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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】流体-流体界面に基づく付加製造
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20230228BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20230228BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230228BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230228BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/106
B33Y30/00
B33Y10/00
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2019554885
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018026604
(87)【国際公開番号】W WO2018187780
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/601,995
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/606,581
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591236068
【氏名又は名称】カーネギー-メロン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CARNEGIE-MELLON UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ハドソン
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ファインバーグ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・リー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヒントン
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0167312(US,A1)
【文献】国際公開第2016/090286(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材;および
サポート材に埋め込まれる印刷材料
を含むシステムであって、
前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ、
前記印刷材料は、サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用により、サポート材中で第2の流体相から第2の固相に転移するように構成され、
前記サポート材は、サポート材において第2の流体相から第2の固相に前記印刷材料のゼラチンを誘導するように構成された塩濃度を含む、前記システム。
【請求項2】
前記サポート材が前記印刷材料より塩基性であり、前記印刷材料が酸性であって、前記サポート材の転移が、印刷材料およびサポート材の流体-流体相互作用中の印刷材料の中和を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記印刷材料が、コラーゲン、ゼラチンおよびアルギナートの少なくとも1つを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記印刷材料が、約60~80マイクロメートルの直径を含むストランドを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記印刷材料が第1の印刷材料であり、前記システムが、第1の印刷材料を包むメッシュを形成する第2の印刷材料を含み、前記メッシュが、サポート材が第1の印刷材料から除去される場合、第1の印刷材料の幾何学を支持するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の印刷材料がコラーゲンを含み、前記第2の印刷材料がアルギナートを含み、前記サポート材がカルシウムを含む、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記サポート材の塩濃度が約40g/L~80g/Lである、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記サポート材がコアセルベート・スラリーを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材の内部にインジェクターを移動させ、前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ;
印刷材料をサポート材に注入し、
前記サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で印刷材料を第2の流体相から第2の固相に転移させ;次いで
前記印刷材料からサポート材を除去することを含み、および
前記サポート材のpHの制御により第2の固相中の印刷材料のナノ構造体を制御することを含む、付加製造方法。
【請求項10】
さらに、
前記印刷材料を酸性化すること;および
前記サポート材をアルカリ化すること、
を含み、
前記サポート材の転移は、印刷材料およびサポート材の流体-流体相互作用中の印刷材料の中和を含む、請求項9記載の付加製造方法。
【請求項11】
前記印刷材料が、コラーゲン、ゼラチンおよびアルギナートの少なくとも1つを含む、請求項9記載の付加製造方法。
【請求項12】
前記サポート材のパラメーターを選択し;次いで
あるタイプの印刷材料に基づいて、サポート材のパラメーターの値を調整する
ことを含み、
前記パラメーターの値は、パラメーターの値が調整されない場合の流体-流体相互作用中の第2の流体相から第2の固相への印刷材料の転移速度に比べて、流体-流体相互作用中の第2の流体相から第2の固相への印刷材料の転移速度を増加させるように構成される、請求項9記載の付加製造方法。
【請求項13】
前記サポート材のパラメーターが、流体相の組成、pH、イオン強度、緩衝能および酵素活性の1つを含む、請求項12記載の付加製造方法。
【請求項14】
さらに、
前記サポート材のパラメーターを選択し;次いで
あるタイプの印刷材料に基づいてサポート材のパラメーターの値を調整することを含み、
