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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】果菜類向け植物育成用照明装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022121883
(22)【出願日】2022-07-29
【審査請求日】2022-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519143845
【氏名又は名称】ジャパンフューチャーエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】上田 啓二
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0287830(US,A1)
【文献】特開2020-126786(JP,A)
【文献】登録実用新案第3198211(JP,U)
【文献】特開2015-099674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 31/00
H01L 33/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を備え、
前記発光素子のうち被育成植物へ照射する所定発光素子において、前記所定発光素子の数N、前記所定発光素子のうち赤色に発光可能な素子の数N、前記所定発光素子のうち青色に発光可能な素子の数N、前記所定発光素子のうち緑色に発光可能な素子の数N、及び前記所定発光素子のうち白色に発光可能な素子の数Nは、式(1)ないし(5)を充足する、果菜類向け植物育成用照明装置。
=N+N+N+N (1)
28/216≦N/N≦44/216 (2)
14/216≦N/N≦22/216 (3)
14/216≦N/N≦22/216 (4)
128/216≦N /N ≦160/216 (5)
【請求項2】
前記赤色に発光可能な素子は、赤色発光素子であり、
前記青色に発光可能な素子は、青色発光素子であり、
前記緑色に発光可能な素子は、緑色発光素子であり、
前記白色に発光可能な素子は、白色発光素子である、
請求項1記載の植物育成用照明装置。
【請求項3】
12個の前記所定発光素子を有する基本配置を複数配した発光部を含む、請求項2記載の植物育成用照明装置。
【請求項4】
前記基本配置は、前記発光部において、
前記赤色発光素子が略同一の間隔で配され、
前記青色発光素子が略同一の間隔で配され、
前記緑色発光素子が略同一の間隔で配され、
前記赤色発光素子、前記青色発光素子、及び前記緑色発光素子を含む色付き発光素子が略同一の間隔で配された、
配置を構成可能な配置である、
請求項3記載の植物育成用照明装置。
【請求項5】
前記発光素子から前記被育成植物への方向と異なる方向へ照射される光の少なくとも一部を前記被育成植物へ向けて反射可能な反射板を2以上備える、請求項1記載の植物育成用照明装置。
【請求項6】
前記複数の発光素子の少なくとも一部又は全部は、直線状に配され、前記直線状に配された発光素子のそれぞれは、略同形かつ略直方体形状のチップLEDからなり、前記直線状に配された発光素子のそれぞれにおいて、前記チップLEDの正極及び負極の両端子が互いに対向する方向と前記発光素子を配する向きとが略直交する、請求項1記載の植物育成用照明装置。
【請求項7】
紫外線光LED素子及び遠赤外光LED素子の少なくともいずれか一方を更に含む、請求項1記載の果菜類向け植物育成用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜類向け植物育成用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光の代わりに蛍光灯又はLED照明装置などを用いて植物栽培を行う人工光型植物工場及び人工光型苗生産装置がある。だが、いずれも1ケ月程度の短期間で栽培ができるリーフレタスを主体とする葉菜類、ハーブ類栽培もしくは野菜苗、花卉苗の一次育苗(プラグ苗等)の苗生産が主であり、果菜類(イチゴ)の生産は全体の5%程度に限られている。これは播種から収穫までの栽培に要する電気コストとの兼ね合いが理由にある(非特許文献1参照)。
【0003】
トマト、イチゴなどの果菜類においては人工光型植物工場(閉鎖型植物工場)での栽培の場合、播種から収穫までに100日~120日程度の栽培期間を要する。栽培期間においては光と温度管理に要する電気コスト、人件費、肥料などの栽培に付帯するコストが栽培期間に比例してかかる。これが、果菜類の生産を行う上で経営上、収益が悪くなる要因となる。これを解決するには、果実が短期間の栽培で収穫ができ、収量の増加が見込める光である。すなわち植物が効率的に光合成を行なえるスペクトル光と、低エネルギーで高い光強度を発光する光源の照明が必要となる。非特許文献2に記載されている資料によると電気コストの内訳は照明60%、空調28%、その他(ポンプなど)11%と照明の比率が高い。
【0004】
一方、植物体にとっては、光合成に最適なスペクトル光による光合成産物転化効率(光利用効率)と、高い光強度と、葉面積の増加(受光率)と、が求められる。特にトマト、イチゴなど果実の成る果菜類は、栄養成長期に植物体が生育に適したスペクトル光と高い光強度の光とを受光し、光合成速度(単位時間あたりの光合成量)を増やすとともに光合成により生産された光合成産物(ショ糖、デンプン、セルロース)が効率よく葉や茎や根により多く蓄える必要がある。
【0005】
そして、果菜類において、生殖成長期に、光合成により葉や茎や根に蓄えられた光合成産物(ソース)が果実(シンク)への転流と分配とがバランスよく行われることにより、短期間で果実が実り、収穫量を上げることができる。
【0006】
これらを解決するため、これまでに数多くの発光技術が提案されているが、栽培にかかる電気コストで解決しているとは言えない。例えば、これまでの提案技術には、紫外線、赤色、青色、遠赤外線のピークトップがいずれか1つもしくは2つのピークトップを発光スペクトル、又は、太陽光と同じ、均一な光強度でバランスの良い発光スペクトルとしている。1つもしくは2つのピークトップを発光スペクトルは、例えば、赤青混色光LED、白色光LEDを基本とし、前記のピーク波長を含む混色光LEDによって生成される。均一な光強度でバランスの良い発光スペクトルは、高圧ナトリウムメタルハイドランプ、3波長蛍光灯、3波長蛍光体LEDなどよって生成される。
【0007】
これらの技術は、光強度を補うために、多くの消費電力を要している。人工光型の植物栽培において、低消費電力の光源発光で光合成速度を増加させ、播種から収穫までの栽培期間の短縮と収穫物の増加を図ることで収穫物1個当たりの電気コストを抑える発光技術が求められている(非特許文献3参照)。
【0008】
光強度を補う技術として、従来、特許文献1に記載されているように、2枚の反射板が、基板上に装着されたLED光源の列の両側に平行して、反射面がLED光源の列を両側から挟んで対向する配置で設置される、という技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-99674号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】一般社団法人 施設園芸協会、令和3年度スマートグリーンハウス展開事業報告書(別冊1)大規模施設園芸、植物工場 実態調査 事例調査、p.22 図表26主な栽培品目(人工光型)<https://jgha.com/wp-content/uploads/2022/04/TM06-03-bessatsu1.pdf>
【文献】一般社団法人 施設園芸協会、令和3年度スマートグリーンハウス展開事業報告書(別冊1)大規模施設園芸、植物工場・実態調査・事例調査、p.50 図表65 栽培形態別コスト比率(人工光型)、p.51 図表66電気コストの内訳(人工光型)<https://jgha.com/wp-content/uploads/2022/04/TM06-03-bessatsu1.pdf>
【文献】一般社団法人 施設園芸協会、令和3年度スマートグリーンハウス展開事業報告書(別冊1)、大規模施設園芸、植物工場・実態調査・事例調査、P.39 図表50 直近数年の決算<https://jgha.com/wp-content/uploads/2022/04/TM06-03-bessatsu1.pdf>
【文献】東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻 寺島 一郎、研究紹介、p.17「4. なぜ葉は黒くないのか:葉の光学的性質」、p.18“5. 葉の内部の光環境と光合成システムの構築原理”、[令和4年7月26日検索],インターネット<https://photosyn.jp/journal/sections/kaiho57-3.pdf>
【文献】寺島 一郎の紹介、(1)葉の内部の光環境と葉の光合成の関係、図5図6微分的量子収率測定法、[令和4年7月26日検索],インターネット<http://www.bs.s.u-tokyo.ac.jp/~seitaipl/personal/terashima/terashima_j.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
植物工場で栽培される野菜類は、根を食用とする根菜類、葉・茎を食用とする葉菜類、及び果実を食用とする果菜類を含む。これらのうち果菜類は、例えば、トマト、イチゴ等を含む。植物工場での果菜類の栽培においては、短期間での収穫が重要な課題である。しかしながら、先行技術のLED照明装置が用いる白色LED、青色LED、赤色LED、遠赤色LED、紫外線LEDは、果菜類の光合成速度を増やす点において、さらなる改良の余地がある。
