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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】膝装着具
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20230228BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20230228BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20230228BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20230228BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61F13/00 355P
A61F13/06 B
A41D13/06 105
A61F5/01 N
A61F5/02 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018202778
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020068868
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】512176288
【氏名又は名称】株式会社メディカサトウ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 青児
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-140732(JP,A)
【文献】特開2018-035453(JP,A)
【文献】米国特許第03934583(US,A)
【文献】特開2017-222946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00ー13/14
A61F 5/01ー5/02
A41D 13/00ー13/12
A41D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝を挟んで下腿部から大腿部にわたる領域に装着される筒状体と、
前記筒状体に設けられ、脚に装着されたときに所定の部位に当接する程度の伸縮性を有する帯状部と、を備え、
前記帯状部は、前記下腿部から前記膝を通り前記大腿部にわたって延伸し、前記膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与可能に設けられ
前記帯状部は、下腿屈筋群および大腿屈筋群に当接力を付与する位置において、脹脛から膝窩と脚の前後境界との間を通り大腿屈筋群に至るまで脚の延伸方向に延伸する第1、第2帯状部を含み、
前記第1、第2帯状部は、膝窩を挟んで離隔され、足先に近づくに連れて接近し、脹脛の左右中央部で連結され、
前記帯状部は、第3、第4帯状部を含み、
前記第3帯状部は、ヒラメ筋の内側部に当接力を付与する位置において、脹脛から膝を越える位置まで、前記脚の前後境界を跨いで前記脚の延伸方向に延伸し、
前記第4帯状部は、ヒラメ筋の外側部に当接力を付与する位置において、脹脛から膝を越える位置まで、前記脚の前後境界を跨いで前記脚の延伸方向に延伸し、
前記第3帯状部は、前記第1帯状部から離間して前記第1帯状部と略平行に延伸し、前記第1帯状部より短いことを特徴とする膝装着具。
【請求項2】
前記第4帯状部は、前記第2帯状部から離間して前記第2帯状部と略平行に延伸し、前記第2帯状部より短いことを特徴とする請求項に記載の膝装着具。
【請求項3】
前記第3、第4帯状部は、膝頭を避けて延伸することを特徴とする請求項1または2に記載の膝装着具。
【請求項4】
膝を挟んで下腿部から大腿部にわたる領域に装着される筒状体と、
前記筒状体に設けられ、脚に装着されたときに所定の部位に当接する程度の伸縮性を有する帯状部と、を備え、
前記帯状部は、前記下腿部から前記膝を通り前記大腿部にわたって延伸し、前記膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与可能に設けられ、
前記帯状部は、下腿屈筋群および大腿屈筋群に当接力を付与する位置において、脹脛から膝窩と脚の前後境界との間を通り大腿屈筋群に至るまで脚の延伸方向に延伸する第1、第2帯状部を含み、
脚の後側において、前記第1、第2帯状部は、膝窩を挟んで離隔され、足先から遠ざかるに連れて接近し、大腿部の左右中央部で連結され、
前記帯状部は、膝上にて大腿二頭筋に当接力を付与する位置から前記脚の前後境界を跨いで膝下にて向こう脛まで足先に向かって延伸し、互いに分離される第3、第4帯状部を含み、
