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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】スイッチング電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022178185
(22)【出願日】2022-11-07
【審査請求日】2022-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722012235
【氏名又は名称】相馬 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】相馬将太郎
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-79488(JP,A)
【文献】特開2022-17179(JP,A)
【文献】特開2014-180110(JP,A)
【文献】特開2010-178411(JP,A)
【文献】米国特許第6882548(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/32731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻き線と二次巻き線を有するトランスと
前記トランスを駆動するドライバスイッチと
前記ドライバスイッチがオフになった際の一次側スイッチノードをクランプするアクティブクランプスイッチと
クランプエネルギーを放電するバルクコンデンサと
第一の整流器と第二の整流器とタンクコンデンサと出力コンデンサと
出力電圧に応じたフィードバック信号を出力するフィードバック回路と
前記フィードバック信号に応じて前記ドライバスイッチと前記アクティブクランプスイッチを制御する制御回路を有し、

前記バルクコンデンサの正極と負極の一方に前記ドライバスイッチと前記アクティブクランプスイッチの一方を接続し、
前記バルクコンデンサの正極と負極の他方に前記ドライバスイッチと前記アクティブクランプスイッチの他方を接続することで
一次側スイッチノードが前記アクティブクランプスイッチを介してクランプされ、

前記出力コンデンサの正極と負極の一方に前記第一の整流器と前記第二の整流器の一方を接続し、
前記出力コンデンサの正極と負極の他方に前記第一の整流器と前記第二の整流器の他方を接続することで
二次側スイッチノードが前記第一の整流器または前記第二の整流器を介してクランプされ、

前記二次巻き線の一方が前記二次側スイッチノードに接続され、他方が前記タンクコンデンサに接続されることで

出力電圧が、前記バルクコンデンサ電圧×前記二次巻き線の巻き数/前記一次巻き線の巻き数となる
ことを特徴としたスイッチング電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載のタンクコンデンサは
第一のタンクコンデンサと第二のタンクコンデンサの直列接続で構成される直列タンクコンデンサであり、
前記直列タンクコンデンサの正極は前記出力コンデンサの正極に接続され
前記直列タンクコンデンサの負極は前記出力コンデンサの負極に接続され
前記直列タンクコンデンサの中点が前記二次巻き線の他方に接続される
ことを特徴とした請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記制御回路は
前記アクティブクランプスイッチは前記ドライバスイッチがZVSするために十分なエネルギーを前記トランスに蓄えるまでオンするように制御する
ことを特徴とした請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
前記制御回路は
前記アクティブクランプスイッチは前記ドライバスイッチがZVSするために十分なエネルギーを前記トランスに蓄えるまでオンするように制御する
ことを特徴とした請求項2に記載のスイッチング電源回路。
【請求項5】
前記フィードバック回路は前記出力電圧に応じた電圧を有する前記バルクコンデンサの電圧を監視し制御回路に伝達する
ことを特徴とした請求項1乃至4に記載のスイッチング電源回路。
【請求項6】
前記第一の整流器と前記第二の整流器はそれぞれトランジスタである
ことを特徴とした請求項1乃至4に記載のスイッチング電源回路。
【請求項7】
前記スイッチング電源回路は力率改善の機能を有する
