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特許7233580多数のアンテナを選択的に使用する制御装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特許-多数のアンテナを選択的に使用する制御装置、制御方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】多数のアンテナを選択的に使用する制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/54 20230101AFI20230227BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20230227BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20230227BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20230227BHJP
【FI】
H04W72/54
H04W88/08
H04W74/08
H04W16/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022017189
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2019204826の分割
【原出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2022065023
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅秋
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩輔
【審査官】米倉 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-151369(JP,A)
【文献】特開2008-48086(JP,A)
【文献】特開2019-4315(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173163(WO,A1)
【文献】Ericsson, Sony,Verification of beam correspondence during initital access,3GPP TSG RAN WG4 #92 R4-1908719,2019年08月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと接続され、前記複数のアンテナの少なくともいずれかを使用して端末装置との間でユーザデータの通信を行う制御装置であって、
前記端末装置から前記制御装置との接続を確立するために送信されたランダムアクセスプリアンブルの、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信タイミング及び受信電力を含んだ受信状態を特定する特定手段と、
前記複数のアンテナの中から、前記端末装置との間でユーザデータの通信を行う際に使用するアンテナとして、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記受信タイミングの差が所定値以内となるアンテナを選択すると共に、当該受信タイミングの差が所定値以内のアンテナが所定数以上存在する場合に、当該所定数以上のアンテナのうちの前記受信電力の高い方から所定数のアンテナを選択する選択手段と、
選択されたアンテナを用いて前記端末装置との間でユーザデータの通信を行うように制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
複数のアンテナと接続され、前記複数のアンテナの少なくともいずれかを使用して端末装置との間でユーザデータの通信を行う制御装置であって、
前記端末装置から前記制御装置との接続を確立するために送信されたランダムアクセスプリアンブルの、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信タイミングを含んだ受信状態を特定する特定手段と、
前記複数のアンテナの中から、前記端末装置との間でユーザデータの通信を行う際に使用するアンテナとして、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記受信タイミングの差が所定値以内となるアンテナを選択すると共に、当該受信タイミングの差が所定値以内のアンテナが所定数以上存在する場合に、当該所定数以上のアンテナのうちの前記受信タイミングが小さい方から所定数のアンテナを選択する選択手段と、
選択されたアンテナを用いて前記端末装置との間でユーザデータの通信を行うように制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
