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特許7233772建物解体時の養生システム及び建物解体時の養生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】建物解体時の養生システム及び建物解体時の養生方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20230228BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20230228BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
E04G5/00 301E
E04G21/32 B
E04G23/08 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021201329
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2022-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレス:https://www.youtube.com/watch?v=D9ZNq0ZFzjo ウェブサイトの掲載日:令和 3年11月30日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://www.youtube.com/watch?v=kiI61ayXqHs ウェブサイトの掲載日:令和 3年12月01日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://www.nihonsafety.com/catalogs/cage-system/ ウェブサイトの掲載日:令和 3年12月01日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://www.nihonsafety.com/uploads/2021-12-cagesystem-ns-catalog.pdf ウェブサイトの掲載日:令和 3年12月01日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://www.youtube.com/watch?v=ipV9bRzghys ウェブサイトの掲載日:令和 3年12月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレス:https://www.youtube.com/watch?v=6qeepqUo0HE&t=331s ウェブサイトの掲載日:令和 3年 2月16日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://www.youtube.com/watch?v=ycyfyxi9cso&t=93s ウェブサイトの掲載日:令和 3年 3月26日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://sketchfab.com/3d-models/cage-system-c32f3c73ea924e3c985bd2422f6f2c6b ウェブサイトの掲載日:令和 3年 4月24日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://sketchfab.com/3d-models/cage-system-57642fa8c2914da88f76c37efeba8013 ウェブサイトの掲載日:令和 3年 5月29日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://sketchfab.com/3d-models/cage-system-beb84454c8134d3ca81950eecf0100f9 ウェブサイトの掲載日:令和 3年 6月11日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:https://sketchfab.com/3d-models/4dadd443bc4c4e9b9a26b6e7c4fa446a ウェブサイトの掲載日:令和 3年 9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520512052
【氏名又は名称】株式会社鳶浩工業
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩二
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特許第6879613(JP,B1)
【文献】特開2019-127809(JP,A)
【文献】特開平09-250244(JP,A)
【文献】実開昭61-107835(JP,U)
【文献】特開2011-017230(JP,A)
【文献】特開2019-167813(JP,A)
【文献】特開平04-146369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
E04G 21/32
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、
前記解体すべき建物の水平方向に沿って延び、前記垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、
前記水平トラス部材に支持され、前記解体すべき建物を上方から覆う養生部材と
を備え、
前記垂直支持部材は、前記水平トラス部材に直交する柱状部材を含み、
前記柱状部材の少なくとも1個は、前記水平トラス部材よりも上方に突出している突出部を有し、
前記突出部に設けられた第1ワイヤロープ巻上装置と、前記水平トラス部材に設けられた第2ワイヤロープ巻上装置と、
前記第1ワイヤロープ巻上装置と前記第2ワイヤロープ巻上装置との間に、前記解体すべき建物の垂直方向に対して斜方向に弛張自在に設けられたワイヤロープとを更に備え、
前記ワイヤロープにより前記水平トラス部材が支持される建物解体時の養生システム。
【請求項2】
解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、
前記解体すべき建物の水平方向に沿って延び、前記垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、
前記水平トラス部材に支持され、前記解体すべき建物を上方から覆う養生部材と、
前記水平トラス部材の端部が下方に向けて湾曲するように前記水平トラス部材に応力を付加するワイヤロープ
を備え、
前記垂直支持部材は、前記解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含み、
前記水平トラス部材は、一端部と他端部との間に下方に突出する立方体状の偏向部材を有し、
前記ワイヤロープは、前記水平トラス部材の前記一端部の上方と、前記水平トラス部材の前記他端部の上方とに接続され、前記一端部と前記他端部との間で前記偏向部材の下方を経由する建物解体時の養生システム。
【請求項3】
前記柱状部材は、前記解体すべき建物の第1の床部を貫通し、下端部が前記第1の床部の下方に設けられた第2の床部に設けられている請求項1に記載の建物解体時の養生システム。
【請求項4】
前記柱状部材は、四角柱状支柱であって、
前記四角柱状支柱の角部にそれぞれ配設され鉛直方向に延びる4本の鉛直パイプと、
隣り合う前記鉛直パイプ同士を接続して水平方向に延びる接続部材と、
鉛直方向下部に設けられたジャッキ部と
を有する請求項1又はに記載の建物解体時の養生システム。
【請求項5】
解体すべき建物の垂直方向に沿って形成された垂直支持部材と、前記解体すべき建物の水平方向に沿って延び、前記垂直支持部材に支持される水平トラス部材とを設ける工程と、
前記水平トラス部材に支持され、前記解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程と
を有し、
前記垂直支持部材は、前記水平トラス部材に直交する柱状部材を含み、
前記柱状部材の少なくとも1個は、前記水平トラス部材よりも上方に突出している突出部を有し、
前記突出部に第1ワイヤロープ巻上装置を設け、前記水平トラス部材に第2ワイヤロープ巻上装置を設ける工程と、
前記第1ワイヤロープ巻上装置と前記第2ワイヤロープ巻上装置との間に、前記解体すべき建物の垂直方向に対して斜方向に弛張自在にワイヤロープを設け、前記ワイヤロープにより前記水平トラス部材を支持する工程と
