IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベルツ,マルティンの特許一覧

特許7233536各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置
<>
  • 特許-各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置 図1
  • 特許-各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置 図2
  • 特許-各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置 図3
  • 特許-各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置 図4
  • 特許-各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置 図5
  • 特許-各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置 図6
  • 特許-各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置 図7
  • 特許-各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法、干渉計及び信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02097 20220101AFI20230227BHJP
【FI】
G01B9/02097
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021530107
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2019082799
(87)【国際公開番号】W WO2020109419
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】102018130162.6
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517050994
【氏名又は名称】ベルツ,マルティン
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(72)【発明者】
【氏名】ベルツ,マルティン
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/211665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光フィールド(Ei)の入力位相及び/又は入力振幅を決定する方法であって、
a)入力光フィールド(Ei)を第一光フィールド(E1)と第二光フィールド(E2)とに振幅分割すること;
b)伝搬した第一光フィールド(E1)に対して伝搬した第二光フィールド(E2)をデフォーカスさせ、かつ前記第一光フィールド(E1)と前記第二光フィールド(E2)とが異なる幾何学的伝搬距離と同一の光学的伝播長さを横切るように、第一光フィールド(E1)及び第二光フィールド(E2)を伝搬すること;
c)各場合に伝搬した第一光フィールド(E1)の第一スポット(x11,x21,x31)と伝搬した第二光フィールド(E2)の第二スポット(x12,x22,x32)とが検出器(300)で干渉して出力光フィールド(Ef)の共通の出力スポット(x1,x2,x3)を形成しそして出力光フィールド(Ef)が検出器(300)に干渉パターンを発生するようにして、伝搬した第一光フィールド(E1)及び伝搬した第二光フィールド(E2)の振幅重ね合せ及び像形成を行うこと;
の各ステップを含み、
出力光フィールド(Ef)の共通出力スポット(x1,x2,x3)を形成するように干渉する第一光フィールド(E1)のそれぞれの第一スポット(x11,x21,x31)及び第二光フィールド(E2)のそれぞれの第二スポット(x12,x22,x32)が入力光フィールド(Ei)の同じ入力スポットから生じ、
出力光フィールド(Ef)は、少なくとも三つの出力スポット(x1,x2,x3)を有し、当該三つの出力スポットに対して、
(i) 出力光フィールド(Ef)が少なくとも三つの出力スポット(x1,x2,x3,…)の異なる出力スポットにおいて相互の干渉性がないことと、
(ii)出力光フィールド(Ef)が少なくとも三つの出力スポット(x1,x2,x3,…)の異なる出力スポット内で少なくとも部分的に空間的な干渉性を示すこと、が適用され、
前記方法はさらに、
d)検出器(300)で干渉パターンの少なくとも一部分を測定し、そして測定した干渉パターンから複素干渉項(IF)を決定すること;
e)複素干渉項(IF)から入力位相及び/又は入力振幅を少なくとも部分的に決定すること;
を含む方法。
【請求項2】
伝搬した第二光フィールド(E2)が光学軸に沿って伝搬した第一光フィールド(E1)に対してシフトされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一光フィールド(E1)と第二光フィールド(E2)との間の経路差が付加的な調整装置で設定され、該経路差が入力光フィールド(Ei)の波長の少なくとも四分の一である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
入力光フィールド(Ei)が像形成光学システムを備えた物体から放出され、また入力光フィールド(Ei)がセクション平面に対して入力光フィールド(Ei)の相互に非コヒーレントな入力スポットの重ね合せであり、セクション平面が前記物体の入力光学システムの少なくともほぼ共役平面である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複素スポット干渉項(IF1,IF2,IF3)が各出力スポット(x1,x2,x3)に対して決定され、複素干渉項(IF)が複素スポット干渉項(IF1,IF2,IF3)の重ね合せとして表されること、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各出力スポットが検出器(300)の複数のピクセルにマッピングされ、複素ピクセル干渉項が各ピクセルに対して決定され、複素スポット干渉項(IF1、IF2、IF3)が複素ピクセル干渉項の値から成る、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
伝搬した第一光フィールド(E1)及び伝搬した第二光フィールド(E2)は、検出器(300)が像のほぼ像平面にあるようにして、検出器(300)に像形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
干渉パターンの測定が干渉パターンの位相及び振幅の測定を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
下記の応用の少なくとも一つに使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法の使用。
- 電子集束;
- 像の補正、特に像のシャープ化;
- 光学システムの収差の補正;
- 三次元物体の表面構造の測定;
- 一時的に部分的に非コヒーレント光源、及び/又は、フォトルミネセンスによる物体の測定;
- 薄膜の構造の測定;
- 位相物体の測定、特に位相感応性ブライトフィールド測定又はダークフィールド顕微鏡法;
- 三次元空間における物体の位置の決定
【請求項10】
方法が像の補正及び/又は像の電子集束に用いられ、補正すべき像が像形成装置で捕捉され、補正すべき像が像形成装置の焦点ではなく像形成装置の焦点近くで捕捉される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
入力光フィールド(Ei)の入力位相及び/又は入力振幅を決定する干渉計(100)であって、
分割装置(101,1011,1012)、像形成装置(103)及び検出器(300)を備え、
分割装置(101,1011,1012)は、第一干渉計アーム(11)と、デフォーカシングユニット(101,1011,1012)を備えた第二干渉計アーム(12)と、を画定し、
分割装置(101,1011,1012)が、振幅分割によって入力光フィールド(Ei)を第一光フィールド(E1)と第二光フィールド(E2)とに分割するように配置され、
分割装置(101,1011,1012)及び像形成装置(103)が、第一干渉計アーム(11)に沿って伝搬される第一光フィールド(E1)と第二干渉計アーム(12)に沿って伝搬される第二光フィールド(E2)とを振幅重ね合せによって重ね合わせ、そしてそれを検出器(300)上に像形成するように設置され、かつ調整され、それは、各場合に第一光フィールド(E1)の第一スポット(x11,x21,x31)及び第二光フィールド(E2)の第二スポット(x12,x22,x32)を検出器(300)で干渉させて出力光フィールド(Ef)の共通出力スポット(x1、x2、x3)を形成させ、出力光フィールド(Ef)が検出器(300)に干渉パターンを発生するような方法で行われ、
検出器(300)が、複数のスポットピクセルを有し、干渉パターンの少なくとも一部分を測定するようにされ、
デフォーカシングユニット(102,1021,1022)が、前記第一光フィールド(E1)と前記第二光フィールド(E2)とが異なる幾何学的伝搬距離と同一の光学的伝播長さを横切るように、前記第二光フィールド(E2)の幾何学的伝播距離を変更するように構成され、かつ第一光フィールド(E1)に対して、第二干渉計アーム(12)に沿って伝搬する第二光フィールド(E2)をデフォーカスさせるように構成され、
デフォーカシングユニット(102,1021,1022)、分割装置(101,1011,1012)、像形成装置(103)、及び検出器(300)が、出力スポット(x1,x2,x3)を前記複数のスポットピクセルに入射させるように設置され、かつ調整され、
スポットピクセルの少なくとも10%に対して、第一光フィールド(E1)と第二光フィールド(E2)との間の2πによる剰余位相差がスポットピクセルの位置で0.1π以上変化する、干渉計(100)。
【請求項12】
デフォーカシングユニット(102,1021,1022)が、誘電体媒体、特に誘電体プレート、屈折システム、特にレンズ、変換対称性をもつ回析システム、特に格子、調整可能なミラー、特にピエゾ調整可能なミラーの少なくとも一つの構成要素から成る、請求項11に記載の干渉計(100)。
【請求項13】
デフォーカシングユニット(102,1021,1022)、分割装置(101,1011,1012)、像形成装置(103)及び検出器(300)は、出力光フィールド(Ef)が少なくとも三つの出力スポット(x1,x2,x3)を有するように設置され、かつ調整され、
前記少なくとも三つの出力スポットに対して、
(i) 出力光フィールド(Ef)が前記少なくとも三つの出力スポット(x1,x2,x3)のうち異なる出力スポット(x1,x2,x3))において相互にコヒーレントなしであること、及び、
(ii)出力光フィールド(Ef)が前記少なくとも三つの出力スポット(x1,x2,x3)のうち一つの出力スポット(x1,x2,x3)内において少なくとも部分的空間的にコヒーレントであることを示すこと、が適用される、請求項11又は12に記載の干渉計(100)。
【請求項14】
デフォーカシングユニット(102,1021,1022)が、第二干渉計アーム(12)の光学経路長さを変えるように構成される、請求項11~13のいずれか一項に記載の干渉計(100)。
【請求項15】
第二干渉計アーム(12)の幾何学的伝搬距離が第一干渉計アーム(11)の幾何学的伝搬距離と少なくとも0.1mm異なる、請求項14に記載の干渉計(100)。
【請求項16】
干渉計(100)が請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される、請求項11~15のいずれか一項に記載の干渉計(100)。
【請求項17】
入力光フィールド(Ei)の入力位相及び/又は入力振幅を測定する信号処理装置(600)であって、
請求項11に記載された干渉計の検出器(300)から生ずる信号(S1,S2,S3,…)によって複素干渉項(IF)を決定する入力モジュール(601);
伝搬マッピング(U)及び/又は点広がり関数を備えるメモリモジュール(602);
を備え、
伝搬マッピング(U)は、光学経路長さに沿って伝搬される第一光フィールド(E1)の、前記光学経路長さに沿って伝搬される第二光フィールド(E2)への伝搬を記述するものであり、
伝搬される第二光フィールド(E2)が、伝搬される第一光フィールド(E1)に対してデフォーカスさせられ、
前記信号処理装置はさらに、
