(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】発電機として動作する電気回転機械を制御する方法、および遮断の場合にネットワーク内の電圧を低下させるための対応する制御システム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20230227BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P27/06
(21)【出願番号】P 2021535629
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2019086768
(87)【国際公開番号】W WO2020128024
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-13
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】ローラン、カーブ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル、フィリペ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル、シュマン
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-244864(JP,A)
【文献】特表2014-513518(JP,A)
【文献】特開2011-078216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0281446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相回転電
機を制御する方法であって、
そのステータは、並列に実装された複数のスイッチングアームを備える制御ブリッ
ジによって制御され、各アームはセンタータップで一緒に接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを備え、これは前記回転電機の
相に接続されており、前記回転電機は発電機として動作し
、車両に搭載されたネットワークに接続されており、
前記方法は、
前記ネットワークの電
圧の測定値が第1の所定
値を超えたときに前記ステータの少なくとも1つの相巻線を短絡する
、短絡ステップ
と、
前記センタータップが前記少なくとも1つの短絡相巻線に接続されているスイッチングアームを作動する
、作動ステップ
と、
を備え
、
前記作動ステップは、
前記短絡巻線
を循環する電流が測定され
るステップと、
前記測定された
電流が正である場合、前記作動されたスイッチングアームの前記ハイサイドスイッチが閉位置に移動し、
前記ローサイドスイッチが開位置に移動するステップと、
前記測定された電流が負である場合、前記作動されたスイッチングアームの前記ハイサイドスイッチが開位置に移動
し、
前記ローサイドスイッチが閉位置に移動するステップと、
を含み、
前記短絡ステップは、
前記ステータの全ての相巻線が短絡され、
前記短絡ステップに続いて、全てのスイッチングアームに対して前記作動ステップが実行される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ネットワークの前記電圧の測定値は、所定の時定数で前記ネットワークの前記電圧をフィルタリングすることによって得られる、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記作動ステップは、少なくと
も測定された前記電圧が第2の所定値(VS2)未満になるまで繰り返される、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記作動ステップが所定の期間にわたって繰り返される、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
発電機として動作し、第1および第2の電源端子によって電気ネットワー
クに接続された多相回転電
機のための制御システ
ムであって、前記電気ネットワー
クは、具体的には自動車に搭載されたネットワークであり、
前記制御システ
ムは、
並列に実装された複数のスイッチングアームを備える制御ブリッ
ジであって、各アームはセンタータップで一緒に接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを備え、これは前記回転電機の相巻線に接続されており、
前記電気ネットワークに電圧を供給することができる、制御ブリッ
ジと、
前記制御ブリッ
ジの前記スイッチを開閉することが可能な制御回
路と、
前記第1および第2の電源端子間の電圧を測定する装
置と、
を備え、
前記制御システ
ムは、所定のスイッチングアームに接続された少なくとも1つの所定の相巻
線について、前記制御システ
ムが、前記所定の相巻線を通る電流を測定する装
置をさらに備え、前記電圧測定装置によって測定された電
圧が第1の
値を超えると、
前記制御回路は全ての前記相巻線を短絡し、
前記制御回
路は前記所定のスイッチングアームの前記ローサイドスイッチを閉じ、
前記電流測定装
置は前記所定の相を通る電流を測定し、
前記測定電
流が正である場合、前記制御回