脚の前側において、前記第3、第4帯状部は、膝頭を挟んで離隔され、足先に近づくに連れて接近することを特徴とする膝装着具。
【請求項5】
前記第3帯状部は、前記第1帯状部から離間して前記第1帯状部と略平行に延伸し、
前記第4帯状部は、前記第2帯状部から離間して前記第2帯状部と略平行に延伸し、
前記第3、第4帯状部の膝上側の端部は、前記筒状体の膝上側の端部まで延び、
前記第3、第4帯状部の膝下側の端部は、前記筒状体の膝下側の端部から離れた位置まで延びることを特徴とする請求項に記載の膝装着具。
【請求項6】
前記第1、第2帯状部の膝下側の端部は、前記筒状体の膝下側の端部まで延び、
前記第1、第2帯状部の膝上側の端部は、前記筒状体の膝上側の端部から離れた位置まで延びることを特徴とする請求項に記載の膝装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の脚に装着するための膝装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
脚に装着されるサポータが知られている。例えば、特許文献1には、背面帯本体の両側に膝の上下に巻きつける締付用帯部を二股状に連設し、膝の上下において夫々向かい合う締付用帯部の先端側を重ねて面ファスナにより装着する膝関節用サポータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-61139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、下肢に装着される装着具について検討し、下肢の屈筋群に圧縮を加えることで、伸筋に弛緩をもたらしうることを見出した。このことにより、膝の動きが滑らかになり、膝周辺の疲労が緩和されることが期待できる。例えば、下腿部から大腿部にわたる領域で、膝周辺の膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を加えることにより、膝の屈曲に寄与する屈筋群を刺激することが可能である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のサポータは、下腿部から大腿部にわたる領域で膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与する機能を備えていない。このことから、発明者は、特許文献1に記載のサポータには、下腿部から大腿部にわたる領域で膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を加える観点で改善すべき余地があることを認識した。
【0006】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、下腿部から大腿部にわたる領域で膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与可能な膝装着具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の膝装着具は、膝を挟んで下腿部から大腿部にわたる領域に装着される筒状体と、筒状体に設けられ、脚に装着されたときに所定の部位に当接する程度の伸縮性を有する帯状部と、を備える。帯状部は、下腿部から膝を通り大腿部にわたって延伸し、膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与可能に設けられる。
【0008】
この態様によると、膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与することができる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下腿部から大腿部にわたる領域で膝の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与可能な膝装着具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る膝装着具を右脚に装着した状態を示す背面図である。
図2図1の膝装着具を右脚に装着した状態を示す正面図である。
図3】第1実施形態に係る膝装着具を左脚に装着した状態を示す背面図である。
図4図3の膝装着具を左脚に装着した状態を示す正面図である。
図5図1の膝装着具の展開図である。
図6図3の膝装着具の展開図である。
図7】第2実施形態に係る膝装着具を右脚に装着した状態を示す背面図である。
図8図7の膝装着具を右脚に装着した状態を示す正面図である。
図9】第2実施形態に係る膝装着具を左脚に装着した状態を示す背面図である。
図10図9の膝装着具を左脚に装着した状態を示す正面図である。
図11図7の膝装着具の展開図である。