他の制御装置に接続された複数の第2のアンテナにおける前記ランダムアクセスプリアンブルの受信状態を示す情報を当該他の制御装置から取得する第1の取得手段をさらに有し、
前記選択手段は、前記複数のアンテナにおける受信状態と前記複数の第2のアンテナにおける受信状態とに基づいて、前記複数のアンテナと前記複数の第2のアンテナの中から、前記端末装置との間でユーザデータの通信を行う際に使用するアンテナを選択し、
前記制御装置は、前記複数の第2のアンテナの中から選択されたアンテナを、前記他の制御装置に通知する第1の通知手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ランダムアクセスプリアンブルの検出を可能とするための第1のパラメータを前記他の制御装置に通知する第2の通知手段をさらに有し、
前記第1の取得手段は、前記他の制御装置が前記第1のパラメータに基づいて特定した、前記複数の第2のアンテナにおける受信状態を示す情報を取得する、ことを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記特定手段は、他の制御装置との接続を確立するために他の端末装置から送信された第2のランダムアクセスプリアンブルの、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信状態を特定し、
前記制御装置は、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記第2のランダムアクセスプリアンブルの受信状態を示す情報を前記他の制御装置へ通知する第3の通知手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第2のランダムアクセスプリアンブルの検出を可能とするための第2のパラメータを前記他の制御装置から取得する第2の取得手段をさらに有し、
前記特定手段は、当該第2のパラメータに基づいて、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記第2のランダムアクセスプリアンブルの受信状態を特定する、ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記第2のランダムアクセスプリアンブルの受信状態に基づいて前記複数のアンテナの中から前記他の制御装置によって選択されたアンテナを示す情報を、当該他の制御装置から取得する第3の取得手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は基地局装置である、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
複数のアンテナと接続され、前記複数のアンテナの少なくともいずれかを使用して端末装置との間でユーザデータの通信を行う制御装置によって実行される制御方法であって、
前記端末装置から前記制御装置との接続を確立するために送信されたランダムアクセスプリアンブルの、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信タイミング及び受信電力を含んだ受信状態を特定することと、
前記複数のアンテナの中から、前記端末装置との間でユーザデータの通信を行う際に使用するアンテナとして、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記受信タイミングの差が所定値以内となるアンテナを選択すると共に、当該受信タイミングの差が所定値以内のアンテナが所定数以上存在する場合に、当該所定数以上のアンテナのうちの前記受信電力の高い方から所定数のアンテナを選択することと、
選択されたアンテナを用いて前記端末装置との間でユーザデータの通信を行うように制御を行うことと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
複数のアンテナと接続され、前記複数のアンテナの少なくともいずれかを使用して端末装置との間でユーザデータの通信を行う制御装置によって実行される制御方法であって、
前記端末装置から前記制御装置との接続を確立するために送信されたランダムアクセスプリアンブルの、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信タイミングを含んだ受信状態を特定することと、
前記複数のアンテナの中から、前記端末装置との間でユーザデータの通信を行う際に使用するアンテナとして、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記受信タイミングの差が所定値以内となるアンテナを選択すると共に、当該受信タイミングの差が所定値以内のアンテナが所定数以上存在する場合に、当該所定数以上のアンテナのうちの前記受信タイミングが小さい方から所定数のアンテナを選択することと、
選択されたアンテナを用いて前記端末装置との間でユーザデータの通信を行うように制御を行うことと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