ことを特徴とした請求項1乃至4に記載のスイッチング電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブクランプ方式のスイッチング電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なフライバックコンバータには漏れインダクタに蓄積されたエネルギーをRCDスナバで消散するように設計されており、この損失はスイッチング周波数に比例して増大するため、高周波化による小型化の妨げとなっている。また、漏れインダクタによる高周波のスイッチノードのリンギングはノイズの原因となり入力フィルタの小型化の妨げにもなっている。
【0003】
これらの問題を解決するため、アクティブクランプフライバックによるスイッチング電源回路が提案されている(例えば特許文献1,あるいは非特許文献1などを参照)。
【0004】
アクティブクランプフライバックはアクティブクランプスイッチにより、漏れインダクタに蓄積されたエネルギーをクランプ容量に充電し、二次側への電力転送時に放電することで漏れインダクタに蓄積されたエネルギーを消散しないことが一つの特徴である。これにより、漏れインダクタのスイッチング周波数に比例する損失を低減し高周波化することが可能となる。
【0005】
また、スイッチノードはクランプ容量にクランプされるため、リンギングが発生せず、ノイズが低減される効果もある。
【0006】
さらに制御ICの発展によりアクティブクランプスイッチの制御を最適化することで励磁インダクタの逆流電流によるZVS(Zero Voltage Switching)を実現できるようになり、スイッチングに伴う損失とノイズを大幅に低減できるようになった。
【0007】
これらの効果によりトランスの小型化、フィルタの小型化を実現することで小型で高効率、低ノイズのスイッチング電源を構成することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらアクティブクランプフライバックにおいても二次側スイッチングノードは典型的なフライバックコンバータと同一の構成であるため、スイッチノードのリンギングが発生する。
【0009】
図1に典型的なアクティブクランプフライバックの回路図の例を示す。
【0010】
交流電源VACACFから入力される交流電圧をブリッジダイオードBDACFを用いて変換された直流電圧である入力電圧VINACFから、トランスを介して絶縁された2次側へ出力電圧VOUTACFを出力する。制御回路U2ACFは絶縁されたフィードバック信号を制御回路U1ACFへ出力し、フィードバック信号に基づき制御回路U1ACFが駆動スイッチQ1ACF,アクティブクランプスイッチQ2ACFを相補的に動作させることで出力電圧VOUTACFを所望の電圧になるように制御する。入力コンデンサCINACFは入力電圧を保持するためのものである。トランスT1ACFは後述の説明のため理想トランスTrACF、励磁インダクタLmACF、漏れインダクタLrACFで構成されるモデルで表現している。また、一次巻き線:二次巻き線比はNP:NSとする。
【0011】
図2図1のNP:NS=5:1での各電圧、電流波形を示す。図2より二次側スイッチノード電圧LX2ACFの電圧上昇時におけるリンギングの振幅が大きく、例えば20V出力のコンバータの場合、整流ダイオードDACFには100V~150Vの耐圧が要求される。また振幅の大きさとリンギングによるノイズが問題となるため、ノイズ対策部品が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために本発明では以下の構成を備える。
【0013】
一次巻き線と二次巻き線を有する変圧器と
前記変圧器を駆動するドライバスイッチと
前記ドライバスイッチがオフになった際の一次側スイッチノードをクランプするアクティブクランプスイッチと
クランプエネルギーを放電するバルクコンデンサと
第一の整流器と第二の整流器とタンクコンデンサと出力コンデンサと
出力電圧に応じたフィードバック信号を出力するフィードバック回路と
前記フィードバック信号に応じて前記ドライバスイッチと前記アクティブクランプスイッチを制御する制御回路を有し、
一次側スイッチノードは前記バルクコンデンサの正極または負極に前記ドライバスイッチまたは前記アクティブクランプスイッチを介してクランプされ、
二次側スイッチノードは前記出力コンデンサの正極または負極に前記第一の整流器または前記第二の整流器を介してクランプされ、
