(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】袋状化学発光体
(51)【国際特許分類】
A63H 27/10 20060101AFI20230228BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20230228BHJP
F21K 2/06 20060101ALI20230228BHJP
G09F 19/00 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
A63H27/10 B
A63H27/10 D
A63H33/22 A
F21K2/06
G09F19/00 D
(21)【出願番号】P 2018105160
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000230630
【氏名又は名称】株式会社ルミカ
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】原田 士郎
(72)【発明者】
【氏名】山手 哲郎
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-075826(JP,A)
【文献】特開2004-265809(JP,A)
【文献】登録実用新案第3099832(JP,U)
【文献】特開2016-150956(JP,A)
【文献】特開昭59-001588(JP,A)
【文献】特開2017-191690(JP,A)
【文献】米国特許第05860845(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
F21K 2/06
G09F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の化学発光体用組成物と第二の化学発光体用組成物とを混合することで化学発光を生じさせる前記第一の化学発光体用組成物を含有する第一の内袋と、前記第二の化学発光体用組成物と、多孔性シートと、を内部に配置した化学発光部材と、
前記化学発光部材を内部に配置し
気体の導入部を有する外袋と、を有し、
前記化学発光部材の両端が、外袋に固定部で固定されたものであ
り、
前記導入部が、前記化学発光部材の外側に配置され、前記外袋の内側の空間に前記気体を導入するためのものである袋状化学発光体。
【請求項2】
前記第二の化学発光体用組成物を含有する第二の内袋を有する請求項1記載の袋状化学発光体。
【請求項3】
前記第一の内袋および/または前記第二の内袋が、易割部を有するシート状の袋である請求項2記載の袋状化学発光体。
【請求項4】
前記化学発光部材が、偏平状である請求項1~3のいずれかに記載の袋状化学発光体。
【請求項5】
スティックバルーンである、請求項1~4のいずれかに記載の袋状化学発光体。
【請求項6】
前記導入部が、逆止弁を備える請求項1~5のいずれかに記載の袋状化学発光体。
【請求項7】
前記外袋が、光拡散性フィルムを用いた袋体である請求項1~6のいずれかに記載の袋
状化学発光体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状化学発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なスポーツやイベントの応援グッズとして、応援棒とも呼ばれる棒状の風船であるスティックバルーンが用いられている。このスティックバルーンは、その表面に文字や図が印刷等で表示されて利用され、適宜他の付随的構成が外部に取り付けられる場合がある。例えば特許文献1は、旗片がスティックバルーン本体に取り付けられたものであるスティックバルーンを開示するものである。
【0003】
また、スティックバルーン等の風船は、非使用時には気体を封入させずに保管され、使用時に袋体内に気体を吹き込まれる。また、気体吹込み後に、萎まないように逆止弁等が取り付けられる。例えば特許文献2は逆止弁付きバンバンスティックを開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3182174号公報
【文献】特許第5853251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスティックバルーンは、日中の屋外などの明るい環境で使用するには適していたが、夜間や屋内で照明を消灯しているときなど、暗いところでは見にくかった。
発光ダイオードなどを用いた電気式の発光部を有する風船なども開示されているが、発光ダイオードなどを発光させるための光源となる電池や電源が必要であった。また、発光部の光が強く、一部のみが明るいような明るさのムラが生じたり、発光部が重く振ったりするとき取り扱いにくいものとなる場合があった。
係る状況下、本発明は、暗いところでも視認しやすい発光する袋状の発光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 第一の化学発光体用組成物と第二の化学発光体用組成物とを混合することで化学発光を生じさせる前記第一の化学発光体用組成物を含有する第一の内袋と、前記第二の化学発光体用組成物と、展開された多孔性シートと、を内包する化学発光部材と、
