低い降伏点を有する材料が、前駆単一の更に別の金属ストリップ(4)のための材料であることを特徴とする、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)のために、以下の材料の組み合わせのうちの一つが選択されることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一つに記載の方法:
a.オーステナイト系特殊鋼とフェライト系特殊鋼、または
b.フェライト系特殊鋼とアルミニウムまたはアルミニウム合金、または
c.FeNiCrAl及びFeNiAlからなる複合線材を製造するために、鉄、鋼またはフェライト系特殊鋼とニッケル及びアルミニウムが使用される。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一つに従い製造された細径化された原線材(7)のコーティングの形成のための溶接用線材または溶射用線材としての使用。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一つに従い製造された細径化された原線材(7)の、フレーム溶射、高速フレーム溶射、アークコーティングまたはレーザー肉盛溶接によるコーティングの形成のための溶接用線材または溶射用線材としての使用。
【請求項27】
前記コーティングが高耐熱性であることを特徴とする、請求項25または26に記載の使用。
【請求項28】
線材注入による溶融物処理のための、請求項1~24のいずれか一つに従い製造された原線材(7)の使用。
【請求項29】
金の融解のための、請求項1~24のいずれか一つに従い製造された原線材(7)の使用。
【請求項30】
ニッケルアルミニドの融解のための、請求項1~24のいずれか一つに従い製造された原線材(7)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の金属ストリップと少なくとも一つ更に別の金属ストリップとからロールプロファイリングにより原線材を製造する方法であって、複数のロールスタンドを用いたロールプロファイリングによって、複数回のパスで前記の第一の金属ストリップから外被部を形成し、これが、最終の形態では、前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップを周方向で覆い、好ましくは完全に覆う、前記方法に関する。
【0002】
好ましくは、前記の第一の金属ストリップ及び少なくとも一つの更に別の金属ストリップが、異なる金属から構成されることが企図される。更に好ましくは、これらの異なる金属は、異なる降伏点を有する金属である。好ましくは、上記の異なる金属の降伏点は、少なくとも2倍、更に好ましくは少なくとも3倍、更により好ましくは少なとも4倍、異なっている。
【0003】
好ましくは、このような原線材は、溶接用線材または溶射用線材として使用することができるべきである。好ましくは、金属ストリップはコイルから繰り出される。該原線材は、ストリップのロールプロファイリングによって製造される。ロールプロファイリングは、圧延成形とも称される。この際、金属ストリップは型付けされたロールの間を通過し、それによってプロファイリングが金属ストリップ上に転写される。本発明では、好ましくは異なる降伏点を有する金属ストリップは、別々に圧延成形プロセスに導入される。外被部として使用される前記金属ストリップは、前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップよりも幅広であり、そして(好ましくは通常は低い降伏点を有する)前記の少なくとも一つの更に別のストリップの変形の前に、単独で予備変形され、特にほぼ完全に成形される。本発明に従い製造される原線材は、例えば打延、圧延、延伸及び/又は引抜加工によって、所望の最終寸法にまで減寸化することができる。
【0004】
比較的高い降伏点を有するストリップとしては、好ましくはニッケルストリップを、比較的低い降伏点を有するストリップとしては、好ましくはアルミニウムストリップを使用することができる。この場合、好ましくは、炭素含有率が低められた純粋な品質が用いられ、これは、NiAl複合体を再結晶化させつつアニールすることを可能にする。NiAl溶射用線材は、例えば耐高温性コーティングのために、中でも、タービンブレードの製造におけるボンドコートとして使用される。
【0005】
低い降伏点を有するストリップを圧延成形プロセスに遅れて導入することによって、他方のストリップに対するこのストリップの伸長、それ故、生じる線材からこのストリップが押し出されること及びこのストリップにおける折り目の形成のリスクが避けられる。コイル状材料の好ましい加工は、長い運転時間の製造を可能にする。それによって、低い降伏点を有するストリップが、キャリブレーション及び更なる変形の時に原線材から押し出されることが避けられる。低い降伏点を有する材料のより強い変形を可能にするためには、中でも、そのストリップの幅を制限することによって、横断流によって充填される自由空間が提供される。
【背景技術】
【0006】
ロールプロファイリングは、単一の金属ストリップのための純粋な曲げ変形方法である。複数の金属ストリップを一緒に加工する場合には、従来技術に従い、ほぼ単一のストリップのように挙動するクラッド金属ストリップが加工される。
【0007】
特にこれらの金属ストリップが異なる幅を有する場合、結合されていない層状金属ストリップを一緒にプロファイル化しようとするとき、大きな問題が生じる。この問題の核心は、異なる金属の異なる降伏点であり、これは、結合されていない状態で一緒に加工する場合には、相対的な動き、特に異なる金属ストリップの異なる伸長をまねく。
【0008】
降伏点とは、原材料が一軸及びモーメントフリーの引張応力下に永続的な塑性変形を示さないでいられる最大応力を表す材料特性値のことと理解され、すなわち、降伏点を下回る場合、材料は、負荷を取り除いた後に、弾性的に元の形状に戻り、そして降伏点を超える場合には、形状の変化、引張試験の場合、すなわち伸長が残る。
【0009】
これまでのところ、伸びの問題に対する解決策はない。外被が結合パートナーのうちの一つのみからなる完全に充填された線材形状断面を金属ストリップのロールプロファイリングによって製造することには更に問題がある。
【0010】
刊行物US3,940,964(特許文献1)は、棒状体の製造のために、同じ幅の層からなるクラッドストリップを使用することを教示している。完全に充填されたプロファイル及び同時に全ての面が被覆された線材はこの一次材料から製造することができない。しかし、これは、明らかに、この刊行物の教示では目的ともされていない。
【0011】
更に、US2010/0047616A1(特許文献2)は、製造された最終形状において、一方の金属ストリップが、他方の金属ストリップを完全に覆う外被を形成する、二つの層状ストリップからのバイメタル線材の製造法を記載している。この文献では、アルミニウムストリップをより幅広のニッケルストリップ上に敷き、両方のストリップを最初に先ず一緒にU字型に変形し、次いで、ニッケルストリップの幅方向に(長手方向に対し垂直に)出張る部分を、アルミニウムストリップの端部に被せそして更に丸めることを提案している。このように製造された原線材を、次いでより細い断面の線材へと引き延ばす。
【0012】
US2010/0047616A1(特許文献2)に記載の方法は以下の欠点を有する:
【0013】
1.アルミニウムとニッケルとの混合比
US2010/0047616A1(特許文献2)、段落[0014]によれば、横断面中のニッケルの割合とアルミニウムの割合はほぼ等しく分布すべきであり、そして同じ体積を有するべきである。しかし、アルミニウム及びニッケルは、溶射/溶接/溶融によって生じる合金が要求するような比率で線材の断面中に存在しなければならない。
【0014】
NiAl合金の標準は、Ni80重量%/Al20重量%の組成である。この重量比は、ストリップの面積寸法に換算することができる。しかし、これはこの刊行物には記載されていない。
【0015】
2.異なる降伏点の故の、一緒に加工される異なる金属の異なる膨張
a.ストリップの供給
US2010/0047616A1(特許文献2)では、アルミニウム及びニッケルを最初から、積層[0015]及び[0016]またはクラッド[0022]材料として一緒に加工することを提案している。しかし、両金属は異なる強度を有する。標準品質UNS N02200のソフトアニールされたニッケルの降伏点は100MPaであり、ソフトアニールされたENAW1050の降伏点は20MPaである。
【0016】
確かに、第一にロールプロファイリングでは、横断面は規定通りに変形され;それ故、ストリップは安定して案内され得るが、垂直に作用する最小圧力を厚さ方向で金属ストリップ上に及ぼす必要がある。必要なロール圧は材料依存性であり;ニッケルを安定して案内するのに十分な圧力は、比較的軟質なアルミニウムでは既に厚さの減少を招く。圧延成形では、望ましい材料変形に必要なエネルギーは、作業ロールから工具(ロール)を介して金属ストリップに圧力かけることよって伝達される。これは、上部及び下部工具と金属ストリップとの間の圧力は、金属ストリップの材料が工具中に引き込まれそしてそれの降伏点を超えて望ましい変形点で変形できるほどの大きさである必要があることを意味する。
【0017】
ここで異なる降伏点を有する二つまたはそれ超の積層金属ストリップを変形する場合は、導入するべき変形エネルギーは、最大でも、最小の降伏点を有する金属ストリップの材料の強度が許容される大きさにしかできない。
【0018】
比較的軟質な材料上でなおも可能な工具圧と、比較的硬質な材料の変形のために必要な圧力の同時達成との間の遷移領域では、比較的軟質の材料はその厚さを減少し、そして工具の前に連続的に伸長または裏返るであろう。
【0019】
しかし、比較的軟質の材料が、比較的硬質の材料のための必要な変形エネルギーをもはや伝達できない場合には、これはその厚さを大きく減らしそして犠牲になるであろう。工具と金属ストリップとの間の摩擦が失われ、そして圧延プロセスは停止するであろう。工具ロールは、「静止した」複合体上でスリップするであろう。