出力電圧が、前記バルクコンデンサ電圧の前記一次巻き線の巻き数と前記二次巻き線の巻き数の比に応じた電圧となる
ことを特徴としたスイッチング電源回路。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば小型で高効率、低ノイズを実現する広い入力電圧範囲で動作可能な絶縁型スイッチング電源を提供することができる。
【0015】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】典型的なアクティブクランプフライバックの回路図である。
図2図1のアクティブクランプフライバックの動作波形図である。
図3】実施例1に係る回路図である。
図4図3の実施例1の動作波形図である。
図5】実施例2に係る回路図である。
図6図5の実施例2の動作波形図である。
図7】実施例2を力率改善動作させた場合の動作波形図である。
図8図7の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
初めに、図3を用いて本発明の実施例について説明する。スイッチング電源回路S100は、交流電源VAC1から入力される交流電圧をブリッジダイオードBD1を用いて変換された直流電圧である入力電圧VINから、トランスを介して絶縁された2次側へ出力電圧VOUTを出力する。帰還回路U2は絶縁されたフィードバック信号を制御回路U1へ出力し、フィードバック信号に基づき制御回路U1が駆動スイッチQ1,アクティブクランプスイッチQ2を相補的に動作させることで出力電圧VOUTを所望の電圧になるように制御する。入力コンデンサCIN1は入力電圧を一時的に保持するためのものである。バイパスダイオードDIN1は入力電圧VINが昇圧電圧VBULKより高い場合に昇圧電圧VBULKが入力電圧VINとなるようにCBULKを充電するためのものである。トランスT1は後述の説明のため理想トランスTr、励磁インダクタLm、漏れインダクタLrで構成されるモデルで表現している。また、一次巻き線:二次巻き線比はNP:NSとする。
【0019】
さらに動作波形図4を用いて本実施例の動作を詳細に説明する。
【0020】
期間T1について:期間T1は一次側スイッチノード電圧LX1がローの時に駆動スイッチQ1がオンすることから始まる。従って駆動スイッチQ1のVdsはゼロ電圧であるため駆動スイッチQ1はZVSとなる。駆動スイッチQ1がオンしているためトランスT1にエネルギーが蓄積し励磁電流ILmが増加する。一次巻き線には入力電圧VINがかかっているため、二次側巻き線には入力電圧VIN×NS/NPの電圧が理想トランスTrにより発生される。二次側スイッチノード電圧LX2は整流ダイオードD2により二次側基準電圧SGNDにクランプされるためタンクコンデンサCT1には入力電圧VIN×NS/NPの電圧が充電される。また、タンクコンデンサCT1は二次側整流電流ISecにより充電される。出力コンデンサCOUT1は出力電圧VOUTを保持するため、負荷RLOAD1に出力コンデンサ電流ICOUT1を放電する。その後、駆動スイッチQ1がオフすることで励磁電流ILmにより一次側スイッチノード電圧LX1がハイに遷移し、アクティブクランプスイッチQ2のボディーダイオードを介して一次側スイッチノード電圧LX1が昇圧電圧VBULKにクランプされる。
【0021】
期間T2について:は一次側スイッチノード電圧LX1がハイの時にアクティブクランプスイッチQ2がオンすることから始まる。従ってアクティブクランプスイッチQ2のVdsはゼロ電圧であるためアクティブクランプスイッチQ2はZVSとなる。アクティブクランプスイッチQ2がオンしていることから共振電流ILrが昇圧コンデンサCBULK1に流れ、充放電する。ここで重要であることは、アクティブクランプスイッチQ2がアクティブクランプではなくダイオードである場合には放電、つまり負電流を流すことが出来ないということである。放電できない場合、昇圧電圧VBULKは上昇を続けるしかなく、ついには各素子の破壊電圧に至る。しかしながらアクティブクランプスイッチQ2はアクティブクランプであるため、漏れインダクタLrのエネルギーを放電することが可能であり、そのエネルギーを効率的に二次側へ伝送することが可能となる。
【0022】
