IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エコ・エネルギーシステムの特許一覧

特許7233722土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法
<>
  • 特許-土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法 図1
  • 特許-土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法 図2
  • 特許-土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法 図3
  • 特許-土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法 図4
  • 特許-土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法 図5
  • 特許-土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法 図6
  • 特許-土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法 図7
  • 特許-土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】土壌改良材の製造方法、肥料の製造方法及び土壌改良方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/32 20060101AFI20230228BHJP
   C05F 3/00 20060101ALI20230228BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20230228BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230228BHJP
   C09K 101/00 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
C09K17/32 H
C05F3/00
C05F11/00
C12N1/20 D
C09K101:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020023338
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127400
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】511016992
【氏名又は名称】株式会社エコ・エネルギーシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】畦地 貞典
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-041256(JP,A)
【文献】特開2002-102895(JP,A)
【文献】特開2002-345453(JP,A)
【文献】特開2013-082590(JP,A)
【文献】特開2011-055760(JP,A)
【文献】関平和ら,堆肥化過程における熱移動(第2報),農業気象,日本,1984年,40巻、1号,37-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00
C05F
C12N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木を破砕し、その破砕した木屑1m にバチルス菌及び乳酸菌を含有させた水溶液を500mL~2000mL(0.05~0.2%)の割合で添加し、約3日~2,3週間生化学反応させて65℃~70℃の範囲まで上昇させて有機微生物含有バイオマス材料とし、その後、前記有機微生物含有バイオマス材料100容量部に対して10~50容量部の割合で窒素含有物質(畜産廃棄物)を加えてなり、該有機微生物含有バイオマス材料に水分を投与して前記65~70℃の範囲で温度管理し且つ50~60容量%の範囲で水分含有量を調整する、ことを特徴とする土壌改良材の製造方法
【請求項2】
前記水溶液はVA菌根菌をさらに含有する、請求項1に記載の土壌改良材の製造方法
【請求項3】
樹木を破砕し、その破砕した木屑1m にバチルス菌及び乳酸菌を含有させた水溶液を500mL~2000mL(0.05~0.2%)の割合で添加し、約3日~2,3週間生化学反応させて65℃~70℃の範囲まで上昇させて有機微生物含有バイオマス材料とし、その後、前記有機微生物含有バイオマス材料100容量部に対して40~80容量部の割合で窒素含有物質(畜産廃棄物、水産廃棄物)を加えてなり、該有機微生物含有バイオマス材料に水分を投与して前記65~70℃の範囲で温度管理し且つ50~60容量%の範囲で水分含有量を調整する、ことを特徴とする肥料の製造方法
【請求項4】
前記水溶液はVA菌根菌をさらに含有する、請求項3に記載の肥料の製造方法
