(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20230227BHJP
A47K 1/04 20060101ALI20230227BHJP
E03C 1/14 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
E03C1/12 Z
A47K1/04 Z
E03C1/14 A
(21)【出願番号】P 2023504139
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2022040007
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】中島 一彰
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204895(JP,A)
【文献】特開2020-84574(JP,A)
【文献】実開昭52-45529(JP,U)
【文献】特開2021-75890(JP,A)
【文献】特表2015-507113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0237070(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12
A47K 1/04
E03C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口に取り付けられる第1筒状体と、
前記第1筒状体の内側に設けられる第2筒状体と、
前記第2筒状体の内側に設けられる水栓部材と、
を含み、
前記水栓部材は、前記第2筒状体の内側を閉栓することが可能であり、
前記第1筒状体と前記第2筒状体との間には流路が設けられ、
前記第2筒状体は、前記流路と当該第2筒状体の内側の空間とを連通させる開口部を有する、
排水装置。
【請求項2】
前記流路において前記開口部と対向配置される弁と、
前記弁に対して、流路方向と反対方向に向けて抵抗力を付与する抵抗手段と、
をさらに含む、
請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記抵抗手段は、前記弁に対して付勢するバネを有する、
請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項の排水装置と、
底部に前記排水口を備えるボウルと、を含む、
洗面器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排水装置及び洗面器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、オーバーフロー孔が形成されたボウル部と、オーバーフロー孔に連通するオーバーフロー流路が形成されたオーバーフロー部と、を備える洗面器が開示されている。オーバーフロー部は、ボウル部の後方に膨らむように、ボウル部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボウル部にオーバーフロー孔が形成された洗面器は、衛生面の問題、美観性の問題、製造工程上の問題等、種々の問題をかかえている。衛生面の問題は、例えば、オーバーフロー孔から害虫が侵入することによるものである。美観性の問題は、例えば、オーバーフロー部がボウル部の後方において膨らむことによるものである。製造工程上の問題は、オーバーフロー流路のように空洞を有するボウルは排泥製法で製作されることが一般的であるが、排泥製法は工程数が多く、洗面器の重量も大きいことによるものである。また、オーバーフローの機能がない洗面器がすでに設置されている場合、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更しようとすると、洗面器の取り替えを要するといった問題もある。
【0005】
本開示は、上述の種々の問題を解決することが可能な排水装置及び洗面器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る排水装置は、排水口に取り付けられる第1筒状体と、第1筒状体の内側に設けられる第2筒状体と、第2筒状体の内側に設けられる水栓部材と、を含む。水栓部材は、第2筒状体の内側を水栓することが可能である。第1筒状体と第2筒状体との間には流路が設けられている。第2筒状体は、流路と第2筒状体の内側の空間とを連通させる開口部を有する。
【0007】