複数のアンテナと接続され、前記複数のアンテナの少なくともいずれかを使用して端末装置との間でユーザデータの通信を行う制御装置に備えられたコンピュータに、
前記端末装置から前記制御装置との接続を確立するために送信されたランダムアクセスプリアンブルの、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信タイミング及び受信電力を含んだ受信状態を特定させ、
前記複数のアンテナの中から、前記端末装置との間でユーザデータの通信を行う際に使用するアンテナとして、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記受信タイミングの差が所定値以内となるアンテナを選択すると共に、当該受信タイミングの差が所定値以内のアンテナが所定数以上存在する場合に、当該所定数以上のアンテナのうちの前記受信電力の高い方から所定数のアンテナを選択させ、
選択されたアンテナを用いて前記端末装置との間でユーザデータの通信を行うように制御を行わせる、
ためのプログラム。
【請求項12】
複数のアンテナと接続され、前記複数のアンテナの少なくともいずれかを使用して端末装置との間でユーザデータの通信を行う制御装置に備えられたコンピュータに
前記端末装置から前記制御装置との接続を確立するために送信されたランダムアクセスプリアンブルの、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信タイミングを含んだ受信状態を特定させ、
前記複数のアンテナの中から、前記端末装置との間でユーザデータの通信を行う際に使用するアンテナとして、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記受信タイミングの差が所定値以内となるアンテナを選択すると共に、当該受信タイミングの差が所定値以内のアンテナが所定数以上存在する場合に、当該所定数以上のアンテナのうちの前記受信タイミングが小さい方から所定数のアンテナを選択させ、
選択されたアンテナを用いて前記端末装置との間でユーザデータの通信を行うように制御を行わせる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における接続制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のアンテナを高密度に配置し、その多数のアンテナの一部を使用して端末装置と通信を行う技術が検討されている。これによれば、端末装置ごとに使用するアンテナが異ならせることにより、端末装置ごとに仮想的にセルが構成され、端末装置は概ねその仮想的なセルの中心に存在することとなる(非特許文献1参照)。このような技術によれば、端末装置は、その位置によらずに均一な通信品質を得ることができるようになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】M. Karlsson等、「Techniques for System Information Broadcast in Cell-Free Massive MIMO」、IEEE Transaction on Communication、2019年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような高密度にアンテナが配置されてその少なくともいずれかを選択的に使用するシステムにおいて、端末装置が基地局装置との間で通信を行うために、どのような手順で接続するかについては、何ら定められていない。このため、効率的に基地局装置と端末装置とが接続する手順の策定が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基地局装置と端末装置との通信のために多数のアンテナの一部が選択されて使用されるシステムにおける、基地局装置と端末装置との効率的な接続確立を可能とする技術を提供する。
【0006】
本発明の一態様による制御装置は、複数のアンテナと接続され、前記複数のアンテナの少なくともいずれかを使用して端末装置との間でユーザデータの通信を行う制御装置であって、前記端末装置から前記制御装置との接続を確立するために送信されたランダムアクセスプリアンブルの、前記複数のアンテナのそれぞれにおける受信タイミング及び受信電力を含んだ受信状態を特定する特定手段と、前記複数のアンテナの中から、前記端末装置との間でユーザデータの通信を行う際に使用するアンテナとして、前記複数のアンテナのそれぞれにおける前記受信タイミングの差が所定値以内となるアンテナを選択すると共に、当該受信タイミングの差が所定値以内のアンテナが所定数以上存在する場合に、当該所定数以上のアンテナのうちの前記受信電力の高い方から所定数のアンテナを選択する選択手段と、選択されたアンテナを用いて前記端末装置との間でユーザデータの通信を行うように制御を行う制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基地局装置と端末装置との通信のために多数のアンテナの一部が選択されて使用されるシステムにおいて、基地局装置と端末装置との接続を効率的に確立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】制御装置の機能構成例を示す図である。
