(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】急発進防止装置
(51)【国際特許分類】
B60K 26/02 20060101AFI20230228BHJP
G05G 5/04 20060101ALI20230228BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20230228BHJP
【FI】
B60K26/02
G05G5/04 B
G05G1/30 E
(21)【出願番号】P 2020132739
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】520294239
【氏名又は名称】永里 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100101269
【氏名又は名称】飯塚 道夫
(72)【発明者】
【氏名】永里 正美
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3210698(JP,U)
【文献】実公昭51-003549(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
G05G 5/04
G05G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に取り付け可能な支持部材と、
支持部材に対して回動可能に支持され且つアクセルペダルの動きに連動して回動し得る第1ブロックと、
第1ブロックと離反する方向に付勢されつつ第1ブロックに対して回動可能に支持され、一端側を構成する端面が第1ブロックと当接可能に形成されると共に、他端部が凹状の係止部とされた第2ブロックと、
支持部材に固定され、第1ブロックと第2ブロックの端面とが当接した状態において第2ブロックの係止部が係り合って第1ブロック及び第2ブロックの動きを停止するストッパと、
を含む急発進防止装置
であって、
アクセルペダルが急に踏み込まれる急発進状態では、回動される第1ブロックに対して、回動可能な第2ブロックが重心廻りに回動し、第2ブロックの端面が第1ブロックに当接する急発進防止装置。
【請求項2】
第1ブロックと第2ブロックを相互に離反する方向に付勢するように、第1ブロックをアクセルペダル側に常時付勢する第1スプリングおよび、これと逆側に第2ブロックを常時付勢する第2スプリングを有し、第1ブロックに2つのボルトがそれぞれねじ込み可能に取り付けられ、
一方のボルトの先端に第1スプリングの一端が係止され、他方のボルトの先端に第2スプリングの一端が係止されて、ボルトのねじ込み量でそれぞれのスプリングの取り付け状態を調整可能とした請求項1に記載の急発進防止装置。
【請求項3】
支持部材が、
細長く形成された長穴を有しつつ車室内の床面に対して固定されるブラケットと、
第1ブロック及び第2ブロックを挟む一対の支持板と、
で構成され、
一対の支持板の内の一方が、長穴を介してブラケットにねじ止められて固定され、
ブラケットの長穴内におけるねじ止め位置の変更で、一対の支持板、第1ブロック及び第2ブロックの床面に対する高さ位置を変更可能とした請求項1
又は請求項2に記載の急発進防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートマチック車のブレーキペダルとアクセルペダルの踏違えによる急発進事故を防止する急発進防止装置に関し、特に車両に後付けで装着するのに好適な装置である。
【背景技術】
【0002】
オートマチック車等の自動車は、クラッチ操作が不要で操作が簡易であるだけでなく、一般にアクセルペダルとブレーキペダルとが隣り合って設けられていることから、誤操作による急発進を生じるがおそれがあった。
例えば高齢運転者は、急制動時には気が動転してアクセルペダルをブレーキペダルと間違えることがあり、アクセルペダルを急激に踏み込んで急加速状態になることで、事故を引き起こす原因ともなっていた。例えば、駐車場、交差点、横断歩道等において停止状態から発進する際に、アクセルペダルをブレーキペダルと踏み違え、急発進して暴走したりすることがあった。
【0003】
自動車を製造している自動車会社も近年、車両に搭載したレーダー等の運転情報検知装置からの情報を人工知能等により解析して運転者に警告し、また自動的にブレーキを作動させて衝突の回避等を図るだけでなく、急発進を防止する機構も検討されている。