複素干渉項(IF)及び伝搬マッピング(U)及び/又はポイント広がり関数によって入力光フィールド(Ei)の入力位相及び/又は入力振幅を決定するように配置された評価モジュール(603);
を備えた、信号処理装置(600)。
【請求項18】
メモリモジュール(602)がさらに基準データベースを有し、基準データベースが複素比較干渉項を備え、複素比較干渉項が計算及び/又はキャリブレーションによって決定され、評価モジュール(603)が前記複素比較干渉項との比較によって信号(S1,S2,S3,…)から複素干渉項(IF)を決定するように構成される、請求項17に記載の信号処理装置(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法に関する。さらに、本発明は、それぞれ入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する干渉計及び信号処理装置に関する。本発明のさらに別の概念は、入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光学干渉計は、しばしば光フィールドの位相及び/又は振幅を復元するのに用いられる。例えば、これにより三次元像を復元することができる。特に、物体の空間的位置(例えば位置及び構造)或いは物体の個々の点は、物体と相互作用する検出器で測定した光フィールドの強さにより測定されることになる。
【0003】
従来の光学システムでは、しばしば、干渉計の横方向分解能及び/又は軸方向分解能(すなわち光フィールドの深度)が制限され、像復元を困難にさせるという問題が生じる。加えて、外部基準ビーム(すなわち物体に影響されない基準ビーム)を用いる従来の干渉計セットアップでは、光学システムの設計において制限され得る。外部基準ビームを用いないいわゆる自己基準システムではこれらの制限はない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、自己基準で入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する改良型の方法を提供することにある。さらに、各々入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する改良型の干渉計及び改良型の信号処理装置が提供される。特に、本方法は、非コヒーレンス光及び/又は単に部分的にコヒーレント光に適用し得る。
【0005】
少なくとも一つの実施形態によれば、入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する本発明に記載した方法は、下記のステップ:
a)入力光フィールドを第一光フィールドと第二光フィールドとに振幅分割すること;
b)伝搬第一光フィールドに対して伝搬第二光フィールドを焦点ぼかしさせるように第一光フィールド及び第二光フィールドを伝搬すること;
c)各場合に伝搬第一光フィールドの第一スポットと伝搬第二光フィールドの第二スポットとが検出器で干渉して出力光フィールドの共通の出力スポットを形成しそして出力光フィールドが検出器に干渉パターンを発生するようにして、伝搬第一光フィールド及び伝搬第二光フィールドの振幅重ね合せ及び像形成を行うこと;
を含み、
出力光フィールドの共通出力スポットと干渉する第一光フィールドのそれぞれの第一スポット及び第二光フィールドのそれぞれの第二スポットが入力光フィールドの同じ入力スポットから生じ、また、出力光フィールドが、
(i) 出力光フィールドが少なくとも三つの出力スポットの異なる出力スポットにおいて相互のコヒーレンスがなく、
(ii) 出力光フィールドが少なくとも三つの出力スポットの異なる出力スポット内で少なくとも部分的に空間的なコヒーレンスを示すこと
に適用する少なくとも三つの出力スポットをもち、
さらに、
a)検出器で干渉パターンの少なくとも一部分を測定し、そして測定した干渉パターンから複素干渉項を測定すること;
b)複素干渉項から入力位相及び/又は入力振幅を少なくとも部分的に測定すること;
を含む。
【0006】
本発明に記載した方法の実施形態は、以下の応用の少なくとも一つに使用が認められ得る。
- 電子集束
- 像の補正、特に像のシャープ化
- 光学システムの収差の補正
- 三次元物体の表面構造の測定
- 一時的に部分的に非コヒーレント光源及び/又はフォトルミネセンスによる物体の測定
- 薄膜の構造の測定
- 位相物体の測定、特に位相感応性ブライトフィールド測定又はダークフィールド顕微鏡法
- 三次元空間における物体の位置の測定。
【0007】
少なくとも一つの実施形態によれば、入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する干渉計は、分割装置、像形成装置及び検出器を有する。分割装置は、第一干渉計アーム及び分散ユニットを備えた第二干渉計アームを画定している。分割装置は、振幅分割によって入力光フィールドを第一光フィールドと第二光フィールドとに分割するようにされる。分割装置及び像形成装置は、第一干渉計アームに沿って伝搬される第一光フィールドと第二干渉計アームに沿って伝搬される第二光フィールドとを振幅重ね合せによって重ね合せ、そしてそれらを検出器上に像形成して、各場合に第一光フィールドの第一スポット及び第二光フィールドの第二スポットを検出器で干渉させて出力光フィールドの共通出力スポットを形成させ、共通出力スポットによって検出器に干渉パターンを発生するようにされる。検出器は、干渉パターンの少なくとも一部分を測定するようにされる。分散ユニットは、第二干渉計アームに沿って伝搬する第二光フィールドを分散させるようにされる。分散ユニット、分離装置、像形成装置及び検出器は、出力スポットを多数のスポットピクセルに入射させ、スポットピクセルの少なくとも10%に対して第一光フィールドと第二光フィールドとの間の2πによる剰余位相差がスポットピクセルの位置で0.1π以上変化するようにされる。
【0008】
少なくとも一つの実施形態によれば、入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する信号処理装置は、入力モジュール、メモリモジュール及び評価モジュールを有している。入力モジュールは、検出器から出てくる信号によって複素干渉項を測定するようにされる。メモリモジュールは伝搬マッピングを有し、伝搬マッピングは、光学路長に沿って伝搬される第一光フィールドの、光学路長に沿って伝搬される第二光フィールドへの伝搬を記述し、伝搬される第二光フィールドは伝搬される第一光フィールドに対してデフォーカスされる。代わりに又は加えて、メモリモジュールは少なくとも一つのポイント広がり機能を備え得る。評価モジュールは、複素干渉項及び伝搬マッピング及び/又はポイント広がり関数によって入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定するようにされる。
【0009】
本発明の更なる概念は請求の範囲、本発明、図面並びに図面に関連して記載した実施形態から生じる。
【0010】
以下において、記載した方法、記載した干渉計、記載した信号処理装置及び記載した使用について説明する。この目的で一部図面を参照する。図面において、同一、同様な或いは同じように作用する要素は同じ参照符号で示す。図面及び互いに関連して図示した要素の比率はスケールに関して対応していない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の方法と共に本発明の干渉計の一例を概略的に示す。
【0012】
図2】二つのスポットの相互の軸方向変位を概略的に示す。
【0013】
図3】主平面の構造を概略的に示す。
【0014】
図4】本発明の干渉計の一実施形態におけるマイクロレンズアレイを概略的に示す。
【0015】
図5】光線束の焦点位置の変位を概略的に示す。
【0016】
図6】本発明の信号処理装置の一実施形態を概略的に示す。
【0017】
図7】本発明の干渉計の概略実施形態を示す。
図8】本発明の方法の概略実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に、本明細書に記載する方法の幾つかの実施形態は、本明細書に記載する干渉計の実施形態及び/又は本明細書に記載する信号処理装置の実施形態によって実施され得る。すなわち、本方法の実施形態に関連して開示した全ての特徴は必要な変更を加えて、干渉計の実施形態及び/又は信号処理装置の実施形態に、さらには、前言についてその逆もまた成立するように開示されている。
【0019】
本発明を通して、用語“一つ” 及び/又は“該”の使用は、特に明示しない限り(例えば“正確に一つ”によって)単数及び複数(“少なくとも一つ”の感覚で)を含むと理解され得る。用語“有する”、“包含する”、“含む”、“備える” などは包括的であり、列挙したものに加えてその他の要素も存在し得ることを意味している。
【0020】
本発明に記載した方法は、入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定するために構成され得及び/又は適している。このことは、該方法が特に入力光フィールドの少なくとも1つの入力スポットの入力位相及び/又は入力振幅を測定するために特にセットアップされ得及び/又は適していることを意味している。用語“位相” 、“振幅”及び光フィールドは、本発明では通常の物理的関係で用いられる。しかし、該方法は、用語“光フィールド”の使用によって可視電磁放射線に限定されない。むしろ、赤外放射線及び/又はUV放射線のような非可視電磁放射線も用語“光フィールド”でカバーされる。さらに、本発明に記載した原理は粒子放射線のような他のベクトルフィールドに適用できる。
【0021】
“光フィールド”(またいわゆるフィールド)は一般に光線束又は幾つかの光線束に相当できる。一般に、光フィールドは幾つかの相互にばらばらの光線束から成っている。光線束及び/又は光フィールドは多数の光線(またビームとも呼ばれる)から成り得、各光線は伝搬方向に沿った光線束の横断面の一点の伝搬に相当している。該横断面は波面に対応し得る。従って、各光線は波面に垂直に走り得る。例えば、光線束はほぼガウスの光線束であり、ここで“ほぼ”は物理的不完全さを含んでいる。例えば、光線束は伝搬方向に沿って伝搬する電磁ベクトル場で表され得る。光線束に対して横断方向に、特に垂直方向に、光線束は二次元断面をもっている。ここで及び以下の説明において、空間におけるz方向は伝搬方向であることができ、一方断面はx方向及びy方向に広げられる。
【0022】
本発明に記載した光フィールドの少なくとも一つ、特に各光フィールドは、一時的に及び/又は空間的にコヒーレントであり得る。一般に、光フィールドは物体によって放出され及び/又は発生され得る。該物体は例えば光源及び/又は“像”であり得る。例えば、該物体は少なくとも一つの点源(例えば点光源-以下“物体点”と記載する)を含み得る。該物体は、多くの点源の重ね合せであり得、各点源は入力光線と組合わされ得る。一般に、該物体は一時的に非コヒーレントな又は一時的にコヒーレントな光を放出し得る。典型的には、点源からの放出光は空間的にコヒーレントであり、光線束に結合される。典型的には、かかる光線束は点源から放出した光線のサブセットに相当している。このサブセットは、特定の立体角セグメントに対応し得る。典型的には、かかる光線束における光線は、特に点源の場合、互いにコヒーレントである。異なる物体点から放出した光線は一時的にも空間的にも互いに非コヒーレントであり得る。点源はまた、入力光フィールドの入力スポットと呼ばれ及び/又は発生し得る。該物体は能動的に光を発生し得、及び/又は物体は光フィールドと(例えば反射によって)相互作用して光を放出させ得る。物体として点源の場合、点源は能動的に光を放出し、及び/又は光放出及び/又は反射点であり得る。
【0023】
この応用に関連して、一時的及び/又は空間的な変位によって第一光フィールド(E1)から第二光フィールド(E2)を生じさせることが可能である。この場合、第二光フィールドは次式(1)によって表すことかできる。
【数1】
【0024】
ここで、一般的にはパス差ΔLを介して一時的なシフトが発生され、すなわちΔt=ΔL/c(cは光速である)。このようにして発生した第二光フィールドは任意のパラメータΔx、Δy、Δz、Δtに対して第一光フィールドとコヒーレントである場合(すなわち干渉がある場合)、第一光フィールドはコヒーレントであるということができる。全てのパラメータに対してコヒーレンスは存在していないが、少なくとも幾つかの適当なパラメータに対して存在している場合には、第一光フィールドは通常部分的にコヒーレントと呼ばれる。ここでパラメータΔx、Δy、Δz、Δtの少なくとも一つはゼロと異なると仮定される。空間的パラメータの一つがゼロでない場合には、光フィールドは(部分的に)空間的にコヒーレントと呼ばれる。Δtがゼロでない場合には、第二光フィールドは(部分的に)一時的にコヒーレントと呼ばれる。特に、第二光フィールドは空間的かつ一次的に部分的にコヒーレントであり得る。第一光フィールドが第二光フィールドに対して部分的にコヒーレントであるように非ゼロパラメータΔx、Δy、Δz、Δtがない場合には、第二光フィールドは非コヒーレントと呼ばれる。このことは、第一光フィールド及び/又は上記の式により別の光フィールドに移る他の光フィールドに同様に当てはまる。