路は前記所定のスイッチングアームの前記ハイサイドスイッチを閉じ、
前記ローサイドスイッチを開き、
前記測定電流が0又は負である場合、前記制御回
路は前記所定のスイッチングアームの前記ハイサイドスイッチを開
き、前記ローサイドスイッチを閉じる、
ことを特徴とする、制御システ
ム。
【請求項6】
前記電圧測定装置によって測定された前記電圧が第1の所定値を超え、所定の期間にわたって、または前記電圧測定装置によって測定された電圧が第2の所定値を超える限り反復的にそうすることを示す検出に続いて、
前記制御回
路は前記所定のスイッチングアームの前記ローサイドスイッチを閉じ、
前記電流測定装
置は前記所定の
相を通る電流を測定し、
前記測定電
流の強度が正である場合、前記制御回
路は前記所定のスイッチングアームの前記ハイサイドスイッチを閉じ、
前記ローサイドスイッチを開き、
前記測定電流が0又は負である場合、前記制御回
路は前記所定のスイッチングアームの前記ハイサイドスイッチを開
き、
前記ローサイドスイッチを閉じる、請求項
5に記載の制御システム。
【請求項7】
相ごとに、この相を通る電流を測定する装
置(
をさらに備えること、ならびに
相ごとに、
前記制御回
路は、そのセンタータップによってこの
相に接続された前記スイッチングアームの前記ローサイドスイッチを閉じ、
前記電流測定装
置は、この
相を通る電流を測定し、
この相で測定された電
流が正である場合、前記制御回
路(
は、そのセンタータップによってこの
相に接続された前記スイッチングアームの前記ハイサイドスイッチを閉じ、
前記ローサイドスイッチを開き、
前記測定された電流が0又は負である場合、前記制御回
路は、そのセンタータップによってこの
相に接続された前記スイッチングアームの前記ハイサイドスイッチを開
き、前記ローサイドスイッチを閉じる、
ことを特徴とする、請求項
5または
6に記載の制御システム。
【請求項8】
請求項
5から
7のいずれか一項に記載の制御システ
ムと、前記制御システ
ムによって制御される多相コイル式ロータ回転電
機とを備える電気システ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードダンプの場合に、電気ネットワーク、具体的には自動車に搭載されたネットワークに接続された多相回転電機を制御する方法、ならびにこの方法を実施するのに適した制御システムに関する。
【0002】
本発明はまた、この制御システムと、この制御システムによって制御される多相回転電機とを備える電気システムにも関する。
【背景技術】
【0003】
自動車では、車両に取り付けられた電気機器の様々なアイテムに電力供給するために、車載ネットワークが使用される。電力は、少なくとも1つのバッテリによって供給される。これは、車両の熱機関の回転によって供給されるエネルギーに基づいて、回転電機によって再充電される。回転電機は一般に、車載ネットワークに供給する直流出力電流を精製するために使用される任意の多相回転電機であると理解される。具体的には、これはオルタネータ、またはスタータオルタネータさえも含むことができる。
【0004】
車載ネットワークから、バッテリから、または両方からの充電が突然切断された場合、車載ネットワークの過電圧をもたらす「ロードダンプ」現象が発生する。実際、機械はロードダンプに瞬時に反応しないため、これは同じ出力電流を送達し続け、その一方で車載ネットワーク上の消費電流が低下する。その結果、車載ネットワークに接続された全てのコンデンサが充電され、車載ネットワーク上の直流電圧が著しく上昇する。
【0005】
このような過電圧は、回転電機そのもののみならず、車載ネットワークに接続されたあらゆる電気器具の信頼性も損なうかまたは低下させる可能性がある。
【0006】
したがって、このような高振幅過電圧を検出し、妥当であれば回転電機を保護することは、価値がある。
【0007】
この目的のために、多相回転電機を制御する方法が従来技術から知られており、前記制御方法は、ロードダンプの場合にステータの少なくとも1つの巻線を短絡することを含むタイプであり、前記方法は、前記ネットワークの電圧が第1の所定値を超えたときにステータの前記少なくとも1つの相巻線を短絡するステップを備える。
【0008】
従来技術のこの簡単な方法は、この電圧が許容可能なレベルに戻っていない間にステータの少なくとも1つの相を短絡させたままにすることにより、車載ネットワークの電圧を低下させる。
【0009】
しかしながら、車載ネットワークの電圧が許容可能なレベルに戻るまでに、かなりの時間が経過する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、この欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、第1の態様によれば、多相回転電機を制御する方法であって、そのステータは、並列に実装された複数のスイッチングアームを備える制御ブリッジによって制御され、各アームはセンタータップで一緒に接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを備え、これは前記回転電機の相に接続されており、前記回転電機は発電機として動作し、電気ネットワーク、具体的には車両に搭載されたネットワークに接続されており、前記方法は、前記ネットワークの電圧の測定値が第1の所定値を超えたときにステータの少なくとも1つの相巻線を短絡するステップを備え、