【0012】
ところで、緑色光は、これまで光合成には不要な光であると考えられてきた。すなわち、葉が緑に見えるのは緑色光が葉に吸収されず反射しているからと考えられ、緑色光は人工光による栽培では必要のない光とされてきた。しかしながら、実際には緑色光は赤色光、青色光ほど葉に吸収されないものの光合成には必要とされる。緑色光は葉全体では柵状組織や海面組織の発達によって葉の内部で何度も反射と吸収をしている。特に果菜類、花卉類の人工光栽培においては光合成速度を増やすために白色光の光強度を上げるが、これには植物の光合成による光の吸収には限界(光飽和点)があり、高強度の光の場合、葉の表面の葉緑体は光飽和点に達して赤、青色光は光合成には必要とされずに熱として散逸される。その一方で葉の裏面の葉緑体は光飽和点に達していないという状況となる。この時点において緑色光は葉の裏面にも届くため、緑色光は光飽和点に達していない葉緑体の光合成を駆動し、赤色光、青色光よりも緑色光の方が光合成速度を増やす結果となる。ゆえに、緑色光は赤色光、青色光とともに光合成には欠かせない光である。このように、緑色光を活かす改良が望まれる(非特許文献4、5参照)。
【0013】
また、人工光栽培による果菜類を促成栽培する上で、植物体の葉面積を拡大させ、より多くの光を受けるように受光面積を拡大させて、光合成による光合成生産物を蓄える必要性がある。光合成生産物の増加は、落果を防ぐ(着果率の増加)とともに果実の成熟日数の短縮化に繋がる。このように、果菜類の光合成速度を増やすことは、収穫量の増加にも繋がる。
【0014】
また、トマトやイチゴの場合には果実の表皮色を見ることによって成熟度合を推し測ることができる。しかし、屋内施設で前述したLED照明装置から発光する照射光には、太陽光とは異なる光源色により光質の違いや照射むらが生じる可能性があるため、トマトやイチゴの果実の表皮の色が、太陽光に照射された場合の表皮の色とは異なり、作業員に誤って視認されるおそれがある。或いは植物体に生ずる生理障害による生育阻害要因を見過ごすおそれがある。そこで、太陽光に近い昼光色で照明可能な植物育成用照明装置の出現が望まれる。具体的には、色温度が6500ケルビン程度であれば果実の表皮色の視認性が高く、演色Ra95程度であれば太陽光に近い昼光色照明となる。
【0015】
本発明は、上述のような要望に応え、果菜類の光合成速度を増やすことが可能なスペクトルと強い光強度の光を照射することで短期栽培と果実の収量増加が実現可能であり、かつ視認性の高い昼光色を発光する照明として果菜類向け植物育成用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、本発明は次に記載する構成を備える。
【0017】
(1) 複数の発光素子(例えば、LED素子12)を備え、
前記発光素子のうち被育成植物へ照射する所定発光素子において、前記所定発光素子の数N、前記所定発光素子のうち赤色に発光可能な素子の数N、前記所定発光素子のうち青色に発光可能な素子の数N、前記所定発光素子のうち緑色に発光可能な素子の数N、及び前記所定発光素子のうち白色に発光可能な素子の数Nは、式(1)ないし(5)を充足する、果菜類向け植物育成用照明装置(例えば、LED照明装置1)。
=N+N+N+N (1)
28/216≦N/N≦44/216 (2)
14/216≦N/N≦22/216 (3)
14/216≦N/N≦22/216 (4)
128/216≦N /N ≦160/216 (5)
【0018】
(1)によれば、赤色に発光する素子の数、青色に発光する素子の数、緑色に発光する素子の数及び白色に発光する素子の数が上記(1)ないし(5)の式を満たす比率となる。これにより、光合成に必要な赤色発光及び青色発光と、葉の奥の光飽和に達していない葉緑体の光合成を駆動させ、植物の光利用効率を高める緑色発光と、を兼ね備えた本発明特有のスペクトルの光を植物に照射することが可能になり、促成栽培と収量増加を目標とする果菜類の栽培に適した果菜類向け植物育成用照明装置を提供することができる。
【0019】
しかも、(1)によれば、上記(1)ないし(5)の式を満たす比率で所定発光素子が各色に発光することにより、太陽光に近く実色の視認性が高い昼光色で照明可能な植物育成用照明装置を提供することを本発明特有のスペクトルの光を植物に照射することと両立できる。
【0020】
(2) (1)において、前記赤色に発光可能な素子は、赤色発光素子(例えば、赤色LED素子12R)であり、前記青色に発光可能な素子は、青色発光素子(例えば、青色LED素子12B)であり、前記緑色に発光可能な素子は、緑色発光素子(例えば、緑色LED素子12G)であり、前記白色に発光可能な素子は、白色発光素子(例えば、白色LED素子12W)である、果菜類向け植物育成用照明装置。
【0021】
(2)によれば、各色に発光可能な素子が単色の発光素子であるため、調色可能な蛍光体発光素子をそれぞれの色で発光させた場合より強い混合色光を照射できる。これにより、光合成に必要な赤色発光及び青色発光と、植物の光利用効率を高める緑色発光と、をよりいっそう高い光強度を兼ね備えた光を植物に照射することが可能となる。
【0022】
また、(2)によれば、各色に発光する素子が単色の発光素子であり、白色に発光する素子が白色発光素子であるため、発光素子を調色する制御手段等を備えた複雑な構成とすることを防ぎ得る。
【0023】
(3) (2)において、12個の前記所定発光素子を有する基本配置を複数配した発光部を含む、果菜類向け植物育成用照明装置。
【0024】
(3)によれば、基本配置において、上記(1)ないし(5)の式を満たす比率が達成される。これにより、植物育成用照明装置が照射する範囲全体より狭い範囲に照射する基本配置において、果菜類の促成栽培と収量増加に適した本発明特有のスペクトルの光と光強度が実現できる。
【0025】
よって、(3)によれば、よりいっそう照射光の色むらの少ない昼光色の光色を実現することができる。このように、色むらなく光を植物体に照射することで、光合成速度をよりいっそう増加させることが可能になり、植物の生育をより均一に安定的に進めることができる。
【0026】
また、(3)によれば、基本配置において、果菜類の促成栽培と収量増加に適した本発明特有のスペクトルの光と光強度を実現できるため、照射光の色むらを低減する意図と強い光強度を維持する意図で植物育成用照明装置を被育成植物から離す必要がなくなる。これにより、植物育成用照明装置を被育成植物のより近くに配置し、照射効率を向上し得る。
【0027】
(4) (3)において、前記基本配置は、前記発光部において、前記赤色発光素子が略同一の間隔で配され、前記青色発光素子が略同一の間隔で配され、前記緑色発光素子が略同一の間隔で配され、前記赤色発光素子、前記青色発光素子、及び前記緑色発光素子を含む色付き発光素子が略同一の間隔で配された、配置を構成可能な配置である、果菜類向け植物育成用照明装置。
【0028】
(4)によれば、各色の発光素子が略同一の間隔で配されるため、照射光の色むらをよりいっそう低減できる。しかも、(4)によれば、赤、緑、青の単色光の発光素子が略同一の間隔で配されるため、赤、緑、青の単色発光素子の間に白色発光素子が配される配置となり、照射の色むらを更にいっそう低減できる。
【0029】
(5) (1)~(4)において、前記発光素子から前記被育成植物への方向と異なる方向へ照射される光の少なくとも一部を前記被育成植物へ向けて反射可能な反射板(例えば、反射面26(鏡面加工された反射板或いは鏡面メッキ))を2以上備える、果菜類向け植物育成用照明装置。
【0030】
(5)によれば、発光素子が消費電力を増やすことなく、植物体に照射する光量を増やすことが可能になる。よって、(5)によれば、照明器具として効率化、省電力化を図ることが可能になる。
【0031】
(6) (1)~(5)において、前記複数の発光素子の少なくとも一部又は全部は、直線状に配され、前記直線状に配された発光素子のそれぞれは、略同形かつ略直方体形状のチップLEDからなり、前記直線状に配された発光素子のそれぞれにおいて、前記チップLEDの正極及び負極の両端子が互いに対向する方向と前記発光素子を配する向きとが略直交する、果菜類向け植物育成用照明装置。
【0032】
(6)によれば、発光素子がチップLEDからなるため、省電力化を図ることができる。しかも、チップLEDの正極及び負極の両端子が互いに対向する向きと発光素子を配する向きとが略直交するため、隣り合うチップLEDの間に配線等を配置する必要がなくなる。よって、(6)によれば、チップLEDの発光部位間の間隔を短くすることが可能になる。これにより、(6)によれば、更に照射光の色むらの少ない昼光色の光色を実現することができる。
【0033】
(7) (1)~(6)において、紫外線光LED素子及び遠赤外光発生素子の少なくともいずれか一方を更に含む、果菜類向け植物育成用照明装置。
【0034】
(7)によれば、近紫外線を照射することにより、果菜類が開花する段階において果菜類が受粉結実に要する送粉昆虫であるミツバチ、マルハナバチ等を活発に行動させることが可能になり、送粉昆虫による受粉を効率的に行うことが可能になる。これにより、人が筆を用いて受粉を行う方法よりも、形のよい結実が多くなる可能性を高めることが可能になる。遠赤外線光を照射することで、葉面積の増加と茎の伸長を促進効果が期待できる。これにより、受光率が高まり、光合成速度を増やすことが可能になることで、果菜類の光合成産物の蓄積を増やすことが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、果菜類の促成栽培と収量増加を高めることが可能なスペクトル光と高い光強度の発光で照射可能であり、かつ視認性が高い昼光色照明可能な果菜類向け植物育成用照明装置を提供することができる。また、本発明によれば、低消費電力照明で播種から果実収穫までの栽培期間を短縮することができることから、栽培コストの低減が見込める。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態におけるLED照明装置1の外観を示す斜視図である。