【0020】
厚さの減少は、金属ストリップの圧延加工の時に幅の変動としては現れにくく、むしろ追い出された材料が、金属ストリップの長さの変化を引き起こす。一緒に加工された異なる強度の積層金属の長さが変化すると、比較的軟質の金属ストリップが押し出されるか、または比較的軟質のストリップにおいての折り目の形成(折重ね)が起こる。折り目があると、下流ロールスタンドでの意図した変形が不可能になる。両方の現象は、目的とする混合比率の遵守を妨害する、というのも、これらは、材料の移動によって横断面を必然的に変化させるためである。
【0021】
長さの異なる変化の影響を回避するために、アルミニウムストリップを、プロファイリング装置に供給される時に制動し得るか、または張力下に置き得る。しかし、引き戻しは、最初のロールスタンドに供給される前にのみ行うことができる。それにより、確かに、第一のロールスタンドにおける折り重ねは避けられるが、異なる長さの変化は、続くスタンドではもはや補償することはできない。それ故、両ストリップの生じる長さの異なる変化が、ロールプロファイリング中に、比較的軟質の材料の重なりを招く虞がある。異なる長さの変化及び重なり合いは、断面におけるアルミニウムとニッケルとの間の混合比を変化させ; 予測不可能な変動する混合比を有する線材は、意図された目的のために使用できない。
【0022】
ニッケル及びアルミニウムの異なる伸長を避けるための解決策の一つは、段落[0016]及び図4に示されるように、張り出したニッケル側をアルミニウムストリップ周りに折り曲げ、それによってそれを保持することでもない。アルミニウムストリップがプロファイリングプロセス中で早期に挟み込まれる場合には、ニッケル及びアルミニウムの異なる長さの変化は、アルミニウムストリップが最初に応力亀裂を示し、そして最後に引き裂かれる程に大きなものであり得る引張応力を招く。リスクを評価する場合、原線材の製造には約20箇所の変形ステーションが必要であることに留意すべきである。
【0023】
b.原線材
比較的軟質の金属の降伏点を超える2つの金属ストリップの複合体に及ぼされる所与の圧力では、軟質及び硬質の金属は異なって変形する。この異なる変形は、閉じられた原線材を製造することによっては避けられない。US2010/0047616A1(特許文献2)、段落[0015]によれば、加工するべき両金属は積層されるべきである。これらの金属が一緒に加工される時にその開始時に積層されている場合は、加工可能な長さは制限される。6m長の原素材の製造に役立つ試験は、7.5cmと11.5cmとの間のアルミニウム封入物が 原線材末端から押し出されたことを示した。それによって、原線材中のNiとAlとの間の組成が大きくかつ予測不能に変化する。
【0024】
US2010/0047616A1(特許文献2)、段落[0018]の記載とは異なり、アルミニウムは空所を埋めるだけでなく、なかでも加工方向に対してむしろ伸長する。
【0025】
3.原料の厚さ及び中間アニールの必要性
a.US2010/0047616A1(特許文献2)による原線材寸法
プロファイリングによって製造された原線材は、6.35mm~7.62mmの直径を有する(US2010/0047616A1(特許文献2)、段落[0017])。それは、まだ完全に充填された断面を有しておらず(US2010/0047616A1(特許文献2)、図5参照)、そして打延、圧延または延伸によって、2.381mm~3.175mmまで減寸化されそしてそれによって高密化されなければならない(US2010/0047616A1(特許文献2)、段落[0018])。しかし、直径を約50%小さくすると、既に80%を超える面積の減少をもたらす。
【0026】
【表1】
【0027】
この減寸化によって、線材がより硬くなる。減寸率が80%を超えると、複合線材の変形能は消尽してしまう。その時、複合線材は非常に硬いので、少なくとも通例の装置では、柔軟性が欠如しているために、溶接装置のケーブルアセンブリを通した運搬はもはやできない。
【0028】
ニッケル及びアルミニウムストリップから構成される溶射用線材がUS2010/0047616(特許文献2)に従い製造可能であったとしても(但しこれは事実ではない)、これは、もはや溶射に使用することはできない。
【0029】
原線材を高密化しそして最終的な寸法に引抜加工することにより、原線材がより硬質になる。それを使用可能にするには、すなわち軟質にするためには、この線材をアニールする必要がある。しかし、アニールは、US2010/0047616A1(特許文献2)では、確実な理由からは企図されていない。
【0030】
ニッケルの再結晶化温度(690℃~720℃)は、アルミニウムの融解温度(650℃)を超える。溶融したアルミニウムがニッケルと接触すると直ぐに、発熱性の反応が引き起こされ、これは、ニッケルも融解させてしまうような複合材の加熱を導く。すなわち、US2010/0047616A1(特許文献2)による複合線材はソフトアニールすることができない。
【0031】
b.より薄い厚さの原線材
本発明者らの経験によれば、原線材の横断面は、キャリブレーション及び減寸化によって高密化されそして完全に充填された寸法よりも、わずか20%だけ大きいものである必要がある。US2010/0047616A1(特許文献2)、段落[0017]及び[0018]の記載から計算される高い減寸化率は、比較的薄い出発ストリップが使用され、そしてそれよって、好ましくは再結晶化性アニールを避けることができる場合には、必要ではない。
【0032】
US2010/0047616A1(特許文献2)の図1に示される線材の水平断面は、左右相称に配置されかつほぼ同じ厚さの10枚の層、すなわち6枚のNi層及び4枚のアルミニウム層からなる。
【0033】
全て層の厚さが同じであると仮定すると、出発材料の厚さが与えられる:
【0034】
【表2】
【0035】
しかし、比較的薄い金属ストリッを使用しても上記問題は解決されない:
【0036】
金属ストリップは薄すぎてはならない:プロファイルロールスタンドに安定してストリップを案内するためには、金属ストリップのある程度の最小厚さが必要である。この最小厚は材料に依存し、鋼鉄の場合は約0.2mmであり、より軟質の材料はそれ以上である。積層金属ストリップは、その層スタックを構成する個々のストリップのように挙動するので、それらの層厚ではなく、個々の厚さで評価される。これは、層スタックが互いに対して移動できる限り、層スタックが個々のストリップのように挙動するためである。
【0037】
しかし、薄い金属ストリップの使用は、技術面での要求が高いだけではなく、不経済でもある、というのも、先ず薄い出発ストリップを圧延加工する必要があり、その後、長い寸法をプロファイリングする必要があるためである。比較的厚い金属ストリップからなる複合材の圧延または引抜加工による減寸化は比較的かなり安価であり;このような作業は、いずれにせよ高密化にとって必要である。
【0038】
従って、直径1.6mmの線材は、ロールプロファイリングによっては製造できない。比較的大きな直径を有する全ての線材はロールプロファイリングによって製造できるが、約56%の減寸化は、これを、好ましい用途ではケーブルアセンブリに通した搬送にとっては硬すぎるものにする。ニッケルストリップの張り出した部分を曲げることによって、ブリッジ部(Steg)が線材内部に生じ、それにより、同じ厚さの中実線材と比べて複合線材を曲げることがかなりより困難になることを考慮すべきである。
【0039】
4.フック状に曲げられたニッケルからなるストリップ末端にアルミニウムが挿入されるので、線材の中央はニッケルだけからなるものではない。
【0040】
US2010/0047616(特許文献2)、図1によると、幅方向に張り出した部分のニッケルストリップが、圧着固定のために、挿入されたアルミニウムストリップ上に折り返される。外被部の加工が完了する前に早々に圧着することによって、アルミニウムストリップにせん断応力がかけられ、引き裂かれる場合がある。それによって、横断面の組成が変化する。
【0041】
5.US2010/0047616(特許文献2)、図1に示される横断面は、ロールプロファイリングによっては記載のようには製造できない。
【0042】
US2010/0047616(特許文献2)の図5は、既に閉じられているプロファイルを示しており、これは、図1に示されるプロフィルにはもはやロールプロファイリングによって再展開することはできない、というのもプロファイルロールは、更なる変更のためには外側からしか作用できないからである。図1に示される断面を製造できるようにするためには、図5から出発すると、ニッケルストリップの外縁を、既に閉じられたプロファイルにおいて更に90°曲げる必要がある。これは、ロールプロファイリングによっては可能ではない。むしろ、外側から圧力をかけた場合、ニッケルストリップの外縁は、アルミニウム層中に食い込み、そしてアルミニウムをせん断する。
【0043】
図1によるロールプロファイリングによって製造される原線材プロファイルは、図4からも製造できない、というのも、外側ストリップは、90°、ましては必要とされる180°の角度で変形できないためであり;この変形のための内側からの逆方向の支えが欠けている。
【0044】
それ故、US2010/0047616A1(特許文献2)に記載の方法を用いては、それの課題を解決できない;しかし、ストリップから原線材を製造するという基本的なアイディアは、本発明を用いて進展される方策である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【文献】US3,940,964
【文献】US2010/0047616A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0046】
