IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社いけうちの特許一覧

<>
  • 特許-加湿方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】加湿方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/14 20060101AFI20230228BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
F24F6/14
F24F6/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019139045
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021548
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江崎 寛通
(72)【発明者】
【氏名】山本 優史
(72)【発明者】
【氏名】兼田 尚幸
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007506(JP,A)
【文献】特開平03-051645(JP,A)
【文献】特開2011-163661(JP,A)
【文献】特開2016-020808(JP,A)
【文献】実開昭62-102934(JP,U)
【文献】特開2016-153122(JP,A)
【文献】特開2019-015447(JP,A)
【文献】特開2008-070007(JP,A)
【文献】中国実用新案第200952794(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00-6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一流体ノズルと二流体ノズルを用いた加湿方法であって、
加湿対象空間の相対湿度がA%未満のときに、少なくとも一流体ノズルから水を噴霧する低湿度噴霧工程と、
加湿対象空間の相対湿度がB%以上(ただしB>A)のときに、少なくとも二流体ノズルから水を噴霧する高湿度噴霧工程とを有し、
高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量が、低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも少なく、
高湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量が、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも多いことを特徴とする加湿方法。
【請求項2】
低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量が、低湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量よりも多い請求項1に記載の加湿方法。
【請求項3】
加湿対象空間の相対湿度がA%以上B%未満のときに、一流体ノズルと二流体ノズルから水を噴霧する中湿度噴霧工程をさらに有し、
中湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量が、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも多く、低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも少ない請求項1または2に記載の加湿方法。
【請求項4】
加湿対象空間の相対湿度がC%以上(ただしC>B)のときに、一流体ノズルからも二流体ノズルからも水を噴霧しない停止工程をさらに有する請求項1~3のいずれか一項に記載の加湿方法。
【請求項5】
一流体ノズルから連続的または間欠的に水を噴霧することにより、一流体ノズルからの噴霧量を調節する、および/または、
二流体ノズルから連続的または間欠的に水を噴霧することにより、二流体ノズルからの噴霧量を調節する請求項1~4のいずれか一項に記載の加湿方法。
【請求項6】
一流体ノズルを複数設け、噴霧する一流体ノズルの数を変えることにより、一流体ノズルからの噴霧量を調節する、および/または、
二流体ノズルを複数設け、噴霧する二流体ノズルの数を変えることにより、二流体ノズルからの噴霧量を調節する請求項1~5のいずれか一項に記載の加湿方法。
【請求項7】