一次巻き線には(昇圧電圧VBULK-入力電圧VIN)がかかっているため、二次側巻き線には(昇圧電圧VBULK-入力電圧VIN)×NS/NPの電圧が理想トランスTrにより発生される。二次側スイッチノード電圧LX2は整流ダイオードD1により出力電圧VOUTにクランプされる。タンクコンデンサCT1には入力電圧VIN×NS/NPの電圧がトランスT1において充電されているため、出力電圧VOUTにはタンクコンデンサCT1の電圧に理想トランスTrの二次側巻き線電圧 (昇圧電圧VBULK-入力電圧VIN)×NS/NPを重畳した電圧が充電される。すなわち出力電圧VOUT=入力電圧VIN×NS/NP+(昇圧電圧VBULK-入力電圧VIN)×NS/NP=昇圧電圧VBULK×NS/NPとなり出力電圧VOUTには昇圧電圧VBULKの巻き線比の電圧が発生する。
【0023】
また、出力コンデンサCOUT1は二次側整流電流ISecにより充電される。出力コンデンサCOUT1へは負荷RLOAD1への放電電流と二次側整流電流ISecによる充電電流の差である出力コンデンサ電流ICOUT1が流れる。
その後励磁電流ILmが負電流になったところでアクティブクランプスイッチQ2がオフすることで励磁電流ILmにより一次側スイッチノード電圧LX1がローに遷移し、駆動スイッチQ1のボディーダイオードを介してGNDにクランプされる。
【0024】
なお励磁電流ILmはトランス外部には出力されないため、直接モニタすることができない。この課題に対しては制御回路U1としてTI社 UCC28780やONSEMI社 NCP1568に採用されている適応型制御(非特許文献4 7.4.1項を参照)を搭載したICを用いることで、アクティブクランプスイッチQ2のオン時間を調整し励磁電流ILmの負電流を駆動スイッチQ1がZVSするための最適な値に制御することが可能である。
【0025】
また、本実施例の本質的な課題として昇圧電圧VBULKが入力電圧VINよりも低い時にはバイパスダイオードDIN1、またはアクティブクランプスイッチQ2のボディーダイオードを介して昇圧電圧VBULKが入力電圧VINに引き上げられるため、昇圧電圧VBULKは入力電圧VINよりも高く設定する必要がある。
例えば本実施例における交流電源電圧がAC100V~AC240Vの範囲の場合、入力電圧VINは最大で240V×√2≒340Vとなる。従って昇圧電圧VBULKは340V以上に設定する必要がある。
【0026】
上記動作説明より以下が明らかである。
【0027】
アクティブクランプスイッチQ2により、漏れインダクタLrに蓄積されたエネルギーを昇圧コンデンサCBULK1に充電し、二次側への電力転送時に放電することで漏れインダクタLrに蓄積されたエネルギーを消散しない。また、駆動スイッチQ1,アクティブクランプスイッチQ2は常時ZVSしていることにより、スイッチングに伴う損失とノイズを大幅に低減できる。これらはアクティブクランプフライバックと同等の効果である。
【0028】
さらに二次側スイッチノード電圧LX2は整流ダイオードD1,整流ダイオードD2によりクランプされるため不要なリンギングが発生しない。
【0029】
また、二次側スイッチノード電圧LX2の振幅は出力電圧VOUTと二次側基準電圧SGND間の電圧となるため、例えば出力電圧が20Vであった場合、振幅は20Vとなりアクティブクランプフライバックで発生する100V~150Vに対して1/5程度低くすることができている。よってこれらによりさらにノイズ低減される。そのため図示されていないがノイズ低減に必要とされる素子が不要、または小型化可能となるため、電源の小型化が可能となる。
【0030】
また整流ダイオードDACFに要求される耐圧は100V~150V であるが、整流ダイオードD1,整流ダイオードD2に必要とされる耐圧は20Vとなるため、小型、低耐圧、高速、かつ安価である特性の高いデバイスを使用することが可能となる。
【0031】
また、20V出力のアクティブクランプフライバックの巻き線比は概ねNP:NS=5:1である(非特許文献2 P.8 6.4項参照)。一方、本実施例として昇圧電圧VBULKを400Vに設定した場合、出力電圧VOUT =昇圧電圧VBULK×NS/NPよりNS/NP=出力電圧VOUT/昇圧電圧VBULK=20/400 となりNP:NS=20:1となる。これはアクティブクランプフライバックと一次側巻き線数が同じである場合において、二次側巻き線数を1/4にすることができることを意味する。例えばアクティブクランプフライバックで一次巻き線が20ターンであった場合二次巻き線は4ターンとなる。
一方、本実施例では一次巻き線が20ターンであった場合、二次巻き線は1ターンを4並列で巻けることになる。すなわち二次側巻き線抵抗が1/4×1/4=1/16となり、低損失となり高効率化につながる。または、二次巻き線を1ターン、1並列としトランスT1を小型化しても良い。
