IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸収性物品 図1
  • 特許-吸収性物品 図2
  • 特許-吸収性物品 図3
  • 特許-吸収性物品 図4
  • 特許-吸収性物品 図5
  • 特許-吸収性物品 図6
  • 特許-吸収性物品 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20230228BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61F13/15 140
A61F13/475 111
A61F13/475 112
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018206019
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069157
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】益井 大和
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-509457(JP,A)
【文献】特開2016-123612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
A61F 13/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層、裏面層及び、前記表面層と前記裏面層との間に配された吸収層を備え、着用者の腹側部、股下部及び背側部がつながる方向に相当する縦方向と、該縦方向と直交する幅方向とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品の前記縦方向に沿う両側には、一対の立体ガード部を備えており、
前記立体ガード部は、サイドシートと縦方向伸縮性の弾性部材を含み、前記表面層に固定された基端部と、着用者側への起立部とを有しており
前記立体ガード部は、前記吸収性物品の自然状態で、前記起立部における前記サイドシートの表面に、複数の凸部と該凸部間の凹部とを含む凹凸構造を有しており、
前記起立部の少なくとも一部に冷感剤を含み、前記凸部の冷感剤坪量よりも前記凹部の冷感剤坪量が多い吸収性物品。
【請求項2】
前記起立部において、前記サイドシートと前記弾性部材とが前記縦方向に間欠配置した接着剤で固定されており、前記冷感剤が前記接着剤と高親和性である請求項に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品の自然状態で前記サイドシートと前記表面層とが重なる領域において、前記サイドシートと前記表面層との間に前記冷感剤が含まれており、前記基端部には、前記サイドシートと前記表面層とを接合する接着剤が前記縦方向に沿って配され、
前記領域において、前記接着剤が配されている部位の冷感剤坪量が、前記接着剤が配されていない部位の冷感剤坪量よりも多くされている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記立体ガード部の前記冷感剤を含む領域の少なくとも一部が、前記吸収性物品を自然状態とした平面視において前記吸収層の前記幅方向の側縁部の内側近傍の部分と重なる請求項1~のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記立体ガード部は、前記縦方向の前後において、起立不能に前記表面層と固定された前後端固定部を有し、前記前後端固定部に前記冷感剤を含む請求項1~のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや失禁パッド、おむつなどの吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品において、排泄液が多いときや長時間使用するときなどに蒸れやべたつきが生じて着用者が不快に感じることがある。これに対し、従来、清涼剤等の冷感剤を吸収性物品に含ませることによって、着用感の向上を図ろうとする技術がある。特許文献1には、吸収体の幅方向両側に冷感剤を配置した吸収性物品が記載されている。また、特許文献2には、ヒップフラップ部に冷感剤を配置した吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-234027号公報
【文献】特開2016-13153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載の吸収性物品においては、幅方向の中央部分と両側部分との間に厚み差があるものがあり、また着用中によれ等が発生することがある。この場合、冷感剤を配置した部分が着用者の肌面から必要以上に遠ざかってしまい、想定していた冷感を着用者に十分に与えられないことがある。
【0005】