厚さの数倍長い、好ましくは少なくとも5倍長い、更に好ましくは少なくとも10倍長い幅を持つストリップを垂直に作用する圧力によって変形する場合、この変形は、幅の変化ではなく、殆ど排他的に長さの変化を招く。二枚以上の金属ストリップから、特に異なる降伏点を有する二枚以上の金属ストリップから規定の組成の線材を製造するためには、比較的低い降伏点を有する方の金属ストリップの比較的大きな伸長は避ける必要がある。
【0047】
それ故、本発明の課題の一つは、一方の金属ストリップの、他方と比べてこのような比較的大きな伸長を低減すること、好ましくは回避することである。更に好ましくは、心部が、原線材の外被部も構成する材料から少なくとも主として形成されている原線材が形成される原線材製造のための方法が提供されるべきである。
【0048】
更に、好ましい使用の一つにおいて、ニッケルストリップ及びアルミニウムストリップから製造された溶射用線材は、好ましくは以下の要件を満たすべきである:
-金属は粉末としてではなく、ストリップとして存在するべきである。
NiAl溶射用線材の製造のためには、多くの場合にアルミニウム粉末が、ニッケル製外被部中に充填される。粉末の表面積は、ストリップの表面積よりも大きいため、ストリップを介してよりも粉末を介しての方が、より多くの酸化物が導入される。従って、粉末の使用は不利である。
更に、アルミニウム粉末は、その粉末サイズが500μmを下回ると自燃物となる。
粉末は、流動するために、外被部及び充填された粉末からの横断面の正確な組成を制御することが困難であるという更なる欠点を有する。
-ストリップは、合金としてではなく、合金の成分として導入されるべきである。
80重量%のニッケル及び20重量%のアルミニウムからなる合金は、1.362℃で既に溶融する。ニッケルは1.455℃で始めて溶融する。それ故、一見は、溶射用線材として合金を使用することは有利のようである。複合線材の溶射の格別な利点は、AlとNiとの発熱反応が、溶射の時に直接、溶融の際に始めて起こる点にある。それによって高められた温度は、溶射された層と基材との良好な結合をもたらす。付着性を改善するための基材の前処理は、環境によっては、無しで済ませることができる。
-ニッケル及びアルミニウムの異なる強度は、線材に加工する時に、異なる伸長を招いてはならず、それ故、混合比の変更を招いてはならない。
-複合材は、好ましくは再結晶化下にアニールできるべきである。
線材は、好ましくは形状安定性であるべきである、すなわち搬送時に折れ曲がる程に軟質であってはならない。他方で、これは、搬送できなくなるほどには硬質であってもならない。それ故、複合線材の硬度は、好ましくは変形及びアニールによって調製することができるべきである。アニールの際には、発熱性の反応は起こってはならない。
-ニッケル及びアルミニウム層からの断面の構成
例えばアルミニウムが酸化物相に基づいて有するような大きな表面粗さは、ケーブルアセンブリの迅速な摩擦を招く。それ故、複合線材の外側層は好ましくはニッケルからなるべきである。同様に、線材の中央も、アルミニウムストリップの早々の圧着を避けるためにニッケルからなるのがよい。
-プロファイル横断面は、好ましくは完全に充填されているのがよい。
この好ましい態様では、空洞は残存するべきではない、というのも、加熱された際に空気が、結合された金属を酸化してしまうであろうからである。
【0049】
[用語]
ロールプロファイリングによって製造され及び少なくとも二つの金属ストリップから形成された複合線材が「原線材」と称される。
【0050】
「ニッケル」という用語は、好ましい設計では、少なくとも99.6重量%の純度と最大でも0.02重量%の炭素含有率を有する品質のニッケルを指す。
【0051】
「アルミニウム」という用語は、高温度保護を促進する、アルミニウム合金、特に希土類元素を添加した合金も包含するべきである。
【0052】
W-プロファイリングとは、「W」という文字と似た、長手方向に対して垂直な横断面における金属ストリップの横断面形状のことと解される。特に、これにより、金属ストリップの二つの横側の立ち上がった脚部の間の金属ストリップの湾曲部、特に凸型の成形が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0053】
本発明によれば、上記課題は、冒頭に述べたタイプの製造方法において、複数回のパスで第一の群のロールスタンドを用いて、先ず、第一の金属ストリップだけを変形して予形成物に変形し、その後、第二の群のロールスタンドにおいて、前記第一の金属ストリップ及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップを一緒に最終形成物に変形することによって解消される。
【0054】
ここで、本発明は、前記少なくとも二つの金属ストリップ、すなわち第一の金属ストリップ及び少なくとも一つの更なる金属ストリップの成形を、複数のロールスタンドを用いて、特に一回のパス当たりそれぞれ一つのロールスタンドを用いて実行される複数回のパスによって行われることを前提とする。
【0055】
本発明による前記変形に関与する全てのロールスタンドの総数は、本発明では二つの群に分けられる。第一の群は、後で原線材の外被部を形成する第一の金属ストリップだけを排他的に変形し、そしてロールスタンドの第二の群は、原線材を形成する全ての金属ストリップを一緒に変形する。第一の群及び第二の群の間に、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップが第一の金属ストリップに加えられる。方法技術的には、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップは、コイル/巻き枠から第一の群のロールスタンドの上を加工せずに通過させ、次いで下方にかつ第一の金属ストリップと一緒に第二の群に導入することができる。更に別の金属ストリップのための巻き枠は、第一の群のロールスタンドの上に配置して、更に別の金属ストリップが、第二の群のロールスタンドの最初のスタンドに直接導入できるようにすることもできる。両方のケースにおいて、ストリップは合目的的にS字型スタンドを介して案内することができる。
【0056】
この分離は、第一の群のロールスタンド用いることにより、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップにかけられた場合には、第一の金属ストリップに対するこの少なくとも一つの金属ストリップの伸長をもたらすであろう圧力を、第一の金属ストリップだけにかけることを可能にする。それ故、変形ステップのこの部分的な分離によって、特に異なる降伏点を有する金属ストリップが原線材に統合された場合に生ずる伸長が避けられる。
【0057】
しかし、第一の金属ストリップだけの変形プロセス及びその後の共通の変形の部分的な分離は、金属が同じまたは類似の降伏点を有する場合にも有利であり、というのも、同じまたは類似の降伏点の場合にも、一緒に加工されたストリップは互いからずれる場合があるからである。加えて、より簡単に、外被部のプロファイルを分けて成形することができる。
【0058】
ストリップの異なる伸長は、異なる強度のストリップを一緒に加工した時に起こる。本発明によれば、異なる金属ストリップ、例えばニッケル及びアルミニウムのそれらの異なる強度の故の異なる伸長は、共加工を遅らせること、好ましくは全ての加工ステップの後の方の半分、特に第二の群のロールスタンドの全パスで初めて行うことによって避けることができる。この目的のためには、US2010/0047616A1(特許文献2)の教示とは異なり、前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップ、特にアルミニウムストリップを、第一のパスの前は、第一の金属ストリップ、特にニッケルストリップ上にはまだ置かず、複数回目のパスの時に、特にできるだけ多くのパスの後になって初めて、横断面で既に予成形物に成形された、好ましくは桶形状に成形された第一の金属ストリップ、好ましくはニッケルストリップ中に移す。すなわち、好ましくはより堅固な第一の金属ストリップは、第二の金属ストリップとは別に、最初に単独で変形させる。
【0059】
同じ圧力下に比較的低い降伏点を有する金属が、比較的高い降伏点を有する金属よりも大きく変形するか、またはより低い圧力下に既に変形することは、物理的な原因によるものであり、共加工の場合では避けることができない。それ故、本発明は、金属ストリップの異なる原材料の加工ステップの分離を企図するものである。
【0060】
それ故、異なる原材料の複合体製造の前に、外被部を形成する金属ストリップ、特により堅固な金属ストリップ、好ましくはニッケルストリップは、本発明によれば、別個に変形される、すなわち第一の群のロールスタンドを用いて変形される。
【0061】
好ましい態様の一つでは、本発明は、金属ストリップから予形成物を形成するための第一の群のロールスタンドを用いて、金属ストリップの長手方向に対して垂直な横断面として見て第一の金属ストリップから桶形状、特に横側の桶形状の脚部とこれらを結合する桶形状の底部とを有する桶形状を形成することを企図する。この際、この桶形状は、金属ストリップの長手方向に対して垂直な断面に見られる。この桶形状は、本質的に、U字型、特に変形U字型としても理解することもできる。
【0062】
それ故、この態様は、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップが、該桶形状の内部にこの桶形状の底部領域に接触した状態で挿入されて、第一の金属ストリップ及び前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップが、互いに圧着接合されて第二の群のロールスタンドによって一緒に形成されることを企図するものである。
【0063】
この際、圧着は、例えば、挿入された少なくとも一つの更に別の金属ストリップを、各々のロールスタンドの少なくとも一つのロールを用いて、桶形状の底部領域上に押圧することによって行うことができる。また、圧着は、特に引き続いて、前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップを、第一の金属ストリップによって圧着して保持することによっても行うことができる。