一流体ノズルが二流体ノズルよりも高い位置に設置されている請求項1~6のいずれか一項に記載の加湿方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一流体ノズルと二流体ノズルを用いた加湿方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルから水を噴霧して所定の空間を加湿する方法が知られている。例えば特許文献1~3には、二流体ノズルを備えた加湿器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-93773号公報
【文献】特開2010-127603号公報
【文献】特開2004-237206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルから水を噴霧して室内空間等を加湿する場合、室内の壁や床、あるいは室内に設置された機器等を濡らすことなく、室内空間を所望の湿度まで高めることが望ましい。その点で、二流体ノズルは水とともに圧縮空気を噴出するため、二流体ノズルを用いれば非常に微細な水滴として水を噴霧することができ、濡れの発生を抑えることができる。一方、二流体ノズルは、圧縮空気を使用するため、水の噴霧にかかるランニングコストが高くなる傾向となる。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、加湿対象空間の濡れを抑えながら、水の噴霧にかかるランニングコストを抑えて、効率的に加湿することができる加湿方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができた本発明の加湿方法とは、一流体ノズルと二流体ノズルを用いた加湿方法であって、加湿対象空間の相対湿度がA%未満のときに、少なくとも一流体ノズルから水を噴霧する低湿度噴霧工程と、加湿対象空間の相対湿度がB%以上(ただしB>A)のときに、少なくとも二流体ノズルから水を噴霧する高湿度噴霧工程とを有し、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量が、低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも少なく、高湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量が、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも多いところに特徴を有する。
【0007】
本発明の加湿方法によれば、高湿度噴霧工程において、二流体ノズルからの噴霧量を一流体ノズルからの噴霧量よりも多くすることにより、濡れが発生しやすい高湿度下での加湿対象空間の濡れを抑えることができる。すなわち、二流体ノズルは水とともに圧縮空気を噴出するため、一流体ノズルと比べて微細な水滴を噴霧することができ、そのため、高湿度噴霧工程で二流体ノズルからの噴霧の寄与を高めることで、高湿度下での加湿対象空間の濡れを抑えることができる。一方、低湿度下では高湿度下よりも濡れの発生が起こりにくいため、一流体ノズルからの噴霧量を多くすることにより、水の噴霧にかかるランニングコストを抑えて、効率的な加湿が可能となる。
【0008】
低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量は、低湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量よりも多いことが好ましい。これにより、低湿度噴霧工程において、一流体ノズルからの水の噴霧による加湿の寄与が高くなり、低いランニングコストで、効率的な加湿が可能となる。
【0009】
本発明の加湿方法は、加湿対象空間の相対湿度がA%以上B%未満のときに、一流体ノズルと二流体ノズルから水を噴霧する中湿度噴霧工程をさらに有することが好ましい。この場合、中湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量が、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも多く、低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも少ないことが好ましい。このように中湿度噴霧工程において一流体ノズルと二流体ノズルから水を噴霧することにより、中湿度下で濡れの発生を抑えつつ、効率的な加湿を行うことができる。
【0010】
本発明の加湿方法は、加湿対象空間の相対湿度がC%以上(ただしC>B)のときに、一流体ノズルからも二流体ノズルからも水を噴霧しない停止工程をさらに有することが好ましい。加湿対象空間の相対湿度が目標値またはその近辺に達したところで一流体ノズルと二流体ノズルからの水の噴霧を止めることで、加湿対象空間の濡れの発生を抑えることができる。
【0011】