図4】無線通信システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(システム構成)
図1に、本実施形態の無線通信システムの構成例を示す。図1に示すように、本実施形態に係る無線通信システムは、多数のアンテナが面的に高密度に配置され、それらのアンテナが、それぞれ、基地局装置等の制御装置101に、例えば光ファイバ等を用いて接続される。制御装置101は、少なくとも1つのアンテナを介して端末装置102と接続して通信を行う。なお、図1では、説明を簡単にするために少数の制御装置101及び端末装置102のみを示しているが、これらの装置は図1に示すより当然に多く存在しうる。
【0011】
なお、以下では、アンテナが分散配置され、制御装置に接続されているものとして説明するが、アンテナのみが高密度に配置されてもよいし、RF(無線周波数)のフィルタ等のRF処理機能を含んだアンテナユニットが高密度に配置されてもよい。制御装置101は、アンテナ側で行われる処理以外の通信の処理を実行する。すなわち、受信した信号に関するベースバンド処理や、その後の上位レイヤにおける信号処理等は、制御装置101によって行われる。図1のように、非常に多くのアンテナを用いたシステムを構築する際には、演算負荷等を考慮して、複数の制御装置101がそれぞれ複数のアンテナと接続され、信号の送受信を行うことが想定される。なお、このシステムは、従来のCentralized Radio Access Network(C-RAN)を応用して構成することができ、各アンテナは、C-RANのTransmission/Reception Point(TRP)に対応し、制御装置101は、C-RANのBaseband Unit(BBU)に対応しうる。
【0012】
端末装置102は、近傍に存在するアンテナを介していずれかの制御装置101と接続して通信を行う。制御装置101は、端末装置102と接続が確立した状態において、自装置と接続されているアンテナの少なくとも一部を用いて、端末装置102と通信を行う。このとき、2つ以上の制御装置101が、並行して、端末装置102と接続を確立して通信を行うことができる。これにより、1つ以上の制御装置101が、端末装置102を中心とした仮想的なエリア(ユーザセントリックエリアと呼ばれることもある。)を構成し、端末装置102の位置によらずに、高品質かつ安定性の高い通信サービスを提供することができる。
【0013】
これに対して、このような多数のアンテナが用いられるシステムにおける接続の開始時の処理については何ら検討されていない。本実施形態では、このような状況に鑑み、端末装置102が、1つ以上の制御装置101と初期接続を行う際の手法を提供する。特に、図1のようなシステムでは、1つ以上の制御装置101が、1つ以上の端末装置102のそれぞれに対して、使用するアンテナを適切に設定することが必要となる。このため、本実施形態では、制御装置101が、端末装置102との通信のために使用するアンテナを選択する手法について説明する。なお、以下では、端末装置102が、従来のランダムアクセス手順を用いて、制御装置101と接続を確立するものとする。また、ランダムアクセス手順のことをRACHと呼ぶ場合がある。
【0014】
まず、1つの制御装置101によって端末装置102を中心とした仮想エリアを形成することができる場合について検討する。この場合、端末装置102は、その1つの制御装置101が送出した報知信号によって通知されたパラメータを用いて、(2ステップRACHのメッセージA内の又は4ステップRACHのメッセージ1としての)ランダムアクセスプリアンブルを送信する。そして、その1つの制御装置101が、接続されているアンテナのそれぞれで検出した無線信号を合成して、合成した無線信号に基づいてランダムアクセスプリアンブルの検出を行う。なお、ランダムアクセスプリアンブルの検出処理は、そのランダムアクセスプリアンブルの送信に用いられた系列と、合成された無線信号との相関検出によって実行されうる。そして、その制御装置101は、そのランダムアクセスプリアンブルの検出に成功したことに基づいて、RACH処理のその後の手続きを実行する。これにより、その制御装置101と、端末装置102との間の接続が確立される。その後、例えば、端末装置102が、サウンディング参照信号(SRS)を送信し、制御装置101は、接続されている各アンテナにおけるそのSRSの受信電力を測定する。そして、制御装置101は、例えば、接続されているアンテナの中から、(1)SRSの受信電力の大きい方から所定数のアンテナ、(2)SRSの受信電力が所定値以上のアンテナ、(3)最もSRSの受信電力が大きいアンテナと、そのアンテナにおけるSRSの受信タイミングからのSRSのタイミング差が所定値以下のアンテナ、などの基準を満たすアンテナを、端末装置102との通信に使用するアンテナとして決定しうる。(1)及び(2)の基準によれば、端末装置102との間で良好な無線品質を得ることができるアンテナが選択される。また、(3)の基準によれば、端末装置102の位置と十分近い位置に配置されたアンテナと、そのアンテナからの距離が一定範囲内であることが想定されるアンテナが選択される。