【0064】
この桶形状は、後で閉じられる原線材の外被部の開放した予形成物を形成するため、この態様では、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップが変形プロセスに導入される前に外被部の形成が既に大部分行われることが明らかである。
【0065】
ここで、好ましくは本発明は、第一の金属ストリップの両方の(金属ストリップの幅方向で)相対するストリップ縁部を金属ストリップの表面上にそれぞれ180°折り曲げて、特にストリップ縁部をクリンピングして、第一の金属ストリップ、好ましくは最初は平坦な第一の金属ストリップの変形によって桶形状が形成されることを企図できる。それ故、ストリップ縁部は、事実上、それら自体上に折り返される。この際、好ましくは、ストリップ縁部の折り返されてそれ自体に接触する領域の間には、間隔/空隙は生じない。それ故、折り返されたストリップ縁部は、好ましくは、金属ストリップの元の厚さの二倍の厚さを有する。
【0066】
更に、桶形状の形成は、第一の金属ストリップの両方の(幅方向で)相対する側部領域を、特に元の金属平面からそれぞれ90°±15°で、折り曲げて二つの立ち上がった脚部を形成することによって行われ、この際、両脚部は、桶形状の側面外壁と、これらの脚部を結合する領域は桶形状の底部とを形成する。
【0067】
ここで述べた両方の変形ステップは、任意の順序で行うことができるが、ストリップ縁部の「それ自体への折り返し」を最初に行うことが好ましい。
【0068】
ストリップ縁部の両側をそれ自体に180°折り返す際のその幅は、原線材の外被部材料によって形成される後で望ましい心部体積を既に確定する。
【0069】
ストリップの縁を次いで、特に更に90°で立直させて立ち上がった側部の脚部にすると、長手の延びに対して垂直な横断面として見て前記の桶が形成され、その中に、第二の金属ストリップを挿入することができる。特に、後での桶の側面/脚部の成形も含めて、これは、原線材の最終の形状に既にほぼ相当する。
【0070】
桶の内側の方向に桶の脚部を曲げる前に、先ず、第二の金属ストリップ、好ましくはアルミニウムトリップを、桶形状に曲げられた、この際更に好ましくはW型に形成された第一の金属ストリップ中に挿入する。
【0071】
図面に示した実施例に基づいて、図1では、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ、好ましくはアルミニウムストリップは、先ずステーション11において、既に桶形状に形成された第一の金属ストリップに、好ましくはニッケルストリッププロファイルに接合する。第一の金属ストリップ、特にニッケルプロファイルがほぼ完成した状態に圧延されており、ここで好ましくはW型に成形されているので、ストリップを案内するために、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ/アルミニウムストリップ上に、厚さを減少させそして不釣り合いに大きく伸長させるであろう大きな力をかける必要はない。
【0072】
技術的には、前記少なくとも一つの更なる/第二の金属ストリップ、特にアルミニウムストリップの遅延された供給は、アルミニウムストリップの送り出しをプロファイリング装置の上方に配置することによって達成することができる(図1参照)。この巻き枠から繰り出されるストリップは、好ましくはロールを介してS字型の経路で、上方からプロファイリングプロセスに導入される。送り出し用巻き枠は、第一の金属ストリップ、特にニッケルストリップが繰り出される巻き枠の前に配置することもできる。
【0073】
更に本発明は、前記少なくとも一つの更に別の/第二の金属ストリップ、特にアルミニウムストリップを供給する際のストリップの案内に必要な垂直なロール圧の限定を企図することができる。
【0074】
ストリップの進行方向に対して横断方向の前記少なくとも一つの更に別の/第二の金属ストリップ、特にアルミニウムストリップのずれを避けることを企図することができる。
【0075】
このためには、本発明は、前記少なくとも一つの更に別の、特に第二の金属ストリップ/アルミニウムストリップが、桶形状中に供給する際に、その上に配置された工具ロールによって中央に置かれ、その際、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップは本質的に側部にのみ案内される、すなわち前記少なくとも一つの更なる金属ストリップの伸長を引き起こさない圧力のみを用いて第一の金属ストリップ/ニッケルストリップ上に中央配置されることを企図できる。
【0076】
この際、これは、以下に更に記載するが、必須ではない好ましいW形状が第一の金属ストリップに存在する場合には、第一の金属ストリップ/ニッケルストリップによって凸型に成形することができる。
【0077】
それ故、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップの、特にアルミニウムストリップの伸長は、それの供給及び中央配置の際に完全に避けられる。
【0078】
ストリップは、厚さに対する幅の高い比率によって特徴付けられる。ストリップに圧力がかけられると、垂直に作用する力が伸長を引き起こす。幅の変化はあったとしても最小である。異なる降伏点を有する二つのストリップを一緒に加工すると、比較的軟質のストリップは、比較的硬質のストリップよりも大きく伸長する。それ故、US2010/0047616A1(特許文献2)の図4とは異なり、本発明は、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ、好ましくはアルミニウムストリップは、第一の金属ストリップの予形成物を形成してから初めてプロファイリングプロセスにおいて圧着される、すなわち特に早い段階ではプロファイルプロセスにおいて圧着されず;それによって、他の場合では前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ、好ましくは比較的軟質のアルミニウムのせん断を結果として招き得る長手方向での大きすぎる力を避け得ることを企図する。
【0079】
意図される最終形態を達成するために、本発明は、第一の金属ストリップ、好ましくはニッケルストリップを、第二の金属ストリップ上に、好ましくはアルミニウムストリップ上に押圧することを企図する。それ故、第一の金属ストリップから形成された桶の脚部は桶の内部方向に折り曲げられ、そしてその後、それ自体上に折り返されたストリップ縁部のところで、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップの外側のストリップ領域と接触せしめられる。前記少なくとも一つの更に別に金属ストリップ、特にアルミニウムストリップは、第一の金属ストリップ、特にニッケルストリップの内側に折り曲げられたストリップ縁部によって圧着され、そしてそれによってそれの中央の配向で固定される。好ましくは、本発明により、第一の金属ストリップが、前記圧着によって、前記少なくとも一つの更に別の、特に第二の金属ストリップのストリップ案内をも担い、そして工具ロールによりかけられた圧力は、少なくとも本質的に第一の金属ストリップに対してのみまたは少なくとも主に第一の金属ストリップに対して作用するようにすることができる。
【0080】
本発明は、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップの材料、好ましくはアルミニウムが原線材から押し出されることを防ぐことができる。
【0081】
前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ、特にアルミニウムストリップが、第一の金属ストリップ、特にニッケルストリップと比較して不釣り合いに伸長することを防止する前記の技術は、閉じられた線材プロファイルが達成された時には、特に、好ましい態様において原線材を後段でキャリブレーションするために、本発明に従い製造された原線材に対して全ての側から均等に圧力をかける時には、もはや働かない。比較的軟質の金属の降伏点を超える所与の圧力が該複合体にかけられた場合には、両ストリップの金属、特にNi及びAlが異なって変形する。この異なる変形は、所与のストリップ寸法では、ほぼ排他的に異なる伸長として現れる。この異なる伸長は、原線材が閉じられたプロファイルを既に有することによっては避けられない。前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ、特にアルミニウムストリップを第一の金属ストリップによって圧着するにもかかわらず、これは、複合線材の変形時に線材の端部から押し出されてしまう。アルミニウム及びニッケルの場合は、約6m長の棒状物では、比較的軟質のアルミニウムが、複合線材の変形によって線材の末端から7.5から11.5cm押し出され得る。
【0082】
本発明は、桶形状の底部において、特にW型の桶形状の形成のために、桶形状の内部の方に向かう隆起部、好ましくは凸型の隆起部を成形することを企図することができる。この態様では、桶の中央に桶形状の底部に接触した状態で挿入された前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップは、凸型の隆起部に沿って折り曲げることができる。それによって、第一の金属ストリップの桶形状中での前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップの中央配置が保証される。
【0083】
両ストリップの、特にニッケルストリップ及びアルミニウムストリップのこのような凸型の成形は直感に反するように見える、というのも、複合ストリップは、線材の形の横断面を達成するためには凹型に成形する必要があるからである。それ故、US2010/0047616A1(特許文献2)では、プロファイルは、先ずは明白に凹型に成形される([0016]及び図3参照)。
【0084】
