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特許7233721レバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構
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  • 特許-レバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構 図1
  • 特許-レバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構 図2
  • 特許-レバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構 図3
  • 特許-レバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】レバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/24 20060101AFI20230228BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20230228BHJP
   F16K 31/26 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
F16T1/24
F16K1/00 A
F16K31/26 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020016327
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021124138
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直也
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-151574(JP,U)
【文献】実開昭52-100233(JP,U)
【文献】特開2010-096252(JP,A)
【文献】実開昭49-111017(JP,U)
【文献】特開2003-232494(JP,A)
【文献】特開2010-242923(JP,A)
【文献】特開2012-149663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/24
F16K 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートに連結されて支点の回りに揺動するレバーと、
弁体が着座する弁座を形成する弁座部材と、
前記弁体を保持して上下方向に移動自在なバルブガードと、
前記バルブガードと前記レバーを連結して前記レバーの揺動により前記バルブガードを上下方向に移動させて前記弁体による開閉動作を行わせる連結部材と、を備え、
前記連結部材は、前記バルブガードに傾動自在に連結されているレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構。
【請求項2】
請求項1に記載のレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構において、さらに、前記バルブガードを上下方向に移動自在に支持し、前記弁座部材を相対移動不能に支持するホルダを備えたレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構において、前記弁体に、前記バルブガードに係合して前記バルブガードに対する前記弁体の下限位置を規制するストッパが設けられているレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構。
【請求項4】
請求項3に記載のレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構において、さらに、前記弁体の上部の外周に嵌合されたリングを備え、