図12図9の膝装着具の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
また、本明細書において、脚の移行部で大腿部と下腿部を繋ぐ膝関節および膝関節を取り巻く部分を「膝」といい、膝の後側の浅いくぼみ中心付近を「膝窩」、膝の前側の突出部を「膝頭」という。
【0014】
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。また、「延伸方向に沿った方向」は、延伸方向に平行な方向だけでなく、延伸方向に平行な方向からずれている場合も含むものとする。
【0015】
[第1実施形態]
以下、図1図6を参照して、本発明に係る第1実施形態の構成について説明する。図1は、発明の第1実施形態に係る膝装着具100Rを右脚30に装着した状態を示す背面図である。図2は、膝装着具100Rを右脚30に装着した状態を示す正面図である。図3は、膝装着具100Lを左脚30に装着した状態を示す背面図である。図4は、膝装着具100Lを左脚30に装着した状態を示す正面図である。膝装着具100Rと膝装着具100Lとを総称するときは膝装着具100という。
【0016】
便宜上、図1図3に示すように下腿部32の延伸方向において、膝36から足先に向かう方向を「先方向」、「先側」といい、その逆方向を「反先方向」、「反先側」という。また、脚30を真っ直ぐに伸ばした状態で、脹脛側を「脚の後側」といい、向こう脛側を「脚の前側」という。また、脚30の後側と前側の境界を「前後境界」という。また、脚30の後側および前側において、脚30の幅方向で拇側を「拇指側」といい、小指側を「反拇指側」という。また、体の左右方向において、体の中心に向かう方向を「内向」、「内側」といい、体の中心から遠ざかる方向を「外向き」あるいは「外側」という。なお、脚30の各部位を示す符号が膝装着具100上を指している場合も、これらは脚の各部位を指すものであって、膝装着具100を指すものではない。
【0017】
図5は、右脚30用の膝装着具100Rを平面に展開した展開図である。図6は、左脚30用の膝装着具100Lを平面に展開した展開図である。図5および図6は、脚30の反拇指側の前後境界で開いて展開した状態を示している。これらの図において、破線Laは、脚30の拇指側の前後境界を示している。また、破線Lbは、後述する第1筒状体22と第2筒状体24との境界を示している。なお、破線La、Lbによる境界は、あくまでも一例であって、膝装着具100は任意の態様で装着することができる。
【0018】
図1図3に示すように、膝装着具100は、筒状体20と、帯状部10と、を含む。筒状体20は、人の脚30に装着される筒状の部分である。特に、筒状体20は、膝36を挟んで下腿部32から大腿部34にわたる領域に装着される。帯状部10は、筒状体20に設けられ、脚30に装着されたときに所定の部位に当接する程度の伸縮性を有する帯状の部分である。
【0019】
(筒状体)
図5図6に示すように、本実施形態の筒状体20は、主に下腿部32から膝36にわたる部分を収容する第1筒状体22と、主に膝36から大腿部34にわたる部分を収容する第2筒状体24と、を含む。この例では、第1、第2筒状体22、24は、糸を筒状に編成することによって一体に形成されている。図1図3に示すように、筒状体20の先側には第1開口20hが設けられ、筒状体20の第2筒状体24の反先側には第2開口20jが設けられる。
【0020】
図1図3に示すように、筒状体20の先側の第1開口20hには第1端部20dが設けられ、反先側の第2開口20jには第2端部20eが設けられている。本実施形態体の第1端部20dおよび第2端部20eは、環囲する部位を緊縮する口ゴム部として機能する。第1端部20dは、膝36と足首との中間領域を緊縮する。膝36から脚の付け根までの距離を100%とするとき、第1端部20dは、膝36から20%~80%の範囲を緊縮するように設けられてもよい。第2端部20eは、膝36と脚の付け根との中間領域を緊縮する。膝36から脚の付け根までの距離を100%とするとき、第2端部20eは、膝36から20%~80%の範囲を緊縮するように設けられてもよい。第1、第2端部20d、20eは、例えば、編成ゴム帯を縫い付けまたはゴム糸などの弾性糸を編み込んでもよい。この例の第1、第2端部20d、20eは、鹿の子編みされている。このように構成することにより、着用時のズレを抑制することができる。
【0021】
(帯状部)