W形状は、好ましくは、側部の脚部の間の領域における外被部を形成する金属ストリップの桶の底部の一次的な凸型成形/隆起部によって形成される。
【0085】
W形状の使用は、先ず、原線材の製造のためには、二つの理由から不利のようである:
W形状の実行のためには、追加的に少なくとも二つのロールスタンド、特にブレークダウンスタンドが必要とされる。追加的なスタンド及び工具コストは、プロファイルプロセスをより高額なものとする。
【0086】
交互に曲げることによって、金属ストリップはより強く冷間固定される。それによって、全体的な変形能が早い時期に使い尽くされ、そして場合によっては早い段階のまたは更には追加的なアニールが必要となる。
【0087】
該複合線材の製造のためには、W形状は、必要な横力の観点では本来は必要ではなく; それ故、上記の理由から無し済ませることもできるであろう。該複合線材は、基本的に、外被部を形成する桶形状に形成された金属ストリップの平坦な底部を用いても製造できる。
【0088】
W形状は、好ましくは、但し必須ではないが、該複合線材の製造において使用することができる。更に好ましくは、第二の金属ストリップ、特にアルミニウムストリップは、凸型に成形された第一の金属ストリップ(外被部ストリップ)に沿って同様に凸型に成形される。そのためには、第二の金属ストリップを、第一の金属ストリップの桶中のW型を実現する隆起部上に載せ、そして第二の金属ストリップの側面を押し下げ、それによって第二のストリップの凸型成形も結果として生じる。この凸型成形は、好ましくは、上から噛み合うロールによって行われる(図3、パス11参照)。これは、第二の金属ストリップの、特にアルミニウムストリップの中央配置をもたらすだけではなく、引き続く変形段階においてこのストリップが横側にずれることを防止する。小さい折り曲げ力しか必要とされないため、前記の少なくとも一つの更に別の/第二の金属ストリップの、特にアルミニウムストリップの比較的大きな伸長が避けられる。
【0089】
原則的に、本発明による方法は、このW形状なしでも行うことができる。
【0090】
本発明は、好ましくは、前記第一の金属ストリップの桶形状の脚部を、内側に向けて、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップの表面上に折りたたむこと、特に前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップを、それの横側の領域において、第一の金属ストリップの折り曲げられたストリップ縁部で圧着されるように接触させることを企図する。
【0091】
その後、少なくとも本質的に閉じられた外被部を形成するために、特に桶形状の底部の及び桶形状の底部と桶形状の脚部との間の圧着された少なくとも一つの更に別の金属ストリップの、桶形状の内部に対して凹型の成形/丸め曲げによって、複数のパスで桶形状の脚部の外側表面を互いに接触させることを企図できる。
【0092】
特に好ましい態様では、本発明は、第二の金属ストリップの材料が、特にアルミニウムストリップの材料がずれる/押し出されることを、更に別の有利な改良によって、好ましくは横断面の組成が変化しないように防ぐことを企図する。このように製造された原線材は、特に好ましくは、溶射/溶接の重要な用途のために利用することができる。
【0093】
そのためには、本発明は、金属ストリップをそれぞれコイルから繰り出し、そして原線材をコイルに巻くことを企図することができる。コイルの加工によって、長い運転時間を実現することができる。特に有利には、コイルからコイルへの加工によって、長手方向での材料の移動が阻止されるようになる。
【0094】
特許出願US2010/0047616A1(特許文献2)の段落[0015]における原料の記載は、棒状の材料を使用するべきであること及び結合するべき原材料はコイルから繰り出すべきではないことを教示している:“flat strips..., both of equal length, are brought together face-to-face to provide a laminate”(平坦なストリップ・・・、同じ長さの双方を向かい合わせて一緒にして積層物とする)。
【0095】
この好ましい発展形態では、本発明は、複合体中の前記の少なくとも一つの更に別の、特に第二の金属ストリップの材料、特にアルミニウムのずれを、材料の長手方向の流れを制限することによって避けることを企図する。本発明に従って、数メータ長のストリップ断片の代わりに、前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップにおいて、好ましくは全ての金属ストリップにおいて、原線材に加工されるコイルが使用される場合は、第一の金属ストリップの層、特にニッケル層上での前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップの、特にアルミニウムの摩擦抵抗が、後段の線材長において、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップの材料が、第一の金属ストリップよりも強く伸長し得ないほどに高くなる。
【0096】
それ故、該複合線材をストランドとしてではなく、コイルとして製造すること、好ましくは両出発ストリップの二つのコイルから、または全ての出発ストリップの相当する数のコイルから、製造される原線材の一つのコイルへとすることが有利である。ここで、本発明は更に、連続して使用されるコイルの金属ストリップを接合し、特に溶接し、それによって原線材の連続的なエンドレスの原線材の製造が可能となることを企図することができる。
【0097】
本発明は、前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップの幅を、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップのそれぞれの外側のストリップ縁部と、桶形状の脚部の下端部との間に、材料の流れによって閉じることが可能な/閉じる自由空間が形成されるように寸法決めすることを更に企図することができる。それ故、本発明は、材料が中に流入する空間/自由空間を意図的に提供する。
【0098】
プロファイルの断面が強く変形され、その際、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップの材料の長手方向の流れが妨げられる場合でも、この材料は、第一の金属ストリップの材料よりも大きく伸びる。それ故、本発明は、好ましい発展形態では、前記少なくとも一つの更に別の/第二の金属ストリップの材料に、その材料が圧着にもかかわらず加工方向または長手方向に対して垂直に延び得る自由空間が提供されることを企図する。この垂直及び好ましくは該プロセスにおいて水平の延びは、これが横断面にわたる混合比率を変化させないためには重要ではない。
【0099】
US2010/0047616A1(特許文献2)の段落[0018]では、アルミニウムの流れが、存在する空所を充填するのに使用される。しかし、特に横方向の流れを可能にするため、本発明は、好ましくは空隙または自由空間を形成することを企図する。空間を後段の加工ステップにおいて再び閉じる必要がある場合には、これらを形成することは最初は直感に反することである。
【0100】
しかし、本発明によれば、これらの空間は、加工方向に対して横方向の材料の流れを可能とするために有利であることは判明している。制御下に可能な横方向の流れによって、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップの材料の延びが、長手方向の流れの代わりに横方向の流れに転換され、そして好ましくはプロファイルの破壊が避けられるものと推察できる。
【0101】
好ましくは、自由空間が提供され、原線材中のそれの全表面積は、前記少なくとも一つの更に別の、特に第二の金属ストリップの横断面積の5%~20%、好ましくは9%~14%である。
【0102】
しかし、例えば、Ni/Alの場合、または他の組み合わせの場合でも、下限は、Ni及びAl表面積、及び原線材の表面積から計算でき、そして上限は質量によって求めることができる。
【0103】
空間を形成するためには、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップは、これが、内側に向かって曲げられた第一の金属ストリップの角/脚部下縁にまで達することのないような、すなわちプロフィルが完全に充填されてないような幅で選択される。更に、第一の金属ストリップを、その縁部でそれ自体に折り返すと、第一金属ストリップの金属層のそうして生成された重なりが、スペーサーのように作用し、これが第二の金属ストリップの金属のための空間、特に第一の金属ストリップの金属厚さの高さ中の空間を形成する。
【0104】
前記の少なくとも一つの更に別の/第二の金属ストリップの金属は、今や、第一金属ストリップによる圧着にもかかわらず広幅化され得る、というのも伸長が阻止されるからである。それによって、横断面が完全に充填される。第二の金属ストリップの可能となった広幅化は、横断面中の自由空間を好ましくは完全に充填する。
【0105】
それ故、本発明によって、両方の異なる金属ストリップの異なる降伏点にもかかわらず、金属の混合比は横断面にわたって保持される。
【0106】
本発明は、アニールによる金属ストリップ間の金属間結合を形成することを企図できる。
【0107】
金属間結合は、通常は、クラッドストリップのアニール時に観察され得る。該複合線材の第一の再結晶化アニールの時には、層の金属結合がないため、混晶相は未だ生じない。第二の再結晶化アニールの場合にも、引抜加工による複合体の減寸化及び圧縮にもかからわず、金属結合は形成されない。特に、これは、400℃の低いアニール温度及び1時間の短い保持時間の故であり得る。より高い温度及びより長い保持時間では、第二のアニールにおいて、両金属の金属間相、例えばニッケル及びアルミニウムからなる約4μm厚の金属間相が生じ得、これは、界面における合金形成によって層を解消する。それによって、各層が「接着される」。これは、追加的に、更なる加工時に前記少なくとも一つの更なる/第二の金属ストリップの金属が押し出されることを困難にする。しかし、混晶層の形成は望ましくない場合もある。アニールのレジメを選択することによって、使用者は、混晶層が生じるかまたはそれの発生が防がれるかを決定できる。
