(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】超音波画像診断装置並びに超音波画像表示プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
A61B8/14 ZDM
(21)【出願番号】P 2022511218
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2021038791
【審査請求日】2022-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 稔道
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政太朗
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛太朗
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-290404(JP,A)
【文献】特開2007-325778(JP,A)
【文献】特開2018-121841(JP,A)
【文献】特開2012-075747(JP,A)
【文献】米国特許第8496589(US,B2)
【文献】米国特許第11311277(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対する超音波の送受信を行う送受信制御手段を備え、超音波の送受信によって得た反射波信号に基づいて、前記被検体内の様子を画像化し、過去に画像化して得た過去画像と今回画像化して得た現在画像とを表示画面上に並べて表示する超音波画像診断装置であって、
前記反射波信号に基づいて画像データを生成する画像処理手段と、
生成した前記画像データを前記過去画像として記憶手段に記憶させるとともに、前記過去画像を取得したときの超音波の送受信条件に係る設定情報を、前記過去画像に関連付けて前記記憶手段に記憶させる過去画像記憶手段と、
ユーザの指示を契機として、前記記憶手段に記憶されている複数の前記過去画像の中から1つの前記過去画像を選択する過去画像選択手段と、
選択した前記過去画像を前記表示画面上に表示させる画像表示手段と、
選択した前記過去画像に関連付けられている前記設定情報を呼び出し、呼び出した前記設定情報を再設定する設定情報再設定手段と
を備え、
前記画像処理手段は、
再設定された前記設定情報による条件で超音波を送受信することによって得た前記反射波信号に基づいて、前記現在画像となる前記画像データを生成可能であり、
各ピクセルごとの前記過去画像と前記現在画像との輝度差に応じて、前記現在画像の各ピクセルを有彩色に着色して表示する着色表示処理を行い、
前記着色表示処理では
、前記有彩色に含まれる赤成分、緑成分及び青成分のうち、暖色成分である赤成分の輝度値を、寒色成分である緑成分及び青成分とは異なる値に変更する処理を前記現在画像の各ピクセルについて行うことで、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも大きくなった場合に、
暖色系の有彩色に着色して表示し、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも小さくなった場合に、
寒色系の有彩色に着色して表示することにより、前記過去画像と前記現在画像との位置ずれの状況を表示し、
前記過去画像または前記現在画像をずらして着色部位を少なくする操作により、前記過去画像と前記現在画像とが位置合せ可能となるように構成されている
ことを特徴とする超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記過去画像記憶手段は、観察深度、受信ゲイン、ダイナミックレンジ、フォーカスポイント、周波数及び送信出力を含む複数の前記設定情報を、前記過去画像に関連付けて記憶させることを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
前記画像表示手段は、前記過去画像及び前記現在画像の近傍に、観察深度、受信ゲイン、ダイナミックレンジ、フォーカスポイント、周波数及び送信出力を含む複数の前記設定情報をそれぞれ付帯的に表示することを特徴とする請求項2に記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
プロセッサに、
被検体に対する超音波の送受信によって得た反射波信号に基づいて画像データを生成する画像処理ステップと、
生成した前記画像データを、過去に画像化して得た過去画像として記憶手段に記憶させるとともに、前記過去画像を取得したときの超音波の送受信条件に係る設定情報を、前記過去画像に関連付けて前記記憶手段に記憶させる過去画像記憶ステップと、
ユーザの指示を契機として、前記記憶手段に記憶されている複数の前記過去画像の中から1つの前記過去画像を選択する過去画像選択ステップと、
選択した前記過去画像を表示画面上に表示させる過去画像表示ステップと、
選択した前記過去画像に関連付けられている前記設定情報を呼び出し、呼び出した前記設定情報を再設定する設定情報再設定ステップと、
再設定された前記設定情報による条件で超音波を送受信することによって得た前記反射波信号に基づいて、今回画像化して得た現在画像となる前記画像データを生成する現在画像処理ステップと、
前記表示画面上に前記現在画像を前記過去画像と並べて表示する現在画像表示ステップと、
前記現在画像表示ステップ後に、各ピクセルごとの前記過去画像と前記現在画像との輝度差に応じて、前記現在画像の各ピクセルを有彩色に着色して表示する着色ステップと
を実行させるためのものであり、
前記着色ステップでは、
前記過去画像または前記現在画像をずらして着色部位を少なくする操作により、前記過去画像と前記現在画像とを位置合わせ可能とするために
、
前記有彩色に含まれる赤成分、緑成分及び青成分のうち、暖色成分である赤成分の輝度値を、寒色成分である緑成分及び青成分とは異なる値に変更する処理を前記現在画像の各ピクセルについて行うことで、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも大きくなった場合に、
暖色系の有彩色に着色して表示し、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも小さくなった場合に、
寒色系の有彩色に着色して表示することにより、前記過去画像と前記現在画像との位置ずれの状況を表示する
ことを特徴とする超音波画像表示プログラム。
【請求項5】
被検体に対する超音波の送受信によって得た反射波信号に基づいて画像データを生成する画像処理ステップと、
生成した前記画像データを、過去に画像化して得た過去画像として記憶手段に記憶させるとともに、前記過去画像を取得したときの超音波の送受信条件に係る設定情報を、前記過去画像に関連付けて前記記憶手段に記憶させる過去画像記憶ステップと、
ユーザの指示を契機として、前記記憶手段に記憶されている複数の前記過去画像の中から1つの前記過去画像を選択する過去画像選択ステップと、
選択した前記過去画像を表示画面上に表示させる過去画像表示ステップと、
選択した前記過去画像に関連付けられている前記設定情報を呼び出し、呼び出した前記設定情報を再設定する設定情報再設定ステップと、
