(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】医療用プロジェクターの支持構造
(51)【国際特許分類】
A61B 90/35 20160101AFI20230228BHJP
【FI】
A61B90/35
(21)【出願番号】P 2020512256
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014612
(87)【国際公開番号】W WO2019194173
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018071324
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医療分野研究成果展開事業、産学連携医療イノベーション創出プログラム「プロジェクションマッピングによる近赤外画像の可視化とリアルタイムナビゲーションによる手術システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】波多野 悦朗
(72)【発明者】
【氏名】新田 隆士
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 智
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝之
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-269461(JP,A)
【文献】特開2004-057614(JP,A)
【文献】特開2017-006620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/35
A61B 90/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに設置されたスタンド装置
(1)の横方向に延びる支持アーム
(6)の
先端部に、先端側が二股状に分岐したパイプ形状の保持アーム
(9)を、支持アーム
(6)の軸心に合致した第1回転軸
(X)を中心に回転自在に取付け、
保持アーム
(9)の
二股状に分岐した最先の端部(10)間に、支持アーム
(6)の第1回転軸
(X)に直交する第2回転軸
(Y)を中心にして回転自在な円筒部
(11)を
端部(10)と通気可能な状態で取付け、
該円筒部
(11)に、外輪
(14)と内輪
(15)との間に複数の転動体
(16)を介在させたリング状ベアリング
(13)の外輪
(14)部分を固定し、
リング状ベアリング
(13)の内部に、フレーム
(22)の外側にカバー
(23)を設けた中空構造で下面より光線を照射する医療用プロジェクター
(18)を、リング状ベアリング
(13)の内輪部分に固定した状態で、リング状ベアリング
(13)の中心軸
(Z)を中心にして回転自在に配置した医療用プロジェクター
(18)の支持構造であって、
前記医療用プロジェクター
(18)のカバー
(23)の側面周囲に円筒部
(11)の上下幅に相応する上下幅の切欠部
(25)を形成すると共に該切欠部
(25)の上下両端から外側へ向けて外縁が円形のフランジ
(37)を形成し、円筒部
(11)の上下端部に
外周部が前記フランジ(37)に対して重なった状態で摺動自在なリング板
(38)を設けて、円筒部
(11)とカバー
(23)との間をカバー
(23)内部と同一空間化し、
カバー
(23)の頂部に空気取入口
(24)を形成すると共に医療用プロジェクター
(18)内の空気を円筒部
(11)の前記端部(10)との接続部に形成した開口
(41)から保持アーム
(9)を介して排出可能としたことを特徴とする医療用プロジェクターの支持構造。
【請求項2】
支持アーム(6)を保持アーム(9)と連通するパイプ形状として、支持アーム(6)の内部に排気ポンプ(21)を設け、医療用プロジェクター
(18)内の空気を保持アーム
(9)及び支持アーム
(6)を介して外部へ排出可能としたことを特徴とする請求項1記載の医療用プロジェクターの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用プロジェクターの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
手術で使用される顕微鏡やカメラ等の医療機器は、フロアに設置されたスタンド装置から横方向に延びる支持アームの先端部に支持される。支持アームの先端部には複数の回転軸を有する保持アームが取付けられ、その保持アームの先端に医療機器が固定される(例えば、特許文献1参照)。関連技術は日本国特許公開公報特開2017-6620号(特許文献1)に例示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