前記方法は、短絡ステップに続いて、スイッチングアームを作動するステップをさらに備え、そのセンタータップは前記少なくとも1つの短絡相巻線に接続されており、このステップの間、
1.短絡巻線の強度が測定され、
2.測定された強度が正である場合、前記作動されたスイッチングアームのハイサイドスイッチが閉位置に移動し、
3.そうでなければ、前記作動されたスイッチングアームのハイサイドスイッチが開位置に移動する
ことを特徴とする方法に関する。
【0012】
本発明の意味の範囲内で、強度は、電流が前記少なくとも1つの短絡巻線に接続された前記センタータップから前記少なくとも1つの短絡巻線に流入または戻るときに正であることに留意すべきである。
【0013】
このため、本発明による制御方法は、ロードダンプの場合にステータの少なくとも1つの相巻線を短絡することを含むタイプのものである。
【0014】
本発明による制御方法はまた、個別にまたは全ての技術的に可能な組合せにしたがって考慮される、以下の特長のうちの1つ以上も有することができる。
【0015】
この方法は、車載ネットワークの電圧を低下させるために、ステータの少なくとも1つの相巻線が短絡されたときに、車載ネットワークから生じる電流を以前に短絡されたステータの相巻線に導入するようにステータの制御ブリッジが制御されるという点で、注目に値する。
【0016】
本発明の特定の実施形態では、測定された強度が正である場合、前記作動されたスイッチングアームのローサイドスイッチは開位置に移動する。
【0017】
本発明の特定の実施形態では、測定された強度が正ではない場合、前記作動されたスイッチングアームのローサイドスイッチは閉位置に移動する。
【0018】
本発明の特定の実施形態では、ステータの少なくとも1つの相巻線を短絡するステップの間、前記作動されたスイッチングアームのハイサイドスイッチは開位置に移動する。
【0019】
本発明の特定の実施形態では、ステータの少なくとも1つの相巻線を短絡するステップの間、前記作動されたスイッチングアームのハイサイドスイッチは、前記作動されたスイッチングアームのローサイドスイッチが閉位置に移動する前に、開位置に移動する。
【0020】
本発明の特定の実施形態では、ステータの少なくとも1つの相巻線を短絡するステップの間、前記ステータの全ての相巻線が短絡され、全てのスイッチングアームの全てのハイサイドスイッチが開位置に移動する。
【0021】
本発明の特定の実施形態では、前記ネットワークの電圧の測定値は、所定の時定数で前記ネットワークの電圧をフィルタリングすることによって得られる。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、作動ステップは、少なくとも電圧測定装置によって測定された電圧が第2の所定値未満になるまで繰り返される。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、前記作動ステップは、所定の期間にわたって繰り返される。
【0024】
本発明の特定の実施形態では、短絡ステップの間、ステータの全ての相巻線が短絡され、短絡ステップに続いて、全てのスイッチングアームに対して作動ステップが実行される。
【0025】
相応に、第2の態様によれば、本発明の目的は、発電機として動作し、第1および第2の電源端子によって電気ネットワークに接続された多相回転電機のための制御システムであって、前記電気ネットワークは、具体的には自動車に搭載されたネットワークであり、前記制御システムは、
-並列に実装された複数のスイッチングアームを備える制御ブリッジであって、各アームはセンタータップで一緒に接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを備え、これは前記回転電機の相巻線に接続されており、前記制御ブリッジは前記電気ネットワークに電圧を供給することができる、制御ブリッジと、
-制御ブリッジのスイッチを開閉することが可能な制御回路と、
-第1および第2の電源端子間の電圧を測定する装置と
を備え、
制御システムは、やはり所定のスイッチングアームに接続された少なくとも1つの所定の相巻線について、制御システムが、所定の相巻線を通る電流を測定する装置をさらに備え、電圧測定装置によって測定された電圧が第1の値を超えると、
-制御回路は所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じ、
-電流測定装置は所定の相を通る電流を測定し、
-測定電流の強度が正である場合、制御回路は所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを閉じ、
-そうでなければ、制御回路は所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開く
ことを特徴とする、制御システムである。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、測定電流の強度が正である場合、制御回路は前記所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを開く。
【0027】