図2】LED基板10の構成を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態におけるLED照明装置1に係るアルミ基板11の構成を模式的に示す説明図である。
図4】LED基板10の複数のLED素子12を直列接続させるアルミ基板11を示す説明図である。
図5】LED基板10の複数のLED素子12の一群を直列接続させたものを並列接続させるアルミ基板11を示す説明図である。
図6】LED照明装置1の照射光のスペクトルの一例を示す図である。
図7】栽培棚における棚面の光の分布を示す図である。
図8】4種類のLED照明装置を使用した栽培試験における種子繁殖系イチゴ「よつぼし」の生育差を示す播種後40日目の写真であり、左から白色光LED照明反射板なし、白色光LED照明反射板有り、本発明に係るRGBW4色混色光源白色LED照明反射板なし、本発明に係るRGBW4色混色光源白色LED照明反射板有りのLED照明装置を使用した場合をそれぞれ示す。
図9】4種類のLED照明装置を使用した栽培試験における矮性低段ミニトマトの生育差を示す播種後40日目の写真であり、左から白色光LED照明反射板なし、白色光LED照明反射板有り、本発明に係るRGBW4色混色光源白色LED照明反射板なし、本発明に係るRGBW4色混色光源白色LED照明反射板有りのLED照明装置を使用した場合をそれぞれ示す。
図10】4種類のLED照明装置を使用した栽培試験における矮性低段ミニトマトの生育差を示す播種後50日目の写真であり、左から白色光LED照明反射板なし、白色光LED照明反射板有り、本発明に係るRGBW4色混色光源白色LED照明反射板なし、本発明に係るRGBW4色混色光源白色LED照明反射板有りのLED照明装置を使用した場合をそれぞれ示す。
図11】本発明の一実施形態におけるLED照明装置1の変形例を模式的に示す平面図である。
図12】変形例における1つのアルミ基板11に複数のLED素子12を2列実装する態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
本実施形態の植物育成用照明装置において、光源の種類は、該光源以外にマイクロLED、ミニLED、高分子有機EL等の他の光源によって例示される任意の光源でよい。
【0039】
省電力及び構成の容易性の観点から、光源は、現時点の光技術においてはLEDであることが好ましい。以下、本発明の果菜類向け植物育成用照明装置がLED照明装置1であるものとして説明する。本実施形態の記載に接した当業者であれば、他の光源を用いた果菜類向け植物育成用照明装置についても、同様に構成可能であることは、言うまでもない。
【0040】
[LED照明装置1の構成]
図1は、本発明の一実施形態におけるLED照明装置1の外観を示す斜視図である。
【0041】
LED照明装置1は、LED基板10と、ヒートシンク20と、を備えている。
【0042】
〔LED基板10〕
図2は、LED基板10の構成を示す平面図である。LED基板10は、長尺のアルミ基板11と、チップLEDからなる複数のLED素子12と、を備え、発光素子として複数のLED素子12を所定の配置で配した発光部として機能する。
【0043】
所定の配置は、特に限定されない。所定の配置は、照射対象となる被育成植物の種類・配置・形状等に応じて、直線状配置、円形状配置、曲線状配置、平面配置、曲面配置、立体配置等の任意の配置から選択可能である。アルミ基板11は、長尺のものに限定されず、選択された配置に応じた任意の形状のものを利用可能である。
【0044】
所定の配置は、直線状配置を含むことが好ましい。これにより、人工光多段棚栽培の方法で棚上に直線状に植物体配置して効率よく光を照射できる。
【0045】
〔ヒートシンク20〕
図1に戻って、ヒートシンク20は、アルミ製の長尺の筒体からなり、長尺の矩形の上面部21と、上面部21において長尺方向に延びかつ互いに対向する両側辺から立設される側面部22、22の端部に連結される下面部23と、を備える。
【0046】
下面部23は、端面がC字形であり、LED基板10を収納するレール状の収納部24と、収納部24の長尺方向に沿って延びる両側部から斜めに延びる斜面部25と、を有する。この斜面部25の先端部が側面部22、22の端部に連結される。
【0047】
斜面部25におけるLED基板10側の面には、平面でかつ鏡面加工された反射板が接する反射面26が形成されている。なお、反射面26は、斜面部25におけるLED基板10側の面に、長尺方向に鏡面メッキ加工を施してもよい。反射面26はLED基板10の平面に対して70度の角度に位置付けられる。LED基板10の平面に対する反射面26の角度は65~70度の範囲であることが望ましい。
【0048】
収納部24にLED基板10が収納された場合、収納部24の中央部に延びるスリット状の開放領域に複数のLED素子12(図2参照)が対向し、複数のLED素子12の両側部に反射面26、26が配置される。
【0049】
複数のLED素子12を発光させたときに発生するLED基板10の熱は、ヒートシンク20を介して外部に放出されることにより、LED基板10が冷却される。
【0050】
ヒートシンク20には、他にもAC電源をDC電源に変換してLED基板10に電気を供給する電源装置等が備えられている。この電源装置が、アルミ基板11の配線部111a(図3参照)と配線部111b(図3参照)とに直流電流を流すことにより、並列に接続された複数のLED素子12が発光する。
【0051】
次に、チップLEDからなる複数のLED素子12を長尺のアルミ基板11に直線状に配置してLED基板10を構成した場合の好ましい態様の一例について説明する。本実施形態の記載に接した当業者であれば、異なる光源及び異なる配置の組合せを選択した植物育成用照明装置についても、同様に構成可能であることは、言うまでもない。
【0052】
(アルミ基板11)
図3は、本発明の一実施形態におけるLED照明装置1に係るアルミ基板11の構成を模式的に示す説明図である。アルミ基板11は、配線部111と、LED素子12を載置し半田付け等によって固定される複数の実装部112と、を備えている。
【0053】
配線部111は、LED素子12の一方の端子に接続される配線部111aと、LED素子12の他方の端子に接続される配線部111bと、を備えている。配線部111aと配線部111bは、互いにLED素子12のアノード端子とカソード端子との間隔と同じ間隔を空けてアルミ基板11の長尺方向に沿って平行に延びている。なお、以下の説明において、アノード端子を正極、カソード端子を負極と称する場合がある。
【0054】
実装部112は、長尺方向に沿って等間隔に複数設けられており、この実装部112に配線部111aと配線部111bが配置されている。
【0055】
図4は、LED基板10の複数のLED素子12を直列接続させるアルミ基板11を示す説明図である。図4に示すアルミ基板11において、配線部111a及び配線部111bは破線状に形成されており、1つの破線によって隣り合う2つのLED素子12の端子同士が接続される。配線部111a及び配線部111bは、実装部112に配置されており、破線の切れ目部分は隣り合う実装部112、112の間に配置される。また、配線部111aと配線部111bとは、1個分のLED素子12だけずれている。言い換えれば、配線部111aにおける1つの破線の中央部が、配線部111bにおける破線の切れ目に対向している。
【0056】
このように配線されたアルミ基板11の実装部112に対して、LED素子12が、アノード端子とカソード端子との位置を交互変えながら順番に半田付け等によって固定される。アルミ基板11上において複数のLED素子12が直列に接続される。
【0057】
LED基板10の複数のLED素子12が直列接続であれば、LED素子12それぞれに電流調整用の抵抗器等を設ける複雑な回路構成にすることなく、複数のLED素子12それぞれに流れる電流を同一にできる。これにより、複数のLED素子12の明るさを均一にできる。また、LED基板10の複数のLED素子12が直列接続であれば、駆動電圧が高い電源を有効利用できる。
【0058】
LED基板10の複数のLED素子12が並列接続であれば、複数のLED素子12のいずれかが故障した場合でも、他のLED素子12を点灯させ続けることができる。LED基板10の複数のLED素子12が並列接続であれば、複数のLED素子12それぞれに独立したスイッチを設け、複数のLED素子12それぞれを個々にオンオフするように構成することが容易に可能になる。また、LED基板10の複数のLED素子12が並列接続であれば、LED素子12の駆動に必要な最低限の電圧でLED素子12を発光させることができる。
【0059】
なお、配線部111a及び配線部111bのパターンを変えることにより、同色のLED素子12を直列接続にして異色のLED素子12を並列接続したり、基本配置LのLED素子12を直列接続にして基本配置L又は基本配置Lを一定数繰り返した配列単位で並列接続にしたりすることも可能である。
【0060】