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法で製造された土壌改良材を処理対象物に混合する、ことを特徴とする土壌改良方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の方法で製造された土壌改良材に水産廃棄物を混合した肥料、又は、請求項3又は4に記載の方法で製造された肥料で、農作物又は牧草の育成を促し、生産性が向上した農作物又は牧草で畜産の生産性を高め、畜産により生じた畜産廃棄物を再び前記土壌改良材又は前記肥料と混合するリサイクル方法である、ことを特徴とする有機物リサイクル方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された土地や痩せた土地を再利用可能とすることができる、土壌改良材、肥料、土壌改良方法及び有機物リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
同じ作物を同じ場所で連作する場合、土壌生態系のバランスが崩れ、作物に病気や栄養障害等の障害が起こることがある。こうした障害を抑止するため、土壌に農薬やボルドー液(硫酸銅・石灰の混合液)等を加えて殺菌したりしている。しかし、そうした手段は土壌の生態系を破壊するおそれがあるとともに、土壌が農薬等を吸収して凝集しやすく、土壌に農薬等が蓄積されて土地が痩せてしまうおそれがある。
【0003】
上記した問題に対し、バチルス菌(枯草菌:Bacillus subtilis)を利用した土壌改良材が幾つか提案されている。例えば特許文献1には、団粒構造が良好に形成し、重金属の溶出も少なく、廃棄物を有効利用でき、微生物殺菌剤効果が強く連作障害を防止できる土壌改良剤が提案されている。この技術は、バチルス菌が優占化された微生物処理汚泥と無機成分を主として含む下水汚泥とを重量比で1:0.3~5.0の割合で混合し、発酵してなる土壌改良剤、好ましい態様は、バチルス菌が優占化された微生物処理汚泥が、下水、し尿又は生活廃水を少なくとも1種含む汚水を微生物処理した際に発生する余剰汚泥であり、バチルス菌の菌体コロニー数10~1012個/mlを含むというものである。
【0004】
また、特許文献2には、渫土を有効利用した土壌改良資材の製造方法が提案されている。この技術は、浚渫で生じた土を脱水して得た浚渫土と、自活性線虫が生息する種線虫土と、バチルス菌が生息する種菌土と、前記バチルス菌の栄養となるセルロース源と、を混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合土を20℃~45℃で発酵させバチルス菌を前記混合土中で優占化するとともに自活性線虫の増殖を促す発酵工程と、を有する土壌改良資材の製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-274205号公報
【文献】特開2017-165792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バチルス菌を用いた従来の方法であっても、農地を十分に土壌改良するには至っていなかった。また、水産廃棄物や畜産廃棄物が不法投棄により放置され、それら廃棄物により土地が汚染された場合、汚染された土地を再利用できる程度に改良することも十分に行われておらず、多くは放置されているのが実情である。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、汚染された土地や痩せた土地を再利用可能とすることができる、土壌改良材、肥料、土壌改良方法及び有機物リサイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、有機微生物(バチルス菌、乳酸菌、VA菌根菌等)の働きを活用し、安全で安心な土壌を作り、さらには汚染された土壌を再生させるための研究を継続してきた。その研究の過程において、北海道日高地区で従来廃棄していた間伐材、畜産廃棄物(馬、牛、鶏等の糞尿)、水産廃棄物を利用した有機微生物が土壌の改良に効果的であることを突き止め、その有機微生物を含む有機微生物含有バイオマス材料で検証を重ねた結果、有機微生物含有バイオマス材料を利用した土壌改良材や肥料が驚くべき効果があることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
(1)本発明に係る土壌改良材は、樹木を破砕し、その破砕した木屑にバチルス菌、乳酸菌、VA菌根菌等を含有させた水溶液を添加し、約3日~2,3週間生化学反応させて65℃~70℃の範囲まで上昇させて有機微生物含有バイオマス材料とし、その後、前記有機微生物含有バイオマス材料100容量部に対して10~50容量部の割合で窒素含有物質(畜産廃棄物)を加えてなる、ことを特徴とする。この土壌改良材は、土壌や汚泥に混合して土壌の改良や汚泥の消臭等に活用される。土壌改良材は、65~70℃の範囲で温度管理され、50~60容量%の範囲で水分含有量が調整されていることが好ましい。
【0010】