を有する建物解体時の養生方法。
【請求項6】
解体すべき建物の垂直方向に沿って形成された垂直支持部材であって、前記解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含む垂直支持部材と、前記解体すべき建物の水平方向に沿って延び、前記垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、前記水平トラス部材の一端部と他端部との間に、下方に突出する立方体状の偏向部材とを設ける工程と、
ワイヤロープを、前記水平トラス部材の前記一端部の上方と、前記水平トラス部材の前記他端部の上方とに接続し、且つ前記ワイヤロープを、前記一端部と前記他端部との間で前記偏向部材の下方を経由させて、前記水平トラス部材の端部が下方に向けて湾曲するように前記水平トラス部材に応力を付加する工程と、
前記水平トラス部材に支持され、前記解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程と
を有する建物解体時の養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物解体時の養生システム及び建物解体時の養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物解体時に発生する粉塵や建築材料の破片の飛散を防止する目的で、解体すべき建物を覆う養生ネットを張るための建物解体時の養生システムが知られている。従来の建物解体時の養生システムとして、例えば特許文献1記載されている建物解体時の養生システムが知られている。この特許文献1に記載の建物解体時の養生システムには、解体すべき建物の上部に略水平な梁状の水平トラス構造が設けられている。そして、この水平トラス構造に養生ネットが取り付けられ、養生ネットにより解体すべき建物を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-167813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す建物解体時の養生システムにおいて、水平トラス構造の水平方向長さが長大となる場合には、水平トラス構造自体の重量と養生ネットの重量により水平トラス構造が鉛直方向下方にたわむ場合がある。これにより、解体すべき建物の最上部に対する養生ネットの高さが低くなり、重機の自由な移動を阻害して建物解体工事の作業効率が低下する可能性があるという問題点があった。
【0005】
この発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、建物解体時の養生システム及び建物解体時の養生方法において水平トラス構造の下方へのたわみを抑制し、建物解体工事の作業効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明に係る建物解体時の養生システムは、解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材とを備え、垂直支持部材は、水平トラス部材に直交する柱状部材を含み、柱状部材の少なくとも1個は、水平トラス部材よりも上方に突出している突出部を有し、突出部に設けられた第1ワイヤロープ巻上装置と、水平トラス部材に設けられた第2ワイヤロープ巻上装置と、第1ワイヤロープ巻上装置と第2ワイヤロープ巻上装置との間に、解体すべき建物の垂直方向に対して斜方向に弛張自在に設けられたワイヤロープとを更に備え、ワイヤロープにより水平トラス部材が支持される。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係る建物解体時の養生システムは、解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材と、水平トラス部材の端部が下方に向けて湾曲するように水平トラス部材に応力を付加するワイヤロープとを備え、垂直支持部材は、解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含み、水平トラス部材は、一端部と他端部との間に下方に突出する立方体状の偏向部材を有し、ワイヤロープは、水平トラス部材の一端部の上方と、水平トラス部材の他端部の上方とに接続され、一端部と他端部との間で偏向部材の下方を経由する
【0008】
また、水平トラス部材は、一端部と他端部との間に下方に突出する偏向部材を有し、応力付加部材は、水平トラス部材の一端部の上方と、水平トラス部材の他端部の上方とに接続され、一端部と他端部との間で偏向部材の下方を経由してもよい。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係る建物解体時の養生システムは、解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材とを備え、垂直支持部材は、水平トラス部材に直交する柱状部材を含み、水平トラス部材は、柱状部材を挟んで直線状に設けられた第2水平トラス部材と第3水平トラス部材とを含み、第3水平トラス部材は、第2水平トラス部材よりも長手方向長さが大きく構成される。
【0010】
また、柱状部材は、解体すべき建物の第1の床部を貫通し、下端部が第1の床部の下方に設けられた第2の床部に設けられていてもよい。
また、柱状部材は、四角柱状支柱であって、四角柱状支柱の角部にそれぞれ配設され鉛直方向に延びる4本の鉛直パイプと、隣り合う鉛直パイプ同士を接続して水平方向に延びる接続部材と、鉛直方向下部に設けられたジャッキ部とを有する四角柱状支柱であってもよい。
【0011】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係る建物解体時の養生方法は、解体すべき建物の垂直方向に沿って形成された垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス部材とを設ける工程と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程とを有し、垂直支持部材は、水平トラス部材に直交する柱状部材を含み、柱状部材の少なくとも1個は、水平トラス部材よりも上方に突出している突出部を有し、突出部に第1ワイヤロープ巻上装置を設け、水平トラス部材に第2ワイヤロープ巻上装置を設ける工程と、第1ワイヤロープ巻上装置と第2ワイヤロープ巻上装置との間に、解体すべき建物の垂直方向に対して斜方向に弛張自在にワイヤロープを設け、ワイヤロープにより水平トラス部材を支持する工程とを有する。
【0012】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係る建物解体時の養生方法は、解体すべき建物の垂直方向に沿って形成された垂直支持部材であって、解体すべき建物の側面部に沿って設けられた作業用足場を含む垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、水平トラス部材の一端部と他端部との間に、下方に突出する立方体状の偏向部材とを設ける工程と、ワイヤロープを、水平トラス部材の一端部の上方と、水平トラス部材の他端部の上方とに接続し、且つワイヤロープを、一端部と他端部との間で偏向部材の下方を経由させて、水平トラス部材の端部が下方に向けて湾曲するように水平トラス部材に応力を付加する工程と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程とを有する。
【0013】
また、上記の課題を解決するために、この発明に係る建物解体時の養生方法は、解体すべき建物の垂直方向に沿って形成された柱状部材を、解体すべき建物の第1の床部を貫通し更に下端部が第1の床部の下方に設けられた第2の床部に配置されるように設ける工程と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、柱状部材に支持される水平トラス部材であって、柱状部材を挟んで直線状に設けられた第2水平トラス部材と第3水平トラス部材とを含み、第3水平トラス部材が、第2水平トラス部材よりも長手方向長さが大きい水平トラス部材を設ける工程と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材を設ける工程とを有する。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る建物解体時の養生システム及び建物解体時の養生方法は、柱状部材と直交する水平トラス部材によって養生ネットが支持され、柱状部材の少なくとも1個は、水平トラス部材よりも上方に突出している突出部を有し、突出部に吊下部材が設けられ、吊下部材により水平トラス部材が支持されているため、建物解体時の養生システムにおいて水平トラス構造の下方へのたわみを抑制し、建物解体工事の作業効率を向上させることが可能である。
