(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】作業機械用カッティングエッジ、作業機械用ブレードおよび作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/28 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
E02F9/28 B
(21)【出願番号】P 2019063736
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】上前 健志
(72)【発明者】
【氏名】武田 周
(72)【発明者】
【氏名】細川 晃
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋平
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-248587(JP,A)
【文献】特開2003-003440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に取り付けられる作業機械用カッティングエッジであって、
互いに対向する第1面および第2面を有し、かつ前記第1面と前記第2面との間の厚みの最大値である第1厚みを有する取付部と、
前記取付部と一体化された摩耗部と、
前記取付部と前記摩耗部との間に位置し、前記取付部から前記摩耗部に向かうにしたがって厚みが薄くなる中間部と、を備え、
前記摩耗部は、
前記第1面に連なる第3面と、前記第3面に対向する第4面とを有し、前記第1厚みよりも薄い前記第3面と前記第4面との間の第2厚みと、前記取付部とは反対側に位置する先端とを有する第1部分と、
前記第1部分の前記第4面の一部から前記第3面とは反対側に延び、かつ前記第1部分の前記先端から前記取付部に向かって延びる第2部分とを有し、
前記中間部は前記第1面および前記第3面の間に位置する第5面を有し、
前記作業機械用カッティングエッジの長手方向の全体において、前記取付部の前記第1面と前記中間部の前記第5面と前記第1部分の前記第3面とは、切れ目および段差を生じることなく連続的に接続されて
おり、
前記第2部分は、前記第4面に接続された第1端部と、前記第1端部に対向する第2端部とを有し、
前記第2端部は、前記取付部の前記第2面に対して前記第4面とは反対側に突き出した部分を有している、作業機械用カッティングエッジ。
【請求項2】
前記取付部は貫通孔を有し、前記貫通孔は前記第1面と接続する拡径部を有する、請求項1に記載の作業機械用カッティングエッジ。
【請求項3】
前記第2厚みが前記第1部分の前記先端から前記第1部分の前記取付部側に位置する端部まで一定である、請求項1または請求項2に記載の作業機械用カッティングエッジ。
【請求項4】
前記第1厚みに対する前記第2厚みの比が50%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業機械用カッティングエッジ。
【請求項5】
前記第2部分は補強リブである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械用カッティングエッジ。
【請求項6】
前記第2部分は、前記第1部分の前記第3面に対して前記第4面側に窪んだ窪みを構成する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械用カッティングエッジ。
【請求項7】
前記第2部分は前記取付部まで延びている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の作業機械用カッティングエッジ。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の作業機械用カッティングエッジと、
前記作業機械用カッティングエッジが取り付けられるブレード本体と、を備えた、作業機械用ブレード。
【請求項9】
請求項
8に記載の作業機械用ブレードと、
前記作業機械用ブレードを取り付けられる作業機械本体と、を備えた、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械用カッティングエッジ、作業機械用ブレードおよび作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータグレーダなどの作業機械において作業効率の向上が望まれている。作業効率の向上の一つとして、掘削性の向上、カッティングエッジの耐久性の向上などが挙げられる。この課題に対応したカッティングエッジは、たとえば米国特許第3021626号明細書(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたカッティングエッジは、前面に隆起部を有し、後面に補強リブを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載されたカッティングエッジでは、カッティングエッジ先端の剛性が低いため、耐久性の向上が困難である。
【0006】
本開示の目的は、掘削性が良好で、耐久性の向上が容易な作業機械用カッティングエッジ、作業機械用ブレードおよび作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の作業機械用カッティングエッジは、作業機械に取り付けられる作業機械用カッティングエッジであって、取付部と、摩耗部とを備えている。取付部は、互いに対向する第1面および第2面を有し、かつ第1面と第2面との間の厚みの最大値である第1厚みを有している。摩耗部は、取付部と一体化されている。摩耗部は、第1部分と、第2部分とを有している。第1部分は、第1面に連なる第3面と、第3面に対向する第4面とを有し、第1厚みよりも薄い第3面と第4面との間の第2厚みと、取付部とは反対側に位置する先端とを有している。第2部分は、第1部分の第4面の一部から第3面とは反対側に延び、かつ第1部分の先端から取付部に向かって延びている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、掘削性が良好で、耐久性の向上が容易な作業機械用カッティングエッジ、作業機械用ブレードおよび作業機械を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における作業機械としてのモータグレーダの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の作業機械に含まれる作業機械用ブレードの構成を示す側面図である。
【
図3】
図2の作業機械用ブレードに含まれるカッティングエッジの構成を前方から見た斜視図である。
【
図4】
図2の作業機械用ブレードに含まれるカッティングエッジの構成を後方から見た斜視図である。
【
図7】実施の形態2における作業機械に含まれるカッティングエッジの構成を前方から見た部分斜視図である。
【
図8】実施の形態2における作業機械に含まれるカッティングエッジの構成を後方から見た部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0011】
(実施の形態1)
<作業機械の構成>
まず、本開示の思想を適用可能な作業機械の一例であるモータグレーダの構成について説明する。なお本開示はモータグレーダ以外のブレードを有する他の作業機械にも適用可能である。
【0012】
図1は、実施の形態1におけるモータグレーダの構成を概略的に示す斜視図である。
図1に示されるように、本実施の形態におけるモータグレーダ10は、作業機1と、車体フレーム2と、キャブ(運転室)3と、走行輪4、5とを主に有している。また、モータグレーダ10は、エンジン室2aaに配置されたエンジンなどの構成部品を有している。作業機1は、たとえばブレード11を含んでいる。モータグレーダ10は、ブレード11で整地作業、除雪作業、軽切削、材料混合などの作業を行なうことができる。
【0013】
なお以下の図の説明において、モータグレーダ10が直進走行する方向を、モータグレーダ10の前後方向という。モータグレーダ10の前後方向において、作業機1に対して前輪4が配置されている側を、前方向とする。モータグレーダ10の前後方向において、作業機1に対して後輪5が配置されている側を、後方向とする。モータグレーダ10の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。モータグレーダ10の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0014】
車体フレーム2は、リアフレーム2aと、フロントフレーム2bとを含んでいる。リアフレーム2aは、外装カバー2abと、エンジン室2aaに配置されたエンジンなどの構成部品とを支持している。外装カバー2abはエンジン室2aaを覆っている。リアフレーム2aには、たとえば4つの後輪5の各々が取付けられている。4つの後輪5の各々は、エンジンからの駆動力によって回転駆動可能である。
【0015】
フロントフレーム2bは、リアフレーム2aに連結されている基端部と、基端部と反対側の先端部とを有している。フロントフレーム2bの基端部は、上下方向に延びるセンタピンにより、リアフレーム2aの先端部と連結されている。
【0016】
フロントフレーム2bとリアフレーム2aとの間には、アーティキュレートシリンダ(図示せず)が取り付けられている。フロントフレーム2bは、アーティキュレートシリンダの伸縮により、リアフレーム2aに対して回動(アーティキュレート)可能に設けられている。