(2)本発明に係る肥料は、樹木を破砕し、その破砕した木屑にバチルス菌、乳酸菌、VA菌根菌等を含有させた水溶液を添加し、約3日~2,3週間生化学反応させて65℃~70℃の範囲まで上昇させて有機微生物含有バイオマス材料とし、その後、前記有機微生物含有バイオマス材料100容量部に対して40~80容量部の割合で窒素含有物質(畜産廃棄物、水産廃棄物等)を加えてなる、ことを特徴とする。この肥料は、易分解性有機物が微生物によって完全に分解された肥料として活用され、農作物の生産性の向上に活用される。肥料は、65~70℃の範囲で温度管理され、50~60容量%の範囲で水分含有量が調整されていることが好ましい。
【0011】
(3)本発明に係る土壌改良方法は、上記本発明に係る土壌改良材を処理対象物に混合する、ことを特徴とする。
【0012】
(4)本発明に係る有機物リサイクルシステムは、上記本発明に係る土壌改良材に水産廃棄物等を混合した肥料、又は、上記本発明に係る肥料で、農作物又は牧草の育成を促し、生産性が向上した農作物又は牧草で畜産の生産性を高め、畜産により生じた畜産廃棄物を再び前記土壌改良材又は前記肥料と混合するリサイクルシステムである、ことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、得られた肥料により農作物等の生産性を高め、その地域での畜産業等の発展に貢献できるリサイクルシステムとすることができる。その結果、畜産業等をその土地で継続して安定に営むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、汚染された土地や痩せた土地を再利用可能とすることができる、土壌改良材、肥料、土壌改良方法及び有機的リサイクルシステムを提供することができる。特に、土壌改良材は、臭気ガス(アンモニアガス、硫黄酸化ガス、メタンガス)の抑制、硝酸態窒素の抑制、pH調整、連作障害の抑制、温室効果ガス(二酸化炭素ガス、メタンガス、亜酸化窒素ガス)の抑制等を実現することができる。肥料は、易分解性有機物が微生物によって完全に分解された肥料として活用され、農作物の生産性を向上(農作物の糖度や収穫高を向上)させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る土壌改良材を得るためのプロセスを示す現場写真である。(A)は樹木を破砕し、その破砕した木屑に有機微生物(バチルス菌、乳酸菌、VA菌根菌等)含有水溶液を添加した態様の現場写真であり、(B)土壌改良材を管理して一定温度範囲(70℃)にした状態を示す写真である。
図2図1のプロセスの続きを示す現場写真である。(A)は有機微生物含有バイオマス材料に所定割合で窒素含有物質を加えて土壌改良材とした態様の現場写真であり、(B)はその土壌改良材を処理対象物に混合した態様の現場写真である。
図3】(A)は有機微生物含有バイオマス材料に水分を投与して水分調整している現場写真であり、(B)は有機微生物含有バイオマス材料を重機等で定期的に混合して生化学反応を促進させている現場写真である。
図4】(A)は処理対象物に土壌改良材を混合する処理態様を示す現場写真であり、(B)は大量の処理対象物を示す現場写真である。
図5】本発明に係る肥料を農作物に使用した態様を示す現場写真(A)(B)である。
図6】汚泥から悪臭が発生している現場写真である。
図7】モンゴル政府関係者と終末処理場の関係者の前で、終末処理場の汚泥臭気の抑制テストを行っている現場写真である。
図8】土壌改良材を管理して一定温度範囲にした状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る土壌改良材、肥料、土壌改良方法及び有機物リサイクルシステムの実施形態について説明する。なお、本発明は、その技術的範囲内において以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0017】
[土壌改良材、肥料]
本発明に係る土壌改良材及び肥料は、図1及び図2に示すように、樹木を破砕し、その破砕した木屑にバチルス菌、乳酸菌、VA菌根菌等を含有させた水溶液を添加し、約3日~2,3週間生化学反応させて65℃~70℃の範囲まで上昇させて有機微生物含有バイオマス材料とし(図1(B))、その後、前記有機微生物含有バイオマス材料100容量部に対して所定の割合で窒素含有物質(畜産廃棄物、水産廃棄物等)を加えてなる(図2(A))、ことを特徴とする。そして、こうした土壌改良材や肥料を処理対象物に混合することで、土壌改良等を行うことができる(図2(B))。
【0018】
各構成要素について説明する。
【0019】
(原材料)
原材料は、木屑又は生物系廃棄物(畜産廃棄物、水産廃棄物等)からなるものを挙げることができる。木屑は、例えば間伐材等の木材又は木材廃棄物(木くず、木材チップ、加工ゴミ等)等を破砕して得ることができる。生物系廃棄物は特に限定されないが、畜産業から廃棄される畜産廃棄物(馬、牛、鶏等の糞尿)等の廃棄物と水産業から廃棄される水産廃棄物(過剰水揚品、加工残渣等)等の廃棄物を挙げることができる。特に、畜産廃棄物(馬、牛、鶏等の糞尿)等は、窒素成分を含有することから、後述する有機微生物の栄養素となるので好ましい。
【0020】