【0015】
また、この発明に係る建物解体時の養生システム及び建物解体時の養生方法は、垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材とを備え、水平トラス部材の端部が上方に向けて湾曲するように水平トラス部材に応力を付加するため、建物解体時の養生システムにおいて水平トラス構造の下方へのたわみを抑制し、建物解体工事の作業効率を向上させることが可能である。
【0016】
また、この発明に係る建物解体時の養生システム及び建物解体時の養生方法は、解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス部材と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う養生部材とを備え、垂直支持部材は、水平トラス部材に直交する柱状部材を含み、水平トラス部材は、柱状部材を挟んで直線状に設けられた第2水平トラス部材と第3水平トラス部材とを含み、第3水平トラス部材は、第2水平トラス部材よりも長手方向長さが大きく構成されるため、床開口部の形成位置が解体すべき建物10の第1階床部の建物梁部に重ならず、床開口部の形成が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係る建物解体時の養生システムの正面概略図である。
図2図1に示す建物解体時の養生システムの平面図である。
図3図1に示す建物解体時の養生システムの上部の正面断面図である。
図4図3に示す外周足場を上方から見た斜視図である。
図5図4に示す外周足場を下方から見た斜視図である。
図6図2に示す垂直トラスの垂直トラス上端部を示す斜視図である。
図7図2に示す接手部材の上部を示す斜視図である。
図8図3に示す第1階床部及び第2階床部の床開口部を示す斜視図である。
図9図3に示す第3階床部に立てられた垂直トラスを示す斜視図である。
図10】本発明の実施の形態1に係る建物解体時の養生システムの変形例を示す平面図である。
図11】本発明の実施の形態2に係る建物解体時の養生システムの平面図である。
図12図11に示す建物解体時の養生システムの上部の正面断面図である。
図13図11に示す接手部材の上部を示す斜視図である。
図14】本発明の実施の形態3に係る建物解体時の養生システムの平面図である。
図15図14に示す建物解体時の養生システムの上部の正面断面図である。
図16図15に示す第3階床部に立てられた垂直トラスを示す斜視図である。
図17】本発明の実施の形態4に係る四角柱状支柱の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
以下、本発明の建物解体時の養生システム及び建物の解体方法の実施の形態1について添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る養生システムの正面概略図である。養生システム1は、水平な地盤13に建設されている、解体すべき建物10の解体工事において発生する粉塵の飛散、建物の構成部材の破片及び廃棄物等の飛散や落下を防止するために設けられている。養生システム1は、建物10の側面部に沿って外周部に構築された枠足場の作業用足場である外周足場22と、外周足場22の外周部に構築された防音パネル21と、建物10の上方に構築され、水平方向に延びる梁状部材である水平トラス30と、水平トラス30に直交して垂直方向に延びる柱状部材である垂直トラス40と、水平トラス30に支持されている水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bとを有している。水平トラス30及び垂直トラス40とは、一般にボックストラスと呼ばれる、全体として直方体状のトラス構造部材である。
【0019】
水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bは、建物10の上方から建物10の外周部を覆っている。なお、防音パネル21、外周足場22、垂直養生ネット23bについては、説明の便宜のために詳細な形状の記載を省略している。また、外周足場22は作業用足場及び垂直支持部材を構成し、水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bは養生部材を構成し、水平トラス30は水平トラス部材を構成し、垂直トラス40は柱状部材及び垂直支持部材を構成している。
【0020】
図2は、図1に示す養生システム1の平面図である。なお、本実施の形態1では、図2における図面の横方向を矢印X方向とし、図2における図面の縦方向を矢印Y方向とする。矢印X方向は建物10の横方向(水平方向)に対応し、矢印Y方向は建物10の縦方向(垂直方向)に対応する。また、説明の便宜のために図2では防音パネル21の記載を省略している。外周足場22は、建物10の矢印X方向に延びる側面部に沿って設けられた外周足場22と、建物10の矢印Y方向に延びる側面部に沿って設けられた外周足場22とを含んでいる。建物10の屋上部である第1階床部12aの上方には、矢印X方向に沿って延びるように3列に配置された複数の水平トラス30と、矢印Y方向に沿って延びるように5列に配置された複数の水平トラス30とが設けられている。
【0021】
矢印X方向に沿って延びる水平トラス30のうち、外側の2列の水平トラス30は矢印X方向に延びる外周足場22に近接してそれぞれ配置されている。また、矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30のうち、外側の2列の水平トラス30は矢印Y方向に延びる外周足場22に近接してそれぞれ配置されている。
【0022】
矢印X方向に沿って延びる水平トラス30と、矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30とは、立方体の各辺部分に棒状部材を設けることにより形成された、立方体状の枠状の接手部材33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33j,33k,33m,33n,33p,33q,33rによりそれぞれ接続されている。なお、図2の紙面において上側から1番目の列の矢印X方向に沿って延びる水平トラス30に対して図2の紙面の左側から順に接手部材33a,33b,33c,33d,33eが、上側から2番目の列の矢印X方向に沿って延びる水平トラス30に対して図2の紙面の左側から順に接手部材33f,33g,33h,33j,33kが、上側から3番目の列の矢印X方向に沿って延びる水平トラス30に対して図2の紙面の左側から順に接手部材33m,33n,33p,33q,33rがそれぞれ接続されている。すなわち、水平トラス30は接手部材33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33j,33k,33m,33n,33p,33q,33rにより格子状に接続されている。
【0023】
接手部材33c,33h,33pの下側には、垂直トラス40がそれぞれ接続されている。垂直トラス40は、接手部材33c,33h,33pから水平トラス30の上部に突出している垂直トラス上端部41を有する。接手部材33cの上部に設けられた垂直トラス上端部41の最上端には、ワイヤロープ50の一端部が接続されている。このワイヤロープ50の他端部は、接手部材33b,33dに接続されている。また、接手部材33hの上部に設けられた垂直トラス上端部41の最上端には、ワイヤロープ50の一端部が接続されている。このワイヤロープ50の他端部は、接手部材33g,33jに接続されている。接手部材33pの上部に設けられた垂直トラス上端部41の最上端には、ワイヤロープ50の一端部が接続されている。このワイヤロープ50の他端部は、接手部材33n,33qに接続されている。
【0024】
ワイヤロープ50としては例えば、既知のJIS規格品6×24ワイヤ等の任意のワイヤロープを用いることができる。また、ワイヤロープ50は吊下部材を構成している。なお、垂直トラス上端部41は突出部を構成している。
【0025】