帯状部10は、下腿部32から膝36を通り大腿部34にわたって延伸し、膝36の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与可能に設けられる。例えば、膝36の屈曲に寄与する屈筋群には大腿屈筋群と下腿屈筋群が主に含まれる。また、大腿屈筋群には大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋などが含まれる。大腿屈筋群において大腿二頭筋は他よりも大きく最も重要である。下腿屈筋群には腓腹筋の内側頭と外側頭、ヒラメ筋、後脛骨筋、膝窩筋などが含まれる。下腿屈筋群において、腓腹筋とヒラメ筋は他よりも大きく最も重要である。
【0022】
帯状部10は、装着者の脚30に装着されることで、脚形状に沿って伸び、その復元力によって縮む方向の収縮力を脚30に付与する帯状体である。帯状部10は筒状体20より大きな伸縮性を有する材料から形成される。特に、帯状部10は筒状体20より弾性限界が大きく弾性率が小さいシート状の生地から形成される。帯状部10は、例えばゴムなど大きな弾性を有する素材が織り込まれた織物から形成されてもよい。帯状部10は筒状体20より厚い生地から形成されてもよい。
【0023】
(第1、第2帯状部)
第1、第2帯状部14、16は、下腿屈筋群および大腿屈筋群に当接力を付与する位置において、脹脛から膝窩36jと脚30の前後境界との間を通り大腿屈筋群に至るまで脚30の延伸方向に延伸する。例えば、第1、第2帯状部14、16は、主に腓腹筋および大腿二頭筋に当接力を付与する位置に延伸してもよい。第1、第2帯状部14、16は、膝窩36jを挟んで離隔され、足先に近づくに連れて接近し、脹脛の内外中央部で連結される。つまり、各図に示すように第1帯状部14、16は、V字状に配置され、V字の頂点が脹脛の内外中央部に置かれる。第1帯状部14、16は、脹脛の内外中央部から反先側に向かうに連れて離隔間隔が大きくなり、反先側の端部で離隔間隔が最大になる。第1、第2帯状部14、16は、前後境界を跨いでもよいが、本実施形態では前後境界を跨がないように脚30の後側に配置される。
【0024】
第1、第2帯状部14、16の幅は、5mm~40mmの範囲であってもよく、好ましくは10mm~35mmの範囲であってもよく、より好ましくは15mm~32mmの範囲であってもよい。本実施形態の第1、第2帯状部14、16の幅は、20mm~30mmの範囲に設定されている。
【0025】
先側の端部14d、16dは、第1端部20dの近傍に配置され、反先側の端部14e、16eは、第2端部20eの近傍に配置される。膝36から足首までの距離を100%とするとき、端部14d、16dは、膝36から20%~80%の範囲内に配置されてもよい。より効果的に当接力を付与する観点から、端部14dの位置は、膝36から30%~70%の範囲が好ましく、膝36から40%~60%の範囲がより好ましい。
【0026】
膝36から脚の付け根までの距離を100%とするとき、端部14e、16eは、膝36から20%~80%の範囲内に配置されてもよい。より効果的に当接力を付与する観点から、端部14e、16eの位置は、膝36から30%~70%の範囲が好ましく、膝36から40%~60%の範囲がより好ましい。
【0027】
第1帯状部14と第2帯状部16とは、分離されていてもよいが、本実施形態の第1帯状部14と第2帯状部16とは互いに接続されている。
【0028】
第1帯状部14と第2帯状部16とは、平行または非平行に配置されてもよい。本実施形態の第1帯状部14と第2帯状部16とは、互いの離間距離が反先側から先側に向かって徐々に小さくなるように配置される。
【0029】
(第3帯状部)
第3帯状部12は、ヒラメ筋の内側部に当接力を付与する位置において、脹脛から膝36を越える位置まで、脚30の前後境界を跨いで脚30の延伸方向に延伸する。第3帯状部12は、ヒラメ筋の内側部に沿う部分を有してもよい。なお、ヒラメ筋の内側部とは、脚30を後側から視たとき、ヒラメ筋の腓腹筋から体の中心に向かう方向にはみ出した部分をいう。本実施形態の第3帯状部12の先側の端部12dは第1帯状部14の先側の端部14dよりも足首に近い位置に置かれる。また、第3帯状部12の反先側の端部12eは第1帯状部14の反先側の端部14eよりも膝36に近い位置に置かれる。また、第3帯状部12は、第1帯状部14と略平行に延伸し、第1帯状部14より短い。第3帯状部12は、第1帯状部14の第2帯状部16とは反対側に位置する。
【0030】
(第4帯状部)
第4帯状部18は、ヒラメ筋の外側部に当接力を付与する位置において、脹脛から膝36を越える位置まで、ヒラメ筋の外側部に沿って、脚30の前後境界を跨いで脚30の延伸方向に延伸する。第4帯状部18は、ヒラメ筋の外側部に沿う部分を有してもよい。なお、ヒラメ筋の外側部とは、脚30を後側から視たとき、ヒラメ筋の腓腹筋から体の中心から離れる方向にはみ出した部分をいう。本実施形態の第4帯状部18の先側の端部18dは第2帯状部16の先側の端部16dよりも足首に近い位置に置かれる。また、第4帯状部18の反先側の端部18eは第2帯状部16の反先側の端部16eよりも膝36に近い位置に置かれる。また、第4帯状部18は、第2帯状部16と略平行に延伸し、第2帯状部16より短い。第4帯状部18は、第2帯状部16の第1帯状部14とは反対側に位置する。