上記以外の原材料としては、例えば、食品廃棄物や農産廃棄物であってもよい。具体的には、日常生活から廃棄される生ゴミ等の食品廃棄物(食品残渣)、余剰生産品、選別排除品、加工副産物(米ぬか等)等の農産廃棄物を挙げることができる。これらは、それぞれ単独であってもよいし、複数の種類を混合したものであってもよい。原材料の含水率は関係なく、泥濘体であっても乾燥体であってもよい。
【0021】
(有機微生物水溶液)
有機微生物水溶液は、有機微生物を水溶媒に分散させたものである。有機微生物としては、バチルス菌(枯草菌:Bacillus subtilis)、乳酸菌、VA菌根菌等を挙げることができる。これらのうち、バチルス菌と乳酸菌は必須の微生物である。なお、バチルス菌は、土壌や植物に存在する細菌であり、有機物を餌にして速やかに増殖したり、抗生物質を生産したりする特徴がある。また、乳酸菌は、悪臭の原因になる腐敗物質を抑制する。VA菌根菌は、リン酸.ミネラル.水分を効率よく吸収して食物に与え、生育を促進させるように作用する。なお、本発明者は、本発明で適用する有機微生物を総称して「バボン菌」と称して事業活動を展開している。
【0022】
水溶媒としては、それら有機微生物を原材料に含有させる際の媒体として作用するものであり、例えば、水を挙げることができる。なお、水溶媒には、水道水は使用禁止だが、有機微生物に悪影響のない範囲で、水以外の含有物を含んでいてもよい。
【0023】
(有機微生物含有バイオマス材料)
有機微生物含有バイオマス材料は、原材料に有機微生物含有水溶液を添加し、その状態で一定期間(3日~2,3週間)生化学反応させて65℃~70℃の範囲まで上昇させて得ることができる。このときの温度上昇は、生化学反応に基づくものであり、バイオマス材料の自己昇温反応に基づいて65~70℃の範囲まで上昇する。なお、生分解反応による温度上昇は、最大90℃程度でとどまる。なお、原材料(例えば破砕した木屑等)への有機微生物(バボン菌等)の添加量は、原材料1mに対し、有機微生物含有水溶液(バボン菌液)500mL~2000mL(0.05~0.2%)を添加することが好ましい。
【0024】
生化学反応の期間は一定期間であればよく、約70℃前後までの昇温に要する日数としては、通常、0.5日以上で到達することもあるが、好ましくは3日~2,3週間程度である。こうした期間を経ることにより、生化学反応を十分にさせることができる。
【0025】
(土壌改良材、肥料)
土壌改良材と肥料は、有機微生物含有バイオマス材料100容量部に対して所定の割合で窒素含有物質(畜産廃棄物、水産廃棄物等)を加えて得られる。得られた土壌改良材は、土壌や汚泥に混合して土壌の改良や汚泥の消臭等に活用される。また、得られた肥料は、易分解性有機物が微生物によって完全に分解された肥料として活用され、農作物の生産性の向上に活用される。
【0026】
所定の割合としては、土壌改良材では、有機微生物含有バイオマス材料100容量部に対して10~50容量部の割合で窒素含有物質(畜産廃棄物)を加え、肥料では、有機微生物含有バイオマス材料100容量部に対して40~80容量部の割合で窒素含有物質(畜産廃棄物、水産廃棄物等)を加えることが好ましい。窒素含有物質(畜産廃棄物)は微生物の餌になるので、窒素含有物質(畜産廃棄物)を有機微生物含有バイオマス材料に添加することにより、有機微生物含有バイオマス材料の効果を維持することができるので好ましい。窒素含有物質(畜産廃棄物)は、窒素を含有する物質であれば特に限定されない。
【0027】
窒素含有物質(畜産廃棄物)は、土壌改良材に対しては10~50容量部としている。この範囲とすることにより、土壌の改良を行うことができる。なお、50容量部を超えても可能であるが、後述する肥料のような生産性の向上を目的とする場合と異なり、通常はそうした範囲で十分である。一方、肥料に対して窒素含有物質(畜産廃棄物、水産廃棄物等)は40~80容量部としている。この範囲とすることにより、農作物の生産性の向上や牧草の生育を向上維持に有効である。
【0028】
図3(A)は、有機微生物含有バイオマス材料に水分を投与して水分調整している現場写真であり、図3(B)は、有機微生物含有バイオマス材料を重機等で定期的に混合して生化学反応を促進させている現場写真である。図8は、土壌改良材を管理して一定温度範囲にした状態を示す写真である。土壌改良材や肥料は、図4に示すように、50~60容量%の範囲で水分含有量が調整されていることが好ましい。このように管理することで、それに含まれる微生物の作用を維持でき、使用時に効果的な土壌改良や肥料としての機能を発揮させることができる。なお、温度や水分が上記範囲外の場合でも微生物を機能させることは可能であるが、効果を奏するまでに時間がかかることがあるので、上記範囲内とすることが望ましい。なお、図4(A)は処理対象物に土壌改良材を混合する処理態様を示す現場写真であり、図4(B)は大量の処理対象物を示す現場写真である。
【0029】
(土壌改良方法)
土壌改良材は、図1図3に示すように、処理対象物である土壌や汚泥に混合して土壌の改良や汚泥の消臭等に活用される。また、肥料は、易分解性有機物が微生物によって完全に分解された肥料として活用され、図5(A)(B)に示すように、農作物の生産性の向上に活用される。処理対象物としては、汚染された土地、痩せた土地、連作障害を抑制したい土地、臭いを無くしたい汚泥(図6を参照)、硝酸態窒素を抑制したい土地、pH調整したい土地、等を挙げることができる。また、後述の実施例に示すように、家畜の飼育を生活の基盤とする地域や、家畜を放牧して飼育する地域においては、牧草の生育を高めることができれば、その地域に安定して定住でき、さらに農作物の生産性や連作障害が解消されれば、その地域に安定して定住できるという効果がある。