一流体ノズルと二流体ノズルからの水の噴霧量は、次のようにして調節することができる。すなわち、一流体ノズルから連続的または間欠的に水を噴霧することにより、一流体ノズルからの噴霧量を調節する、および/または、二流体ノズルから連続的または間欠的に水を噴霧することにより、二流体ノズルからの噴霧量を調節することができる。あるいは、一流体ノズルを複数設け、噴霧する一流体ノズルの数を変えることにより、一流体ノズルからの噴霧量を調節する、および/または、二流体ノズルを複数設け、噴霧する二流体ノズルの数を変えることにより、二流体ノズルからの噴霧量を調節するようにしてもよい。このように一流体ノズルと二流体ノズルルからの噴霧量を調節することにより、各ノズルから粒子径の小さい水滴を安定して噴霧することができる。
【0012】
一流体ノズルは二流体ノズルよりも高い位置に設置されていることが好ましい。これにより、一流体ノズルから比較的粒子径の大きい水滴が噴霧されても、当該水滴が蒸発するまでの時間が確保されやすくなり、濡れの発生を抑えやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加湿方法によれば、加湿対象空間の濡れを抑えながら、水の噴霧にかかるランニングコストを抑えて、効率的に加湿することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の加湿方法の制御例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、一流体ノズルと二流体ノズルを用いた加湿方法に関するものである。本発明の加湿方法は、一流体ノズルと二流体ノズルの2種類の噴霧ノズルを用いて、これら2種類の噴霧ノズルからの噴霧を加湿対象空間の湿度に応じて適切に制御することにより、加湿対象空間の濡れを抑えながら、目標とする湿度まで効率的に加湿することができるものである。
【0016】
加湿対象空間としては、ノズルから水を噴霧することによって湿度を制御できる空間であれば特に限定されず、壁や屋根で囲まれた屋内空間であってもよく、屋根や壁の一部がなく外気の出入りが自由な半屋内空間であってもよい。屋内空間は、強制換気によって外気が取り込まれたり、窓が設置されていてもよい。また、ノズルから水を噴霧して湿度を制御できるのであれば、加湿対象空間は屋外空間であってもよい。加湿対象空間としては、工場、クリーンルーム、倉庫、ホール、事務所、工場、病院、老人ホーム、店舗、学校、住宅、畜舎、ビニルハウス、植物工場、きのこ栽培室等が挙げられる。加湿の目的としては、加湿対象空間の調湿以外に、冷却、静電気防止、空気清浄、感染予防などが挙げられる。
【0017】
本発明の加湿方法は、低湿度下で水を噴霧する低湿度噴霧工程と、高湿度下で水を噴霧する高湿度噴霧工程を有する。具体的には、本発明の加湿方法は、加湿対象空間の相対湿度がA%未満のときに水を噴霧する低湿度噴霧工程と、加湿対象空間の相対湿度がB%以上(ただしB>A)のときに水を噴霧する高湿度噴霧工程とを有し、低湿度噴霧工程において少なくとも一流体ノズルから水を噴霧し、高湿度噴霧工程において少なくとも少なくとも二流体ノズルから水を噴霧する。そして、各ノズルからの噴霧は、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量が、低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも少なくなるように調節するとともに、高湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量が、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量よりも多くなるように調節する。このように一流体ノズルからの噴霧と二流体ノズルからの噴霧を制御することにより、加湿対象空間の濡れを抑えながら、水の噴霧にかかるランニングコストを抑えることができる。
【0018】
二流体ノズルは水とともに圧縮空気を噴出するため、非常に微細な水滴を噴霧することができるが、圧縮空気の使用によりランニングコストが高くなる。一方、一流体ノズルは水のみを噴出するため、ランニングコストは二流体ノズルよりも安くなるが、噴霧する水の平均粒子径を二流体ノズルよりも小さくすることは難しく、一流体ノズルの方が噴霧する水の平均粒子径が基本的に大きくなる。そのため、一流体ノズルを用いた場合は、加湿対象空間での濡れが発生しやすくなる。しかし、本発明の加湿方法によれば、高湿度噴霧工程において、二流体ノズルからの噴霧量を一流体ノズルからの噴霧量よりも多くすることにより、濡れが発生しやすい高湿度下での加湿対象空間の濡れを抑えることができる。一方、低湿度下では高湿度下よりも濡れの発生が起こりにくいため、一流体ノズルからの噴霧量を高湿度噴霧工程よりも低湿度噴霧工程の方を多くすることにより、低湿度下での濡れの発生を抑えつつ、水の噴霧にかかるランニングコストを抑えて、効率的な加湿が可能となる。
