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特許7233678食品生地焼成装置及び食品生地の焼成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】食品生地焼成装置及び食品生地の焼成方法
(51)【国際特許分類】
   A21B 5/00 20060101AFI20230228BHJP
   A21D 8/06 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A21B5/00
A21D8/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018143128
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020018188
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】517445444
【氏名又は名称】株式会社モリロボ
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】森 啓史
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-085967(JP,A)
【文献】特開昭48-072378(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0095856(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0048182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21B 5/00
A21D 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品生地を丸く薄焼きにするための食品生地焼成装置において、
円盤状で、加熱された状態で円の中心を回転中心として回転可能に設けられた鉄板と、
種類の異なる複数の食品生地を、前記鉄板の半径方向に離間した位置に前記食品生地ごとに落とす生地ドロップ部と、
前記鉄板に向かって落とされた前記食品生地を、前記鉄板の全面に薄く伸ばす生地伸ばし部とを備え、
回転する前記鉄板上で、種類の異なる前記食品生地を、前記鉄板の回転中心に対してそれぞれが同心円状に層をなすように前記生地伸ばし部で薄い円盤状に伸ばしつつ焼成し、
前記生地ドロップ部が、
前記種類の異なる食品生地を種類ごとに貯留可能な生地タンクと、
前記生地タンクに貯留された前記種類の異なる食品生地を、前記鉄板の半径方向に離間した位置に前記食品生地ごとに落とす種類別生地ドロップ機構とを備え、
前記種類別生地ドロップ機構が、前記種類の異なる食品生地を種類ごとに前記鉄板に落とすことが可能な開閉自在な生地ドロップ口からなり、
前記生地ドロップ口が、前記生地タンクの底面に設けられ、前記生地タンクと前記種類別生地ドロップ機構とが一体で形成されることを特徴とする食品生地焼成装置。
【請求項2】
前記種類別生地ドロップ機構が、前記鉄板の回転位置に連動して前記生地ドロップ口を開閉する生地ドロップ口開閉機構を備えることを特徴とする請求項1記載の食品生地焼成装置。
【請求項3】
扁芯回転軸が前記鉄板の回転軸と垂直で、前記鉄板の半径方向に伸びると共に、前記鉄板の回転位置に連動して回転する棒状の棒状カムを備えると共に、
前記生地ドロップ口開閉機構が、
前記棒状カムの外周面に当接し、前記棒状カムの外周面の起伏に沿って上下動するシャフト部と、前記シャフト部の上下動に連動して前記生地ドロップ口を開閉するバルブとを備え、
前記鉄板の回転位置に連動して前記バルブが前記生地ドロップ口を開閉することを特徴とする請求項2記載の食品生地焼成装置。
【請求項4】
前記シャフト部が、
下端が前記棒状カムの外周面に当接し、前記棒状カムの外周面の起伏に沿って上下動するカム側シャフトと、
下端に前記バルブを設けるバルブ側シャフトと、
横長の棒状で、一端が揺動自在に軸支され、他端に前記カム側シャフトの上端が軸支されると共に、両端の間に前記バルブ側シャフトの上端が軸支されるステー部材とを備え、
前記カム側シャフトが前記棒状カムの動きに連動して上下動し、前記カムがシャフトの上下動により前記ステー部材が揺動すると共に、前記バルブ側シャフトが上下動し、