【0017】
フロントフレーム2bの先端部には、たとえば2つの前輪4が回転可能に取り付けられている。前輪4は、ステアリングシリンダ6の伸縮によって、フロントフレーム2bに対して旋回可能に取り付けられている。モータグレーダ10は、ステアリングシリンダ6の伸縮によって、進行方向を変更することが可能である。
【0018】
キャブ3はフロントフレーム2bに載置されている。キャブ3の内部には、ハンドル、変速レバー、作業機1の操作レバー、ブレーキ、アクセルペダル、インチングペダルなどの操作部(図示せず)が設けられている。なお、キャブ3は、リアフレーム2aに載置されていてもよい。
【0019】
作業機1は、たとえばブレード11と、ドローバ12と、旋回サークル13と、リフトシリンダ14、15と、ドローバシフトシリンダ16と、ブレードシフトシリンダ17と、油圧モータ18とを主に有している。
【0020】
ドローバ12は、フロントフレーム2bの下方に配置されている。ドローバ12の前端部は、フロントフレーム2bの先端部に、玉軸部を用いて連結されている。ドローバ12の前端部は、フロントフレーム2bの先端部に揺動可能に取付けられている。
【0021】
ドローバ12の後端部は、一対のリフトシリンダ14、15によってフロントフレーム2bに支持されている。一対のリフトシリンダ14、15の伸縮によって、ドローバ12の後端部がフロントフレーム2bに対して上下に昇降可能である。また、ドローバ12は、一対のリフトシリンダ14、15の互いに異なる伸縮によって、前後方向に延びる軸を中心に揺動可能である。
【0022】
旋回サークル13は、ドローバ12の下方に配置されている。旋回サークル13は、ドローバ12の後端部に旋回(回転)可能に取付けられている。旋回サークル13は、油圧モータ18によって、ドローバ12に対し、作業機械10の上方から見て時計方向と反時計方向との両方に、旋回駆動可能である。
【0023】
ブレード11は、旋回サークル13に支持されている。旋回サークル13の旋回駆動によって、ブレード11のブレード推進角が調整される。ブレード推進角とは、作業機械10の上方から見た視点(平面視)におけるモータグレーダ10の前後方向に対するブレード11の傾斜角度である。
【0024】
ブレード11は、前輪4と後輪5との間に配置されている。ブレードシフトシリンダ17が、旋回サークル13およびブレード11に取り付けられており、ブレード11の長手方向に沿って配置されている。ブレード11は、ブレードシフトシリンダ17によって旋回サークル13に対して左右方向に移動可能である。
【0025】
チルトシリンダ(図示せず)が、旋回サークル13およびブレード11に取り付けられている。このチルトシリンダを伸縮させることによって、ブレード11は旋回サークル13に対してブレード11の長手方向に延びる軸を中心に揺動して、ブレード11の進行方向に対する傾斜角度を変更することができる。
【0026】
以上のように、ブレード11は、走行輪4、5と車体フレーム2とキャブ3とにより構成される作業機械本体に取り付けられている。ブレード11は、ドローバ12と旋回サークル13とを介して、作業機械本体に対する上下の昇降、作業機械10の進行方向に沿った軸を中心とする揺動、前後方向に対する傾斜角度の変更、左右方向の移動、および、ブレード11の長手方向に延びる軸を中心とする揺動を行なうことが可能に構成されている。
【0027】
<ブレード11の構成>
次に、上記作業機械10に含まれるブレード11(作業機械用ブレード)の構成について
図2を用いて説明する。
【0028】
図2は、
図1の作業機械に含まれる作業機械用ブレードの構成を示す側面図である。
図2に示されるように、ブレード11は、ブレード本体11aと、カッティングエッジ20とを有している。ブレード本体11aは、互いに対向する前面11aaおよび後面11abを有している。ブレード本体11aは、上下(ブレード11の短手方向)に切断した断面において前面11aaおよび後面11abの各々は湾曲している。
【0029】
ブレード本体11aの後面11abには、保持枠11eを介在して1対のレール11dが取り付けられている。1対のレール11dは、ガイドブラケット(図示せず)にブレード11の長手方向にスライド可能に支持されている。ブレード11は、このガイドブラケットを含むブレード支持機構(図示せず)を介在して、作業機械本体に取り付けられている。
【0030】
ブレード本体11aの下端部には、カッティングエッジ20が取り付けられている。カッティングエッジ20は、たとえばボルト11bおよびナット11cによりブレード本体11aに固定されている。具体的にはボルト11bが、カッティングエッジ20の貫通孔20hとブレード本体11aの貫通孔11fとに前方から挿入され、ブレード本体11aの後方においてナット11cに締結されている。これによってカッティングエッジ20はブレード本体11aに固定されている。