前記パラメーターの値は、パラメーターの値が調整されない場合の流体-流体相互作用中にサポート材中への印刷材料の拡散速度に比べて、流体-流体相互作用中のサポート材中への印刷材料の拡散速度を減少させるように構成される、請求項9記載の付加製造方法。
【請求項15】
前記サポート材のパラメーターが、流体相の組成、pH、イオン強度、緩衝能および酵素活性の1つを含む、請求項14記載の付加製造方法。
【請求項16】
さらに、注入中に前記サポート材を前記印刷材料に混合することを含み、前記サポート材の除去が、印刷材料の第2の固相において1以上のボイドを生じる、請求項9記載の付加製造方法。
【請求項17】
前記サポート材が、流体-流体相互作用中に前記印刷材料のゼラチンを制御するように構成される塩濃度を含む、請求項16記載の付加製造方法。
【請求項18】
前記印刷材料の第2の固相が、約60~80マイクロメートルの平均直径を有するコラーゲン・ストランドを含む、請求項9記載の付加製造方法。
【請求項19】
前記印刷材料が第1の印刷材料を含み、
あるタイプの第1の印刷材料およびあるタイプの第2の印刷材料に基づいてサポート材を改変し;次いで
第1の印刷材料および第2の印刷材料をサポート材に注入する
ことを含む、請求項9記載の付加製造方法。
【請求項20】
前記第1の印刷材料がコラーゲンを含み、第2の印刷材料がアルギナートを含み、サポート材がカルシウムカチオンを含む、請求項19記載の付加製造方法。
【請求項21】
インジェクター;
20g/Lを超える塩濃度のNaClおよびアラビアゴムの双方を含むコアセルベート・ゼラチン支持浴、ここに、前記コアセルベート・ゼラチン支持浴は、pH8を超え、第1の固相および第1の流体相を含み、前記コアセルベート・ゼラチン支持浴は、降伏応力閾値を超えて応力を受けることに応じて流れるように構成される;および
前記インジェクターにより、サポート材への注入のために構成されたコラーゲンおよびアルギナート、ここに、前記コラーゲンおよびアルギナートの各々は、6未満のpHを有し、前記コラーゲンおよびアルギナートの各々が、前記サポート材の第1の流体相と相互作用することによりコアセルベート・ゼラチン支持浴中のゲル化のために構成され、ゼラチンおよびアルギナートの各々が、ゲル化中に支持浴へ10%未満で拡散する、
を含むシステム。
【請求項22】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材;および
サポート材に埋め込まれる印刷材料
を含むシステムであって、
前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ、
前記印刷材料は、サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用により、サポート材中で第2の流体相から第2の固相に転移するように構成され、
前記サポート材が前記印刷材料より塩基性であり、前記印刷材料が酸性であって、前記サポート材の転移が、印刷材料およびサポート材の流体-流体相互作用中の印刷材料の中和を含む、前記システム。
【請求項23】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材;および
サポート材に埋め込まれる印刷材料
を含むシステムであって、
前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ、
前記印刷材料は、サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用により、サポート材中で第2の流体相から第2の固相に転移するように構成され、
前記印刷材料が第1の印刷材料であり、前記システムが、第1の印刷材料を包むメッシュを形成する第2の印刷材料を含み、前記メッシュが、サポート材が第1の印刷材料から除去される場合、第1の印刷材料の幾何学を支持するように構成されている、前記システム。
【請求項24】
前記第1の印刷材料がコラーゲンを含み、前記第2の印刷材料がアルギナートを含み、前記サポート材がカルシウムを含む、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材の内部にインジェクターを移動させ、前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ;
印刷材料をサポート材に注入し、
前記サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で印刷材料を第2の流体相から第2の固相に転移させ;次いで
前記印刷材料からサポート材を除去することを含み、および
さらに、
前記印刷材料を酸性化すること;および
前記サポート材をアルカリ化すること、
を含み、
前記サポート材の転移は、印刷材料およびサポート材の流体-流体相互作用中の印刷材料の中和を含む、付加製造方法。
【請求項26】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材の内部にインジェクターを移動させ、前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ;
印刷材料をサポート材に注入し、
前記サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で印刷材料を第2の流体相から第2の固相に転移させ;次いで
前記印刷材料からサポート材を除去することを含み、および
さらに、
前記サポート材のパラメーターを選択し;次いで
あるタイプの印刷材料に基づいてサポート材のパラメーターの値を調整することを含み、
前記パラメーターの値は、パラメーターの値が調整されない場合の流体-流体相互作用中の第2の流体相から第2の固相への印刷材料の転移速度に比べて、流体-流体相互作用中の第2の流体相から第2の固相への印刷材料の転移速度を増加させるように構成される、付加製造方法。
【請求項27】
前記サポート材のパラメーターが、流体相の組成、pH、イオン強度、緩衝能および酵素活性の1つを含む、請求項26記載の付加製造方法。
【請求項28】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材の内部にインジェクターを移動させ、前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ;
印刷材料をサポート材に注入し、
前記サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で印刷材料を第2の流体相から第2の固相に転移させ;次いで
前記印刷材料からサポート材を除去することを含み、および
さらに、
前記サポート材のパラメーターを選択し;次いで
あるタイプの印刷材料に基づいてサポート材のパラメーターの値を調整することを含み、