再設定された前記設定情報による条件で超音波を送受信することによって得た前記反射波信号に基づいて、今回画像化して得た現在画像となる前記画像データを生成する現在画像処理ステップと、
前記表示画面上に前記現在画像を前記過去画像と並べて表示する現在画像表示ステップと、
前記現在画像表示ステップ後に、各ピクセルごとの前記過去画像と前記現在画像との輝度差に応じて、前記現在画像の各ピクセルを有彩色に着色して表示する着色ステップと
を含み、
前記着色ステップでは、
前記過去画像または前記現在画像をずらして着色部位を少なくする操作により、前記過去画像と前記現在画像とを位置合わせするために
、
前記有彩色に含まれる赤成分、緑成分及び青成分のうち、暖色成分である赤成分の輝度値を、寒色成分である緑成分及び青成分とは異なる値に変更する処理を前記現在画像の各ピクセルについて行うことで、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも大きくなった場合に、
暖色系の有彩色に着色して表示し、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも小さくなった場合に、
寒色系の有彩色に着色して表示することにより、前記過去画像と前記現在画像との位置ずれの状況を表示する
ことを特徴とする超音波画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して被検体内の様子を画像化する超音波画像診断装置並びに超音波画像表示プログラム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織(被検体)内の様子を画像化するための簡便で安全性の高い診断装置として、超音波画像診断装置がよく知られている。超音波画像診断装置では、通常、超音波の送受信によって得た信号によって画像を生成し、その画像を表示装置に表示している。
【0003】
ところで、超音波画像診断装置を用いて患部を観察する際には、過去に画像化して得た過去画像と今回画像化して得た現在画像とを比較して診断を行う場面が多々ある。例えば、四肢のいずれかが骨折した場合には、過去画像と現在画像とを比較し、比較して得られた違いに着目して診断(経過観察)を行う。このため、汎用の超音波画像診断装置には、表示画面上に2つの画像を表示するデュアル(B/B)モードを備えるものが種々提案されている(例えば、特許文献1~3等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-105638号公報(
図1等)
【文献】特開2006-175219号公報(
図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波画像診断装置には、例えば、観察深度、受信ゲイン、ダイナミックレンジ、フォーカスポイントのような、画像を取得する際の超音波の送受信条件に係る設定情報が数多く存在する。ゆえに、過去画像を取得する際の設定情報と現在画像を取得する際の設定情報とを合わせなければ、デュアルモードにおいて2つの画像を表示し、両者を単純に比較したとしても、正確な診断を行うことは困難である。なお、超音波画像診断装置は、測定部位ごとに常に同じ設定情報で観察すべく、各種設定情報を予め登録できるプリセット機能を有している場合が多い。しかし、設定情報の数が多すぎると(例えば20~30個)、どの設定情報を選択すれば良いのかが分からなくなるため、登録できる設定情報は大体数種類に限られている。この場合、多種多様な場面での比較に対応することは困難である。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、2つの画像の比較及び診断を容易に行うことができる超音波画像診断装置並びに超音波画像表示プログラム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被検体に対する超音波の送受信を行う送受信制御手段を備え、超音波の送受信によって得た反射波信号に基づいて、前記被検体内の様子を画像化し、過去に画像化して得た過去画像と今回画像化して得た現在画像とを表示画面上に並べて表示する超音波画像診断装置であって、前記反射波信号に基づいて画像データを生成する画像処理手段と、生成した前記画像データを前記過去画像として記憶手段に記憶させるとともに、前記過去画像を取得したときの超音波の送受信条件に係る設定情報を、前記過去画像に関連付けて前記記憶手段に記憶させる過去画像記憶手段と、ユーザの指示を契機として、前記記憶手段に記憶されている複数の前記過去画像の中から1つの前記過去画像を選択する過去画像選択手段と、選択した前記過去画像を前記表示画面上に表示させる画像表示手段と、選択した前記過去画像に関連付けられている前記設定情報を呼び出し、呼び出した前記設定情報を再設定する設定情報再設定手段とを備え、前記画像処理手段は、再設定された前記設定情報による条件で超音波を送受信することによって得た前記反射波信号に基づいて、前記現在画像となる前記画像データを生成可能であり、各ピクセルごとの前記過去画像と前記現在画像との輝度差に応じて、前記現在画像の各ピクセルを有彩色に着色して表示する着色表示処理を行い、前記着色表示処理では、前記有彩色に含まれる赤成分、緑成分及び青成分のうち、暖色成分である赤成分の輝度値を、寒色成分である緑成分及び青成分とは異なる値に変更する処理を前記現在画像の各ピクセルについて行うことで、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも大きくなった場合に、暖色系の有彩色に着色して表示し、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも小さくなった場合に、寒色系の有彩色に着色して表示することにより、前記過去画像と前記現在画像との位置ずれの状況を表示し、前記過去画像または前記現在画像をずらして着色部位を少なくする操作により、前記過去画像と前記現在画像とが位置合せ可能となるように構成されていることを特徴とする超音波画像診断装置をその要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に記載の発明によれば、ユーザの指示を契機として、過去画像選択手段が、複数の過去画像の中から1つの過去画像を選択すると、画像表示手段により、選択した過去画像が表示画面上に表示される。そして、設定情報再設定手段は、選択した過去画像に関連付けられている設定情報を再設定し、画像処理手段は、再設定された設定情報による条件で超音波を送受信することによって得た反射波信号に基づいて、現在画像となる画像データを生成可能となる。その結果、過去画像と現在画像とを表示画面上に並べて表示することが可能となるため、過去画像と現在画像とを比較して差異を見つけることにより、被検体の診断を容易に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記過去画像記憶手段は、観察深度、受信ゲイン、ダイナミックレンジ、フォーカスポイント、周波数及び送信出力を含む複数の前記設定情報を、前記過去画像に関連付けて記憶させることをその要旨とする。
【0010】