前記リングと前記ストッパとの間に、圧縮ばねが介挿されているレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構において、前記バルブガードと前記連結部材は、前記連結部材を貫通するピンにより連結されているレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバーの一端にフロートが設けられ、他端に弁体が設けられ、フロートの浮力により弁体の開閉を行うレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レバーフロート式蒸気トラップでは、フロートと開閉弁機構とがレバーで連結され、フロートの浮力を開弁方向の力として作用させて、弁の開閉が行われる(例えば、特許文献1)。特許文献1のような弁機構では、弁孔に着座する弁体と、弁軸が不可分一体に形成されている。このため、閉弁時に弁軸が傾いた場合、弁体が弁孔にスムーズに着座できず、閉弁不良を起こす懸念がある。このような閉弁不良が起こると、蒸気漏れにつながる恐れがある。特に、高圧環境下では、弁孔を通過する流体の速度が大きくなるので、閉弁不良により蒸気漏れが発生すると、流体による弁体および弁孔の浸食が加速される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-242923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、閉弁状態では、内部圧力により弁体が弁孔に押し付けられる力が、閉弁力として作用している。弁体と弁軸の一体設計では、閉弁時の衝撃により、弁軸に大きな負荷がかかる懸念がある。
【0005】
本発明は、スムーズな閉弁動作を実現できるレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構は、フロートに連結されて支点の回りに揺動するレバーと、弁体が着座する弁座を形成する弁座部材と、前記弁体を保持して上下方向に移動自在なバルブガードと、前記バルブガードと前記レバーを連結して前記レバーの揺動により前記バルブガードを上下方向に移動させて前記弁体による開閉動作を行わせる連結部材とを備えている。前記連結部材は、前記バルブガードに傾動自在に連結されている。
【0007】
この構成によれば、弁軸を構成する連結部材と弁体が別体で構成され、連結部材が、弁体を保持するバルブガードに傾動自在に連結されている。つまり、連結部材の傾きが、バルブガードの傾動により吸収され、弁体自体は鉛直方向(上下方向)にしか動作しない。これにより、弁体が傾いた状態で着座することがなくなる。したがって、スムーズな閉弁動作が実現されて、閉弁不良の発生を防ぐことができる。
【0008】
本発明において、さらに、前記バルブガードを上下方向に移動自在に支持し、前記弁座部材を相対移動不能に支持するホルダを備えていてもよい。この構成によれば、簡単な構造で、閉弁動作がスムーズな開閉弁機構を実現できる。
【0009】
本発明において、前記弁体に、前記バルブガードに係合して前記バルブガードに対する前記弁体の下限位置を規制するストッパが設けられていてもよい。この構成によれば、弁体が下方へ過度に移動するのを防ぐことができるので、弁体に作用する負荷が軽減される。
【0010】
この場合、さらに、前記弁体の上部の外周に嵌合されたリングを備え、前記リングと前記ストッパとの間に、圧縮ばねが介挿されていてもよい。この構成によれば、着座時および着座状態で弁体が受ける負荷が、圧縮ばねにより吸収されるので、弁体および弁軸への負荷を軽減することができる。
【0011】
本発明において、前記バルブガードと前記連結部材は、前記連結部材を貫通するピンにより連結されていてもよい。この構成によれば、連結部材の傾きを連結ピンの回転で吸収することができる。これにより、簡単な構造で、スムーズな閉弁動作を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構によれば、弁体が傾いた状態で着座することを防いで、スムーズな閉弁動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る開閉弁機構を備えたレバーフロート式蒸気トラップを示す縦断面図である。
図2】同レバーフロート式蒸気トラップの要部を示す平面図である。
図3】同レバーフロート式蒸気トラップの排水弁を拡大して示す縦断面図である。
図4】同レバーフロート式蒸気トラップのスペーサを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「上流」「下流」とは、流体の流れ方向の「上流」「下流」をいう。
【0015】