【0031】
第3、第4帯状部12、18の幅は、5mm~40mmの範囲であってもよく、好ましくは10mm~35mmの範囲であってもよく、より好ましくは15mm~32mmの範囲であってもよい。本実施形態の第3、第4帯状部12、18の幅は、20mm~30mmの範囲に設定されている。
【0032】
本実施形態の第3、第4帯状部12、18は、膝頭36hを避けて延伸する。また、第3、第4帯状部12、18は、先側に向かって互いに接近し、先側の端部12d、18dで互いに最接近する。また、第3、第4帯状部12、18は、反先側に向かって互いに離隔し、反先側の端部12e、18eで互いに最も離れる。
【0033】
膝36において膝窩36jは周囲より窪んでおり、帯状部10が膝窩36jを通るとその周辺で当接力が減少するおそれがある。そこで、本実施形態の帯状部10は、膝窩36jを避けて延伸している。
【0034】
膝36において膝頭36hは周囲より突出しており、帯状部10が膝頭36hを通るとその周辺で当接力が減少するおそれがある。そこで、本実施形態の帯状部10は、膝頭36hを避けて延伸している。
【0035】
以上のように構成された膝装着具100の特徴を説明する。
【0036】
膝装着具100は、膝36を挟んで下腿部から大腿部にわたる領域に装着される筒状体20と、筒状体20に設けられ、脚30に装着されたときに所定の部位に当接する程度の伸縮性を有する帯状部10と、を備える。帯状部10は、下腿部から膝36を通り大腿部にわたって延伸し、膝36の屈曲に寄与する屈筋群に当接力を付与可能に設けられる。
【0037】
この構成によれば、帯状部10が膝36の屈曲に寄与する屈筋群に圧縮力を付与できるので、脚30の伸筋群に弛緩をもたらすことができる。このことにより、膝36の動きが滑らかになり、膝36周辺の疲労が緩和される。
【0038】
帯状部10は、下腿屈筋群および大腿屈筋群に当接力を付与する位置において、脹脛から膝窩36jと脚30の前後境界との間を通り大腿屈筋群に至るまで脚30の延伸方向に延伸する第1、第2帯状部14、16を含んでもよい。第1、第2帯状部14、16は、膝窩36jを挟んで離隔され、足先に近づくに連れて接近し、脹脛の左右中央部で連結されてもよい。この場合、第1、第2帯状部14、16を含むことにより、下腿屈筋群および大腿屈筋群に圧縮力を付与できるので、これらの屈筋に対応する伸筋群に弛緩をもたらすことができる。
【0039】
帯状部10は、第3、第4帯状部12、18を含んでもよい。第3帯状部12は、ヒラメ筋の内側部に当接力を付与する位置において、脹脛から膝36を越える位置まで、脚30の前後境界を跨いで脚30の延伸方向に延伸してもよい。第4帯状部18は、ヒラメ筋の外側部に当接力を付与する位置において、脹脛から膝36を越える位置まで、脚30の前後境界を跨いで脚30の延伸方向に延伸してもよい。この場合、ヒラメ筋の内側部および外側部に直接圧縮力を付与できるので、これらの屈筋に対応する伸筋群に弛緩をもたらすことができる。
【0040】
第3帯状部12は、第1帯状部14から離間して第1帯状部14と略平行に延伸してもよく、第1帯状部14より短くてもよい。この場合、第3帯状部12が長すぎると膝36が曲げ難くなるところ、長すぎないので膝36が曲げ易い。
【0041】
第4帯状部18は、第2帯状部16から離間して第2帯状部16と略平行に延伸してもよく、第2帯状部16より短くてもよい。この場合、第4帯状部18が長すぎると膝36が曲げ難くなるところ、長すぎないので膝36が曲げ易い。
【0042】
第3、第4帯状部12、18は、膝頭36hを避けて延伸してもよい。この場合、膝36近傍における第3、第4帯状部12、18の圧縮力の低下を抑制することができる。また、第3、第4帯状部12、18が膝頭36hを通ると、膝36を屈曲したときに膝頭36hに違和感を生じるところ、膝頭36hを通らないので違和感を緩和することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図7図12を参照して、本発明の第2実施形態に係る膝装着具200の構成について説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。第2実施形態に係る膝装着具200は第1、第2帯状部14、16および第3、第4帯状部12、18の配置が異なる点で第1実施形態と相違し他の構成は同様である。したがって、第1、第2帯状部14、16および第3、第4帯状部12、18について説明する。なお、第2実施形態の第1、第2帯状部14、16および第3、第4帯状部12、18は、矛盾しない範囲で第1実施形態の第1、第2帯状部14、16および第3、第4帯状部12、18と同様の特徴を備える。