従って、請求項2に記載の発明によれば、観察深度、受信ゲイン、ダイナミックレンジ、フォーカスポイント、周波数及び送信出力を含む複数の設定情報が、過去画像に関連付けて記憶されている。ゆえに、過去画像を選択すれば、過去画像に関連付けられている設定情報に基づいて、現在画像となる画像データを生成できるため、複数の設定情報を1つずつ合わせなくても済む。よって、過去画像と現在画像との比較で差異を見つけることにより、被検体の診断を行うことが容易になる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記画像表示手段は、前記過去画像及び前記現在画像の近傍に、観察深度、受信ゲイン、ダイナミックレンジ、フォーカスポイント、周波数及び送信出力を含む複数の前記設定情報をそれぞれ付帯的に表示することをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項3に記載の発明によれば、上述した複数の設定情報を過去画像及び現在画像の近傍にそれぞれ付帯的に表示することにより、ユーザは、過去画像及び現在画像が同じ設定情報に基づいて生成されていることを容易に確認できる。
【0014】
なお、同じ設定情報に基づいて生成した過去画像及び現在画像を表示画面上に並べて表示したとしても、過去画像と現在画像との差(変化)を直感的に捉えることは容易ではない。そこで、請求項1等に記載の発明では、画像処理手段が、各ピクセルごとの過去画像と現在画像との輝度差に応じて、現在画像の各ピクセルを有彩色に着色して表示している。これにより、ユーザは、有彩色に着色されたピクセルを見ることにより、過去画像からの現在画像の位置ずれを把握することができる。そして、有彩色に着色されたピクセルができるだけ少なくなるように、現在画像をずらすことにより、過去画像と現在画像とをより厳密に位置合せすることができる。さらに、位置合せ後の配色状態、具体的には、位置合せ後に残った有彩色の部位を見ることにより、ユーザは、どの部位がどのように変化したのかを直感的に把握することができる。
【0016】
上記請求項1等に記載の発明では、輝度値が大きくなったピクセルを暖色系の有彩色に着色し、輝度値が小さくなったピクセルを寒色系の有彩色に着色することにより、現在画像の各ピクセルのうち、過去画像から輝度値が変化したピクセルを明瞭化することができる。その結果、有彩色に着色されたピクセルを、現在画像の位置ずれを補正するための補助として用いることができる。また、暖色系の有彩色と寒色系の有彩色とのコントラストにより、位置ずれ補正後に残った有彩色のピクセルを強調して表示することができる。さらに、輝度値が大きくなった場合にピクセルが明るい色である暖色系の有彩色に着色され、輝度値が小さくなった場合にピクセルが暗い色である寒色系の有彩色に着色されるため、逆にする場合よりも、輝度値の大小を直感的に把握することができる。
【0018】
また、上記請求項1等に記載の発明では、現在画像の各ピクセルにおいて、赤成分、緑成分及び青成分のうち少なくとも1つの輝度値を異なる値に変更することにより、各ピクセルごとに色相の違いを際立たせることができる。よって、現在画像と過去画像との間の位置ずれや、過去画像からの現在画像の変化が分かりやすくなる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、プロセッサに、被検体に対する超音波の送受信によって得た反射波信号に基づいて画像データを生成する画像処理ステップと、生成した前記画像データを、過去に画像化して得た過去画像として記憶手段に記憶させるとともに、前記過去画像を取得したときの超音波の送受信条件に係る設定情報を、前記過去画像に関連付けて前記記憶手段に記憶させる過去画像記憶ステップと、ユーザの指示を契機として、前記記憶手段に記憶されている複数の前記過去画像の中から1つの前記過去画像を選択する過去画像選択ステップと、選択した前記過去画像を表示画面上に表示させる過去画像表示ステップと、選択した前記過去画像に関連付けられている前記設定情報を呼び出し、呼び出した前記設定情報を再設定する設定情報再設定ステップと、再設定された前記設定情報による条件で超音波を送受信することによって得た前記反射波信号に基づいて、今回画像化して得た現在画像となる前記画像データを生成する現在画像処理ステップと、前記表示画面上に前記現在画像を前記過去画像と並べて表示する現在画像表示ステップと、前記現在画像表示ステップ後に、各ピクセルごとの前記過去画像と前記現在画像との輝度差に応じて、前記現在画像の各ピクセルを有彩色に着色して表示する着色ステップとを実行させるためのものであり、前記着色ステップでは、前記過去画像または前記現在画像をずらして着色部位を少なくする操作により、前記過去画像と前記現在画像とを位置合わせするために、前記有彩色に含まれる赤成分、緑成分及び青成分のうち、暖色成分である赤成分の輝度値を、寒色成分である緑成分及び青成分とは異なる値に変更する処理を前記現在画像の各ピクセルについて行うことで、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも大きくなった場合に、暖色系の有彩色に着色して表示し、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも小さくなった場合に、寒色系の有彩色に着色して表示することにより、前記過去画像と前記現在画像との位置ずれの状況を表示することを特徴とする超音波画像表示プログラムをその要旨とする。
【0020】
従って、請求項4に記載の発明によれば、過去画像選択ステップにおいて、ユーザの指示を契機として複数の過去画像の中から1つの過去画像を選択すると、過去画像表示ステップにおいて、選択した過去画像が表示画面上に表示される。そして、設定情報再設定ステップでは、選択した過去画像に関連付けられている設定情報を再設定し、現在画像処理ステップでは、再設定された設定情報による条件で超音波を送受信することによって得た反射波信号に基づいて、現在画像となる画像データを生成する。その後、現在画像表示ステップにおいて、表示画面上に現在画像を過去画像と並べて表示するため、過去画像と現在画像とを比較して差異を見つけることにより、被検体の診断を容易に行うことができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、被検体に対する超音波の送受信によって得た反射波信号に基づいて画像データを生成する画像処理ステップと、生成した前記画像データを、過去に画像化して得た過去画像として記憶手段に記憶させるとともに、前記過去画像を取得したときの超音波の送受信条件に係る設定情報を、前記過去画像に関連付けて前記記憶手段に記憶させる過去画像記憶ステップと、ユーザの指示を契機として、前記記憶手段に記憶されている複数の前記過去画像の中から1つの前記過去画像を選択する過去画像選択ステップと、選択した前記過去画像を表示画面上に表示させる過去画像表示ステップと、選択した前記過去画像に関連付けられている前記設定情報を呼び出し、呼び出した前記設定情報を再設定する設定情報再設定ステップと、再設定された前記設定情報による条件で超音波を送受信することによって得た前記反射波信号に基づいて、今回画像化して得た現在画像となる前記画像データを生成する現在画像処理ステップと、前記表示画面上に前記現在画像を前記過去画像と並べて表示する現在画像表示ステップと、前記現在画像表示ステップ後に、各ピクセルごとの前記過去画像と前記現在画像との輝度差に応じて、前記現在画像の各ピクセルを有彩色に着色して表示する着色ステップとを含み、前記着色ステップでは、前記過去画像または前記現在画像をずらして着色部位を少なくする操作により、前記過去画像と前記現在画像とを位置合わせするために、前記有彩色に含まれる赤成分、緑成分及び青成分のうち、暖色成分である赤成分の輝度値を、寒色成分である緑成分及び青成分とは異なる値に変更する処理を前記現在画像の各ピクセルについて行うことで、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも大きくなった場合に、暖色系の有彩色に着色して表示し、前記現在画像の輝度値が前記過去画像の輝度値よりも小さくなった場合に、寒色系の有彩色に着色して表示することにより、前記過去画像と前記現在画像との位置ずれの状況を表示することを特徴とする超音波画像表示方法をその要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、請求項1~5に記載の発明によると、2つの画像の比較及び診断を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の超音波画像診断装置を示す正面図。
【
図2】超音波画像診断装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図3】過去画像と現在画像とを左右に並べて表示した表示画面を示す写真。
【
図4】過去画像(比較対象画像)に対して現在画像(観察対象画像)が上方に位置ずれした状態を示す写真。
【
図5】(a)は、位置合せ前の現在画像(有彩色画像)を示す写真、(b)は、位置合せ後の現在画像(有彩色画像)を示す写真。
【
図6】(a)は、位置合せ前の現在画像(有彩色画像)を示す写真、(b)は、位置合せ後の現在画像(有彩色画像)を示す写真。
【
図7】(a)は、位置合せ前の現在画像(有彩色画像)を示す写真、(b)は、位置合せ後の現在画像(有彩色画像)を示す写真。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
図1,
図2に示されるように、超音波画像診断装置11は、装置本体12と、その装置本体12に接続される超音波プローブ13とを備えている。本実施形態の超音波画像診断装置11は、例えば、超音波の送受信によって得た反射波信号に基づいて、生体組織1(被検体)内の様子を画像化する装置である。
【0027】
また、
図3に示されるように、超音波画像診断装置11は、過去(例えば1か月前)に画像化して得た過去画像2と、過去画像2と同じ領域を今回(例えば今日)画像化して得た現在画像3とを、表示画面10上に並べて表示するようになっている。なお、過去画像2及び現在画像3は、生体組織1の横断面を示す断面画像である。また、本実施形態では、表示画面10の左側の位置に過去画像2が表示されるとともに、表示画面10の右側の位置に現在画像3が表示されるようになっている。つまり、超音波画像診断装置11は、表示画面10上に2つの画像2,3を表示するデュアル(B/B)モードを有している。
【0028】
さらに、過去画像2及び現在画像3の近傍には、画像2,3を取得したときの超音波の送受信条件に係る設定情報8が、それぞれ付帯的に表示されている。また、過去画像2及び現在画像3の近傍には、画像処理条件に係る設定情報8や、超音波の安全性に係る設定情報8も、それぞれ付帯的に表示されている。具体的に言うと、過去画像2の下側に位置する表示領域4の上段側には、画像のソフトネス(S)及び画像のシャープネス(E)が設定情報8として表示され、表示領域4の下段側には、周波数(F)、送信出力(A)、受信ゲイン(G)、ダイナミックレンジ(D)及び観察深度(R)が設定情報8として表示されている。また、過去画像2の左側に位置する表示領域5には、3つのフォーカスポイントF1が設定情報8として表示されている。同様に、現在画像3の下側に位置する表示領域6の上段側には、ソフトネス(S)及びシャープネス(E)が設定情報8として表示され、表示領域6の下段側には、周波数(F)、送信出力(A)、受信ゲイン(G)、ダイナミックレンジ(D)及び観察深度(R)が設定情報8として表示されている。また、現在画像3の右側に位置する表示領域7には、3つのフォーカスポイントF1が設定情報8として表示されている。なお、これらの設定情報8のうち、周波数(F)、送信出力(A)及び受信ゲイン(G)は、上記の送受信条件に係る設定情報8である。また、ソフトネス(S)、シャープネス(E)、ダイナミックレンジ(D)、観察深度(R)及びフォーカスポイントF1は、画像処理条件に係る設定情報8である。
【0029】
図1,
図2に示されるように、超音波プローブ13は、信号ケーブル14と、信号ケーブル14の先端に接続されるプローブヘッド15と、信号ケーブル14の基端に接続されるプローブ側コネクタ16とを備えている。一方、装置本体12には本体側コネクタ17が設けられ、本体側コネクタ17には、超音波プローブ13のプローブ側コネクタ16が着脱可能に接続されている。
【0030】
また、超音波プローブ13のプローブヘッド15は、扇状に配置された複数の超音波振動子(図示略)を有している。超音波プローブ13の使用時には、プローブヘッド15を生体組織1に対して接触させ、この状態で超音波を送受信する。なお、超音波プローブ13の形式は特に限定されないが、本実施形態のものはコンベックス式電子走査を行うためのコンベックスプローブであり、例えば5MHzの超音波を扇状に発信する。
【0031】
次に、超音波画像診断装置11の電気的な構成について詳述する。
【0032】
図2に示されるように、超音波画像診断装置11の装置本体12は、コントローラ21、パルス発生回路22、送信制御回路23、受信制御回路24、A/D変換回路25、信号処理回路26、画像処理回路27、メモリ28、受信データメモリ29、第1のDSC(Digital Scan Converter)展開部30、受信データ表示メモリ31、インポーズ部32、表示装置33等を備えている。
【0033】
コントローラ21は、周知の中央処理装置(CPU)を含んで構成されたコンピュータであり、メモリ28を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。また、コントローラ21は、生体組織1に対する超音波の送受信を行う。即ち、コントローラ21は、『送受信制御手段』としての機能を有している。
【0034】
パルス発生回路22は、コントローラ21からの制御信号に応答して動作し、所定周期のパルス信号を生成して出力する。送信制御回路23は、超音波プローブ13における超音波振動子の素子数に対応した複数の遅延回路(図示略)を含み、パルス発生回路22から出力されるパルス信号に基づいて、各超音波振動子に応じて遅延させた駆動パルスを出力する。各駆動パルスの遅延時間は、超音波プローブ13から出力される超音波が所定の照射点で焦点を結ぶように設定されている。
【0035】
受信制御回路24は、図示しない信号増幅回路、遅延回路、整相加算回路を含んで構成されている。受信制御回路24では、超音波プローブ13における各超音波振動子で受信された各反射波信号(エコー信号)が増幅されるとともに、受信指向性を考慮した遅延時間が各反射波信号に付加された後、整相加算される。この加算によって、各超音波振動子の反射波信号の位相差が調整される。
【0036】