図1は本発明の第1実施形態に係る開閉弁機構VMを備えたレバーフロート式蒸気トラップを示す構成図である。レバーフロート式蒸気トラップは、フロート1の浮力により排水弁2の開閉を行って復水(ドレン)Dを排水するもので、フロート1を収納するフロート室4を形成するケース6と、前端部(一端部)にフロート1が連結されたレバー8とを有している。レバー8は、前端部8aでフロート1に連結され、支点P1の回りに揺動する。つまり、レバー8は、公知の構造により、支点P1の回りに揺動自在にケース6に支持されている。レバー8における前端部8aと支点P1の間で、支点P1の近傍に排水弁2の弁体10が取り付けられている。
【0016】
図2に示すように、本実施形態では、レバー8は、左右一対のレバー片9,9を有している。詳細には、レバー8は、一対のレバー片9,9の前端部が連結片11で連結された平面視でU字形状である。つまり、レバー8の連結片11が、フロート1に連結される前端部8aを構成している。
【0017】
図1に示すフロート室4内のドレンDの液位が上昇するとフロート1が上昇し、レバー8が矢印A1方向に支点P1の回りに揺動する。これにより、排水弁2の弁体10が上昇して開弁し、ドレンDが排出される。フロート室4内のドレンDの液位が下降するとフロート1が下降し、レバー8が矢印A2方向に支点P1の回りに揺動する。これにより、排水弁2の弁体10が下降して閉弁する。排水弁2の詳細は、後述する。
【0018】
外装体を構成するケース6は、一端部(図の左端部)が開口したケース本体12のフランジ部14に、カバー体16がボルトのような締結部材18で結合されている。ケース本体12とカバー体16とで囲まれた領域により、前記フロート室4が形成されている。フロート室4内に、蒸気がトラップされる。ケース本体12の上部に、フロート室4に蒸気およびドレンDを含む1次側流体を導入する入口100が形成されている。
【0019】
カバー体16は、ケース6の一端部(左端部)の開口部を塞ぐ形状の部材であり、カバー体16の内部に、ドレンDを排出するための横断面円形の流出路20が形成されている。流出路20の上側には、外部への排出口(図示せず)に連通する流出路下流部20aが接続されている。さらに、カバー体16における流出路20の下端部近傍に、フロート室4と流出路20とを連通させる連通路22が設けられている。
【0020】
連通路22は、排水弁2とカバー体16との間に介在するスペーサ24により形成されている。スペーサ24は、図1の左右方向に延びる筒状の部材で、長手方向の一端側がフロート室4に開口し、他端側が流出路20に開口している。スペーサ24の円筒部27における長手方向の一端部(フロート室4側)に鍔状の第1フランジ26が形成され、長手方向の中間部に鍔状の第2フランジ28が形成されている。第2フランジ28に複数のボルト挿通孔28aが形成されており、ボルト挿通孔28aに挿通されたボルト30により、スペーサ24がカバー体16に結合されている。
【0021】
フロート室4におけるスペーサ24の上流側(フロート室4側)には、前記排水弁2が配置されている。排水弁2は、フロート室4内に流入して溜まったドレンDを排出する。スペーサ24の第1フランジ26には、排水弁2を連結するための複数の雌ねじ26a(図4)が形成されている。
【0022】
図3に示すように、排水弁2は、前記弁体10と、弁体10が着座する弁座32を形成する弁座部材34とを有している。弁座部材34は、その内部に弁孔36が形成され、弁孔36の上端(上流端)が弁座32に連通している。つまり、弁体10が弁座32に着座すると、弁孔36が閉止されてドレンDが流れなくなる(閉状態)。弁体10が弁座32から離間すると、弁孔36が開放されてドレンDが流れる(開状態)。
【0023】
弁孔36の下端(下流端)は、図1の連通路22を介して流出路20に連なっている。詳細には、排水弁2は、弁体10を上下方向に移動自在に支持するとともに、弁座部材34を相対移動不能に支持するホルダ38を備えている。
【0024】
ホルダ38は、その内部の上側に上流側通路40が形成され、内部の下側に下流側通路42が形成されている。上流側通路40はフロート室4に連通し、下流側通路42は連通路22に連通している。図3のホルダ38の内部に、上流側通路40と下流側通路42を連通する弁座部材取付孔44が形成されている。詳細には、弁座部材取付孔44に弁座部材34が装着されており、弁座部材34の弁孔36により上流側通路40と下流側通路42が連通している。
【0025】
ホルダ38の上部に、弁体挿通孔46が形成されている。弁体挿通孔46は、フロート室4と上流側通路40とを上下方向に連通している。本実施形態では、弁体挿通孔46は、ホルダ38に装着されたブッシュ45により形成されている。この筒状のブッシュ45の中空孔(弁体挿通孔)46を弁体10が通過する。