水平トラス30、垂直トラス40及び接手部材33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33j,33k,33m,33n,33p,33q,33rは、アルミニウム合金により形成されているが、強度及び重量が適切であれば例えば鋼鉄等の他の種類の金属材料や例えば木材等の金属以外の任意の材料を用いて形成してもよい。
【0026】
図3は、図2に示す養生システム1をA-A’線で切断し、上部を拡大して示す正面断面図である。なお、本実施の形態1では図3における図面の縦方向を矢印Z方向とする。また、説明の便宜のため、図3において垂直養生ネット23bについては具体的な形状の記載を省略しており、さらに解体すべき建物10の縦方向すなわち矢印Y方向(図2参照)の奥側の外周足場22の記載を省略している。また、矢印Z方向は、解体すべき建物10が建てられている地盤13(図1参照)に対する垂直方向に対応する。水平養生ネット23aは、水平トラス30から上方に突出している垂直トラス上端部41に干渉しないように、垂直トラス上端部41を避けながら設けられている。建物10の屋上部の床部、すなわち第1階床部12aの下方には、屋上部のすぐ下階の床部である第2階床部12bと、第2階床部12bの下階の床部である第3階床部12dが存在している。また、建物10の第3階床部12dの下方には、さらに図示しない第4階床部、第5階床部……が順次各階に存在する。さらに、建物10は、各階に建物10の側面部を構成する外壁部12cを有している。
【0027】
接手部材33hの上側に設けられた垂直トラス上端部41に接続されたワイヤロープ50は、接手部材33gの上側と接手部材33jとの上側とに斜方下方向に延びている。これと同様に、接手部材33c(図2参照)の上側に設けられた垂直トラス上端部41に接続されたワイヤロープ50は、接手部材33bの上側と接手部材33dとの上側とに斜方下方向に延びており、接手部材33pの上側に設けられた垂直トラス上端部41に接続されたワイヤロープ50は、接手部材33nの上側と接手部材33qとの上側とに斜方下方向に延びている。
【0028】
外周足場22は、建物10の外壁部12cの外側に構築された、建物10の解体作業に用いられる作業用足場である。また、外周足場22は、複数段の足場が矢印Z方向に沿って積層されて構成されており、その高さが建物10の第1階床部12aの高さよりも高くなるように組み立てられている。外周足場22の第2段目には、建物10の方向に突出するブラケット24が設けられている。最上段の外周足場22には、手動式の足場ホイスト26が設けられている。防音パネル21は、外周足場22の外側に設けられた既知の防音パネルである。
【0029】
建物10の第1階床部12aには、垂直トラス40が立てられている。垂直トラス40は矢印Z方向に沿って延びるように立てられている。なお、足場ホイスト26は手動式ホイストに限定されるものではなく、例えば既知の電動式ホイスト、手動式ウインチ、電動式ウインチ、手動式チェーンブロック及び電動式チェーンブロック等の、任意の手動式又は各種動力を用いた荷役装置を用いることができる。また、足場ホイスト26はオートブレーキ機能を有していてもよい。
【0030】
図4は、図3に示す接手部材33fの近傍の外周足場22を上方から見た斜視図であり、図5は、図4に示す外周足場22を下方から見た斜視図である。外周足場22には所定の間隔で支柱25が設けられている。支柱25には、外周足場22の段の高さ毎に水平方向に延びる踏板支持部28が設けられている。踏板支持部28には、外周足場22の各段の踏板22aが支持されている。外周足場22のブラケット24には、足場ホイストフック26aを有する足場ホイスト26が吊下げられている。また、接手部材33f上部には、例えばステンレス等の金属材料で形成された板状部材42が取り付けられており、板状部材42にはアイボルト46が取り付けられている。
【0031】
足場ホイスト26は、足場ホイストフック26aをアイボルト46に接続して、水平トラス30を吊下げ、昇降させるために設けられている。また、ブラケット24の上側には、水平トラス30が設けられている。さらに、ブラケット24は支柱25に沿って上下に移動させ、また支柱25から取り外すことが可能に構成されている。なお、図3に示す接手部材33k近傍の構成も、図4及び図5に示す接手部材33f近傍の構成と同じである
【0032】
図6は、図2に示す接手部材33hに接続された垂直トラス40の上部を示す斜視図である。なお、図6においては説明の便宜のために水平養生ネット23aの記載を省略している。接手部材33hは、各水平トラス30及び垂直トラス40を接続している。接手部材33hには水平方向から水平トラス30の先端部が接続され、下方から上側に垂直トラス40が貫通している。垂直トラス40は接手部材33hに対して移動可能に接続されている。すなわち、垂直トラス40は水平トラス30に対して矢印Z方向に移動可能に接続されている。これにより、水平トラス30と垂直トラス40とが直交して接続されている。
【0033】
垂直トラス40の垂直トラス上端部41の上面部には、板状部材42が取り付けられている。板状部材42には、手動式ホイスト45が2個取り付けられている。各手動式ホイスト45にはワイヤロープ50の一端が巻上可能に取り付けられている。なお、接手部材33c(図2参照)及び接手部材33pに接続された垂直トラス40の上部にも、図6と同様に板状部材42と手動式ホイスト45とが2個ずつ設けられている。なお、この手動式ホイスト45に代えて、手動式チェーンブロック又は電動式チェーンブロック等の任意のワイヤ巻上装置や荷役装置を用いることができる。また、板状部材42の材料はステンレス鋼に限定されるものではなく、アルミニウム合金又は鉄系合金等の任意の材料を用いてもよい。
【0034】
図7は、図2に示す接手部材33b,33d,33g,33j,33n及び33qの上部を示す斜視図である。接手部材33b,33d,33n及び33qの上部には、板状部材42が取り付けられている。板状部材42には、手動式ホイスト45が1個取り付けられている。手動式ホイスト45にはワイヤロープ50の他端が巻上可能に取り付けられている。これにより、垂直トラス上端部41(図6参照)の板状部材42に設けられた手動式ホイスト45と、接手部材33b,33d,33g,33j,33n及び33qの板状部材42に取り付けられた手動式ホイスト45との間に設けられた各ワイヤロープ50は、それぞれ弛張自在に設けられている。
【0035】
図8は、図3に示す第1階床部12a及び第2階床部12bの床開口部14を示す斜視図である。垂直トラス40は、第1階床部12aの床開口部14に挿入されて第1階床部12aを貫通し、さらに第2階床部12bの床開口部14に挿入されて第2階床部12bを貫通している。なお、第1階床部12aは第1の床部を、第3階床部12dは第2の床部を構成している。
【0036】
図9は、図3に示す第3階床部12dに立てられた垂直トラス40を示す斜視図である。垂直トラス40は、第3階床部12dの床面上に配置された支持部材70に支持されている。支持部材70は、垂直トラス40を支持するために十分な強度を有する、木材又はコンクリート材等の任意の材料を用いて形成されている。
【0037】
第3階床部12dの床開口部14の近傍には、ジャッキベース61によって垂直トラス40と平行に立てられた単管パイプ60が配置されている。単管パイプ60の上端部は、第2階床部12b(図8参照)の下面に図示しないジャッキベースを介して取り付けられている。単管パイプ60には、手動式の垂直トラス昇降ホイスト62が取り付けられている。垂直トラス昇降ホイスト62は、図示しない吊下げフックにより垂直トラス40を昇降させるために設けられている。
【0038】
次に、本実施の形態1の養生システム1を用いた解体すべき建物の解体方法を説明する。本実施の形態1の養生システム1を使用するときには、図3に示すように作業者が解体すべき建物10の外周部に外周足場22を構築し、さらに外周足場22の外側に防音パネル21を構築し、最上段の外周足場22に足場ホイスト26を吊下げる。
【0039】
次に、建物10の第3階床部12d上において、作業者により垂直トラス40が立てられ、図2に示すように接手部材33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33j,33k,33m,33n,33p,33q,33rを用いて水平トラス30が格子状に組み立てられる。次に、図3に示すように格子状に組み立てられた水平トラス30を作業者が足場ホイスト26を用いて持ち上げ、上から第2段目の外周足場22のブラケット24上に外側の水平トラス30を載せて水平トラス30を支持する。