本発明の特定の実施形態では、測定電流の強度が正ではない場合、制御回路は前記所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じる。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、制御回路は、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じ、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開く。
【0029】
本発明の特定の実施形態では、制御回路は、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じ、ステータの前記少なくとも1つの所定の相巻線を短絡する。
【0030】
本発明の特定の実施形態では、制御回路は、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じ、ステータの前記少なくとも1つの所定の相巻線を短絡し、前記所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチは、前記所定のスイッチングアームのローサイドスイッチが閉位置に移動する前に、開位置に移動する。
【0031】
本発明の特定の実施形態では、制御回路は、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じ、ステータの全ての相巻線を短絡し、制御ブリッジの全てのスイッチングアームの全てのハイサイドスイッチは、全てのスイッチングアームの全てのローサイドスイッチが閉位置に移動する前に、開位置に移動する。
【0032】
本発明の特定の実施形態では、電圧測定装置によって測定された電圧が第1の所定値を超え、所定の期間にわたって、または電圧測定装置によって測定された電圧が第2の所定値を超える限り反復的にそうすることを示す検出に続いて、
-制御回路は所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じ、
-電流測定装置は所定の相を通る電流を測定し、
-測定電流の強度が正である場合、制御回路は所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを閉じ、
-そうでなければ、制御回路は所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開く。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、電圧測定装置によって測定された電圧が第1の所定値を超えることを示す検出に続いて、および所定の相巻線を短絡するステップに続いて、制御システムは、所定の期間にわたって、または電圧測定装置によって測定された電圧が第2の所定値を超える限り、反復的に
-電流測定装置は所定の相を通る電流を測定し、
-測定電流の強度が正である場合、制御回路は、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを開き、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを閉じ、
-そうでなければ、制御回路は、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開き、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じる。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、電圧測定装置によって測定された電圧が第1の所定値を超え、所定の期間にわたって、または電圧測定装置によって測定された電圧が第2の所定値を超える限り繰り返しそうすることを示す検出に続いて、
-電流測定装置は所定の相を通る電流を測定し、
-測定電流の強度が正である場合、制御回路は、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを開き、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを閉じ、
-そうでなければ、制御回路は、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開き、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じる。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、制御システムは、相ごとに、この層を通る電流を測定する装置をさらに備えること、ならびに層ごとに、
-制御回路は、そのセンタータップによってこの層に接続されたスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じ、
-電流測定装置はこの相を通る電流を測定し、
-この相で測定された電流の強度が正である場合、制御回路は、そのセンタータップによってこの層に接続されたスイッチングアームのハイサイドスイッチを閉じ、
-そうでなければ、制御回路は、そのセンタータップによってこの相に接続されたスイッチングアームのハイサイドスイッチを開く
ことを特徴とする。
【0036】
制御システムは、制御方法と同じ、先に述べられた利点の恩恵を受ける。
【0037】