図5は、LED基板10の複数のLED素子12の一群を直列接続させたものを並列接続させるアルミ基板11を示す説明図である。アルミ基板11の板面には、長尺方向に直線状に延びる配線部111a及び配線部111bと、クランク形状の略Z字形をした複数の配線部111cが形成されている。配線部111cは、配線部111aの長尺方向に対して直角方向に延びる中央部と、中央部の両端部から配線部111aの長尺方向に沿ってそれぞれ逆方向に延びる一端部及び他端部とを有している。配線部111a、配線部111b及び配線部111cは、互いに非接続である。配線部111aと配線部111bとは、LED素子12における両極間の長さよりも若干長い間隔をおいて互いに対向するように配置されている。配線部111aは、基本配置Lにおける最初のLED素子12の正極の位置まで延びる延出部111dを有する。配線部111bは、基本配置Lにおける最後のLED素子12の負極の位置まで延びる延出部111eを有する。最初の配線部111cは、一端部が延出部111dと配線部111bとの間に位置付けられ、他端部が配線部111aに近接するように配置される。2番目の配線部111cは、一端部が最初の配線部111の他端部と配線部111bとの間に位置付けられ、他端部が配線部111aに近接するように配置される。3番目の配線部111cは、一端部が2番目の配線部111の他端部と配線部111bとの間に位置付けられ、他端部が配線部111aに近接するように配置される。以下同様にして23番目の配線部111cが配置され、この配線部111cの他端部は配線部111aと延出部111eとの間に配置される。また、23番目の配線部111aには、23番目の配線部111cの他端の側方でかつ延出部111eの中央に対して若干ずれて延出部111eの延出端に対向するように、2個目の延出部111dが形成されている。そして、延出部111d及び最初の配線部111cの一端部、上流側の配線部111cの他端部及び1つ下流側の配線部の一端部、最後の配線部111cの他端部及び延出部111eに、それぞれ実装部112が形成される。このように構成されたアルミ基板11の実装部112にLED素子12に実装することにより、基本配置LのLED素子12を直列接続し、基本配置Lの単位で並列接続することが可能になる。
【0061】
(LED素子12)
図2に戻る。LED素子12は、直方体形状のチップLEDからなり、直方体形状の長手方向の一端部にアノード端子が配置され、他端部にカソード端子が配置される。このため、LED素子12は、アノード端子とカソード端子とが互いに対向する方向、すなわち、直方体形状の長手方向がアルミ基板11の長尺方向に対して直角になる方向に向けて実装部112に実装される。本実施形態においては、LED素子12のアノード端子が半田付け等によって配線部111aに固定接続され、LED素子12のカソード端子が半田付け等によって配線部111bに固定接続される。これにより、複数のLED素子12は並列に接続される。
【0062】
複数のLED素子12は、赤色、青色、緑色及び白色の4種類の混色光で発光可能である。これにより、被照射植物(LED素子12からの照射対象となる植物)の育成に適したスペクトル光を実現できる。
【0063】
被照射植物の種類は、特に限定されないが、被照射植物は、光量を要する果菜類、花卉類であることが好ましい。被照射植物が果菜類、花卉類であることにより、LED素子12が照射する光の4種類の混色光による光合成促進がもたらす生産性向上の効果を見込み得る。
【0064】
被照射植物は、野菜類の中でも果菜類であることがより好ましい。「果菜類」とは、野菜のうち、果実又は種実を食用にするものをいい、例えば、トマト、きゅうり、かぼちゃ、なす、イチゴ、メロン、すいか等が挙げられる。被照射植物が果菜類であることにより、LED素子12が照射する光のうち、青色光による茎の伸張成長(徒長)が抑制され、同時に横方向への肥大と赤色光による発芽促進及び早期の花芽形成効果を見込み得る。また、LED素子12が照射する光のうち、緑色光による葉の内部への光吸収量の向上による光合成速度の増加効果を見込み得る。更に、LED素子12が照射する光のうち、昼光色の光による赤色、青色、緑色の光強度不足を補うことで光合成速度を増加させ、光合成産物の葉や茎や根への蓄積が増加となり、光合成産物の果実への転流と分配が適切に行われ、早期収穫と収量の増加が見込み得る。
【0065】
被照射植物は、果菜類の中でもトマト及び/又はイチゴであることが特に好ましい。被照射植物がトマト及び/又はイチゴを含むことにより、LED素子12が発光する昼光色の光がもたらす白色光は、視認性が良く収穫時の果実の表皮色を見て熟成度を推し量ることができる。
【0066】
果菜類の育成に適したスペクトルの実現に関し、発光素子のうち被育成植物へ照射する所定発光素子において、所定発光素子の数N、所定発光素子のうち赤色に発光可能な素子の数N、所定発光素子のうち青色に発光可能な素子の数N、所定発光素子のうち緑色に発光可能な素子の数N、及び所定発光素子のうち白色に発光可能な素子の数Nは、式(1)ないし(5)を充足する。
=N+N+N+N (1)
≦N/N≦U (2)
≦N/N≦U (3)
≦N/N≦U (4)
≦N/N≦U (5)
【0067】
赤色に発光可能な素子の比率のN/Nは、36/216であることが好ましい。これにより、よりいっそう、開花の促進と実付きの改善とをよりいっそう両立することを見込み得る。N/Nを36/216とする理由は光子を多く含む赤色光ではあるが、青色光と緑色光よりも光強度が低いために光強度を増やすためである。
【0068】
青色に発光可能な素子の比率のN/Nは、18/216であることが好ましい。これにより、よりいっそう光合成が促進することを見込み得る。これを更にいっそう促進し、植物の茎の伸長抑制と肥大成長を更にいっそう改善することを見込み得る。
【0069】
緑色に発光可能な素子の比率のN/Nは、18/216であることが好ましい。これにより、よりいっそう植物の光利用効率を高め、光合成速度を増加させ光合成産物の増加を見込み得る。更に白色光強度(高輝度白色光LEDチップ)を高めて葉の表面が光飽和点に達した場合、葉の裏側での光合成速度を増やすことを見込み得る。
【0070】
白色に発光可能な素子の比率のN/Nは、144/216あることが好ましい。これにより、赤、緑、青の各色単色光の混合色白色光の光強度不足を光強度が高い白色に発光可能な白色単色光素子が光量不足を補うことにより、光合成速度が増加し、栽培期間の短縮と安定した果実の収量の増加が見込める。また、これら4色の素子から発光する混色光は演色性の高いRa95の昼光色光であり、視認性を高めることを見込み得る。これにより、栽培過程における葉面の病害発見と実の色付きによる成熟度合いの判別精度向上とをよりいっそう両立することを見込み得る。
【0071】
なお、N/N、N/N、N/N、N/Nの値は上述したものであることが好ましいが、N/N、N/N、N/N、N/Nの値に幅があってもよい。N/Nの値の下限値Lが28/216、N/Nの値の上限値Uが44/216、N/Nの値の下限値Lが14/216、N/Nの値の上限値Uが22/216、N/Nの値の下限値Lが14/216、N/Nの値の上限値Uが22/216、N/Nの値の下限値L128/216、N/Nの値の上限値U160/216、の範囲であれば、上述した効果が見込み得る。
【0072】
各色の素子の数が上述の下限及び上限並びに式(1)ないし(5)を充足することにより、赤色に発光する素子の数、青色に発光する素子の数、緑色に発光する素子の数及び白色に発光する素子の数が上述の下限及び上限並びに上記(1)ないし(5)の式を満たす比率となる。これにより、光合成に必要な赤色発光及び青色発光と、植物の葉の内部への光吸収量を増す緑色発光と、を兼ね備えた本発明特有のスペクトルの光を植物に照射することが可能になり、果菜類の促成栽培と果実の収量の増加に適した植物育成用照明装置を提供することができる。
【0073】
しかも、上記(1)ないし(5)の式を満たす比率で所定発光素子が各色に発光することにより、これらの単色光の混色光が太陽光に近い昼光色の視認性の高い白色光になる。この昼光色光は短期間栽培と果実の収量の増加となる光質のスペクトル光と高い光強度の光源であり、より光合成速度を増加させ、葉と茎と根へ蓄積(ソース)される光合成産物が、果実(シンク)へ分配と転流を促進する。
【0074】
複数のLED素子12における赤色、青色、緑色に発光するLED素子12は単色発光素子であり、単色発光素子は、調色可能な蛍光体発光素子をそれぞれの色で発光させた場合より強い単色光を照射できる。これにより、光合成に必要な赤色発光及び青色発光と、植物の葉の内部への光吸収量を増す緑色発光と、をよりいっそう兼ね備えた光を植物に照射することが可能となる。
【0075】
また、単色発光素子を用いることは、植物、特に果菜類、花卉類の育成に適したスペクトルを実現する点にも寄与する。複数の色の単色発光素子を組合せたものは、同数の白色発光素子を並べたものより単色発光素子それぞれが提供する波長域において、より鋭いピークスペクトルを有する。よって、単色発光素子を用いることにより、果菜類、花卉類の栽培により適したスペクトルを実現できる。
【0076】
また、所定発光素子が単色発光素子と白色発光素子との組合せであれば、発光素子を調色する制御手段等を備えた複雑な構成とすることを防ぎ得る。
【0077】
以下、LED素子12が単色光LED素子と白色光LED素子との組合せである場合について説明する。本実施形態の記載に接した当業者であれば、調色可能な発光素子を含む植物育成用照明装置についても、同様に構成可能であろう。
【0078】
なお、以下の説明において、図2に示すように、赤色に発光するLED素子12を赤色LED素子12R、青色に発光するLED素子12を青色LED素子12B、緑色に発光するLED素子12を緑色LED素子12G、青色LED素子と黄蛍光体との組合せで生成する白色に発光するLED素子12を白色LED素子12Wと称する。LED照明装置1が照射する光のCIE表色系(CIE RGB色空間)における色比は、消費電力のワット数の大小に関わらず、赤(R)15%:緑(G)79%:青(B)6%から赤(R)19%:緑(G)76%:青(B)5.0%までの範囲とする。
【0079】
