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特許7233718ディスプレイ要素、パーソナルディスプレイ装置、パーソナルディスプレイ上に画像を生成する方法、及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】ディスプレイ要素、パーソナルディスプレイ装置、パーソナルディスプレイ上に画像を生成する方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230228BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20230228BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
H04N5/64 511A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019559347
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 FI2018050322
(87)【国際公開番号】W WO2018202951
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】20175389
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】517319167
【氏名又は名称】ディスペリックス オーワイ
【氏名又は名称原語表記】Dispelix Oy
【住所又は居所原語表記】Metsanneidonkuja 10 02130 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オルコネン,ジューソ
(72)【発明者】
【氏名】スンナリ,アンティ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0214659(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0019874(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0116739(US,A1)
【文献】特表2008-523435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0284085(US,A1)
【文献】特開2016-085426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
G02B 5/18
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルディスプレイのためのディスプレイ要素であって、
内部全反射により光をガイドするライトガイドと、
回折入力結合格子と、
回折出力結合格子と、
を備え、前記入力結合格子は、入射光を少なくとも2つの回折波面として前記出力結合格子へ伝搬すべく、誘導された前記入射光を前記ライトガイドへ結合するように適合され、前記入力結合格子は、前記入射光を第1の正の透過次数および第1の負の透過次数に回折するか、あるいは前記入射光を第1の正の反射次数および第1の負の反射次数に回折するように構成され、かつ前記ディスプレイ要素はさらに、前記波面をそれぞれ異なる経路に沿って前記出力結合格子へガイドするように適合された少なくとも2つの異なる射出瞳拡大素子格子を備え、
前記回折波面は、それぞれ、前記出力結合格子上で伝播できる最大視野を広げるために前記入力結合格子へ誘導された全画像のうちの部分画像を搬送するように適合される、
ディスプレイ要素。
【請求項2】
前記2つの異なる射出瞳拡大素子格子は、前記入力結合格子の本質的に横方向に対向する側部に位置付けされる、請求項1に記載のディスプレイ要素。
【請求項3】
前記出力結合格子が、前記射出瞳拡大素子格子を通る直線に対して対称に存在する、請求項1又は請求項2に記載のディスプレイ要素。
【請求項4】
前記射出瞳拡大素子格子が、扇形ゾーンとして前記入力結合格子を通る直線に対して対称に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項5】
前記入力結合格子が二重周期格子を含み、前記二重周期格子は、2つの直交する方向に周期的であり、直交する方向のうちの1つは、入力結合格子及び/又は出力結合格子の対称軸でもあり得る2つのEPE格子の対称軸と位置合わせされる、請求項1~4のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項6】
前記入力結合格子が、光を主に第1の直交する方向に前記第1の正の次数及び前記第1の負の次数に入力結合するように、かつ他の直交する方向に前記第1の正の次数又は前記第1の負の次数に入力結合するように、2つの直交する横方向に周期的である、請求項5に記載のディスプレイ要素。
【請求項7】
前記入力結合格子が単一次元で周期的な格子を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項8】