【0032】
上述からわかるように、本実施例ではアクティブクランプフライバックと比較してさらに小型で高効率、低ノイズのスイッチング電源を構成することが可能となる。
【実施例2】
【0033】
図5を用いて本発明の実施例の異なる回路構成について説明する。
【0034】
実施例2では実施例1と比較して、絶縁をまたぐ帰還回路U2が無く帰還抵抗RFB1と帰還抵抗RFB2で代替されていることと、整流ダイオードD1,整流ダイオードD2が同期整流スイッチQ3、同期整流スイッチQ4と同期整流スイッチ制御回路U3,同期整流スイッチ制御回路U4で構成される理想ダイオードに代替されていること、タンクコンデンサCT11に加えてタンクコンデンサCT12が追加されていることが異なる。
【0035】
一般に絶縁をまたぐ帰還回路U2を構成するためにはフォトカプラとシャントレギュレータといった半導体と安定性を確保するためのRCネットワークが必要となる。ところが、実施例1で述べたように出力電圧VOUT =昇圧電圧VBULK×NS/NPでありNS/NPは設計値であるため既知の固定値である。よって、実施例1のようにNP:NS=20:1とした場合、昇圧電圧VBULKを400Vに制御すれば出力電圧VOUTは20Vとなる。
【0036】
よって、トランスの巻き線比ばらつきを考慮しなければ二次側から帰還させる必要はなく、昇圧電圧VBULKをフィードバック信号として扱えばよい。一般にフィードバック信号を受け取る回路は低耐圧素子で構成されるため、図5では帰還抵抗RFB1と帰還抵抗RFB2により素子耐圧を超えない電圧に分圧する例を示している。これにより、帰還回路U2が不要となり基板の小型化と低コスト化が可能となる。
【0037】
また実施例1では整流ダイオードD1、整流ダイオードD2はダイオードであるため、整流時には順方向電圧Vfが発生し順方向電圧Vf×二次側整流電流ISECの損失が発生する。これはコンバータの全損失に対して無視できない損失となる。整流ダイオードD1を同期整流スイッチ制御回路U3,同期整流スイッチQ3、整流ダイオードD2を同期整流スイッチ制御回路U4,同期整流スイッチQ4に置き換えることで整流時の損失を同期整流スイッチQ3,同期整流スイッチQ4のオン抵抗Ron×二次側整流電流ISEC^2の損失とすることができる。
【0038】
これはアクティブクランプフライバックでも同様であるが、アクティブクランプフライバックにおいては例えば出力電圧が20Vの場合100V~150V程度の素子耐圧が必要となる。一方、本発明においては同期整流スイッチQ3,同期整流スイッチQ4は20V程度の素子耐圧でよく、小型、低オン抵抗、高速、かつ安価である特性の高いデバイスを使用することが可能である。
【0039】
また、実施例1では期間T2においてのみ出力コンデンサCOUT1が充電されるため、非充電期間が長く、出力コンデンサCOUT1の充電電流が大きくなる。出力コンデンサCOUT1は平滑コンデンサであるため、数百uFが必要となりポリマー固体電解コンデンサが用いられる。ポリマー固体電解コンデンサはESR(直列等価抵抗)が大きく、数十~数百mΩの抵抗値を持つためESRによる損失が無視できない。
【0040】
一方、実施例2では出力電圧VOUTとタンクコンデンサ電圧VTANK間にタンクコンデンサCT12が追加されているため、期間T1,T2においてタンクコンデンサCT11,タンクコンデンサCT12を介して出力コンデンサCOUT2に共振電流を流すことが可能である。
【0041】
図6に実施例1と実施例2における出力コンデンサCOUT1および出力コンデンサCOUT2の出力コンデンサ電流ICOUT1および出力コンデンサ電流ICOUT2の比較波形を示す。
【0042】
実施例2において、期間T1では実施例1と同様にタンクコンデンサCT11を充電すると同時に、タンクコンデンサCT12を介して共振電流の一部が出力コンデンサCOUT2に充電される。また、期間T2においてはタンクコンデンサCT12を充電すると同時に、タンクコンデンサCT11を介して共振電流の一部が出力コンデンサCOUT2に充電される。
【0043】
波形からわかるように、図6では出力コンデンサCOUT2に流れる充放電電流が小さくなるため、ESRによる損失を低減することが可能である。
【0044】