本実施形態によれば、LED素子12として、例えば、SMD5730型のチップLEDが適用される。このチップLEDは、縦幅が5.7mm、横幅が3.0mmの略長方形であり、正極及び負極の両端子が互いに対向する方向がチップLEDの長手方向と略一致する。なお、LED素子12としては、35ルーメン/ワットと同等又はそれ以上の発光効率の素子であれば適用可能である。
【0080】
本実施形態において、チップLEDの正極及び負極の両端子が互いに対向する方向と発光素子を配する向きとは、略直交することが好ましい。これにより、隣り合うチップLEDの間に配線等を配置する必要がなくなる。よって、チップLEDの発光部位間の間隔を短くすることが可能になる。これにより、更に照射光の色むらの少ない昼光色の光色を実現することができる。
【0081】
LED素子12がアルミ基板11の実装部112に実装された場合、隣り合うLED素子12、12において縦方向に延びる側面が互いに対向するように配列され、しかも互いに対向する側面の間に配線がないことが好ましい。このような配置では、LED素子12の正極及び負極の両端子が互いに対向する方向がアルミ基板11の長尺方向に沿うように、LED素子12を一列に配列するよりも、隣り合うLED素子12、12における発光部位間の間隔を短くすることができる。
【0082】
本実施形態のLED照明装置1は、図2に示すように、所定数以下の所定発光素子を有する基本配置Lを複数配した発光部を含んでおり、この基本配置Lにおいて、上記(1)ないし(5)の式を満たす比率が達成される。よって、LED照明装置1が照射する範囲全体より狭い範囲に照射する基本配置Lにおいて、果菜類の促成栽培に適した本発明特有のスペクトルの光を実現できる。
【0083】
このような照射光を、色むらなく一定の光量を1日あたり16時間連続照射することで、光合成量及び光合成速度を増加させる光を適切に照射することが可能になり、植物の生育を早めることができる。なお、長日植物、短日植物については植物の生育特性に合わせて照射時間を調整してもよい。
【0084】
また、上述の基本配置Lを配した構成では、基本配置Lにおいて、果菜類の栽培に適した本発明特有のスペクトルの光を実現できるため、照射光の色むらを低減する意図で、LED照明装置1を被育成植物から離す必要がなくなる。これにより、植物育成用照明装置を被育成植物のより近くに配置することで多段式人工光栽培の照射効率の向上と棚間スペースの有効利用ができる。
【0085】
また、上述した所定数、すなわち基本配置LのLED素子12の数は、12個に限定される。詳細については後述するが、12個のLED素子12によって、(1)ないし(5)式を満たす基本配置Lを実現することができる。このため、LED基板10に実装されるLED素子12の数を12の倍数とすることにより、(1)ないし(5)式を満たすLED基板10を実現することが可能になる。所定数を上述のように定めることにより、果菜類、花卉類のスペクトル構成と光強度が実現し、光合成速度を増加させる。
【0086】
この基本配置Lは、発光部において、赤色発光素子が略同一の間隔で配され、青色発光素子が略同一の間隔で配され、緑色発光素子が略同一の間隔で配され、赤色発光素子、青色発光素子、及び緑色発光素子を含む色付き発光素子が略同一の間隔で配されることが好ましく、アルミ基板11は、上述した配置を容易に構成可能な配線であることが好ましい。
【0087】
上述の基本配置Lでは、発光部において、各色の発光素子が略同一の間隔で配されるため、照射光の色むらをよりいっそう低減できる。しかも、上述の基本配置Lによれば、発光部において、赤、緑、青の各単色光発光素子が略同一の間隔で配されるため、赤、緑、青の各単色光発光素子の間に白色単色光発光素子が配される配置となり、葉全体に均一に照射できる混合色白色光が実現できる。
【0088】
以下、各色の発光素子の数が(1)ないし(5)式を満たし、12個の発光素子(LED素子12)を含む基本配置Lを複数配した発光部(LED基板10)を有する構成の一例について、図2を参照しながら説明する。
【0089】
複数のLED素子12は、アルミ基板11に、白色LED素子12W、赤色LED素子12R、2個の白色LED素子12W、緑色LED素子12G、2個の白色LED素子12W、赤色LED素子12R、2個の白色LED素子12W、青色LED素子12B、白色LED素子12W、の並びを基本配置Lとし、この基本配置Lを18個繋げることで、合計216個のLED素子12が直線状に実装される。すなわち、216個のLED素子12における赤色LED素子12Rの数と青色LED素子12Bの数と緑色LED素子12Gの数と白色LED素子12Wの数との比は2:1:1:8である。
【0090】
上述の構成では、N=216、N=36、N=N=18、N=144である。よって、上述の構成におけるN、N、N、N、Nは、式(1)ないし(5)を満たす。また、上述の構成は、12個のLED素子12を含む基本配置Lを18個配置した発光部を構成している。該発光部において、赤色LED素子12R、青色LED素子12B、緑色LED素子12G、白色LED素子12Wのそれぞれは、略同一の間隔で配されている。
【0091】
また、式(1)ないし(5)を満たす他の構成として、被照射植物の種類、栽培ステージ、栽培において重視する目標、等に応じて、色付き発光素子の数を増減した構成が挙げられる。例えば、赤色LED素子12Rの数を増やすことにより、光強度が高まり、よりいっそう花芽形成を促進することを見込み得る。青色LED素子12Bの数を増やすことにより、よりいっそう茎の伸長を抑え棚高の制限がある人工光型多段栽培に相応しいことを見込み得る。緑色LED素子12Gの数を増やすことにより、よりいっそう光利用効率を高めることを見込み得る。白色LED素子12Wの数を増やすことにより、よりいっそう光強度を高めることを見込み得る。
【0092】
更に、式(1)ないし(5)を満たす他の構成として、被照射植物の種類・配置・形状等に応じて、基本配置Lを配する数を変更し、所望の大きさの発光部とする構成が挙げられる。
【0093】
隣り合うLED素子12、12の間隔、すなわち互いに対向するLED素子12、12の側面の間隔は1.8~2.8mmが望ましい。本実施形態によれば、本体サイズが1150mm(基板1146mm)、LED照明の消費電力が18W、216チップのLED照明装置1である。ここで、チップLEDの横幅が3.0mmであることから、隣り合うLED素子12、12の間隔は2.0~2.3mmに設定されている。
【0094】
なお、図1ないし図3に示す例においては、電源装置に対してLED基板10の複数のLED素子12が並列に接続されているが、直列接続であってもよい。
【0095】
また、上述した実施形態によれば、LED本体サイズ1150mm18W(基板1146mm)チップ列1列216個(赤2:緑1:青1:白8 ×18)のLED照明装置1であるが、式(1)ないし(5)を満たすRGBWの4色のLED照明装置1であれば、本発明の範囲に属する。例えば、次の例1~4のLED照明装置も本発明の範囲に属する。
例1.LED本体サイズ850mm14W(基板846mm)チップ列1列168個(赤2:緑1:青1:白8 ×14)
例2.LED本体サイズ550mm9W(基板546mm)チップ列1列120個(赤2:緑1:青1:白8 ×10)
例3.LED本体サイズ1150mm36W(基板1146mm)チップ列2列432個(赤2:緑1:青1:白8 ×36)
例4.LED本体サイズ850mm28W(基板846mm)チップ列2列336個(赤2:緑1:青1:白8 ×28)
例5.LED本体サイズ550mm18W(基板546mm)チップ列2列120個(赤2:緑1:青1:白8 ×20)
LED本体サイズ1150mmのLED照明装置1は、棚板規格サイズ1200mm用である。LED本体サイズ850mmのLED照明装置1は、棚板規格サイズ900mm用である。LED本体サイズ550mmのLED照明装置1は、棚板規格サイズ600mm用である。
【0096】
また、上述した実施形態によれば、SMD2835型のLEDチップを用いているが、他のLEDチップであってもよい。例えば、35ルーメン/ワットと同等又はそれ以上であれば、SMD2035型、SMD3030型のLEDチップであってもよい。
【0097】
また、上述した実施形態によれば、複数のLEDチップが、LEDチップの長手方向に対して直角方向に並ぶように配列(横並び)されているが、本発明は、複数のLEDチップが、LEDチップの長手方向に沿って配列(縦並び)されているものを除外するものではない。
【0098】
図6は、LED照明装置1の発光スペクトルを示す図である。図6において、横軸は波長であり、縦軸は相対発光強度値である。図6に示すように、LED照明装置1の照射光のスペクトルは、440~460nmの範囲に第1のピーク波長と、510~530nmの範囲に第2のピーク波長と、640~660nmの範囲に第3のピーク波長を有しており、第2波長と第3波長の相対発光強度はほぼ同じで、第1ピーク波長は第2ピーク波長と第3ピーク波長の約1.6倍である。440~460nmは青色に相当し、510~530nmは緑色に相当し、640~660nmは赤色に相当する。このように、本実施形態のLED照明装置1は、光合成に必要な赤色と青色、葉の内部の光飽和に達していない葉緑体の光合成を駆動する緑色の波長の光を果菜類、花卉類の育成に適した割合で含む、本発明特有のスペクトルの光を照射することが可能になる。
【0099】
また、図6には、LED照明装置1において斜面部25及び反射面26がないヒートシンク20にLED基板10を装着したLED照明装置の発光スペクトルと、白色LED素子のみが実装されたLED基板を有するLED照明装置の発光スペクトルと、が合わせて示されている。
【0100】