本発明は、装着時に吸収性物品が着用者から離れる状況にあっても、安定して冷感作用を着用者に付与することができる吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面層、裏面層、及び前記表面層と前記裏面層との間に配された吸収層を備え、着用者の腹側部、股下部及び背側部がつながる方向に相当する縦方向と、該縦方向と直交する幅方向とを有する吸収性物品であって、前記吸収性物品の前記縦方向に沿う両側には、一対の立体ガード部を備えており、前記立体ガード部は、サイドシートと縦方向伸縮性の弾性部材とを含み、前記表面層に固定された基端部と、着用者側への起立部とを有しており、前記起立部の少なくとも一部に冷感剤を含む吸収性物品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る吸収性物品は、装着時に吸収性物品が着用者から離れる状況にあっても、安定して冷感作用を着用者に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態としての生理用ナプキンを伸長した状態で肌当接面側から模式的に示した平面図である。
図2図1に示した生理用ナプキンのI-I線断面を、生理用ナプキンの自然状態のものとして模式的に示した断面図である。
図3図1に示した生理用ナプキンのII-II線断面を模式的に示した断面図である。
図4】(A)は、図1に示した生理用ナプキンを自然状態とした際の立体ガード部の起立部の縦方向に沿う断面を模式的に示した一部拡大断面図であり、(B)は、図1に示した生理用ナプキンを伸長状態とした際の、立体ガード部を模式的に示した一部拡大平面図である。
図5】本発明における吸収性物品の別の好ましい一実施形態としての生理用ナプキンを伸長した状態で肌当接面側から模式的に示した平面図である。
図6図5に示した生理用ナプキンのIII-III線断面を、生理用ナプキンの自然状態のものとして模式的に示した断面図である。
図7図5に示した生理用ナプキンのIV-IV線断面を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る吸収性物品の好ましい一実施形態としての生理用ナプキンについて、図面を参照しながら説明する。
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側を肌面側ないし肌当接面側もしくは表面側といい、これと反対側を非肌面側ないし非肌当接面側もしくは裏面側という。これらは、人体に接触する面を有さない部材に関しても、吸収性物品の部材構成における相対的な位置関係を示す用語として用いる。また、着用時に人体の前側に位置する方向を前方といい、後側に位置する方向を後方という。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚さ方向という。
【0010】
図1~3に示すように、生理用ナプキン10A(以下、ナプキン10Aとも言う)は、肌当接面側の表面層1と、非肌当接面側の裏面層2と、表面層1と裏面層2との間に配された液保持性の吸収層3とを有する。表面層1は液を吸収層3へと送り込む液透過性を備え、裏面層2は液に対する防漏性を備える。表面層1及び裏面層2は、吸収層3の両面を覆いつつ、吸収層3の外縁外方へと延出する大きさを有する。
また、ナプキン10は、表面層2の肌当接面側に、一対の立体ガード部9を備えている。立体ガード部9は、サイドシート5と弾性部材4とを含む。この立体ガード部9についは後述する。
【0011】
ナプキン10Aは、平面視において縦長形状である。表面層1、裏面層2及び吸収層3も同様に平面視において縦長形状である。この縦長形状において、その長手方向を縦方向Yとし、縦方向Yと直交する方向を幅方向Xとする。縦方向Yは、ナプキン10Aの装着時における、着用者の腹側部、股下部及び背側部がつながる方向に相当する。幅方向Xは、着用者の股下における左右の足がつながる方向に相当する。本明細書において、縦方向Y及び幅方向Xは、ナプキン10Aの平面視における方向を示すと同時に、各構成部材の平面視における方向を示す。
【0012】
ナプキン10Aは、縦方向Yに関して、着用者の排泄ポイントに対応する部位を含む中間部Cを有する。更に中間部Cよりも前方の下腹部側に配置される前方部F、後方の臀部側に配置される後方部Rを有する。また、中間部Cには、幅方向中央部分に、前記排泄ポイントに対向し、経血等の排泄液を直接受け止める受液領域C1がある。
【0013】
中間部C、前方部F及び後方部Rの区分位置は、使用目的等によって設定される吸収性物品の長さに応じて適宜設定され得る。昼用、夜用にかかわらず、ショーツの股下部に折り曲げて固定するウイング部6を備える場合は、該ウイング部6の存在する縦方向に沿った領域が中間部Cとなる。本実施形態のナプキン10Aは、夜用などとして設定される形状の例を示しており、前方部Fと中間部Cとは、ほぼ同じ長さに設定されており、後方部Rは中間部Cよりも長く設定されている。昼用などとして設定される形状の場合には、縦方向の長さを3等分して、前方部F、中間部C及び後方部Rが設定され、ウイング部6を備えない昼用のナプキンの場合には、中間部はこの設定に従う。ナプキン10Aがどのような形状であっても一般的には、中間部Cは、前方部Fからの一定の距離の位置にある部位として設定され得る。更に大人用もしくは幼児用のおむつなど、また、尿取りパッドなどについては、縦方向の長さを3等分して、前方部F、中間部C及び後方部Rが設定される。
【0014】