A/D変換回路25は、受信制御回路24から出力されるアナログ信号(反射波信号)をデジタル信号に変換する。また、信号処理回路26は、図示しない対数変換回路、包絡線検波回路などから構成されている。信号処理回路26における対数変換回路は、A/D変換回路25から出力される反射波信号を対数変換し、包絡線検波回路は対数変換回路の出力信号の包絡線を検波する。
【0037】
画像処理回路27は、信号処理回路26の包絡線検波回路から出力される反射波信号に対して所定の画像処理を行う。なお、画像処理が行われた反射波信号は、コントローラ21によって受信データメモリ29に記憶される。そして、第1のDSC展開部30は、受信データメモリ29に記憶された反射波信号を、Bモードの画像として展開させる。なお、展開されたBモードの画像は、反射波信号の振幅(信号強度)に応じた輝度の画像データとして生成され、生成された画像データは、生体組織1の横断面を示す現在画像3として受信データ表示メモリ31に記憶される。
【0038】
また、コントローラ21は、過去画像2及び現在画像3を取得したときの超音波の送受信条件に係る複数の設定情報8や、画像処理条件に係る複数の設定情報8を、現在画像3に関連付けて受信データメモリ29に記憶させる。そして、受信データメモリ29に記憶された設定情報8は、第1のDSC展開部30を介して受信データ表示メモリ31に転送(記憶)される。なお、本実施形態の設定情報8には、ソフトネス(S)、シャープネス(E)、周波数(F)、送信出力(A)、受信ゲイン(G)、ダイナミックレンジ(D)、観察深度(R)及びフォーカスポイントF1が含まれている。
【0039】
その後、コントローラ21は、受信データ表示メモリ31に記憶されている画像データに基づいて、現在画像3を、白黒(無彩色)の濃淡で表示装置33の表示画面10の右側位置に表示させる。つまり、本実施形態において表示される現在画像3は、単色画像(モノトーン画像)である。また、コントローラ21は、受信データ表示メモリ31に記憶されている複数の設定情報8を、現在画像3の近傍の表示領域6,7に付帯的に表示させる。
【0040】
また、
図2に示されるように、装置本体12は、保存画像データメモリ41、第2のDSC展開部42、保存画像表示メモリ43(記憶手段)等を備えている。保存画像データメモリ41には、受信データメモリ29に記憶されている反射波信号及び設定情報8が、コントローラ21によって転送(記憶)されるようになっている。そして、第2のDSC展開部42は、保存画像データメモリ41に記憶された反射波信号を、Bモードの画像として展開させる。なお、展開されたBモードの画像は、反射波信号の振幅(信号強度)に応じた輝度の画像データとして生成され、生成された画像データは、生体組織1の横断面を示す過去画像2(保存画像)として保存画像表示メモリ43に記憶される。即ち、コントローラ21は、『過去画像記憶手段』としての機能を有している。また、保存画像データメモリ41に記憶された設定情報8は、第2のDSC展開部42を介して保存画像表示メモリ43に転送(記憶)される。
【0041】
その後、コントローラ21は、保存画像表示メモリ43に記憶されている画像データに基づいて、過去画像2を、白黒(無彩色)の濃淡で表示装置33の表示画面10の左側位置に表示させる。つまり、本実施形態において表示される過去画像2は、単色画像(モノトーン画像)である。また、コントローラ21は、保存画像表示メモリ43に記憶されている複数の設定情報8を、過去画像2の近傍の表示領域4,5に付帯的に表示させる。
【0042】
また、コントローラ21は、インポーズ部32を動作させ、保存画像表示メモリ43に記憶されている過去画像2の画像データ及び受信データ表示メモリ31に記憶されている現在画像3の画像データに基づいて、過去画像2の各ピクセルの輝度値と現在画像3の各ピクセルの輝度値とを検出する。次に、コントローラ21は、過去画像2の輝度値と現在画像3の輝度値との差分を各ピクセルごとに算出し、算出した差分を輝度差とする。
【0043】
さらに、画像処理手段としてのコントローラ21は、輝度差のレベル(大きさ)に応じて、現在画像3の各ピクセルを異なる色(有彩色)に着色して表示する処理を行う。具体的に言うと、コントローラ21は、所定のピクセルにおいて現在画像3の輝度値が過去画像2の輝度値よりも大きくなった場合に、現在画像3の所定のピクセルを暖色系の有彩色に着色して表示する処理を行う。また、コントローラ21は、所定のピクセルにおいて現在画像3の輝度値が過去画像2の輝度値よりも小さくなった場合に、現在画像3の所定のピクセルを寒色系の有彩色に着色して表示する処理を行う。なお、有彩色は、赤成分(R)、緑成分(G)及び青成分(B)を含んでいる。
【0044】
また、コントローラ21は、現在画像3の各ピクセルにおいて、赤成分(R)、緑成分(G)及び青成分(B)のうち少なくとも1つの輝度値を、他の色成分の輝度値とは異なる値に変更する処理を行う。本実施形態では、現在画像3の所定のピクセルの赤成分(R)に、現在画像3の輝度値に輝度差のα%を加算(減算)したものが分配される。また、現在画像3の所定のピクセルの緑成分(G)には、現在画像3の輝度値のβ%と、過去画像2の輝度値の(100-β)%とが分配される。さらに、現在画像3の所定のピクセルの青成分(B)には、現在画像3の輝度値のγ%と、過去画像2の輝度値の(100-γ)%とが分配される。このようにすれば、パラメータα,β,γの設定次第で、様々な彩色を行うことができる。
【0045】
例えば、
図5(a),(b)に示されるように、α=100(%)、β=100(%)、γ=100(%)に設定した場合には、赤成分(R)に、現在画像3の輝度値に輝度差を加算したものが分配され、緑成分(G)及び青成分(B)に、現在画像3の輝度値が等分配される。その結果、反射強度(輝度値)が増加したピクセルが暖色(具体的には赤色)に着色され、反射強度(輝度値)が減少したピクセルが寒色(具体的には緑色)に着色されるため、現在画像3と過去画像2との間で輝度値が変化したピクセルが明瞭化される。しかしながら、緑成分(G)及び青成分(B)には、現在画像3の輝度値のみが分配され、過去画像2の輝度値は反映されないため、現在画像3と過去画像2との間の位置ずれの状況が分かりにくく、位置合せが難しい。
【0046】
そこで、
図6(a),(b)に示されるように、α=100(%)、β=100(%)、γ=0(%)に設定し、赤成分(R)に、現在画像3の輝度値に輝度差を加算したものを分配するとともに、緑成分(G)に現在画像3の輝度値、青成分(B)に過去画像2の輝度値をそれぞれ分配することが好ましい。このようにすれば、現在画像3と過去画像2との間の位置ずれの状況が分かりやすくなるため、位置合せが容易になる。また、この場合も、反射強度(輝度値)が増加したピクセルが暖色(具体的には黄色)に着色され、反射強度(輝度値)が減少したピクセルが寒色(具体的には青色)に着色されるため、現在画像3と過去画像2との間で輝度値が変化したピクセルが明瞭化される。
【0047】
なお、
図7(a),(b)に示されるように、α=-100(%)、β=0(%)、γ=100(%)に設定してもよい。この場合、赤成分(R)に、現在画像3の輝度値に輝度差を減算したものが分配され、緑成分(G)に過去画像2の輝度値が分配され、青成分(B)に現在画像3の輝度値が分配される。その結果、反射強度(輝度値)が増加したピクセルが寒色(具体的には青色)に着色され、反射強度(輝度値)が減少したピクセルが暖色(具体的には黄色)に着色される。しかしながら、緑成分(G)は青成分(B)よりも視認性が高いため、