図6に示すように、赤色、緑色、青色、白色のLED素子12を使用しているLED基板10による発光の方が、白色LED素子のみが実装されたLED基板による発光より、約660nmの波長の光、すなわち赤色波長領域の光量が多いことがわかる。また、反射面26がある場合と無い場合とを比較すると、ピークとなる波長がほぼ同じであるが、発光強度は、反射面26がある場合の方が大きいことがわかる。このように、赤色、緑色、青色、白色のLED素子12を使用することにより、光合成に必要な赤色と青色、植物の光利用効率を高める緑色の波長の光を果菜類、花卉類の育成に適した割合で含む、本発明特有のスペクトルの光を照射することが可能になる。また、反射面26を有することにより、LED素子12が発光する消費電力を増やすことなく、植物に照射する光量を増やすことが可能になる。よって照明器具として効率化、省電力化を図ることが可能になる。
【0101】
また、LED照明装置1は、赤色、緑色、青色、白色のLED素子12を上述したように配列したことによって、発光する光色は太陽光に近い昼光色(演色Ra95)となった。これにより、植物生育の速度が速まるとともに人工光型植物工場内における作業者による植物の視認性を向上させることが可能になる。また、LED照明装置1は、LED素子12の配列に規則性を持たせたことにより、照射光の色むらを低減することが可能になる。本実施形態によれば、照射対象に対して15~20cm程離れた所から光を照射しても、照射光の色むらが確認されなかった。
【0102】
また、詳細については後述するが、実際に、トマトの播種から、本実施形態のLED照明装置1を1棚あたり3本用いて一定の気温と湿度と二酸化炭素濃度の下、1日あたり光を16時間照射しながらLED光栽培を行ったところ、果実が熟成するまで栽培期間が70~74日程度に短縮できた。ここで、試験栽培で播種したトマトの種子は、太陽光下のハウス栽培では、果実ができるまで100日程かかるものであることから、3割ぐらい早く果実ができることがわかった。また、本実施形態のLED照明装置1を使用した場合、白色光のみのLED照明装置を用いた場合と比較して、第1花房につくトマト実の数の割合も従来に比べて10~20%程多いことがわかった。
【0103】
本実施形態のLED照明装置1が照射する光のスペクトルは、色温度6500ケルビン、演色Ra95に相当し、赤色、青色、緑色それぞれに対応するピークを有する。赤色、青色、緑色それぞれに対応する単色発光素子を設けたことにより、当該スペクトルは、各色に対応するピーク、特に緑色・赤色に対応するピークの鋭さにおいても、従来の植物育成用照明装置のスペクトルと異なる。これにより、果菜類であるトマトの光合成速度、光合成産物、花芽形成をよりいっそう増すことができる。第一花房着生葉位は施設園芸ハウス栽培においては第8葉と第9葉の間であるが、本実施形態のLED照明装置1は第5葉と第6葉の間と低位となり結実までの期間と収量とを大幅に改善できたものと考えられる。
【実施例
【0104】
次に、本実施形態のLED照明装置1を使用した栽培試験について説明する。
【0105】
〔試験方法及び条件〕
栽培試験として選定した植物は、人工光で栽培ができる矮性低段ミニトマトと種子繁殖型イチゴ「よつぼし」とした。これは従前の閉鎖型植物工場において主体はレタスをはじめとした葉菜類であり、イチゴ、トマトなどの果菜類の収穫までの植物工場は少ない。その理由は播種から収穫までの栽培期間が葉菜類と比較して長いことにある。加えて、葉菜類よりも光量が必要で電力使用料が多く、費用対効果が見合わないことにある。
【0106】
そこで、果菜類の栽培期間の短縮と果菜類の最適なスペクトルを見出すことを目的に次の条件で栽培試験を行った。
【0107】
まず、矮性低段ミニトマトを播種した25mm角の発芽用スポンジと、矮性低段ミニトマトを播種した25mm角の発芽用スポンジと、を用意する。播種した発芽用スポンジは、栽培棚に載置される。
【0108】
栽培棚は、高さが20cmと40cmとの2種類用意する。発芽から草丈15cmまでの生育期間は高さが20cmの栽培棚を使用し、草丈15cmから草丈25cmまでの生育期間は高さが40cmの栽培棚を使用する。
【0109】
栽培棚の上面にLED照明装置を配置する。1棚あたりのLED照明装置は3本とする。1日当たりのLED照明装置による照明時間は16時間とする。
【0110】
LED照明装置は、次の4種類を用意した。
(1)白色高輝度LED照明、反射板なし(以下、白色光源反射板なし照明と称する)
素子サイズSMD2035型の高輝度白色LED素子168チップを横1列実装、消費電力18W、ル-メン値2800LM、演色RA82、色温度5000K
(2)白色高輝度LED照明、反射板有り(以下、白色光源反射板有り照明と称する)
素子サイズSMD2035型の高輝度白色LED素子168チップを横1列実装、消費電力18W、ル-メン値3050LM、演色RA82 色温度5000K
(3)RGBW4色混色光源白色LED照明、反射板なし(以下、4種類混色光反射板なし照明と称する)
素子サイズSMD2835型、赤色、緑色、青色、白色のLED素子及び高輝度白色LED素子216チップを縦1列実装、消費電力18W、ル-メン値2300LM、演色RA95 色温度6100K
(4)RGBW4色混色光源白色LED照明、反射板有り(以下、4種類混色光反射板有り照明と称する)
素子サイズSMD2835型、赤色、緑色、青色、白色のLED素子及び高輝度白色LED素子216チップを縦1列実装、消費電力18W、ル-メン値2600LM、演色RA95、色温度6200K
【0111】
上述した4種類のLED照明装置において、4種類混色光反射板有り照明が本実施形態のLED照明装置1に相当する。
【0112】
図7は、栽培棚における棚面の光の分布を示す図である。図7に示す数値は、光合成有効光量子束密度(photosynthetic photon flux density 以下PPFD値と呼ぶ)である。光合成有効光量子束密度とは、光合成に必要とされる400~700nmの波長に含まれる単位時間、単位面積あたりの光子数のことで、人工光による植物栽培においては、光合成に有効である光合成色素(クロロフィルとカロテノイド)に吸収される必要があり光強度の目安として使われている。PPFD値の単位はμmol・m-2・s-1である。図7に示すように、光量は、4種類混色光反射板有り照明が最も高く、以下、白色光源反射板有り照明、4種類混色光反射板なし照明、白色光源反射板なし照明の順で低くなることが分かる。すなわち、反射板(反射面26)によって光量が補われていることが分かる。
【0113】
そして、図7に示す環境下に、矮性低段ミニトマトを播種した25mm角の発芽用スポンジ、及び種子繁殖系イチゴ「よつぼし」を播種した25mm角の発芽用スポンジを載置して、生育試験を行った。
【0114】
〔矮性低段ミニトマトの試験結果〕
播種から発芽までは4種類のLED照明において差異は見られず、1週間以内に90%以上が発芽した。
【0115】
・栄養成長期(播種~開花)
(白色光源反射板なし照明)
発芽から40日目で第8葉目の葉の上の第1花房に蕾2個と開花1輪、葉と葉の間の茎はやや伸長し、茎は細い。
(白色光源反射板有り照明)
発芽から40日目で第8葉目の葉の上の第1花房に蕾4個と開花2輪、白色光源反射板なし照明よりも葉の面積が多いが、白色光源反射板なし照明と同様に葉と葉の間の茎は伸長し、茎はやや太め。
(4種類混色光反射板なし照明)
発芽から35日目で第6葉目の葉の上の第1花房に蕾2個と開花1輪、白色光源反射板有り照明と同様に葉の面積が多く、葉と葉の間の茎は短く、茎はやや太めで株張りがよい。
(4種類混色光反射板有り照明)
発芽から35日目で第6葉目の葉の上の第1花房に蕾4個と開花2輪、白色光源反射板有り照明と同様に葉の面積が多く、葉と葉の間の茎は短く、茎はやや太めで株張りがよい。
【0116】
・生殖成長期(開花~結実~収穫)
(白色光源反射板なし照明)
発芽から50日目で第1花房に開花2輪と結実1個、葉と葉の間の茎はやや伸長し、茎は細い。
発芽から60日目で第11葉目の葉の上の第2花房に蕾2個と開花3輪、葉と葉の間の茎はやや伸長し、葉の一部が黄化。
発芽から80日目で第1花房から果実3個を収穫。第2花房は結実5個。第2葉までは落葉。
(白色光源反射板有り照明)
発芽から50日目で第1花房に開花4輪と結実2個、葉と葉の間の茎はやや伸長し、茎はやや太くなる。
発芽から60日目で第11葉目の葉の上の第2花房に蕾6個と開花4輪、葉と葉の間の茎は伸長し、第14葉目の上に第3花房が8個の蕾が形成。
発芽から80日目で第1花房から果実6個を収穫。第2花房ではやや小ぶりで結実10個となる。第3花房では小ぶりで8個結実。第2葉までは落葉。

(4種類混色光反射板なし照明)
発芽から45日目で第1花房に開花2輪と結実1個、葉と葉の間の茎はやや伸長し、茎はやや細い。
発芽から55日目で第9葉目の葉の上の第2花房に蕾6個と開花4輪、葉と葉の間の茎は伸長し、第12葉目の上に第3花房が8個の蕾が形成。
発芽から75日目で第1花房から果実3個を収穫。第2花房では結実10個となる。第3花房が結実8個となる。
(4種類混色光反射板有り照明)
発芽から45日目で第1花房に開花4輪と結実2個、葉と葉の間の茎はやや伸長し、茎は太い。
発芽から55日目で第9葉目の葉の上の第2花房に蕾6個と開花4輪、葉と葉の間の茎は伸長し、第12葉目の上に第3花房が蕾8個形成。
発芽から75日目で第1花房から果実6個を収穫。第2花房ではやや小ぶりの結実10個となる。第3花房では8個結実。
【0117】
〔考察〕
(生育について)
白色光源反射板なし照明については、栄養成長期において葉がやや細葉ではあるが、順調な生育である。
生殖成長期において開花はするが、結実した実が成熟前に落下しやすい。収穫数は少なく果実は直径20mm前後で小さい。葉も黄化し、葉面の緑はやや薄い。