【0031】
<カッティングエッジ20の構成>
次に、上記ブレード11に含まれるカッティングエッジ20の構成について
図3~
図6を用いて説明する。
【0032】
図3および
図4は、それぞれ
図2の作業機械用ブレードに含まれるカッティングエッジの構成を前方から見た斜視図および後方から見た斜視図である。
図5および
図6は、それぞれ
図4のV-V線に沿う断面図および
図5のVI-VI線に沿う断面図である。
【0033】
図5に示されるように、カッティングエッジ20は、取付部21と、摩耗部22と、中間部23とを有している。取付部21、摩耗部22および中間部23は、一体化されている。
【0034】
取付部21は、互いに対向する第1面20Aと第2面20Bとを有している。第1面20Aは取付部21の前面であり、第2面20Bは取付部21の後面である。取付部21は、第1面20Aと第2面20Bとの間の厚みの最大値である厚みt1(第1厚み)を有している。
【0035】
取付部21の第1面20Aと第2面20Bとは、取付部21と中間部23との接合部から位置21Mまで互いに平行である。取付部21と中間部23との接合部から位置21Mまでにおける取付部21の厚みは厚みt1で一定である。
【0036】
第1面20Aと第2面20Bとが位置21Mから先端21Tへ向かうにしたがって互いに近付くように、第2面20Bは第1面20Aに対して傾斜している。このため位置21Mから取付部21の先端21Tまでの取付部21の厚みは、位置21Mから先端21Tへ向かうにしたがって薄くなる。
【0037】
取付部21は、ブレード本体11aに取り付けるための部分20hを有している。この部分20hは、取付部21と中間部23との接合部から位置21Mまでの間に配置されている。部分20hは、取付部21の最大厚みt1を有する部分に配置されている。
【0038】
このブレード本体11aに取り付けるための部分20hは、たとえば上記のようにボルト11bを挿入するための貫通孔20hである。貫通孔20hは、第1面20Aから第2面20Bまで取付部21を貫通している。貫通孔20hは、第2面20B側から第1面20Aに向かって拡径しながら延びる拡径部20haと、拡径部20haから第2面20Bに向かって径を維持しながら延びる同径部20hbとを有している。拡径部20haはたとえば円錐台形状を有し、同径部20hbはたとえば角柱形状を有している。
【0039】
摩耗部22は、取付部21の下方に位置している。摩耗部22は、第1部分22aと、第2部分22bとを有している。第2部分22bは、第1部分22aの後方に位置している。
【0040】
第1部分22aは、互いに対向する第3面20Cと第4面20Dとを有している。第3面20Cは第1部分22aの前面であり、第4面20Dは第1部分22aの後面である。第3面20Cは、第1面20Aと連なっている。
【0041】
第1部分22aは、第3面20Cと第4面20Dとの間の厚みt2(第2厚み)を有している。厚みt2は、取付部21の厚みt1よりも薄い。厚みt1に対する厚みt2の比(t2/t1)は50%以下である。
【0042】
第1部分22aは、取付部21とは反対側に位置する先端22Tを有している。第1部分22aの第3面20Cと第4面20Dとは平行である。このため第1部分22aは、取付部21側の端部から先端22Tまで厚みt2を維持して延びている。厚みt2は、先端22Tから第1部分22aと中間部23との接合部まで一定である。
【0043】
第2部分22bは、第1部分22aにおける第4面20Dの一部から第3面20Cとは反対側に延びている。第2部分22bは、第1部分22aの先端22Tから取付部21に向かって上下方向(カッティングエッジ20の短手方向)に延びている。第2部分22bは先端22Tの第4面20Dに接している。第2部分22bは、先端22Tから、少なくとも第1部分22aが中間部23と接続される部分まで上下方向に延びて、第1部分22aと接続されている。
【0044】
第2部分22bは、第1部分22aの第4面20Dに接続される第1端部22Fと、第1端部22Fに対向する第2端部22Rとを有している。第2端部22Rは、第1端部22Fの後方に位置している。
【0045】
第2部分22bの第2端部22Rは、取付部21の第2面20Bよりも後方に位置する部分を有している。具体的には第2部分22bの根元部22b2における第2端部22Rは、取付部21の第2面20Bよりも後方に位置している。第2端部22Rは、第2面20Bに対して第4面20Dとは反対側に位置する部分を有している。具体的には根元部22b2における第2端部22Rは、第2面20Bに対して第4面20Dとは反対側に位置している。これにより第1部分22aと第2部分22bの根元部22b2との厚みの合計t4(