顕微鏡やカメラ等の医療機器はそれ自体が多くの熱を発生する構造ではないため、特別な排熱構造を必要としないが、近年では内部に発熱部を備えた大型の医療機器も開発されている。例えば、手術部位の臓器における蛍光画像を撮影し、それを可視画像化してプロジェクションマッピング技術により臓器に直接投影する医療用プロジェクターが開発されている。このような医療用プロジェクターは内部に発熱部を有するため、医療用プロジェクターの支持構造を利用して内部の熱を外部へ確実に排出する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、医療用プロジェクターの内部の熱を外部へ確実に排出することができる医療用プロジェクターの支持構造を提供することができる。
【0005】
本発明の第1の技術的側面によれば、フロアに設置されたスタンド装置の横方向に延びる支持アームの先端部に、先端側が二股状に分岐したパイプ形状の保持アームを、支持アームの軸心に合致した第1回転軸を中心に回転自在に取付け、
保持アームの二股状に分岐した最先の端部間に、支持アームの第1回転軸に直交する第2回転軸を中心にして回転自在な円筒部を端部と通気可能な状態で取付け、該円筒部に、外輪と内輪との間に複数の転動体を介在させたリング状ベアリングの外輪部分を固定し、リング状ベアリングの内部に、フレームの外側にカバーを設けた中空構造で下面より光線を照射する医療用プロジェクターを、リング状ベアリングの内輪部分に固定した状態で、リング状ベアリングの中心軸を中心にして回転自在に配置した医療用プロジェクターの支持構造であって、前記医療用プロジェクターのカバーの側面周囲に円筒部の上下幅に相応する上下幅の切欠部を形成すると共に該切欠部の上下両端から外側へ向けて外縁が円形のフランジを形成し、円筒部の上下端部に外周部が前記フランジに対して重なった状態で摺動自在なリング板を設けて、円筒部とカバーとの間をカバー内部と同一空間化し、 カバーの上面部に空気取入口を形成すると共に医療用プロジェクター内の空気を円筒部の前記端部との接続部に形成した開口から保持アームを介して排出可能としたことを特徴とする。
【0006】
本発明の第2の技術的側面によれば、支持アームを保持アームと連通するパイプ形状として、支持アームの内部に排気ポンプを設け、医療用プロジェクター内の空気を保持アーム及び支持アームを介して外部へ排出可能としたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】スタンド装置に支持された医療用プロジェクターを示す斜視図。
【
図2】スタンド装置に支持された医療用プロジェクターを示す側面図。
【
図3】医療用プロジェクターの内部構造を示す説明図。
【
図4】医療用プロジェクターのカバーの構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好適な実施形態を
図1~
図13に基づいて説明する。以下において前後左右の方向性は
図1に示された通りである。
【0009】
手術室内のフロア上に設置されているスタンド装置1は、ベース上で水平方向に回転自在なスタンド本体2を備えている。スタンド本体2には、前アーム3及び後アーム4を含む平行リンク機構Rが、前アーム3の途中に設定された回転軸5を中心にして回転自在に支持されている。
【0010】
平行リンク機構Rの上辺は支持アーム6の後側部分により形成され、支持アーム6はそのまま前方へ延びている。平行リンク機構Rの下辺は下アーム7の前側部分により形成され、下アーム7はそのまま後方へ延び、後端にはカウンタウェイト8が取付けられている。後アーム4及び支持アーム6はパイプ形状で互いに連通している。支持アーム6の内部には排気ポンプ21が内蔵されている。
【0011】
支持アーム6の先端部には、先端側が二股状に分岐した保持アーム9が取付けられている。保持アーム9は支持アーム6の軸心に合致した第1回転軸Xを中心に回転自在に取付けられている。この保持アーム9もパイプ形状で、支持アーム6と連通している。
【0012】
保持アーム9の二股状に分岐した最先の端部10間にはリング状の円筒部11が端部10と通気可能な状態で取付けられている。円筒部11はその最大直径部分が、第1回転軸Xに直交する第2回転軸Yを中心にした状態で、端部10に対して回転自在に取付けられている。
【0013】
リング状ベアリング13の内部には医療用プロジェクター18が配置されている。医療用プロジェクター18は概略直方体で、内部のフレーム22にカバー23を設けた中空構造をしている。カバー23の頂部には空気取入口24が形成されている。カバー23の側面周囲には円筒部11の上下幅に相応する上下幅の切欠部25が形成されている。またこの切欠部25の上下両端からは外側へ向けて外縁が円形のフランジ37が形成されている。
【0014】
円筒部11の上下端部には外周部が前記フランジ37に対して重なった状態で摺動自在な合成樹脂製のリング板38が設けられ、円筒部11とカバー23との間をカバー23の内部と同一空間化している。
【0015】
円筒部11の内面には複数の凸部12が円周方向に沿って形成されている。この凸部12上にリング状ベアリング13が取付けられている。リング状ベアリング13は、外輪14と内輪15との間に複数のコロ(転動体)16を介在させた構造で、その外輪14がネジ17により凸部12に固定されている。
【0016】
その側面の周囲に複数の取付部品19が固定されており、その先端部がリング状ベアリング13の内輪15に下側からネジ20により固定されている。リング状ベアリング13の中心軸Zは前記第1回転軸X及び第2回転軸Yと直交し、医療用プロジェクター18はこの中心軸Zを中心に円筒部11及び外輪14に対して回転自在となる。