【0004】
この一方、急発進防止装置に関する先行技術文献として、下記特許文献1~6が知られている。この特許文献1には、2つのスプリング25、28を用いてアクセルペダルの踏力を2段階に設定し、2段目でエンジンの回転数を最小にするか停止させる技術が開示されている。特許文献2には、ブレーキペダルにスリット7を形成し、棒2をこのスリットに入れることで、加速と制動の選択時間を減少させる技術が開示されている。特許文献3には、帯状又は紐状のリード14を巻き取る巻取り部12を備え、リードが所定以上の圧力又は所定以上の速度で送り出された場合に、リードの送り出し量を抑制してアクセルペダルのさらなる踏み込みを抑制する技術が開示されている。
【0005】
他方、特許文献4には、ブレーキペダル部2に沿って配置される伸縮機構11と、この伸縮機構11の伸縮に伴ってブレーキペダル部2を押圧するリンク機構18とを備える技術が開示されている。特許文献5には、既設のアクセルペダルを取り外し、アクセルペダル本体10とブレーキコネクトアーム20をブレーキペダルに装着することで、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み違いを防ぐ技術が開示されている。特許文献6には、油圧シリンダーとされる急発進防止装置3を装着し、アクセル・ペタルを間違えて急激に踏込んでも、容易には踏込むことが出来ない技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-8462公報
【文献】特開2008-165670公報
【文献】特開2012-183990公報
【文献】特開2019-51848公報
【文献】特許第6618160号公報
【文献】実用新案登録第3115511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、自動車を製造している自動車会社による運転情報検知装置からの情報を人工知能等により解析して運転者に警告したり、自動的にブレーキを作動させて急発進を防止したりするようなことが可能であるが、製造コストが増大して高価なものとなっている。
他方、特許文献1~6に開示された技術であっても、低コスト且つ簡易に車両内に後付けで設置できるだけでなく、通常のアクセルペダルの機能を守りつつ、アクセルペダルをブレーキペダルと踏み違えて強く踏んだ場合に、確実に急発進を防止できるような装置は存在していなかった。
【0008】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、アクセルペダルをブレーキペダルと踏み違えることによる急発進を防止できるだけでなく、低コストで製造でき且つ簡易に車室内に取り付け可能な急発進防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、車室内に取り付け可能な支持部材と、
支持部材に対して回動可能に支持され且つアクセルペダルの動きに連動して回動し得る第1ブロックと、
第1ブロックと離反する方向に付勢されつつ第1ブロックに対して回動可能に支持され、一端側を構成する端面が第1ブロックと当接可能に形成されると共に、他端部が凹状の係止部とされた第2ブロックと、
支持部材に固定され、第1ブロックと第2ブロックの端面とが当接した状態において第2ブロックの係止部が係り合って第1ブロック及び第2ブロックの動きを停止するストッパと、
を含む急発進防止装置であって、
アクセルペダルが急に踏み込まれる急発進状態では、回動される第1ブロックに対して、回動可能な第2ブロックが重心廻りに回動し、第2ブロックの端面が第1ブロックに当接する急発進防止装置である。
【0010】
請求項1のような急発進防止装置によれば、車体に取り付け可能な支持部材に対して、アクセルペダルの動きに連動し得る第1ブロックが回動可能に支持され、この第1ブロックと離反する方向に付勢されつつ第1ブロックに対して回動可能に第2ブロックが支持されている。この第2ブロックの一端側を構成する端面が第1ブロックと当接可能に形成されると共に、他端部が凹状の係止部とされている。さらに、第2ブロックの係止部が係り合い可能なストッパが支持部材に固定されている。
【0011】