【0040】
次に、作業者が水平トラス30の上側に水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bを展張して、建物10の上部が水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bにより覆われる。なお、このときの垂直養生ネット23bの矢印Z方向の長さは、例えば水平トラス30から防音パネル21の最上部までの長さ等により、適当に調整される。水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bの展張により、以降の建物10の解体作業において、建物10の粉塵や建築材料の破片の飛散及び落下や、解体作業に用いられる工具等の飛散及び落下を防止することができる。
【0041】
このとき、水平トラス30の自重及び水平養生ネット23a並びに垂直養生ネット23bの重量により、外周足場22に支持されていない水平トラス30が下方向にたわむ場合がある。具体的には、養生システム1において水平トラス30がアルミニウム合金により形成されている場合に、矢印X方向に延びる水平トラス30のうち、外周足場22によって支持されていない中央の列の、接手部材33fから接手部材33hまでの水平トラス30の矢印X方向の合計長さ、又は接手部材33hから接手部材33kまでの水平トラス30の矢印X方向の合計長さが20mを超える場合には、水平トラス30が下方向に顕著にたわむ可能性がある。
【0042】
このような場合には、図6に示すように作業者は、各垂直トラス上端部41に板状部材42を取り付け、板状部材42に2個の手動式ホイスト45を取り付ける。次に、図7に示すように作業者は、接手部材33b,33d,33g,33j,33n,33qにそれぞれ手動式ホイスト45を取り付ける。次に、図2に示すように作業者は垂直トラス上端部41の板状部材42に設けられた手動式ホイスト45と、接手部材33b,33d,33g,33j,33n,33qの板状部材42に設けられた手動式ホイスト45との間に、ワイヤロープ50をそれぞれ接続する。
【0043】
次に、作業者は各手動式ホイスト45を操作して、各ワイヤロープ50の張力を適宜調整する。これにより、例えば、水平トラス30がアルミニウム合金により形成されており、矢印X方向に延びる水平トラス30のうち中央の列の水平トラス30の矢印X方向の合計長さが約30mを超えるような比較的長い場合であっても、ワイヤロープ50の張力により各水平トラス30が支持されることにより、中央の列の水平トラス30の下方向へのたわみが抑制される。
【0044】
なお、本実施の形態1の養生システム1の構成では、水平トラス30がアルミニウム合金により形成されている場合に、接手部材33fから接手部材33kまでの長手方向の水平トラス30の矢印X方向の合計長さが30mを超える場合にはワイヤロープ50を設けて水平トラス30が支持されることが好ましい。また、本実施の形態1の養生システム1の構成において、水平トラス30の接手部材33fから接手部材33kまでの各接手部材間のスパンが偶数であり、垂直トラス40に対して水平トラス30が左右対称に形成されることがより好ましい。
【0045】
このように、本実施の形態1に係る建物解体時の養生システム1は、解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物10の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス30と、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bとを備え、垂直支持部材は、水平トラス30に直交する垂直トラス40を含み、垂直トラス40の少なくとも1個は、水平トラス30よりも上側に突出している垂直トラス上端部41を有し、垂直トラス上端部41にワイヤロープ50が設けられ、ワイヤロープ50により水平トラス30が支持されるため、水平トラス30の下方へのたわみを抑制し、建物解体工事の作業効率を向上させることができる。
【0046】
また、垂直トラス40は、解体すべき建物10の第1階床部12aを貫通し、下端部が第1階床部12aの下方に設けられた第3階床部12dに設けられているため、建物10の解体作業の進捗に伴い垂直トラス40の設置階を下階へ変更する作業(盛替え)を、垂直トラス40を支持する支持部材70を第3階床部12dからさらに下階に移動し、垂直トラス昇降ホイスト62により水平トラス30を降下させることで簡単に行うことができる。
【0047】
また、このように、本実施の形態1に係る建物解体時の養生方法は、解体すべき建物の垂直方向に沿って形成された垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス30とを設ける工程と、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bを設ける工程とを有し、垂直支持部材は、水平トラス30に直交する垂直トラス40を含み、垂直トラス40の少なくとも1個は、水平トラス30よりも上方に突出している垂直トラス上端部41を有し、垂直トラス上端部41にワイヤロープ50を設け、ワイヤロープ50により水平トラス30を支持する工程とを有するため、水平トラス30の下方へのたわみを抑制し、建物解体工事の作業効率を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施の形態1の養生システム1においては図2に示すように水平トラス30が矢印X方向に3列、矢印Y方向に5列設けられ、垂直トラス40が3個設けられていたが、この水平トラス30及ぶ垂直トラス40の数量及び配置は例示であって、これに限定されるものではない。
【0049】
また、養生システム1の水平トラス30及び垂直トラス40の数量及び配置は、解体すべき建物10の形状、必要な水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bの形状等により任意の数量及び配置とすることができる。さらに、各水平トラス30の長手方向長さは、解体すべき建物10の形状、必要な水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bの形状等に応じて適当な長さとすることができる。
【0050】
また、本実施の形態1の養生システム1においては、各垂直トラス上端部41と接手部材33b,33d,33g,33j,33n,33qとの間に合計6本のワイヤロープ50が水平トラス30の長手方向に沿って接続されていたが、これは例示であってこれに限定されるものではない。水平トラス30及び垂直トラス40との配置の形態、水平トラス30の合計長さ等に応じて、水平トラス30の下方向へのたわみを抑制するために必要な任意の接手部材の数及び位置に、必要な任意の本数のワイヤロープ50が接続されていればよい。
【0051】
本実施の形態1において他の位置にワイヤロープ50を接続した場合を、変形例として以下に示す。図10は、本実施の形態1の養生システム1の変形例を示す平面図である。この変形例の養生システム1においては、垂直トラス40は中央部の接手部材33hに接続された1本のみが設けられている。垂直トラス40の垂直トラス上端部41と、接手部材33b,33c,33d,33g,33j,33n,33p,33qとの間には、それぞれワイヤロープ50が接続されている。すなわち、養生システム1を上方から見たときに、各ワイヤロープ50は中央部の垂直トラス上端部41から矢印X方向、矢印Y方向及び斜め方向に接続されている。なお、ワイヤロープ50と垂直トラス上端部41との接続及びワイヤロープ50と接手部材33b,33c,33d,33g,33j,33n,33p,33qとの接続は手動式ホイスト45(図6参照)によってなされる。
【0052】
このような変形例のようにワイヤロープ50が接続されている場合であっても、ワイヤロープ50の張力により各水平トラス30が支持されることにより、中央の列の水平トラス30の下方向へのたわみが抑制される。
【0053】
また、本実施の形態1の養生システム1においては、吊下部材としてワイヤロープ50が設けられていたが、吊下部材としては他に非金属製ロープ又は金属チェーン等の、任意の索状、鎖状又はその他の形状の吊下部材を用いることができる。
【0054】
なお、実施の形態1の養生システム1には、手動式の垂直トラス昇降ホイスト62が設けられていたが、垂直トラス40を昇降する手段はこれに限定されるものではない。垂直トラス昇降ホイスト62に替えて、例えば電動式ホイスト等の任意の手動式又は動力式の吊下げ装置を用いてもよい。