【0108】
本発明は、高い降伏点を有する材料が、比較的低い降伏点を有する材料(すなわち、外被部を形成する材料)中に詰め込まれることを企図できる。
【0109】
ここまでの記載において、好ましくは、比較的低い降伏点を有する材料は、外被部ではなく、複合線材の内部を形成するということを前提としている。比較的高い降伏点を有する材料が比較的低い降伏点を有する材料によって取り囲まれている逆の場合は、それほどクリティカルではない、というのも、いわゆるサンドイッチ効果が発揮されるからである。それにより、軟質の材料間に取り囲まれた硬質の材料は、より小さい力の投入で圧延でき、そして中間アニールを施すことなく、同じ厚さの心部材料よりも薄く圧延できるようになる。それ故、本発明の方法は、この材料配置でも実施することができる。
【0110】
好ましい態様では、本発明は、製造された原線材の横断面が完全に充填されることを企図する。
【0111】
ストリップからは、線材形の断面ではなく、管形の断面を形成できる。US2010/0047616A1(特許文献2)の図1には、確かに完全に充填された横断面が示されているが、この横断面は、先に示したように、ロールプロファイリングによって製造できない。横断面を完全に充填するためには、本発明は、外被部として使用されるより幅広の材料のストリップ縁部を180°曲げ、それによってそれ自体上に折り返し、そうしてプロファイリングの完了後には、線材の中央に、高密化、好ましくはできる限り円形の高密化が外被部の材料から生じるようにすることを企図する。重なりの程度は可変であり; 外被部材料の、特にニッケルの後での心部体積は、180°の折り返しの長さによって正確に制御可能である。
【0112】
この理由からも、本発明は、該複合体に使用されるストリップが、同じ幅を持たないことを企図する。
【0113】
溶射の好ましい用途に適した線材横断面の構成
有利には、複合線材の中央及び外被部の両方ともニッケルからなる:
ニッケルストリップを最初に、アルミニウム上にではなく、それ自体上に変形する場合は、ストリップを成形して線材とした後は、中央部全体が外被部の材料で充填される。
【0114】
硬質の酸化アルミニウムがケーブルアセンブリを損傷できないようにするためには、外被部も、アルミニウムからではなくニッケルからなることが有利である。
【0115】
該複合線材の形状変化能は、約80%の表面積減少の後に消尽する。これは、14mmの幅及び13mmの高さの若干楕円形の原線材の場合には、57.5%の横断面積減少に相当する。
【0116】
ロールプロファイリングによって製造され、次いで更に高密化及び減寸化された線材を、本発明の更なる発展形態において、更に減寸化するべき場合は、中間アニールを行うことが好ましく企図される。
【0117】
しかし、両金属ストリップにおけるニッケル及びアルミニウムの記載した好ましい用途では、標準品質のニッケルの再結晶化温度は、アルミニウムの融解温度よりも高い。それ故、この複合体はソフトアニールすることができない。ニッケル-アルミニウム複合体をアニールできるようにするためには、アルミニウムは、アルミニウムの融解温度を高める元素で合金化する必要がある。これは例えばケイ素である。このような合金化は技術的に実現可能であるものの、製造される線材は、加えられた合金元素の故に、意図した使用目的にとってはもはや適していない。代替的に、使用するニッケルの再結晶化温度は、これが、アルミニウムの融解温度よりも明らかに低くなるように低下させる必要がある。
【0118】
この条件は、少なくとも99.6%の純度及び最大0.02重量%のC含有率を有する純ニッケルでしか満たされない。更に高い純度(≧99.98%)を有する純ニッケルは、先行する変形に依存して、300℃~350℃で既に再結晶化する。少なくとも99.6%純度の純ニッケルを使用する場合は、本発明では、複合線材の再結晶化性アニールも可能である。
【0119】
第一の金属ストリップを内側に丸めることによって生じる原線材では、特に両方の元の桶脚部の足位置に、隙間が残る虞がある(図4参照)。更に加工する際に、引抜加工中に使用されたオイルが、この隙間中に入り込みそしてアニール時にコークス化し得る。これにより、該複合線材の化学組成は望ましくない変化を起こすであろう。
【0120】
それ故、本発明は、このような隙間を溶接によって閉じることを企図できる。
【0121】
そのため、隙間の壁を閉じる目的で、溶接試験を行った。ファイバーレーザーを用いて、1000Wのコア出力及び2,000Wのリング出力を使用して、7.0mmの焦点位置及び2.0m/分の送りで隙間を溶接した。溶接継ぎ目は、原線材の更なる変形に耐える。
【0122】
また本発明は、原線材の横断面積の減少をもたらす変形によって隙間を小さくすることも企図できる。
【0123】
隙間を溶接することなく原線材を更に変形すると、隙間が、もはや裸眼で認識できない程度まで、13/14mmから10mmまで直径を減少させつつ締まる。それ故、隙間の溶接は無しで済ませることができる。周囲温度下及び高湿度下で比較長く貯蔵する場合には、湿分が複合線材中に入り込まないようにするために、溶接が有利であり得る。
【0124】
好ましい態様では、本発明は、線材に必要な関与する金属の原子重量の比率を、原線材横断面内部の金属の表面積割合に換算し、そしてその決定された表面積割合に従う金属ストリップを、本発明による方法と組み合わせることを企図できる。この点は、Ni/Alの好ましい用途の例において以下に詳しく記載する。
【0125】
溶射用線材の標準は、Ni80重量%/Al20重量%の組成である。本発明は好ましくは、この重量比を、積層すべきストリップの表面寸法に換算することを企図する。
【0126】
以下の式が体積割合に適用される。体積分布が長さにわたって一定であるので、体積割合の比率は表面積の計算にも有効である。この場合には、以下が適用される:
【0127】
式:
G1=成分1の質量分率%
G2=成分2の質量分率%
R1=成分1の密度
R2=成分2の密度
V1=成分1の体積分率%
V1=G1*R2/(G1*R2+G2*R1)
【0128】
データ:
原材料 密度 質量% 原子%
g/cm wt% at%
アルミニウム 2.7 20 35.2260
ニッケル 8.91 80 4.7740
【0129】
計算:
VAl=20*8.91/(20*8.91+80*2.7)=0.4521
Al=45.21%
Ni=54.79%
【0130】
この表面積比率は、多数の幅-及び密度の組み合わせで達成できる。
【0131】
表面積分率からのストリップ寸法の確定
望ましい線材直径及び指定の表面積分布から、ストリップの厚さを計算することができる:
【0132】
所与値:
DV線材=12.72[mm] 複合線材の完成直径
pAl =2.70 [g/cm] アルミニウムの密度
pNi =8.91 [g/cm] ニッケルの密度
AAl%=45.21[%] 複合線材上のアルミニウムの表面積分率
ANi%=54.79[%] 複合線材上のニッケルの表面積分率
sAL =2.40 [mm] アルミニウムのストリップ厚(選択)
sNI =1.20 [mm] ニッケルのストリップ厚(選択)
【0133】
要求値:
bAl = [mm]
bNi = [mm]
【0134】
計算値:
AV線材=(DV線材)*π/4
=122*π/4
=127.08[mm
bAl =AV線材*AAl%/100/sAl
=127.08*45.21/100/2.40
=23.94[mm
=24.00[mm] 選択
bNi =AV線材*ANi%/100/sNi
=127.08*54.79/100/1.20
=58.02[mm
=58.00[mm] 選択
【0135】
[本発明の用途分野]
本発明を、好ましい用途において、NiAl線材の製造の例に基づいて詳しく説明した。というのも、該製造の問題は、この場合に特に大きいからである。しかし、本発明は、この金属の組み合わせに限定されない。また、本発明は、比較的軟質の材料が内側にあること及び比較的硬質の材料が外被部及び心部を形成することにも限定されない。これは逆であることもできる。第二の及び場合により更に別の金属ストリップをロールプロファイリングプロセスに導入する前に、外被部材料をできるだけ大幅に成形して、本発明による予形成物とすることが重要である。遅延して挿入された金属ストリップには、水平なロールによる中央配置のために必要な圧力しかかけられないために、一つの金属ストリップだけでなく、桶形状に成形された複数の第一の金属ストリップ、特に、異なる降伏点を有するこのような複数の第一の金属ストリップを挿入することができる。
【0136】
本方法の使用は特に次の場合に有利である:
-例えば合金成分が分離する傾向があるために、ある種の合金を融解冶金学的に製造できないかまたは製造が困難な場合。この場合、ある種の合金成分の使用は制限する必要がある。
-例えば加工の時に脆くなるか、または迅速に硬化し、それ故しばしば中間アニールする必要があるために、合金の加工が困難である場合。これに対して、合金成分を層材料として加工する方が、かなりより簡単であり得る。
【0137】
このような場合は、合金は、拡散熱処理によって最終寸法近くに製造できる。拡散は、勾配を生成するためにも使用できる。
【0138】
上記の方法原理に基づき、例えば、他の金属の組み合わせを加工することができる。
-オーステナイトフェライト系及びいわゆる二相鋼
オーステナイトフェライト系鋼(例えば、材料番号1.4462)は、2相構造の組織を有する。両組織成分がほぼ同じ割合で存在するオーステナイトフェライト系鋼は2相鋼とも称される(例えば、材料番号1.4362、1.4460、1.4501)。これらは、フェライト系クロム鋼の比較的高い強度と、オーステナイト系CrNi鋼の耐腐食性とを兼ね合わせて持つ。組織成分が同じ割合で存在しない品質、特にフェライト含有率が<25重量%でオーステナイト含有率が<25重量%の品質のものは製造が困難である。そのような組成のオーステナイト-フェライト系組織を持つ熱間圧延によって製造されたビレットは、角で亀裂を形成する傾向がある。亀裂は、表面中の隙間からも形成する。