前記バルブ側シャフトの上下動により、前記バルブが前記生地ドロップ口を開閉することを特徴とする請求項3記載の食品生地焼成装置。
【請求項5】
前記シャフト部が、前記カム側シャフトの上下動の量に対して、前記ステー部材の揺動する量を定める揺動量調整機構を備え、
前記揺動量調整機構の設定により、前記生地ドロップ口の開閉量が変化することを特徴とする請求項4記載の食品生地焼成装置。
【請求項6】
前記生地タンク及び前記種類別生地ドロップ機構が、前記種類の異なる食品生地ごとに設けられていることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の食品生地焼成装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の食品生地焼成装置を用いて食品生地を丸く薄焼きにするための食品生地の焼成方法において、
円盤状で、加熱された状態で円の中心を回転中心として回転可能に設けられた鉄板に向かって、種類の異なる複数の食品生地を、前記鉄板の半径方向に離間した位置に前記食品生地ごとに落とし、
前記鉄板に向かって落とされた前記食品生地を、軸に沿って回転自在な円筒又は円柱状で前記鉄板の半径方向に前記軸が位置し、前記鉄板との間に所定間隔を空けた状態で横臥して設けられた生地伸ばし部で、前記鉄板の全面に薄く伸ばしつつ、
それぞれの前記食品生地を、前記鉄板の回転中心に対してそれぞれが同心円状に層をなすように、回転する前記鉄板上で薄い円盤状に焼成することを特徴とする食品生地の焼成方法
【請求項8】
前記食品生地の種類が、色、味、香り若しくは素材又はそれらの組み合わせの違いであることを特徴とする請求項7記載の食品生地の焼成方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉、米粉、そば粉、緑豆の粉等に水、牛乳、卵等を加えて溶いた流動性のある食品生地を、回転する鉄板上で薄く焼くことによって作られる食品生地焼成装置及び食品生地の焼成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小麦粉等に水等を加えて溶いた流動性のある食品生地を鉄板で薄く焼成するための食品生地焼成装置や方法が、各種提案されている。例えば、特許文献1に示される菓子用焼皮のクレープ連続焼成機では、流動状のクレープ生地を投入するホッパーと、ホッパーのクレープ生地を送り込む生地タンクと、生地タンクの上方に設けられた回転ドラムと、回転ドラムの周囲に設けられた複数の加熱焼成板と、生地タンクの内部で回転して生地タンク内のクレープ生地をその表面に移し取り、回転ドラムの加熱焼成板に転写する転写ドラムと、加熱焼成板から焼成後の焼皮を剥離するスクレーパーとを備える装置である。
【0003】
また、特許文献2に示されるように、本願の発明者は、クレープ焼成装置を提案している。この本願発明者によるクレープ焼成装置は、円盤状で、加熱された状態で円の中心を回転中心として回転可能に設けられた鉄板と、クレープ生地を鉄板上に落とす生地ドロップ部と、鉄板上に落とされたクレープ生地を、鉄板の全面に薄く伸ばす生地伸ばし部とを備え、クレープ生地を、回転する鉄板上で、生地伸ばし部で薄い円盤状に伸ばしつつ焼成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-230353号公報
【文献】特開2017-85967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の食品生地焼成装置では、回転ドラムの加熱焼成板で食品生地を焼成する方法であって、人が焼き上げるものとのは掛け離れた方法のため、手で焼き上げるような薄さや手で伸ばしたような凹凸感を実現させることができなかった。