【0015】
また、複数の制御装置101が協働して、端末装置102を中心とした仮想エリアを形成する場合、端末装置102は、まず、その複数の制御装置101のうちの1つの制御装置101との間で接続を確立する。このため、端末装置102は、その1つの制御装置101が送出した報知信号によって通知されたパラメータを用いて、ランダムアクセスプリアンブルを送信し、その1つの制御装置101との接続を確立する。そして、その1つの制御装置101は、周囲の他制御装置に対して、端末装置102との接続が確立されたことを通知し、その端末装置102からのSRSを測定させる。そして、他制御装置に接続された各アンテナで測定した結果が制御装置101に通知され、制御装置101は、上述の(1)~(3)の基準によって、端末装置102との接続に使用するアンテナを選択しうる。選択されたアンテナは、そのアンテナに接続された他制御装置へ通知される。また、この場合、端末装置102との通信のために使用されるパラメータが、制御装置101から他制御装置へ通知されうる。このようにして、端末装置102ごとに、使用されるアンテナがSRSを用いて適切に設定されうる。
【0016】
一方で、上述の手法においては、接続が確立されてから使用するアンテナを決定する。このため、接続後、ユーザデータの通信が開始可能となるまでに一定の時間がかかってしまう。また、特に端末装置102が複数の制御装置101と接続するような状況である場合、端末装置102が、接続処理を1つの制御装置101との間で実行する際には、別の制御装置101と接続されているアンテナが、その接続処理には使用されない。このため、接続処理中に使用可能なアンテナが限定され、結果として、ランダムアクセスプリアンブルの検出に時間がかかってしまう場合がありうる。
【0017】
このため、ユーザデータの通信の開始を高速化するために、制御装置101が、端末装置102によって送信されたランダムアクセスプリアンブルを、アンテナ選択のために使用可能とする。制御装置101は、接続されている各アンテナにおいて、ランダムアクセスプリアンブルの検出動作を行う際に、アンテナごとに、その受信電力の検出をも行う。例えば、制御装置101は、それぞれのアンテナによって検出された無線信号を合成せずに、それぞれの無線信号によってランダムアクセスプリアンブルの検出処理を実行し、その際の受信電力を特定する。これにより、制御装置101は、自装置に接続されているアンテナのそれぞれにおいて、どの程度の強度で、また、どのタイミングで、端末装置102からの無線信号が受信されるかなどのランダムアクセスプリアンブルの受信状態を特定することができる。その結果、制御装置101は、上述の(1)~(3)の基準などに従って、RACH処理の間に、端末装置102とのユーザデータの通信で使用すべきアンテナを選択することができる。すなわち、制御装置101は、例えば、接続されているアンテナの中から、(1)ランダムアクセスプリアンブルの受信電力の大きい方から所定数のアンテナ、(2)ランダムアクセスプリアンブルの受信電力が所定値以上のアンテナ、(3)最もランダムアクセスプリアンブルの受信電力が大きいアンテナと、そのアンテナにおけるランダムアクセスプリアンブルの受信タイミングからのランダムアクセスプリアンブルのタイミング差が所定値以下のアンテナ、などの基準を満たすアンテナを、端末装置102との通信に使用するアンテナとして決定しうる。
【0018】
また、必要に応じて、制御装置101は、他制御装置に対して、端末装置102からのランダムアクセスプリアンブルを検出可能とするための情報を提供し、その他制御装置に接続されたアンテナによってランダムアクセスプリアンブルを検出できるようにする。ここで、ランダムアクセスプリアンブルを検出可能とするための情報は、端末装置102が各制御装置(基地局装置)へ送信するランダムアクセスプリアンブルを生成する際に用いる情報である。ランダムアクセスプリアンブルを検出可能とするための情報は、例えば、ランダムアクセスプリアンブルで使用される系列を生成するための種の情報や、ランダムアクセスプリアンブルを送信する際に使用される時間・周波数リソースを指定する情報を含む。この情報を受け取った制御装置は、その情報に基づいて、例えば、ランダムアクセスプリアンブルを待ち受けるべき時間・周波数リソースを特定し、種の情報に基づいて生成した系列に基づいて、ランダムアクセスプリアンブルの検出を実行する。