以上より、いわゆる急発進状態であるアクセルペダルを急に踏み込むような操作をした場合には、アクセルペダルの急激な動きに連動して第1ブロックが回動を始める。この際に第2ブロックの第1ブロックとの接続部分は、第1ブロックの回動に合わせて移動しようとするが、第2ブロック全体は付勢力に抗してその重心廻りに回動して、第2ブロックの端面が第1ブロックに当接する。
【0012】
これに伴い、第1ブロックに対する第2ブロックの相対的な傾き角が変更されて係止部の位置も変化する。これに合わせて第2ブロックの端面が第1ブロックの当接面に当接した状態で、更に第1ブロックが第2ブロックと一体的に回動しようとする。この結果として、ストッパに第2ブロックの係止部が係り合って第1ブロック及び第2ブロックの動きが停止されて、アクセルペダルのさらなる踏み込みができないようになる。
【0013】
但し、本請求項の急発進防止装置が設置されていても、アクセルペダルをゆっくり操作した場合には、相互に離反方向に付勢された第1ブロックと第2ブロックとが相互の位置関係を維持しつつ、これら第1ブロック及び第2ブロックがアクセルペダルの動きに連動して回動することで、第2ブロックの係止部にストッパが係り合わずに、アクセルペダルの操作が可能となる。
【0014】
以上の結果として、本請求項の急発進防止装置によれば、アクセルペダルをブレーキペダルと踏み違えることによる車両の急発進が防止されることになる。他方、車室内に取り付け可能な支持部材に対して第1ブロック、第2ブロック及びストッパが設けられているだけの簡易な構造であることから、低コストに製造可能であり、さらに支持部材を取り付けるだけで良いので、この急発進防止装置を車室内に簡易に取り付けることも可能となる。
【0015】
請求項2の発明は、第1ブロックと第2ブロックを相互に離反する方向に付勢するように、第1ブロックをアクセルペダル側に常時付勢する第1スプリングおよび、これと逆側に第2ブロックを常時付勢する第2スプリングを有し、第1ブロックに2つのボルトがそれぞれねじ込み可能に取り付けられ、
一方のボルトの先端に第1スプリングの一端が係止され、他方のボルトの先端に第2スプリングの一端が係止されて、ボルトのねじ込み量でそれぞれのスプリングの取り付け状態を調整可能とした請求項1に記載の急発進防止装置である。
【0016】
このように各ブロックを付勢するスプリングを有するだけでなく、それぞれねじ込み可能なボルトにスプリングの一端が係止されて、それぞれのスプリングの取り付け状態を調整可能とした。このことで、車両や運転者に合わせた状態の弾性力に急発進防止装置のスプリングを容易に設定可能となる。
【0018】
請求項3の発明は、支持部材が、
細長く形成された長穴を有しつつ車室内の床面に対して固定されるブラケットと、
第1ブロック及び第2ブロックを挟む一対の支持板と、
で構成され、
一対の支持板の内の一方が、長穴を介してブラケットにねじ止められて固定され、
ブラケットの長穴内におけるねじ止め位置の変更で、一対の支持板、第1ブロック及び第2ブロックの床面に対する高さ位置を変更可能とした請求項1又は請求項2に記載の急発進防止装置である。
【0019】
このように支持部材が、一対の支持板とブラケットで構成されるだけでなく、ブラケットに形成された長穴内におけるねじ止め位置の変更により各ブロックの車体に対する高さ位置を調整可能とした。このことで車両や運転者に合わせた状態に急発進防止装置の高さ位置を容易に設定可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る急発進防止装置によれば、アクセルペダルをブレーキペダルと踏み違えることによる急発進を防止できるだけでなく、低コストで製造でき且つ簡易に車室内に取り付け可能とし得る優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る急発進防止装置の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る急発進防止装置に適用されるブラケットを表す図であって、(A)は正面図であり、(B)は側面図であり、(C)は底面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る急発進防止装置の一部破断した断面概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る急発進防止装置の急発進状態を表す断面概