【0026】
図1のホルダ38に、ねじ挿通孔(図示せず)が形成されている。スペーサ24の第1フランジ26の雌ねじ26a(図4)に、ホルダ38のねじ挿通孔を通してボルト25を螺合することで、弁座32を有するホルダ38がスペーサ24を介してカバー体6に取り付けられている。スペーサ24とホルダ38との間に、ガスケット48が介在されている。
【0027】
つぎに、弁体10を説明する。図3に示すように、排水弁2は、さらに、バルブガード50と、連結部材52とを備えている。バルブガード50は、弁体10を保持し、弁体挿通孔46内を上下方向に移動自在である。連結部材52は、バルブガード50とレバー8を連結し、レバー8の揺動によりバルブガード50を上下方向に移動させて弁体10による開閉動作を行わせる。つまり、弁体10は、連結部材52およびバルブガード50を介してレバー8に接続されている。
【0028】
連結部材52は、第1連結ピン54によりレバー8に連結されている。詳細には、図2に示すように、連結部材52が左右のレバー片9,9の間に配置され、第1連結ピン54が左右のレバー片9,9および連結部材52を貫通している。
【0029】
連結部材52は、バルブガード50に傾動自在に連結されている。詳細には、バルブガード50と連結部材52は、連結部材52を貫通する第2連結ピン56により連結されている。バルブガード50の上部に、上方に開口する挿通孔50aが形成されており、この挿通孔50aに連結部材52が上方から挿通されている。この状態で、第2連結ピン56が、バルブガード50と連結部材52を貫通している。挿通孔50aの直径は連結部材52の外径よりも大きく形成されており、連結部材52が第2連結ピン56回りを揺動自在に構成されている。一方、バルブガード50は、弁体挿通孔46内をほぼ上下方向に移動する。
【0030】
バルブガード50の下部に、上下方向に延びる弁体挿通孔58が形成されている。本実施形態では、弁体挿通孔58は段付きの貫通孔である。つまり、弁体挿通孔58は、段部60を挟んで上側の大径孔62と、下側の小径孔64とを有している。大径孔62の周壁の上部に、環状の係止溝62aが形成されている。小径孔64の下端部に、径方向内側に突出する環状の受部66が形成されている。つまり、受部66が、小径孔64よりも小径に形成されている。
【0031】
弁体10は、上下方向に長い円柱形状で、その下端部10aが下方に向かって縮径するテーパ形状に形成されている。この下端部10aが、弁座32に着座することで、弁孔36が閉止される。弁体10の上下方向中間部に、径方向外側に突出する鍔状のフランジ部65が形成されている。
【0032】
弁体10の外径は、受部66の内径よりも小さく形成されている。フランジ部65の外径は、受部66の内径よりも大きく、小径孔64の直径よりも小さく形成されている。したがって、弁体10が下降すると、フランジ部65の下面が受部66の上面に当接する。つまり、フランジ部65が、バルブガード50に対する弁体10の下限位置を規制するストッパ65を構成している。
【0033】
弁体10の上部の外周に、リング68が嵌合されている。本実施形態では、リング68は、ワッシャで構成されている。リング68の外径は、大径孔62の直径よりも若干小さく形成されている。リング68の内径は、弁体10の外径よりも若干大きく形成され、小径孔の直径よりも小さく形成されている。
【0034】
大径孔62の周壁の係止溝62aに、Cリング69が係合されている。Cリング69により、弁体10およびリング68が上方に抜け出るのを防いでいる。リング68とストッパ(フランジ部)65との間に、圧縮ばね70が介挿されている。これにより、弁体10に作用する力が吸収される。
【0035】
フロート1が連結されたレバー8、弁座32を形成する弁座部材34、弁体10を保持するバルブガード50、レバー8とバルブガード50を連結する連結部材52、および圧縮ばね70により、レバーフロート式蒸気トラップの開閉弁機構VMが構成されている。ただし、圧縮ばね70はなくてもよい。
【0036】
つぎに、弁体10の開動作を補助する錘72について説明する。図1に示すように、錘72は、レバー8における支点P1よりも後方に設けられている。錘72は、耐食性材料が好ましく、例えば、SUS304のようなオーステナイト系ステンレスである。ただし、錘72の材質はこれに限定されない。錘72の重さは、使用圧力、例えば弁構造、サイズ等によって大きく変化し、これらを考慮して適宜設定される。