そして、制御装置101は、他制御装置に接続されているアンテナにおけるランダムアクセスプリアンブルの検出結果を、その他制御装置から取得する。そして、制御装置101は、自装置におけるランダムアクセスプリアンブルの検出結果と、他制御装置におけるランダムアクセスプリアンブルの検出結果とに基づいて、上述の(1)~(3)の基準などに従って、端末装置102とのユーザデータの通信で称すべきアンテナを、自装置に接続されているアンテナと他制御装置に接続されているアンテナとの中から選択する。そして、制御装置101は、他制御装置に接続されているアンテナを使用すると決定した場合、その他制御装置へ、ユーザデータの通信に使用される上位レイヤの通信パラメータ等を通知してもよい。ここでは、例えば、選択されたアンテナを識別する識別情報が、他制御装置へ通知される。また、どの端末装置102との通信のためにその選択されたアンテナを使用するかを特定可能とするために、ランダムアクセスプリアンブルを特定するプリアンブルIDも併せて通知されてもよい。また、制御装置101と他制御装置は、さらなる上位装置の制御の下で、ユーザデータの送受信を行ってもよい。また、これら以外の、アンテナが選択された後の処理方法が適用されてもよい。
【0019】
さらに、制御装置101は、必要に応じて、他制御装置から、その他制御装置との接続制御を行う際に用いられるランダムアクセスプリアンブルを検出可能とするための情報を取得して、そのランダムアクセスプリアンブルを検出できるようにしうる。そして、制御装置101は、受信した情報に基づいて、自装置に接続されているアンテナごとに、端末装置102が他制御装置との接続処理のために送信したランダムアクセスプリアンブルの検出処理を行い、その受信電力や受信タイミングの情報を、ランダムアクセスプリアンブルを検出可能とするための情報の送信元の他制御装置へ送信する。その後、他制御装置が、端末装置102とのユーザデータの送受信に使用するアンテナを決定し、必要に応じて、制御装置101へ、決定の結果を通知する。ここでも、例えば、選択されたアンテナの識別情報と、必要に応じてランダムアクセスプリアンブルのプリアンブルIDとが通知される。制御装置101は、自装置に接続されているアンテナのいずれかが、端末装置102とのユーザデータの送受信に使用されると決定された場合、そのアンテナを用いて、その端末装置102とのユーザデータの送受信を実行する。
【0020】
(装置構成)
続いて、上述のような処理を実行する制御装置の構成について説明する。なお、端末装置は、従来のRACH処理を実行する端末装置と同様であるため、ここでの説明については省略する。図2に、制御装置のハードウェア構成例を示す。制御装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を有する。制御装置では、例えばROM202、RAM203及び記憶装置204のいずれかに記録された、上述のような制御装置の各機能を実現するコンピュータが可読のプログラムがプロセッサ201により実行される。なお、プロセッサ201は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。
【0021】
制御装置は、例えばプロセッサ201により通信回路205を制御して、相手装置(例えば、端末装置、他制御装置、上位ノード等)との間の通信を行う。なお、図2では、制御装置は、1つの通信回路205を有するような概略図を示しているが、これに限られない。例えば、制御装置は、端末装置との通信用の通信装置と、他制御装置や上位ノードとの通信用の通信装置とを有してもよい。
【0022】
図3に、制御装置の機能構成例を示す。図3に示される機能は、例えば制御装置のプロセッサ201が、ROM202、RAM203、記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することによって実現される。なお、制御装置は、後述の機能の少なくともいずれかに対応するハードウェアを有してもよい。なお、図3は、制御装置の機能のうち、本実施形態に特に関連する機能部を選択的に示したものであり、制御装置は、一般的な基地局装置の機能等を当然に有しうる。
【0023】
制御装置は、複数のアンテナ301と接続されており、その複数のアンテナ301のそれぞれにおいて受信した無線信号に対して、それぞれランダムアクセスプリアンブルの検出処理及び受信電力・受信タイミングの測定を実行するプリアンブル処理部302を有する。プリアンブル処理部302は、端末装置が制御装置と接続を確立する際に用いるランダムアクセスプリアンブルの生成用の種や、ランダムアクセスプリアンブルが送信されるべき時間・周波数リソース等の、ランダムアクセスプリアンブルに関連するパラメータを使用して、ランダムアクセスプリアンブルの検出処理等を実行する。一例において、プリアンブル処理部302は、パラメータで指定される時間・周波数リソースにおいて、パラメータに基づいて特定された系列を用いた相関検出を実行することにより、ランダムアクセスプリアンブルの検出及び受信電力の特定を実行する。なお、パラメータは、プリアンブルパラメータ保持部303に保持される。