フェライト系鋼の降伏点は、通常は、オーステナイト系鋼よりも高い。線材は、オーステナイト系外被部及びフェライト系心部を備えて、またはフェライト系鋼からなる外被部及びオーステナイト系鋼からなる心部を備えても製造することができる。
該複合線材は、溶接用線材として使用することができる。
-FeCrAl合金
融解冶金的に製造された合金のアルミニウム含有率は、最大で5~5.6%に制限される。というのも、アルミニウム含有率が高いほど、比較的高いAl含有率の合金は加工が困難になるからである。該新規方法を用いて、更に高いアルミニウム含有率、例えば9%の含有率を有する線材も製造できる。これは、アルミニウムのストックが多くなり、それ故、溶接によって形成された層の貯蔵寿命が向上するので有利である。特殊鋼ストリップ及びアルミニウムストリップから複合線材を製造する場合は、鋼品質としては、フェライト系特殊鋼、例えばUNSS43000、UNSS43400及びUNSS44600、好ましくは制限された硫黄含有率を有するものを使用することができる。別々のストリップによる合金元素の供給を含む方法の格別な利点は、加工が困難なFeCrAl合金が、拡散アニールによる製造プロセスの終了時に初めて、または溶接用線材として使用した時に初めて生成される点にある。
-FeNiCrAl及びFeNiAl
例えばCr26Ni14Al10FeBalまたは例えばNi30Al16FeBal。
【0139】
これらの材料の組み合わせは、炭素燃焼型の発電用ボイラーのコーティングに使用される。
-本発明に従い製造される線材は、溶接用線材及び溶射用線材として、例えばフレーム溶射、高速フレーム溶射、アークコーティング及びレーザー肉盛溶接のために、または線材注入による溶融物処理のためにも使用することができる。該線材は、Oak Ridge National Laboratoryによって開発されたエクソメルト(Exo-Melt)法に従う原料配置の改良において、製造が困難な合金、例えばニッケルアルミニドの融解のためにも使用できる。合金製造は、この方法に従い反応合成によって行われる。NiAl複合線材は、溶融して鋳物を製造するために特に適している。
【0140】
図1は、線材の製造に適したプロファイリング装置の構造を示す。
【0141】
ここで、後で外被部を形成する第一の金属ストリップ2を、コイル1からロールスタンドの第一のグループ1に供給し、これを用いて、排他的に、この第一の金属ストリップ2のみが予形成物に形成され、特にすなわち桶形状が形成される。ここで、コイル3からは、第二の金属ストリップ4が、第一のグループG1に沿って案内され、この場合は、それを越えて案内され、そしてS字型スタンド5を用いて加工パス中に導入される。それから、ロールスタンドの第二のグループG2を用いて、両金属ストリップ2及び4が、本発明による最終形態となるまで一緒に変形される。
【0142】
この態様では、更に別の加工ステーションの任意選択のグループG3も示されており、これを用いることにより、製造された原線材7を、例えばキャリブレーション及び/または直線矯正(gerichtet)することができる。
【0143】
この加工セクションの端部では、本発明により製造された原線材7は巻き枠6上に巻かれる。
【0144】
これらの変形ステップの順番を図2に示す。
【0145】
パス1、すなわち第一のロールスタンドでは、第一の金属ストリップ2の中央配置が行われる。パス2から7では、金属ストリップ2の相対するストリップ縁部2aは180°でそれ自体に折り返され、それ故、そこでは、材料がストリップ側縁のところで二重にされる。
【0146】
パス8から10では、ストリップの横側領域を立てることによって、横側の桶脚部2bが形成される。ここに示した態様では、更に、桶底部2cには、この桶形状の内部に凸型に立つ隆起部2dを供し、これにより、桶形状のW形状が形成される。
【0147】
パス11からは、第二の金属ストリップ4が加工パスに導入され、中央配置されそして桶形状の隆起部2dに沿って曲げられる。
【0148】
パス12から14では、桶脚部2bが、桶形状の内部への方向にかつ第二の金属ストリップ4の横領域上に折り返され、それによって、第二の金属ストリップ4が、圧着された状態で、第一の金属ストリップと接合される。
【0149】
パス15~21では、桶脚部2bは、パス8から10の桶形状だった部分に基づいてそれらの外側面2eであった部分が、互いに向かって変形され、そしてそれによって、両金属ストリップの圧着された複合体が内側に丸められ、この際、隆起部2dが、パス21において、前記外側面が互いに接触しそして本発明による原線材7が完成状態で製造されるまで、元に戻るように変形される。
【0150】
更に、パス16及び18で達成される形態の拡大図は、第二の金属ストリップ4の金属ストリップ縁部と桶形状脚部2bの下側領域だった部分との間の、材料の流れによって閉じることが可能な自由空間2fを示す。
【0151】
図3は、プロファイリングのために使用したロールセットを示す。
【0152】
図4は、直径1.6mmの複合線材の横断面のカット面を示す。
【図面の簡単な説明】
【0153】
図1図1は、線材の製造に適したプロファイリング装置の構造を示す。
図2】これらの変形ステップの順番を図2に示す。
図3図3は、プロファイリングのために使用したロールセットを示す。
図4図4は、直径1.6mmの複合線材の横断面のカット面を示す。
【実施例
【0154】
融解冶金的に製造した合金としてではなく、ストリップからのNiAl線材の製造は、アルミニウムの融解の際の発熱効果が、射出された合金のより良好な付着をもたらすという利点を有する。粉末形態のアルミニウムの導入と比べて、導入される酸化物が少なくなる点が有利である。
【0155】
・材料品質
99.98重量%の純度及び0.002重量%のC含有率を有するニッケルストリップを使用した。アルミニウムストリップとしては、EN AW 1050Aの品質のものを使用した。
【0156】
・ストリップの寸法
多くの態様の寸法を考えることができ;厚さの変化は、幅の変化をも招くことを考慮すべきである。この例においてそれぞれ58mmまたは24mmであるNi及びAl使用ストリップの繰り出しから与えられる固定された幅の故に及び溶射用線材としての好ましい用途のためのAl/Ni=45.21%/54.79%の規定の表面積分布の故に、ニッケルストリップの厚さは1.2mmであり、アルミニウムストリップの厚さは2.40mmである。
検査
【0157】
【表3】
【0158】
・ロールプロファイリング
ロール成形プロセスにより原線材を製造する際は、比較的低い降伏点を有する金属が不釣り合いに伸長することを避けるために、個々のプロファイリング段階は以下のように進められる。個々のパスについては、図2を参照:
【0159】
【表4】
【0160】
これらの基準値に従い、ロール断面の設計を、データ・M・シート・メタル・ソリューションズGmbH(Am Marschalfeld 17,D-83626 Overlaidern/Valley)のソフトウェアである「Copra RF2015(サービスリリース3)」を用いて支援した。21基の変形ステーションを備えたドライシュテルン(Dreistern)P120を用いてプロファイリングした。
【0161】
プロファイリングセクションの出口で、原線材をエンドレス線材として巻く。
【0162】
最初は、プロファイリングの時に、使用したスタンドが安定性に欠けているために、14mmの幅及び13mmの高さの若干楕円形の外法を有する原線材複合体が得られた。より安定に設計されたスタンドの使用によってまたは更なるキャリブレーションパスによって、プロファイルを完全に丸めそして細径化することができる。
【0163】
ニッケルストリップの厚さを図り直すことによって、(ここでプロファイリングされた)ニッケルストリップの厚さはロールプロファイリングによって減少せず;むしろ僅かに厚さが増した。
【0164】
原線材を溶射用線材の標準寸法に減寸化するために、13/14mmの原線材直径の場合は、複数の減寸化ステップが必要である。この原線材は、更なるロールプロファイリングステップ、圧延、引抜、延伸及び打延によって減寸化することができる。
【0165】
・横断面の減寸化するための更なるロールプロファイリング
原線材の製造の後に中間アニールする必要がないため、更なる横断面減寸化を、一つの作業工程でロールプロファイリング(インライン)により行うことができる。この際、図1及び2に示した追加的な変形ステーションはもはや必要ではない。他方で、例えば以下に記載するように別個の作業工程は削減される。
【0166】
・引抜作業を用いた圧延及び巻線
原線材の楕円度は、横断面を圧延によって減寸化するべきに有利である。線材ロールスタンドは、交互に水平及び垂直に配向したロールススタンドから構成され、これは、楕円形のまたは円形の横断面を交互に圧延する。楕円物を圧延することによって、稜線の形成が避けられる。
【0167】
13/14mmの直径を有する本発明に従い製造された原線材を、先ず、タイプW10-3の6基型フュア(Fuhr)社製ロールスタンドによって10mmに減寸化した。このロールスタンドの下流には、ヘルボルン社製シングル引抜加工機EG IVが配置され、それを用いて線材を8mmに減寸化し、同時に巻線した。
【0168】
打延による減寸化によって、70%(面積基準)の変形(中間アニールなし)の時に既に、微細亀裂が外側外被部の内面に生じる。
【0169】
・再結晶化アニール
ロールプロファイリングによって、使用した原材料は確かに硬化するが、変形能が使い尽くされる程には硬化しない。それ故、原線材のロールプロファイリングの直後の再結晶化アニールは必要ではない。このロールプロファイリングされた原線材は、4.及び5.で上述したように、8mmまで更に減寸化することができる。