【0037】
図2に示すように、錘72は、左右一対の錘部品74,74を有している。左右の錘部品74,74は、左右のレバー片9,9の外面にそれぞれ取り付けられている。左右の錘部品74,74は、同一形状で同じ重さであることが好ましい。本実施形態では、各錘部品74は、段付きの円柱形状である。具体的には、各錘部品74は、レバー片9に当接する第1の円柱部分76と、第1の円柱部分76よりも大径の第2の円柱部分78とを有している。
【0038】
第2の円柱部分78は、第1の円柱部分76におけるレバー片9と反対側に設けられている。第1の円柱部分76と第2の円柱部分78とが、円錐台部分80により連結されている。円錐台部分80の小径側端面が第1の円柱部分76に連接され、円錐台部分80の大径側端面が第2の円柱部分78に連接されている。つまり、円錐台部分80は、第1の円柱部分76から第2の円柱部分78に向かって徐々に拡径するテーパ形状である。本実施形態では、第1の円柱部分76、第2の円柱部分78および円錐台部分80が、不可分一体に形成されている。ただし、錘部品74の構造、形状はこれに限定されない。
【0039】
さらに、左右一対のレバー片9,9の間に、追加の錘部品82が設けられている。本実施形態では、追加の錘部品82は円盤形状である。ただし、追加の錘部品82の形状はこれに限定されない。
【0040】
左右の錘部品74,74および追加の錘部品82は、第3連結ピン84によりレバー8に取り付けられている。詳細には、第3連結ピン84が、左右の錘部品74,74、左右のレバー片9,9および追加の錘部品82を貫通して延びている。ただし、錘72の支持構造は、これに限定されない。
【0041】
図1のレバーフロート式蒸気トラップは、さらに、レバー8上での錘72の移動を規制するストッパ部材85を備えている。本実施形態では、スペーサ24の一部が、ストッパ部材85を構成している。詳細には、スペーサ24の第1フランジ26および円筒部27が、ストッパ部材85を構成している。
【0042】
図4に示すように、第1フランジ26および第2フランジ28は、軸方向から見て長円形状に形成されている。詳細には、第1フランジ26は、軸方向から見て、上面26uと下面26dが直線状に延びており、左右の側面26s、26sが外側方へ膨らんだ曲面で形成されている。同様に、第2フランジ28は、軸方向から見て、上面28uと下面28dが直線状に延びており、左右の側面28s,28sが外側方へ膨らんだ曲面で形成されている。第2フランジ28は、支持剛性を確保するために、上面28uの中間部から上方に突出する追加のフランジ部29が形成されている。
【0043】
図1に示すように、本実施形態では、第1フランジ26の上面26u、26uおよび円筒部27の上面がストッパ部材85を構成している。詳細には、錘部品74の第1の円柱部分76が第1フランジ26の上面26u、26uに当接し、追加の錘部品82の下面が円筒部27の上面に当接する。
【0044】
図2に示すように、円錐台部分80のテーパ形状と、第1および第2フランジ26,28の側面26s、28sの曲面形状を調整することで、錘部品74が第1および第2フランジ26,28に干渉するのを避けることができるうえに、錘72の重量を確保しつつ、目標のレバー角度で錘72をストッパ部材85に当てることができる。また、スペーサ24がストッパ部材85を兼用しているので、部品点数の増加が抑制されるうえに、構造も簡単になる。
【0045】
つぎに、本実施形態のレバーフロート式蒸気トラップの作用について説明する。図1のフロート室4に、高温の蒸気を含んだ1次側流体が流入し、この1次側流体に混入したドレンDがフロート室4内に溜まる。このドレンDが設定水位以下である場合には、フロート1が、図1に2点鎖線で示す下限位置に保持される。このとき、排水弁2は、図3の弁孔36が弁体10で閉塞された閉弁状態となり、1次側流体に含まれる高温の蒸気がフロート室4内にトラップされる。
【0046】
フロート室4内に溜まったドレンDが設定水位を越えると、図1に実線で示すように、このドレンDから浮力を受けてレバー8が支点P1周りに矢印A1の方向に回動し、フロート1と一体的に上方へ移動する図3の弁体10が弁孔36を開放する。これにより、排水弁2が開弁状態となって、ドレンDを含んだ流体が弁孔36、ホルダ38内部の下流側通路42、図1のスペーサ24内部の連通路22および流出路20を通って流出路下流部20aから蒸気トラップの外部へ排出される。
【0047】