【0044】
図7は、本発明の第1実施形態に係る膝装着具200Rを右脚30に装着した状態を示す背面図であり、図1に対応する。図8は、膝装着具200Rを右脚30に装着した状態を示す正面図であり、図2に対応する。図9は、膝装着具200Lを左脚30に装着した状態を示す背面図であり、図3に対応する。図10は、膝装着具200Lを左脚30に装着した状態を示す正面図であり、図4に対応する。膝装着具200Rと膝装着具200Lとを総称するときは膝装着具200という。
【0045】
図11は、右脚30用の膝装着具200Rを平面に展開した展開図であり、図5に対応する。図12は、左脚30用の膝装着具200Lを平面に展開した展開図であり、図6に対応する。図11および図12は、脚30の反拇指側の前後境界で開いて展開した状態を示している。これらの図において、破線Laは、脚30の拇指側の前後境界を示している。また、破線Lbは、後述する第1筒状体22と第2筒状体24との境界を示している。なお、破線La、Lbによる境界は、あくまでも一例であって、膝装着具200は任意の態様で装着することができる。
【0046】
(第1、第2帯状部)
本実施形態では、図7図9に示すように、第1、第2帯状部14、16は、下腿屈筋群および大腿屈筋群に当接力を付与する位置において、脹脛から膝窩36jと脚30の前後境界との間を通り大腿屈筋群に至るまで脚30の延伸方向に延伸する。脚30の後側において、第1、第2帯状部14、16は、膝窩36jを挟んで離隔され、足先から遠ざかるに連れて接近し、大腿部の左右中央部で連結される。つまり、各図に示すように第1帯状部14、16は、上下逆のV字状に配置され、V字の頂点が脚30の後側において、大腿部の膝上の左右中央部に置かれる。第1帯状部14、16は、膝上の左右中央部から先側に向かうに連れて離隔間隔が大きくなり、先側の端部で離隔間隔が最大になる。第1、第2帯状部14、16は、前後境界を跨いでもよいが、本実施形態では前後境界を跨がないように脚30の後側に配置される。
【0047】
本実施形態では、第1、第2帯状部14、16の膝下側の端部14d、16dは、筒状体20の膝下側の第1端部20dまで延び、第1端部20dに接する。第1、第2帯状部14、16の膝上側の端部14e、16eは、筒状体20の膝上側の第2端部20eから離れた位置まで延びる。端部14e、16eは、第2端部20eに接触しない。この例では、端部14e、16eは、膝窩36jと第2端部20eの上下中央に位置する。
【0048】
(第3、第4帯状部)
本実施形態では、図7図10に示すように、第3、第4帯状部12、18は、互いに分離される。第3、第4帯状部12、18は、膝上にて大腿二頭筋に当接力を付与する位置から脚30の前後境界を跨いで膝下にて向こう脛まで足先に向かって延伸する。第3、第4帯状部12、18は、脚30の前側において、膝頭36hを挟んで離隔され、足先に近づくに連れて接近する。なお、第3、第4帯状部12、18は、脚30の後側においては、第2端部20eに近づくに連れて接近する。
【0049】
図11図12に示すように、第3帯状部12は、第1帯状部14から離間して第1帯状部14と略平行に延伸する。第3帯状部12は、第1帯状部14の第2帯状部16とは反対側に配置される。また、第4帯状部18は、第2帯状部16から離間して第2帯状部16と略平行に延伸する。第4帯状部18は、第2帯状部16の第1帯状部14とは反対側に配置される。第3、第4帯状部12、18の膝上側の端部12e、18eは、筒状体20の膝上側の第2端部20eまで延び、脚30の後側で第2端部20eに接する。第3、第4帯状部12、18の膝下側の端部12d、18dは、筒状体20の膝下側の第1端部20dから離れた位置にまで延びる。端部12d、18dは、第1端部20dに接触しない。この例では、端部12d、18dは、膝頭36hと第1端部20dの上下中央に位置する。
【0050】
以上のように構成された膝装着具200の特徴を説明する。
【0051】
帯状部10は、下腿屈筋群および大腿屈筋群に当接力を付与する位置において、脹脛から膝窩と脚30の前後境界との間を通り大腿屈筋群に至るまで脚30の延伸方向に延伸する第1、第2帯状部14、16を含んでもよい。脚30の後側において、第1、第2帯状部14、16は、膝窩36jを挟んで離隔され、足先から遠ざかるに連れて接近し、大腿部の左右中央部で連結されてもよい。この場合、第1、第2帯状部14、16を含むことにより、下腿屈筋群および大腿屈筋群に圧縮力を付与できるので、これらの屈筋に対応する伸筋群に弛緩をもたらすことができる。
【0052】