前記パラメーターの値は、パラメーターの値が調整されない場合の流体-流体相互作用中にサポート材中への印刷材料の拡散速度に比べて、流体-流体相互作用中のサポート材中への印刷材料の拡散速度を減少させるように構成される、付加製造方法。
【請求項29】
前記サポート材のパラメーターが、流体相の組成、pH、イオン強度、緩衝能および酵素活性の1つを含む、請求項28記載の付加製造方法。
【請求項30】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材の内部にインジェクターを移動させ、前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ;
印刷材料をサポート材に注入し、
前記サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で印刷材料を第2の流体相から第2の固相に転移させ;次いで
前記印刷材料からサポート材を除去することを含み、および
さらに、注入中に前記サポート材を前記印刷材料に混合することを含み、前記サポート材の除去が、印刷材料の第2の固相において1以上のボイドを生じる、付加製造方法
【請求項31】
前記サポート材が、流体-流体相互作用中に前記印刷材料のゼラチンを制御するように構成された塩濃度を含む、請求項30記載の付加製造方法。
【請求項32】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材の内部にインジェクターを移動させ、前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ;
印刷材料をサポート材に注入し、
前記サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で印刷材料を第2の流体相から第2の固相に転移させ;次いで
前記印刷材料からサポート材を除去することを含み、および
前記印刷材料の第2の固相が、約60~80マイクロメートルの平均直径を有するコラーゲン・ストランドを含む、付加製造方法。
【請求項33】
第1の固相および第1の流体相を含むサポート材の内部にインジェクターを移動させ、前記第1の流体相は、応力を受ける前記サポート材に応じて生じ;
印刷材料をサポート材に注入し、
前記サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で印刷材料を第2の流体相から第2の固相に転移させ;次いで
前記印刷材料からサポート材を除去することを含み、および
前記印刷材料が第1の印刷材料を含み、
あるタイプの第1の印刷材料およびあるタイプの第2の印刷材料に基づいてサポート材を改変し;次いで
第1の印刷材料および第2の印刷材料をサポート材に注入する
ことを含む、付加製造方法。
【請求項34】
前記第1の印刷材料がコラーゲンを含み、第2の印刷材料がアルギナートを含み、サポート材がカルシウムカチオンを含む、請求項33記載の付加製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本願は、2017年4月6日付けで出願された米国特許出願第62/601,995号、および2017年9月28日付けで出願された米国特許出願第62/606,581号に対する、米国特許法第119条(e)下の優先権を主張し、これらの全内容をここに出典明示して本明細書の一部分とみなす。
【0002】
(政府支援の項)
本発明は、国立衛生研究所第HL117750号下の政府支援でなされた。米国政府は本発明においてある種の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本願は付加製造、特に、埋め込み印刷(embedded printing)に関する。
【背景技術】
【0004】
付加製造を用いて、三次元の物体または構造を創成できる。材料は、組立て中に一時的に構造を支持するサポート骨格に印刷することができる。組立てが完了した場合、サポート骨格が除去される。
【発明の概要】
【0005】
本願は、付加製造に用いるサポート材および印刷材料を記載する。自由形状可逆性懸濁性ハイドロゲル埋め込み(FRESH)と呼ばれる、流体の付加製造方法は、一時的サポート材(例えば、スラリーを含む)へ流体材料(例えば、アルギナート、コラーゲン、フィブリンなど)を埋め込むことを含む。
【0006】
サポート材は固体および流体相を含む。いくつかの実施において、固相は、サポート材にビンガム塑性体挙動を与えるゼラチン粒子を含み、ゲル化流体の析出および支持を可能にする。流体相はゼラチン粒子を懸濁し、その体積および組成は従前にサポート材の流動特性に影響することが示されている。流体相の組成を用いて、埋め込まれた流体インクのゲル化挙動を制御することができる。従前には、アルギナートは、アルギナートのゲル化を促進するためカルシウムカチオンを含有する流体相でサポート材に印刷されてきた。アルギナートの初期の使用を越えて拡張すると、物理的および化学的改質が流体相になされて、他の流体インク、最も顕著にはコラーゲンのゲル化を調整することができる。印刷材料(print material)の流体相は、サポート材の流体相と相互作用し、流体-流体界面を形成する。インクのゲル化挙動を調整するためのサポート材と埋め込まれたヒドロゲル・インクとの間の流体-流体界面は、フィブリン、コラーゲンおよびマトリゲルのごとき有機ポリマーならびにエポキシ、ゴムおよびセメントを含む合成ポリマーの双方にまで、FRESHの使用が拡張されることを可能にする。
【0007】
後記のシステムは、応力を受けることに応じて第1の固相から第1の流体相に転移するように構成されたサポート材;およびサポート材に埋め込まれる印刷材料を含み、印刷材料は、サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用により、サポート材中で第2の流体相から第2の固相に転移するように構成される。
【0008】
いくつかの実施において、サポート材は塩基性であり、印刷材料は酸性であり、およびサポート材の転移が印刷材料およびサポート材の流体-流体相互作用中に印刷材料の中和を含む。いくつかの実施において、印刷材料は、コラーゲン、ゼラチンおよびアルギナートの少なくとも1つを含む。いくつかの実施において、印刷材料は、約60~80マイクロメートルの直径を含むストランド(strand)を含む。いくつかの実施において、印刷材料は第1の印刷材料であり、システムが第1の印刷材料を覆うメッシュを形成する第2の印刷材料を含み、サポート材が第1の印刷材料から除去される場合に、メッシュは第1の印刷材料の幾何学を支持するように構成される。いくつかの実施において、第1の印刷材料はコラーゲンを含み、第2の印刷材料がアルギナートを含み、サポート材がカルシウムを含む。いくつかの実施において、印刷材料は、印刷材料からゲル粒子を除去することにより形成されたボイド(void)への細胞浸潤を可能にするように構成される。サポート材は、コアセルベート・スラリーを含む。