【0019】
高湿度噴霧工程では、一流体ノズルからの水の噴霧を行っても行わなくてもよい。高湿度下でも一流体ノズルから水を噴霧しても濡れが発生しない条件、例えば、一流体ノズルの設置高さが十分に高かったり、加湿対象空間の天井高さが高かったり、あるいは、加湿対象空間にある程度早い空気の流れがある場合などは、粒子径が大きい水滴が一流体ノズルから噴霧されても、水の蒸発が促進されるため、濡れが起こりにくくなる。しかし通常は、高湿度下では一流体ノズルからの水の噴霧量をできるだけ低減することが好ましく、例えば、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量は、低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量の1/2以下であることが好ましく、1/3以下がより好ましく、1/4以下がさらに好ましい。また、高湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量は、高湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量の1/2以下であることが好ましく、1/3以下がより好ましく、1/4以下がさらに好ましい。高湿度下での濡れの発生を確実に抑える点からは、高湿度噴霧工程では、一流体ノズルからの水の噴霧を行わないことが特に好ましい。
【0020】
低湿度噴霧工程では、二流体ノズルからの水の噴霧を行っても行わなくてもよい。速やかに加湿対象空間の湿度を高める観点からは、低湿度噴霧工程で二流体ノズルから水の噴霧を行うことが好ましい。一方、水の噴霧にかかるランニングコストを抑える観点からは、低湿度噴霧工程で二流体ノズルからの水の噴霧を行わないことが好ましい。
【0021】
低湿度噴霧工程では、一流体ノズルからの噴霧量が二流体ノズルからの噴霧量よりも多いことが好ましい。これにより、低湿度噴霧工程において、一流体ノズルからの水の噴霧による加湿の寄与が高くなり、比較的低いランニングコストで、効率的な加湿が可能となる。例えば、低湿度加湿工程で速やかに加湿対象空間の湿度を高める場合は、一流体ノズルからも二流体ノズルからも最大噴霧量で水を噴霧することが想定されるが、そのような場合でも、一流体ノズルからの噴霧量が二流体ノズルからの噴霧量よりも多くすることで、比較的低いランニングコストで、効率的に加湿対象空間の加湿をすることができる。この場合、一流体ノズルからの最大噴霧量は、二流体ノズルからの最大噴霧量よりも多いことが好ましい。つまり、一流体ノズルからの最大噴霧量が二流体ノズルからの最大噴霧量よりも多くなるように、一流体ノズルと二流体ノズルの仕様を適切に選定したり、一流体ノズルと二流体ノズルの設置数を適切に設定することが好ましい。
【0022】
加湿対象空間の相対湿度がA%以上B%未満の場合は、上記に説明した高湿度噴霧工程を行ってもよく、低湿度噴霧工程を行ってもよい。なお、加湿対象空間の濡れを抑えながらより効率的に加湿を行う点から、加湿対象空間の相対湿度がA%以上B%未満の場合は、一流体ノズルと二流体ノズルから水を噴霧する中湿度噴霧工程を行うことが好ましい。中湿度噴霧工程では、一流体ノズルと二流体ノズルから水を噴霧するとともに、一流体ノズルからの噴霧量を、高湿度噴霧工程よりも多く低湿度噴霧工程よりも少なく調整する。このように一流体ノズルから水を噴霧することにより、中湿度下での濡れの発生を抑えやすくなる。一方、一流体ノズルからの噴霧量が減ることによる加湿能力の低下を補うために、中湿度噴霧工程では二流体ノズルからも水を噴霧し、これにより加湿対象空間の速やかな加湿を実現できる。
【0023】
中湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量は、低湿度噴霧工程よりも多くてもよく、少なくてもよく、同程度でもよく、また高湿度噴霧工程よりも多くてもよく、少なくてもよく、同程度でもよい。例えば、水の噴霧にかかるランニングコストを抑える場合は、中湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量を高湿度噴霧工程よりも少なくしてもよく、また低湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量を高湿度噴霧工程および/または中湿度噴霧工程よりも少なくしてもよい。一方、加湿対象空間の速やかな加湿を実現する点からは、中湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量を高湿度噴霧工程と同程度またはそれよりも多くしてもよく、低湿度噴霧工程における二流体ノズルからの噴霧量を高湿度噴霧工程および/または中湿度噴霧工程と同程度またはそれよりも多くしてもよい。