また、従来の食品生地焼成装置では、焼成することができる食品生地は1枚の食品に対して1種類であって、1枚の食品で1つの味や色しか楽しむことができなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、人の手で食品生地を薄く伸ばして焼き上げたような感じを再現可能に焼き上げることができ、かつ、種類の異なる複数の食品生地が鉄板の回転中心に対してそれぞれ同心円状に層をなす食品を焼成することができる食品生地焼成装置及び食品生地の焼成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の食品生地焼成装置は、円盤状で、加熱された状態で円の中心を回転中心として回転可能に設けられた鉄板と、種類の異なる複数の食品生地を、鉄板の半径方向に離間した位置に食品生地ごとに落とす生地ドロップ部と、鉄板に向かって落とされた食品生地を、鉄板の全面に薄く伸ばす生地伸ばし部とを備え、回転する鉄板上で、種類の異なる食品生地を、鉄板の回転中心に対してそれぞれが同心円状に層をなすように生地伸ばし部で薄い円盤状に伸ばしつつ焼成し、生地ドロップ部が、種類の異なる食品生地を種類ごとに貯留可能な生地タンクと、生地タンクに貯留された種類の異なる食品生地を、鉄板の半径方向に離間した位置に食品生地ごとに落とす種類別生地ドロップ機構とを備え、種類別生地ドロップ機構が、種類の異なる食品生地を種類ごとに鉄板に落とすことが可能な開閉自在な生地ドロップ口からなり、生地ドロップ口が、生地タンクの底面に設けられ、生地タンクと種類別生地ドロップ機構とが一体で形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の食品生地焼成装置は、種類別生地ドロップ機構が、鉄板の回転位置に連動して生地ドロップ口を開閉する生地ドロップ口開閉機構を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の食品生地焼成装置は、扁芯回転軸が鉄板の回転軸と垂直で、鉄板の半径方向に伸びると共に、鉄板の回転位置に連動して回転する棒状の棒状カムを備えると共に、生地ドロップ口開閉機構が、棒状カムの外周面に当接し、棒状カムの外周面の起伏に沿って上下動するシャフト部と、シャフト部の上下動に連動して生地ドロップ口を開閉するバルブとを備え、鉄板の回転位置に連動してバルブが生地ドロップ口を開閉することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の食品生地焼成装置は、シャフト部が、下端が棒状カムの外周面に当接し、棒状カムの外周面の起伏に沿って上下動するカム側シャフトと、下端にバルブを設けるバルブ側シャフトと、横長の棒状で、一端が揺動自在に軸支され、他端にカム側シャフトの上端が軸支されると共に、両端の間にバルブ側シャフトの上端が軸支されるステー部材とを備え、カム側シャフトが棒状カムの動きに連動して上下動し、カムがシャフトの上下動によりステー部材が揺動すると共に、バルブ側シャフトが上下動し、バルブ側シャフトの上下動により、バルブが生地ドロップ口を開閉することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の食品生地焼成装置は、シャフト部が、カム側シャフトの上下動の量に対して、ステー部材の揺動する量を定める揺動量調整機構を備え、揺動量調整機構の設定により、生地ドロップ口の開閉量が変化することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の食品生地焼成装置は、生地タンク及び種類別生地ドロップ機構が、種類の異なる食品生地ごとに設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の食品生地の焼成方法は、円盤状で、加熱された状態で円の中心を回転中心として回転可能に設けられた鉄板に向かって、種類の異なる複数の食品生地を、鉄板の半径方向に離間した位置に食品生地ごとに落とし、鉄板に向かって落とされた食品生地を、軸に沿って回転自在な円筒又は円柱状で鉄板の半径方向に軸が位置し、鉄板との間に所定間隔を空けた状態で横臥して設けられた生地伸ばし部で、鉄板の全面に薄く伸ばしつつ、それぞれの食品生地を、鉄板の回転中心に対してそれぞれが同心円状に層をなすように、回転する鉄板上で薄い円盤状に焼成することを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の食品生地の焼成方法は、食品生地の種類が、色、味、香り若しくは素材又はそれらの組み合わせの違いであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願の発明によれば、円盤状で、加熱された状態で円の中心を回転中心として回転可能に設けられた鉄板と、種類の異なる複数の食品生地を、鉄板の半径方向に離間した位置に食品生地ごとに落とす生地ドロップ部と、鉄板に向かって落とされた食品生地を、鉄板の全面に薄く伸ばす生地伸ばし部とを備え、回転する鉄板上で、種類の異なる食品生地を、鉄板の回転中心に対してそれぞれが同心円状に層をなすように生地伸ばし部で薄い円盤状に伸ばしつつ焼成することで、人の手で食品生地を薄く伸ばして焼き上げたような感じを再現可能に焼き上げることができ、かつ、種類の異なる複数の食品生地が鉄板の回転中心に対してそれぞれ同心円状に層をなす食品を焼成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る食品生地焼成装置の一例を示す斜視図である。