【0009】
いくつかの実施において、サポート材は、ゲル粒子を含み、ゲル粒子は、ゲル粒子が印刷材料と混合される場合に、サポート材の塩濃度を調整することにより形成される。
【0010】
本明細書に記載されたこのプロセスは、第1の固相と第1の流体相との間で転移するように構成されたサポート材の内部にインジェクターを移動させ、インジェクターにより、サポート材の一部分を第1の固相から第1の流体相に変化させ、印刷材料をサポート材に注入し、サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で印刷材料を第2の流体相から第2の固相に転移させ、次いで、印刷材料からサポート材を除去することを含む。
【0011】
いくつかの実施において、プロセスは、印刷材料を酸性化すること、およびサポート材をアルカリ化することを含み、サポート材の転移は、印刷材料およびサポート材の流体-流体相互作用中の印刷材料の中和を含む。
【0012】
いくつかの実施において、プロセスは、サポート材のpHの制御により第2の固相中の印刷材料のナノ構造体を制御することを含む。
【0013】
いくつかの実施において、印刷材料は、コラーゲン、ゼラチンおよびアルギナートの少なくとも1つを含む。いくつかの実施において、プロセスは、サポート材のパラメーターを選択し;次いで、あるタイプの印刷材料に基づいてサポート材のパラメーターの値を調整することを含み、前記パラメーターの値は、前記パラメーターの値が調整されない場合の流体-流体相互作用中の第2の流体相から第2の固相への印刷材料の転移の速度に比べて、流体-流体相互作用中の第2の流体相から第2の固相への印刷材料の転移の速度を増加させるように構成される。いくつかの実施において、サポート材のパラメーターは、流体相の組成、pH、イオン強度、緩衝能および酵素活性の1つを含む。
【0014】
いくつかの実施において、プロセスは、サポート材のパラメーターを選択し;次いで、あるタイプの印刷材料に基づいてサポート材のパラメーターの値を調整することを含み、パラメーターの値は、パラメーターの値が調整されない場合の流体-流体相互作用中のサポート材中への印刷材料の拡散速度に比べて、流体-流体相互作用中にサポート材中への印刷材料の拡散速度を減少するように構成される。いくつかの実施において、サポート材のパラメーターは、流体相の組成、pH、イオン強度、緩衝能および酵素活性の1つを含む。
【0015】
いくつかの実施において、プロセスは、注入中にサポート材を印刷材料に混合することを含み、サポート材の除去は、印刷材料の第2の固相中の1以上のボイドを生じさせる。いくつかの実施において、サポート材の印刷材料への混合は、サポート材の塩濃度を制御して、ゲル粒子がサポート材中で形成することを可能にし、ゲル粒子は流体-流体相互作用中に印刷材料と混合することを含む。
【0016】
いくつかの実施において、印刷材料の第2の固相は、約60~80マイクロメートルの平均直径を有するコラーゲン・ストランドを含む。いくつかの実施において、印刷材料は、第1の印刷材料を含み:その方法は、あるタイプの第1の印刷材料およびあるタイプの第2の印刷材料に基づいてサポート材を改変し;次いで、第1の印刷材料および第2の印刷材料をサポート材に注入することを含む。いくつかの実施において、第1の印刷材料がコラーゲンを含み、第2の印刷材料がアルギナートを含み、サポート材がカルシウムカチオンを含む。
【0017】
いくつかの実施において、印刷システムは、インジェクター;20g/Lを超える塩濃度のNaClおよびアラビアゴムを含むコアセルベート・ゼラチン支持浴、ここに、アセルベート・ゼラチン支持浴は、pH8を超え、降伏応力閾値を超えて応力を受けることに応じて第1の固相から第1の流体相に転移するように構成される;およびインジェクターにより、サポート材への注入のために構成されたコラーゲンおよびアルギナート、ここに、コラーゲンおよびアルギナートの各々は、6未満のpHを有し、コラーゲンおよびアルギナートの各々が、コアセルベート・ゼラチン支持浴中のゲル化のために構成され、ゼラチンおよびアルギナートの各々が、ゲル化中に支持浴へ10%未満で拡散する、を含む。
【0018】
1以上の具体例の詳細は、以下の添付図面および明細書に記載されている。他の特徴、目的および有利さは、本明細書および図面、および特許請求の範囲から明らかである。種々の図面中の同様の参照シンボルは、同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は印刷システムを示す。
図2-7】図2~7は各々、サポート材の例における印刷されたストランドの代表を示す。
図8図8は、多重材料の埋め込み印刷の例を示す。
図9図9は、付加製造技術間の比較を示す。
図10-11】図10~11は、多重材料印刷の例を示す。
図12図12は、埋め込み印刷プロセスの例についての流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は印刷システム100を示す。印刷システム100は、インジェクター120を介してのごとく、サポート材130(例えば、アルギナート、ゼラチン、セルロースなど)に埋め込まれる材料110(例えば、コラーゲン、フィブリン、マトリゲル、エポキシ、ゴム、セメントなど)を印刷するように構成される。印刷材料110およびサポート材130は各々、固相および流体相を有する。印刷材料110は、流体相に印刷され、サポート材130との相互作用に際して固相に転移する。サポート材130は、降伏応力(例えば、臨界剪断応力)を超える応力がサポート材に働く場合に、固相から流体相に転移する。例えば、サポート材130を通してのインジェクター120の移動は、降伏応力閾値を超えるサポート材に対する応力を引き起こすことができる。これは、インジェクター120の周囲にてサポート材130を流体相に転移させることができる。
【0021】
サポート材130は、印刷が行なわれ、印刷材料(printed material)が流体相から固相に(例えば、ゲル化が生じつつ)硬化する間に、材料110を支持する骨格を形成する。サポート材130の粘度および降伏応力が印刷材料(インクともいう)に同様である場合、印刷システム100は、サポート材130の粘度および降伏応力が一致しないか、またはサポート材のものに同様でない場合より高精度で印刷することができる。さらに、より小さな粒子を含むスラリーを形成するサポート材130は、印刷システム100によりサポート材中の構造の高忠実度の印刷を促す。
【0022】