【0024】
本発明の加湿方法は、加湿対象空間の相対湿度がC%以上(ただしC>B)のときに、一流体ノズルからも二流体ノズルからも水を噴霧しない停止工程をさらに有することが好ましい。加湿対象空間の相対湿度が目標値またはその近辺に達したところで一流体ノズルと二流体ノズルからの水の噴霧を止めることで、加湿対象空間の濡れの発生を抑えることができる。
【0025】
上記に説明した低湿度噴霧工程、中湿度噴霧工程、高湿度噴霧工程、停止工程を実施する際の管理指標となる加湿対象空間の相対湿度A%、B%、C%の各値は、加湿の目標となる相対湿度、加湿対象空間の形状(広さ、高さ、レイアウト等)、加湿対象空間の換気状況、一流体ノズルと二流体ノズルの設置位置、湿度測定手段の設置位置等に応じて適宜設定することができる。例えばCの値は、加湿目標となる相対湿度に基づき、その近辺の値を定めることが好ましい。AとBの値は、一流体ノズルから水を噴霧したときに加湿対象空間に濡れが生じる可能性に応じて適宜設定することができ、基本的には一流体ノズルから水を噴霧したときに濡れが生じない範囲でAとBの値が定められる。なお、一流体ノズルからの噴霧による濡れの発生の起こりやすさは、噴霧量や噴霧頻度、ノズルの設置位置等により変わるため、AとBの値はそれらの要素を加味した上で、経験的にまたはシミュレーション等により定めることが好ましい。
【0026】
一流体ノズルからの噴霧量とは、一流体ノズルから加湿対象空間に噴霧される水の量を意味し、二流体ノズルからの噴霧量とは、二流体ノズルから加湿対象空間に噴霧される水の量を意味する。各ノズルからの噴霧量は、各ノズルへの水の供給量から求めることができる。
【0027】
一流体ノズルからの噴霧量の調節は、1つのノズルからの噴霧量を変えることにより行ってもよく、一流体ノズルを複数設け、噴霧する一流体ノズルの数を変えることにより行ってもよく、また、一流体ノズルからの噴霧を連続的または間欠的に行うことにより行ってもよい。なお、一流体ノズルから噴霧する水の粒子径をできるだけ小さく維持する点から、1つのノズルからの噴霧量はできるだけ一定にして、最適な噴霧状態を維持することが好ましい。従って、一流体ノズルからの噴霧量の調節は、一流体ノズルを複数設け、噴霧する一流体ノズルの数を変えることにより行うか、一流体ノズルから連続的または間欠的に水を噴霧することにより行うか、これらを組み合わせて一流体ノズルからの噴霧量を調節することが好ましい。
【0028】
二流体ノズルからの噴霧量の調節は、1つのノズルからの噴霧量を変えることにより行ってもよく、二流体ノズルを複数設け、噴霧する二流体ノズルの数を変えることにより行ってもよく、また、二流体ノズルからの噴霧を連続的または間欠的に行うことにより行ってもよい。なお、二流体ノズルから噴霧する水の粒子径をできるだけ小さく維持する点から、1つのノズルからの噴霧量はできるだけ一定にして、最適な噴霧状態を維持することが好ましい。従って、二流体ノズルからの噴霧量の調節は、二流体ノズルを複数設け、噴霧する二流体ノズルの数を変えることにより行うか、二流体ノズルから連続的または間欠的に水を噴霧することにより行うか、これらを組み合わせて二流体ノズルからの噴霧量を調節することが好ましい。
【0029】
二流体ノズルでは、二流体ノズルに供給する空気圧力によっても、噴霧量を調節することができる。例えば、二流体ノズルに供給する空気圧力を高くすることにより、二流体ノズルからの水の噴霧量を増やすことができる。二流体ノズルでは、供給空気圧力を変えても二流体ノズルから噴霧する水の粒子径を大きく変えずに維持することができるため、このようにして二流体ノズルからの噴霧量を調節してもよい。
【0030】
なお、一流体ノズルまたは二流体ノズルからの噴霧量の調節を、一流体ノズルまたは二流体ノズルから連続的または間欠的に水を噴霧することにより行う場合は、ノズルからの噴霧量は、ノズルを間欠的に噴霧した時間(すなわち、ノズルから噴霧した時間と噴霧していない時間の合計)と当該時間内における噴霧量から、単位時間当たりの噴霧量を算出することにより求める。例えば、中湿度噴霧工程において一流体ノズルから間欠的に水を噴霧する場合、加湿対象空間の相対湿度A%以上B%未満における経過時間と、当該経過時間内における一流体ノズルからの噴霧量から、単位時間当たりの噴霧量を算出することにより、中湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量を求める。
【0031】
一流体ノズルと二流体ノズルはそれぞれ複数設置することが好ましい。これにより、加湿対象空間をより均一に加湿することが可能となる。