図2】同食品生地焼成装置の生地ドロップ部を示す説明図である。
図3】同食品生地焼成装置の背面側を示す説明図である。
図4】同食品生地焼成装置の生地ドロップ口開閉機構を示す説明図である。
図5】同食品生地焼成装置の生地ドロップ部の動作を示す説明図である。
図6】同食品生地焼成装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明に係る食品生地焼成装置の一例を示す斜視図である。図2は、同食品生地焼成装置の生地ドロップ部を示す説明図である。図3は、同食品生地焼成装置の背面側を示す説明図である。図4は、同食品生地焼成装置の生地ドロップ口開閉機構を示す説明図である。図5は、同食品生地焼成装置の生地ドロップ部の動作を示す説明図である。図6は、同食品生地焼成装置の動作を示す説明図である。
【0020】
尚、本発明に係る食品生地焼成装置により焼成することができるものとしては、例えば、クレープ、ガレット、ドーサ、天津煎餅、トルティーヤ、タコス等が考えられる。しかし、小麦粉、米粉、そば粉、緑豆の粉等に水、牛乳、卵等を加えて溶いた流動性のある食品生地を鉄板で薄く焼成するものであれば、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明に係る食品生地焼成装置1は、小麦粉等に水等を加えて溶いた流動性のある、種類の異なる複数の食品生地Ca~Cfを、鉄板12で薄く焼くことによって作られる食品Cの焼成装置である。図1に示すように、食品生地焼成装置1は、本体部10、鉄板12、生地伸ばし部20、生地ドロップ部30、コンベア台50等から構成されている。
【0022】
尚、食品生地Ca~Cfの種類は、任意に定めれば良いものであるが、色、味、香り若しくは素材又はそれらの組み合わせの違いによるものである。
【0023】
本体部10の上面中央には、円盤状で、加熱された状態で円の中心を回転中心として回転可能な鉄板12が設けられている。また、本体部10の上方の鉄板12の上側には、種類の異なる食品生地Ca~Cfを、鉄板12の半径方向に離間した位置に食品生地Ca~Cfごとに落とす生地ドロップ部30と、鉄板12に向かって落とされた食品生地Ca~Cfを、鉄板12の全面に薄く伸ばす生地伸ばし部20とを備えている。
【0024】
鉄板12は、図2に示すように、鉄板12の中心の下方に突出して設けられた回転軸14にモータ16が接続され、モータ16により回転軸14を介して回転させられる構造になっている。また、回転する鉄板12を効率的に加熱し且つ構造を容易にする観点から、コイルに通電して鉄板12を発熱させる誘導加熱手段18を、鉄板12の下方に設けるのが好ましい。
【0025】
生地ドロップ部30は、食品生地Ca~Cfを鉄板12上の所定位置に所定量だけ落とすものである。生地ドロップ部30の断面構造を、図2に示している。生地ドロップ部30の具体的な構造としては、種類の異なる食品生地Ca~Cfを種類ごとに貯留可能な生地タンク32a~32fが、鉄板12の上方の半径方向に配列されている。
【0026】
また、生地ドロップ部30には、生地タンク32a~32fに貯留された種類の異なる食品生地Ca~Cfを、鉄板12の半径方向に離間した位置に食品生地Ca~Cfごとに落とす種類別生地ドロップ機構が設けられている。
【0027】
種類別生地ドロップ機構は、種類の異なる食品生地Ca~Cfを種類ごとに鉄板12に落とすことが可能な開閉自在な生地ドロップ口34a~34fを含むものである。生地ドロップ口34a~34fは、生地タンク32a~32fの底面にそれぞれ設けられており、生地タンク32a~32fと生地ドロップ口34a~34fとが一体で形成されている。
【0028】