【0025】
空間的コヒーレンスな状態において、Δx、Δy、Δzに対して値の範囲は検出器のサイズに制限され得る。フィールドがほぼゼロであるフィールド点は典型的には排除される。フィールドは、輝度が輝度の最大値のせいぜい0.1(又は0.05以下或いは0.01以下或いは0.001以下)である場合にはほぼゼロである。
【0026】
本発明の記載に関連して、二つの光フィールド例えば二つのスポットは重ね合せる(すなわちオーバーラップする)ことが可能である。これらのスポットは、重ね合せがコヒーレントを示す場合には互いにコヒーレントである。光フィールド例えばスポットは、重ね合せが干渉を示さない場合には互いに非コヒーレントであると呼ばれる。
【0027】
光学システムによって像形成した光フィールドは通常少なくとも一つのスポットを含んでいる。スポットは特に光フィールドのコヒーレントな二次元部分領域である。スポットは光線束の幾つかの光線から成ることができ、及び/又は光線束に相応できる。特に、光フィールドは幾つかのスポットの重ね合せとすることができる。非コヒーレントな放射物体(例えば幾つかの非コヒーレントな点源)の場合、二つの異なるスポットは互いに非コヒーレントであり得る。
【0028】
像形成光学系によって物体として(特に単一)点源の像形成によってスポットを生じさせることができる。像形成はスポットに対応した光線束の伝搬に対応し得る。従って、スポットはいわゆる点広がり機能であることが可能であり、及び/又はスポットは点広がり機能によって描くことができる。使用した光学系の適切な知識によって、スポットから空間内の物体の位置を決めることが可能となる。像形成によって発生したスポットは、物体の平面と共役の平面に収束し得る。他の平面ではスポットは焦点がぼかし得る。従ってスポットは光フィールドの断面における光フィールド分布であり得る。スポット内では光フィールドはコヒーレント又は少なくとも部分的にコヒーレントである。
【0029】
光フィールド(及び特に各光線及び/又は各光線束及び/又は光フィールドの各スポット)振幅、特に複素振幅を持ち得、絶対の平方は輝度に相当し得る。複素振幅Aに対してA=|A|・exp(iψ)を適用し、ここで|A|は複素振幅(以下“振幅”)の係数であり、またψは位相である。
【0030】
方法の少なくとも一つの実施形態では、該方法は、入力光フィールドを第一光フィールドと第二光フィールドとに振幅分割することを含む。振幅分割において、入射光フィールドの各光線は多数の(典型的には二つの)光線に分割される。従って、入射光フィールドの各光線は、幾つかの出行光フィールドと減少した輝度(振幅)で組み合わされる。振幅分割は典型的には、部分的に反射性の面を用いて行われ、反射は、格子又は偏光子による偏光に依存し得る。これに対して、波面分割では光フィールドは異なる光線に分割され、これらの光線は干渉され得る。従って、入射光フィールドの各光線は単一の出行光フィールドに割当てられる。振幅分割に対して逆のプロセスは振幅重ね合せである。
【0031】
方法の少なくとも一つの実施形態では、該方法は、伝搬する第二光フィールドを伝搬する第一光フィールドに対してデフォーカスするように第一光フィールド及び第二光フィールドを伝搬することを含む。特に、デフォーカスは伝搬によって発生させることができ、そして幾つかの実施形態では伝搬によって排他的に発生させることができる。例えば、第一光フィールドは第一干渉計アームに沿って伝搬され、第二光フィールドは第二干渉計アームに沿って伝搬される。二つの干渉計アームに沿った伝搬は、像形成システム(例えばレンズ)による像形成なしであり得る。
【0032】
デフォーカス作用は一般に第二光フィールドに対して第一光フィールドの軸方向位置を変えることを含む。ここで、二つの光フィールドの一方の軸方向位置だけ又は両方の光フィールドの軸方向位置を変えることが可能になる。二つの光フィールドの相対的な横方向位置は変わらない(横方向変位なし、いわゆる“横方向シャーリング”なし)が、単に軸方向位置だけが変わり得る。例えば、少なくとも三つの出力スポットの各々に対して変わらなくできる。横方向において、空間的方向は光線束の伝搬方向に対して垂直である。例えば、光線束の伝搬方向は中心光線の伝搬方向となるように選ばれる。逆に、光線束は、光線束の光線がほぼ一つの点に集束する場合には該点において集束される。従って該点は焦点と呼ばれる。デフォーカシングの場合、焦点の位置は空間的にシフトされ、すなわち前の焦点は焦点ではなくなる。前に焦点を含んだ平面において、光フィールドの光線は“扇形に広げられ”、従って前の焦点は拡大した光スポットに相当する。しかし典型的には、デフォーカスの発生により像形成はなく、焦点の位置がシフトされるだけである。
【0033】
光フィールドはデフォーカシングユニットによってデフォーカスできる。デフォーカシングユニットは、ラスタースペーシングによる横方向変位(すなわち伝搬方向に垂直な変位)に対して不変の平行移動できる。このことは、ラスタースペーシングによって横方向に変位した光線束が、変位されない光線束と同じようにしてデフォーカシングユニットによって変更されることを意味している。これは例えば、単純なレンズを用いた時には当てはまらない。この性質により、例えば、第一干渉計アームにおける第一光フィールドを、入力光フィールド、第一光フィールド及び/又は第二光フィールドの任意の横方向変位にも拘わらずデフォーカシングの後、第二干渉計アームの第二光フィールドと干渉させることができる。特に、変換の不変性は十分に大きなラスタースペーシング及び/又はラスタースペーシングの整数倍に適用する。かかるデフォーカシングユニットのラスター化は一般に、干渉像を評価する際に考慮される。
【0034】
一つの可能なデフォーカシングユニットは、付加的な伝搬距離(幾何学的通路長さ又は伝搬長さと呼ばれる)であり、それによりデフォーカスすべき光フィールドは伝搬方向に沿って付加的な伝搬を受ける。従って、第一光フィールド及び第二光フィールドについて異なる幾何学的通路長さを横切らせることができる。幾何学的通路長さは幾何学的長さすなわち二点間の距離に相当し得る。一方、いわゆる光学通路長さについては、フィールドの伝搬する媒体の屈折率は通常付加的に考慮される。
デフォーカシングユニットを設計し及び/又は調整する際に、第一干渉計アームと第二干渉計アームとの間の光学通路長さは特に変えられない。例えば、光学通路長さは一定に保たれ或いはほぼ光学通路差ゼロにされる。ここで“ほぼゼロ”は、光学通路差がコヒーレンスな長さより小さいことを意味している。使用した光フィールドのコヒーレンスな長さはせいぜい1m(又はせいぜい1mm、又はせいぜい100μm、又はせいぜい10μm、又はせいぜい1μm)であり得る。
【0035】
光学システムの主平面距離に対して調整した伝搬距離は幾何学的伝搬距離と呼ばれる。第一干渉計アームと第二干渉計アームとの間の光学通路長さ差は典型的には同じ長さの同一アームを持つ干渉計と比較して幾何学的伝搬距離の変化によって変化されない。
【0036】
例えば、これは、誘電体層及び/又は誘電体プレートを用いそして光学システムの主平面の関連したスペースによって達成され得る。その結果、伝搬距離及び光学通路長さは異なって影響される。本発明の記載は、伝搬距離及び光学通路距離が適当な光学手段によって別々にしかも独立して設計され又は影響され得ることに基づいている。特に、デフォーカシングユニットは、第1光フィールド及び第二光フィールドが異なった伝搬距離及び同一光学通路長さを通過するようにセットアップされ及び/又は調整され及び/又は調整できる。
【0037】
デフォーカシングユニットは、代わりに又は付加的に以下の少なくとも一つを含み得る。
(i) 格子スペーシングで間隔を置いた、二次元格子のようなマイクロレンズの格子
(ii) 伝搬方向に対して直交する変換不変性をもつ回析光学要素(DOE)
【0038】
少なくとも一つの実施形態では、該方法は、伝搬した第一光フィールド及び伝搬した第二光フィールドの振幅重ね合せを含む。特に、伝搬した第一光フィールド及び伝搬した第二光フィールドは、出力光フィールドを形成するように振幅重畳される。さらに、該方法は、振幅重畳した伝搬第一及び第二光フィールド(及び/又は出力光フィールド)を検出器に像形成することを含む。振幅重畳及び振幅像形成は、伝搬した第一光フィールドのそれぞれの第一スポット及び伝搬した第二光フィールドのそれぞれの第二スポットが検出器で干渉して出力光フィールドの共通の出力スポットを形成するように、かつまた出力光フィールドが検出器に干渉パターンを発生するように行われる。従って、出力光フィールドの共通の出力スポットに対して干渉する第一光フィールドのそれぞれの第一スポット及び第二光フィールドのそれぞれの第二スポットは、入力光フィールドの同じ入力スポットから生じる。従って、該方法は例えば変換的には不変性であり得る。
【0039】
検出器における(光学)像は、収差を除いて光フィールドの投影像であることができる。プロパゲーターマッピングもかかる投影像であり得る。かかる像は通常、レンズ、ミラー、プリズム及び/又は回析光学要素から成る光学システムによって作られる。かかる光学システムは、また像形成光学システムと呼ばれる。像形成は、必ずしも実像を作らず、仮想像及び/又はデフォーカス像も可能である。例えば、像が光学システムの共役面又はほぼ共役面である平面に見られる場合には後者の場合である。ほぼ共役面又はほぼ焦点面は、少なくとも2(又は5又は10又は50)のファクターで最適焦点面に対する焦点はずれで横方向に拡大される輝度画像点を放射物体点が生じることを意味している。この共役面は、光フィールド又は光線束の生じる物体又は点源の位置に依存し得る。各場合に、焦点位置又は共役面を決める際には、光フィールドは物体点をもつ物体によって放出されたタイプのものであると仮定される。従って、焦点位置又は共役面を構成する際には、この物体が基準にされ得る。
【0040】
従って、本発明に記載した方法では、生じることになる入力光フィールドの入力スポットに対して、それ自体デフォーカスしたものと干渉させるようなこと(いわゆる自己干渉)が可能である。第一光フィールドの第一スポットと第二光フィールドの第二スポットとの間に入力光フィールドの同一入力スポットによって生じる干渉だけが出力光フィールドの一つの特に単一の出力スポットを形成するように考えることが可能である。干渉計においてこの干渉だけ起こることが可能であり得る。幾つかの実施形態では、該方法はいわゆる基準ビームなし方法であり得る。従って物体と相互作用しない外部基準ビームは存在しない。
【0041】
いわゆるゼロ干渉の点は、第一光フィールドの相応した光線と第二光フィールドの相応した光線との位相差が存在しない、すなわちまた2πの位相差が存在しない像形成出力スポットの点である。いわゆるゼロ干渉は、上記に対する類似点であるが、関連した光学通路差が光フィールドのコヒーレンス長さより短い限り2πの整数倍の位相差が存在し得る。これは、放出した物体点から検出器への第一光フィールド及び第二光フィールドに対する正確に(又は近似的に)等しい振動がある状態に相応する。この性質は波長とは関係なくでき、すなわち、該事項は一時的に部分的にコヒーレントな光に対して定義される。強く非コヒーレントな光すなわち非常に短いコヒーレンス光をもつ光の場合には、ほぼゼロの干渉の状態は、消滅するように小さなずれを除いてゼロ干渉の場合に限定される。
【0042】
色収差すなわち光学システムにおける波長の屈折率の依存性のため、ゼロ干渉の条件は、光フィールドに生じる及び/又は選択した検出器で測定できる全ての波長に対して満たされるべきである。従って、色収差に対する補正又は補償を行う必要がある。代わりに又は加えて、検出器のスペクトル検出バンド幅を制限することが可能である。このために、例えば、少なくとも一つのフィルタ(例えば少なくとも一つのスペクトルフィルタ)を用いることができる。該少なくとも一つのフィルタは例えば、以下の位置の少なくとも一つに配置され得る。すなわち第一光フィールドのビーム通路(すなわち第一干渉計アーム)、第二光フィールドのビーム通路(すなわち第二干渉計アーム)、出力光フィールドのビーム通路(すなわち検出器の前方及び二つの干渉計アームの後方)及び/又は入力光フィールドのビーム通路(すなわち物体の後方及び二つの干渉計アームの前方)。例えば、これにより特定のスペクトルに対して許容の光学通路差を適用することができる。
【0043】
色収差は、補正されない場合には、干渉の視程を実質的に限定し又は干渉の測定能力を完全に阻止する。色収差の物質性に対する規準は、0.01ラジアン以上(又は0.1ラジアン、0.2ラジアン、0.5ラジアン、1.0ラジアン或いはπラジアン以上)の位相差を生じる。本発明に記載した干渉計では、色収差は、使用し検出した波長範囲に対して取るに足らない程度に補正することが可能であり得る。使用した光フィールドは、例えば、次の光源すなわちレーザー、スーパールミネセントダイオード、発光ダイオード(LED)、ルミネセントダイ、及び/又はフォトルミネセントのうちの一つのスペクトル幅に相当し得るスペクトル幅を有する。典型的な例としては、可視範囲(ピーク波長600nm)において30nm±3nmのライン幅(FWHM)をもつLEDがある。これは約12μm或いはさらに20μmの波長のコヒーレント長さに相当する。