【0032】
加湿対象空間の相対湿度は、加湿対象空間に湿度計や湿度センサー等の湿度測定手段を設けることにより測定することができる。湿度測定手段は、一流体ノズルと二流体ノズルのそれぞれからある程度離れた位置に設置することが好ましく、例えば一流体ノズルと二流体ノズルから2m以上離れた位置に設置することが好ましく、4m以上がより好ましい。湿度測定手段は、演算手段を介して一流体ノズルおよび二流体ノズルと電気的に接続していることが好ましく、これにより湿度測定手段による測定結果に基づき、一流体ノズルと二流体ノズルを自動制御することが可能となる。
【0033】
一流体ノズルと二流体ノズルはそれぞれ公知のノズルを使用することができる。一流体ノズルと二流体ノズルは、できるだけ細かい水滴を噴霧できるものが好ましい。一流体ノズルから噴霧する水の平均粒子径は、例えば、40μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。一方、二流体ノズルは一流体ノズルよりも噴霧する水の平均粒子径を小さくすることが容易なことから、二流体ノズルから噴霧する水の平均粒子径は、例えば、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。これにより、一流体ノズルや二流体ノズルから噴霧された水が速やかに蒸発しやすくなり、濡れの発生を起こりにくくすることができる。
【0034】
なお、一流体ノズルと二流体ノズルから噴霧する水の平均粒子径の下限については特に限定されないが、各ノズルの実用性を考慮すると、一流体ノズルから噴霧する水の平均粒子径の下限は8μm以上や10μm以上が示され、二流体ノズルから噴霧する水の平均粒子径の下限は3μm以上や5μm以上が示される。また、上記に説明した平均粒子径は、ノズルから噴霧された水に対して、レーザーを用いた位相ドップラー粒子分析計を用い、ノズルの先端から30cm先の地点での水滴の粒子径分布を測定したときのザウター平均粒子径を意味する。
【0035】
一流体ノズルは、二流体ノズルよりも高い位置に設置することが好ましい。これにより、一流体ノズルから比較的粒子径の大きい水滴が噴霧されても、当該水滴が蒸発するまでの時間が確保されやすくなり、濡れの発生を抑えやすくなる。一流体ノズルは、加湿対象空間の全体を加湿できるような位置に設置することが好ましく、加湿対象空間に設置される設備や機器よりも高い位置に設置されることが好ましい。
【0036】
二流体ノズルは、加湿対象空間の中でも特に加湿したい箇所(加湿対象箇所)の近くに設置することが好ましい。すなわち、二流体ノズルは、一流体ノズルよりも加湿対象箇所の近くに設置することが好ましい。これにより、加湿対象箇所の濡れを抑えつつ、効率的に加湿対象箇所を加湿することが可能となる。加湿対象箇所としては、静電気が発生しやすい機器の近くなどが挙げられる。
【0037】
次に、本発明の加湿方法に基づく一流体ノズルと二流体ノズルの制御例を図1を参照して説明する。図1は本発明に係る加湿方法の制御例1を表しており、加湿対象空間の相対湿度の経時変化と、これに対応した一流体ノズルからの水の噴霧量と二流体ノズルからの水の噴霧量の変化が、模式的に示されている。
【0038】
図1において、加湿対象空間の相対湿度は最初A%未満であった。そのため、加湿対象空間の相対湿度がA%になるまで、一流体ノズルから水を噴霧するとともに、二流体ノズルからも水を噴霧した。加湿対象空間の相対湿度がA%以上となったところで一流体ノズルからの噴霧量を減らし、さらに相対湿度がB%以上となったところで、一流体ノズルからの水の噴霧を停止した。この間、二流体ノズルからは噴霧を継続し、加湿対象空間の相対湿度がC%以上となったところで二流体ノズルからの水の噴霧も停止した。その後、加湿対象空間の相対湿度が徐々に下がり、加湿対象空間の相対湿度がC%を下回ったとなったところで、二流体ノズルからの水の噴霧を再開した。その後、加湿対象空間の相対湿度がC%以上となったところで二流体ノズルからの水の噴霧を停止し、図1のXの時点で加湿対象空間の換気を行った。これにより加湿対象空間の相対湿度が下がり、相対湿度がC%を下回ったところで二流体ノズルからの水の噴霧を再開し、さらに相対湿度がB%を下回ったところで一流体ノズルからの水の噴霧も再開した。その後、換気を停止したため、加湿対象空間の相対湿度が上がり始めた。そして、加湿対象空間の相対湿度がB%以上となったところで一流体ノズルからの水の噴霧を停止し、さらに相対湿度がC%以上となったところで二流体ノズルからの水の噴霧も停止した。その後、図1のYの時点で再び換気を行い、加湿対象空間の相対湿度がC%を下回ったところで二流体ノズルからの水の噴霧を再開し、さらに相対湿度がB%を下回ったところで一流体ノズルからの水の噴霧を再開し、さらに相対湿度がA%を下回ったところで一流体ノズルからの水の噴霧量を増やした。