【0055】
次に、本発明の建物解体時の養生システム及び建物の解体方法の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1の図1図10の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。本実施の形態2に係る養生システム及び建物の解体方法は、実施の形態1に対して、ワイヤロープにより水平トラスに予め応力を付加する養生システム及び建物の解体方法である。
【0056】
図11は、本実施の形態2の養生システム1aにおける水平トラス30の平面図である。なお、説明の便宜のため図11においては、建物10,水平養生ネット23a,垂直養生ネット23b及び外周足場22については記載を省略している。また、水平トラス30の斜め方向の部材の記載を省略している。さらに、矢印X方向及び矢印Y方向は、実施の形態1の図2に示す矢印X方向及び矢印Y方向と同じ方向である。矢印X方向に沿って延びる水平トラス30は3列に配置されており、矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30は4列に配置されている。
【0057】
矢印X方向に沿って延びる水平トラス30と、矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30とは、それぞれ立方体状の枠状の接手部材33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33j,33k,33m,33nにより接続され、格子状に配置されている。
【0058】
図11の紙面の上側から数えて1列目の水平トラス30に接続されている、紙面の左側から数えて1番目の接手部材33aと、左側から数えて4番目の接手部材33dとの間には、ワイヤロープ50が接続されている。すなわち、接手部材33aと接手部材33dとの間の水平トラス30においては、その一端部である接手部材33aと他端部である接手部材33dとの間にワイヤロープ50が接続されている。
【0059】
また、図11の紙面の上側から数えて2列目の水平トラス30に接続されている、紙面の左側から数えて1番目の接手部材33eと、左側から数えて4番目の接手部材33hとの間には、ワイヤロープ50が接続されている。すなわち、接手部材33eと接手部材33hとの間の水平トラス30においては、その一端部である接手部材33eと他端部である接手部材33hとの間にワイヤロープ50が接続されている。
【0060】
さらに、図11の紙面の上側から数えて3列目の水平トラス30に接続されている、紙面の左側から数えて1番目の接手部材33jと、左側から数えて4番目の接手部材33nとの間には、ワイヤロープ50が接続されている。すなわち、接手部材33jと接手部材33nとの間の水平トラス30においては、その一端部である接手部材33jと他端部である接手部材33nとの間にワイヤロープ50が接続されている。
【0061】
図12は、図11に示す養生システム1aを矢印Y方向に沿う方向から見たときの水平トラス30の正面断面図である。なお、説明の便宜のため図12においては垂直養生ネット23bの記載を省略している。また、図12においては、外周足場22の外側の防音パネル21を記載している。さらに、矢印X方向及び矢印Z方向は、実施の形態1の図2に示す矢印X方向及び矢印Z方向と同じ方向である。また、図11に示す養生システム1aをB-B線及びB1-B1’線で切断した場合の水平トラス30の構成も、養生システム1aを矢印Y方向に沿う方向から見たときの水平トラス30の構成と同様であるため、図12を用いて併せて説明する。
【0062】
ワイヤロープ50は、接手部材33aの上側に取り付けられた手動式ホイスト45に接続されている。このワイヤロープ50は、水平トラス30のトラス構造の隙間を通り、接手部材33bの下側に取り付けられた接手部材36bの下側と、接手部材33cの下側に取り付けられた接手部材36cの下側とを経由し、水平トラス30のトラス構造の隙間を通り、接手部材33dの上側に取り付けられた手動式ホイスト45に接続されている。また、このワイヤロープ50は、接手部材33aの上側に取り付けられた手動式ホイスト45及び接手部材33dの上側に取り付けられた手動式ホイスト45により、弛張自在に設けられている。
【0063】
また、他のワイヤロープ50は、接手部材33eの上側に取り付けられた手動式ホイスト45に接続されている。そして、このワイヤロープ50は、水平トラス30のトラス構造の隙間を通り、接手部材33fの下側に取り付けられた接手部材36bの下側と、接手部材33gの下側に取り付けられた接手部材36cの下側とを経由し、水平トラス30のトラス構造の隙間を通り、接手部材34gの上側に取り付けられた手動式ホイスト45に接続されている。また、このワイヤロープ50は、接手部材33eの上側に取り付けられた手動式ホイスト45及び接手部材33hの上側に取り付けられた手動式ホイスト45により、弛張自在に設けられている。
【0064】
また、他のワイヤロープ50は、接手部材33jの上側に取り付けられた手動式ホイスト45に接続されている。このワイヤロープ50は、水平トラス30のトラス構造の隙間を通り、接手部材33kの下側に取り付けられた接手部材36bの下側と、接手部材33mの下側に取り付けられた接手部材36cの下側とを経由し、水平トラス30のトラス構造の隙間を通り、接手部材33nの上側に取り付けられた手動式ホイスト45に接続されている。また、このワイヤロープ50は、接手部材33jの上側に取り付けられた手動式ホイスト45及び接手部材33nの上側に取り付けられた手動式ホイスト45により、弛張自在に設けられている。
【0065】
すなわち、接手部材36b,36cは、水平トラス30に対して垂直方向下側にワイヤロープ50を偏向する偏向部材を構成している。なお、ワイヤロープ50は応力付加部材を構成している。
【0066】
図13は、接手部材33aの上部の斜視図である。接手部材33aには板状部材42が取り付けられている。板状部材42には、手動式ホイスト45が取り付けられている。手動式ホイスト45のフック45aには、ワイヤロープ50が接続されている。なお、図13は接手部材33aの上部を示しているが、接手部材33d,33e,33h,33j及び33h(図11参照)の上部においても、同じように板状部材42に取り付けられた手動式ホイスト45が設けられている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0067】
次に、本実施の形態2の養生システム1aの使用方法について説明する。実施の形態1と同様に、作業者は図11に示す水平トラス30を組み立てる。この後、水平トラス30の上部に図示しない水平養生ネット及び図示しない垂直養生ネットを展張すると、水平トラス30の自重及び水平養生ネット並びに垂直養生ネットの重量により水平トラス30の中央部が下方向にたわみ、両端部が上方向にたわむ場合がある。
【0068】
具体的には、矢印X方向に沿って延びる水平トラス30のうち、接手部材33aと接手部材33dとの間の水平トラス30、接手部材33eと接手部材33hとの間の水平トラス30及び接手部材33jと接手部材33nとの間の水平トラス30の、矢印X方向の合計長さが20mを超える場合には、水平トラス30の中央部が下方向にたわみ、両端部が上方向にたわむ可能性がある。
【0069】
次に、作業者が水平トラス30の組み立て後、ワイヤロープ50を接手部材33aと接手部材33dとの間、接手部材33eと接手部材33hとの間、接手部材33jと接手部材33nとの間にそれぞれ接続する。そして、接手部材33aの上側の手動式ホイスト45と、接手部材33dの上側の手動式ホイスト45を操作して、ワイヤロープ50に張力を掛けることにより、ワイヤロープ50が接手部材36b及び接手部材36cに上側方向、すなわち矢印Z方向に応力を付加する。また、作業者が、接手部材33eの上側の手動式ホイスト45と、接手部材33hの上側の手動式ホイスト45とを操作して、ワイヤロープ50に張力を掛けることにより、ワイヤロープ50が接手部材36b及び接手部材36cに矢印Z方向に応力を付加する。さらに、作業者が、接手部材33jの上側の手動式ホイスト45と、接手部材33nの上側の手動式ホイスト45を操作して、ワイヤロープ50に張力を掛けることにより、ワイヤロープ50が接手部材36b及び接手部材36cに矢印Z方向に応力を付加する。
【0070】