図6(a),(b)のように、緑成分(G)に現在画像3の輝度値が分配されることが好ましい。また、本実施形態の
図5~
図7は、白黒の画像になっているが、実際は、ピクセルの少なくとも一部が有彩色に着色された画像である。
【0048】
図1,
図2に示されるように、表示装置33は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ、投影式ディスプレイなどのカラーディスプレイであり、過去画像2及び現在画像3(
図3参照)等を表示するために用いられる。
【0049】
また、装置本体12は、入力装置51及び記憶装置52等を備えている。入力装置51は、例えば、キーボード、スイッチ類、各種のポインティング・デバイスなどによって構成されており、ユーザからの指示の入力に用いられる。なお、ポインティング・デバイスの例としては、タッチパッド、タッチパネル、マウス、ペンタブレット、トラックボール、ジョイスティックなどを挙げることができる。
【0050】
記憶装置52は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置などであり、制御プログラム(超音波画像表示プログラム)及び各種のデータを記憶している。コントローラ21は、入力装置51による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置52からメモリ28へ転送し、それを逐次実行する。なお、コントローラ21が実行するプログラムは、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、CD、DVD、BD等の光ディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、フラッシュメモリ、SDカード等の半導体メモリなどの記憶媒体に記憶されたプログラムでもよいほか、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよい。このようなプログラムは、実行される前に記憶装置52にインストールされる。
【0051】
次に、本実施形態の超音波画像診断装置11において、プロセッサであるコントローラ21が実行する診断処理を以下に説明する。
【0052】
まず、医者などのユーザは、患者の処置部となる生体組織1の表面に、音響媒体(無菌ゲルや滅菌ゲル)を塗った後、その音響媒体を介して超音波プローブ13のプローブヘッド15を接触させる。
【0053】
次に、ユーザは、入力装置51に設けられている走査開始ボタン(図示略)を操作する。すると、画像処理手段としてのコントローラ21は、そのボタン操作を判断し、生体組織1の過去画像2及び現在画像3を表示するための処理を開始する。
【0054】
この処理において、コントローラ21は、パルス発生回路22を動作させ、超音波プローブ13による超音波の送受信を開始させる。具体的には、コントローラ21から出力される制御信号に応答してパルス発生回路22が動作し、所定周期のパルス信号が送信制御回路23に供給される。そして、送信制御回路23では、パルス信号に基づいて、各超音波振動子に対応した遅延時間を有する駆動パルスが生成され、超音波プローブ13に供給される。これにより、超音波プローブ13の各超音波振動子が振動して超音波が生体組織1に向けて照射される。
【0055】
なお、生体組織1内を伝播する超音波の一部は、生体組織1における組織境界面(例えば血管壁)などで反射して超音波プローブ13で受信される。このとき、超音波プローブ13の各超音波振動子によって、反射波が電気信号(反射波信号)に変換される。そして、その反射波信号は、受信制御回路24で増幅等された後、A/D変換回路25に入力される。さらに、反射波信号は、A/D変換回路25でデジタル信号に変換された後、信号処理回路26に供給され、信号処理回路26において対数変換や包絡線検波といった信号処理が行われた後、画像処理回路27に供給される。
【0056】
次に、コントローラ21は、画像処理ステップを行い、生体組織1に対する超音波の送受信によって得た反射波信号に基づいて、画像データを生成する。具体的に言うと、コントローラ21は、画像処理回路27を動作させ、信号処理回路26から出力される反射波信号に対して所定の画像処理を行わせる。次に、コントローラ21は、画像処理が行われた反射波信号を受信データメモリ29に記憶させる。なお、受信データメモリ29に記憶された反射波信号は、第1のDSC展開部30によってBモードの画像として展開され、展開されたBモードの画像は、反射波信号の振幅に応じた輝度の画像データとして生成され、生成された画像データは、現在画像3として受信データ表示メモリ31に記憶される。
【0057】
また、コントローラ21は、過去画像2及び現在画像3を取得したときの超音波の送受信条件に係る複数の設定情報8(
図3参照)を、現在画像3に関連付けて受信データメモリ29に記憶させる。なお、受信データメモリ29に記憶された設定情報8は、第1のDSC展開部30を介して受信データ表示メモリ31に転送(記憶)される。
【0058】
さらに、コントローラ21は、受信データメモリ29に記憶されている反射波信号及び設定情報8を、保存画像データメモリ41に転送(記憶)させる。なお、保存画像データメモリ41に記憶された反射波信号は、第2のDSC展開部42によってBモードの画像として展開され、展開されたBモードの画像は、反射波信号の振幅に応じた輝度の画像データとして生成される。
【0059】
続く過去画像記憶ステップにおいて、コントローラ21は、生成した画像データを、過去画像2(保存画像)として保存画像表示メモリ43に記憶させる。それとともに、コントローラ21は、保存画像データメモリ41に記憶された設定情報8を、第2のDSC展開部42を介して保存画像表示メモリ43に転送し、過去画像2に関連付けて保存画像表示メモリ43に記憶させる。
【0060】
続く過去画像選択ステップにおいて、コントローラ21は、ユーザの指示(ユーザによる入力装置51の操作)を契機として、保存画像表示メモリ43に記憶されている複数の過去画像2(画像データ)の中から1つの過去画像2を選択する。即ち、コントローラ21は、『過去画像選択手段』としての機能を有している。なお、ユーザは、デュアルモードにおいて、過去画像2を、現在画像3と比較するための比較対象画像として選択する。
【0061】
続く過去画像表示ステップにおいて、コントローラ21は、保存画像表示メモリ43から選択した画像データに基づいて、過去画像2を、白黒の濃淡で表示装置33の表示画面10の左側位置に表示させる。即ち、コントローラ21は、『画像表示手段』としての機能を有している。また、コントローラ21は、保存画像表示メモリ43に記憶されている複数の設定情報8を、過去画像2の近傍の表示領域4,5に付帯的に表示させる。
【0062】
続く設定情報再設定ステップにおいて、コントローラ21は、選択した過去画像2に関連付けられている設定情報8を保存画像表示メモリ43から呼び出し、呼び出した設定情報8を受信データメモリ29に再設定(記憶)する。即ち、コントローラ21は、『設定情報再設定手段』としての機能を有している。また、この時点で、表示画面10の右側位置(現在画像3の表示位置)が、過去画像2と同じ設定(プリセット機能)でスキャン状態となる。即ち、本実施形態の超音波画像診断装置11は、リファレンス機能を有している。また、受信データメモリ29に記憶された設定情報8は、第1のDSC展開部30を介して受信データ表示メモリ31に転送(記憶)される。