帯状部10は、膝上にて大腿二頭筋に当接力を付与する位置から脚30の前後境界を跨いで膝下にて向こう脛まで足先に向かって延伸し、互いに分離される第3、第4帯状部12、18を含んでもよい。脚30の前側において、第3、第4帯状部12、18は、膝頭36hを挟んで離隔され、足先に近づくに連れて接近してもよい。この場合、大腿二頭筋に直接圧縮力を付与できるので、これらの屈筋に対応する伸筋群に弛緩をもたらすことができる。
【0053】
第3帯状部12は、第1帯状部14から離間して第1帯状部14と略平行に延伸してもよい。第4帯状部18は、第2帯状部16から離間して第2帯状部16と略平行に延伸してもよい。第3、第4帯状部12、18の膝上側の端部12e、18eは、筒状体10の膝上側の第2端部20eまで延びてもよい。第3、第4帯状部12、18の膝下側の端部12d、18dは、筒状体10の膝下側の第1端部20dから離れた位置まで延びてもよい。この場合、筒状体10の膝上側の第2端部20eが端部12e、18eから離れて上方に位置する場合と比べて筒状体10の上端までの距離を短くできるので、筒状体10が無駄に長くならない。
【0054】
第1、第2帯状部14、16の膝下側の端部14d、16dは、筒状体10の膝下側の第1端部20dまで延びてもよい。第1、第2帯状部14、16の膝上側の端部14e、16eは、筒状体10の膝上側の第1端部20dから離れた位置まで延びてもよい。この場合、筒状体10の膝下側の第1端部20dが端部14d、16dから離れて下方に位置する場合と比べて筒状体10の下端までの距離を短くできるので、筒状体10が無駄に長くならない。
【0055】
以上、本発明の実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0056】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0057】
第1実施形態の説明では、筒状体20の先側の第1開口20hが、下腿部32の途中に位置する例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、筒状体20の先側の開口は、足首まで延びてもよい。
【0058】
第1実施形態の説明では、筒状体20の反先側の第2開口20jが、大腿部34の途中に位置する例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、筒状体20の反先側の開口は、脚の付け根近傍まで延びてもよい。
【0059】
第1実施形態の説明では、左右の膝装着具100L、100Rが独立している例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、左右の膝装着具は、一部でつながっていてもよい。
【0060】
第1実施形態の説明では、左右一対の膝装着具100を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。一方の脚のみの膝装着具を備えるようにしてもよい。
【0061】
第1実施形態の説明では、左右の膝装着具100L、100Rが対称な形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。左右の膝装着具は非対称な形状または同一の形状を有していてもよい。
【0062】
第1実施形態の説明では、筒状体20が丸編みにより一体の筒状に形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、筒状体20は、平編みにより平らに編まれ、縫製等により筒状に形成されてもよい。あるいは、筒状体20は、所定の箇所にファスナを設け、ファスナを開いた状態で脚に巻き付け、ファスナを閉じて脚を包囲するようにしてもよい。
【0063】
第1実施形態の説明では、膝装着具100が独立した装着体である例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、膝装着具は身体に装着される衣類やサポータの一部であってもよい。
【0064】
なお、これらの変形例は矛盾を生じない範囲で第2実施形態にも適用できる。これらの変形例は、前述の各実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0065】
前述の各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0066】
10・・帯状部、 14・・第1帯状部、 16・・第2帯状部、 12・・第3帯状部、 18・・第4帯状部、 20・・筒状体、 20d・・第1端部、 20e・・第2端部、 20h・・第1開口、 20j・・第2開口、 22・・第1筒状体、 24・・第2筒状体、 30・・脚、 32・・下腿、 34・・大腿、 36・・膝、 36h・・膝頭、 36j・・膝窩、 100・・膝装着具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12