上述したようにワイヤロープ50は、接手部材36b及び接手部材36cに上側方向、すなわち矢印Z方向の応力を付加する。これにより、接手部材33aから接手部材33dの間の水平トラス30、接手部材33eから接手部材33hの間の水平トラス30及び接手部材33jから接手部材33nの間の水平トラス30に予め応力が付加される。
【0071】
次に、作業者が水平トラス30の上部に図示しない水平養生ネット及び図示しない垂直養生ネットを展張する。これにより、図12に示す建物10の上部が図示しない水平養生ネット及び垂直養生ネットにより覆われる。また、接手部材33aから接手部材33dの間の水平トラス30、接手部材33eから接手部材33hの間の水平トラス30及び接手部材33jから接手部材33nの間の水平トラス30の各端部が下方に湾曲するように予め応力が付加されているため、水平トラス30の自重及び水平養生ネット並びに垂直養生ネットの重量により、水平トラス30の中央部が下方向にたわみ両端部が上方にたわむことが抑制される。
【0072】
このように、本実施の形態2の建物解体時の養生システム1aは、解体すべき建物10の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物10の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス30と、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット及び垂直養生ネットと、水平トラス30の端部が下方に向けて湾曲するように水平トラス30に応力を付加するワイヤロープ50とを備えるため、水平トラス30の中央部が下方向たわみ両端部が上方にたわむことが抑制され、建物解体工事の作業効率を向上させることができる。
【0073】
また、水平トラス30は、一端部と他端部との間に下側に突出する接手部材36b及び36cを有し、ワイヤロープ50は、水平トラス30の一端部の上側と、水平トラス30の他端部の上側とに接続され、一端部と他端部との間で接手部材36b及び36cの下側を経由するため、簡単な構成で水平トラス30の端部が上側に湾曲するように応力を付加することができる。
【0074】
また、このように、本実施の形態2の建物解体時の養生方法は、解体すべき建物10の垂直方向に沿って形成された垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス30とを設ける工程と、水平トラス30の端部が下方に向けて湾曲するように水平トラス30に応力を付加する工程と、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット及び垂直養生ネットを設ける工程とを有するため、水平トラス30の中央部が下方向たわみ両端部が上方にたわむことが抑制され、建物解体工事の作業効率を向上させることができる。
【0075】
なお、本実施の形態2の養生システム1aにおいては図9に示すように矢印X方向に沿って延びる水平トラス30は3列に配置され、矢印Y方向に沿って延びる水平トラス30は4列に配置されていたが、この水平トラス30の配置は例示であって、これに限定されるものではない。養生システム1aの水平トラス30の配置は、解体すべき建物10の形状、必要な水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bの形状等により任意の配置とすることができる。さらに、各水平トラス30の長手方向長さは、解体すべき建物10の形状、必要な水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bの形状等に応じて適当な長さとすることができる。さらにまた、養生システム1aには必要に応じて垂直トラス40を設置してもよい。さらにまた、本実施の形態2の養生システム1aは接手部材33eから接手部材33hの間の長手方向の水平トラス30の合計長さが、実施の形態1の養生システム1の接手部材33fから接手部材33kまでの間の長手方向の水平トラス30の合計長さよりも短いことが好ましい。
【0076】
また、本実施の形態2の養生システム1aは偏向部材として接手部材36b及び36cを有していたが、水平トラス30に対して垂直方向下方にワイヤロープ50を偏向することができる構成であれば、接手部材に代えて例えばワイヤガイドローラ等の他の偏向部材を用いてもよい。
【0077】
また、本実施の形態2の養生システム1aは、ワイヤロープ50により水平トラス30の端部が下方に向けて湾曲するように水平トラス30に応力を付加してから、次に水平トラス30に水平養生ネット及び垂直養生ネットが展張されていたが、この順序に限定されるものではなく、水平トラス30に水平養生ネット及び垂直養生ネットが展張されてから、次に水平トラス30に応力が付加されてもよい。
【0078】
また、本実施の形態2の養生システム1aは、矢印X方向に延びる水平トラス30と矢印Y方向に延びる水平トラス30とを接手部材33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33j,33k,33m,33nにより接続した後に各ワイヤロープ50を接続し、その後各ワイヤロープ50に張力を付与していたが、養生システム1aの組立順序はこの順序に限定されるものではない。例えば、矢印X方向に延びる水平トラス30をそれぞれ接手部材33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33j,33k,33m,33nにより接続した後に、各ワイヤロープ50を接続し、次に各ワイヤロープ50に張力を付与した後に、矢印Y方向に延びる水平トラス30をそれぞれ取り付けてもよい。また、第1階床部12a上部において水平トラス30の組立を行うことが困難である場合には、水平トラス30を外周足場22の上に移動させた後に、水平トラス30の組み立てを行ってもよい。
【0079】
また、実施の形態2の養生システム1及び実施の形態2の養生システム1aには、ワイヤロープ50が弛張自在に手動式ホイスト45に接続されていたが、ワイヤロープ50が接続されるのは手動式ホイスト45に限定されない。例えば、手動式ホイスト、電動式ホイスト等のワイヤロープ50を巻上又は解放して弛張させることが可能な任意の装置であればよい。
【0080】
実施の形態3.
次に、本発明の建物解体時の養生システム及び建物の解体方法の実施の形態3について説明する。本実施の形態3に係る養生システム及び建物の解体方法は、実施の形態1に対して垂直トラスの配置位置をオフセットしたものである。
図14は、実施の形態3の養生システム1aの平面図である。接手部材33bと接手部材33cとの間、接手部材33gと接手部材33hとの間及び接手部材33nと接手部材33pとの間には、矢印X方向に沿って延び、他の水平トラス30及び後述する水平トラス30bよりも長手方向長さが短い水平トラス30aが設けられている。
【0081】
接手部材33cと接手部材33dとの間、接手部材33hと接手部材33jとの間及び接手部材33pと接手部材33qとの間には、矢印X方向に沿って延び、他の水平トラス30,30aよりも長手方向長さが長い水平トラス30bが設けられている。
【0082】
接手部材33hには、垂直トラス40が接続されている。また、接手部材33hには、矢印Xの延びる方向において、長手方向長さが他の水平トラス30に対して短い水平トラス30aと、長手方向長さが他の水平トラス30に対して長い水平トラス30bとが接続されている。このため、養生システム1bを上方向から見たときに垂直トラス40は、養生システム1bの中心からずれた位置に配置されている。すなわち、本実施の形態3の垂直トラス40は養生システム1bの中心に対してオフセットして配置されている。なお、本実施の形態3においては、ワイヤロープ50を設けていない。
【0083】
図15は、図14に示す養生システム1bをC-C’線で切断し、建物10の上部を拡大して示す正面断面図である。なお、説明の便宜のため、垂直養生ネット23bについては具体的な形状の記載を省略しており、さらに建物10の縦方向すなわち矢印Y方向(図15参照)の奥側の外周足場22の記載を省略している。また、図15においては、外周足場22の外側の防音パネル21を記載している。さらに、矢印X方向及び矢印Z方向は、実施の形態1の図2に示す矢印X方向及び矢印Z方向と同じ方向である。
【0084】