また、種類別生地ドロップ機構は、鉄板12の回転位置に連動して生地ドロップ口34a~34fを開閉する生地ドロップ口開閉機構を備えている。生地ドロップ口開閉機構は、上下動するシャフト部と、シャフト部の上下動に連動して生地ドロップ口34a~34fを開閉するバルブ36a~36fを備えている。バルブ36a~36fは、鉄板12の回転位置に連動して生地ドロップ口34a~34fを開閉する。
【0029】
図3は、本実施の形態に係る食品生地焼成装置1において、操作パネル28がある正面側に対して背面側を示す図である。生地タンク32a~32fの背面下方に、扁芯回転軸44aが鉄板12の回転軸14に対して垂直で、鉄板12の半径方向に伸びると共に、鉄板12の回転位置に連動して回転する棒状の棒状カム44を備えている。
【0030】
図4は、食品生地焼成装置1の生地タンク32aの断面構造を示している。尚、生地タンク32b~32fも同様の構造をしている。シャフト部は、カム側シャフト38a~38fと、バルブ側シャフト40a~40fと、ステー部材42a~42fとを備えている。具体的には、生地タンク32a~32fの上方には、横長の棒状である、ステー部材42a~42fが設けられている。ステー部材42a~42fは、一端に孔46a~46fが設けられ、生地タンク32a~32fの正面側上部で孔46a~46fを貫通して鉄板12の半径方向に伸びる軸47a~47fによって揺動自在に軸支されている。また、ステー部材42a~42fの他端には、カム側シャフト38a~38fの上端が軸支されている。また、ステー部材42a~42fの両端の間には、バルブ側シャフト40a~40fの上端が軸支されている。
【0031】
生地タンク32a~32fの背面に設けられたカム側シャフト38a~38fは、下端が棒状カム44の外周面に当接しており、扁芯回転する棒状カム44の外周面の起伏に沿って上下動する。
【0032】
また、生地タンク32a~32fの内部には、上下動することができるバルブ側シャフト40a~40fが設けられている。通常は、ステー部材42a~42fが、バネ43a~43fによって引っ張り下げられる方向に付勢されていることにより、バルブ側シャフト40a~40fの下端に設けられたバルブ36a~36fが、生地ドロップ口34a~34fを塞いでいる。一方、生地ドロップ時には、バルブ36a~36fがバルブ側シャフト40a~40fの上昇に伴って上昇し、各生地ドロップ口34a~34fを開口することによって、食品生地Ca~Cfを鉄板12上に落とすことができる。バルブ側シャフト40a~40fが上昇する高さの違いによって、各生地ドロップ口34a~34fの開口量が異なるため、鉄板12上に落とす各食品生地Ca~Cfの量を変えることができる。
【0033】
カム側シャフト38a~38fは、下端が棒状カム44の外周面に当接しているため、棒状カム44の扁芯回転軸44aがモータ等の駆動装置によって回転する動きに連動して、棒状カム44の外周面の起伏に沿って上下動する。このカム側シャフト38a~38fの上下動により、カム側シャフト38a~38fの上端と連結しているステー部材42a~42fが軸47a~47fを支点として揺動する。これに連動して、ステー部材42a~42fと上端が連結しているバルブ側シャフト40a~40fが上下動する。このバルブ側シャフト40a~40fの上下動により、バルブ側シャフト40a~40fの下端のバルブ36a~36fが生地ドロップ口34a~34fを開閉することができる。
【0034】
本実施の形態に係る食品生地焼成装置1は、扁芯回転軸44aを有する棒状カム44及び生地ドロップ部30を用いて食品生地Ca~Cfを落下させているため、食品生地Ca~Cfを鉄板12に向かって同時に落とすことができる。しかし、必ずしも食品生地Ca~Cfを同時に落とす必要はない。
【0035】
尚、食品生地Ca~Cfを鉄板12に落とすための機構は、棒状カム44を用いず、各ステー部材42a~42fに直接接続されたモータ等であってもよい。尚、生地ドロップ口開閉機構は、電磁弁等で生地ドロップ口34a~34fを開閉する構造であってもよい。これらの構造を用いた場合、各生地ドロップ口34a~34fの開口時間の違いにより、鉄板12上に落とす各食品生地Ca~Cfの量を変えることができる。
【0036】
尚、生地ドロップ口34a~34fから鉄板12に向けての食品生地Ca~Cfの落下位置については、食品生地Ca~Cfを直接鉄板12上に落下させてもよい。又は、食品生地Ca~Cfを生地伸ばし部20に一旦落下させ、生地伸ばし部20の回転に沿って鉄板12上に落下するようにしてもよい。