前記入力結合格子の格子ベクトルが、方向単位ベクトル
【数1】

並びに、第1の射出瞳拡大素子格子への負のθ に対応する前記方向単位ベクトルを有する波面及び第2の射出瞳拡大素子格子への正のθ に対応する前記方向単位ベクトルを有する波面を誘導するように適合される、請求項1~7のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項9】
前記入力結合格子、射出瞳拡大素子格子、及び出力結合格子の1つ又は複数の格子ベクトルは、前記波面が前記ライトガイドから前記出力結合格子により出力結合されるときに、前記波面が前記入力結合格子上に入射するときと同じ直交する波面ベクトル成分を有するように選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項10】
前記入力結合格子が、互いに対して横方向に配置され、前記結合を行うために異なる格子線配向及び/又はプロファイルを有する、少なくとも2つの部分を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項11】
前記射出瞳拡大素子格子及び/又は前記出力結合格子が、前記ライトガイドの一方の側部に配置される第1の格子区域と、前記ライトガイドの反対の側部に配置される第2の格子区域を備え、前記第1の格子区域と前記第2の格子区域が互いに位置合わせされる、請求項1~10のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項12】
前記入力結合格子が、前記ライトガイドの一方の側部に配置される、請求項1~11のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項13】
前記ディスプレイ要素が、拡張現実アイウェア用の要素である、請求項1~12のいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項14】
目に近接したディスプレイ装置などのパーソナルディスプレイ装置であって、
画像を投影するための画像ソースと、
前記入力結合格子に投影された画像を前記出力結合格子上に表示するための請求項1~13のいずれかに記載の少なくとも1つの回折ディスプレイ要素と、
を備えるパーソナルディスプレイ装置。
【請求項15】
パーソナルディスプレイ上に画像を生成するための方法であって、
内部全反射により横方向に光をガイドすることができるライトガイド上に配置された入力結合格子へ光を誘導することと、
前記入力結合された光を、前記ディスプレイの射出瞳を拡大するように構成された少なくとも1つの射出瞳拡大素子格子へガイドすることと、
前記光を、前記少なくとも1つの射出瞳拡大素子格子から、見ることができる画像を生成するための出力結合格子へガイドすることと、
を含み、
前記入力結合格子上で、光を2つの回折波面として前記ライトガイドへ結合することと、
前記2つの回折波面を、前記ディスプレイの射出瞳を拡大するための2つの異なる射出瞳拡大素子格子へガイドすることと、
前記光を、前記2つの射出瞳拡大素子格子から単一の前記出力結合格子へガイドすることと、
をさらに含み、
前記2つの回折波面は、前記入力結合格子の第1の正の及び第1の負の透過次数に又は代替的に第1の正の及び第1の負の反射次数に対応する、
方法。
【請求項16】
請求項1~請求項13のいずれか一項に記載のディスプレイ要素が用いられる、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折ディスプレイ技術に関する。特に、本発明は、入力結合格子、射出瞳拡大素子格子、及び出力結合格子を備えるライトガイドに基づく回折ディスプレイに関する。加えて、本発明は、回折ディスプレイ上に画像を表示する方法、及び新規な使用に関する。具体的には、本発明は、回折格子を用いる目に近接したディスプレイ(NED)などのパーソナルディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの入力結合格子と出力結合格子との間にさらなる格子、いわゆる射出瞳拡大素子(EPE)格子を用いて、ライトガイドに基づく回折ディスプレイの射出瞳を拡大することができる。通常、例えば、US6580529B1で説明されているように、回折NEDの入力結合格子は、射出瞳拡大素子を介して出力結合格子へガイドされる単一の反射回折次数又は透過回折次数を使用する。高い入力結合効率を得るためには、すべての光を採用される回折次数にするのに、傾斜した又は張出した構造などの複雑な格子構造を用いる必要がある。このような高度な格子構造並びにNEDディスプレイ要素の幾何学的形状のうちのいくつかが、US2016/0231568A1で開示されている。
【0003】
2Dの射出瞳拡大素子を有する単一のライトガイドの最大視野(FOV)は、ライトガイドの屈折率と、入力結合された光の波長域に依存する。波長域が460~630nmであり、且つ、ライトガイド屈折率が2.0のとき、最大FOVは、およそ33~35度である。現在、ガラス材料の屈折率がより高いとライトガイドに使用するには青色光を吸収しすぎるので、屈折率は2.0に制限される。FOVを広げるための通常の手法は、ライトガイドの入力結合格子が横方向に揃うように複数のライトガイドを積み重ねることである。1つの手法は、各原色(赤、緑、青)のために単一のライトを用いることである。この手法では、RGB画像は3つのライトガイドを必要とする。