【0024】
プリアンブル処理部302によって特定された、複数のアンテナ301のそれぞれにおけるランダムアクセスプリアンブルの受信電力や受信タイミングは、アンテナ選択部304に入力される。アンテナ選択部304は、一例において、ランダムアクセスプリアンブルの受信電力が高い方から所定数のアンテナを複数のアンテナ301の中から選択する。また、アンテナ選択部304は、ランダムアクセスプリアンブルの受信電力が所定値以上のアンテナを複数のアンテナ301の中から選択する。なお、ランダムアクセスプリアンブルの受信電力が所定値以上のアンテナが所定数以上存在する場合は、その中から所定数のアンテナが選択されうる。また、アンテナ選択部304は、ランダムアクセスプリアンブルの受信電力が最大の又は受信電力が所定値を超えるアンテナを1つ選択し、そのアンテナにおけるランダムアクセスプリアンブルの受信タイミングt1を特定する。そして、アンテナ選択部304は、他のアンテナにおけるランダムアクセスプリアンブルの受信タイミングt2を特定し、|t1-t2|の大きさ(|x|は値xの絶対値)が所定値以下であるアンテナを、さらに選択する。なお、受信タイミング差が所定値以内のアンテナが所定数以上存在する場合は、その中から、例えばランダムアクセスプリアンブルの受信電力が高い順に所定数のアンテナが選択されてもよい。また、受信タイミング差が所定値以下のアンテナが所定数以上存在する場合に、受信タイミング差が小さい順に所定数のアンテナが選択されるようにしてもよい。なお、これらの選択基準は一例であるが、端末装置が一定距離移動したとしても、十分な無線品質での通信を行うことができるように、アンテナが選択されうる。選択結果は、アンテナ制御部305へ入力される。
【0025】
アンテナ制御部305は、アンテナ選択部304によって選択されたアンテナを使ってユーザデータの通信を行うように、複数のアンテナ301の少なくとも一部を使用して、他のアンテナを使用しないように制御を行う。そして、ユーザデータ送受信部306は、このアンテナ制御部305によるアンテナの制御の下で、使用すると選択されたアンテナを用いて端末装置との間でユーザデータの通信を行う。
【0026】
このような構成によれば、ランダムアクセスプリアンブルの検出と並行して、ユーザデータの通信に使用すべきアンテナの選択が行われるため、端末装置と制御装置との接続が確立された直後に、ユーザデータの通信を行うことができるようになる。
【0027】
なお、制御装置は、例えば、パラメータ通知部307、検出結果取得部308、及び、選択結果通知部309を有してもよい。パラメータ通知部307は、他の制御装置へ、ランダムアクセスプリアンブルのパラメータを通知する。一般に、他の制御装置は、隣接関係にある制御装置と端末装置が接続する際に使用すべきランダムアクセスプリアンブルの情報を有しない。このため、その端末装置が送信したランダムアクセスプリアンブルの検出、受信電力の特定、受信タイミングの特定等を行うことができない。そして、そのような処理を行うことができない場合、上述のようにしてユーザデータの通信を行う際に使用すべきアンテナの選択を行うこともできないこととなる。これに対して、パラメータ通知部307がパラメータを通知し、制御装置宛てのランダムアクセスプリアンブルの検出等の処理を他の制御装置が行うことを可能とする。このパラメータは、例えば、各端末装置に報知信号によって通知されるパラメータと同様のパラメータであり、ランダムアクセスプリアンブルの系列の種、ランダムアクセスプリアンブルの送信用の時間・周波数リソースを特定する情報等を含みうる。検出結果取得部308は、他の制御装置から、通知したパラメータに基づくランダムアクセスプリアンブルの検出結果(受信電力や受信タイミング)の情報を取得し、取得した情報をアンテナ選択部304に入力する。ここで取得される情報は、例えば、アンテナ識別子と検出結果とを関連付けた情報である。また、この情報には、さらに、検出結果が得られた際に用いられたプリアンブルのIDが関連付けられうる。これにより、この情報がどの端末装置に関するものであるかが特定可能となる。
【0028】
アンテナ選択部304は、プリアンブル処理部302によるプリアンブルの検出結果と、この取得された情報とに基づいて、端末装置のユーザデータの通信のために使用するアンテナを決定する。例えば、他の制御装置に接続されているアンテナにおいて、所定電力以上の電力でランダムアクセスプリアンブルが受信されていた場合に、そのアンテナを使用すると決定する。そして、選択結果通知部309は、他の制御装置に接続されているアンテナが選択された場合に、その選択されたアンテナを示す情報を、そのアンテナが接続されている他の制御装置へ通知する。このとき通知される情報は、例えばプリアンブルのIDとアンテナの識別情報とを関連付けた情報でありうる。
【0029】