【0037】
また、シャフト部は、カム側シャフト38a~38fの上端に、カム側シャフト38a~38fの上下動の量に対して、ステー部材42a~42fの揺動する量を定める揺動量調整機構48a~48fを備えている。揺動量調整機構48a~48fの設定により、生地ドロップ口34a~34fの開閉量を変化することができる。揺動量調整機構48a~48fをスクリューの手動回転とした場合、各スクリューの回転により、カム側シャフト38a~38fの長さをそれぞれ調整することによって、カム側シャフト38a~38fに連結しているステー部材42a~42fの角度を変えることができる。これにより、各ステー部材42a~42fの揺動する量を、シンプルな構造で容易に変化させることができ、かつ、微調整も可能である。その結果、各生地ドロップ口34a~34fの開閉量を変化させ、各食品生地Ca~Cfを鉄板12上に落とす量を調整することができる。
【0038】
尚、揺動量調整機構48a~48fは、バネ43a~43fによる付勢が解かれた際のステー部材42a~42fの角度を変えるために、ステー部材42a~42fとカム側シャフト38a~38fとが連結している高さを変更することができる構造であれば特に限定されない。連結位置を変更するための手段としては、スクリューを手動で回転させる位置変更のための手段の他に、スクリューをサーボモータ等により電気的に回転させる位置変更のための手段、カム側シャフト38a~38fに複数の溝を設けてステー部材42a~42fとの嵌合位置を変更させることによる位置変更のための手段等が考えられる。
【0039】
尚、本実施の形態に係る生地ドロップ部30では、生地ドロップ口34a~34fごとに、食品生地Ca~Cfを鉄板12上に落とす量が異なるように調整可能であるが、必ずしも落とす量を鉄板12の半径方向で変える必要はない。しかし、生地ドロップ口34a~34fごとに、食品生地Ca~Cfを鉄板12上に落とす量が異なるようにできることが好ましい。また、種類の異なる食品生地によって形成される同心円状の層からなる所望の模様等に基づいて、生地ドロップ口34a~34fごとに、鉄板12上に落とす食品生地Ca~Cfの量を変えてもよい。
【0040】
尚、生地タンク32a~32f及び種類別生地ドロップ機構は、種類の異なる食品生地Ca~Cfごとに設けられていることが好ましいが、生地ドロップ部30は、本実施の形態で説明する構造に限られるものではなく、食品生地Ca~Cfを鉄板12上に落とすことが可能な構造であればよい。
【0041】
また、本実施の形態では、6個の生地タンク32a~32fが示されているが、生地タンクは2個以上設けられていればよく、さらに、生地タンク32a~32fを着脱自在なカートリッジタイプにすることで、交換や洗浄が容易になる。
【0042】
生地伸ばし部20は、図2に示すように、軸20aに沿って回転自在な円筒又は円柱状で、鉄板12の半径方向に軸20aが位置し、鉄板12との間に所定間隔を空けた状態で横臥して設けられている。具体的には、本体部10の上方であって、鉄板12の真上に、門状の基台24が立ち上がり、その基台24の下方に設けられたプレート26の下面の鉄板12の半径位置の両脇から垂下する支持部22に、生地伸ばし部20が、回動自在に軸支されている。生地伸ばし部20の表面は、食品生地Ca~Cfが貼り付かないような素材(例えば、フッ素樹脂)でコーティングすることが望ましい。また、鉄板12と生地伸ばし部20との距離は、焼成する食品Cの厚みにより、適宜定めるようにする。尚、生地伸ばし部20と生地ドロップ30の位置は、図面では、生地ドロップ部30の下方に生地伸ばし部20が配置されているが、互いの位置関係は、任意である。
【0043】
コンベア台50は、図1に示すように、食品生地焼成装置1の本体部10の脇位置に設けられ、上面視略正方形の門状で、本体部10の両脇に設けられたレール50aに沿って、本体部10の上に重なるように摺動可能になっている。また、コンベア台50の上面の全面には、モータで駆動可能に設けられたコンベアベルト52が設けられている。さらに、本体部10の上方から離れている状態で、コンベア台50の本体部10側には、コンベアベルト52の端から鉄板12方向に傾斜して垂れ下がる傾斜誘導板54が設けられている。
【0044】