いくつかの実施において、サポート材(支持浴、支持媒体などともいう)は、ビンガム塑性体の特性の少なくともいくつかを示す。例えば、サポート材が降伏応力値を超える応力(例えば、剪断応力)を受けていない場合、サポート材は、固体材料の特性を示す。サポート材130の少なくとも一部分が降伏応力値を超える応力(例えば、剪断応力)を受ける場合、サポート材130のその一部分は粘稠液のように挙動する。いくつかの実施において、プリンター・インジェクター120がサポート材を介して移動すると、それはサポート材に応力を適用する。これにより、プリンターヘッドは、印刷材料110(インクともいう)をサポート材130に注入することができ、サポート材は、構造が形成されるまで適所にインクを支持する。インク110は、コラーゲン、フィブリン、エポキシ、セメント、ゴム、アルギナートまたは、他の材料、例えば、サポート材130に注入後にゲル化を受ける材料のごとき組織を含み得る。サポート材130は、ゲル化が完了するまで、インクを支持する。次いで、サポート材は除去する(例えば、溶解する)ことができる。
【0023】
流体相から固相への印刷材料110の転移、および転移がどのように生じるかは、印刷される構造の質に影響する。転移の制御は印刷忠実度の増加に有用である。印刷材料110の転移は、印刷材料とサポート材130との間の流体-流体相互作用の制御により制御することができる。流体-流体相互作用は、印刷材料の流体相とサポート材の流体相との間の相互作用である。印刷材料がサポート材に挿入される(例えば、注入される)場合、流体-流体相互作用が生じる。サポート材は、挿入の間および印刷材料の挿入点で固相から流体相に転移する。流体として印刷された印刷材料は、流体-流体界面にてそのサポート材に会合する(例えば、印刷材料およびサポート材が会合し相互作用する)。例えば、サポート材は、印刷材料のゲル化を引き起こすか、またはそうでなければ流体から固体への印刷材料の転移を生じさせる。流体-流体相互作用は、以下に詳述されるごとく、サポート材130および印刷材料110の種々のパラメーターの選択に基づいて制御することができる。
【0024】
サポート材130の流体相は予想されるようにサポート材内のI型コラーゲン埋め込みおよびゲル化を制御するように特に設計することができる。サポート材の流体相の制御は、高忠実度を持つ複雑な印刷幾何学を可能にする。I型コラーゲンは酸性状態で可溶である。I型コラーゲン溶液のpHおよび温度が中性のpHおよび37℃に駆動される場合、かかる溶解度は逆転する。コラーゲンI酸性溶液の中和は、サポート材の流体相を高pH溶液で置換することにより達成される。中和とは、材料のpHが約7(例えば、6~8)であるように、印刷材料を酸性または塩基性の状態から中性にさせることを意味する。略言すると、サポート材を遠心分離して、固体および流体相を分離する。上清は除去され、NaOH溶液と置換され、固相と徹底的に混合される。所望のpHが達成されるまで、これらの工程が繰り返される。この高pHのサポート材への印刷の結果、高忠実度を生じ、図2~6に示され、後記されるごとく、重合されたI型コラーゲンの単一80μmストランドを反復可能に埋め込む。
【0025】
サポート材のpHは、ゲル化材料の流体から固体への転移を制御するようにこの方法で変更することができる多数の流体相パラメーターの単に1つである。流体相の組成、化学、イオン強度、緩衝能、酵素活性は、サポート材内で容易に微調整することができ、種々のインクに特に適合することができるいくつかの変数である。また、この方法を用いて、複数のインクを各インクのゲル化を促すために改変された単一のサポート材料130浴に一緒に印刷することができる。例えば、個別のコラーゲンおよびアルギナート・インクは、カルシウムカチオンを含有する単一の高pHのサポート材に印刷して、単一の複数材料印刷を構築することができる。ゲル化を制御するための流体-流体界面を設計するこの方法は、固体ゼラチン粒子に対して、変更された流体相が有し得る化学・物理的な効果に単に制限される。ゼラチン加水分解は極端なpHで生じることができ、イオンの存在はゼラチンの粒子密度、サイズおよび形態学に影響できる。サポート材130の流体相を改変することができる容易さ、および流体相内で調整することができる因子の大きな範囲は、サポート材のレオロジーにおける変化が、対処されることを可能にする。
【0026】
いくつかの実施において、サポート材は、2018年4月5日付けで出願された、出願シリアル番号第62/601,949号、およびに2017年9月28日付けで出願された出願シリアル番号第62/601,578号に記載されたコアセルベート・スラリーであり、その各々をここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす。コアセルベート・スラリーはゲル微粒子を含む。粒子のサイズおよび形状を含めた粒子の幾何学は、コアセルベート・スラリーが製造されるプロセス、およびコアセルベートに用いる材料に基づいて制御することができる。粒子は、35%未満の分散を持つ直径0.5マイクロメートル~60マイクロメートルであることができる。粒子はスラリー中で単分散であることができる。ゲル粒子は、印刷プロセスの間に印刷材料(例えば、コラーゲン)と混合することができる。スラリーが除去される(例えば、溶解される)場合、ボイドは印刷されたコラーゲン中に残される。かくして、ボイドは印刷材料の全体にわたり、実質的に一定のサイズおよび分布のものである。半多孔性の印刷材料は、インビボ適用に特に有用である。印刷材料のボイドは、プリント構造のインビボ適用のための細胞浸潤を促すことができる。ボイド数およびボイド分布は、本願に記載のごとき印刷材料のゲル化の制御により制御することができる。
【0027】
図2は、種々のパラメーターを持つサポート材に印刷されたストランドの例を示す。ストランド200、210は、Hyclone 10×リン酸塩緩衝食塩水(PBS)ベースのサポート材に印刷されている。10×PBSに印刷されたストランドは、滑らかで直径において一貫し、後記の他のサポート材中に印刷されたストランドに比較して、比較的低いストランド-対-ストランド融合を有する。ストランド220は、ベースラインサポート材塩濃度に比べて高い塩濃度である80g/L NaClを含むサポート材に印刷されている。高塩濃度(80g/L)単独は、最もおそらく塩析を介して、コラーゲン組立てを誘導するのに十分である。ストランド230は10×リン酸緩衝液を含むサポート材に印刷されている。ストランド240は、10×リン酸緩衝液および高NaCl濃度を持つサポート材に印刷されている。リン酸緩衝液濃度の上昇は、塩がリン酸緩衝液に戻し添加される場合ほど滑らかでないストランドを創成する。
【0028】
図3は、種々のパラメーターを持つサポート材に印刷されたストランドの例を示す。ストランド300は、80g/L NaClの塩濃度をさらに含む50mM HEPES緩衝液に印刷されている。ストランド310は、40g/L NaClの塩濃度をさらに含む50mM HEPES緩衝液に印刷されている。ストランド320は、0.80g/L NaClの塩濃度をさらに含む50mM HEPES緩衝液に印刷されている。ストランド330は、80g/L NaClの塩濃度をさらに含む200mM HEPES緩衝液に印刷されている。サポート材中の高NaCl濃度は、「滑らかな」印刷コラーゲン・ストランドを促す。これらのストランドの形成に十分なサポート材の50mM HEPES溶液。典型的な細胞培養培地は15~20mM HEPESである。ストランド300、310、320および330を示す各画像において、サポート材中への印刷材料のいくらかの拡散が存在するが、これは印刷材料の10%未満に制限されている。いくつかの実施において、拡散は印刷材料の1%未満である。リン酸緩衝液をHEPES緩衝液に置換する能力がカルシウムイオンの添加を可能にするために、これらのサポート材は二重のアルギナートおよびコラーゲン印刷に特に有用である。