なお、パラメータ通知部307は、例えば制御装置間で隣接関係が設定され、いずれかの隣接セルリストに他方が登録された際に、一度だけ、パラメータを他の制御装置に通知するようにしてもよい。また、パラメータ通知部307は、パラメータに変更がある度にパラメータを他の制御装置に通知してもよい。なお、各制御装置におけるパラメータが、上位装置等の他の装置によって他の制御装置に通知されてもよく、この場合、制御装置は、パラメータ通知部307を有さずに、他の制御装置における検出結果を取得するようにしてもよい。
【0030】
また、制御装置は、上述の他の制御装置として動作しうる。このため、制御装置は、例えば、パラメータ取得部310、検出結果通知部311、及び選択結果取得部312を有してもよい。パラメータ取得部310は、他制御装置のパラメータ通知部307から、又は、上位装置等の他の装置から、その他制御装置と端末装置が接続を確立する際に使用されるランダムアクセスプリアンブルに関するパラメータを取得する。そして、プリアンブル処理部302は、そのパラメータを用いて、端末装置からのランダムアクセスプリアンブルの検出処理等を実行し、検出結果通知部311が、その処理の結果を他制御装置へ通知する。その後、選択結果取得部312が、他制御装置から、選択されたアンテナに関する情報を取得して、その後、端末装置のユーザデータの通信の際に、選択されたアンテナを使用するようにする。これにより、複数の制御装置が協働して端末装置と通信する際に、適切に使用すべきアンテナを選択することができる。
【0031】
(処理の流れ)
続いて、図4を用いて、本実施形態に係る無線通信システムで実行される処理の流れの例について概説する。なお、各動作における詳細について、上述したものについては説明を省略する場合がある。ここでは、図1に示すように、1つの端末装置と2つの制御装置が存在する場合について説明する。2つの制御装置(制御装置A及び制御装置B)は、それぞれ、多数のアンテナに接続されており、そのアンテナの少なくともいずれかを介して、端末装置と通信可能に構成される。また、2つの制御装置は、それぞれ、上述のような制御装置の機能を有するものとする。ここでは、端末装置は、制御装置Aからの報知信号を受信しており、制御装置Aとの接続確立を試行するものとする。なお、制御装置Aは、RACH処理において、端末装置からのランダムアクセスプリアンブルに対して応答メッセージを端末装置へ送信する等の処理を実行するが、ここでは、発明の説明に直接関係しないため、これらの処理については省略する。
【0032】
本処理では、例えば、制御装置Aが、制御装置Bとの隣接関係が設定されたこと等に応じて、制御装置Aとの接続確立の際のランダムアクセスプリアンブルに関するパラメータを、制御装置Bへ通知する(S401)。制御装置Bは、このパラメータを受信すると、受信したパラメータに基づいてランダムアクセスプリアンブルの到来を待ち受ける。一方、端末装置は、制御装置Aとの接続を確立するために、ランダムアクセスプリアンブルを送信する(S402)。制御装置Aと制御装置Bは、接続されている複数のアンテナのそれぞれについて、このランダムアクセスプリアンブルの検出及び受信電力や受信タイミング等の特定処理を実行する(S403、S404)。なお、制御装置Bは、S401で受信したパラメータを用いることにより、端末装置が送信したランダムアクセスプリアンブルの検出を行うことができる。その後、制御装置Bは、ランダムアクセスプリアンブルの受信電力や受信タイミングの特定結果を、制御装置Aへ通知する(S405)。制御装置Bは、各アンテナの識別情報と、特定した受信電力や受信タイミング(及び、必要に応じて、プリアンブルID等の端末装置を特定可能な情報)とを関連付けた情報を、制御装置Aへ通知する。その後、制御装置Aは、自装置に接続されたアンテナのそれぞれについての、ランダムアクセスプリアンブルの受信電力や受信タイミングと、制御装置Bに接続されたアンテナのそれぞれについての、ランダムアクセスプリアンブルの受信電力や受信タイミングとに基づいて、端末装置とのユーザデータの通信に使用するアンテナを選択する(S406)。この選択基準は、例えば上述のようにして実行されるが、ここでは説明を繰り返さない。制御装置Aは、制御装置Bに接続されたアンテナを選択した場合、そのアンテナが選択されたことを制御装置Bへ通知する(S407)。そして、制御装置A及び制御装置Bは、選択されたアンテナを用いて、端末装置との間でユーザデータの送受信を行う(S408)。
【0033】
このように、本実施形態では、多数のアンテナと接続され、その少なくとも一部を用いて端末装置と通信を行う制御装置が、端末装置から制御装置と接続するために送信されたランダムアクセスプリアンブルを用いて、ユーザデータの通信に使用すべきアンテナを決定する。これにより、接続の確立後、使用すべきアンテナを決定する処理を別途実行する必要がなくなる。このため、端末装置を中心とした仮想エリアを迅速に形成することが可能となり、高信頼なユーザデータの通信を迅速に開始することが可能となる。
【0034】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
図1
図2
図3
図4