白色光源反射板有り照明については、栄養成長期において葉は旺盛に生育するが、やや茎が細く徒長気味である。生殖成長期においては第1花房の果実は大きく直径25~30mm前後あるが、第2花房の果実は直径15mm~20mmと小さい。
4種類混色光反射板なし照明については、栄養成長期おいて葉は旺盛に生育する。茎はやや細いが葉面が広い。生殖成長期においては第1花房の実は大きく直径30mm前後あるが、第2花房の果実は直径20~25mmとやや小さい。
4種類混色光反射板有り照明については、栄養成長期において葉は旺盛に生育する。茎は太く葉面が広い。生殖成長期においては、第1花房の実は大きく直径30mm前後あるが、第2花房の果実は直径20~25mmとやや小さい。他の照明よりも収穫量が多い。
(収穫量(重量ベース)について)
4種類混色光反射板有り照明>4種類混色光反射板なし照明>白色光源反射板有り照明>白色光源反射板なし照明。
白色光源LED照射の場合、葉面の緑の色が薄く、葉はやや細葉であり、太陽光下の生育よりも光合成産物の形成がやや劣ると思われ、花芽形成は順調ではあるが、果実が成熟する前に果実が落ちやすい。
4種類混色光LED照射の場合、第1葉と第2葉の葉面の緑の色が濃く、葉は広く、葉面積(高い受光率)が有り、十分な光合成産物が形成されていると思われる。
【0118】
〔種子繁殖系イチゴ「よつぼし」の試験結果〕
播種から発芽まで、個体差が有り、播種後発芽まで1週間から2週間かかり生育差があるため、本葉が出現した時点を栽培開始日とした。
【0119】
・栄養成長期(本葉~ランナー形成)
(白色光源反射板なし照明)
生長はせず、葉は白色化し、枯死。
(白色光源反射板有り照明)
本葉出現から60日目でランナーが2本出現、葉は10枚から11枚。
個体差があり、葉面にクロロシスが出現して葉面の緑の色が薄く、生長が鈍化して栽培中止した個体がある。
(4種類混色光反射板なし照明)
本葉出現から60日目でランナーが2本出現、葉は10枚。植物体の重量20g(培地25mm角のスポンジ重量を含む)。
(4種類混色光反射板有り照明)
本葉出現から60日目でランナーが2本出現、葉は11枚。植物体の重量22.5g(培地25mm角のスポンジ重量を含む)。葉面は4種類混色光反射板なし照明による葉面よりも大きい。
【0120】
なお、イチゴ「よつぼし」は種子繁殖系イチゴであり、長日性がある。このため、イチゴ「よつぼし」の本栽培試験において果実の形成までに至っていない。しかしながら、4種類混色光照明の場合が白色光源照明の場合よりも、収穫量が少なくなることはないということは、ここまでの実験結果で容易に推測可能である。また、ここまでの比較試験においては、1日あたりの照射時間を16時間の一定の照射であったため、花芽形成が葉芽形成となりランナーの出現となった。イチゴ(種子繁殖系)の人工光栽培における花成誘導技術は高度であり、詳細な説明は省略するが、本発明のLED照明に適した花芽形成に関する照射時間の変更及び気温、二酸化炭素濃度、肥料成分などを変化させる環境制御を行なえば、過去の試験結果から播種後110日~120日前後で果実の収穫の実現が見込まれる。
【0121】
〔考察〕
上述のイチゴ「よつぼし」の栽培試験は途中経過であるが、これまでに実施した栽培試験により、白色光源反射板付きのLED照明を使うよりも、4種類混色光反射板付きLED照明の方に優位性があることが分かる。また、果実収穫を目的の栽培以外でも、4種類混色光反射板有り照明は施設園芸ハウス栽培向けの苗生産の用途として苗生産栽培装置に適用できる。施設園芸ハウス栽培において、播種から定植苗(クラウン8mm以上)の生産は約3ケ月を要するが、4種類混色光反射板付きのLED照明装置を使用すれば、播種から定植苗まで70日前後の育苗で安定生産ができ、施設園芸ハウス栽培での育苗期間よりも20日前後、栽培期間の短縮ができる。更に施設園芸ハウス栽培においての育苗は数回の農薬散布を要するが、植物工場クリーンルーム内で本件、4種類混色光反射板付きのLED照明装置を使用すれば、イチゴ栽培に多く発生する炭疽病などの病害は発生することは無く、無農薬もしくは農薬散布の頻度を抑える事ができる。病害が発生しない理由は、光合成が健全に行われることにより、病害に対する抵抗力(病害抵抗性)がついたと推測される。
【0122】
図8は、4種類のLED照明装置を使用した栽培試験における種子繁殖系イチゴ「よつぼし」の生長具合を示す写真である。図9は、4種類のLED照明装置を使用した栽培試験における矮性低段ミニトマトの生長具合を示す写真である。図10は、図9の撮影を行ってから9日後の矮性低段ミニトマトの生長具合を示す写真である。図8図10において、左側から白色光源反射板なし照明、白色光源反射板有り照明、4色反射板なし照明、4色反射板有り照明の順に並べられている。図8図10に示されているように、4種類混色光LEDを使用した苗が良好に生育していることが明らかである。
【0123】
これまでにおいては、イチゴ、トマトなどの果菜類又は花卉類はPPFD値300~350μmol・m-2・s-1の光量を要するが、4種類混色光反射板有り照明で栽培すれば、200~300の値で栽培が可能である。これは葉緑体のすべてを光飽和点に達するには強い光強度を要するのに対し、緑色光を加える事で吸収の良いスペクトル光と吸収の良い照射光の色むらの無い均一な光照射により葉全体の大半の葉緑体が光飽和点に達していると考えられる。また、図7において、白色光源反射板有り照明の場合と4種類混色光反射板有り照明の場合とのように、同じようなPPFD値であってもスペクトル光の光質の違いで生育速度に大きな違いが生じることが分かる。
【0124】
特に、矮性低段ミニトマトの栽培試験の結果、トマトにおいては赤色光もしくは緑色光のいずれかの光質が第1葉と第2葉の葉面積の拡大に影響を及ぼしていることがわかる。第1花房の開花直前ステージの草姿を比較した場合、第1葉と第2葉は本発明の混色光を植物体に照射した場合と白色単色光を植物体に照射した場合の葉面積の展開が異なる。本発明の混色光を照射した植物体は、第1葉と第2葉は葉面積の拡大が見られるが、白色単色光を照射した植物体の第1葉と第2葉は、葉面積の拡大があまりないままである。もしくは落葉する個体がある。また茎の肥大性を見ても、本発明の4種類混色光を照射した植物体の茎の直径が平均して約7mmに対して、白色単色光を照射した植物体の茎の直径が平均して約5.5mmであった。これは本発明の4種類混色光が白色単色光と比べて赤色光と緑色光の光強度が高いことと、第1葉、第2葉は第3葉から第6葉の影になり、LED光の特性である一方向にまっすぐに発光するために、陽葉となる第3葉から第6葉へ赤、青光が吸収され、第3葉から第6葉に吸収されなかった緑色光が陰葉となる第1葉と第2葉で吸収されたこととが、葉面積の拡大につながったと考えられる。すなわち、葉面積の拡大は受光率を高め光合成により、葉や茎に蓄えられた光合成産物が増加していると言える。
【0125】
[作用効果]
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、赤色LED素子12Rの数、青色LED素子12Bの数、緑色LED素子12Gの数及び白色LED素子12Wの数の比が式(1)ないし(5)を満たす比であることにより、光合成に必要な赤色発光及び青色発光と、植物の光利用効率を増す緑色発光と、これら単色光の光強度を補う白色光とを果菜類の育成に適した割合で含む、本発明特有のスペクトルの光を植物に照射することが可能になり、トマトやイチゴによって例示される果菜類の栽培に適した照明を行うことができる。しかも、赤色LED素子12Rの数と青色LED素子12Bの数と緑色LED素子12Gの数と白色LED素子12Wの数とが式(1)ないし(5)を満たす比率であることにより、植物の光合成が最大に活動できる昼光色を発光するLED照明装置1を提供することができる。また、LED素子12を使用することにより省電力化を図ることができる。
【0126】
また本実施形態によれば、LED基板10が、2個の赤色LED素子12R、1個の青色LED素子12B、1個の緑色LED素子12G及び8個の白色LED素子12Wによる基本配置Lを、複数繰り返す配列であるため、太陽光に近くしかも均一な混合色の光色を実現することができる。このように、均一な光を照射することで、光合成を促進させることが可能になり、植物の生育を促進することができる。
【0127】
ここで、本実施形態によれば、白色LED素子12Wを使用しているが、白色LED素子12Wを使用せずに、赤色LED素子12R、青色LED素子12B、緑色LED素子12Gの混色光によって白色を形成することができる。しかし、これら赤、緑、青の単色光による白色では光強度不足となる。すなわち、理論的に消費電力18Wで216チップのLED照明装置において、216チップが赤、緑、青チップの場合の総ルーメン値が約400ルーメン、216チップが本発明である赤、緑、青、白チップの場合の総ルーメン値が約2500ルーメンとなり、後者の光強度の方が大きい。このように本実施形態によれば、白色LED素子12Wを付加することによって、この光強度不足を補うことが可能になる。
【0128】
また本実施形態によれば、基本配置Lが、赤色LED素子12R、2個の白色LED素子12W、緑色LED素子12G、2個の白色LED素子12W、赤色LED素子12R、2個の白色LED素子12W、青色LED素子12Bの順に並ぶ配列を含む。これにより、基本配置Lにおいて植物の光合成が最大に活動できる均一な昼光色の光色を実現することができる。
【0129】
また本実施形態によれば、LED素子12がチップLEDからなり、LED素子12は、アノード端子とカソード端子とが互いに対向する方向、すなわちチップLEDの長手方向をアルミ基板11の長尺方向に対して直角方向に向けて配置されるため、チップLEDの発光部位間の間隔を短くすることが可能になる。これにより、基本配置Lにおいて植物の光合成が最大に活動できる均一な昼光色の光源を実現することができる。
【0130】