前記化学発光部材を内包し流体の導入部を有する外袋と、を有する袋状化学発光体。
<2> 前記第二の化学発光体用組成物を含有する第二の内袋を有する前記<1>記載の袋状化学発光体。
<3> 前記第一の内袋および/または前記第二の内袋が、易割部を有するシート状の袋である前記<2>に記載の袋状化学発光体。
<4> 前記化学発光部材が偏平状である前記<1>~<3>のいずれかに記載の袋状化学発光体。
<5> 前記外袋が、内包される前記化学発光部材の一部を固定する固定部を有する前記<1>~<4>のいずれかに記載の袋状化学発光体。
<6> 前記導入部が、逆止弁構造を備える前記<1>~<5>のいずれかに記載の袋状化学発光体。
<7> 前記外袋が、光拡散性フィルムを用いた袋体である前記<1>~<6>のいずれかに記載の袋状化学発光体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、暗いところでも視認しやすい発光する袋状化学発光体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る袋状化学発光体の概略平面図である。
【
図2】本発明に係る袋状化学発光体の使用状態を説明するための概略断面図である。
【
図3】本発明に係る袋状化学発光体の使用状態を説明するための概略断面図である。
【
図4】本発明に係る袋状化学発光体の実施例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0011】
[第一の実施形態]
図1に本発明の袋状化学発光体の第一の実施形態を示す。
図1は袋状化学発光体10を平面視したものである。袋状化学発光体10は、外袋31と、外袋31に内包された化学発光部材2を有する。化学発光部材2は、第一の内袋211と、第二の内袋212とを内包する発光部材袋22を有し、発光部材袋22内に多孔性シート23が展開され広げた状態で配置されている。第一の内袋211には第一の化学発光体用組成物が含有されており、第二の内袋には第二の化学発光体用組成物が含有されている。第一の化学発光体用組成物と第二の化学発光体用組成物が混合されると化学発光が生じる。外袋31には流体の導入部材4が設けられている。導入部材4は導入口41から袋状化学発光体10内に流体を導入できる。化学発光部材2の左端は外袋31の左端に固定部32で固定されている。化学発光部材2の右端は外袋31の右端に固定部33で固定されている。この固定は、例えば溶着したり、接着剤で接着したり、クリップなどの固定部材で固定することができる。
【0012】
図2は、袋状化学発光体10の略断面図である。また、
図2は、袋状化学発光体10に気体や液体などの流体を供給して膨らませる操作を説明するための図である。導入部材4の導入口41に、ストロー5を挿し込み、流体を袋状化学発光体10内に導入することで、外袋31内に流体が供給されて膨らむ。例えば、導入口41を気体の吹込口として、ヒトが呼気で、気体を吹込むことで風船上に膨らませることができる。
【0013】
導入部材4は、二層の粘着性シートにより成形されており、導入部材4は、袋状化学発光体10の外側からその2層の粘着性シート間にストローが導入されやすい構造となっている。この導入のために、二層の粘着性シートには、接着性を低減した流体の通路部を設けており、ストロー5の導入口41への挿し込みや、粘着性シート間からの流体の導入により通路部のみが選択的に開口して、流体が通過しやすいものとなる。導入部材4は、外袋31に溶着されたり、接着剤を用いたりして固定されている。
導入部材4の導入口41は、化学発光部材2の外側に配置されており化学発光部材2内に導入部材4から供給された流体は入らないため、化学発光部材2の形状は安定し内部の発光が安定することで袋状化学発光体10全体の発光もより安定したものとなる。
【0014】
図3は、流体を供給し膨らませた後の、袋状化学発光体10の略断面図である。
図2に示すようなストロー5を用いて空間34に流体を供給することで、外袋31内は流体で膨張し、バルーン状となる。供給を完了し、ストロー5を抜き取ると、導入部材4を形成している二層の粘着性シートは、互いに接着して閉じ、空間34内では、導入部材4の通路部を拡張する力が働きにくくなり、接着状態が維持されて流体は抜けにくくなる。
【0015】
袋状化学発光体10は、
図1に示す偏平状の状態で、第一の内袋211および第二の内袋212に対応する部分を押圧し、それぞれに含有されていた第一の化学発光体用組成物と第二の化学発光体用組成物とを発光部材袋22内に漏出させて混合する。偏平状の状態のまま、混合された化学発光体用組成物を、手で押し広げたり、上下に振動させたりして、発光部材袋22内で多孔性シート23に接触するように展開する。多孔性シート23は、その孔内などで液状や固体状などの化学発光体用組成物を保持する。これにより、発光部材袋22内に広く化学発光体用組成物が展開されて保持された状態となる。
【0016】