また、タンクコンデンサCT11,タンクコンデンサCT12 は共振コンデンサであるため容量値が小さくてよく、セラミックコンデンサを用いることが可能である。セラミックコンデンサのESRはポリマー固体電解コンデンサと比較して非常に低く、数mΩ程度である。そのため、損失を低減することが可能となりさらに高い効率を得ることができる。
【0045】
さらに充放電電流が小さくなることにより出力電圧VOUTのスイッチング周波数毎に発生するリプル電圧を小さくすることが可能となるため、出力コンデンサCOUT2のキャパシタンスを低減することが可能である。よって、さらなる小型化が可能となる。
【実施例3】
【0046】
フライバック、またはアクティブクランプフライバックをPFC(力率改善回路)として使用し、シングルステージPFCを構成できることが知られている(非特許文献3を参照)。
【0047】
本発明に基づくコンバータも同様にシングルステージPFCにすることが可能である。実施例1,または実施例2におけるコントローラを固定オン時間制御に基づく力率改善機能を有するもの、または乗算器に基づく力率改善機能を有する物に変更するのみである。
【0048】
図7に実施例2におけるコントローラ帰還回路U2を固定オン時間制御に基づく力率改善機能を有するものとした場合の力率改善動作時の動作波形を示す。また、図8図7に示す時刻Tpeakにおける拡大波形を示す。
【0049】
図7に示されるように、入力電圧VINに応じて励磁電流ILmが変化するため、位相差が小さく、力率改善されていることがわかる。
【0050】
従来のフライバックコンバータに基づくシングルステージPFCでは商用周波数の倍の周波数で発生する出力電圧VOUTの脈動を平滑化するために出力コンデンサCOUT1を大型化する必要があった。本発明に基づくコンバータでは出力電圧VOUT =昇圧電圧VBULK×NS/NPとなるため、出力電圧VOUTの脈動を平滑するためには昇圧電圧VBULKの脈動を平滑することに相当する。
【0051】
昇圧電圧VBULKの脈動は昇圧コンデンサCBULK1により平滑される。例えば同じ出力電圧VOUT=20VのシングルステージPFCを構成した場合、昇圧電圧VBULKが400Vであるとすると、従来のフライバックコンバータに基づくシングルステージPFCに比較してコンデンサのエネルギーは(400V/20V)^2=400倍となる。これは従来のシングルステージPFCに対して本発明に基づくコンバータでは出力電圧の脈動を同等に平滑するための昇圧コンデンサCBULK1は1/400のキャパシタンスでよいことになる。
【0052】
また、PFCでなければ入力コンデンサCIN1のキャパシタンスは問われないが、PFCにおいては入力コンデンサCIN1のキャパシタンスを力率に影響しない範囲で小さくする必要がある。
【0053】
フライバック、またはアクティブクランプフライバックをPFC(力率改善回路)として使用した場合、入力コンデンサCIN1のキャパシタンスが小さいため、ESDなどのサージを入力コンデンサCIN1で抑えることができず、入力電圧VINが上昇する。サージ対策回路の追加や、サージに耐えうる素子耐圧をもつデバイスを選定する必要があり、コスト、サイズが大きくなる原因となる。
【0054】
本発明に基づくコンバータにおいても同様に入力コンデンサCIN1のキャパシタンスを小さくする必要があるものの、サージによる入力電圧VIN上昇はバイパスダイオードDIN1を介して大きな容量を持つ昇圧コンデンサCBULK1にクランプされるため、対策回路は不要であり、素子耐圧を上げる必要がない。
【0055】
よって本発明をPFCに適用した場合、コンデンサの小型化や、サージ対策回路が不要となり小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0056】
VACACF,VAC 交流電源
BDACF,BD1 ブリッジダイオード
CINACF ,CIN1 入力コンデンサ
U1ACF,U1 制御回路
U2ACF,U2 帰還回路
Q1ACF,Q1 駆動スイッチ
Q2ACF,Q2 アクティブクランプスイッチ
Cr 共振コンデンサ
TrACF,Tr 理想トランス
LmACF,Lm 励磁インダクタ
LrACF,Lr 漏れインダクタ
T1ACF,T1 トランス
DACF,D1,D2 整流ダイオード
COUT1ACF,COUT1,COUT2 出力コンデンサ
RLOAD1ACF,RLOAD1,RLOAD2 負荷
VINACF,VIN 入力電圧
VCr 共振コンデンサ電圧
VOUTACF,VOUT 出力電圧
LX1ACF ,LX1 一次側スイッチノード電圧