また、食品生地焼成装置1は、鉄板12の外周に、鉄板12の上に落とされた食品生地Ca~Cf(食品C)と鉄板12との間に位置する端部剥がし片56を備えている。この端部剥がし片56は、鉄板12の外周のどの位置に設けられていてもよい。また、端部剥がし片56を、剥がし片駆動手段により、鉄板12の上に落とされた食品生地Ca~Cf(食品C)と鉄板12との間に挿脱可能な構造にしてもよい。
【0045】
次に、以上のように構成された食品生地焼成装置1の動作をクレープの製造を例に説明する。まず、生地タンク32a~32fに、小麦粉に牛乳や卵を加えて溶いた流動性があり、例えば、色の異なる6種類のクレープ生地Ca~Cfをそれぞれ投入する。そして、生地ドロップ部30の生地ドロップ口34a~34fからクレープ生地Ca~Cfを、鉄板12の上に落とすことができる状態にする。また、鉄板12を、回転させながら、誘導加熱手段18により、クレープCを焼成するのに十分な温度まで加熱する。
【0046】
暖まった鉄板12が回転する状態で、図5に示すように、生地ドロップ部30の生地ドロップ口34a~34fから、クレープ生地Ca~Cfを鉄板12に向かって落とす。具体的には、棒状カム44が鉄板12の回転位置に連動してモータによって回転し、棒状カム44の外周面に下端が当接しているカム側シャフト38a~38fが、棒状カム44の外周面の起伏に沿って上昇する。これに連動して、カム側シャフト38a~38fの上端と連結しているステー部材42a~42fの一端が、ステー部材42a~42fの他端の孔46a~46fを貫通する軸47a~47fを支点として上昇する。さらに、ステー部材42a~42fと上端が連結しているバルブ側シャフト40a~40fが上昇する。この上昇に伴い、バルブ側シャフト40a~40fの下端に設けられたバルブ36a~36fも上昇し、生地ドロップ口34a~34fを開口して、クレープ生地Ca~Cfを鉄板12の半径方向に離間した位置にクレープ生地Ca~Cfごとに落とす。
【0047】
所定量のクレープ生地Ca~Cfを落とした後、棒状カム44の回転に伴い、カム側シャフト38a~38fが下降し、バネ43a~43fに付勢されたステー部材42a~42fも軸47a~47fを支点として下降する。これに連動したバルブ側シャフト40a~40fの下降に伴ってバルブ36a~36fも下降し、各生地ドロップ口34a~34fを閉口して、クレープ生地Ca~Cfの落下を終了する。
【0048】
カム側シャフト38a~38fの上端に設けられたスクリュー48a~48fの設定により、各生地ドロップ口34a~34fから鉄板12に落とす量を変化させることが可能である。クレープ生地Ca~Cfを鉄板12に落とす量は、鉄板12の回転中心に近い生地ドロップ口34aを一番多くし、鉄板12の回転中心から離れるほど少なくすると、均一な厚みでクレープCを焼き上げるのに好ましい。尚、鉄板12の回転スピードは、クレープ生地Ca~Cfの状態や、気温や、焼き上げたいクレープCの厚み等を考慮して、決める。
【0049】
回転する鉄板12に落とされたクレープ生地Ca~Cfは、生地伸ばし部20によって、全体として1枚のクレープCになるように薄い円盤状に伸ばされていく。もちろん、加熱された鉄板12の上でクレープ生地Ca~Cfが、薄い円盤状に伸ばされるので、同時にクレープ生地Ca~Cfが焼かれることになる。
【0050】
尚、本実施の形態に係る食品生地焼成装置1では、生地伸ばし部20が、鉄板12の回転方向側に、揺動することから、より均一にクレープ生地Ca~Cfを、同心円状の一枚の薄い円盤状に伸ばすことが可能である。
【0051】
図6に示すように、鉄板12の回転中心に対して種類の異なるクレープ生地Ca~Cfがそれぞれ同心円状に層をなす一枚の薄い円盤状に伸ばされた後は、生地伸ばし部20を上方に遠ざけ、引き続き鉄板12を回転させながら、クレープCに焼き上げていく。そして、焼き上がった段階で、端部剥がし片56を、クレープCと鉄板12との間に差し込む(焼成後に差し込まず、最初からこの位置に端部剥がし片56がある状態であってもよい)。これにより、端部剥がし片56が、クレープCの外周部分を浮かせることになり、その後に、コンベア台50が、傾斜誘導板54を鉄板12とクレープCとの間に入りつつ、鉄板12の約8割の位置にまで移動すると、クレープCが傾斜誘導板54に乗り上げてモータで回転されたコンベアベルト52に乗り上げると、クレープCがコンベア台50の上に引き上げられ、鉄板12の上から剥ぎ取られる。そして、クレープCが乗ったコンベア台50を元に位置に戻すことにより、クレープ生地Ca~Cfの色の違いにより6色の同心円状の層を形成しているクレープCの焼成が終了する。