【0004】
積み重ねる手法でさえも、上記に言及したような従来技術の方策は、入力結合に単一回折次数のみを使用し、物理的に大きいEPE格子につながる。これは、大FOV(>40度)のウェアラブルNED装置でのそれらの使用の妨げとなる。この問題を例証するために、US2016/0231568A1で開示されたディスプレイ設計は、15mm×10mm(高さ×幅)のアイボックス及び20mmの射出瞳距離を有する、単色(50~100nm)波長域及び50度のFOVのNEDディスプレイに適用され、図1に示した構造が得られる。この構造は、ライトガイド11、ライトガイド11上の入力結合格子12、射出瞳拡大素子格子13、及び出力結合格子14を備える。大きいFOVに起因して、EPE格子13は、出力結合格子14よりも垂直方向及び水平方向により大きい。ライトガイドの全寸は77mm×52mm(高さ×幅)であり、これは小型のアイウェアのようなNEDには大きすぎる。
【0005】
したがって、大きいFOVを有するより小さいNEDの生産を可能にする改良された方策が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の問題のうちの少なくともいくつかを克服することと、パーソナルディスプレイのための新規なディスプレイ要素を提供することである。具体的な目的は、従来技術の方策よりも小さい面積を必要とするディスプレイ要素を提供することである。特定の目的は、より小さいライトガイドを用いて同じアイボックスサイズ及びFOVを達成することである。
【0007】
さらなる目的はまた、従来の方策よりも大きいFOVの達成を可能にするディスプレイ要素を提供することである。
【0008】
さらなる目的は、このようなディスプレイ要素を採用するパーソナルディスプレイ装置、パーソナルディスプレイ上に画像を表示する改良された方法、及び新規な使用を提供することである。
【0009】
本発明は、入射光の1つよりも多い回折次数を用い、回折次数を異なる射出瞳拡大素子格子を介して異なる経路に沿ってウェーブガイドへ及びその中へ結合及びガイドするという考えに基づいている。これは、視野を損なうことなく小さいサイズのディスプレイ要素を製造すること又はさらには要素の最大視野を広げることを可能にする。
【0010】
一態様によれば、本発明のパーソナルディスプレイシステムのためのディスプレイ要素は、内部全反射により光をガイドすることができるライトガイドと、回折入力結合格子と、回折出力結合格子を備える。入力結合格子は、ライトガイド上で、入力結合格子へ誘導された光をライトガイドへ結合することができるように適合され、この場合、光は、見ることができる画像を生成するための出力結合格子へ伝搬する。本発明によれば、入力結合格子は、入ってくる光を、少なくとも2つ、特に2つの、回折波面に分割するように適合される。ディスプレイ要素はさらに、前記波面をそれぞれ異なる経路に沿って出力結合格子へガイドするべく互いに対して横方向にずらしてライトガイド上に位置決めされる少なくとも2つ、特に2つの、異なる射出瞳拡大素子格子を備える。最終的な見ることができる画像は、異なる射出瞳拡大素子を介して伝搬する2つの波面の和として単一の出力結合格子上に形成される。
【0011】
目に近接したディスプレイ装置などの本発明のパーソナルディスプレイ装置は、画像を投影するための画像ソースと、その前記入力結合格子に投影された画像を前記出力結合格子上に表示するための前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの回折ディスプレイ要素とを備える。ユーザの各目につき1つの、2つのこのようなディスプレイ要素が提供され得る。装置は、例えば、アイウェアに一体化されたディスプレイなどの拡張現実ディスプレイとすることができる。
【0012】
本発明のパーソナルディスプレイ上に画像を生成するための方法は、内部全反射により横方向に光をガイドすることができるライトガイド上に配置された入力結合格子へ光を誘導することを含み、この場合、光は、異なる方向に伝搬する2つの異なる回折波面としてライトガイドへ結合される。回折波面は、ディスプレイの射出瞳を拡大するための2つの異なる射出瞳拡大素子格子へガイドされる。最後に、光は、射出瞳拡大素子格子から、最終的な見ることができる画像を生成するための単一の出力結合格子へガイドされる。通常、光は、本質的にライトガイドの平面の法線方向に入力結合格子へ誘導される。
【0013】
本発明の使用は、入射光の回折次数に基づく分割と、回折ディスプレイ要素上に画像を生成するための分割された光の再結合の使用を含む。
【0014】
より詳細には、本発明は、独立請求項に記載の事項によって特徴付けられる。
【0015】