【0044】
同様に、用語“等しい光学通路長さ”及び “ほぼ等しい光学通路長さ”が導入される。これは、光学通路差が光フィールドにおいて生じる又は検出した各波長に対して同じ又はほぼ同じの場合である。ここで光学通路差がこの波長のコヒーレンス長さより小さいことをほぼ意味している。
【0045】
像形成は、検出器へ出力光フィールドを伝搬することを含み得る。代わりに或いは付加的に、像形成は、検出器に出力光フィールドを集束することを含み得る。検出器は多数のピクセルを有し得る。これらのピクセルは互いに空間的に分離され、はっきり別個である。特に、各出力スポットについて検出器の多数のピクセルに像形成することが可能である。
【0046】
該方法の少なくとも一つの実施形態によれば、出力光フィールドは少なくとも三つの出力スポットを有し、これらのスポットに対して
(i) 出力光フィールドが少なくとも三つの出力スポットの異なる出力スポットにおいて相互コヒーレンスなしであること;また、
(ii)出力光フィールドが少なくとも三つの出力スポットの一つの出力スポット内において少なくとも部分的空間的にコヒーレンスであることを示すこと
が適用される。
【0047】
上記条件(i)(相互コヒーレンスなし)は、物体の異なる物体点から生じる三つの出力スポットに等しくされ得る。特に、三つの出力スポットの一つの第一光フィールドと第二光フィールドとの間で三つの出力スポットの別のものの第一光フィールド及び第二光フィールドと干渉は生じない。
【0048】
上記条件(ii)(部分的空間的コヒーレンス)は、特に出力スポット内に少なくとも部分的に特に完全なコヒーレンスの場合に、相応した第一及び第二光フィールドの完全な干渉が発生したことを意味している。二つの光フィールドの完全なコヒーレンスは、例えば、二つの光フィールドが一つの同じ光源(例えば同じ物体点)から生じ、そして光学通路差が検出した光フィールドのコヒーレンス長さより小さい場合に得られる。一般に、各出力スポットは、物体の一つ特に単一の物体点から生じ得る。この場合、出力スポットは、使用した光学システムの点広がり機能に等しくされ得る。使用した光学システムは記載した干渉計であり得る。
【0049】
上記のコヒーレンスは特に空間的コヒーレンスという。さらに、一時的なコヒーレンスに影響を及ぼす効果が生じ得る。これは、例えば、光の異なる波長の影響がある場合である。干渉計の第一干渉計アーム及び第二干渉計アームの光線束間の干渉の可視性は、出力フィールドにおいてスポットの点に対してほぼゼロ干渉を確立することによって強調されすなわち最適化される。特に、装置は、出力フィールド内の及び検出器における各スポットがゼロ又はほぼゼロの干渉の点をもつように設計され構成される。この条件は、全出力フィールドが同一装置すなわち干渉計の調整によって測定でき、しかも異なる入力スポットが異なる調整によって連続して測定されないことを確保するのに用いることができる。例えば、干渉計は入力フィールドにおいて全ての光線束及び/又は入力スポットを同時に測定できる。
【0050】
点広がり機能は一般に、結像光学システムによって理想化した点状物体の結像を描く。点広がり機能及び/又は入力光フィールド点におけるサイト特定放出は、複素干渉項に類似した、共役第二光フィールドと第一光フィールドとの干渉の干渉項に相応し得る。例えば、点広がり機能は、物体点の空間的位置(検出器からの軸方向距離や検出器に対する横方向位置のような)に依存している。点広がり機能は、例えば単に一つの光放出点をもつ試験物体を用いて計算の一部として測定できる。代わりに又は付加的に、該点広がり機能は、第二光フィールドに対する第一光フィールドの伝搬マッピングが既知である限り、計算できる。
【0051】
少なくとも一つの実施形態では、本方法は、干渉パターンの少なくとも一部を検出器特にそれのピクセルで測定することを含む。該測定は、振幅及び/又は位相解像され得る。測定した干渉パターンは、第一光フィールド及び第二光フィールド並びにその結果二つの干渉計アームの(既知の)光学システムを通って伝搬される入力光フィールドの関数である。従って干渉パターンは、入力光フィールドの位相情報及び振幅情報を含み得る。入力光フィールドは、物体と共働しそして(或いは)物体により放出されるので、測定した干渉パターンには、空間における物体の構造的セットアップ及び/又は位置についての必要な情報を含み得る。従って物体(特にそれの構造及び/又は空間におけるそれの位置)は干渉パターンから再現される。干渉計の光学システムは例えば、物体なしで較正測定において測定され、それで物体自体だけが未知の量を表すことが可能である。
【0052】
複素干渉項は、測定した干渉パターンから決めることができる。複素干渉項(IF)は、例えば、伝搬した第一光フィールド(E1)と伝搬した第二光フィールド(E2)との共役複素(conj)の積である。
【数2】
【0053】
ここで|E1||E2|は伝搬した第一光フィールド(伝搬した第二光フィールド)の係数であり、またψ1(ψ2)は伝搬した第一光フィールド(伝搬した第二光フィールド)の位相である。第一光フィールド及び第二光フィールドの相互の複素干渉性は観察領域において仮定した。光フィールドは物体点から出てくる光線束であり得る。例えば、可視領域は、第一光フィールドと第二光フィールドとの両方がゼロから十分に異なる領域である。“ゼロから十分に異なる領域”は、 第一光フィールド及び/又は第二光フィールドの絶対値(すなわち|E1|)、(すなわち|E2|)がそれぞれ|E1|又は|E2|の最大値の0.001倍(又は0.01倍、又は0.05倍、又は0.1倍)大きいことを意味している。
【0054】
幾つかの実施形態では、干渉計は通常の物体点位置に対する共通の位相差(すなわちψ1-ψ2)が表示領域においては、ほぼ一定にならないように配列され得る。一般的な物体点位置は、第一干渉計アームにおける第一光フィールド及び第二干渉計アームにおける第二光フィールドの両方とも検出器に焦点合わせしない点である。焦点では、第一光フィールド及び第二光フィールドのそれぞれの大きさがゼロから十分に異なる領域は最小であり、そして第一及び第二光フィールドの共通の位相関数はこの小さな領域においてほんの僅かに変化し得る。しかし、物体点又は検出器を移動させることによって、検出器における第一及び第二光フィールドの両方がおおよそでも焦点の合わない位置にさせることが可能である。この物体点位置は一般的な物体点位置と呼ばれる。位相差は、位相差が2πの位相ジャンプを含まずそして(或いは)位相ジャンプにおいて位相差を定常に維持しない問題の領域において少なくとも0.01ラジアン(又は0.1ラジアン、又は0.2ラジアン、又は0.5ラジアン、又は1.0ラジアン、或いは少なくともπラジアン)変動する場合にほぼ一定ではない。上記の式(2)の形態での複素干渉項の表示は以下コヒーレントな干渉項すなわち複素点広がり関数と記載する。コヒーレントな干渉項は、入力フィールド又は出力フィールドにおける光線束すなわち関連したスポットに相応し得る。ほぼ完全なコヒーレンスは、観察領域における全ての点に対する通路差が検出した光フィールドのコヒーレンス長さより小さいこと及び一時的なコヒーレンスの限定の効果が生じないことを意味している。
【0055】
少なくとも一つの実施形態では、干渉計は、表示領域における複素干渉項の位相差の変動又は変動の範囲が位相差における一次項のため生じないように構成される。すなわち、観察領域における位相差の変動すなわち揺らぎ幅は、位相関数が一次項について補正される場合に生じ、そして例えば、関数ψ1-ψ2+ax+by+cで表されるのが妥当である。x及びyは、検出器におけるフィールドの位置の値(例えば平面におけるデカルト座標)であり、a、b、cは、検出器におけるフィールドの位置の値の関数として位相差の一次依存性が存在するかどうかをチェックするように自由に選択できるパラメータである。従って、表示領域における位相差の位相変動が第一及び第二光フィールドの異なる入射角の結果であることは除外できる。従って、記載した干渉計の場合、位相差の変動はデフォーカシングユニットの結果であることが保証される。デフォーカシングユニットは、例えば、キルヒホッフ回析積分の適用及び/又はヘルムホルツの式の解に相当する光フィールドの変換を生じさせる。単なる方向の変化は上記の条件によって除外される。
【0056】
複素干渉パターンに加えて、検出器で測定した干渉パターンは、いわゆる自己干渉項を含み、該干渉パターンは較正によって(例えば第一又は第二光フィールドをブロッキングすることによって)決めることができる。
【0057】
複素干渉項は、いわゆる“移相”又は“キャリアー位相”法によって測定できる。複素干渉項に加えて、全干渉パターンはまたいわゆる自己干渉項(例えば|E1|及び|E2|)を含むことができる。複素干渉項は典型的には自己干渉項なしに決められる。この場合、光フィールドに対する複素干渉項は上記の式(2)による形をもっている。以下において、複素干渉項は自己干渉項なしの値であると理解される。
【0058】
光フィールドが幾つかの相互に非コヒーレントな光線束を含んでいる場合には、各光線束に対してコヒーレントな干渉項が存在できる。複素干渉項を測定する際に、コヒーレントな干渉項の干渉の和が記録される。この場合、測定した検出器における出力フィールドの輝度(I)は次式で表すことができる。
【数3】
【0059】
ここで、Ibackは、自己干渉項を含むいわゆる非コヒーレントなバックグラウンドである。IFは、実部(Re)の測定される複素干渉項である。複素干渉項を完全に決めるために、虚部も測定する必要があり得る。これは、例えば、いわゆる“移相”又は“キャリアー位相”法によって測定できる。結果としてIFは次のように表される。
【数4】
【0060】
例えば、互いに非コヒーレントである三つの入力スポットに対して、複素干渉項は下記の形をとることができる。
【数5】
【0061】
ここで、インデックスa、b、cは三つの異なる入力スポット間を識別し、またインデックス1、2は、それぞれの入力スポットから発生した第一入力光フィールドと第二入力光フィールド間を識別している。三つの入力スポットの典型的な場合において、式(2)の複素干渉項は式(5)による三つの項の和に変換される。これら三つの項の各々は式(2)に示すようなコヒーレントな干渉項に相応している。
【0062】
複素干渉項は、例えば、使用した光学システムによって作像した全ての物体点の点広がり関数又はコヒーレント干渉項の重ね合せであり得る。すなわち、複素干渉項は物体の個々のエミッタの寄与から成り得る。複素干渉項に対する物体の個々のエミッタの寄与の決定は、基準ビームではなく自己基準の用いられるホログラムのディジタル発生に等価であり得る。
【0063】
伝搬した第一光フィールド及び伝搬した第二光フィールドは、設計上既知の第一干渉計アーム及び第二干渉計アームにそれぞれ沿って伝搬される。これらの伝搬に関連した伝搬器像は較正測定に基づいて知られ得る。代わりに又は付加的に、コヒーレントな干渉項又は複素点広がり関数のライブラリーは較正測定に基づいて知られ得る。
【0064】
該方法は、さらに複素干渉項から入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を少なくとも部分的に決めることを含み得る。ここで、“少なくとも部分的に”は、また入力位相及び/又は入力振幅を“少なくともほぼ”決めることを含む。例えば、複素干渉項は、コヒーレント干渉項の重み付け重ね合せとして表される。各コヒーレント干渉項に対する重み付け係数は複素数である。従って、重ね合せは振幅と位相とをもっている。また入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅の決定は、複素重み付け係数の決定として表すことができる。
【0065】
コヒーレント干渉項すなわち複素点広がり関数の重ね合せとして複素干渉項を表すことは、多くの異なる複素点広がり関数が分解のために許容される仕方に依存して明白であり得る。唯一性に対する限界は干渉計の分解能に対応し得る。
【0066】
複素干渉項を干渉パターンによって決め、そして入力位相をそれによって決める可能性は、例えば、公表特許出願WO2017/211665A1に記載されている。これに関して上記特許出願の開示内容は本願に参照文献として組み込まれる。上記特許出願に記載された主ビームは第一光フィールドに結合し、また記載された比較ビームは第二光フィールドに結合する。
【0067】
入力位相及び/又は入力振幅を決めるため、複素干渉項は、重み付けした部分干渉項の重ね合せとして表すことができる。部分干渉項は、複素(例えばコヒーレント)スポット干渉項、複素ピクセル干渉項及び/又は点広がり関数であり得る。重ね合せの個々の項の重み付けは典型的には振幅に基づかれる。振幅は通常実数であるが、重ね合せとして表すと虚数となり得る。従って、入力位相を再現する複素問題は、フーリエ解析と同様に部分干渉項の重ね合せの位相の再現に変換され得る。さらに一般的には、複素干渉項の分解は基本関数の和に関数を展開することとして理解できる。