更に、ナプキン10Aにおいて、サイドシート5と裏面層2とが吸収層3の幅方向外方に延出して、着衣等への固定手段であるウイング部6及び排泄液の後方への漏れ防止手段である後方フラップ部8を成している。この積層構造において、ナプキン10Aの外周縁は、吸収層3を介在させずに接合された外周シール部15を有している。また、ナプキン10Aは、表面層1から吸収層3にかけて圧搾した防漏溝7を有している。防漏溝7は、図1に示すように、環状防漏溝71、環状防漏溝71の内部の前方部F及び後方部Rのそれぞれに配される円弧状防漏溝72及び73を有する。これらのウイング部6、後方フラップ部8及び防漏溝7はそれぞれ、物品の使用目的等に応じて適宜設定でき、ナプキン10Aがこれらを有さない態様であってもよい。また、ナプキン10Aは、吸収層3よりも幅狭の液透過性の液拡散層や、他の構成部材を含んでいてもよい。
【0015】
次に、前述の立体ガード部9について詳述する。
【0016】
一対の立体ガード部9、9は、ナプキン10Aの縦方向Yに沿う両側に配されている。具体的には、表面層1の肌当接面側の両側に縦方向の略全長に亘って積層されている。
【0017】
立体ガード部9は、サイドシート5と弾性部材4とを含む。弾性部材4は、ナプキン10Aの縦方向Yの伸縮性を有する。
立体ガード部9は、ナプキン10Aの自然状態でサイドシート5と表面層1とが重なる領域Dにおいて、表面層1に基端固定部11によって固定された基端部9Bと、着用者側への起立部9Aとを有する。立体ガード部9は、ナプキン10Aの中間部Cから前方部F及び後方部Rに亘って縦方向Yに延在しており、前方部F及び後方部Rにおいて前後端固定部12によって立体ガード部9が倒伏されて表面層1に接合されている。
【0018】
ここで言う「起立部」9Aとは、立体ガード部9の先端部9Cを含み、基端部9Bよりも幅方向Xの内方側で面状に着用者側に起立する領域を意味する。具体的には、「起立部」9Aは、基端固定部11よりも幅方向Xの内方側、前後端固定部12よりも縦方向Yの内方側のサイドシート5及び弾性部材4から構成されている。また、ここで言う「先端部」9Cとは、起立部9Aにおいて幅方向Xの最も内方側の端縁の部分を意味する。図2に示すように、ナプキン10Aにおいて、立体ガード部9の起立部9Aは基端部9Bよりも幅方向Xの内方側にある。起立部9Aの先端部9Cは表面層1の縦方向Yに沿った両側よりも幅方向Xの内方側の肌当接面側(上方)に配置されている。
立体ガード部9の起立部9Aと基端部9Bはより詳細には下記の通りである。
【0019】
基端部9Bは、表面層1と重なるサイドシート5の一部を含んで構成される。このサイドシート5の一部を基端サイドシート部5Bと言い、基端サイドシート部5Bと重なる表面層1の部分を基端側表面層部1Bと言う。基端部9Bを構成する基端サイドシート部5Bは、中間部Cから前方部F及び後方部Rに亘って縦方向Yに延在して配されている。
この基端サイドシート部5Bは、縦方向Yに沿って配された基端固定部11において、基端側表面層部1Bと接合されている。また、基端サイドシート部5Bは、前方部F及び後方部Rにおいて、表面層1と、基端固定部11及び前後端固定部12(12B)によって接合されている。
【0020】
起立部9Aは、基端部9Bからサイドシート5が幅方向Xの内方側に延出する部分と、弾性部材4とを含んで構成されている。このサイドシート5の部分を起立サイドシート部5Aと言い、自然状態で起立サイドシート部5Aと重なる表面層1の部分を起立側表面層部1Aと言う。起立部9Aを構成する起立サイドシート部5A及び弾性部材4は、中間部Cから前方部F及び後方部Rに亘って縦方向Yに延在して配されている。
図2に示すように、ナプキン10Aにおいては、起立サイドシート部5Aが折り返されて二重構造にされており、二重構造の内側の折り返し部の近傍に弾性部材4が縦方向に配されている。ナプキン10Aにおいては、弾性部材4を含む部分が起立部9Aの先端部9Cとなっている。先端部9Cにおいて、弾性部材4は、縦方向に伸長した状態で配されている。弾性部材4の前後端部は、その位置の起立サイドシート部5Aと共に、図1及び3に示すように、ナプキン10Aの前方部F及び後方部Rの前後端固定部12(12A)、12(12A)において固定されている。そのため、弾性部材4は、固定された前後端の間において伸縮する。ナプキン10の自然状態(弛緩状態)において、弾性部材4の収縮力で起立サイドシート部5Aが収縮しながら基端部9Bから着用者の肌に向けて立ち上がるようにされている。ナプキン10Aの装着状態において、起立部9Aが表面層1の肌当接面側で着用者の肌面に当接して、排泄液の横漏れを抑える作用をする。また、起立部9Aは、弾性部材4の伸縮力により、着用者の肌面の変形等にもよく追従して、肌面への当接を維持するように作用する。
【0021】
図1に示すナプキン10Aにおいて、前後端固定部12は、前述の前後端固定部12Aと前後端固定部12Bとを有する。図1においては、前後端固定部12Aは平面視において略四角形状であり、前後端固定部12Bは平面視において線状の接合部を波状に繋げた形状である。前後端固定部12(12A及び12B)の平面視における形状は、図1に示すものに特に限定されない。前後端固定部12の形状は、ある太さの線状でもよく、ある一定の面積を占める矩形状でもよく、これらの組合せでもよい。また、線状とする場合には、線を複数並列に又は波状に配置してもよい。また、これら前後端固定部12A及び12Bを併用することは任意であり、いずれか一方のみでもよく、これらとは異なる形態の固定部であってもよい。