本発明のさらなる目的は、第3の態様によれば、本発明の第2の態様による制御システムと、前記制御システムによって制御される多相コイル式ロータ回転電機とを備える電気システムである。
【0038】
電気システムは、制御方法および制御システムと同じ、先に述べられた利点の恩恵を受ける。
【0039】
第4の態様によれば、本発明のさらなる目的は、発電機として動作し、第1および第2の電源端子によって電気ネットワークに接続された多相回転電機のための制御システムであって、前記電気ネットワークは、具体的には自動車に搭載されたネットワークであり、前記制御システムは、
-並列に実装された複数のスイッチングアームを備える制御ブリッジであって、各アームはセンタータップで一緒に接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを備え、これは前記回転電機の相巻線に接続されており、前記制御ブリッジは前記電気ネットワークに電圧を供給することができる、制御ブリッジと、
-制御ブリッジのスイッチを開閉することが可能な制御回路と、
-第1および第2の電源端子間の電圧を測定する装置と
を備え、
制御システムは、やはり所定のスイッチングアームに接続された少なくとも1つの所定の相巻線について、制御システムが、所定の相巻線を通る電流を測定する装置をさらに備え、電圧測定装置によって測定された電圧が第1の値を超えると、
-制御回路は所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開き、前記少なくとも1つの所定の相巻線を短絡し、次いで
-電流測定装置は所定の相を通る電流を測定し、
-測定電流の強度が正である場合、制御回路は、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを開き、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを閉じ、
-そうでなければ、制御回路は、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開き、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じる
ことを特徴とする制御システムである。
【0040】
本発明の特定の実施形態では、前記少なくとも1つの所定の相巻線の短絡に続いて、および電圧測定装置によって測定された電圧が第1の所定値を超え、所定の期間にわたって、または電圧測定装置によって測定された電圧が第2の所定値を超える限り反復的にそうすることを示す検出に続いて、
-電流測定装置は所定の相を通る電流を測定し、
-測定電流の強度が正である場合、制御回路は所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを閉じ、
-そうでなければ、制御回路は所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開く。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、前記少なくとも1つの所定の相巻線の短絡に続いて、および電圧測定装置によって測定された電圧が第1の所定値を超え、所定の期間にわたって、または電圧測定装置によって測定された電圧が第2の所定値を超える限り反復的にそうすることを示す検出に続いて、
-電流測定装置は所定の相を通る電流を測定し、
-測定電流の強度が正である場合、制御回路は、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを開き、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを閉じ、
-そうでなければ、制御回路は、所定のスイッチングアームのハイサイドスイッチを開き、所定のスイッチングアームのローサイドスイッチを閉じる。
【0042】
本発明のさらなる目的は、第5の態様によれば、本発明の第2の態様による制御システムと、前記制御システムによって制御される多相コイル式ロータ回転電機とを備える電気システムである。
【0043】
他の実施形態では、本発明による制御方法、制御システム、および電気システムが、前述の特徴の全てまたは一部を組み合わせて有すると想定することも可能である。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の特定の特徴および利点は、以下の図面を参照して提供される詳細な説明から明らかになるだろう。
【0046】
【
図1】本発明による電気システムの第1の実施形態を示す。
【0047】
【
図2】本発明の特定の実施形態による制御方法を、フローチャートとして示す。
【0048】
【
図3】短絡相で測定された電流と、この相に関連するスイッチングアームのハイサイドスイッチの状態との関係を、グラフ形式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[
図1]は、本発明による電気システム100の第1の実施形態を示す。この電気システムは、例えば、自動車で使用されるように意図される。
【0050】
電気システム100は、少なくとも1つの直流電圧源102を備える自動車の車載ネットワーク1に接続される。直流電圧源102は、正端子および負端子を備え、前記負端子は一般に、自動車のシャーシなどの電気グランドGNDに接続される。直流電圧源102は、これらの端子間に直流入力電圧Eを供給するように設計される。