【0030】
土壌改良は、終末処理場でも好ましく行うことができる。終末処理場では、その処理施設の種類により、悪臭が生じることがある。また、個々の処理施設の組合せとその配列は、それぞれの処理場の置かれている諸状況(流入水の水質、放流先の状況、汚泥処理の制約条件等)を考慮して決定される。本発明に係る土壌改良材を用いることにより、悪臭の抑制、安定的な土壌改良や農作物や牧草の生産を行うことができる。
【0031】
(有機物リサイクルシステム)
有機物リサイクルシステムは、上記本発明に係る土壌改良材と、畜産廃棄物(馬、牛、鶏等の糞尿)又は水産廃棄物等の廃棄物とを混合して土壌を改良し、又は、上記本発明に係る肥料で農作物又は牧草の育成を促し、改良された土壌及び生産性が向上した農作物又は牧草で畜産の生産性を高め、畜産により生じたと畜産廃棄物を再び前記土壌改良材又は前記肥料と混合するリサイクルシステムである。
【0032】
こうしたリサイクルシステムは、得られた肥料により農作物等の生産性を高め、その地域での畜産業等の発展に貢献できるリサイクルシステムとすることができる。その結果、畜産業等をその土地で継続して安定に営むことができる点で極めて期待できる。
【0033】
なお、本発明者は、疲弊した土地を再生する工法を「ジオリバース工法」と呼び、再生された土地をそれ以後継続して維持するための工法を「ジオトーラス工法」と呼んでいる。ジオトーラス工法で使用する有機微生物含有バイオマス材料は、ジオリバース工法での再生の際に使用した有機微生物含有バイオマス材料の微生物の種類と配合を変えて、継続維持を実現する。ジオトーラス工法で使用する微生物含量は、ジオリバース工法で使用する微生物含量の2割から5割程度に少ない。
【実施例
【0034】
実証実験により本発明をさらに詳しく説明する。
【0035】
[実験1]
モンゴル ウランバートル(住所:Baruun turuun(JICAで造った堆肥工場のある場所)Ulaanbaatar city, Songino khairkhan district, 32-r khoroo, Baruun turuun 1 street, 71)での実証を行った。モンゴルでは、経済発展と共に畜産業も増えたが、糞尿等の廃棄物も大量に発生して不法投棄され、悪臭や土壌汚染、水質汚染の問題が深刻になっている。一方、ウランバートル近郊では、農作物や牧草の育ちが悪かった。今回、本発明に係る土壌改良材を活用した土壌改良を実施した。その実施の模様を図3(A)(B)及び図4(A)に紹介する。
【0036】
日本で土壌改良材を作製した。作製は、先ず、樹木を破砕し、その破砕した木屑にバチルス菌と乳酸菌、VA菌根菌等を含有させた水溶液を加え、約3日~2,3週間生化学反応させて65℃~70℃の範囲まで上昇させて有機微生物含有バイオマス材料とした。その有機微生物含有バイオマス材料に畜産廃棄物(馬、牛、鶏等の糞尿)を窒素含有物質として加え、約2週間生化学反応を継続させて熟成し土壌改良材を得た。
【0037】
その土壌改良材を2月2日にウランバートルに輸送した。ウランバートルの外気温は-20℃で、室温は10℃、菌床温度(土壌改良材)は10~11℃であった。2月11日に土壌改良材7.5Lに鶏糞7.5L(臭気約25ppm)を混合した。混合物の臭気は、数分後に約5ppmとなった。臭気測定は、市販の臭気測定器で行った。こうした土壌改良材を用いることにより、安定的な土壌改良や農作物や牧草の生産を行うことができる。特にモンゴルでは、土壌を積極的に改良し、牧草等の生産効率を高める等の習慣はなかったが、本発明に係る土壌改良材や肥料を活用して土壌改良等を実現することにより、遊牧生活ではなく定住型の生活スタイルを実現できる。
【0038】
[実験2]
ウランバートルの終末処理場(住所:ウランバートル市終末処理場 Ulaanbaatar city, Songino khairkhan district, 20-r khoroo)での実験を行った。そこには、図4(B)に示すような大量のスラッジ等で汚染された約90万トン以上の処理対象物があった。この処理対象物に土壌改良材を混合したところ、発生する悪臭を抑制することができ、さらにその土壌を堆肥化して有効活用することができた。実際には、ウランバートルの終末処理場のスラッジ(約35~50ppmの臭気を発生させる)100容量部に対し、50容量部の本発明の土壌改良材を混合することにより、人が不快に感じない10ppm以下の臭気に下げることができた(図7参照)。こうした微生物が効果的に作用するには、その土地に元々存在する微生物との相性が重要であったが、ウランバートル終末処理場では特に問題は生じず好結果をもたらした。なお、図7は、モンゴル政府関係者、終末処理場の関係者の前で終末処理場の汚泥臭気の抑制テストの風景である。



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8