【0022】
後端固定部12(12A、12B)及び前述の基端固定部11は、この種の物品における種々の手段によって形成することができる。例えば、接着剤による接着や、エンボス処理による圧着などが挙げられる。接着剤としては、例えばホットメルト型のものなどが挙げられる。
【0023】
なお、起立部9Aは、上記のような二重構造を含む積層構造でもよく、積層構造を有さなくてもよい。積層構造である場合には、積層構造は、基端部9Bに達するように形成されていてもよく、弾性部材4を含む折り返し部の近傍付近のみに形成されていてもよい。また、弾性部材4の本数は、図2に示す1本に限らず、複数本であってもよい。
【0024】
ナプキン10Aは、立体ガード部9の起立部9Aの少なくとも一部に冷感剤を含む。冷感剤は、少なくとも起立部9Aの先端部9Cと先端部9C周辺の着用者の肌面に接する部分とに含まれることが好ましい。ここで言う「冷感剤」とは、揮発して、着用者の皮膚及び/又は粘膜表面の温度受容器を刺激して、皮膚及び/又は粘膜表面上の温度を変化させることなしに、着用者に冷感、爽快感を感じさせることができる剤である。
【0025】
上記のように冷感剤を含有させることによって、着用者の姿勢等の変化によってナプキン10Aが肌面から離れるような場合でも、立体ガード部9の起立部9Aが肌面に追従して当接を維持し、安定した冷感作用を着用者に付与することができる。また、吸収層3の幅方向中央を側縁部3Eよりも厚くして液吸収容量を大きくする態様において、肌面から離れやすい側縁部3Eの位置で冷感剤を肌面に追従させて、同様に、安定した冷感作用を着用者に付与することができる。
【0026】
冷感剤を含む立体ガード部9は、図4(A)に示すように、ナプキン10Aを自然状態とした際に、起立部9Aを構成する起立サイドシート部5Aの表面に、複数の凸部51と凹部52とを有する凹凸構造53を有することが好ましい。この場合、凸部51における冷感剤坪量よりも凹部52における冷感剤坪量の方が多いことが好ましい。着用者の肌に優先的に接触する凸部51に含有される冷感剤量を相対的に少なくすることにより、冷感剤による肌への直接的な刺激を抑えて、冷感が強くなりすぎることを抑制することができる。また、凹部52に多く含有される冷感剤により、冷感の持続性を高めることができる。
【0027】
ここで言う「冷感剤坪量」とは、単位面積当たりの冷感剤の含有量を言う。この冷感剤坪量は、下記の方法によって測定することができる。
【0028】
(冷感剤の含有の有無、含有量の測定方法)
吸収性物品の対象部材又は対象部位から冷感剤を溶媒で抽出し、抽出溶液をガスクロマトグラフィ法(GC)で分析することができる。測定は、ガスクロマトグラフに取り付けた水素炎イオン化型検出器(FID)で行い、例えば、Agilent technologies製7890Aにより測定することができる。予め冷感剤を構成する化合物の濃度とピーク面積の関係を検量線化しておき、当該検量線を元に定量作業を行う。
冷感剤が乳酸メンチル及び/又はメントールを含む場合を例に説明する。溶媒としてメタノールを使用して対象部材又は対象部位から乳酸メンチル及び/又はメントールを抽出する。メタノールを溶媒として、予め濃度の異なる3~5段階程度の乳酸メンチル溶液及び/又はメントール溶液を準備し、GCのクロマトグラムからそれぞれの濃度のピーク面積を算出し、標準試料として、n-ペンチルアルコールを用い、標準試料の濃度に対してそのピーク面積をプロットした検量線を作成する。検量線を作成した分析と同じ条件で抽出液の分析を行うことで、得られたピーク面積を検量線にあてはめて乳酸メンチル量及び/又はメントール量を算出する。また、得られた乳酸メンチル量及び/又はメントール量を、予め採取した対象部材又は対象部位の面積で除することにより、単位面積当たりの冷感剤量(冷感剤の坪量)を求めることができる。製品の対象部材又は対象部位ごとの冷感剤量を知るには、5℃のチャンバー内で製品を分解し、測定する材料部位を取り出すことで分析可能となる。また、得られた乳酸メンチル量及び/又はメントール量を、吸収性物品長さ方向の長さ(mm)で除し、100倍することで、製品長さ100mm当りの冷感剤量を求めることができる。
【0029】
凹部52における冷感剤坪量(W2)と凸部51における冷感剤坪量(W1)との比(W2/W1)は、上記の穏やかな冷感刺激を安定的に得やすい観点から1.05以上15以下が好ましく、1.3以上8以下がより好ましく、1.5以上5以下が更に好ましい。
【0030】
また、起立部9A(起立サイドシート部5A及び弾性部材4)に含まれる冷感剤坪量(W3)は、使用する冷感剤の種類によって適宜設定されるが、乳酸メンチルを例とした場合、安定的に穏やかな冷感作用を付与する観点から、0.05g/m以上5g/m以下が好ましく、0.1g/m以上3g/m以下がより好ましく、0.15g/m以上1.5g/m以下が更に好ましい。
【0031】
上記の凹凸構造53は、弾性部材4の収縮に伴う起立サイドシート部5Aの収縮によって生じ得る。また、凹凸構造53は、図4(A)及び(B)に示すように、弾性部材4と起立サイドシート部5Aとが、縦方向に間欠配置された接合部54によって接合されることによって形成されてもよい。この場合、接合部54、54間に凸部51が配され、接合部54の位置に凹部52が配される。接合部54によって凹凸構造53が形成される方が、凸部51と凹部52との配置間隔や高低差を所望の範囲に好適に設定することができ好ましい。接合部54は、例えばこの種の物品に用いされる種々の接着剤によってなることが好ましく、例えばホットメルト型の接着剤などが挙げられる。