【0051】
電気システム100は、第一に、多相回転電機106を備える。本明細書に記載される例では、多相回転電機106は、記載される例では中性点Nに接続された第1のそれぞれの端部を含む、ステータ相U、V、Wを備える。記載される例では、電気機械106は三相電気機械である。電気機械106は、例えば、モータとして駆動するときにベルトを駆動するため、および発電機として動作するときにこのベルトによって駆動されるために、スタータオルタネータベルトに結合された同期電気機械である。
【0052】
電気システム100は、本発明による制御システム101をさらに備え、このシステムは、以下を備える。
a)直流電圧源102から電気機械106のステータ相U、V、Wに供給するために、一方では直流電圧源102の端子に、他方では電気機械106に接続された、制御ブリッジ108。このため制御ブリッジ108は、直流電圧源102の正端子および負端子にそれぞれ接続された、高端子BHOSおよび低端子BBOSを備える。制御ブリッジ108は、高端子BHOSからステータ電流iEを受け取るかまたは供給するように意図される。
b)電子制御回路120。
c)高端子BHOSと低端子BBOSとの間の電圧を測定するための装置130。
d)ステータ相U内を循環する電流Iuの強度を測定するための測定装置140U。
e)ステータ相V内を循環する電流Ivの強度を測定するための測定装置140V。
f)ステータ相W内を循環する電流Iwの強度を測定するための測定装置140w。
【0053】
制御ブリッジ108は、ステータ相U、V、Wにそれぞれ関連付けられたアームをさらに備える。各アームは、高端子BHOSに接続されたハイサイドスイッチと、低端子BBOSに接続されたローサイドスイッチとを備える。ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチはまた、関連するステータ相U、V、Wに接続されたセンタータップ(PU、PV、PW)で一緒に接続される。各アームは、2つの構成間で切り替わるように制御されるように意図される。ハイサイド構成と呼ばれる第1の構成では、関連するステータ相U、V、Wの第2の端部に入力電圧Eが印加されるように、ハイサイドスイッチは閉じて、ローサイドスイッチは開いている。ローサイド構成と呼ばれる第2の構成では、関連するステータ相U、V、Wの第2の端部にゼロ電圧が印加されるように、ハイサイドスイッチは開いて、ローサイドスイッチは閉じている。制御ブリッジ108は、ステータ相U、V、Wを通る電流を調整するように、これら2つの構成の間で各アームを切り換えるように電子制御回路120によって制御される。
【0054】
本明細書に記載される実施形態では、制御ブリッジ108のハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチは、より一般的にはMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)として知られる、絶縁ゲート電界効果トランジスタである。
【0055】
電気機械106のステータ相U内を循環する電流を測定する装置140Uは、センタータップPUから中性点Nに循環する電流を測定する。慣例により、この電流は、電流がセンタータップPUからステータ相Uに入るときには正であり、そうでなければ負である。
【0056】
同様に、電気機械106のステータ相V内を循環する電流を測定する装置140Vは、センタータップPVから中性点Nに循環する電流を測定する。慣例により、この電流は、電流がセンタータップPVからステータ相Vに入るときには正であり、そうでなければ負である。
【0057】
同様に、電気機械106のステータ相W内を循環する電流を測定する装置140Wは、センタータップPWから中性点Nに循環する電流を測定する。慣例により、この電流は、電流がセンタータップPWからステータ相Wに入るときには正であり、そうでなければ負である。
【0058】
電気システム100は、制御ブリッジ108の端子BHOS、BBOSの間に接続されたコンデンサ104をさらに備える。コンデンサ104は、例えば1つ以上のコンデンサ、例えば化学コンデンサを備える。
【0059】
[
図2]を参照して、回転電機106がその発電機動作モードにあるときに制御システム101によって実施される、本発明による制御方法の主なステップについてここで説明する。
【0060】
最初に(ステップD)、回転電機106は発電機モードにある。
【0061】
電子制御回路120は、ステップE100の間、同期整流器モードとして知られる動作モードで制御ブリッジ108のローサイドスイッチおよびハイサイドスイッチの開閉を交互に制御する。
【0062】
同時に、ステップE200の間、電圧測定装置130は、高端子BHOSと低端子BHOSとの間の電圧V*を測定し、この測定された電圧を制御回路120に送信する。電圧V*は、例えば、整流から生じるあらゆる電流リップルを回避するため、および負荷損失の誤検出を回避するために、高端子BHOSと低端子BHOSとの間の電圧をフィルタリングすることによって得られる。
【0063】
ステップE300の間、測定電圧V*は、制御回路120によって第1の所定値VS1、例えば58Vと比較される。
【0064】