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る急発進防止装置のさらなるアクセルペダルの踏み込みができない状態を表す断面概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る急発進防止装置に適用される第1ブロック及び第2ブロックの分解図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る急発進防止装置に適用される一方のボルトへのスプリングの取り付けを示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る急発進防止装置の一実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1から
図3に示すように本実施形態の急発進防止装置10は、エンジンの回転数をコントロールするアクセルペダル42に隣り合った車両の室内部分に設置することができる。具体的には、アクセルペダル42に隣り合った床面Uに、L字形に断面が形成されたブラケット12の底面12Aが一対の穴部12Cを貫通したネジ11によりねじ止められて固定されている。
【0023】
このブラケット12の直立部12Bには、細長くそれぞれ形成された一対の長穴13が並んで設けられている。さらに、一対の支持板14、15が相互に平行に並んで配置されており、これら一対の支持板14、15の内の一方の支持板14に、長穴13を貫通した小ネジ20がねじ止められてブラケット12が固定されている。これに伴い、長穴13内でのねじ止め位置の変更により一対の支持板14、15の床面Uに対する高さ位置を変更可能となっている。以上よりこれら一対の支持板14、15及びブラケット12等が支持部材を構成している。
【0024】
他方、上下一対の挟持板43、44がアクセルペダル42を挟む構造とされていて、ポ-ル状であって端部がフランジ状に突出した変位伝達棒46がこれら挟持板43、44に溶接等されて、固定されている。また、これら一対の挟持板43、44間をネジ45でねじ止めすることで、変位伝達棒46をアクセルペダル42に固定している。この急発進防止装置10の支持板14、15等で構成される装置本体側に、この変位伝達棒46が伸びている。このため、アクセルペダル42を踏み込んだ場合、この変位伝達棒46も踏み込み方向に沿って変位することになる。
【0025】
また、
図3に示すように一対の支持板14、15間の上部寄り部分には、ブロック状に形成された第1ブロック21がオイルシールメタルでその支持部分が構成された支持軸16を介して、回動可能に支持されている。この第1ブロック21の外周面の変位伝達棒46と対向する外周部分は円弧状に形成されているだけでなく、この第1ブロック21の端部は支持軸16側に向かって伸びる平面状の当接面21Aとされている。従って、アクセルペダル42の動きに連動して第1ブロック21が支持軸16廻りに回動するのに伴い、当接面21Aが矢印A方向に移動し得ることになる。
【0026】
さらに、第1ブロック21の下部寄り部分には、円弧状に形成された第2ブロック22が、円弧の中心部分に有るオイルシールメタルでその支持部分が構成された回動軸18廻りで、第1ブロック21に対して回動可能に支持されている。この第2ブロック22の一端側には、第1ブロック21の当接面21Aと対向して端面22Aが平面状に形成されると共に、第2ブロック22の他端部が凹状に形成されて係り合い可能な係止部22Bとされている。
【0027】
ただし、
図6に示すように、支持軸16は第1ブロック21に形成された貫通穴21Dに挿入される。他方、第1ブロック21の下端部中程を細く形成した凸部27に貫通穴21Cが形成されている。これに対応して、第2ブロック22の上端部中程を削除して凹部28が設けられ、この凹部28を形成する壁面に貫通穴22Cが形成されていて、この凹部28に凸部27を嵌め合わせた状態で、貫通穴21C、22Cに回動軸18は挿入される。
【0028】
一方の支持板14の下部に、先端部分が鋭角とされたストッパ24が溶接等されて固定されることで、
図1及び
図3に示すように一対の支持板14、15間に配置されている。従って、このストッパ24に第2ブロック22の係止部22Bが係り合った場合には、第2ブロック22の動きが停止されることになる。
【0029】
他方、第1ブロック21の支持軸16を挟んだ