本発明は顕著な利点を与える。第1に、本発明は、回折ディスプレイ要素の横サイズを減少させることを可能にする。これは、2つの射出瞳拡大素子を、比較できるFOVを提供することになる単一のより大きい射出瞳拡大素子よりも、ライトガイド上により効率よく配置することができるためである。本発明の実施形態を用いると、最大視野は、実際には、従来の格子及び格子レイアウトと比較してさらに広がることができる。より詳細には、本発明は、最新技術の手法よりも、ライトガイドにおいてさらに15%大きい視野(FOV)がガイドされることを可能にする。
【0016】
特に、提示した入力結合及び射出瞳拡大素子構造によれば、入力結合された光の第1のプラスとマイナスとの両方の次数を用いることができ、これは効率を犠牲にせずに比較的より容易に製造することができるバイナリ格子の使用を可能にする。出力結合格子上で、異なる回折次数の波面が再結合される。最新技術の手法と比較して、本発明は、より小さい総ライトガイド面積を必要とし、最終的にはNED装置のより良好なフォームファクタを可能にする。
【0017】
従属請求項は、本発明の選択された実施形態に向けられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、要素は、入力結合格子の本質的に横方向に対向する側部に存在する2つの射出瞳拡大素子格子を備える。一実施形態では、この格子は、扇形ゾーンとして入力結合格子に関して対称に、好ましくはその近傍に存在し、したがって、ボウタイのような幾何学的形状を生じる。
【0019】
いくつかの実施形態では、出力結合格子は、射出瞳拡大素子格子に関して対称に存在する。射出瞳拡大素子格子の格子線は、最終画像が形成される出力結合格子へ光をガイドするように配置される。
【0020】
いくつかの実施形態では、ライトガイドはテーパ形状を有し、入力結合格子と射出瞳拡大素子格子は、その広い方の端上に存在し、出力結合格子は、その狭い方の端上に存在する。このように、ライトガイドのスペースが最適に使用される。
【0021】
いくつかの実施形態では、入力結合格子は、光を正の及び対応する負の回折次数へそれぞれ回折させることにより2つの波面を基板へ結合するように適合される。これらの回折次数は、ライトガイド及び画像ソースに対する入力結合格子の位置に応じて、第1の正の及び負の透過次数又は第1の正の及び負の反射次数を含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、入力結合格子は、二重周期格子を含む。典型的な実施形態では、格子は、2つの直交する方向に周期的であり、直交する方向のうちの1つは、入力結合格子及び/又は出力結合格子の対称軸でもあり得る2つのEPE格子の対称軸と位置合わせされる。
【0023】
いくつかの実施形態では、入力結合格子は、光を主に第1の直交する方向に第1の正の及び負の次数に、並びに、他の直交する方向に第1の正の又は負の次数に入力結合するように、直交する横方向の両方に周期的である。
【0024】
いくつかの代替的な実施形態では、入力結合格子は、単周期格子からなる、又は単周期格子を有する異なる入力結合ゾーンを備える。いくつかの実施形態では、入力結合格子は、互いに対して横方向に配置され、異なる経路上でライトガイドへ同時に2つの波面の結合を行うために異なる格子線配向及び/又はプロファイルを有する、少なくとも2つの部分を備える。
【0025】
いくつかの実施形態では、入力結合格子、射出瞳拡大素子格子、及び出力結合格子の1つ又は複数の格子ベクトルは、波面がライトガイドから出力結合格子により出力結合されるときに、波面が入力結合格子上に入射するときと同じ直交する波面ベクトル成分を有するように選択される。
【0026】
いくつかの実施形態では、波面は、それぞれ、出力結合格子上で伝搬することができる最大視野を広げるために入力結合格子へ誘導された全画像のうちの部分画像を搬送するように適合される。このように、ディスプレイ装置の最大FOVを顕著に広げることができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイ要素の視野は、少なくとも1つの方向に、特に、入射光の回折次数分割が実施される方向に少なくとも40度である。
【0027】
いくつかの実施形態では、格子のそれぞれは、ライトガイドの一方の側部にのみ又はライトガイド内に配置される。しかしながら、いくつかの実施形態では、格子のうちの少なくとも1つは、互いに位置合わせされてライトガイドの対向する側部に配置される2つの格子で形成される。このように、要素の輝度均一性を向上させることができる。しかしながら、典型的な実施形態では、入力結合格子は、ライトガイドの一方の側部にのみ配置される。
【0028】
いくつかの実施形態では、ディスプレイ要素の上記の格子のうちの少なくとも1つ、好ましくは格子のすべては、バイナリ格子である。
【0029】
次に、本発明の実施形態及びその利点を、添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】大きいFOVを達成するべく適用される従来の格子配置を備えるライトガイドに基づく回折ディスプレイを示す図である。
図2】大きいFOVを達成するべく適用される本発明の一実施形態に係る格子配置を備えるライトガイドに基づく回折ディスプレイを示す図である。
図3図3A及び図3Bは、本発明の別の実施形態に係る格子配置を示す図である。