【0032】
図4(A)及び(B)に示すように、弾性部材4と起立サイドシート部5Aとが、縦方向に間欠配置された接合部54の接着剤によって接合される場合、冷感剤が前記接着剤と高親和性であることが好ましい。ここでいう「高親和性」とは、起立部9Aを構成する、弾性部材4及び起立サイドシート部5Aよりも、接着剤に対して、単位重量当たりの冷感剤移行性並びに保持性のいずれか一方又は両方が高いことをいう。接着剤と高親和性の冷感剤を用いると、冷感剤が接着剤の存在する部位に向けて移行し、接着剤表面ないしは内部に保持されるため、接着剤の存在する部位における冷感剤坪量が高まる。この冷感剤の移行により、製造時に冷感剤を起立部9Aの全面に均一に塗工しても、接着剤の存在する部位の冷感剤坪量がそれ以外の部位の冷感剤坪量に対して高まるように冷感剤坪量を好適に制御することができる。これにより、前述した凸部51と凹部52における冷感剤坪量の差による肌への過度な刺激低減の作用をより好適に発現させることができる。また、接着剤の作用により冷感剤の揮発が抑制されるため、凹部52に多く含有される冷感剤により、凸部51の冷感材料が低減しても、冷感の持続性を高めることができる。接着剤と高親和性の冷感剤については後述する。
【0033】
また、自然状態でサイドシート5と表面層1とが重なる領域Dにおいて、サイドシート5と表面層1との間に冷感剤が含まれていることが好ましい。ここで「サイドシート5と表面層1との間に冷感剤が含まれる」とは、冷感剤がサイドシート5及び表面層1のいずれか一方又は両方に含まれていることを意味する。具体的には、起立部9Aを構成する部材に加えて、起立側表面層部1A、基端サイドシート部5B及び基端側表面層部1B、基端固定部11の少なくともいずれかに冷感剤が含まれていることが好ましい。特に、基端固定部11並びにこれと重なる基端サイドシート部5B及び基端側表面層部1Bに冷感剤が含まれることがより好ましい。これにより、この領域Dが冷感剤の成分の貯蔵部となり、冷感の持続性を高めることができる。
この領域Dには、立体ガード部9の基端部9Bにおいて、前述のとおり、基端サイドシート部5Bと基端側表面層部1Bとを接合する基端固定部11が縦方向Yに沿って配されている。基端固定部11は、接着剤によってなることが好ましく、前記領域Dにおいて、前記接着剤が配されている部位の冷感剤坪量が、前記接着剤が配されていない部位の冷感剤坪量よりも多くされていることがより好ましい。ここで言う「接着剤が配されている部位」とは、接着剤からなる基端固定部11並びにこれと重なる基端サイドシート部5B及び基端側表面層部1Bを意味する。また、「前記接着剤が配されていない部位」とは、領域Dに配されるサイドシート5(起立サイドシート部5A、基端サイドシート部5B)、弾性部材4、表面層(起立側表面層部1A、基端部側表面層部1B)のうち、上記「接着剤が配されている部位」を除く部分である。この接着剤は、縦方向に連続配置してもよく、離間して配置してもよい。このような冷感剤の分布は、上述のとおり、冷感剤として接着剤と高親和性の冷感剤を用いることにより形成することができる。立体ガード部9の冷感剤の残存量が低減しても、接着剤が配されている部位に移行した冷感剤により、適度な冷感をより長く維持することができる。
【0034】
前記立体ガード部9の冷感剤を含む領域の少なくとも一部が、自然状態にしたナプキン10Aの平面視において吸収層3の幅方向Xの側縁部3Eの内側近傍の部分と重なっていることが好ましい。具体的には、起立サイドシート部5A及び弾性部材4に冷感剤が配され、この領域が吸収層3の幅方向Xの側縁部3Eよりも内方側であって、かつ側縁部3Eの近傍の部分と重なることが好ましい。これにより、吸収層3の幅方向Xの側縁部3Eに排泄液が到達する前に、立体ガード部9の冷感剤による冷感作用が発現して、着用者にナプキン10Aの取り換え時期を知らせることができる。このとき、冷感剤が配された領域への排泄液の付着により冷感作用が高まり、交換の目安をより判断しやすい。一般に、吸収層3を排泄液がはみ出すまで使用してしまうと、液の拡散が急に早くなって漏れが生じやすくなる。これに対し、本実施形態のナプキン10Aにおいては、幅方向外方への液漏れが生じる前に冷感剤による刺激で、ナプキン10Aの交換時期の目安とすることができる。
【0035】
平面視において、起立サイドシート部5Aと側縁部3Eの内側近傍の部分との重なる範囲としては、吸収層全幅を100%とした場合、漏れ抑止と吸収量確保を両立する観点から、左右の重なる範囲の合計として1%以上50%以下が好ましく、5%以上40%以下がより好ましく、10%以上30%以下が更に好ましい。
【0036】
立体ガード部9は、前述のとおり、縦方向Yの前後(ナプキン10Aの前方部F及び後方部R)において、起立不能に表面層1と固定された前後端固定部12を有する。この前後端固定部12に冷感剤を含むことが好ましい。冷感剤を含む前後端固定部12としては、前後端固定部12A及び12Bの少なくとも1方であることが好ましく、両方であることがより好ましい。これにより、ナプキン10Aの前方から後方の広い範囲において冷感効果を得ることができる。