このとき、錘72の自重により、レバー8に矢印A3方向の力、つまり、開弁方向の力が作用する。したがって、高温高圧環境下であっても、弁体10の開動作がスムーズになる。
【0048】
フロート室4内のドレンDが排出によって減少すると、フロート1が自重で下降し、レバー8が支点P1周りに矢印A2の方向に回動して全閉状態となる。このとき、図3の連結部材52が第2連結ピン56回りを揺動するので、連結部材52の傾きが吸収され、弁体10は鉛直方向(上下方向)に動作する。これにより、弁体10が傾いた状態で弁座32に着座することがなくなって、スムーズな閉弁動作が実現される。また、着座時および着座状態で弁体10が受ける負荷が圧縮ばね70により吸収されるので、弁体10への負荷が軽減される。
【0049】
高温高圧環境下では、内部のドレンDの密度が小さくなるので、浮力が小さくなる。また、閉弁状態で弁体10に作用する力は、内部圧力により弁体10を弁孔36に押し付ける力であり、開弁するためにはそれ以上の力が必要となる。そのため、高温高圧環境下では、開弁するために大きな力が必要となる。上記構成によれば、フロート1の浮力を補助する力として、フロート1に連結されたレバー8上に、開弁方向に作用する錘72が取り付けられている。したがって、フロート1のサイズや、支点P1からフロート1までのレバー8長さが大きくなるのを抑制しつつ、高温高圧環境下での開弁力を確保できる。また、ストッパ部材85により、錘72の移動が規制されているので、錘72が過度に移動して他の部品に干渉するのを防ぐことができる。
【0050】
図2に示すように、錘72は、左右一対の錘部品74を有していているので、錘部品74一つの大きさが小さくなるから、錘72の大きさ(重さ)を調整しやすい。また、レバー8が左右一対のレバー片9,9を有していているので、左右の錘部品74をバランスよく配置しやすい。さらに、左右一対のレバー片9,9の間に、追加の錘部品82が設けられていているので、錘72の重さの調整が一層容易になる。
【0051】
ケース6にスペーサ24が取り付けられ、スペーサ24にガスケット48を介してホルダ38が取り付けられている。このスペーサ24が、ストッパ部材85を構成している。これにより、簡単な構成で、錘付きのレバーフロート式蒸気トラップを実現できる。
【0052】
図3に示すように、弁軸を構成する連結部材52と弁体10が別体で構成され、連結部材52が、弁体10を保持するバルブガード50に傾動自在に連結されている。つまり、連結部材52の傾きが、バルブガード50に対する傾動により吸収され、弁体10自体は鉛直方向(上下方向)にしか動作しない。これにより、弁体10が傾いた状態で弁座32に着座することがなくなる。したがって、スムーズな閉弁動作が実現されて、閉弁不良の発生を防ぐことができる。
【0053】
また、ホルダ38が、バルブガード50を上下方向に移動自在に支持するとともに、弁座部材34を相対移動不能に支持している。これにより、簡単な構造で、閉弁動作がスムーズな開閉弁機構VMを実現できる。
【0054】
弁体10に、バルブガード50に係合してバルブガード50に対する弁体10の下限位置を規制するストッパ65が設けられている。これにより、弁体10が下方へ過度に移動するのを防ぐことができるので、弁体10に作用する負荷が軽減される。
【0055】
さらに、弁体10の上部の外周にリング68が嵌合され、リング68とストッパ65との間に圧縮ばね70が介挿されている。したがって、着座時および着座状態で弁体10が受ける負荷が圧縮ばね70により吸収されるので、弁体10および連結部材52への負荷を軽減することができる。
【0056】
バルブガード50と連結部材52は、連結部材52を貫通する第2連結ピン56により連結されている。これにより、連結部材52の傾きが第2連結ピン56の回転で吸収することができるので、簡単な構造で、スムーズな閉弁動作を実現できる。
【0057】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、錘72はなくてもよい。この場合、スペーサ24も省略され、ホルダ38がケース6に接続される。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 フロート
8 レバー
10 弁体
32 弁座
34 弁座部材
38 ホルダ
50 バルブガード
52 連結部材
56 第2連結ピン(ピン)
65 フランジ部(ストッパ)
68 リング
70 圧縮ばね
P1 支点
VM 開閉弁機構
図1
図2
図3
図4