上記排水装置によると、吐水された状態で第2筒状体の内側が閉栓されたとしても、吐水された水は、第1筒状体と第2筒状体との間に設けられた流路に浸入する。第1筒状体と第2筒状体との間に設けられた流路に浸入した水は、開口部を通って第2筒状体の内側の空間に浸入し、排水口から排出される。このような排水装置を用いると、ボウル部から水が溢れ出すことを抑制でき、オーバーフロー孔が不要となり、上述の種々の問題を解決することが可能となる。また、オーバーフローの機能を有しない既設の洗面器であっても、上記の排水装置を取り付けるだけで、オーバーフローの機能を持たせることが可能となる。
【0008】
上記流路において開口部と対向配置される弁と、弁に対して、流路方向と反対方向に向けて抵抗力を付与する抵抗手段と、をさらに含んでもよい。弁に対して作用する水圧は、ボウルに溜まった水の水位に応じて変化する。吐水が開始された当初は、開口部から第2筒状体の内側に浸入する水量が小さく、ボウル部に水が溜まりやすい。ボウル部に水が溜まり、弁に対して作用する水圧が抵抗力よりも大きくなると、弁が流路方向に移動する。弁が流路方向に移動すると、流路から開口部を通って第2筒状体の内側に水が浸入し、ボウル部から水が溢れ出すことを抑制できる。
【0009】
抵抗手段は、弁に対して付勢するバネを有していてもよい。弁の流路方向側にバネを設けるだけの簡単な構成で、弁に対して、流路方向と反対方向に向けて抵抗力を付与することができる。
【0010】
本開示に係る洗面器は、本開示に係る排水装置と、底部に排水口を備えるボウルと、を含むようにするとよい。ボウル部にオーバーフロー孔が形成されていない洗面器を提供することができるようになり、上述のさまざまな問題を解決することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、上述の種々の問題を解決することが可能な排水装置及び洗面器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本開示の排水装置の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】本開示の排水装置が排水口に取り付けられたときの一例を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下で参照する
図1~
図3において、同一の部材には、同じ符号が付されている。なお、この明細書において、上方向は図面上の上方向、下方向は図面上の下方向を意味する。
【0014】
図1は、本開示の洗面器100の周辺を示す概略図である。洗面器100は、洗面ボウル110と、排水装置1とを含む。洗面ボウル110は、底部に排水口112を有する。排水装置1は、洗面ボウル110が有する排水口112に取り付けられる。吐水ハンドル130が操作されると、吐水管132から水が吐水される。吐水された水は、排水装置1が取り付けられた排水口112から排水される。
【0015】
先ず、
図2を参照して、本開示の排水装置1に含まれる各種部材の形状等について説明する。
図2は、本開示の排水装置1の一例を示す分解斜視図である。
【0016】
排水装置1は、少なくとも、第1筒状体10と、第2筒状体20と、水栓部材30とを含む。本実施の形態では、第2筒状体20と水栓部材30とが別体で構成されているが、第2筒状体20と水栓部材30とが一体で構成されていてもよい。
【0017】
第1筒状体10は、例えばステンレス製の円筒状の部材である。第1筒状体10の径は、排水口112(
図1参照)の径よりも僅かに小さい。第1筒状体10は、円筒軸方向における上方側の端部に、周方向にわたって第1顎部12を有する。
【0018】
第2筒状体20は、例えばステンレス製の円筒状の部材であり、第1筒状体10に内挿される。第2筒状体20は、円筒軸方向における上方側の端部に、周方向にわたって第2顎部22を有する。第2筒状体20は、円筒状の部位に、開口部24を有する。本実施の形態において、第2筒状体20は、円筒部の周方向に2つの開口部24を有するが、開口部24の数は2つに限定されない。
【0019】
水栓部材30は、排水栓32と、軸部34と、捕捉部36とを有する。排水栓32は、例えばステンレス製の円板状の部材である。排水栓32は、第2筒状体20の円筒軸方向における一方の端部側の開口26を閉栓することで、第2筒状体20の径方向内側を閉栓することができる。排水栓32は、下方側の面の中心部に、軸部34を嵌合するための嵌合部(不図示)を有する。
【0020】