【0037】
立体ガード部9の弾性部材4は、冷感を感じる色に着色されていることが好ましい。ここで、「冷感を感じる色」とは、低温の水、氷などの色と認識されるような、視覚により冷感を感じることができる色を言う。具体的には、青色(薄い青色を含む)、緑色等であり、青色が好ましい。視覚効果により、冷感をより強調することができる。
【0038】
更に、ナプキン10Aにおいては、ウイング部6及び/又は後方フラップ部8にも冷感剤を含有させてもよい。ナプキン10Aの広い範囲において冷感効果を得ることができる。
【0039】
次に、図5~7には、本発明の吸収性物品の別の好ましい実施形態である、生理用ナプキン10B(以下、ナプキン10Bとも言う)が示されている。ナプキン10Bについては、ナプキン10Aと異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。ナプキン10Bは、ナプキン10Aとは立体ガード部9の構成が異なり、それ以外については、ナプキン10Aに係る事項を適用することができる。
【0040】
図5及び図6に示すように、ナプキン10Bにおいては、起立部9Aは、基端部9Bから幅方向Xの内方側に延出し、そこから更に幅方向Xの外方側に折り返された形状を有する。起立部9Aの幅方向Xの外方側に折り返された部分は、表面層1の幅方向Xの両側よりも幅方向外側に位置する領域まで延出している。この起立部9Aにおいては、折り返し部分(折り目部分)が幅方向Xの最も内方側の端縁の部分であり、起立部9Aの先端部9Cである。
起立部9Aが幅方向Xの外方に折り返された部分を有することにより、吸収層3と立体ガード部9との重なり部分が少なくなり、吸収面が広くなるため、排泄液をより効果的に吸収することができる。また、立体ガード部9の起立部9Aの幅方向の長さ(起立部9Aの折り返しを広げた場合の幅方向の長さ)をより長くすることができ、防漏性を高めることができる。
【0041】
ナプキン10Bにおいても、ナプキン10Aと同様に、起立部9Aの少なくとも一部に冷感剤を含んでいる。
【0042】
ナプキン10Bにおいては、弾性部材4が3本、起立部9Aを成す二重構造の内側に離間して配されている。弾性部材4を複数本配することにより、幅方向に長い起立部9Aを効果的に起立させることができる。図5及び図7に示すように、ナプキン10Bにおいては、立体ガード部9は、前方部F及び後方部Rにおいて、起立不能に前記表面層と固定された前後端固定部12を有する。後方部Rにおいては、前後端固定部12は、ナプキン10Aの場合よりも中間部Cよりに配置されている。具体的には、前後端固定部12は、後方部Rの縦方向の長さの1/2の位置周辺に配置されている。このように、前後端固定部12の位置を移動することにより、自由端部9Aの起立領域の縦方向の長さを所望の範囲に設定することができる。
【0043】
生理用ナプキン10A、10Bを構成する部材の形成材料は、この種の物品に用いられるものを特に制限なく用いることができる。以下では、生理用ナプキン10A及び10Bをまとめて生理用ナプキン10という(以下、ナプキン10とも言う)。
【0044】
冷感剤としては、着用者の皮膚及び粘膜のいずれか一方又は両方の表面の温度受容器を刺激して、皮膚及び粘膜のいずれか一方又は両方の表面上の温度を変化させることなしに、着用者に爽快感を伝えることのできる種々の剤を用いることができる。例えば、シクロヘキシル誘導体、シクロヘキサノール誘導体、カルボキサミド類など、特開2015-12918号公報の段落[0006]~[0086]に記載のものが挙げられる。その中でも、匂いによる爽快感と速攻性、持続性の観点から、水不溶性又は水難溶性のものが好ましい。水不溶性又は水難溶性の冷感剤は体液とともに非肌面側へ移行しにくいことから、冷感は持続しやすい。水不溶性又は水難溶性のものとしては、乳酸メンチル、メントールが好ましい。ここで言う「水不溶性又は水難溶性」とは、25℃の水1Lに対して1g以下の溶解性であることを言い、特に「水不溶性」は、25℃の水1Lに対して0.1g以下の溶解性であることを言う。
冷感剤は、接着剤と高親和性であることが好ましい。接着剤と高親和性である冷感剤としては、使用する接着剤によって適宜設定されるが、メントール及び乳酸メンチルの少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、冷感剤がメントール及び乳酸メンチルのうち少なくとも1種を含む場合、接着剤に含まれる好ましい成分としては、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、等が挙げられる。
冷感剤は、種々の方法によってナプキン10に含ませることができる。例えば、溶媒に溶解させた状態でナプキン10に含ませてもよく、溶媒を用いずに含ませてもよい。また冷感剤はマイクロカプセルに包むなどデリバリー手段を伴ってナプキン10に含ませてもよい。前記溶媒としては、通常用いられる種々のものを採用できる。例えば、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0045】