【0029】
図4は、種々の緩衝液の強度、および印刷以来の種々の量の経過時間後に印刷されたストランドの画像400を示す。頂部の行は、10×PBSを含む溶液を含むサポート材中で印刷されたストランドを示す。中央の行は、20×1%緩衝液を含む溶液を含むサポート材中で印刷されたストランドを示す。底部の行は、20×2%緩衝液を含む溶液を含むサポート材中で印刷されたストランドを示す。左カラムは、サポート材に印刷した直後のストランドの画像を示す。中央カラムは、サポート材に印刷の24時間後のストランドを示す。右カラムは、サポート材へ印刷され、4℃にて24時間貯蔵されたストランドを示す。各ストランドについて、印刷材料は2% Fisher Gel Bを含む。0.25% F127 1%アラビアゴムが含まれ、pHは6である。洗浄溶液は50mM HEPES、0.16% CaCl、80g/L NaClを含む。遠心分離は2000gにて5分間であった。
【0030】
図5A~5Bは、種々のサポート材中で印刷されたストランド500~570を印刷した例を示す。ストランドについての左画像は、ズームアウト画像を示し、一方、右画像は、拡大されている。ストランド500~530は、Fisher Gel B pH6、0% アラビアゴムを含む。ストランド540~570は、Fisher Gel B pH6、1% アラビアゴムを含む。ストランド500および540は、21℃のMW pH7.4を含むサポート材中で印刷され、印刷された直後に示される。ストランド510および550は、21℃のMW pH7.4を含むサポート材中で印刷され、印刷された4時間後に示されている。ストランド520および560は、21℃のMW pH5.85を含むサポート材中で印刷され、印刷された4時間後に示されている。ストランド530および570は、4℃のMW pH7.4を含むサポート材中で印刷され、印刷された4時間後に示されている。MW pH7.4の印刷されたストランドは、21℃にて4時間静置後劣化する。MW pH5.85は、MW pH7.4より速く溶けて、その結果、印刷に用いることができないスラリーを生じる。HEPES/CaClスラリーは室温にて劣化しない。HEPES/CaClは、他のサポート材より顕著にゆっくり(第2の溶解サイクル)溶ける。印刷されたゲルおよび融点、イオン強度および溶解度が変更されるため、高NaCl濃度はスラリー分解に寄与する。NaClの添加は、コラーゲン・ストランド形態学にかなり影響し、スラリー・レオロジーが初期のコラーゲン・ストランド形態学を決定し、コラーゲン重合の完了が最終ストランドおよび構成物の忠実度を決定することを示す。サポート材(例えば、スラリー)レオロジー・パラメーターは、パッキング、電荷を介する粒子-粒子相互作用、スラリー・フロー、混合およびフラッキング(fracking)を含む。印刷材料(例えば、コラーゲン)重合についてのパラメーターは、pH、イオン強度、温度および時間を含む。
【0031】
図6は、ストランド重合に対するゲルB-GA(Acros)液相効果を示す。ストランド600は、1×PBSを含むサポート材中で印刷されている。ストランド610は、10×PBSを含むサポート材中で印刷されている。ストランド620は、200nM HEPESを含むサポート材中で印刷されている。ストランド630は、エッセンシャル8媒体を含むサポート材中で印刷されている。ストランド640は、細胞外の緩衝液を含むサポート材中で印刷されている。
【0032】
図7は、ストランド重合に対するpHの変更の効果を示す。各画像は、印刷の24時間後のストランドを示す。ストランド700は、pH8.5の緩衝剤を含むサポート材中で印刷されている。ストランド710は、pH9の緩衝剤を含むサポート材中で印刷されている。ストランド720は、pH9.5の緩衝剤を含むサポート材中で印刷されている。ストランド730は、pH10の緩衝剤を含むサポート材中で印刷されている。ストランド740は、pH10.5の緩衝剤を含むサポート材中で印刷されている。ストランド750は、pH11の緩衝剤を含むサポート材中で印刷されている。
【0033】
図8は、多重インク印刷の例を示す。前記のごとく、コラーゲンおよび他の緩ゲル化(slow-gelling)インクはスラリー中の拡散の傾向を有する。この現象は、コラーゲンFRESH印刷を囲む拡散ヘイズ(diffuse haze)として可視でき、これに対する唯一の現在の解決方法は、印刷浴中のより積極的な方法のゲル化である。この拡散を抑制する努力は、NaOH、Proton Sponge(シグマ)、およびリボフラビン、トランスグルタミナーゼおよびグルタルアルデヒドのごとき後処理架橋の化学薬品の使用を含む。
【0034】
いくつかの実施において、周囲ゲルのごとき強化材なしで印刷されたコラーゲンのリングは取扱い易くない。大部分の未改変のコラーゲン・ヒドロゲル3D印刷は、永久変形を導入することなく溶液から引き上げることができない、これは、コラーゲン・ヒドロゲルは余りにも弱いので、溶液の外部でそれ自体を支持できないからである。コラーゲンの側のアルギナートのごとき硬直な(rigid)ヒドロゲルの含有は、融合し、溶液外のコラーゲンの幾何学を持続する強化を提供したであろう。
【0035】
印刷されたアルギナート・メッシュに支持された、印刷されたコラーゲン・ヒドロゲル800のリングは、2つのヒドロゲルの境界にて融合し続けただけでなく、空気中で複数回移された後にさえ、正確な寸法を維持することが示された。多重材料印刷800は、アルシアンブルーで染色されたアルギナート・ヒドロゲルにより囲まれたコラーゲン・ヒドロゲルの内部リングを示し、スケールは米国ペニー貨である。ファイルからの最大の寸法偏差は、アルギナート・メッシュの横で判明し、それは8mmであると思われたが、8.25mmに近く製造された。コラーゲンリングは、4.4mmの内径および6mmの外径を有すると想定された。アルギナート・メッシュの端縁およびコラーゲンの内径・外径につき、測定値810が示されている。測定された構成物810は、意図した直径と一致する寸法を示す。もう一つの例において、それらのアルギナート・メッシュ相当物820からマニュアルにて引き抜いたコラーゲン・セクション830は、それらと共に、アルギナート・メッシュの部分を解体中にもたらされた。解体された多重材料印刷820は、右側のコラーゲンリングおよび左側のアルギナート・メッシュを示す。これらの多重材料印刷のアルギナートおよびコラーゲン部分間の融合は、取扱い中にコラーゲン幾何学を維持することを担うと思われる。さらに、スケールアップした開発中の乳腺管上皮の多重材料コラーゲンおよびアルギナート印刷は、研究室床への落下を切り抜けた。多重材料印刷840は、その親ビーカーの破片と共に数フィート落ちた後に研究室の床に示されている。それは、回収および画像化された後、無傷であり、アルギナート繊維に包まれていることが示された。除去したコラーゲンリング850は、コラーゲンに融合され、分離することができず、アルギナート繊維を示し、ゲルの融合を提供した。印刷840は回収され、暗視野照明下で示され、プリント内部の内側の脆弱なコラーゲン成分850の維持を示している。コラーゲン成分についてのファイルが挿入されている。