【0017】
医療用プロジェクター18の下端部には操作ハンドル26が左右にそれぞれ取付けられている(
図5ではハンドル26の図示省略)。この操作ハンドル26はスタンド装置1の各回転部における電磁クラッチや医療用プロジェクター18を操作するためのものである。
【0018】
医療用プロジェクター18の側面部には、その下端周囲に7つの照明27が異なる長さの支持バー28により医療用プロジェクター18から放射方向に離れた状態で且つ円周状に並んだ状態で配置されている。この照明27は白色光Hを照射してドクターDの手元の手術部位をあらゆる方向から照らして、ドクターDの手の陰により手術部位が暗くなることを解消するためのものである。
【0019】
スタンド装置1によりドクターDの頭部より高い位置に支持された医療用プロジェクター18は患者Pの手術中の臓器Gから蛍光部分を撮影して、それを可視画像化してリアルタイムで臓器Gに投影するための装置である。医療用プロジェクター18の下面には窓29が形成され、その周囲には特定波長の励起光Eを発する励起光照明30が設けられている。窓29の周囲に励起光照明30があるため、励起光Eを臓器Gに対してあらゆる方向から照射することができる。
【0020】
医療用プロジェクター18の内部には窓29の真上に光を部分的に透過・反射する光分岐手段31が設けられている。更に内部にはプロジェクター部32とカメラ部33が設けられている。カメラ部33の内部には蛍光カメラ34と可視光カメラ35が設けられており、蛍光と可視光に分離する図示せぬ光学フィルタ手段も設けられている。
【0021】
患者Pには予め人体に安全な蛍光試薬が投与される。手術室内の無影灯36は基本的に消灯する(蛍光強度によっては点灯する場合もある)。励起光照明30から特定波長の励起光Eを手術部位の臓器Gに照射する。すると臓器Gを含む術野において、肉眼では見えない組織表面下の血管やリンパ管の流れ或いは腫瘍等が蛍光発光部Fとして発光する。その蛍光発光部Fからの蛍光を含む術野からの反射光Aを窓29から医療用プロジェクター18の内部に取入れてカメラ部33に導く。カメラ部33では反射光Aを蛍光と可視光に分離し、蛍光は蛍光カメラ34で、可視光は可視光カメラ35で撮影する。
【0022】
蛍光カメラ34で撮影された蛍光画像Bは可視画像化されてプロジェクター部32へ送られ、プロジェクター部32から光分岐手段31を介して窓29より臓器Gに投影される。蛍光画像Bが臓器Gにリアルタイムで投影されるプロジェクションマッピングとなる。リアルタイムの投影のため、臓器Gの変形や移動にも時差なく追従し、ドクターDはその臓器Gに投影された蛍光画像Bを参考にして手術を行うことができる。
【0023】
手術中に医療用プロジェクター18の投影方向を変更する場合は、操作ハンドル26を握りながら操作することにより、スタンド装置1の回転部分の電磁クラッチをフリーにして、医療用プロジェクター18を全体的に上下或いは前後左右に移動させることができる。そして医療用プロジェクター18が、第1回転軸Xを中心に保持アーム9ごと回転し、第2回転軸Yを中心にリング状ベアリング13ごと回転し、リング状ベアリング13の中心軸Zを中心に回転するため、投影方向を任意に変更することができる。
【0024】
医療用プロジェクター18のフランジ37と、円筒部11のリング板38とが摺動自在なため、その間の空間を密閉化した状態で、医療用プロジェクター18を中心軸Zを中心にして回転させることができる。
【0025】
図8に示す如く、パイプ状の保持アーム9と連通している端部10は円筒部11
の前記端部10との接続部に形成した開口41を介してカバー23の内部空間と連通している。保持アーム9と支持アーム6も連通し、支持アーム6と後アーム4も連通している。後アーム4もパイプ形状で、支持アーム6と連通しており、下端は開放されている。後アーム4と下アーム7との連結部39には連通路40が形成されている。
【0026】
従って、支持アーム6内の排気ポンプ21を操作ハンドル26によりONにすると、カバー23内の空気Nが端部10及び保持アーム9を介して吸引されると共に新たな空気Nが頂部の空気取入口24から医療用プロジェクター18内に導入される。そして医療用プロジェクター18内の空気Nは内部の熱と共に、保持アーム9、支持アーム6、後アーム4を経て、後アーム4の下端より外部へ排出される。
【0027】
本発明の第1の技術的側面によれば、医療用プロジェクターのカバーに形成された切欠部と円筒部との間をカバー内部と同一空間化して、その同一空間化された部分を利用して、医療用プロジェクターの内部の空気を保持アームから外部へ排出するため、カバー内部の熱を空気と一緒に外部へ排出することができる。
【0028】
本発明の第2の技術的側面によれば、支持アームもパイプ形状として、医療用プロジェクター内の空気を支持アームを介して医療用プロジェクターから離れた位置に排出することができる。
【0029】
(米国指定)
本国際特許出願は米国指定に関し、2018年4月3日に出願された日本国特許出願第2018-071324号について米国特許法第119条(a)に基づく優先権の利益を援用し、当該開示内容を引用する。