【0068】
入力位相又は入力振幅を決める場合、IF位相又は複素干渉項をまず決めることが特に可能である。IF位相又は複素干渉項の決定は、第一光フィールドと第二光フィールドとの干渉の測定に等価である。一般に、複素干渉項は、入力光フィールドのスポットと関連した干渉の重ね合せとして表され得る。個々のスポット干渉項の寄与への複素干渉項の分解には、更なる評価ステップが必要であり得る。第一光フィールドと第二光フィールドとの間の伝搬器マッピングの知識及び/又は干渉器アームの点広がり関数の知識によって、個々のスポット干渉項の重ね合せとして複素干渉項の表示がなされ得る。これは、点広がり関数に対する複素干渉項の割り当てに対応し得る。非コヒーレントなフィールドの入力位相は、入力光フィールドの入力スポットに関して表示可能である。
【0069】
ここに記載した方法において、第一光フィールドの光線の少なくとも幾つかは、デフォーカシングのために第二光フィールドの光線に対して移相されるのが可能である。特に、デフォーカシング及び続いての伝搬は、スポットピクセルの少なくとも10%に対して、スポットピクセルの位置における第一光フィールドと第二光フィールドとの位相差が0.1π以上(例えば0.2π、0.5π、π以上或いは2π以上)変動するように選択される。位相ジャンプは、この場合、例えば、位相関数の連続した持続性により除外される。代わりに又は加えて、スポットピクセルの少なくとも10%における伝搬した第一光フィールドと伝搬した第二光フィールドとの位相差は2kπ(ここでk=…-2,-1,0,1,2,…)に等しくない。特に、ほぼ一様ではないが、出力光フィールドの少なくとも一つの光線に対してゼロ干渉は存在しない。
【0070】
例えば、ステップb)における伝搬(デフォーカシングを含む)は、第一光フィールド及び第二光フィールドが干渉に対して必要な通路差を除いて第一光フィールドの少なくとも一つの第一スポット及び第二光フィールドの少なくとも一つの第二スポットに対する等しい光学通路長さ横切るように実施できる。特に、第一光フィールド及び第二光フィールドは、干渉の小さなシフトを除いて共通入力光フィールドによるそれらの発生(すなわち振幅分離)の時間から出力光フィールドに対する重ね合せ(すなわち振幅重ね合せ)の時間まで等しい光学通路長さを横切る。二つのスポット及び/又は二つの光フィールドの特徴“等しい光学通路長さ”は、特に、等しい光学通路長さ又はほぼ等しい光学通路長さが二つの各スポット又は光フィールドの少なくとも一つの光線、特に中心光線に対して存在する場合に与えられる。中心光線は、中心光学軸に沿って走る光フィールド又は光線束の光線である。
【0071】
光学通路長さはそれぞれの光フィールドの光学伝搬方向に沿ってのびると考えられる。光フィールドの伝搬する媒介の光学通路長さ(また“光学距離長さ”、L)はメトリック伝搬通路(x)に沿って媒体の屈折率(n(x))の積分である。
【数6】
【0072】
幾何学的伝搬距離は、主平面間の領域で減じたメトリック伝搬距離である。幾何学的伝搬距離の差は幾何学的光学系の等式に用いる。主平面間の領域は、光線束及び/又は光線束の光線が不変的に移送できる領域であり得る。
【0073】
光学通路差(また通路差)は、二つの通路が同じ始点及び終点をもちしかも異なる光学通路長さをもつ場合に与えられる。
【0074】
該方法の幾つかの実施形態では、伝搬した第二光フィールドは、光学軸に沿って伝搬した第一光フィールドに対してシフトされる。光学軸は、使用した光学システム(例えば使用した干渉計)の中心軸であり得る。特に、記載した干渉計では、伝搬した第一光フィールドと伝搬した第二光フィールドとの間に幾何学的通路差が存在し得る。
【0075】
少なくとも一つの実施形態によれば、第一光フィールドと第二光フィールドとの間の光学通路差を調整するために付加的な調整装置が用いられる。この通路差は、少なくとも入力光フィールドの波長の少なくとも四分の一であり得る。入力光フィールドの波長は、入力光フィールドのピーク波長に相応し、このピーク波長において入力光フィールドは全最大値をもつ。光学通路差は、上述の“移相シフト”法に用いることができる。
【0076】
入力光フィールドは、像形成光学システムを備えた物体によって放出及び/又は発生され得る。幾つかの実施形態では、入力光フィールドは(実又は虚)部平面に対して、入力光フィールドの相互に非コヒーレントな入力スポットの重ね合せであることが可能である。実又は虚部平面は少なくともほぼ物体の像形成光学システムの共役面であり得る。入力光フィールドの入力スポットは、例えば、物体の像形成光学システムによって像形成した物体の物体点から生じ得る。
【0077】
該方法の幾つかの実施形態では、複素スポット干渉項は、各出力スポットに対して決められる。複素スポット干渉項は、コヒーレント干渉項に相応し得る。複素スポット干渉項の決定は、上述の複素干渉項の決定に類似しており、伝搬した第一及び第二光フィールドは、影響した出力スポットの相応した第一及び第二光フィールドに置き代えられる。複素干渉項は、複素スポット干渉項の重ね合せとして表され、そして(或いは)複素干渉項は複素スポット干渉項の重ね合せである。
【0078】
少なくとも一つの実施形態では、各出力スポットは、検出器の多数のピクセルに描写される。複素ピクセル干渉項は、上記のスポット干渉項と類似の各ピクセルに対して決められる。複素スポット干渉項は、複素ピクセル干渉項の値から成る。例えば、複素スポット干渉項は、複素ピクセル干渉項の重ね合せとして表される。
【0079】
一般に、異なる点源は、互いに非コヒーレントである。入力光フィールドが多数の点源で発生される場合、干渉は一般に、同一点源から二つの光線が放出される場合のみ入力光フィールドの二つの光線間に発生される。
【0080】
点源は、干渉計によってスポットとして像形成される。検出器において、入力光フィールドの各スポットは、スポット干渉項を発生できる。理想的には、スポット干渉項の明快な測定は、全ての他の点源が測定中にカバーされ(すなわち“スイッチオフ”され)、従って単に単一スポット干渉項が測定されるようにしてなされる。それで単一点源からの光だけが検出器に入り、スポット干渉項は全ての他の可能な点源から分離される。従って、このスポット干渉項は、コヒーレントな干渉項として式(2)の形で表され得る。
【0081】
複素スポット干渉項は、使用した干渉計の点広がり関数に非常に近く、例えば、それの物理的表示であり得る。幾つかの実施形態では、複素スポット干渉項は、スポット広がり関数に相応し得る。スポット広がり関数は、各ピクセルに対する複素ピクセル干渉項から成り得る。
【0082】
各出力スポットは幅をもち得る。かかる幅は、例えば、検出器の位置における出力スポット特に検出器のピクセルの直径であり得る。
【0083】
幾つかの実施形態では、特に出力光フィールドの形式の伝搬した第一光フィールド及び伝搬した第二光フィールドは、検出器(特に検出器のピクセル)が像の像平面内にほぼあるように検出器に像形成される。これはしばしば焦点位置又はほぼ焦点位置と呼ばれる。第一及び第二光フィールドは、デフォーカシング装置のために異なった焦点位置をもつので、同時に二つの光フィールドに対する焦点状態は単にほぼ満たされ得る。例えば、第一光フィールド及び/又は第二光フィールドに対する像の像平面は、検出器の位置から少なくとも0.1mm(又は少なくとも0.2mm、0.5mm、1mm、2mm、4mm或いはさらに少なくとも8mm)ずれる。
【0084】
該方法の少なくとも一つの実施形態では、干渉パターンの測定には、干渉パターンの位相及び振幅(すなわち輝度)の測定を含む。これは、単一出力スポットすなわちピクセルの部分干渉と共に全干渉パターンの測定に対してなされ得る。空間的に解決した測定に加えて、振幅のスペクトル的に解決した測定も可能である。
【0085】
一般に、コヒーレント光フィールド(E)は複素値関数の実部として表すことができる。
【数7】
【0086】
ここで、Aは光フィールドの振幅であり、ψは光フィールドの位相である。両関数は位置(x、y、z)の関数である。電場はまた時間依存性でもあるので、ψは単にグローバル定数として決められる。
【0087】
例えば、位相ψは、光フィールドが空間的にコヒーレントである場合に決定(すなわち測定)できる。しかし、光フィールドは限定された一時的にコヒーレントな長さ(いわゆる部分的に一時的にコヒーレンス)をもち得る。
【0088】
光フィールドが異なる独立した点源からの光線束の重ね合せである場合には、光フィールドは、通常空間的に非コヒーレントである。従って各点源には、上記の式(7)に従って表すことのできる光フィールド(E)が割り当てられ、各光フィールドには、位相(ψ)及び振幅(A)が割り当てられる。位相は各非コヒーレント源に対してただ一つの定数に決めることができる。
【0089】
干渉計は、各光線束により自己干渉を測定できるようにし得る。記載した重ね合せにおいて、これら全ての自己干渉は同時に測定できる。各光線束に対する自己干渉は、それぞれの光線束に対する光学通路差が出力スポットにおける全ての点に対するコヒーレント長さより短い場合に測定できる。特に、これは、出力スポットにおける点に対してほぼゼロ干渉が設定される場合及び表示領域における出力スポットを横切っての位相差の変動が波長で分割した被検出光のコヒーレント長さより少ない場合に相当する。これらの条件は、出力フィールドの全ての光線束に対して同時に満足され得る。これらの条件が出力フィールドの全ての光線束に対して同時に満たされる場合には、本干渉計は、検出した光フィールドのコヒーレント長さに関していわゆる“グローバルコヒーレンス条件”を満たす。記載した干渉計の実施形態は、グローバルコヒーレンス条件を満足し得る。使用した光フィールドのコヒーレンス長さは1m以下(又は1mm以下、又は100μm以下、又は10μm以下、又は1μm以下)である。
【0090】
第一及び/又は第二光フィールドの自己干渉における非コヒーレント放出源のグローバル位相ファクターは、第一光フィールドと第二光フィールドの共役複素との積によって補償され得る。従って、コヒーレント干渉項の位相すなわち非コヒーレントな点源から成る物体の複素干渉項の分解における展開係数の位相又は複素干渉項の位相を唯一決めることができる。点源のコヒーレント干渉項を測定又は決めるためにまた重ね合せすなわち総物体の複素干渉項を測定するために干渉計の同一設定を選択する場合に、複素干渉項を点寄与に分解する展開係数は実部でありすなわち虚部をもたなくできる。このことは正確さすなわち分解能を相当に高めることができる。
【0091】
例えば、位相測定では位相が測定され、振幅測定では振幅が測定され、特に、複素干渉項の進展した分解が実施される。コヒーレント干渉項の可能な複素振幅の寄与を決める限りでは、コヒーレント干渉項に属するコヒーレント入力フィールドの寄与も決められる。従って、フィールドの振幅は決められ、或いは展開係数の振幅から計算できる。このコヒーレント光線束のグローバル位相は決められないままである。関連した光線束の相対位相は、関連した光線束の波形フロントと共に決められる。コヒーレント干渉項を計算して計算プロセスから使用した入力フィールドを知るか、或いはコヒーレント干渉項測定して公表特許出願WO2017/211665A1に記載の方法に従って伝搬器マッピングの知見及び複素コヒーレント干渉項から入力フィールドを計算できる。この目的で、較正の一部として別個にコヒーレント干渉項から第一光フィールド及び第二光フィールドの輝度を測定することが必要であり得る。
【0092】
比較的複雑な入力フィールド、例えば収差をもつ光学システムからのフィールドでは、計算通路は可視ではなく、そして実際のコヒーレント干渉項すなわち複素点広がり関数を測定することが必要であり得る。公表特許出願WO2017/211665A1に記載の方法により、複素第一光フィールドは、測定データ、特にコヒーレント干渉項から決めることができる。従って、測定データから、例えば、電子集束を介して他の軸方向物体距離に対する更なる複素点広がり関数を発生することができる。こうして幾つかの較正ステップ(例えば多くても5つの測定)によって全ての必要なコヒーレント干渉項すなわち複素点広がり関数を計算することが可能である。これには、特に異なる軸方向物体距離に対するコヒーレント干渉項すなわち複素点広がり関数が含まれる。
【0093】
入力フィールドの位相又は振幅測定において、複素干渉項は第一ステップで決められる。第二ステップでは、例えば評価モジュールにより、個々の点源又は光線束の割合を決めることができる。
【0094】
幾つかの実施形態では、上記方法は、光学システムの電子集束、像補正(特に像のシャープニング)及び/又は収差補正のために用いられ得る。ここで、別の像形成装置によって形成した像は物体として使える。従って、該方法によって像を後処理することが可能となる。
【0095】