また本実施形態によれば、LED素子12から被育成植物への方向と異なる方向へ照射される光の少なくとも一部を被育成植物へ向けて反射可能な反射面26を2以上備える。これにより、複数のLED素子12が発生した光において、LED素子12から植物の方向へ向かわない向きの光(例えば、斜め方向の光)を反射して被育成植物に照射することができるようになり、複数のLED素子12が発生した光量を維持しながら効率よく被育成植物に照射することができる。よって、LED素子12が発光する消費電力を増やすことなく、被育成植物に照射する光量を増やすことが可能になる。したがって、反射面26を備えることにより、照明器具として効率化、省電力化を図ることが可能になる。
【0131】
また本実施形態によれば、図7に示すように、ヒートシンク20における収納部24の両側部に反射面26を設けることにより、LED素子からの散乱光を反射させて被育成植物に照射することができるため、より効率的に光を照射することが可能になる。なお、LED基板10を反射面26側に向けて、反射面26による反射光を被育成植物に照射するように構成してもよい。
【0132】
[変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限るものではない。
【0133】
例えば、上述した実施形態においては、複数のLED素子12を1列に並べているが、図11に示すようにLED基板10を2つ並べて複数のLED素子12を2列以上にしてもよい。このように、2列以上のLED素子12を備えることにより、植物に照射する光量を増やすことが可能になり、照明器具として効率化、省電力化を図ることが可能になる。また、2列以上にすることにより、多段棚栽培の棚高を植物体の伸長に比例して上げた場合、株元に近い葉の光量不足を解消できる。例えば、矮性ミニトマトの場合、第1花房着生葉位の草丈は約20cm、第2花房着生葉位は約30cmとなり、棚高30cm以上で最低PPFD値200μmol・m-2・s-1以上を維持するにはLED照明装置1の設置本数を増やすか、LED照明装置1が2列以上のLED素子12を備えることが望ましい。なお、図11に示す例では、LED基板10を2つ並べて複数のLED素子12を2列としているが、図12に示すように、アルミ基板11に複数のLED素子12を2列以上実装してもよい。
【0134】
図12は、変形例における1つのアルミ基板11に複数のLED素子12を2列実装する態様を示す説明図である。なお、図12に示すアルミ基板11において、図5に示すアルミ基板11と同一の部材或いは同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明については省略する。
【0135】
図12に示すアルミ基板11は、矩形の配線部111fを更に備えている。配線部111fは配線部111a及び配線部111bに接続されていない。図12に示すアルミ基板11は、図5に示すアルミ基板11よりも幅が大きなものとし、配線部111aと配線部111bとの間隔を拡げている。また、図12に示すアルミ基板11は、配線部111cにおいて、配線部111aの長尺方向に対して直角方向に延びる中央部を長くすることによって、配線部111aの長尺方向に沿って延びる配線部111cの一端部と他端部との間隔を拡げており、一端部が配線部111bに対向し、他端部が配線部111aに対向している。
【0136】
延出部111dと最初の配線部111cの一端部との間に最初の配線部111fが配置されている。また、最初の配線部111cの他端部と2番目の配線部111cの一端部との間に配線部111fが配置されている。以下同様に、配線部111cの他端部と次の配線部111cの一端部との間に配線部111fが配置され、23番目の配線部111cの他端部と延出部111eとの間に24番目の配線部111fが配置される。このように、配線部111aと配線部111bとの間に、1つの基本配置Lあたり24個の配線部111fが一列に配置される。これにより、延出部111dと最初の配線部111fとによって実装部112が形成され、最初の配線部111fと最初の配線部111cの一端部とによって実装部112が形成される。また、最初の配線部111cの他端部と2番目の配線部111fとによって実装部112が形成され、2番目の配線部111fと2番目の配線部111cの一端部とによって実装部112が形成される。以下同様に、N-1番目(Nは3以上23以下の自然数)の配線部111cの他端部とN番目の配線部111fとによって実装部112が形成され、N番目の配線部111fとN番目の配線部111cの一端部とによって実装部112が形成される。最後に、23番目の配線部111cの他端部と24番目の配線部111fとによって実装部112が形成され、24番目の配線部111fと延出部111eとによって実装部112が形成される。
【0137】
このように1つの配線部111fに対して2つの実装部112が並んで形成され、配線部111fが一列に並ぶことによって、2列の実装部112がアルミ基板11上に形成される。この2列の実装部112にそれぞれLED素子12を実装することにより、1つの基本配置Lにおいて48個のLED素子12が直列に接続され、基本配置Lの単位で並列接続することが可能になる。
【0138】
上述した実施形態においては、赤色、青色、緑色、白色のLED素子12を1列に並べているが、その並びの中に紫外線光LED素子(近紫外線光LED素子を含む)もしくは遠赤外線光LED素子もしくはこの両方のLED素子が含まれてもよい。或いは、アルミ基板11における赤色、青色、緑色、白色のLED素子12の列以外の任意の部位に、オンオフ可能な紫外線光LED素子もしくは遠赤外線光LED素子を設けてもよい。
【0139】
紫外線光LED素子においては、更に、人が栽培作業に携わらない時間帯のみ紫外線光LED素子の発光時間を制御可能にしてもよい。これにより、植物に悪影響を与えない程度の紫外線照射が可能になり、植物に付着した病気の原因となる菌やウィルスもしくは虫の卵を殺すことができる。したがって、人工光植物工場内もしくは人工光型苗生産装置において農薬を使用しない無病害虫苗の栽培が可能となる。
【0140】
また、植物工場のイチゴ栽培における受粉作業は、筆を用いた人の手による作業で行うことが可能である。しかし、筆を用いた人の手による作業では奇形果となりやすいことから、品質向上のためには受粉作業に送粉昆虫を用いることが望ましい。ここで、ミツバチ、マルハナバチなどの送粉昆虫は、近紫外線下で活発に動くことが知られている。そこで、イチゴの開花ステージにおいて近紫外線の照射が望ましい。これにより、LED照明装置1によって照明された環境下で送粉昆虫が活発に動くようになり、受粉作業を効率よく行うことが可能になる。
【0141】
ところで、図1に示すLED照明装置1による照明は、主に可視光領域の照明で有り、可視光領域の照明は植物生長の要因となる光合成の促進に寄与している。しかし、植物の光応答には光合成以外にも光形態形成がある。光形態形成は可視光域の光質と可視光域の光質以外にも近紫外線光、遠赤外線光を含む。可視光域の光質による人工光植物栽培では植物体の葉、茎が小さくなる傾向となる。これは遠赤外線光を含まないためである。
【0142】
一般的には生育には光合成おける遠赤外線においては植物の形状を左右する葉や茎の伸長は660nm(赤色光:R)と730nm(遠赤色光:FR)を中心とする二つの波長域に含まれる光子束比(R/FR比)と密接な関係があり、この値が大きいと葉面積や茎の背丈は小さくなる傾向がある。前述したように、植物体が光合成を行うにあたり葉面積の増加(受光率)が求められる。果菜類の光合成産物の蓄積のために光合成速度を増やし受光率を高めるには遠赤外線光を照射して光子束比の値を小さくすることで葉面積の増加と茎の伸長を促進効果が期待される。この光形態形成には近紫外線利用効果がある。例えば、イチゴの果実の着色が可視光域の光質ではやや劣るが、近紫外線光を熟成期に照射することによって果実の着色を鮮やかにさせることができる。同様にリーフレタスにおいては収穫直前に近紫外線を照射することで葉先を茶褐色に着色できる。
【0143】
また、本発明の実施形態では、植物工場のような屋内でのLED照明装置1の使用を想定しているが、屋外でのLED照明装置1の使用を除外するものではない。例えば、施設園芸ハウス栽培において、天候不良による日照不足の解消及び長日植物の開花調整として、LED照明装置1を照射してイチゴなどの果菜類及び菊などの花卉類に照射する光を補うことも可能である。
【0144】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
1 LED照明装置
10 LED基板
11 アルミ基板
111、111a、111b 配線部
112 実装部
12 LED素子
12B 青色LED素子
12G 緑色LED素子
12R 赤色LED素子
12W 白色LED素子
20 ヒートシンク
24 収納部
25 斜面部
26 反射面
L 基本配置
【要約】      (修正有)
【課題】低電気コストで果菜類の促成栽培及び果実の収量の増加が実現でき、視認性の高い昼白色光の光源で光合成に有効なスペクトル光と高い光強度で栽培ができる植物育成用照明装置を提供する。
【解決手段】植物育成用照明装置は、複数の発光素子12を備え、発光素子のうち被育成植物へ照射する所定発光素子において、所定発光素子の数N、所定発光素子のうち赤色に発光可能な素子の数N、所定発光素子のうち青色に発光可能な素子の数N、所定発光素子のうち緑色に発光可能な素子の数N、及び所定発光素子のうち白色に発光可能な素子の数Nは、式(1)ないし(5)を充足する。
=N+N+N+N(1)
≦N/N≦U(2)
≦N/N≦U(3)
≦N/N≦U(4)
≦N/N≦U(5)
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12