冷感剤としては、特に、メントール及び乳酸メンチルを含むことが、冷感効果を着用後素早く感じられると共に穏やかなものとし、持続性を高めることから好ましい。同様の観点から、メントールと乳酸メンチルの含有量は、前者/後者の質量比で、0.01以上が好ましく、更に0.02以上が好ましく、また、0.2以下が好ましく、更に0.15以下が好ましい。
【0046】
吸収層3としては、吸収性物品に通常用いられる種々の形態のものを特に制限なく採用することができる。例えば、親水性繊維の積繊体又は親水性繊維と高吸収性ポリマー材との混合積繊体を親水性の被覆シートで覆ったものでもよい。また、親水性繊維からなる2つのシート状の繊維層間に高吸収性ポリマー材を挟持して固定した薄い吸収性シートから構成されたものでもよい。吸収性シートの形成にあたっては、高吸収性ポリマー材が湿潤によって発現する粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを利用して一体化することができる。作製は通常用いられる種々の方法によって行うことができ、湿式、乾式いずれの方式によってもよい。
吸収性シートは厚さを3.0mm以下に抑えながら、高吸収性ポリマー材をシートの平面方向に分散配置させているためゲルブロキングを起こし難く、高い吸収力を有する。例えば、特開平8-246395号公報の段落[0019]~[0131]に記載のものなどが挙げられる。
【0047】
吸収層3としては、吸収性シートが折り畳まれた積層構造を有することが好ましい。図2及び3に示す吸収層3は、前述した高吸収性ポリマー及び親水性繊維を含む吸収性シートから構成されている。吸収性シートが積層された構造を有する。より具体的には、吸収層3は、本体吸収性シート31と、本体吸収性シート31の非肌面側に配された中央吸収性シート32とを有し、両吸収性シートが折り畳まれた積層構造を有する。前述した防漏溝7は、本体吸収性シート31に配されていることが好ましい。
【0048】
本体吸収性シート31は、中央吸収性シート32の周縁の少なくとも一部から外方に延出して中央吸収性シート32に積層されている。以下に、より具体的な構成を説明する。
本体吸収性シート31は、裏面層2側で幅方向の両端部を重ね合わせて三つ折りされた、折り畳み構造を有する。本体吸収性シート31は、中間部Cから前方部F及び後方部Rに及ぶ長さを有し、吸収層3の外形形状をなしている。
中央吸収性シート32は、表面層1側で幅方向の両端部を重ね合わせて三つ折りされた、折り畳み構造を有する。中央吸収性シート32は、折り畳まれた状態において、折り畳まれた本体吸収性シート31よりも幅狭であり、本体吸収性シート31よりも縦方向の長さが短く、中間部Cの幅方向中央に配されている。中央吸収性シート32は、本体吸収性シート31の折り畳み構造の内部に収められている。この配置において、中央吸収性シート32は、少なくとも本体吸収性シート31の肌面側よりも非肌面側に配されている。また、中央吸収性シート32はナプキン10Aの中間部に位置することが好ましい。
【0049】
中央吸収性シート32の折り畳み構造としては、図2に示す態様に限らず、種々のものとすることができる。例えば、中央吸収性シート32を幅方向の両端部をそれぞれ肌面側と非肌面側とに折り返しS字状に折り畳んだ態様でもよく、幅方向に二つ折りした態様でもよく、幅方向に三つ折りした各部分の長さが等しくなるように折り畳んだ態様でもよい。
【0050】
本体吸収性シート31の折り畳み構造は、図2に示す態様に限らず、種々のものとすることができる。例えば、中央吸収性シート32の折り畳み構造と同様としてもよい。また肌面側と非肌面側とに分かれた2枚のシートを積層した構造であってもよい。更に、本体吸収性シート31の折り畳み構造の内部に中央吸収性シート32を内包する態様に限定されず、内包せずに、本体吸収性シート31の折り畳み構造の非肌面側に中央吸収性シート32を積層する態様であってもよい。
【0051】
吸収層3がどのような積層構造を有していても、吸収性シートの重なり部分が接合されないことが好ましい。
【0052】
吸収層3を構成する親水性繊維としては、疎水性の繊維を親水化処理したもの、それ自体が親水性であるものが挙げられる。特に、それ自体が親水性でかつ保水性を有するものが好ましい。後者の親水性繊維としては、天然系の繊維、セルロース系の再生繊維又は半合成繊維が好ましい例として挙げられる。親水性繊維としては、特にパルプ、レーヨンが好ましく、パルプがより好ましい。更にセルロース繊維の分子内及びは分子間のいずれか一方又は両方を架橋させた架橋セルロース繊維や木材パルプをマーセル化処理して得られるような嵩高性のセルロース繊維を用いてもよい。パルプとしては、針葉樹クラフトパルプもしくは広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ或いはワラパルプ等の天然セルロース繊維等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。これらのパルプは1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