この化学発光体用組成物を混合し展開した後、前述したように、
図2に示すようなストロー5を用いて膨らませることで、
図3に示すような膨らんだ袋状化学発光体10となる。この化学発光は、暗いところでも視認しやすく、袋状化学発光体10は幻想的な発光を伴うものとなる。
【0017】
[化学発光部材2]
化学発光部材2は、混合することで発光する第一の化学発光体用組成物と、第二の化学発光体用組成物とを内包する。このような化学発光手段は公知のものなどを適宜採用することができる。例えば、混合することで発光する組成物としては、蛍光液と酸化液とを混合することで発光する化学発光体を好適に用いることができる。
この化学発光部材は、袋状化学発光体10内で均一に広く発光し軽い偏平状とした化学発光体等を用いることが好ましく、例えば特開2004-265809号公報や、特開2016-150956号公報を適宜参照して用いることができる。
【0018】
[第一の内袋211、第二の内袋212]
第一の化学発光体用組成物は、第一の内袋211に含有される。また、第二の化学発光体用組成物は、第二の内袋212に含有されたものとすることができる。なお、第二の化学発光体用組成物は、発光部材袋22内に内包され、保管時に第一の化学発光体用組成物と分離されていればよい。よって、第二の化学発光体用組成物は、第二の内袋を用いずに、第一の内袋211の外部であり発光部材袋22内に内包させてもよいし、多孔性シート23に保持させたりしたものとしてもよい。
【0019】
第一の内袋および第二の内袋(以下、合わせて「発光体用内袋」と称する場合がある。)は、含有される化学発光体用組成物に対する耐性を有するものを適宜用いることができる。例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のように、化学発光体に用いられる溶媒等に対する耐性が高い樹脂製のシートにより成形された袋が好ましく用いられる。また、アルミ蒸着やアルミシート層を積層したアルミパウチなども用いることができる。
【0020】
例えば、第一の化学発光体用組成物が酸化液の場合、第二の化学発光組成物には蛍光液が用いられる。これらの組成物は、流動性が高い液状やゲル状の化学組成物として調製されたものを用いることが好ましい。これらの化学組成物は、流動性が高いことで、使用時に速やかに内袋から漏出し、発光部材袋22内に展開されて混合される。
【0021】
発光体用内袋には易割部を設けておくことが好ましい。この易割部は、例えば、厚みが薄い領域を設けたシートにより内袋を作成したり、内袋をテープで留めた部分がテープの粘着力に依存して破割しやすくしたり、内袋をヒートシールした部分が他の領域と比べて柔軟性が低下することで応力が集中しやすくなることで、易割部として機能させることができる。このような易割部は、内袋を破割するための押圧がかかったときに、容易に破割する。
【0022】
[発光部材袋22]
発光部材袋22は、その内部に化学発光体用組成物を内包した状態で保管・使用される。このため、発光部材袋22は、化学発光体用組成物に用いる有機溶媒等に対する耐性を有するシート等で成形されたものを用いることが好ましい。また、発光部材袋22は、その内部の化学発光を外部に透過させるために透光性を有するものである。この発光部材袋22は透明でもよいし、光拡散性を有するものでもよく、白濁したものや適宜着色したものなども用いることができる。
【0023】
発光部材袋22は、ポリエチレン(PE)および/またはポリプロピレン(PP)製シートの内層と、ポリエチレンテレフタレート(PET)製シートの外層との積層シートとすることができる。このような構成とすることで、内層のシートにより外袋内の化学組成物に対する耐溶媒性を維持しつつ、靱性が高いPETにより、内層のシートや外袋の内部構造に損傷を与えにくくなるため、安全性に優れている。
【0024】
[多孔性シート23]
発光部材袋22内部には多孔性シート23を配置する。多孔性シートとは、多量の細孔があるシートであり、化学発光用組成物を浸透させ保持することができるものである。このようなシートとしては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、レーヨンなどを素材とする織布や不織布等が挙げられ、これらの素材を単独で用いた不織布や、あるいはこれらを複数組み合わせた複合不織布を用いることができる。
【0025】
この多孔性シートは、化学発光用組成物の浸透・保持性と、一定の形状保持性(機械的強度)を有することが好ましい。よって、多孔性シートとして、化学発光用組成物に用いられる化合物、特に溶媒に対する耐性があり、それらの化合物と接しても分解しにくいように、適宜、複数の素材を組み合わせた複合不織布等を用いてもよい。この多孔性シートの厚みは30μm以上や50μm以上程度のものが用いられ、偏平状化学発光体の用途にも併せて適宜、2mm以下や1mm以下、500μm以下程度の厚みのものが用いられる。
【0026】
この多孔性シートは、化学発光部材2の発光部材袋22の形状に合わせて内部に広く配置される。このような構成とすることで、外袋内で鉛直方向の下側に組成物がたまることを防ぐことができ、化学発光部材2全体に広く均一な発光部を設けることができる。