軸部34は、例えばステンレス製の直棒状の部材である。軸部34の上方側の端部は、排水栓32に対して直交するように、排水栓32が有する嵌合部に嵌合される。軸部34は、下方側の端部に当接する図示しない機構により、上下方向に移動可能である。軸部34の上下方向への移動に伴って、水栓部材30の全体が上下方向に移動する。
【0021】
捕捉部36は、例えば樹脂製であり、軸部34を中心とする円形状の部材である。捕捉部36は、毛髪やゴミ等が排水管120(後述の
図3参照)に流れ出てしまうことを抑制できるように、多数の孔を有する。捕捉部36は、捕捉部36の外周面と第2筒状体20の内周面との間から毛髪やゴミ等が流れ出ないように、捕捉部36の外周面と第2筒状体20の内周面とが当接しつつ上下に移動可能である。
【0022】
排水装置1は、第1筒状体10に第2筒状体20が内挿され、第2筒状体20の径方向内側に水栓部材30が配置された状態で、排水口112に取り付けられる。ただし、排水口112に排水装置1を取り付けることができれば、特定の取付手順に限定されない。例えば、第1筒状体10を洗面ボウル110の排水口112に取り付けた後、第1筒状体10に第2筒状体20を内挿し、第2筒状体20の径方向内側に水栓部材30を配置させてもよい。また、第2筒状体20が内挿された第1筒状体10を洗面ボウル110の排水口112に取り付けた後、第2筒状体20の径方向内側に水栓部材30を配置させてもよい。いずれの取付手順であっても、排水装置1を、排水口112に容易に取り付けることができる。
【0023】
排水装置1は、さらに、弁40及び抵抗手段50を含んでいてもよい。本実施の形態において、弁40及び抵抗手段50は、第1筒状体10の径方向内側であって、第2筒状体20の径方向外側に設けられる。
【0024】
弁40は、例えばステンレス製の円筒状の部材である。抵抗手段50は、弁40の下方に設けられ、弁40に対して上方に向けて付勢する。抵抗手段50は、例えばバネである。本実施の形態では、抵抗手段50としてコイルバネが採用されている。
【0025】
なお、第1筒状体10、第2筒状体20、排水栓32、軸部34、及び弁40は、ステンレス製に限定されず、他の金属製又は樹脂製等であってもよい。また、捕捉部36は、樹脂製に限定されず、ステンレス等の金属製であってもよい。ただし、第1筒状体10、第2筒状体20、排水栓32、軸部34、弁40、及び捕捉部36は、いずれも、例えば錆びにくく、メンテナンス性に優れた材質であることが好ましい。
【0026】
排水装置1が弁40及び抵抗手段50を含む場合であっても、排水口112への排水装置1の取付手順は、特定の取付手順に限定されない。
【0027】
次に、
図3を参照して、本開示の排水装置1の作用について説明する。
図3は、排水装置1が洗面ボウル110の排水口112に取り付けられたときの一例を示す縦断面図である。この
図3は、水栓部材30については断面図ではなく側面図として示される部分縦断面図である。また、この
図3において、水栓部材30は、二点鎖線で示される第1位置と、実線で示される第2位置との間を移動可能である。
【0028】
洗面ボウル110は、排水口112が排水管120と連通するように配置される。排水装置1が洗面ボウル110の排水口112に取り付けられると、第2筒状体20の開口26と排水管120とが連通する。第2筒状体20の開口26から浸入した水は、第2筒状体20の径方向内側の空間を通って、排水管120に排水される。なお、排水装置1が排水口112に取り付けられた状態において、第1顎部12と排水口112との間は塞がれる。
【0029】
排水口112に排水装置1が取り付けられた状態において、第1筒状体10と第2筒状体20との間に間隙が形成される。この間隙は、水が浸入できる流路60を形成する。第1顎部12と第2顎部22との間の間隙が、流路60への浸入口62である。弁40及び抵抗手段50は、この流路60に配置される。
【0030】
先ず、第1筒状体10、第2筒状体20、及び水栓部材30を含むことによって奏される排水装置1の作用について説明する。弁40及び抵抗手段50を含むことによってさらに奏される排水装置1の作用については後述する。
【0031】
水栓部材30は、上述のとおり、軸部34が上下方向に移動すると、水栓部材30の全体が上下方向に移動する。ただし、第1筒状体10、第2筒状体20、弁40、及び抵抗手段50は、水栓部材30の上下方向への移動にともなって移動しない。
【0032】
水栓部材30が上方に向けて移動すると、第2筒状体20の開口26が開栓される。上述の第1位置では、開口26が開栓されている。開口26が開栓されているとき、吐水管132(