上記方法の幾つかの実施形態は、三次元物体の表面構造を測定するのに適している。さらに、一時的に部分的に非コヒーレントな光源による及び/又はフォトルミネセンスによる物体の測定が可能となる。ここで、該方法によっていわゆるスペックル雑音の抑制が可能となる。該方法の実施形態の更なる使用には、位相物体の測定、特に位相感応ブライトフィールド測定又はダークフィールド顕微鏡法、及び三次元空間における物体の位置の測定、例えは3Dプロファイラーがある。
【0096】
一般に、ここに記載した方法の実施形態は、物体の復元のために用いられ得る。物体の復元は、測定した光フィールドをスポットの重ね合せとして表すプロセスであり、各スポットについて発生する点光源及び等価情報(自己相互関係のような)の輝度、電場、3D位置が決められる。典型的には、カメラの従来の輝度画像からは像復元は可能でない。
【0097】
複素干渉項による物体復元は一般に、物体の3D位置、特に物体の点源すなわち物体点を決めること及び/又は物体の物体点の輝度を決めることを意味していると理解される。
【0098】
少なくとも幾つかの実施形態では、該方法は、像の像補正及び/又は像の電子集束のために用いられる。補正すべき像は、該方法に用いた干渉計の部分でない像形成装置を用いて作像され捕捉される。補正すべき像は、像形成装置の焦点近くではあるが、像形成装置の焦点ではない位置に作像される。従って、僅かに焦点はずれした像を再焦点合わせすることが可能である。
【0099】
一般に、“焦点近く”は次のように理解できる。すなわち、全光学システムは、記載した干渉計の一部でない像形成装置と、検出平面に検出器を備えた記載したものによる干渉計とを有している。例えば、補正すべき像は、像形成装置によって作像した物体(又は物体スポット)から始まり、像形成によって発生したスポットは、像形成装置の検出器によってピックアップされる。検出器の平面が物体の平面に対してほぼ共役平面である場合に、像形成装置の検出器におけるスポットは、ほぼ焦点位置である(すなわち“焦点近く”である)。例えば、物体の位置は、像形成装置で作像した際に、像形成装置の焦点位置から少なくとも1μm(又は少なくとも5μm又は少なくとも10μm)及び/又はせいぜい100μm(又はせいぜい50μm又はせいぜい20μm)の位置にあり得る。
【0100】
“焦点近く”は、例えば次のように理解できる。例えば、干渉計の出力フィールドは、第一光フィールドと第二光フィールドとの重ね合せを含む。デフォーカシングユニットのため、これら二つの光フィールドに対する焦点位置は軸方向において異なり、従ってこれら二つの光フィールドの焦点条件は同時には満たされない。“焦点近く”条件は次のように特定できる。すなわち、第一光フィールド及び/又は第二光フィールドのスポットは、各々(存在し得る収差を考慮して)スポットの最小可能な直径のせいぜい二倍(又はせいぜい5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は500倍)の検出器におけるスポット直径をもつことができる。各場合に、第一光フィールド(第二光フィールド)のスポット直径は、ブロックした第二干渉計アーム(第一干渉計アーム)で測定できる。スポットの最小可能な直径は、特に像形成装置によって与えられ、そして例えば、像形成装置の点広がり機能(関数)によって決められる。
【0101】
代わりに或いは付加的に、第一光フィールド及び/又は第二光フィールドのスポットの位置並びに(或いは)検出器における自己干渉項の位置は、少なくとも1μm(又は少なくとも10μm、100μm、1mm、2mm、4mm、8mm又は16mm)それぞれ第一光フィールド及び第二光フィールドの焦点平面から変位し得、単に比較的大きな距離はそれぞれ第一光フィールド及び第二光フィールドの距離から取られている。従って、干渉計に像形成光学系を適用する際に、特定の検出平面に“集束”させる必要はない。おおよその集束で十分である。
【0102】
幾つかの実施形態において、記載した方法の使用には点広がり機能及び像のデコンボリューションが含まれ得る。該像は複素干渉項として測定し及び/又は表わせられ得る。
【0103】
幾つかの実施形態によれば、入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を測定する干渉計は、分割装置、像形成装置及び検出器を有する。
【0104】
分割装置は、第一干渉計アーム及び第二干渉計アームを画定し、第二干渉計アームは、デフォーカシングユニットを備えている。第一干渉計アームは、また随意にデフォーカシングユニットを含み得る。分割装置は、多数の光学系(像形成及び/又はデフォーカシングユニットのような)を含み得る。第一干渉計アーム及び第二干渉計アームは、例えば、分割装置の光学入力及び/又は出力によって画定される。分割装置は、単に単一の振幅分割器(例えばビーム分割器及び/又は偏光子)を備え得るか、又は干渉計アームの始点における多数の又は少なくとも一つの振幅分割器(例えばビーム分割器及び/又は偏光子)及び二つの干渉計アームの終点における振幅重ね合せ器(例えばビーム分割器及び/又は偏光子)を備え得る。干渉計アームは、例えばマイケルソン干渉計のセットアップと同様に、空間的に分離され或いは重ね合せられる。
【0105】
分割装置は、振幅分割によって入力光フィールドを第一光フィールドと第二光フィールドとに分割するようにセットアップされる。この目的で、分割装置は振幅分割器を備えることができる。
【0106】
分割装置及び像形成装置は、第一干渉器アームに沿って伝搬される第一光フィールドと第二干渉器アームに沿って伝搬される第二光フィールドとを振幅重ね合わせによって重ね合わせ、それらを検出器に像形成し、各場合に第一光フィールドの第一スポット及び第二光フィールドの第二スポットが出力器で干渉して出力光フィールドの共通出力スポットを形成し、そして出力光フィールドの検出器に干渉パターンを発生するようにセットアップされ調整される。例えば、分割装置は、この目的で、振幅分割器と異なる或いは振幅分割器と同一であり得る振幅重畳器を含み得る。さらに、第一及び第二干渉器アーム並びに(又は)振幅分割器に対してミラーのような他の光学系を含むことが可能である。さらに、像形成装置は、レンズのような像形成光学系を含み得る。
【0107】
検出器は、干渉パターンの少なくとも一部分を測定するように配置される。デフォーカシングユニットは、第二干渉計アームに沿って伝搬する第二光フィールドを第一光フィールドに対してデフォーカスするようにされる。デフォーカシングには、例えば、第一光フィールドに対して第二光フィールドを軸方向に変位させることが含まれ得る。ここで軸方向は、光フィールドからの光線束、典型的には中心光線の伝搬方向を意味している。任意ではあるが、第一干渉計アームにある別のデフォーカシングユニットも第一光フィールドをデフォーカスし得る。
【0108】
デフォーカシングユニット、分割装置、像形成装置及び検出器は、出力スポットを多数のスポットピクセルに当てるようにセットアップされ調整され、表示領域のスポットピクセルの少なくとも10%に対してスポットピクセルの位置において第一光フィールドと第二光フィールドとの間の位相差は、0.1π以上(又は0.5π以上或いはπ以上)変動し、位相は切れ目なく連続し、すなわち2π位相ジャンプは排除される。代わりに又は付加的に、デフォーカシングユニット、分割装置、像形成装置及び検出器は、出力スポットが多数のスポットピクセルに入射するようにセットアップされ調整され、スポットピクセルの少なくとも10%に対してスポットピクセルの位置において第一光フィールドと第二光フィールドとの間の位相差は、2k・π(k=…-2,-1,0,1,2,…)に等しくなく変動する。言い換えれば、スポットピクセルの少なくとも10%に対して出力スポットの干渉パターンに実部分と虚部分とが同時に存在し、それで干渉が可能となる。位相変動は、デフォーカシングの結果であり得る。この場合、中心光線は、干渉がゼロであるか或いはほぼゼロであり、従ってIFは位相において調整される。例えば、上記条件の少なくとも一つは、スポットピクセルの少なくとも10%(或いは少なくとも20%もしくは50%でも)に対して保持する。
【0109】
干渉計の幾つかの実施形態では、デフォーカシングユニットは、以下の構成要素すなわち誘電体媒体、特に誘電体プレート、屈折システム、特にレンズ、変換対称性をもつ回析システム、特に回析格子、調整可能なミラー、特にピエゾ調整可能なミラーのうちの少なくとも一つを有し又は備える。誘電体媒体は、調整可能な屈折率を持つことができ、そして(或いは)誘電体媒体は、光フィールドがある角度で誘電体媒体を通過しそして通過角度に応じて通路の異なった長さを進むように回転され得る。
【0110】
幾つかの実施形態においては、デフォーカシングユニット、分割装置、像形成装置及び検出器は、出力光フィールドが少なくとも三つの出力スポットをもつようにセットアップされ調整される。三つの出力スポットは、検出器の異なる領域に像形成される。少なくとも三つの出力スポットに対して次の条件が適用される。すなわち
【0111】
出力光フィールドは、少なくとも三つの出力スポットの異なる出力スポットにおいて相互コヒーレンスでない。
【0112】
出力光フィールドは、少なくとも三つの出力スポットの一つの出力スポット内において少なくとも部分的に空間的コヒーレンスを示す。
【0113】
条件(i)及び(ii)は、該方法の実施形態に関連してすでに説明してきた。
【0114】
デフォーカシングユニット、分割装置、像形成装置及び検出器は、さらに、出力光フィールドの共通の出力スポットを形成するように干渉する、第一光フィールドのそれぞれの第一スポット及び第二光フィールドのそれぞれの第二スポットが入力光フィールドの同じ入力スポットから生じるようにセットアップされ調整され得る。
【0115】
干渉計の幾つかの実施形態では、デフォーカシングユニット又はピエゾ調整可能なミラーや移相器のような他の装置は、第二干渉計アームの光学通路長さを変えるように構成される。例えば、第二干渉計アームの光学通路長さは第一干渉計アームの光学通路長さに対して変えられる。
【0116】
干渉計の幾つかの実施形態において、第二干渉計アームの幾何学的伝搬距離は、第一干渉計アームの幾何学的伝搬距離と少なくとも0.1mm(又は少なくとも0.2mm、0.5mm、1mm、3mm、5mm、或いは少なくとも10mmも)異なっている。例えば、第二干渉計アームの幾何学的伝搬距離は、第一干渉計アームの幾何学的伝搬距離より長い。
【0117】
代わりに或いは付加的に、第一干渉計アームの光学通路長さは、第二干渉計アームの光学通路長さからはほぼ区別がつかないことがあり得る。このことは、検出器にほぼゼロ干渉の点があることを意味し得る。
【0118】
幾何学的伝搬距離は、伝搬が生じる通路に沿った幾何学的長さである。幾何学的伝搬距離は、メートル法の距離に比較して主平面の距離だけ減少される。幾何学的伝搬通路に沿って、幾何学的光学系に従ってマッピングがなされる。
【0119】
伝搬は、一般に、光フィールドの伝搬すなわち始点平面から終点平面までの光フィールドの展開及び/又は伝搬に関する。プロセスの物理的モデリングに対して、例えば、キルヒホッフ回析積分及び/又はヘルムホルツの解法を用いることができる。代わりに、伝搬は、幾何学的光学系のルールに従って或いはいわゆる光線追跡よって計算できる。光フィールドの伝搬する誘電体媒体における幾何学的経路長さは、媒体のメートル法による経路長さ及び媒体の平均屈折率の商であり得る。幾何学的経路長さは、主平面の機能を示している。幾何学的経路長さは、主平面間の領域によって減少した伝搬方向に沿った媒体のメートル法による長さであり得る。
【0120】
干渉計の少なくとも一つの実施形態によれば、干渉計は、干渉パターンが出力スポットの多数のスポット干渉パターンの重ね合わせであるように構成される。検出器は、スポット干渉パターン及び/又は干渉パターンの位相及び振幅を測定するように配置される。
【0121】
干渉計の少なくとも一つの実施形態によれば、分割装置は、振幅分割によって入力光フィールドを分割しそして振幅重畳によって伝搬される第一光フィールド及び伝搬される第二光フィールドを重ね合せるように構成され調整される。例えば、分割装置は少なくとも一つのビーム分割器を含む。
【0122】
幾つかの実施形態では、入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を決める信号処理装置は、入力モジュール、メモリモジュール及び評価モジュールを含む。入力モジュールは、検出器から生じる信号によって複素干渉項を決めるようにされる。
【0123】
メモリモジュールは、伝搬器マッピング及び/又は点広がり機能を備え、伝搬器マッピングは、光学経路長さに沿って伝搬した第一光フィールドを、光学経路長さに沿って伝搬した第二光フィールドへ伝搬することを描き、伝搬した第二光フィールドは、伝搬した第一光フィールドに対してデフォーカスされる。伝搬器マッピングは、特に、上記伝搬を描く点広がり機能である。点広がり機能は伝搬器マッピングに対応し得る。
【0124】