LX2ACF,LX2 二次側スイッチノード電圧
ILmACF ,ILm 励磁電流
ILrACF,ILr 共振電流
ISecACF,ISec 二次側整流電流
PGNDACF,PGND 一次側基準電圧
SGNDACF,SGND 二次側基準電圧
S100,S200 本発明に基づくスイッチング電源回路
CBULK1 昇圧コンデンサ
DIN1 バイパスダイオード
VGS1 駆動スイッチ制御信号
VGS2 アクティブクランプスイッチ制御信号
VBULK 昇圧電圧
CT1,CT11,CT12 タンクコンデンサ
VTANK タンクコンデンサ電圧
ICOUT1,ICOUT2 出力コンデンサ電流
RFB1,RFB2 帰還抵抗
Q3,Q4 同期整流スイッチ
U3,U4 同期整流スイッチ制御回路
Vf ダイオード順方向電圧

【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【文献】特許6643423
【非特許文献】
【0058】
【文献】ON SEMICONDUCTOR,”アクティブクランプ・フライバック・トポロジを使用する高密度AC/DC電源”,[online],OCTOBER-2021,[2022年11月7日検索],インターネット,<URL: https://www.onsemi.jp/pub/collateral/tnd6279jp-d.pdf>
【0059】
【文献】TEXAS INSTRUMENTS,”Zero-Voltage-Switching Flyback Using UCC28780 Controller and UCC5304 Isolated Synchronous-Rectifier Driver”,[online],JULY-2020, [2022年11月7日検索],インターネット,<URL: https://www.ti.com/lit/an/sluaa60/sluaa60.pdf?ts=1667800169255&ref_url=https%253A%252F%252Fwww.google.com%252F >
【0060】
【文献】Kali Naraharisetti, Janamejaya Channegowda,”Single Stage PFC Flyback AC-DC Converter Design”, 2020 IEEE International Conference on Electronics, Computing and Communication Technologies ,02-04 July 2020, DOI: 10.1109/CONECCT50063.2020.9198408
【0061】
【文献】TEXAS INSTRUMENTS,”UCC28780 高周波数アクティブ・クランプ・フライバック・コントローラ”, [online], FEBRUARY 2018, [2022年11月7日検索],インターネット,<URL: https://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/ucc28780.pdf?ts=1667801689834&ref_url=https%253A%252F%252Fwww.ti.com%252Fproduct%252Fja-jp%252FUCC28780>
【要約】      (修正有)
【課題】小型で高効率、低ノイズを実現する絶縁型スイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】スイッチング電源回路S100は、NPターンで巻かれた一次巻き線とNSターンで巻かれた二次巻き線を有するトランスT1と、一次側ハーフブリッジを構成する駆動スイッチQ1と、アクティブクランプスイッチQ2と、トランスの放電エネルギーを充電する昇圧コンデンサCBULK1と、直列的に接続される整流ダイオードD1と、整流ダイオードD2と、タンクコンデンサCT1と、出力コンデンサCOUT1と、を有する。駆動スイッチQ1又はアクティブクランプスイッチQ2がオンの時の二次側巻き線電圧をタンクコンデンサCT1に保持させ、駆動スイッチQ1またはアクティブクランプスイッチQ2がオフの時の二次巻き線電圧をタンクコンデンサCT1に保持した電圧に重畳することで出力電圧VOUT=昇圧電圧VBULK×NS/NPとなるようにした。
【選択図】図3
図1
図2
図3
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図6
図7
図8