【0027】
発光部材袋22に配置される多孔性シート23を、発光部材袋22内に複数の層を有するように配置することが好ましい。すなわち、複数枚の多孔性シート23を配置したり、1枚の多孔性シートを折り曲げて複数の層となるように配置することが好ましい。複数の層を有するように配置することで、それぞれの層(シート)の吸液量を制御して発光性を調整したり、全体としての機械的強度を向上させたりといった、より高度な設計を行うことができる。また、この複数の層の間に発光体用内袋(211、212)を設ければ、より化学発光体用組成物が展開されて、多孔性シート23に保持されやすくなる。
【0028】
[外袋31]
外袋31は、その内部の空間34に気体などの流体を保持することができ、流体の導入等により膨張することができる袋である。外袋31は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのような熱可塑性樹脂シート等の柔軟性を有するシート状のもので成形された袋を用いることができる。外袋31は、例えば、ポリエチレン(PE)および/またはポリプロピレン(PP)製シートの内層と、ポリエチレンテレフタレート(PET)製シートの外層との積層シートとすることもできる。このような構成の場合、内層のシートにより化学発光部材2から仮に化学発光用組成物が一部漏出したとしても、外袋31内で化学組成物のさらなる漏出を防止し、靱性が高いPETにより、内層のシートや外袋の内部構造に損傷を与えにくくなるため、安全性に優れている。
【0029】
また外袋31は、透光性を有する光拡散性フィルムを用いて成形された袋であることが好ましい。これにより、内部の化学発光を投光し、全体が優れた均一性で拡散して発光する袋状化学発光体とすることができる。また、内部に多孔性シート23も配置されていることから、内部での拡散と、外袋31の拡散とにより、優れた均一性の発光体となる。光拡散性フィルムは、JIS規格に則った全光線透過率やヘイズを指標として、適宜選択して使用してもよい。全光線透過率は60%以上や70%以上、75%以上、80%以上としてもよい。ヘイズは、20%以上や30%以上、40%以上、50%以上としてもよい。これらを測定する場合、後述するような文字や図形を印刷等した部分以外で測定してもよい。
【0030】
外袋31は、透光性と光拡散性を有するものであれば、任意の色のものを用いることができる。また、外袋31は、文字や図形等を表示したものとしてもよい。これらの文字や図形は、外袋に印刷等したものでもよいし、描いたり、貼付けて表示してもよい。本発明の袋状化学発光体は、非使用時には気体が入っていない偏平状とすることができるため、使用者が任意の文字や図形等を描くことにも適している。また、外袋31の形状は、袋状化学発光体の全体構造の主要な部分となる。この外袋31の形状は、棒状や、球状、多角柱状、またこれらの組み合わせや、意匠性を考慮した任意の立体形状とすることができる。特に、膨らませやすさや、使用時に叩き合わせやすさなどを考慮すると、棒状のいわゆるスティックバルーンの形状とすることが好ましい。
【0031】
[固定部32、33]
袋状化学発光体10は、外袋31において、内包される化学発光部材2の一部を固定する固定部を有することが好ましい。この固定部は、固定部32および固定部33のように、袋状化学発光体10に内包される化学発光部材2の両端を固定するものでもよいし、使用態様を考慮し、固定部32または固定部33の一方のみを固定するような、化学発光部材2の一部のみを固定するものでもよい。この固定は、例えば溶着したり、接着剤で接着したり、クリップなどの固定部材で固定することができる。
【0032】
[導入部材4、導入口41]
袋状化学発光体10は、導入部材4を有する。導入部材4は、袋状化学発光体10の外部から外袋31内に流体を導入するための導入部を形成する構造である。ここで導入する流体は、気体や液体であってもよい。導入する流体は気体であることが好ましい。気体を導入することで、袋状化学発光体10が軽量となり、取り扱い性に優れた大型の袋状化学発光体とすることができる。気体は、空気や呼気、ヘリウムガス等の各種風船を膨らませるとき使用されるものが好適に使用される。
【0033】
導入部の構造を例示すると、導入部材4のように、導入口41を有する構造としたり、外袋31の溶着部等に切り込み部などの開口部分を設けて置き、この開口部分から流体をストローなどの給気手段を適宜用いて吹き込むなどの手法で流し込むことで、外袋31の空間34を流体で使用時に充満させることができる。この導入部となる導入部材4は、逆止弁を備えることが好ましい。逆止弁を備えることで、使用するとき外袋31内に流し込んだ流体が漏れることを防止して使用することができる。逆止弁には、流体の逆止弁として利用される各種構造を用いることができる。
【0034】