【0036】
コラーゲン単独が溶液外でその重量を担うように、微妙に印刷することができない脆弱な材料であるので、アルギナートでコラーゲンを強化するこの方法は、複雑なコラーゲン成分の操作を創成し可能にするための解決方法である。コラーゲンは、カルシウム-キレート化浴中の水浸によって損害なくアルギナートから単離することができ、その結果、アルギナート・メッシュの溶解およびコラーゲン成分860の完全なリリースを生じる。コラーゲンベースの3D印刷された組織860は、アルギナート糸から除去される。これらの構成物は、全体的な幾何学的忠実度を維持しつつ、細胞が蒔かれた場合にコラーゲン構成物の圧縮を示した。アルギナート・メッシュの存在により、これらの構成物は、コラーゲン成分にすべての接触および妨害なく、容易に扱い、播種し、培養し、固定することができることが注目される。
【0037】
流体インクを利用する他の技術への比較において、FRESHはより速く、より多数の材料を印刷することができ、埋め込み培地からの印刷の完全なリリースを可能にしつつ、そうすることができる。後記の表3.2は、相違点を要約する。
【0038】
図9は、他の流体の印刷技術に対するFRESHの比較を示す。直接的書込み印刷は、流体のFDMおよび多数の他の技術の代表である。
【0039】
構造例
未変更のECMの組合せからいずれの幾何学も作製できることは、インビボ条件を模倣する構成で組織設計を可能にする。FRESH技術は、組織培養に適した1セットの複雑なバイオミメティック多重材料ヒドロゲル骨格の付加製造に用いた。
【0040】
細胞を含有するコラーゲン・ヒドロゲルは、細胞の付着、増殖および再構築により経時的に圧縮し得る。このプロセスが無秩序ならば、多数の構成物が壊死性コアを含有する稠密な状態に圧縮するであろう。多数の設計された組織は、ゲル内部の応力に基づいた内部細胞を整列させるのが目的のマンドレルまたは一連の硬直なポストの周囲で圧縮される細胞のゲルから成る。無拘束の管状構成物において、圧縮は、内部管腔の初期の閉鎖および稠密な塊への最終的な融合として現れるであろう。したがって、壊死性領域および部分的な管腔閉鎖を持つより稠密で、機能障害の状態へ圧縮する導管上皮のごとき、設計された分岐構成物を期待することは合理的である。培養中に圧縮しないコラーゲンの細胞のヒドロゲル・インクを処方するすることは可能であり得るが、このための要件はこのプロジェクトの範囲外であるようである。代わりに、硬直なアルギナート・ヒドロゲル押出しの希薄なネット内部にコラーゲン構成物を埋め込むことはより容易であろう。
【0041】
図10は、印刷1000によって示されたコラーゲン上のアルギナート骨格を用いる、多重材料プリント処理を示す。柔軟なコラーゲン・ヒドロゲル塊は、より硬直なアルギナート・ヒドロゲルの希薄なネットの側に3D印刷された。コラーゲン・ヒドロゲルを通常変形する力は、その代りに、構成物を包むアルギナート・メッシュに対して働くように強いられるであろう。アルギナートは付加押出機における個別のインクとしてプリントに含まれ、メッシュは、3D印刷の内部で通常見られる希薄な充填パターンとして生成されるであろう。コラーゲンのヒドロゲルおよびアルギナート・インクの二重押出しは、デュアル押出機1010に依拠する。もう一つのものの1つの印刷材料を不動化するこのアプローチのテストは、アルギナート・メッシュ1020に印刷されるコラーゲンゲルの垂直チューブのごとき単純化された幾何学を必要とするようである。2つの軸受け器が、コラーゲンおよびアルギナートヒドロゲル・インクを含む1組のシリンジ・ポンプ押出機を動かす。チューブの寸法測定は、較正印刷を用いる印刷精度の測定でのように遂行され-顕微鏡写真は公知のデジタル寸法で比較される。中空管は、ハンドリングまたは培養の間にその形状を保存するために、アルギナート・メッシュ内部の柔軟なヒドロゲルから印刷されている。
【0042】
インビトロでのインビボ環境の複製は、インビボ等価物の外観を密接に模倣するための構成物の設計を意味する。画像データは、全体のマウントの組織試料の光学投影断層撮影(OPT)から処理でき、ソフトウェア分析を通じて、3D印刷可能な固体として組織をモデル化する。画像データからモデル化された導管上皮全体の印刷は、分岐ツリー内の分岐点(bifurcation)のごとき上皮の内部特徴が本来の組織の幾何学的代表であることを保証する。
【0043】
導管上皮は、乳癌研究において3つの最も一般的に用いるマウス系統に詳細に関係している、4つの別個の発生形態学を所有することが判明しているので、上皮の選択された幾何学を変更することができ、種々の形態学を横切って同様のレベルの正確度を得ることができることは重要である。3D印刷の前記正確度の確認は、OPTまたは共焦点顕微鏡のごとき技術を用いて、それらを画像化することを含み、かかるプロセスから得られたデータを用いて、3Dプリンターの出力を入力ファイルの寸法と直接的に比較することができる。上皮を培養するための導管上皮の正確なモデルの3D印刷は、研究者がDCISのためのインビボ環境を密接にシミュレートし、宿主生物を用いることなく、インサイチュからの浸潤性移行(in situ-to-invasive transition)を潜在的に研究することさえを可能にするであろう。バイオミメティックであり、完全にカスタマイズ可能の双方である環境においてDCISの挙動を調査する機会は、DCISのどの例が介入に値するかを理解について非常に貴重なツールを証明するであろう。実際に、印刷された上皮モデルは、DCISの特定の患者についての画像データから生成することができ、次いで、コアリング針生検を用いて、患者の上皮細胞および疑わしい病変の双方を含む構成物を播種することができた。患者の外側の病変の成長は、現在の患者間の有力な仮定である最悪の場合の前癌状態のシナリオを仮定せずに、医師が必要な治療ルーチンおよび標的治療を同定することを可能にする。
【0044】
前記された多重印刷適用の柔軟性は、細胞を含むまたは細胞を含まず、いずれの複雑な幾何学も離れて圧縮する細胞の恐れなしで、いずれの柔軟なヒドロゲルからも微妙な分岐構造の原型を作ることを可能にするようなものである