図6)は、取付部21の厚みt1(
図5)よりも厚くなっている。
【0046】
第2部分22bは、先端部22b1と、根元部22b2とを有している。先端部22b1は、根元部22b2よりも下方に位置している。先端部22b1は、第1部分22aの先端22Tから取付部21側へ延びる部分である。根元部22b2は、先端部22b1に接続され、かつ先端部22b1よりも取付部21側に位置する部分である。
【0047】
先端部22b1における第2端部22Rは、先端22Tに近付くほど第4面20Dに近付くように第4面20Dに対して傾斜している。根元部22b2における第2端部22Rは、第4面20Dと平行である。
【0048】
中間部23は、取付部21と摩耗部22との間に位置している。中間部23は、互いに対向する第5面20Eと第6面20Fとを有している。第5面20Eは中間部23の前面であり、第6面20Fは中間部23の後面である。第5面20Eは、第1面20Aおよび第3面20Cの各々と連なっている。
【0049】
中間部23は、第5面20Eと第6面20Fとの間の厚みt3(第3厚み)を有している。中間部23の厚みt3は、取付部21から摩耗部22に向かうにしたがって薄くなっている。中間部23の第6面20Fは、取付部21から摩耗部22に向かうにしたがって第5面20Eに近付くように第5面20Eに対して傾斜している。中間部23の第6面20Fは、取付部21の第2面20Bと摩耗部22の第4面20Dとの間の段差を構成している。
【0050】
摩耗部22の第2部分22bは、中間部23の第6面20Fに接続されている。第2部分22bは、中間部23と第1部分22aとの接続部から中間部23と取付部21の接続部まで第6面20Fの上下方向の全体に接続されている。第2部分22bは、取付部21の第2面20Bまで延びている。第2部分22bは、第2面20Bの一部に接続されている。
【0051】
取付部21の第1面20Aと、第1部分22aの第3面20Cと、中間部23の第5面20Eとは、カッティングエッジ20の前面FSを構成している。
【0052】
図3に示されるように、取付部21の第1面20Aと中間部23の第5面20Eとは、切れ目および段差を生じることなく連続的に接続されている。また中間部23の第5面20Eと第1部分22aの第3面20Cとは、切れ目および段差を生じることなく連続的に接続されている。これにより取付部21の第1面20Aと、中間部23の第5面20Eと、第1部分22aの第3面20Cとにより構成される前面FSは、単一の面を構成している。
【0053】
図4に示されるように、カッティングエッジ20は、複数の第2部分22bを有している。複数の第2部分22bは、カッティングエッジ20の長手方向LDに沿って並んで配置されている。複数の第2部分22bは、カッティングエッジ20の長手方向LDに等間隔で配置されている。複数の第2部分22bは、互いに平行となるように配置されている。
【0054】
図5に示されるように、前面FSは、取付部21の先端21Tから第1部分22aの先端22Tまで上下方向に切断した断面において湾曲している。この断面において、両先端21T、22Tに対して両先端21T、22Tに挟まれる部分は窪んでいる。
【0055】
図6に示されるように、第2部分22bは、第1部分22aの強度を補強するための補強リブである。第1部分22aと第2部分22bとの厚みの合計t4は、第1部分22aの厚みt2以上よりも厚くなっている。
【0056】
第1部分22aの厚みt2は、第2部分22bの厚み(t4-t2)以下である。第2部分22bの厚み(t4-t2)に対する第1部分22aの厚みt2の比(t2/(t4-t2))は50%以下である。
【0057】
複数の第2部分22bのピッチPは、1つの第2部分22bの幅Wのたとえば5倍の寸法を有している。
【0058】
前面FSは、
図6に示す長手方向LDに切断した断面において直線状に延びている。取付部21の第1面20A、第1部分22aの第3面20Cおよび中間部23の第5面20Eの各々は、
図6に示す長手方向LDに切断した断面において、直線状に延びている。
【0059】
<効果>
次に、本実施の形態の効果について説明する。
【0060】
本実施の形態によれば
図5に示されるように、第1部分22aの第2厚みt2は取付部21の第1厚みt1よりも薄い。このため第1部分22aは掘削対象物にくい込みやすい。このため掘削性が良好となる。
【0061】
また本発明者が掘削現象をシミュレーションした結果、カッティングエッジ20と掘削対象物(たとえば地面)との接触面積を増加させても接触応力(=摩耗速度)にはほとんど影響しないことが判明した。このため第1部分22aの第2厚みt2を小さくすることで掘削対象物との接触面積を小さくすることができ、摩耗速度は同等のままで掘削抵抗(一定切り込み量に対する反力)を低減することができる。これによりブレード11を掘削対象物に押付ける力を低減することができ、燃費を改善することができる。