【0170】
前記のヘルボルン社製の機械から取り出された8mm直径のコイルを、450℃、1時間の保持期間で、保護ガス(10%の水素を含むアルゴン)下に再結晶化アニールした。
【0171】
この再結晶化アニールは、層の溶接を招かない。それ故、一方では、混晶の形成は起こらず、他方で、各層は、混晶形成によって結合されることもない。それにもかかわらず、更なる加工の間は、結合された原材料の異なる伸長についての従来生じた問題はほぼ無視することができる、というのも、線材がより細く、長くなるほど、断面積に基づいた線材における摩擦抵抗が大きくなるからである。
【0172】
・引抜加工及び最終アニール
アニールの後は、線材を、溶射用線材の標準的な寸法、すなわち3.2または1.6mmに減寸化する必要がある。
【0173】
引抜加工試験は、表面断面積の>85%の変形において、ニッケル及びアルミニウムの変形能が超過されることを示した。最初に、ニッケル外被部の内側に亀裂が生じる。複合線材の変形能を超過すると、片面のみが支えられ折り返され及び二重にされたニッケルストリップの縁部だった部分が最初に裂け、これは外被部よりも早く裂ける。更に変形させると、最後には、複合体中のアルミニウム層が裂ける。これは、線材中の窪みから確認できる。
【0174】
ニッケルのブリッジ部及びアルミニウム封入物が裂けることによって、横断面の組成が不制御に変化する。
【0175】
8基のステーションから構成される引抜加工機において、一回の引き抜きあたり18.5%の減寸化を用いて、線材が8mmから3.53mmに引かれた。
【0176】
総変形度は80.5%である。3.53mmの直径では、線材を450℃で一時間の保持時間でアニールした。
【0177】
第二のアニールでも、これらのアニールパラメータにおいて、金属間相は発生しない。金属間相の形成を目的とする場合は、450℃のアニール温度で、少なくとも3時間の保持時間を守る必要がある。
【0178】
3.2mm及び1.6mmの最終寸法は、一回または五回の引き抜きで達成される。
【0179】
一回の引き抜きの後は、線材は、それの低い変形度の故に比較的軟質であり、そしてケーブルアセンブリ中で良好に送ることができる。
【0180】
1.6mm径に減寸化した時の総変形度(図4参照)は79.5%である。線材は確かに硬質であるが、それの直径が小さいのでケーブルアセンブリに通して送ることができる。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 第一の金属ストリップ(2)及び少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)から、ロールプロファイリングによって原線材(7)を製造する方法において、特にここで、前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)は、異なる金属から構成され、好ましくは異なる降伏点を有する異なる金属から構成され、この際、複数のロールスタンド(G1、G2)を用いたロールプロファイリングによって、複数回のパスで、前記第一の金属ストリップ(2)から外被部が形成され、前記外被部は、最終形態では、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)を周方向で完全に取り囲む方法であって、先ず、第一のグループ(G1)のロールスタンドを用いて複数回のパスで、前記第一の金属ストリップ(2)だけが排他的に予形成物に成形され、そしてその後、第二のグループ(G2)のロールスタンドにおいて、前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が一緒に最終形態に成形されることを特徴とする、前記方法。
2. 前記第一の金属ストリップ(2)から前記予形成物への成形のための前記第一のグループ(G1)のロールスタンドを用いて、前記金属ストリップ(2)の長手方向に対して垂直な横断面で見て桶の形状、特に横側の桶形状脚部(2b)とこれらを繋ぐ桶形状底部(2c)とを有する桶形状が前記第一の金属ストリップ(2)から成形され、そしてその後、この桶形状の内部中に、桶形状の底部領域と接触するように前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が挿入され、その後、前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、前記第二のグループ(G2)のロールスタンドによって、互いに圧着した状態で一緒に成形されることを特徴とする、前記1.に記載の方法。
3. 前記桶形状が、前記第一の金属ストリップ(2)の変形によって成形され、この成形は以下の変形ステップ、すなわち
a.前記第一の金属ストリップ(2)の相対する二つのストリップ縁部(2a)が、前記金属ストリップ(2)の表面上にそれぞれ180°で折り曲げられ、特にストリップ縁部(2a)が折り返されるステップ、
b.前記第一の金属ストリップ(2)の相対する二つの横側領域が、特に元の金属ストリップ平面からそれぞれ90°±15°で折り曲げられ二つの立ち上がった脚部(2b)が形成され、この際、これらの両脚部(2b)は桶形状の側面外壁を形成し、そしてこれらの脚部を繋ぐ領域は桶形状の底部(2c)を形成するステップ、
を含むことを特徴とする、前記2.に記載の方法。
4. 前記桶形状の底部(2c)において、特にW型の桶形状を形成するために、桶形状の内側を向いた隆起部(2d)、好ましくは凸型の隆起部(2d)が形成されることを特徴とする、前記3.に記載の方法。
5. 少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、桶形状の底部(2c)と接触した状態で、桶中に中央に挿入されることを特徴とする、前記2.~4.のいずれか一つに記載の方法。
6. 前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、前記凸型の隆起部(2d)に沿って曲げられることを特徴とする、前記4.または5.に記載の方法。
7. 前記第一の金属ストリップ(2)の桶形状の脚部(2b)が、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)の表面上に内側に向けて折り返されること、特に、前記の少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)が、それの横側領域において、前記第一の金属ストリップ(2)の曲げられたストリップ縁領域(2a)によって圧着された状態でそれと接触せしめられることを特徴とする、前記2.~6.のいずれか一つに記載の方法。
8. 前記桶形状の脚部(2b)の外側面(2e)が、複数回のパスで互いに接触せしめられること、特に、桶形状の底部(2c)と、それと桶形状脚部(2b)との間で圧着された少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)とを、前記桶形状の内部に対して凹型に成形/丸め曲げすることによって接触せしめられることを特徴とする、前記2.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9. 前記金属ストリップ(2、4)が、それぞれコイル(1、3)から繰り出され、そして原線材(7)がコイル(6)に巻線されることを特徴とする、前記1.~8.のいずれか一つに記載の方法。
10. 前記第一の金属ストリップ(2)が、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)の金属の降伏点と比べてより高い降伏点を有する金属を含むことを特徴とする、前記1.~9.のいずれか一つに記載の方法。
11. 前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)の幅が、前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)の各外側ストリップ縁部と前記桶形状の脚部(2b)の下端との間に材料の流れによって閉じることが可能な/閉じる自由空間(2f)が形成されるように寸法決めされることを特徴とする、前記1.~10.のいずれか一つに記載の方法。
12. 前記原線材(7)が、特にキャリブレーション及び/または減寸化の後に、再結晶化アニールされることを特徴とする、前記1.~11.のいずれか一つに記載の方法。
13. 比較的高い降伏点を有する金属、特に前記第一の金属ストリップ(2)のための金属として、Ni≧99.6重量%及びC含有率≦0.02重量%の純度の純ニッケルが選択され、及び比較的低い降伏点を有する材料、特に単一の更に別の金属ストリップ(4)のための材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金が選択されることを特徴とする、前記1.~12.のいずれか一つに記載の方法。
14. 前記第一の金属ストリップ(2)及び前記少なくとも一つの更に別の金属ストリップ(4)のために、以下の材料の組み合わせのうちの一つが選択されることを特徴とする、前記1.~12.のいずれか一つに記載の方法:
a.オーステナイト系特殊鋼とフェライト系特殊鋼、または
b.フェライト系特殊鋼とアルミニウムまたはアルミニウム合金、または
c.FeNiCrAl及びFeNiAlからなる複合線材を製造するために、鉄、鋼またはフェライト系特殊鋼とニッケル及びアルミニウムが使用される。
15. 前記1.~14.のいずれか一つに従い製造された細径化された原線材(7)の、好ましくはフレーム溶射、高速フレーム溶射、アークコーティングまたはレーザー肉盛溶接による(特に高耐熱性の)コーティングの形成のための溶接用線材または溶射用線材としての使用。
16. 線材注入による溶融物処理のための、前記1.~14.のいずれか一つに従い製造された原線材(7)の使用。
17. 合金、特にニッケルアルミニドの融解のための、前記1.~14.のいずれか一つに従い製造された原線材(7)の使用。
図1
図2
図3
図4