吸収層3を構成する高吸収性ポリマー材としては、例えば、アクリル酸又はアクリル酸塩を主成分とし、場合によって架橋剤を添加してなる水溶性のエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られるヒドロゲル材料が挙げられる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン及びポリビニルピリジンの架橋物、デンプン-ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合物のケン化物、デンプン-ポリ(メタ)アクリル酸グラフト共重合物、デンプン-ポリ(メタ)アクリルエステルグラフト共重合物の加水分解物などが挙げられる。これらの高吸水性ポリマー材は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。自重の20倍以上の液を吸収・保持できゲル化し得るものが好ましい。
高吸収性ポリマー材の形状は、吸収層に用いられる種々の形状を特に制限なく用いることができる。例えば、球状、粒状、繊維状、俵状、塊状などが挙げられる。
【0054】
表面層1は、液透過性を有する種々のものを用いることができる。肌触りの良さを考慮すると、親水性の不織布が好ましく、サーマルボンド不織布がより好ましく、エアスルー不織布が特に好ましい。不織布を構成する繊維は、親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工した繊維である。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、通常用いられる親水化剤を用いることができる。
【0055】
裏面層2としては、防漏性を有する種々のものを用いることができる。例えば、非透湿性もしくは透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布とを貼り合わせたもの、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、非透湿性フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。
【0056】
液拡散層としては、親水性を有し液拡散性に優れたものが好ましい。熱可塑性繊維を含む不織布などが挙げられる。不織布としては、各種の製法によって得られた不織布を用いることができる。例えば、カード法又はエアレイド法により得た繊維ウエブにエアスルー法で繊維同士の熱融着点を形成したエアスルー不織布、カード法により得た繊維ウエブにヒートロール法で繊維同士の熱融着点を形成したヒートロール不織布、ヒートエンボス不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、レジンボンド不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0057】
弾性部材4としては、特に限定されないが、天然ゴム、ポリウレタン系樹脂、発泡ウレタン系樹脂、ホットメルト系伸縮部材等の伸縮性素材を糸状(糸ゴム)又は帯状(平ゴム)に形成したものが好ましく用いられる。
【0058】
サイドシート5としては、撥水性の不織布が好ましく、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布等の中から撥水性の物、又は撥水処理した種々の不織布を用いることができる。特に好ましくは、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド-メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。
【0059】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態の生理用ナプキンに制限されるものではなく、例えばパンティライナー、失禁パッド、尿とりパッド、使い捨ておむつ等に適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、上記構成部材の他、用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。
【0060】
また、本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンやパンティライナーなど1製品毎にカバンなどに入れて持ち運びされる物である場合、個包装されていることが好ましい。具体的には、表面層が内側になるよう縦方向に折り畳まれて、個包装用の外方材によって包まれた吸収性物品個包装体とされていることが好ましい。個包装体とすることで、肌に触れる表面層(使用面)の衛生を守りつつ、携帯性の高い物品することこができ、使用者の利便性を高めることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 表面層
1A 起立側表面層部
1B 基端側表面層部
2 裏面層
3 吸収層
3E 幅方向両端縁
4 弾性部材
5 サイドシート
5A 起立サイドシート部
5B 基端サイドシート部
6 ウイング部
7 防漏溝
8 後方フラップ部
9 立体ガード部
9A 起立部
9B 基端部
9C (起立部の)先端部
10A、10B 生理用ナプキン
11 基端固定部
12 前後端固定部
15 外周シール部
31 本体吸収性シート
32 中央吸収性シート
54 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7