【0052】
尚、本実施の形態では、6種類の異なるクレープ生地Ca~Cfを6個の生地タンクに貯留させたが、6種類に限定されるものではない。食品生地焼成装置1は、例えば、2種類の異なるクレープ生地を2個の生地タンクに貯留し、鉄板12の回転中心に対して2種類のクレープ生地が同心円状に層をなすクレープCを焼成するようにしてもよい。
【0053】
また、図1~6には、生地タンク32a~32fと種類別生地ドロップ機構とが一体で形成されている食品生地焼成装置1を示したが、これらを別々にして、生地タンクと生地ドロップ口とをチューブ等の流路で連結することも可能である。
【0054】
例えば、2つの生地タンクA、Bにそれぞれ種類の異なる食品生地Ca、Cbを貯留させる。生地タンクAから3本のチューブA1、A2、A3を、生地タンクBから3本のチューブB1、B2、B3を、鉄板12の上方の半径方向に離間して配置された6個の生地ドロップ口34a~34fにそれぞれ連結する。生地ドロップ口34a~34fに対して、鉄板12の回転中心から外周に向かってチューブA1、B1、A2、B2、A3、B3あるいはチューブA1、A2、B1、A3、B2、B3等、様々な順にチューブを連結することが考えられる。
【0055】
上記のような食品生地焼成装置1によれば、円盤状で、加熱された状態で円の中心を回転中心として回転可能に設けられた鉄板12と、種類の異なる複数の食品生地Ca~Cfを鉄板12の半径方向に離間した位置に食品生地Ca~Cfごとに落とす生地ドロップ部30と、鉄板12に向かって落とされた食品生地Ca~Cfを、鉄板12の全面に薄く伸ばす生地伸ばし部20とを備え、回転する鉄板12上で、種類の異なる食品生地Ca~Cfを、鉄板12の回転中心に対してそれぞれが同心円状に層をなすように生地伸ばし部20で薄い円盤状に伸ばしつつ焼成することで、人の手で食品生地Ca~Cfを薄く伸ばして焼き上げたような感じを再現可能に焼き上げることができ、かつ、種類の異なる複数の食品生地Ca~Cfが鉄板12の回転中心に対してそれぞれ同心円状に層をなす食品Cを焼成することができる。
【0056】
また、生地ドロップ部30は、種類の異なる食品生地Ca~Cfを種類ごとに貯留可能な生地タンク32a~32fと、生地タンク32a~32fに貯留された種類の異なる食品生地Ca~Cfを、鉄板12の半径方向に離間した位置に食品生地Ca~Cfごとに落とす種類別生地ドロップ機構とを備えていることで、複数の生地タンクにそれぞれ色、味、香り、素材等の種類の異なる食品生地Ca~Cfを貯留することができるため、外観、食味、食感、香り等に関してデザイン性の高い、バリエーションに富んだ同心円状に層をなす食品を焼成することができる。
【0057】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明によれば、人の手で食品生地を薄く伸ばして焼き上げたような感じを再現可能に焼き上げることができ、かつ、種類の異なる複数の食品生地が鉄板の回転中心に対してそれぞれ同心円状に層をなす食品を焼成することができる食品生地焼成装置及び食品生地の焼成方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・・・食品生地焼成装置
10・・・・本体部
12・・・・鉄板
14・・・・回転軸
16・・・・モータ
18・・・・誘導加熱手段
20・・・・生地伸ばし部
20a・・・軸
22・・・・支持部
24・・・・基台
26・・・・プレート
28・・・・操作パネル
30・・・・生地ドロップ部
32a~32f・・・・生地タンク
34a~34f・・・・生地ドロップ口
36a~36f・・・・バルブ
38a~38f・・・・カム側シャフト
40a~40f・・・・バルブ側シャフト
42a~42f・・・・ステー部材
43a~43f・・・バネ
44・・・・棒状カム
44a・・・扁芯回転軸
46a~46f・・・・孔
47a~47f・・・・軸
48a~48f・・・・揺動量調整機構(スクリュー)
50・・・・コンベア台
50a・・・レール
52・・・・コンベアベルト
54・・・・傾斜誘導板
56・・・・端部剥がし片
図1
図2
図3
図4
図5
図6