図1参照)から吐水された水は、流路60に流れ込んだ水を除いて、開口26を通って排水管120に排水される。開口26が開栓されているときに開口26を通って排水管120に排水される水の量は、設置場所に応じて異なるが、吐水管132から吐水される水の量よりも大きいことが好ましい。吐水管132から吐水される水の量は、最大吐水量とすることもできるし、所定の設計基準に基づく吐水量とすることもできる。
【0033】
水栓部材30が下方に向けて移動して上述の第2位置に到達すると、開口26が排水栓32によって塞がれ、開口26が閉栓される。開口26が閉栓されているとき、吐水された水は、洗面ボウル110に溜められる。
【0034】
流路60への浸入口62は常に開放されており、開口26が閉栓されていたとしても、吐水された水は、流路60内に浸入する。流路60と第2筒状体20の径方向内側の空間とは、開口部24によって連通している。流路60内に浸入した水は、開口部24を通って、第2筒状体20の径方向内側の空間に流れる。第2筒状体20の径方向内側の空間は排水管120と連通しており、第2筒状体20の径方向内側の空間に流れた水は、排水管120に排水される。開口26が閉栓されているときに流路60内に浸入して排水される水の量は、設置場所における吐水量(例えば最大吐水量)よりも小さい。
【0035】
本開示の排水装置1によると、開口26が閉栓されると、吐水された水を洗面ボウル110に溜めることができる。また、開口26が閉栓されていたとしても、吐水された水が流路60に浸入して排水される。そのため、洗面ボウル110にオーバーフロー孔が設けられていなくとも、洗面ボウル110から水が溢れ出てしまうことを抑制できる。
【0036】
ところで、洗面ボウルにオーバーフロー孔を有する場合、オーバーフロー孔から害虫が侵入するおそれがあり、衛生面において改善の余地がある。また、オーバーフロー孔を有する洗面ボウルは、オーバーフロー孔から浸入した水の流路を確保するために後方が膨らみ、美観に乏しい。特に、ベッセルタイプの場合、美観が要求されるため、洗面ボウルの後方が膨らむことは好ましくなく。また、オーバーフロー孔を有する洗面ボウルは排泥製法で製作されることが一般的であるが、排泥製法は工程数が多く、洗面器の重量も大きいため製造に困難を伴う。本開示の排水装置1を洗面ボウルの排水口に取り付けると、洗面ボウルがオーバーフロー孔を有する必要がないため、洗面ボウルにオーバーフロー孔を有する洗面器がかかえる種々の問題が解決される。上述のとおり、排水装置1は、洗面ボウル110の排水口112に容易に取り付けることができるため、メンテナンス性にも優れ、清潔を保つことができる。また、特に、洗面ボウルがオーバーフロー孔を有していなければ洗面ボウルの後方が膨らむことがないため、ベッセルタイプであっても美観を損なわない。
【0037】
また、例えばオーバーフローの機能がない洗面器がすでに設置されている場合、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更しようとすると、洗面器の取り替えを要する。この点、本開示の排水装置1は、排水口112に取り付けるだけの簡単な構成であり、既設の洗面器に取り付けられている排水装置と容易に取り替えることができる。よって、洗面器を取り替えることなく、オーバーフローの機能がない洗面器を、オーバーフローの機能を有する洗面器に変更することができる。
【0038】
なお、流路60に浸入して排水される水の量は、第1筒状体10と第2筒状体20との間隙の大きさ、開口部24の数、開口部24の大きさ等に応じて決まる。開口26が閉栓されているときに流路60に浸入して排水される水の量は、吐水管132から吐水される水の量に応じて決められる。よって、第1筒状体10と第2筒状体20との間隙の大きさ、開口部24の数、及び開口部24の大きさは、設置場所の吐水量に応じて決められる。
【0039】
次に、弁40及び抵抗手段50を含むことによってさらに奏される排水装置1の作用について説明する。
【0040】
上述のとおり、抵抗手段50は、弁40に対して上方に向けて付勢する。抵抗手段50としてのコイルバネは、流路60内を流れる水の方向と直列に、弁40の下方に配置される。弁40に対する抵抗手段50の付勢方向は、流路60内を流れる水の方向と反対方向である。
【0041】
洗面ボウル110に水が溜まっていないとき、第2筒状体20の開口部24の全部を塞ぐように、弁40が開口部24と対向する。弁40が開口部24の全部を塞ぐように開口部24と対向しているとき、流路60から第2筒状体20の径方向内側の空間に向けた水の流れが滞る。流路60から第2筒状体20の径方向内側の空間に向けた水の流れが滞ると、流路60内に水の流れが発生し難く、流路60内に水が溜まった状態となり、洗面ボウル110に水が溜まりやすい。