【0039】
図1に示した制御例1では、上記のように、加湿対象空間の相対湿度に対応して一流体ノズルからの水の噴霧量と二流体ノズルからの水の噴霧量を調節することにより、加湿対象空間の濡れを抑えながら、効率的な加湿が可能となる。
【0040】
本発明の加湿方法は、上記の制御例1に限定されず、加湿対象空間の形状、湿度制御の精度や即応性、水の噴霧にかかるランニングコストの低減等、所望する条件に応じて、種々の変更が可能である。表1には、本発明の加湿方法に係る制御例をいくつか示した。
【0041】
【表1】
【0042】
制御例2~4は、加湿対象空間の天井の高さが高い場合など、噴霧された水が蒸発しやすい条件における各ノズルからの水の噴霧の制御例を示している。制御例2~4は、噴霧された水が蒸発しやすい条件であるため、低湿度下での一流体ノズルからの水の噴霧量を増やしても、濡れの発生を抑えることができる。そのため、低湿度噴霧工程では、二流体ノズルからの噴霧は行わず、一流体ノズルから水を多量に噴霧している。制御例2~4では、一流体ノズルからの最大噴霧量を制御例1よりも多くすることができ、低湿度噴霧工程で一流体ノズルからより多くの水を噴霧することができる。また、低湿度噴霧工程で一流体ノズルのみを使用することにより、水の噴霧にかかるランニングコストを抑えることができる。中湿度噴霧工程と高湿度噴霧工程では、一流体ノズルからの水の噴霧量を減らし、二流体ノズルから水を噴霧することにより、加湿対象空間の濡れの発生を抑えながら、相対湿度を目標値まで高めることができる。
【0043】
なお、制御例2~4のうち、制御例3、4は制御例2よりも噴霧された水がより蒸発しやすい条件での各ノズルからの噴霧の制御例を表している。制御例3では、中湿度噴霧工程における一流体ノズルからの水の噴霧量を増やし、その分二流体ノズルからの水の噴霧量を減らすことにより、水の噴霧にかかるランニングコストをさらに削減している。高湿度噴霧工程では、一流体ノズルからの水の噴霧を停止し、二流体ノズルから水を多量に噴霧することにより、加湿対象空間の相対湿度を目標値まで高めている。制御例4では、加湿対象空間の湿度が高くなるほど一流体ノズルからの水の噴霧量を減らしているが、高湿度噴霧工程でも一流体ノズルから水を噴霧している。二流体ノズルからの水の噴霧は、中湿度噴霧工程と高湿度噴霧工程において行う。これにより二流体ノズルからの噴霧量を減らして、水の噴霧にかかるランニングコストを低減している。
【0044】
制御例5は、加湿対象空間の天井の高さが低い場合など、噴霧された水が蒸発しにくい条件での各ノズルからの噴霧の制御例を示している。制御例5では、低湿度噴霧工程における一流体ノズルからの噴霧量を制御例1よりも減らし、これにより低湿度下での濡れの発生を起こりにくくしている。一方、二流体ノズルからは、低湿度噴霧工程、中湿度噴霧工程、高湿度噴霧工程のいずれにおいても噴霧を行っており、湿度が高められた状態では二流体ノズルにより加湿対象空間の相対湿度の制御を行うことにより、濡れの発生を抑えている。
【0045】
制御例6は、加湿対象空間の相対湿度を目標値近辺で高精度に制御する例を示している。制御例6では、加湿対象空間の相対湿度が高くなるほど、一流体ノズルからの水の噴霧量を減らし、高湿度噴霧工程では一流体ノズルからの水の噴霧を停止しており、一方、二流体ノズルからの水の噴霧量も、低湿度噴霧工程では多量の水を噴霧しているが、中湿度噴霧工程と高湿度噴霧工程では水の噴霧量を減らしている。このように中湿度噴霧工程と高湿度噴霧工程で二流体ノズルからの水の噴霧量を絞ることで、加湿対象空間の相対湿度が目標値を超えて過剰に高くなることを防ぐことができ、加湿対象空間の相対湿度を目標値近辺に高精度に維持することができる。制御例6は、加湿対象空間の換気量が少ない場合などに、特に好適に採用することができる。
【0046】
上記に説明した制御例において、一流体ノズルと二流体ノズルからの各工程における水の噴霧量は、噴霧するノズルの数を変えたり、噴霧時間を調整することにより調節することが好ましい。例えば、一流体ノズルまたは二流体ノズルからの噴霧量を少なくする場合は、複数設けた一流体ノズルまたは二流体ノズルのうちの一部のノズルのみから噴霧をしたり、噴霧を間欠的に行ったり、これらを組み合わせることにより、噴霧量を下げることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の加湿方法は、湿度調整、冷却、静電気防止、空気清浄、感染予防などを目的として、工場、クリーンルーム、倉庫、ホール、事務所、工場、病院、老人ホーム、店舗、学校、住宅、畜舎、ビニルハウス、植物工場、きのこ栽培室等の空間の加湿に用いることができる。
図1