【0045】
その印刷は3D印刷ソフトウェアにおいてモデル化された。所与のモデルについてのコラーゲン成分は、ソフトウェアに導入され、次いで、付随的アルギナート成分は、ソフトウェアのメッシュ-編集メニューの利用によりオリジナルのコラーゲン成分の「一部分」として導入された。コラーゲン成分は、第1の押出機および第2のアルギナート成分の使用として特定された。次いで、アルギナート成分は、以下の表1に示される設定修飾因子を指定された。
【0046】
【表1】
【0047】
2つの材料を印刷するために、デュアルプリンター中の第1および第2のレプリストラーダー(Replistruder)に、80μm針を特徴とするコラーゲンの100μLシリンジ、および150μm針を特徴とするアルギナートの2.5mLシリンジを装備した。コラーゲン・シリンジの80μm針は非常に長く薄かったので、印刷中にたわみに付され、その結果、押出機による機械動作の貧弱な表現を生じた。この針によって印刷されたいずれの垂直管も融合する閉鎖(shut)で終わり、鋭角を丸くした。これに対する解決方法は、支柱(brace)として用いる大きな針をレーザー切断することであった。長さ250μmの針の1/2をレーザー切断し、未硬化のエポキシを充填し、80μm針上に滑らせ、65℃にて2時間焼き固めた。
【0048】
MK2は、少なくとも24時間25mM Na-HEPESを含む暖かい70mM CaCl中で徹底的に洗浄した後、25mM Na-HEPESおよび50%v/vエタノールを含む70mM CaClに浸漬した。次いで、この50%エタノール溶液中のMK2は、4℃にて24時間静置させた。播種および培養開始の日に、構成物は、このエタノール溶液から取り出し、25mM Na-HEPESを含む暖かい70mM CaClに入れられた。少なくとも30分間この流体中で静止した後に、構成物は25mM Na-HEPESを含む新鮮な70mM CaClで洗浄され、その後、10mM CaClを補足した細胞培地に入れた。
【0049】
ATCC MCF7(HTB-22)およびATCC MCF 10A(CRL-10317)細胞は、pHIV-ZSGreenレンチウイルスでトランスフェクトされ、流動選別し、トランスフェクトされた細胞を選択した。得られた細胞は、ATCCガイドラインに従って培養された。構成物は、25mM Na-HEPESを含む滅菌濾過した20℃ 1% CaCl中で洗浄された。次いで、構成物は、10mM CaClおよび200μg/mLペニシリン・ストレプトマイシンを補足した20℃の無菌濾過したATCC培地中に10分間浸漬された。次いで、構成物は、ウェル当たり1構成物で6-ウェルプレート中に入れた。補足培地は、構成物の半分が沈むまで各ウェルに加えた(約3mL)。細胞は、1×10細胞/mLにて補足培地中で懸濁された。50μLの細胞懸濁液は、各構成物の筒(funnel)部分の中心に直接的にピペッティングされた。構成物の半分について、それらを4側の1つに回転させ、37℃にて20分間そこで静止させた。次いで、播種を繰り返した後、各構成物が各側に播種されるまで、4回を超える静止期とした。構成物は、オリンパスIX83蛍光顕微鏡上で迅速に画像化して、細胞が構成物にあることを保証した。播種中に回転しなかった各細胞型につき3つの構成物の1つは、直立位置に200,000個の細胞を蒔いた。すべての構成物は、最終的にそれらの直立条件に戻し、7日間37℃培養し、規則的に培地交換した。7日後に、培地は固定前に各ウェルから吸引した。
【0050】
培養されたMK2は、37℃にて1×PBS(0.625mM MgClおよび10mM CaClを補足された)で濯がれ、10mM CaCl(Polysciences,Inc.)を含む4%w/vホルムアルデヒドに15分間固定され、次いで、25mM Na-HEPESを含む11mM CaCl中で3回洗浄された。固定されたMK2は、5×対物レンズ(0.45のNA)を持つニコンAZ-C2のマクロ共焦点顕微鏡、および10×(NA=0.4)対物レンズおよび25×(NA=0.95)水浸対物レンズを持つライカSP5の多光子顕微鏡で画像化した。3D画像スタックは、AutoQuant X3でデコンボリュート(deconvolve)され、Imaris7.5で処理された。
【0051】
コラーゲンおよび細胞がアルギナート糸によって不明瞭にされる場合において、100mM クエン酸Na緩衝液中で固定されたMK2を12時間洗浄することにより、アルギナートを除去することが可能であった。次いで、構成物は、10%w/vゼラチンAに埋め込まれ、薄切できた。次いで、付着した内部細胞を含む得られたコラーゲン成分は、顕微鏡によってアクセスできた。アルギナート糸の除去後、3D z-スタックは、ライカSP5の多光子顕微鏡および25×水対物レンズ(NA=0.95)で435nmにて、コラーゲンIの反射率画像化を用いて得られた。断面積中のコラーゲンIヒドロゲルの厚みが測定された。
【0052】
コラーゲン押出機の針が強化された後、コアセルベート・スラリー中で創成されたMK2構成物は、コラーゲンの完全に同心円状の押出しを所有し、可視的な押出しのゆがみまたは遅滞(lagging)は余りないし全くなかった。図11は出力印刷1100を示す。出力のこの品質は、単分散の微視的粒子を有するコアセルベートの極細目テクスチャーおよび、個別の押出機針プレ印刷の整列に払われた注意の双方に大きく起因する。MK1およびMK2の構成物の外部は、正方形プロフィールを所有し、アルギナート・メッシュの90°網目パターンを有した。筒(funnel)の縁は、意図した値の1%以内の直径をほとんど常に所有した。初期データは、導管の内部直径がその意図した値の約2%以内にあることを示す。同じデータは、培養後、印刷がリリースされた場合、それらは芽(bud)を所有することが判明し、これが印刷するために用いたファイルの意図した直径の2%以内に常にあることを示した。
【0053】
図12は、埋め込み印刷プロセスの例の流れ図1200を示す。インジェクターは、第1の固相と第1の流体相との間で転移するように構成されたサポート材内部に移動する(1210)。インジェクターは、(1220)サポート材の一部分が第1の固相から第1の流体相に変化させる。インジェクターは(1230)印刷材料をサポート材に注入する。印刷材料は、(1240)サポート材の第1の流体相と印刷材料の第2の流体相との間の流体-流体相互作用に基づいて、サポート材中で第2の流体相から第2の固相に転移する。サポート材は、(1250)印刷材料から除去される。
【0054】
多数の具体例が記載されている。しかしながら、種々の変更が特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく成され得ることが理解されるであろう。したがって、他の具体例は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9
図10
図11
図12