第1階床部12a、第2階床部12b及び第3階床部12dの下面には、図15の奥行方向、すなわち矢印Y方向(図14参照)に沿って延びるように建物梁部15が設けられている、建物梁部15に対して床開口部14は、図15の紙面の左側方向に形成されている。すなわち建物梁部15に対して床開口部14は、矢印Z方向から見たときに位置が重ならないように形成されている。垂直トラス40は、床開口部14に挿入されて第1階床部12a及び第2階床部12bを貫通している。垂直トラス40の下部は、第3階床部12dの床面上に配置された支持部材70に設置されている。なお、第1階床部12aは第1の床部を、第3階床部12dは第2の床部を構成している。
【0085】
図16は、図14に示す第3階床部12dに立てられた垂直トラス40を示す斜視図である。垂直トラス40は、垂直トラス昇降ホイスト62により昇降したときに建物梁部15に接触しない位置に配置されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0086】
次に、本実施の形態3の養生システム1bの使用方法を説明する。図15に示すように養生システム1bの垂直トラス40を設置する場合に、解体すべき建物10の解体作業の進捗に伴って、作業者が解体作業を行う床部が第1階床部12a、第2階床部12b、第3階床部12d……の順に下降していく。この場合に、建物10の第1階床部12a,第2階床部12b及び第3階床部12d……に床開口部14を形成して、そのうちの第3階床部12dに垂直トラス40の下端部を配置する。このとき、垂直トラス40の配置位置と、建物10の建物梁部15の位置とが重なると、垂直トラス40を挿入するための床開口部14の形成が困難となる場合がある。
【0087】
本実施の形態3の養生システム1bは、垂直トラス40が、昇降したときに建物梁部15に接触しない位置にオフセットして配置されている。すなわち、作業者は、垂直トラス40を挿入するための床開口部14の位置と建物梁部15の位置とが矢印Z方向から見たときに重ならないように床開口部14を形成して、床開口部14の形成を容易にすることができる。次に、作業者が水平トラス30,30a,30bと接手部材33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h,33j,33k,33m,33n,33p,33q,33rとを格子状に組み立て、水平トラス30,30a,30bの上に水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bを展張する。
【0088】
このように、本実施の形態3の養生システム1bは、解体すべき建物10の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物10の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス30と、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bとを備え、垂直支持部材は、水平トラス30に直交する垂直トラス40を含み、水平トラス30は、垂直トラス40を挟んで直線状に設けられた水平トラス30aと水平トラス30bとを含み、水平トラス30bは、水平トラス30aよりも長手方向長さが大きいため、床開口部14の形成位置が解体すべき建物10の第1階床部12aの建物梁部15に重ならず、床開口部14の形成が容易になる。
【0089】
また、このように、本実施の形態3の建物解体時の養生方法は、解体すべき建物10の垂直方向に沿って形成された垂直トラス40を、解体すべき建物10の第1階床部12aを貫通し更に下端部が第1階床部12aの下方に設けられた第3階床部12dに配置されるように設ける工程と、解体すべき建物10の水平方向に沿って延び、垂直トラス40に支持される水平トラス30であって、垂直トラス40を挟んで直線状に設けられた水平トラス30aと水平トラス30bとを含み、水平トラス30bが、水平トラス30aよりも長手方向長さが大きい水平トラス30を設ける工程と、水平トラス30に支持され、解体すべき建物10を上方から覆う水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bを設ける工程とを有するため、床開口部14の形成位置が解体すべき建物10の第1階床部12aの建物梁部15に重ならず、床開口部14の形成が容易になる。
【0090】
また、実施の形態3の養生システム1bは、実施の形態2の水平トラス30の端部が下方に向けて湾曲するように水平トラス30に応力を付加するワイヤロープ50と、接手部材36b,36cとを有する養生システム1aの構成を併用してもよい。
【0091】
また、実施の形態3の養生システム1bは、第3階床部12d上に垂直トラス40の下端部が配置されていたが、第3階床部12dよりもさらに下の床部に垂直トラス40の下端部が配置されてもよい。
【0092】
また、実施の形態1の養生システム1、実施の形態2の養生システム1a及び実施の形態3の養生システム1bでは枠足場の外周足場22を用いていたが、これに限定されるものではなく、例えば単管足場等の適当な形状を有する任意の種類の足場を用いることができる。
【0093】
また、実施の形態1の養生システム1及び実施の形態3の養生システム1bでは単管パイプ60を立てるためにジャッキベース61を用いていたが、これに限定されるものではなく、適当な形状を有する任意の種類のパイプ支持部材を用いることができる。
【0094】
実施の形態4.
次に、この本発明の建物解体時の養生システム及び建物の解体方法の実施の形態4について説明する。本実施の形態4に係る養生システム及び建物の解体方法は、実施の形態1又は3に対して垂直トラス40に代えてトラス構造を有さない四角柱状支柱を用いるものである。
【0095】
図17に、四角柱状支柱48の斜視図を示す。四角柱状支柱48は、鉛直方向に延びる4本の鉄製の鉛直パイプ48aと、隣り合う鉛直パイプ48a同士を接続する鉄製の接続部材48bとを有しており、四角柱状に形成されている。また、四角柱状支柱48は鉛直方向下部にジャッキ部49を有している。四角柱状支柱48の上端部48cには、板状部材42及び手動式ホイスト45(図6参照)を設けることができる。
【0096】
実施の形態1及び3の垂直トラス40(図2及び図15参照)の替わりに、このようなトラス構造を有さない四角柱状支柱48を用いることができる。また、四角柱状支柱48は下部にジャッキ部49を有するため、四角柱状支柱48の長手方向の長さを調整することが可能である。なお、四角柱状支柱48は柱状部材を構成している。その他の構成は実施の形態1又は3と同じである。
【0097】
このように、柱状部材は、四角柱状支柱48であるため、鉛直方向に延びる柱状部材を軽量に且つ簡単に構成することができる。
【0098】
なお、本実施の形態4の四角柱状支柱48は鉄製の鉛直パイプ48a及び鉄製の接続部材48bを有していたが、鉛直パイプ48a及び接続部材48bの材料は鉄に限定されるものではなく、十分な強度を有していれば他の金属材料を用いてもよい。
【0099】
また、実施の形態1~4では、養生部材として水平養生ネット及び垂直養生ネットを用いていたが、これ以外の適当な養生部材を用いてもよい。例えば、養生部材として既知の養生シートを用いてもよい。また、実施の形態1~4では水平養生ネット及び垂直養生ネットは別体のネットとして形成されていたが、水平養生ネット及び垂直養生ネットが一体に形成されたネットであってもよい。
【符号の説明】
【0100】
10 解体すべき建物、12a 第1階床部(第1の床部)、12d 第3階床部(第2の床部)、23a 水平養生ネット(養生部材)、23b 垂直養生ネット(養生部材)、30 水平トラス(水平トラス部材)、30a 水平トラス(第2水平トラス部材)、30b 水平トラス(第3水平トラス部材)、36b,36c 接手部材(偏向部材)、40 垂直トラス(垂直支持部材、柱状部材)、41 垂直トラス上端部(突出部)、48 四角柱状支柱、50 ワイヤロープ(吊下部材、応力付加部材)。
【要約】
【課題】水平トラス構造の下方へのたわみを抑制し、建物解体工事の作業効率を向上させる建物解体時の養生システムを提供する。
【解決手段】解体すべき建物の垂直方向に沿って設けられた垂直支持部材と、解体すべき建物の水平方向に沿って延び、垂直支持部材に支持される水平トラス30と、水平トラス部材に支持され、解体すべき建物を上方から覆う水平養生ネット23a及び垂直養生ネット23bとを備え、垂直支持部材は、水平トラス30に直交する垂直トラス40を含み、垂直トラス40の少なくとも1個は、水平トラス30よりも上側に突出している垂直トラス上端部41を有し、垂直トラス上端部41にワイヤロープ50が設けられ、ワイヤロープ50により水平トラス30が支持される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17