【0062】
また掘削抵抗が減少するため、カッティングエッジ20を掘削対象物に押さえつける力を同じとすれば、ブレード11の左右方向の幅を拡げることができる。これにより作業量が向上し、掘削性が向上する。
【0063】
また第2部分22bが、第1部分22aの第4面20Dの一部から第3面20Cとは反対側に延びている。この第2部分22bにより第1部分22aの強度が補強される。これによりカッティングエッジ20の剛性が向上する。
【0064】
さらに第2部分22bが、第1部分22aの先端22Tにも配置されている。これによりカッティングエッジ20の先端(第1部分22aの先端22T)の剛性が向上するため、カッティングエッジ20の剛性が向上する。
【0065】
また本実施の形態のカッティングエッジ20には、高硬度ビットを取り付ける必要もなく、かつ耐摩耗合金を添加する必要もない。このためカッティングエッジ20の製造コストを抑えることができる。
【0066】
また本実施の形態においては
図5に示されるように、第1部分22aの第2厚みt2が第1部分22aの先端22Tから第1部分22aの取付部21側に位置する端部まで一定である。これにより掘削により第1部分22aの先端22Tが摩耗しても、使用開始当初と同様の掘削性を得ることが可能となる。また第1部分22aの第2厚みt2が一定であるため、カッティングエッジ20の掘削対象物へのくい込み抵抗を低く保つことができる。
【0067】
また本実施の形態においては
図5に示されるように、取付部21の第1厚みt1に対する第1部分22aの第2厚みt2の比(t2/t1)が50%以下である。このように第1部分22aの第2厚みt2を薄くすることにより、掘削性をさらに向上させることができる。
【0068】
また本実施の形態においては
図5に示されるように、中間部23の厚みt3は取付部21から摩耗部22に向かうにしたがって薄くなる。このように中間部23の厚みt3が徐々に変化することにより、厚みが急激に変化する箇所が生じない。厚みが急激に変化すると、その箇所に掘削時に応力集中が生じやすくなり破損が生じやすくなる。しかし本実施の形態では、そのような箇所が生じないため、破損が生じにくくなる。
【0069】
また本実施の形態においては
図5に示されるように、第2部分22bは補強リブである。これにより第1部分22aが第2部分22bで補強され、剛性が向上する。
【0070】
また本実施の形態においては
図5に示されるように、第2部分22bは取付部21まで延びている。このように第2部分22bが、厚みt2の薄い第1部分22aの上下方向の全体に位置することにより、剛性をさらに高めることができる。
【0071】
また本実施の形態においては
図5に示されるように、第2部分22bの第2端部22Rは、取付部21の第2面20Bに対して第4面20Dとは反対側に位置する部分を有している。これにより第2部分22bの厚み(t4-t2)を厚くすることができ、剛性をさらに高めることができる。
【0072】
また仮にカッティングエッジ20の前面FSが長手方向にLDに沿って切った断面において凹凸を有していると、土などがカッティングエッジ20の長手方向LDに沿って流れにくくなる。
【0073】
これに対して本実施の形態においては
図3に示されるように、カッティングエッジ20の前面FSは単一の面(湾曲面)から構成されている。また
図6に示されるように、カッティングエッジ20の前面FSは長手方向LDに沿って切った断面において直線形状または単一の湾曲形状を有している。これにより土などをカッティングエッジ20の長手方向LDの外側に排出しやすくなるため、整地作業の効率が向上する。
【0074】
(実施の形態2)
<カッティングエッジ20の構成>
次に、実施の形態2におけるカッティングエッジの構成について
図7~
図10を用いて説明する。
【0075】
図7および
図8は、それぞれ実施の形態2における作業機械に含まれるカッティングエッジの構成を前方から見た部分斜視図および後方から見た部分斜視図である。
図9および
図10は、それぞれ
図8のIX-IX線に沿う断面図およびX-X線に沿う断面図である。
【0076】
図7に示されるように、本実施の形態のカッティングエッジ20は、実施の形態1の構成と比較して、カッティングエッジ20の前面FSに窪み20Gが設けられている点において異なっている。
【0077】
複数の窪み20Gが、カッティングエッジ20の長手方向LDに沿って配置されている。複数の窪み20Gは、たとえば等間隔で配置されている。複数の窪み20Gの各々は、第1部分22aの先端22Tから取付部21の先端21Tに向かって延びている。
【0078】