図3の左側部分には、アーム部21Bが伸びていて、このアーム部21Bに2つのボルト33、34がそれぞれねじ込み可能に取り付けられている。そして、
図7に示すように一方のボルト33の先端に係合リング38がボルト33の軸廻りに回転自在に取り付けられ、この係合リング38に対して、他端側をストッパ24に連結した第1スプリング31の一端が係止されている。また、他方のボルト34の先端に係合リング38が同じく回転自在に取り付けられ、この係合リング38に対して、他端側を第2ブロック22に連結した第2スプリング32の一端が係止されている。
【0030】
この結果、第1ブロック21は
図3において支持軸16を中心として常時左廻りに第1スプリング31により力が加えられて付勢されることで、第1ブロック21は第1スプリング31によりアクセルペダル42側に常時当接されている。他方、第2ブロック22は
図3において回動軸18を中心として常時右廻りに第2スプリング32により力が加えられて付勢されることで、第2ブロック22は第2スプリング32により第1ブロック21のアーム部21B側に常時引っ張られている。したがって、第1ブロック21の当接面21Aと第2ブロック22の端面22Aとは相互に離反する方向に付勢されることになる。
【0031】
また、これらボルト33、34は第1ブロック21のアーム部21Bにねじ込み可能とされていて、ボルト33、34のねじ込み量を変更することで、それぞれのスプリング31、32の初期設定等の取り付け状態を調整可能としている。そして、ボルト33、34の上部に位置するナット36をアーム部21B側にねじ込むことで、スプリング31、32の取り付け状態を維持することができる。なお、これらボルト33、34、ナット36に対応する
図3に示す支持板14、15の部分は、スプリング31、32の調整を容易とするように一段低く形成されている。
【0032】
さらに、本実施形態において、一対の挟持板43、44、変位伝達棒46、ブラケット12、一対の支持板14、15、第1ブロック21及び第2ブロック22等の各部材が鋼材により形成されている。他方、
図1に示すように、第1ブロック21及び第2ブロック22の厚み寸法Dは10mm程度あり、単に必要な剛性を有するだけでなく大きな質量を有している。また、
図1及び
図3に示すように一対の支持板14、15の寸法としては、高さ寸法Hが80mm程度で、長さ寸法Lが60mm程度とされている。
【0033】
次に、本実施形態の急発進防止装置10の作用を説明する。
本実施形態によれば、
図1に示すように、変位伝達棒46が突出した上下一対の挟持板43、44を車室内のアクセルペダル42を挟む形で取り付けて、この変位伝達棒46の先端側を第1ブロック21の外周面に当接させている。そして、車室内の床面Uに対して固定されるブラケット12及び一対の支持板14、15で支持部材が構成されているが、この際、このブラケット12に形成された長穴13を介して支持板14がブラケット12にねじ止められて相互に固定されている。
【0034】
また、本実施形態によれば、
図3に示すように、変位伝達棒46の動きでアクセルペダル42に連動して回動し得る第1ブロック21が、支持軸16を介して一対の支持板14、15に対して回動可能に支持され、この第1ブロック21に対して第2ブロック22が、回動軸18廻りに回動可能に支持されている。そして、この第1ブロック21の端部は当接面21Aとされていて、第2ブロック22の一端側を構成する端面22Aが第1ブロック21の当接面21Aと当接可能に形成されると共に、第2ブロック22の他端部が凹状の係止部22Bとされている。
【0035】
さらに、本実施形態では、
図3に示すように、第1ブロック21をアクセルペダル42側に常時付勢する第1スプリング31および、第2ブロック22をストッパ24側に常時付勢する第2スプリング32を有していることで、第1ブロック21と第2ブロック22とが相互に離反する方向に付勢されている。
【0036】
以上より、いわゆる急発進状態であるアクセルペダル42を急に踏み込むような操作した場合には、アクセルペダル42の急激な動きに連動して第1ブロック21が支持軸16廻りに回動を始める。この際に第2ブロック22の上部は第1ブロック21の回動に合わせて移動しようとするが、第2ブロック22全体は付勢力に抗して、
図4に示すようにその重心G廻りで矢印R方向に回動して、端面22Aが第1ブロック21の当接面21Aに当接する。