導入部材4の導入口41は、袋状化学発光体10を使用後に、排出手段を用いて流体を排出するための排出口として用いてもよい。例えば、ストローを挿し込み、呼気により膨らませる構造の場合、ストローを挿し込むことで逆止弁を開口状態で維持させて、そのストローを介して排気するものとしてもよい。このような排気もできる導入部材とすることで、使用後に速やかに袋状化学発光体10の空間34に充填していた流体を除去することができ、袋状化学発光体10の嵩を小さくして保管や移動、廃棄等することができる。
【0035】
袋状化学発光体には、さらに人が持ちやすいように持ち手部を設けたり、複数を連結しやすいように通し穴部分を設けたり、装飾部を設けたりすることもできる。
【0036】
袋状化学発光体は、内部に広く均一に化学発光組成物が展開された状態のため、袋状化学発光体としても全体が発光したものとすることができる。また、膨らませた状態で音を出すために袋状化学発光体を互いに衝突させたり手や物で叩いたり叩きつけても、充填されている流体や外袋の柔軟性が緩衝部分となり、内包されている化学発光体等の漏出も防止することができ、取り扱い性や、玩具としての自由度に適している。本発明に係る袋状化学発光体は、スティックバルーンや、照明、玩具、表示灯、広告用風船などとして用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
図1~3に開示の袋状化学発光体10の構造に準じて、袋状化学発光体を製造して評価した。
【0039】
[化学発光部材]
【0040】
・第一の内袋:
外層から内層(化学発光体用組成物を含有する側)にかけて、PET/アルミニウム/PET/PEとして積層されたシートを用いて成形された袋を使用した。蛍光液充填後に、溶着する部分は、他のシート部よりも薄く、熱変性していることから押圧時に破割しやすい易割部となる。
【0041】
・蛍光液
第一の内袋には、以下の組成の蛍光液を調整して、10g含有させた。
[蛍光液組成]
CPPO:(bis (2,4,5-trichroro-6-carbopentoxiphenyl)oxalate)9.7質量%
蛍光物質:2-EtBPEA(2-ethyl 9,10-bis(phenyl ethynyl)antracene)0.3質量%
溶媒:ATBC(acetyl tributyl citrate)17質量%
BeB(benzyl benzonate)73質量%
【0042】
・第二の内袋
前述の第一の内袋と同様の構成の袋を使用した。
・酸化液
第二の内袋には、以下の組成の蛍光液を調整して、10g含有させた。
[酸化液組成]
過酸化水素(hycrogen peroxide) 3質量%
溶媒:DMP(dimethyl phthalate) 68質量%
EDG(Di(ethylene glycol) ethyl ether) 29質量%
触媒:SS(sodium salicylate) 0.01質量%
【0043】
・発光部材袋
65mm×550mmのポリエチレン製袋を用いた。
【0044】
・多孔性シート
45mm×500mmのポリプロピレン製の不織布を用いた。
【0045】
発光部材袋内に、多孔性シート2枚を拡げて配置し、多孔性シート間に蛍光液が充填された第一の内袋と、酸化液が充填された第二の内袋を配置して、密閉した。
【0046】
[袋状化学発光体]
・外袋
外袋として、65mm×570mmの逆止弁付き吹込口を設けたポリエチレン製袋を用いた。また気体の導入部材として用いる逆止弁付き吹込口は、30mm×100mmの接着性シート2枚を積層したものであり、外袋の端部から10mm外側にはみ出す位置に配置したものである。幅方向の中央に約10mmを残して、その端は長さ方向に圧着して密閉性が高いものとし、圧着しない中央の10mm幅の部分は通気路として機能するものとした。
【0047】
外袋内に、化学発光部材を配置し、化学発光部材の長さ方向の両端は、外袋に固定される配置として溶着により固定して、袋状化学発光体を作製した。
【0048】
作成した袋状化学発光体の外観を
図4(a)に示す。この袋状化学発光体は、吹込口から、ストローにより空気を吹き込むことで膨らませることができる。膨らませた状態の袋状化学発光体の外観を
図4(b)に示す。
【0049】
袋状化学発光体は、
図4(a)に示す膨らませる前の偏平状の状態で、第一の内袋および第二の内袋を配置した部分を押圧することで、化学発光体用組成物を化学発光部材内に漏出させて混合し化学発光を生じさせることができる。また、この化学発光は、押し広げることで化学発光部材内に展開され、不織布に保持される。化学発光を生じさせた状態で、膨らませることで、発光するスティックバルーンとすることができる。
図4(c)は、化学発光させて膨らませた状態の袋状化学発光体を、暗い場所で撮影したものである。袋状化学発光体の長さ方向において均一に全体が発光したものを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の袋状化学発光体は、スティックバルーンや玩具、表示灯等に利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0051】
10 袋状化学発光体
2 化学発光部材
211 第一の内袋
212 第二の内袋
22 発光部材袋
23 多孔性シート
31 外袋
32、33 固定部
4 導入部材
41 導入口
5 ストロー