図4図4A及び図4Bは、本発明のさらに別の実施形態に係る格子配置を示す図である。
図5図5A及び図5Bは、本発明の援用によるFOVの向上を波面ベクトルグラフとして例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、入力結合格子の周りに対称に配置される2つの格子ゾーンとしてボウタイ形のEPEを採用するライトガイドに基づく回折型の目に近接したディスプレイ(NED)要素の種々の実装が説明される。
【0032】
図2は、一実施形態に係るディスプレイ要素を示す。ライトガイド21は、二重周期入力結合格子22、2つのEPE格子23、24、及び出力結合格子25を含む。図1及び図2での出力結合格子14、25は、比較を容易にするためにまったく同じ物理サイズを有する。この実施形態は、図1での方策よりも、出力結合格子のサイズに対してはるかにより小さい総EPE格子面積を呈する。これは、NED装置のよりコンパクトな設計を可能にする。図2の配置で必要とされる総ライトガイド面積は、はるかにより小さいことが分かる。
【0033】
ライトガイドの総フットプリントは、例えば75mm×50mm以下、50~70mm×25~45mmなどとすることができる。図1に関して上記で言及したのと同じ設計パラメータ(15mm×10mm(高さ×幅)のアイボックス及び20mmの射出瞳距離を有する50度のFOVのNEDディスプレイ)によれば、62mm×36mm(高さ×幅)のライトガイドで十分である。
【0034】
格子は、ライトガイドの第1の主表面上又は第2の主表面上に存在することができる。光がプロジェクタから出てくるときに最初に入射するライトガイド表面上に格子があるとき、入力結合格子12は透過格子である。格子が他の主表面上にあるとき、入力結合格子12は反射格子である。
【0035】
図2の実施形態では、入力結合格子22は、x方向とy方向との両方に周期的であり、そのナノ構造は、光を主にx方向に+/-1次数に及びy方向に-1次数に入力結合するように設計される。格子ベクトルは、理想的には、光線を出力結合格子25から出力結合するときに該光線が入力結合格子22上に入射するときと同じx方向及びy方向ベクトル成分を有するように設計される。
【0036】
図3A及び図3Bは、本発明の別の実施形態を示す。図3Aに例示したライトガイドの第1の主表面31Aは、x方向に周期的な入力結合格子32を含む。この入力結合格子は、光をプラスとマイナスの第1の透過回折次数(T-1、T+1)に結合する(光が本明細書で想定される場合の格子の側部から来るとき)。ライトガイドの第2の主表面31Bは、EPE格子34、35及び出力結合格子36を含む。
【0037】
入力結合格子上に入射する光線は、方向ベクトル
【数1】
を有する。負のθを有する光線は、入力結合格子から主に右のEPE格子35を通ってアイボックス、すなわち、出力結合格子へ移動し、一方、正のθを有する光線は、左のEPE格子34を通って移動する。
【0038】
一実施形態(図示せず)では、互いに反対符号の回折次数(opposite diffraction orders)への入ってくる光の分割を提供するように適合される2つの横方向に配置される区域が入力結合格子に存在する。
【0039】
当業者に理解されるように、本明細書で言及されるすべての実施形態において、格子の互いに対する配向及びそれらの他の特性は、説明した所望の波長の回折及び回折された光線の伝搬が起こるように適切に選択される。
【0040】
単一の入力結合回折次数のみを使用する従来技術の方策では、FOV全体を単一のEPE格子を通して伝搬する必要があることに注目されたい。これは、単一のライトガイドによりサポートされる最大FOVを本質的に制限する。本発明によれば、単一の従来のEPEを通すよりも2つのEPE格子を通してより広い全FOVを伝搬することができる。この効果は、図5A(従来の単一回折次数結合)及び図5B(本発明の一実施形態に係る互いに反対符号の回折次数結合)の波面ベクトル線図に例示される。
【0041】
同じライトガイド表面上の2つの隣接するヒットポイント間の距離が入力結合格子の直径よりも大きくなるほど高角度でライトガイド内部を伝搬する光線は、より低輝度の領域を人間の目で知覚される最終画像にし得る。この影響は、ライトガイドの両方の側部にEPE格子及び出力結合格子を有することにより低減することができる。これは、第1のライトガイド表面41Aがx方向に周期的な透過入力結合格子と、第1のEPE格子43A、44Bと、y方向に周期的な出力結合格子45Aとを含む一実施形態を示す図4A及び図4Bに例示される。第2の表面41Bは、第2のEPE格子43B、44Bと、出力結合格子45Bを含む。
【0042】
異なる格子ベクトルを有する本発明のいくつかの実施形態は、ディスプレイ要素全体の視野又は動作波長域をさらに増加させるべく積み重ねることができる。
【0043】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
US6580529B1
US2016/0231568A1
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B