【0063】
続く現在画像処理ステップにおいて、コントローラ21は、再設定された設定情報8による条件で超音波を送受信することによって得た反射波信号に基づいて、今回画像化して得た現在画像3となる画像データを生成する。具体的に言うと、コントローラ21は、反射波信号を受信データメモリ29に記憶させる。なお、受信データメモリ29に記憶された反射波信号は、第1のDSC展開部30によってBモードの画像として展開され、展開されたBモードの画像は、反射波信号の振幅に応じた輝度の画像データとして生成され、生成された画像データは、現在画像3として受信データ表示メモリ31に記憶される。
【0064】
続く現在画像表示ステップにおいて、コントローラ21は、表示装置33の表示画面10上に現在画像3を過去画像2と並べて表示する。具体的に言うと、コントローラ21は、受信データ表示メモリ31から選択した画像データに基づいて、現在画像3を、白黒の濃淡で表示装置33の表示画面10の右側位置に表示させる。その結果、
図3に示されるように、過去画像2が左側位置に配置され、現在画像3が右側位置に配置された画面レイアウトで、過去画像2及び現在画像3が表示画面10上に表示される。さらに、コントローラ21は、受信データ表示メモリ31に記憶されている設定情報8を、現在画像3の近傍の表示領域6,7に付帯的に表示させる。
【0065】
なお、本実施形態では、選択した過去画像2に関連付けられている設定情報8に基づいて、現在画像3となる画像データを生成するものの、設定情報8には過去画像2の位置情報が含まれていない。よって、殆どの場合、過去画像2と現在画像3との間には位置ずれが生じてしまう。また、
図4には、過去画像2(比較対象画像)に対して現在画像3(観察対象画像)が上方に位置ずれした状態が示されている。
【0066】
なお、本実施形態では、上記の位置ずれを以下のように補正する。具体的には、現在画像表示ステップ後の着色ステップにおいて、コントローラ21は、各ピクセルごとの過去画像2と現在画像3との輝度差に応じて、現在画像3の各ピクセルを有彩色に着色して表示する処理を行う(
図5~
図7参照)。詳述すると、コントローラ21は、インポーズ部32を動作させ、保存画像表示メモリ43に記憶されている過去画像2の画像データ及び受信データ表示メモリ31に記憶されている現在画像3の画像データに基づいて、各ピクセルごとに過去画像2の輝度値と現在画像3の輝度値との差分を算出し、算出した差分を輝度差とする。そして、コントローラ21は、輝度差のレベル(大きさ)に応じて、現在画像3の各ピクセルを有彩色(暖色及び寒色)に着色して表示する処理を行う。この有彩色に着色したピクセルの表示により、ユーザは、過去画像2から現在画像3が位置ずれしている旨を知ることができる。
【0067】
なお、現在画像3は、ユーザによる超音波プローブ13の操作により、上下左右に移動したり回転したりすることが可能である。具体的には、超音波プローブ13を平面方向に移動させたり、超音波プローブ13の角度を変えたりすることで、現在画像3を移動・回転させた結果、過去画像2からの現在画像3の位置ずれが小さくなると、輝度差が小さくなる。このとき、輝度差が小さくなったピクセルの有彩色が消えて白黒(無彩色)のピクセルとなる。なお、この時点では、現在画像3の各ピクセルのうち、例えば腫瘍の治癒の進行に伴って、輝度値が過去画像2から変化したピクセルのみが、有彩色に着色されて表示される。そして、この着色部分を見ることにより、ユーザは、経過観察を行うことができる。
【0068】
その後、ユーザは、入力装置51に設けられている走査終了ボタン(図示略)を操作する。コントローラ21は、そのボタン操作を判断し、生体組織1の過去画像2及び現在画像3を表示するための処理を終了する。なお、今回見た現在画像3は、後の過去画像2として保存画像表示メモリ43に記憶される。それとともに、受信データ表示メモリ31に記憶されている設定情報8は、今回見た現在画像3に関連付けて保存画像表示メモリ43に記憶される。
【0069】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0070】
(1)本実施形態の超音波画像診断装置11では、ユーザの指示を契機として、コントローラ21が、複数の過去画像2の中から1つの過去画像2を選択すると、選択した過去画像2が表示画面10上に表示される。そして、コントローラ21は、選択した過去画像2に関連付けられている設定情報8を再設定し、再設定された設定情報8による条件で超音波を送受信することによって得た反射波信号に基づいて、現在画像3となる画像データを生成可能となる。その結果、過去画像2と現在画像3とを表示画面10上に並べて表示することが可能となるため、過去画像2と現在画像3とを比較して差異を見つけることにより、生体組織1(患部)の診断(経過観察)を容易に行うことができる。また、本実施形態では、過去に取得した過去画像2を比較対象画像として選択し、選択した過去画像2に関連付けられている設定情報8に基づいて現在画像3を得るため、登録できる設定情報の数に限りがある従来のプリセット機能を用いる場合よりも、多種多様な場面における画像2,3の比較に容易に対応することができる。
【0071】
(2)本実施形態では、デュアルモードにおいてユーザが比較したい過去画像2を選択すると、左側位置に選択した過去画像2が表示され、表示画面10の右側位置が、過去画像2と同じ設定情報8に基づいて現在画像3をスキャンするスキャン状態となる。この場合、複数の設定情報8を1つずつ合わせる必要がないため、現在画像3側と過去画像2側とを比較して差異を見つけることにより、生体組織1(患部)を診断することが容易になる。
【0072】
(3)本実施形態では、同じ設定情報8に基づいて生成した過去画像2及び現在画像3を表示画面10上に並べて表示したとしても、過去画像2と現在画像3との差(変化)を直感的に捉えることは容易ではない。そこで、本実施形態では、コントローラ21が、各ピクセルごとの過去画像2と現在画像3との輝度差に応じて、現在画像3の各ピクセルを有彩色に着色(色変調)して表示している。これにより、ユーザは、有彩色に着色されたピクセルを見ることにより、過去画像2からの現在画像3の位置ずれを把握することができる。そして、有彩色に着色されたピクセルができるだけ少なくなるように、現在画像3をずらすことにより、過去画像2と現在画像3とを厳密に位置合せすることができる。さらに、位置合せ後の配色状態、具体的には、位置合せ後に残った有彩色の部位を見ることにより、ユーザは、どこの部位が変化したのかを直感的に把握することができる。しかも、本実施形態では、ピクセルの色(有彩色)が輝度差のレベルを暗示的に示唆しているため、ユーザは、ピクセルの色を見るだけで、輝度差がどの程度であるかを直感的に把握することができる。例えば、輝度値が大きくなることでピクセルが明るい色(暖色)の有彩色に着色された場合には、輝度値が小さくなることでピクセルが暗い色(寒色)の有彩色に着色される場合よりも、輝度値が大きいと直感的に把握することができる。
【0073】