【0037】
これに伴い、第1ブロック21に対する第2ブロック22の相対的な傾き角が変更されて係止部22Bの位置が変化する。これに合わせて第2ブロック22の端面22Aが第1ブロック21の当接面21Aに当接した状態で、更に第1ブロック21が第2ブロック22と一体的に矢印A方向に回動しようとする。この結果として、
図5に示すようにストッパ24に第2ブロック22の係止部22Bが係り合って第1ブロック21及び第2ブロック22の動きが停止され、アクセルペダル42のさらなる踏み込みができないようになる。
【0038】
但し、本実施形態の急発進防止装置10が設置されていても、アクセルペダル42をゆっくり操作した場合には、相互に離反方向に付勢された第1ブロック21と第2ブロック22とが
図3に示す相互の位置関係を維持しつつ回動することで、第2ブロック22の係止部22Bがストッパ24に係り合わずに、アクセルペダル42の操作が可能となる。
【0039】
以上の結果として、本実施形態の急発進防止装置10によれば、アクセルペダル42をブレーキペダルと踏み違えることによる車両の急発進が防止されることになる。この一方、本実施形態の急発進防止装置10は、ブロック21、22及びストッパ24等を有した一対の支持板14、15がねじ止められたブラケット12を有すると共に、アクセルペダル42に挟持板43、44を取り付けるだけの簡易な構造であるのに伴い、低コストに製造可能であり、さらにブラケット12を床面Uにねじ止めるだけで良いので、この急発進防止装置10を車室内に簡易に取り付けることも可能となる。
【0040】
この際、第1ブロック21の支持部分である支持軸16及び第2ブロック22の支持部分である回動軸18の周りをオイルシールメタルが形成しているので、この急発進防止装置10を長期間使用しても確実な動作状態の維持が可能となる。
【0041】
他方、本実施形態では、上記のようにブロック21、22を挟む一対の支持板14、15の内の一方がブラケット12にねじ止められて固定されるが、ブラケット12に
図2に示す細長く形成された長穴13が設けられている。このことで、この長穴13内における小ネジ20のねじ止め位置の変更により、一対の支持板14、15だけでなく、ブロック21、22の床面Uに対する高さ位置を調整可能ともした。これに伴い、車両や運転者に合わせた状態に急発進防止装置10の高さを容易に設定可能となる。
【0042】
さらに、第1ブロック21に2つのボルト33、34がそれぞれねじ込み可能に取り付けられ、一方のボルト33の先端に上記の第1スプリング31の一端が係止され、他方のボルト34の先端に上記の第2スプリング32の一端が係止されて、それぞれのスプリング31、32の取り付け状態を調整可能とした。このことで、車両や運転者に合わせた状態の弾性力に急発進防止装置10のスプリング31、32を容易に設定可能となる。
【0043】
なお、上記実施形態では、変位伝達棒46が突出した一対の挟持板43、44がアクセルペダル42を挟む構造としたが、変位伝達棒46を第1ブロック21側に取り付けることでて挟持板43、44は不要となり、さらに、第1ブロック21をアクセルペダル42の背面側に配置すれば、挟持板43、44だけでなく変位伝達棒46も不要ともなり、更なる低コスト化や簡易な取り付けが可能となる。
【0044】
他方、上記実施形態では、挟持板43、44、変位伝達棒46、ブラケット12、支持板14、15、ブロック21、22等の各部材を鋼材により形成したが、剛性を満たすアルミニウム合金や黄銅等の他の金属であっても良い。但しブロック21、22は剛性を有するだけでなく大きな質量を有する必要もある。
【0045】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車両の安全運行を目的として適用できるだけでなく、非常時に運転を緊急停止しなければならないような一般的なストッパ装置にも適用可能となる他、各種システム類や各種産業分野に適用可能となる。
【符号の説明】
【0047】
10 急発進防止装置
12 ブラケット
14 支持板
15 支持板
16 支持軸
18 回動軸
21 第1ブロック
21A 当接面
21B アーム部
22 第2ブロック
22A 端面
22B 係止部
24 ストッパ
31 第1スプリング
32 第2スプリング
33 ボルト
34 ボルト
42 アクセルペダル
46 変位伝達棒