測定電圧V*が第1の所定値VS1よりも低い場合、負荷損失は検出されず、制御システムは並列ステップE100およびE200を繰り返す。
【0065】
測定電圧V*が第1の所定値VS1を上回る場合、例えば直流電圧源102の切断に起因する車載ネットワーク1の過電圧が検出され、電子制御回路120は、ステップE400の間、回転電機106のステータ相U、V、およびWを短絡する。
【0066】
短絡は、制御ブリッジ108のスイッチングアームの全てのローサイドスイッチの閉鎖を命令することによって実施される。言い換えると、制御ブリッジ108の全てのスイッチングアームは、これらのロー構成にある。
【0067】
次いで、ステップE500の間、測定装置140Uは、ステータ相U内を循環する電流Iuを測定する。
【0068】
ステップE600の間、測定電流Iuは、制御回路120によってゼロ値と比較される。
【0069】
電流Iuが正である場合、ステップE800の間、電子制御回路は、ステータ相Uに関連付けられたスイッチングアームのハイサイドスイッチの閉鎖およびローサイドスイッチの開放を命令する。
【0070】
そうでなければ(Iuが負またはゼロ)、ステップE700の間、電子制御回路は、ステータ相Uに関連付けられたスイッチングアームのハイサイドスイッチの開放およびローサイドスイッチの閉鎖を命令する。
【0071】
ステップE500、E600、E700、E800と同時に、方法は、本明細書に記載される実施形態において、ステップE510、E610、E710、E810、E910を実行する。
【0072】
ステップE510の間、測定装置140Vは、ステータ相V内を循環する電流IVを測定する。
【0073】
ステップE610の間、測定電流IVは、制御回路120によってゼロ値と比較される。
【0074】
電流IVが正である場合、ステップE810の間、電子制御回路は、ステータ相Vに関連付けられたスイッチングアームのハイサイドスイッチの閉鎖およびローサイドスイッチの開放を命令する。
【0075】
そうでなければ(IVが負またはゼロ)、ステップE710の間、電子制御回路は、ステータ相Vに関連付けられたスイッチングアームのハイサイドスイッチの開放およびローサイドスイッチの閉鎖を命令する。
【0076】
ステップE500、E600、E700、E800、およびE510、E610、E710、E810と同時に、方法は、本明細書に記載される実施形態において、ステップE520、E620、E720、E820、E920を実行する。
【0077】
ステップE520の間、測定装置140Wは、ステータ相W内を循環する電流IWを測定する。
【0078】
ステップE620の間、測定電流IWは、制御回路120によってゼロ値と比較される。
【0079】
電流IWが正である場合、ステップE820の間、電子制御回路は、ステータ相Wに関連付けられたスイッチングアームのハイサイドスイッチの閉鎖およびローサイドスイッチの開放を命令する。
【0080】
そうでなければ(IWが負またはゼロ)、ステップE720の間、電子制御回路は、ステータ相Wに関連付けられたスイッチングアームのハイサイドスイッチの開放およびローサイドスイッチの閉鎖を命令する。
【0081】
ステップE700、E710、E720またはステップE800、E810、E820の後、電圧測定装置130は、ステップE900の間、高端子BHOSと低端子BHOSとの間の電圧V*を測定し、この測定された電圧を制御回路120に送信する。
【0082】
ステップE1000の間、測定電圧V*は、制御回路120によって第2の所定値VS2、例えば54Vと比較される。
【0083】
測定電圧V*が第2の所定値VS2を上回る場合、制御システムは、並列ステップE500~E800、E510~E810、E520~E820、およびE900を繰り返す。
【0084】
測定電圧V*が第2の所定値VS2を下回る場合、制御方法は停止する(ステップF)。
【0085】
[
図3]は、相Uの巻線内で測定された電流I
uの変化のグラフを示し、ステータ相Uに関連付けられたスイッチングアームのハイサイドスイッチが閉じている期間を示している。
【0086】
本発明による制御方法の前述の実施形態では、測定電圧V*が第2の所定値VS2を上回る限り、ステップE500~E800、E510~E810、E520~E820、およびE900は定期的に実行される。代替実施形態では、ステップE500~E800、E510~E810、E520~E820、およびE900は、例えば40msの所定の時間間隔DTの間、定期的に実行される。
【0087】
本発明による制御方法の前述の実施形態では、ステップE500~E800、E510~E810、E520~E820は、ステータの全ての相で同時に実行される。代替実施形態として、ステップE500~E800のみが実行される。言い換えると、この代替実施形態では、相Uの巻線内で測定された電流Iuの強度だけが制御方法によって考慮される。
【0088】
当然ながら、本発明は、図面を参照して記載された実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく代替の実施形態が想定され得る。
【0089】
例えば、上述の実施形態では、トランジスタは全てMOSFETトランジスタである。代替実施形態として、これらのトランジスタは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)であってもよい。