(4)本実施形態では、各ピクセルごとの過去画像2と現在画像3との輝度差に応じて、現在画像3の各ピクセルを有彩色(暖色及び寒色)に着色して表示している。この場合、着色されたピクセルの色が、周囲の色(白色、黒色等の無彩色)と大きく異なったものとなる。ゆえに、有彩色に着色されたピクセルが目視により把握しやすくなる。
【0074】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0075】
・上記実施形態では、超音波の送受信条件に係る設定情報8として、画像のソフトネス(S)、画像のシャープネス(E)、周波数(F)、送信出力(A)、受信ゲイン(G)、ダイナミックレンジ(D)、観察深度(R)及びフォーカスポイントF1が用いられていた。しかし、複数の設定情報8のうち少なくとも1つを省略してもよい。
【0076】
・上記実施形態の超音波画像診断装置11では、表示画面10の左側位置に過去画像2が表示され、表示画面10の右側位置に現在画像3が表示されていた。しかし、超音波画像診断装置11は、表示画面10の左側位置に現在画像3を表示し、表示画面10の右側位置に過去画像2を表示するものであってもよい。
【0077】
・上記実施形態の超音波画像診断装置11では、過去画像2と現在画像3とが表示画面10上において左右に並べて表示されていた。しかし、超音波画像診断装置11は、過去画像2と現在画像3とを表示画面10上において上下に並べて表示するものであってもよい。この場合、表示画面10の上側位置に過去画像2を表示し、表示画面10の下側位置に現在画像3を表示するものであってもよいし、表示画面10の下側位置に過去画像2を表示し、表示画面10の上側位置に現在画像3を表示するものであってもよい。
【0078】
・上記実施形態において、現在画像3の所定のピクセルを着色して表示する際に、過去画像2と現在画像3とを表示画面10上に並べて表示(2画面表示)してもよいし、現在画像3のみを表示画面10上に表示(1画面表示)してもよい。
【0079】
・上記実施形態では、各ピクセルごとの過去画像2と現在画像3との輝度差に応じて、現在画像3の各ピクセルを有彩色に着色して表示する処理を行っていたが、“過去画像2”の各ピクセルを有彩色に着色して表示する処理を行ってもよい。
【0080】
・上記実施形態では、ユーザが超音波プローブ13を操作して現在画像3を移動・回転させることにより、過去画像2と現在画像3との位置合せを行っていた。しかし、ユーザが入力装置51等を操作して過去画像2を移動・回転させることによって、上記の位置合せを行ってもよいし、ユーザが入力装置51等を操作して過去画像2及び現在画像3の両方を移動・回転させることによって、上記の位置合せを行ってもよい。
【0081】
・上記実施形態において、超音波画像診断装置11は、各ピクセルごとの過去画像2と現在画像3との輝度差が所定の閾値を超える場合に、過去画像2と現在画像3との位置ずれを報知する報知手段を備えていてもよい。なお、報知手段としては、例えば、輝度差が閾値を超えていることを発光(点灯・点滅等)にて報知するランプ等の発光手段、輝度差が閾値を超えていることを音声(警告音等)にて報知するアラーム等の音声出力手段、輝度差が閾値を超えていることを表示(文字、記号、絵等)にて報知する液晶式表示装置等の表示手段、などを挙げることができる。
【0082】
・上記実施形態の超音波画像診断装置11は、生体組織1(患部)の治癒の経過観察に用いられていたが、例えば、妊娠検査や悪性新生物の状態観察等の他の医療分野に用いられてもよい。また、超音波画像診断装置11を、健康分野、例えば、成長過程やトレーニング過程の観察等に用いてもよい。さらに、超音波画像診断装置11を、動物分野、例えば、畜産現場における動物の肥育過程の観察等に用いてもよい。つまり、人間以外の動物の生体組織を被検体としてもよく、ウシ、ウマ、ブタ等の家畜の生体組織を被検体としてもよい。
【0083】
・上記実施形態の超音波画像診断装置11は、例えば四肢のいずれかが骨折した場合に、左右の同じ部位を観察して、健側(骨折していない側)の画像と患側(骨折した側)の画像とを表示画面10上において左右に並べて表示してもよい。なお、この場合、健側の画像は、過去に画像化して得た過去画像として位置付けられ、患側の画像は、今回画像化して得た現在画像として位置付けられる。また、コントローラ21(画像表示手段)は、健側の画像を左右反転させて表示する画像処理をさらに行うことが好ましい。このようにすれば、健側の画像と患側の画像とが同じ向きで表示されるため、ユーザは、画像反転後に違和感なく被検体の断面構造を確認することができる。
【0084】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0085】
(1)請求項1乃至6のいずれか1項において、各ピクセルごとの前記過去画像と前記現在画像との輝度差が所定の閾値を超える場合に、前記過去画像と前記現在画像との位置ずれを報知する報知手段を備えることを特徴とする超音波画像診断装置。
【0086】
(2)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記画像表示手段は、前記過去画像と前記現在画像とを左右に並べて表示させる処理を行うことを特徴とする超音波画像診断装置。
【0087】
(3)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記画像表示手段は、前記過去画像と前記現在画像とを左右に並べて表示させる機能をさらに有し、前記現在画像の画像を左右反転させずに表示させる一方で前記過去画像の画像を左右反転させて表示する画像処理を行うことを特徴とする超音波画像診断装置。
【0088】
(4)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記被検体は生体組織であることを特徴とする超音波画像診断装置。
【0089】
(5)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記過去画像記憶手段は、画像処理条件に係る設定情報も、前記過去画像に関連付けて前記記憶手段に記憶させることを特徴とする超音波画像診断装置。
【符号の説明】
【0090】
1…被検体としての生体組織
2…過去画像
3…現在画像
8…設定情報
10…表示画面
11…超音波画像診断装置
21…送受信制御手段、画像処理手段、過去画像記憶手段、過去画像選択手段、画像表示手段、設定情報再設定手段及びプロセッサとしてのコントローラ
43…記憶手段としての保存画像表示メモリ
F1…フォーカスポイント
【要約】
2つの画像の比較及び診断を容易に行うことができる超音波画像診断装置を提供する。本発明の超音波画像診断装置は、過去画像(2)と現在画像(3)とを並べて表示する装置である。画像処理手段は、超音波の送受信で得た反射波信号に基づいて画像データを生成する。過去画像記憶手段は、画像データを過去画像(2)として記憶させ、過去画像(2)取得時の超音波の送受信条件に係る設定情報(8)を、過去画像(2)に関連付けて記憶させる。過去画像選択手段は、記憶されている過去画像(2)から1つの過去画像(2)を選択し、設定情報再設定手段は、選択した過去画像(2)に関連付けられた設定情報(8)を再設定する。そして、画像処理手段は、再設定された設定情報(8)による条件で超音波を送受信して得た反射波信号に基づき、現在画像(3)となる画像データを生成する。