評価モジュールは、複素干渉項及び伝搬器マッピング並びに(或いは)点広がり機能からの入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を決めるようにセットアップされる。この目的で、評価モジュールは複素干渉項に加えて基準データベースを使用できる。
【0125】
信号処理装置は、特に、検出器と通信するための適当な入出力を備えたコンピュータであり得る。
【0126】
幾つかの実施形態では、メモリモジュールは基準データベースを有し、基準データベースは複素比較干渉項を備え、複素比較干渉項は計算及び/又は較正によって決められ、また評価モジュールは、複素比較干渉項との比較によって信号から複素干渉項を決めるように構成される。比較干渉項は、例えば、点広がり機能であり得る。複素干渉項の決定には、複素干渉項に対する種々の点広がり機能の比例した寄与を決めることが含まれ得る。
【0127】
種々の点広がり機能の比例した寄与への複素干渉項の分解は、スポット位置に対するさしあたりは未知の振幅と複素スポット広がり機能(すなわち複素スポット干渉項)との間の畳み込みとして表示する。畳み込みは、フーリエ空間における乗算に相当する。すなわち、フーリエ空間における問題の表示によって、さしあたって未知の振幅のフーリエ変換は、複素干渉項のフーリエ変換及び複素点広がり機能のフーリエ変換の商によって決めることができる。最初にサーチした振幅関数は、フーリエ変換によって決めることができる。全ての点広がり関数は、基準点広がり関数による列方向変換によって発生できると仮定する。これはほぼ、全ての物体点が同一平面内にある場合である。さもなければ、像の異なる部分に対して異なる再畳み込みを用いること或いは全く異なる方法を用いることが必要となる。一般に、解法作業は畳み込みを参照しないでも解決できる一次方程式の解法から成る。
【0128】
コンピュータプログラムについてさらに説明する。コンピュータプログラムは、検出器からの信号により複素干渉項を決めるようにされる。さらに、コンピュータプログラムは、複素干渉項及び伝搬器マッピング及び/又は点広がり関数から入力光フィールドの入力位相及び/又は入力振幅を決めるようにされる。
【0129】
図1には、典型的な実施形態による干渉計100を概略的に示す。図1に示す構造は、マイケルソン干渉計の構造と同じである。干渉計100は分割装置101を有し、分割装置101はこの場合、振幅分割器及び振幅重畳器として機能する。図示実施形態において、分割装置101はビーム分割器である。物体Oiからの入力光フィールドEiは、分割装置101を用いて振幅分割によって第一光フィールドE1と第二光フィールドE2とに分割され得る。そして第一光フィールドE1は、第一干渉器アーム11に沿って伝搬し、第二光フィールドE2は、第二干渉器アーム12に沿って伝搬する。こうして伝搬した後、二つの光フィールドE1、E2は、分割装置101において振幅重畳によって重ね合されて出力光フィールドFfを形成する。
【0130】
第一干渉計アーム11は、第一ミラー201を備え、第一ミラー201はピエゾ素子203によって第一光フィールドE1の伝搬方向に沿った変位pによってシフトされ得る。従って、第一ミラー201及びピエゾ素子203は移相器として作用する。第一干渉計アーム11の光学経路長さは、第一干渉計アーム11の光学経路長さが第二干渉計アーム12の光学経路長さに相応するように変えられる。ピエゾ素子203を介して、選択した光線束の選択した点に対してゼロ干渉に光学経路長さ差を安定化することが可能である。上述の“移相”について光学経路長さは、例えば、範囲0~2πにおける様々な値で変えられる。
【0131】
第二干渉計アーム12は、第二ミラー202及びデフォーカシングユニット102を有する。図示例では、デフォーカシングユニット102は、周囲の媒体(例えば空気)の屈折率より大きい屈折率(n)をもつ誘電体プレートである。誘電体プレートによって、第二干渉計アーム12の光学経路長さは長くでき、第二干渉計アーム12の幾何学的経路長さは短くできる。
【0132】
第一干渉計アーム11及び第二干渉計アーム12を通過した後、それぞれ第一光フィールドE1及び第二光フィールドE2は、分割装置101によって重畳されて出力光フィールドEfを形成し、そして検出器300において干渉するようにされる。検出器300は、例えばCCDセンサーであり得る。出力光フィールドEfは、任意の像形成装置103によって検出器300に像形成され得る。単に例として、像形成装置103は分割装置101と検出器300との間に挿置される。しかし、二つの干渉計アーム11、12の一方に像形成装置103を設けてもよい。それから、像形成装置103は、単に第一光フィールドE1又は第二光フィールドE2にのみ作用する。像形成装置103は、レンズ(例えばマイクロレンズアレイ)であり得る。しかしまた、像形成装置103は単に出力光フィールドEfの伝搬を発生し、そして(或いは)出力光フィールドEfを検出器300へ再指向させる。検出器300によって、干渉パターンを測定し、入力信号S1S2、S3を任意の評価装置(また信号処理装置、例えば図6)に供給する。
【0133】
図1に示す干渉計100の構成により、第一光フィールドE1の第一スポットは、第二光フィールドE2の第二スポットと干渉できる(図2も参照)。
【0134】
図2には、検出器300における出力光フィールドEfの三つのスポットx1、x2、x3の干渉を概略的に示している。図示したスポットx1、x2、x3の数の選択は、純粋に例示のためであり、四つ又はそれ以上のスポットも可能である。三つのスポットx1、x2、x3の各々は、第一光フィールドE1の第一スポットx11、x21、x31と、第二光フィールドE2の第二スポットx12、x22、x32との干渉によって形成される。純粋に例示として、各スポットx11、x12、x21、x22、x31、x32は、ガウス又はガウス状光線束として表され、最小スチール直径の領域は最適焦点に相応している。
【0135】
図2に示すように、二つの光フィールドE1、E2のスポットx11、x12、x21、x22、x31、x32は互いに軸方向に変位され、それにより第二光フィールドE2は、第一光フィールドE1に比較してデフォーカスされる。その結果、第一光フィールドE1及び/又は第二光フィールドE2の各スポットx11、x12、x21、x22、x31、x32は、それ自体の反響と似ているが異なった焦点位置で干渉する。こうして、互いにコヒーレントである二つの光線束の干渉が生じられる。
【0136】
二つの光フィールドE1、E2のいずれについては、検出器300における集束条件は必ずしも合致しない。すなわち、第一光フィールドE1及び/又は第二光フィールドE2のスポットは焦点で検出器300に当たる必要がない。両光フィールドE1、E2は、検出器300において“焦点はずれ”であり得る。しかし、それらは通常同じ光学経路長さを横断する、すなわち短い一時的なコヒーレンス及び/又は短い光学コヒーレンス長さの場合(例えばいわゆる非コヒーレント光の場合)でも、二つの光線は干渉する。重畳及び干渉の条件は、同時に全ての光線束(空間的に互いに非コヒーレントである)に対して満たされ得る。
【0137】
図3の概略線図を参照して、主平面を構成する幾何学的方法について説明する。図示したように、デフォーカシングユニット102は、厚さd、屈折率n及び主平面H1、H2をもつ平らで平行な誘電体プレートとして構成される。さらに、デフォーカシングユニット102を通る第二光フィールドE2の二つの光線E21、E22の光線経路は単に例として示されている。
【0138】
該システムは、テレセントリック系であり、主平面H1、H2は、屈折率n>nの平らな平行プレート内に配置される。屈折率nは、周囲の媒体の屈折率であり、以下単に例として1(空気の屈折率)に設定されるが、他の媒体でも可能である。
【0139】
光学経路長さは、デフォーカシングユニット102を挿置することによって(n-1)dの値で伸長される。二つの主平面間の距離は(1-1/n)dである。光学経路長さは、誘電体媒体によって伸長されるが、幾何学的伝搬距離は二つの主平面間の距離によって短縮される。
【0140】
これに対して、厚さdによって、誘電体媒体を導入せずに媒体における経路長さの純粋な伸長は、幾何学的経路長さの伸長に繋がるが、光学伝搬距離も伸長される。非コヒーレントな光フィールドの場合には、これは、経路長さの伸長がコヒーレンス長さより大きい限り、干渉は測定できないことに繋がる。本明細書で考察しているフィールドのコヒーレンス長さは、数μmの範囲内であり、すなわちデフォーカシングユニットは、経路長さの単なる伸長を介しては機能できない。
【0141】
例えば、BK7ガラスで実施した1mmの誘電体プレートの例示厚さの場合、可視範囲において色収差が容易に評価できる。BK7のアッベ数は64.2であり、630nmの中心波長において30nmの線幅では、0.5μmの線幅を横切る光学経路差(4rad)が存在する。該線幅は、発光ダイオード(LED)の理論的線幅に相当している。従って、LED光フィールドは、干渉の測定用にはこのようにして設計した干渉計には適さない。
【0142】
色補正は、(例えば図1の実施形態の例では)二つの干渉計アーム11、12の各々に少なくとも一つのデフォーカシングユニット102を設けることによって可能である(図示せず)。各デフォーカシングユニット102は、分散調整のため回転可能な誘電体プレートを有し得る。干渉計アーム11、12の各々に一つのデフォーカシングユニット102が設けられる場合には、第一干渉計アーム11に対するデフォーカシングユニット102は、第二干渉計アーム12におけるデフォーカシングユニット102と異なる誘電体で作られ得る。例えば、BK7ガラス(厚さd2、屈折率n2)は、第二干渉計アーム12に用いられ得、また約95のアッベ数をもつCaF2ガラス(厚さd1、屈折率n1)は第一干渉計アーム11に用いられ得る。例えば、二つの誘電体プレート厚さは、項n1(λ)d1-n2(λ)d2がほぼ一定となるように選ばれる。この結果として所与厚さ比d1/d2となる。異なる幾何学的経路長さのために、正味の効果は色補正したデフォーカシングユニット102に相当している。
【0143】
図4には、マイクロレンズアレイとして設計した純粋に例としての像形成装置103を示している。該像形成装置103は、多数のレンズ1031を有し、これらのレンズ1031は、アレイ物質1032によって格子間隔bで互いに接続されている。マイクロレンズアレイによって、例えば、ピクセルの格子状マトリックスに対する干渉配置を変えられる。
【0144】
図5には、異なる物体点O1、O2の位置がどのようにして検出器上における異なる光線束になるのか、及び異なる軸方向位置がどのようにして検出器に対してそれぞれの光線束の異なる焦点位置に繋がるのかを例示する単純な光学的構成を示す。第一物体点O1及び第二物体点O2の位置が示されている。第一物体点O1及び第二物体点O2は、レンズLによって第一像点O1’及び第二像点O2’にそれぞれ像形成される。二つの物点O1、O2の軸方向位置が異なることにより、像平面に対して像のデフォーカスD1、D2となる(第一デフォーカスD1及び第二デフォーカスD2)。明瞭にするため、一つの干渉計アーム、すなわち、例えば、第一干渉計アームの位置のみが示されている。また干渉計における偏向も描かれず、すなわち折畳まれてない光線経路のトンネル線図に相応して示されている。第二干渉計アームの位置も同様であるが、デフォーカシングユニットのために焦点の位置は異なる。これは評価ユニットによって考慮され、評価の基本は複素干渉項である。ここに記載した干渉計は、二つの像点O1’、O2’の軸方向位置を決定することができ、またデフォーカスD1、D2にもかかわらず集束像の値の横断解像を得ることができる。点O1、O2間の異なる距離のため、点O1、O2は異なる点広がり機能をもつ。点広がり機能の違い又は相応したコヒーレントな入力光線束により、第一物点O1及び第二物点O2の3D位置を導き出すことができる。スポットの位置の測定により、放出源の位置について結論を引き出すことができる。
【0145】
像が輝度においてのみ従来の仕方で取られる場合には、横断解像は、像が焦点にある時のみ最適である。さもないと、像(ピクセルO1’、O2’から成る)は、デフォーカスD1、D2によってぼかされ、そして数値的後処理でも最良の集束像の情報を回復できない。
【0146】
図6には、入力光フィールドEiの入力位相及び/又は入力振幅を決定するため上記の信号処理装置600を概略的に示す。信号処理装置600は、入力モジュール601を有し、入力モジュール601は検出器300からの信号S1、S2、S3によって複素干渉項を決めるように構成される。さらに、信号処理装置600は、伝搬器マッピング及び/又は点広がり機能を備えたメモリモジュール602を有している。これに関連して“備えた”は、伝搬器マッピング及び/又は点広がり機能がメモリモジュール602に記憶されていることを意味している。特に、メモリモジュール602は、物点の様々な距離に対する多数の異なる点広がり機能の収集部を有し得る。伝搬器マッピングは、光学経路長さに沿って伝搬した第一光フィールドE1の、該光学経路長さに沿って伝搬した第二光フィールドE2への伝搬を描き、伝搬した第二光フィールドE2は、伝搬した第一光フィールドに対してデフォーカスされる。信号処理装置600は、さらに評価モジュール603を有し、評価モジュール603は、複素干渉項及び伝搬器マッピング及び/又は点広がり機能から入力光フィールドEiの入力位相及び/又は入力振幅を決めるように構成される。