図8に示されるように、上記窪み20Gは、第2部分22bにより構成されている。第2部分22bは、傾斜部22baと、後端部22bbと、1対の側部22bcとを有している。
【0079】
1対の側部22bcの各々は、第1部分22aの第4面20Dの一部から第3面20Cとは反対側に延びている。1対の側部22bcは互いに間隔をあけて配置されている。1対の側部22bcはたとえば互いに平行に延びている。
【0080】
傾斜部22baおよび後端部22bbの各々は、1対の側部22bcを架け渡すように配置されている。1対の側部22bcの各々は、第1部分22aの第4面20Dと傾斜部22baの側端部とを接続している。また1対の側部22bcの各々は、第1部分22aの第4面20Dと後端部22bbの側端部とを接続している。
【0081】
図9に示されるように、傾斜部22baは、第1部分22aの先端22Tに対応する位置から取付部21に向かって延びている。傾斜部22baは、第1部分22aの先端22Tに対応する位置に近付くにしたがってカッティングエッジ20の前面FSに近付くようにカッティングエッジ20の前面FSに対して傾斜している。
【0082】
後端部22bbは、傾斜部22baの取付部21側の端部に接続されている。後端部22bbは、傾斜部22baの取付部21側の端部から取付部21に向かって延びている。後端部22bbは、中間部23を超えて取付部21に達している。後端部22bbは取付部21に接続されている。後端部22bbの傾斜部22baに接続された箇所から取付部21側にへ延びる部分は、カッティングエッジ20の前面FSに対して平行に延びている。
【0083】
傾斜部22baおよび後端部22bbの各々の前方の面は、窪み20Gの底面を構成している。1対の側部22bcの側面は、窪み20Gの側面を構成している。
【0084】
後端部22bbにおける前面FS側とは反対側の第2端部22Rは、取付部21の第2面20Bよりも前面FSから離れて位置している。前面FSから後端部22bbにおける第2端部22Rまでの距離t4は取付部21の厚みt1よりも大きい。
【0085】
なお
図8におけるV-V線に沿う断面の構成は、
図5に示す実施の形態1の構成と同じである。
【0086】
図10に示されるように、第2部分22bの側部22bcは、第1部分22aの強度を補強するための補強リブとして機能する。
【0087】
前面FSから後端部22bbにおける第2端部22Rまでの距離t4は、第1部分22aの厚みt2と後端部22bbの厚みt5との合計よりも大きい。窪み20Gの深さDは、第1部分22aの厚みt2よりも大きい。
【0088】
なお上記以外の本実施の形態のカッティングエッジ20の構成は、実施の形態1における構成とほぼ同じであるため、実施の形態1と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0089】
<効果>
本実施の形態によれば、
図5に示されるように、第1部分22aの第2厚みt2は取付部21の第1厚みt1よりも薄い。このため実施の形態1と同様、掘削性が良好となり、ブレード11を掘削対象物に押付ける力を低減することができる。
【0090】
また第2部分22bの側部22bcが、第1部分22aの第4面20Dの一部から第3面20Cとは反対側に延びている。この側部22bcにより第1部分22aの強度が補強される。これによりカッティングエッジ20の剛性が向上する。
【0091】
さらに側部22bcが、第1部分22aの先端22Tにも配置されている。これによりカッティングエッジ20の先端(第1部分22aの先端22T)の剛性が向上するため、カッティングエッジ20の剛性が向上する。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 作業機、2 車体フレーム、2F 前端、2a リアフレーム、2aa エンジン室、2ab 外装カバー、2b フロントフレーム、3 キャブ、4 前輪、5 後輪、6 ステアリングシリンダ、10 作業機械(モータグレーダ)、11 ブレード、11a ブレード本体、11aa,FS 前面、11ab 後面、11b ボルト、11c ナット、11d レール、11e 保持枠、11f,20h 貫通孔、12 ドローバ、13 旋回サークル、14,15 リフトシリンダ、16 ドローバシフトシリンダ、17 ブレードシフトシリンダ、18 油圧モータ、20 カッティングエッジ、20A 第1面、20B 第2面、20C 第3面、20D 第4面、20E 第5面、20F 第6面、20h 部分、20ha 拡径部、20hb 同径部、21 取付部、21M 途中位置、21T,22T 先端、22 摩耗部、22F 第1端部、22R 第2端部、22a 第1部分、22b 第2部分、22b1 先端部、22b2 根元部、22ba 傾斜部、22bb 後端部、22bc 側部、23 中間部。