【0042】
第2筒状体20の開口26が閉栓された状態で洗面ボウル110に水が溜まると、弁40に対して、下方に向けた荷重が作用する。この荷重は、水圧と言い換えることもできる。弁40は、弁40に対して下方に向けて作用する水圧の大きさに応じて、流路60内を水が流れる方向である下方に向けて移動する。弁40が下方に向けて移動すると、下方に向けた弁40の移動量に応じて、開口部24の開口面積が大きくなる。開口部24が開口されると、流路60内の水は、開口部24を通って第2筒状体20の径方向内側に流れ、排水管120に排水される。
【0043】
弁40に対して作用する水圧は、洗面ボウル110に溜まった水の水位に応じて変化する。洗面ボウル110に水を溜め始めた当初は水位が低いため、弁40に対して作用する水圧が小さく、開口部24の開口面積が小さい。開口部24の開口面積が小さいと、流路60内を流れる水の量が少なく、洗面ボウル110に水が溜まりやすい。洗面ボウル110に溜まった水の水位が高くなると、弁40に対して作用する水圧が大きくなり、開口部24の開口面積が大きくなる。開口部24の開口面積が大きくなると、流路60内を流れる水の量が多くなる。
【0044】
弁40及び抵抗手段50を含む本開示の排水装置1によると、第2筒状体20の開口26を閉栓して吐水が開始された当初は、流路60内を水が流れ難く、洗面ボウル110に水が溜まりやすい。洗面ボウル110に溜まった水の水位が高くなると、流路60内を流れる水量が多くなり、第2筒状体20の開口26が閉栓されていたとしても、洗面ボウル110から水が溢れ出てしまうことを抑制できる。
【0045】
本開示の排水装置1では、上述のとおり、抵抗手段50としてコイルバネを採用している。弁40が円筒状の部材であることから、抵抗手段50としてのコイルバネを弁40の下方に配置するだけの簡単な構成で、弁40に対して上方向に向けて付勢することができる。
【0046】
本開示の排水装置1では、抵抗手段50としてコイルバネを採用したが、抵抗手段50は、弁40に対して付勢する機能を有していればよく、コイルバネに限定されない。また、抵抗手段50は、弁40に対して、流路60内を流れる水の方向と反対方向、すなわち水圧に抗う方向に、力を作用することができればよい。例えば、弁40の上方にコイルバネを設けて、弁40を上方に向けて引っ張る(付勢する)ようにしてもよい。また、弁40に対して下方に向けて作用する水圧する圧力センサと、この圧力センサにより検知された水圧に応じて弁40を移動させる機構及び制御部とを備えるようにしてもよい。
【0047】
本開示の排水装置1では、弁40及び抵抗手段50が流路60に配置されているが、これに限定されない。弁40は、流路60内に生じる水圧に応じて、開口部24を塞ぐ位置と開口部24を開放する位置との間を移動することができればよい。例えば、水圧を受ける部位を流路60内に配置し、この水圧を受ける部位が弁40と一体的に構成されていれば、弁40及び抵抗手段50を、例えば第2筒状体20の径方向内側の空間に配置することができる。
【0048】
また、本開示の排水装置1の取り付け箇所は、洗面ボウル110の排水口112に限定されず、浴槽の排水口、台所のシンクの排水口、及びトイレの水槽に設けられた排水口等に取り付けることもできる。このような場合であっても、洗面ボウル110に本開示の排水装置1が取り付けられた場合と同様の作用効果を奏すると考えられる。
【0049】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記の実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
10 第1筒状体
20 第2筒状体
30 水栓部材
60 流路
24 開口部
40 弁
50 抵抗手段
110 洗面ボウル
【要約】
ボウル部にオーバーフロー孔が形成された洗面器が有する種々の問題を解決することが可能な排水装置及び洗面器を提供する。
排水装置は、排水口112に取り付けられる第1筒状体10と、第1筒状体10の内側に設けられる第2筒状体20と、第2筒状体20に設けられる水栓部材30と、を含む。水栓部材30は、第2筒状体20の開口を閉栓することが可能である。第1筒状体10と第2筒状体20との間には流路60が設けられる。第2筒状体20は、流路60と第2筒状体20の内側の空間とを連通させる開口部24を有する。
【選択図】
図3