【0147】
図7の概略線図を参照すると、記載した干渉計の別の実施形態を記載した方法と共に詳細に説明する。図7の干渉計100は、二部分分割装置1011、1012を有している。偏光子は、分割装置1011、1012のそれぞれ振幅分割器1011及び振幅重畳器1012として作用し、45°の偏光方向の回転を生じさせる。例示した実施形態では、デフォーカシングユニット102は、複屈折結晶を含んでいる。さらに、二つの干渉計アーム11、12は移相器2031を備えている。複屈折結晶102は、複屈折結晶102を通って伝搬する光フィールドの異なる偏光方向屈折率をもつ。移相器2031は、移相器2031を通って伝搬する光フィールドの異なる偏光方向に対して異なる移相を生じさせる。移相器2031は電気的に制御可能であり得る。
【0148】
物体Oiから出てくる入力光フィールドEiの偏光は、振幅分割器1011によって45°回転させられる。振幅分割器1011の直後、光フィールドは、垂直(ほぼ90°偏光)及び水平(ほぼ0°偏光)偏光成分をもつ(図7に概略的に示す)。垂直偏光成分は、第二光フィールドE2に相当し、又、水平偏光成分は、第一光フィールドE1に相当している。従って、図7の干渉計100の第一干渉計アーム11及び第二干渉計アーム12は、偏向の方向が異なるが、同じ伝搬方向に沿って進み得る。しかし、二つの光フィールドE1、E2の空間的分割も可能である。しかし、第一光フィールドE1及び第二光フィールドE2は、図7において互いに僅かにずらして描かれている。
【0149】
第一光フィールドE1及び第二光フィールドE2は、二つの干渉計アーム11、12に沿って、そして複屈折結晶102を通って伝搬する。複屈折結晶102において、第一光フィールドE1及び第二光フィールドE2は、二つの偏光方向に対して異なる屈折率のため異なる光学媒体を有効に通過する。光学経路長さを調整するために、複屈折結晶の層状構造が勧められ、異なる物質及び異なる屈折率を通して光学経路における全体的な影響は、二つの偏光に対して同じである。幾何学的経路において、屈折率は異なる依存性(nの代わりに1/n)で入る。これは、幾何学的経路が異なることを示している。これにより、第二光フィールドE2は第一光学フィールドE1に対して同一光学的経路長さを維持しながらデフォーカスされ得る。
【0150】
異なる光学的経路長さを補償するために、二つの光フィールドE1、E2の位相は移相器2031によって互いに移相される。複屈折結晶102及び移相器2031を通過した後、伝搬される第一光フィールドU1(E1)iδと、伝搬される第二光フィールドU2(E2)とが得られる。ここで、U1及びU2は、複屈折結晶102における異なる伝搬を除いて同じである各伝搬器マッピングである。移相器2031のため、伝搬される第一光フィールドU1(E1)iδは伝搬される第二光フィールドU2(E2)に対して位相がずれる。しかし、伝搬される第一光フィールドU1(E1)iδと伝搬される第二光フィールドU2(E2)の偏光方向は、なお互いに垂直である(図7に概略的に示す)。振幅重畳器1012によって、二つの伝搬される光フィールドは、重ね合されて出力光フィールドEf=U2(E2)+U1(E1)iδを形成し、そして図1の構成と同じように、検出器300において干渉される。
【0151】
図8には、干渉計及び方法の別の実施形態を概略的に示す。図8の実施形態では、干渉計100は、振幅分割器1011及び振幅重畳器1012を備えた二部分分割装置1011、1012を有し、各々ビーム分割器として構成されている。入力光フィールドEiは、振幅分割器1011で第一光フィールドE1と第二光フィールドE2とに分割し、第一光フィールドE1は第一干渉計アーム11を通り、第二光フィールドE2は第二干渉計アーム12を通る。その後、第一光フィールドE1及び第二光フィールドE2は、振幅重畳器1012で重ね合されて出力光フィールドEfを形成し、そして検出器300で干渉するようにされる。
【0152】
第一干渉計アーム11は、第一ミラー201及び第一光学システム1021を有する。第二干渉計アーム12は、第二ミラー202及び第二光学システム1022を有する。第一光学システム1021及び第二光学システム1022は、共にデフォーカシングユニット1021、1022を形成する。さらに、第二干渉計アーム12は移相器2031を有し、この移相器は、図7の実施形態の移相器2031と同じに構成され得る。第一光学システム1021及び第二光学システム1022は、異なる屈折率をもち、それにより第一光学システム1021の主平面H1、H2間の間隔は第二光学システム1022の主平面H1’、H2’間の間隔と異なっている。例えば、第一光学システム1021及び第二光学システム1022は、各々誘電体プレートから成っている。二つの光学システム1021、1022の主平面H1、H2、H1’、H2’の異なる位置のために、第一光フィールドE1及び第二光フィールドE2は、二つの干渉計アーム11、12における異なる幾何学的経路長さを進む。従って、第二光フィールドE2は、第一光フィールドE1に対してデフォーカスされる。補償ユニットとしての移相器2031によって、光学伝搬経路における可能な差は、移相器によって補償される。
【0153】
点広がり機能及び/又は複素干渉項の決定並びに入力位相及び/又は入力振幅に対するそれらの評価は、例えば以下に記載するように行われる。
【0154】
光学における通常の専門用語によれば、点広がり機能は、点源で発生した検出器上の光分布の数学的表示である。ここで、物体及び像は収差を除いて共役平面にある。以下の説明では、簡単な表示の観点から収差は考察しない。
【0155】
上述したような、デフォーカシングユニットを備えない代替の干渉計構成では、点広がり機能は、通常、システムの光学軸上の中心物点に対して決められ(いわゆる基準点広がり機能、PSFO)また全ての他の点広がり機能は、基準点広がり機能をシフトすることによって発生される。点源が物体空間でシフトされる場合には、相応した点広がり機能の重心もシフトする(これはIF点広がり機能と同様に適用する。以下を参照)。
【0156】
一般に、像形成システムにおける測定した輝度画像は、種々の位置に集中した点広がり機能の重なり合いであり、これらの各点広がり機能は、空間的にシフトした基準点広がり機能に相応している。従って、輝度画像(I)は次のように表すことができる。
【数8】
【0157】
ここで、和は、PSFO(x-xs’,y-ys’)の全ての点広がり関数sにわたって得られる。Isは点広がり関数sの輝度分布である。
【0158】
各点広がり関数sは、検出器において(既知の位置zsで)特定の位置(xs’,ys’)をもち、そして各点広がり関数sは物点Psに属している。物点Psはまた座標系をもち、これらの座標系はそれ等を識別するために文字Xs、Ys、Zsとして選択される。xs(ys)とXs(Ys)との関係は、マッピング特に物体と像との共役平面間のマッピングによって与えられる。座標Zsは、測定装置からの物体の距離を表すので、特定の位置を取る。像平面が不変のままでありかつZsが代えられとすれば、これは幾何学的光学系の狭義の意味でのデフォーカス(収差)に繋がる。
【0159】
上記式(8)は、可能な座標変換を除いて畳み込み式である。フーリエ分析法(フーリエ変換)により、かかる畳み込みは、入力関数のフーリエ変換の積として表すことができる。これにより、測定した輝度(x,y)のフーリエ変換及び分割により前に決めたPSFO(x,y)のフーリエ変換からIs(Isはsの関数であり、ここでsは例えば二次元座標(Xs,Ys)であり得る)のそれぞれのフーリエ変換を決めることができる。従ってIsはこれから逆変換を介して計算される。この方法は、フーリエ空間におけるPSFO(x,y)の幅による分析において制限される。
【0160】
光学系における再構成の作業はしばしば、検出器において測定した輝度(x,y)から点源の位置Xs、Ys、Zsをできるだけ正確に決めることにある。これは、横方向分解能(Xs,Ys)及び軸方向分解能(深さ分解能)Zsによって制限される。該制限は、Xs、Ys、Zsが通常識別できない(すなわち測定の不正確さを考慮して“等しい”)点広がり関数sに繋がる場合に起きる。
【0161】
Zsの変動が関連した収差を介して検出されるので、該状況は代わりの干渉計構成ではZsに対して通常好ましくない。しかし、この収差は横方向分解能を制限し、そして一般に非常に不正確である。このような代わりの干渉計構成は深さ分解能が悪い。関連した深さ分解能はレイリー長さであり、レイリー長さは点源からの理想的に収束した光線束に対して決められる。
【0162】
ここに記載した干渉計において、分析すべきフィールドは複素干渉項(IF)である。これは個々の項IFiの重ね合せとして表すことができる。個々の項IFiは、式(2)によるコヒーレント干渉項又は複素点広がり関数であり得、以下“IF点広がり関数”と記載する。IF点広がり関数は複素値である。
【0163】
記載した干渉計において、物体(例えば点源)及び干渉パターン(すなわち像)は、単にほぼ共役平面に位置する。第一干渉計アーム11も第二干渉計アーム12も必ずしも正確に検出器300の位置に物体に対する共役平面を備えていない。典型的には、このことは、干渉計アーム11、12の少なくとも一方がデフォーカシングユニット102、1021、1022を備えているので、記載した干渉計の場合には当てはまらない。
【0164】
記載した干渉計において、中心物点の点広がり関数は、通常、システムの光学軸上ではあるが距離Z(いわゆる基準IF点広がり関数IF-PSFO(Z))に決められ、そして距離Zに対する全ての他のIF点広がり関数は、距離Zに対する基準IF点広がり関数をシフトすることによって発生される。
【0165】
干渉計の測定した干渉パターンは、種々の位置における中心とIF点広がり関数の重ね合せであり、またこれらのIF点広がり関数の各々は、距離Zにおける空間的にシフトした基準IF点広がり関数IF-PSFOに相応している。PSFOによる状況と違って、IF-PSFOがZに著しく依存するので、物体に対する距離に従ってIF-PSFOによって識別がなされなければならない。
【0166】
干渉パターンは、上記の式(8)に従って表すことができ、こうして全てのIF-PSFOを総計する。従ってIsはIF点広がり関数sの強度寄与である。各IF点広がり関数sは、検出器上に特定の位置(xs’,ys’)をもち、そして点源距離Zsに相応し、また各IF点広がり関数sは座標Xs、Ys、Zsをもつ物点Osに属している(上記参照)。
【0167】
代わりの干渉計構成と対照的に、上記の干渉計におけるZsに対する状況は、Zsを変えると基準IF点広がり関数IF-PSFOが変化するが、フーリエ空間における幅はほとんど変わらないままなので、より一層好ましく、すなわち検出平面の位置が変わらなくても、これが横方向分解能の低下には繋がらない。試みに基づいて種々のZでIF-PSFOをテストすることで、点源に対する正しいZを決めることが可能である。関連した深さ分解能はレイリー長さより十分に低い。
【0168】
物体が異なるZを含んでいる場合、例えば、異なるZmで再構成して各場合に“輪郭の最もはっきりした”像を局所的に選択することが可能である。こうして異なるZmの領域を局所的に決めることができる。これは電子集束に対する単純な提案である。これは他の方法を排除しない。
【0169】
複素干渉項による物体の再構成は、物体の点源の位置(Xs、Ys、Zs)及び/又は輝度(Is)を決めることを含み得る。物体に対して組み合わさった点広がり関数IF-PSFO(X、Y、Z)を適用することによって、一般に結果として測定した干渉項が得られる。これは、干渉項の異なるIFiへの分解に相当する。分解能の限界及び測定の誤差内で、この分解は唯一に決められ得る。
【0170】
本発明は実施形態に基づいて説明してきたものに限定されない。むしろ、本発明は、特徴又は組合せ自体が請求の範囲や実施形態に明確に記載されてないとしても、特に請求の範囲における特徴の全ての組合せを含む全ての新しい特徴を包含する。
【符号の説明】
【0171】
11: 第一干渉計アーム
12: 第二干渉計アーム
100: 干渉計
101: 分割装置
102: デフォーカシングユニット
1021: デフォーカシングユニット
1022: デフォーカシングユニット
103: 像形成装置
201: 第一ミラー
202: 第二ミラー
203: ピエゾ素子
300: 検出器
600: 信号処理装置
601: 入力モジュール
602: メモリモジュール
603: 評価モジュール
1011: 振幅分割器
1012: 振幅重畳器
1021: 第一光学システム
1022: 第二光学システム
1031: レンズ
1032: アレイ物質
2031: 移相器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8