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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】直流電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20230228BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20230228BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
H02M3/00 W
H02J7/34 B
H02J7/34 J
H02J1/00 306K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022071053
(22)【出願日】2022-04-22
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 航
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-191698(JP,A)
【文献】特開2021-197823(JP,A)
【文献】特開2016-220352(JP,A)
【文献】国際公開第2020/161767(WO,A1)
【文献】特開2018-121479(JP,A)
【文献】特開平10-112942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H02J 7/34
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷および充電用電源の一方または両方が接続される直流母線と、
第1エネルギを貯留し前記第1エネルギから直流電力を出力する第1電源と、
第2エネルギを貯留し前記第2エネルギから直流電力を出力する第2電源と、
前記第1電源と前記直流母線との間に配置され、前記第1電源側の第1電源電圧を前記直流母線側の第1出力電圧に昇降圧する第1変換装置と、
前記第2電源と前記直流母線との間に配置され、前記第2電源側の第2電源電圧を前記直流母線側の第2出力電圧に昇降圧する第2変換装置と、
前記第1電源が貯留する前記第1エネルギの残量に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、前記第1物理量を示す信号を出力する第1出力部と、
前記第2電源が貯留する前記第2エネルギの残量に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、前記第2物理量を示す信号を出力する第2出力部と、
前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1変換装置に対する第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する第2出力電圧指令値を決定し、決定された前記第1出力電圧指令値を前記第1変換装置に出力し、決定された前記第2出力電圧指令値を前記第2変換装置に出力する制御回路と
を具備し、
前記第1変換装置は、前記第1出力電圧指令値と、第1電圧ドループ特性とに基づいて、前記第1電源電圧を前記第1出力電圧に昇降圧し、
前記第2変換装置は、前記第2出力電圧指令値と、第2電圧ドループ特性とに基づいて、前記第2電源電圧を前記第2出力電圧に昇降圧する
直流電力供給システム。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定する
請求項1に記載の直流電力供給システム。
【請求項3】
前記第1電源は、充電可能な第1バッテリであり、
前記第2電源は、充電可能な第2バッテリであり、
前記第1出力部は、前記第1バッテリの第1バッテリ残量に応じて変化する第1バッテリ電圧を検出する第1電圧検出器を含み、
前記第2出力部は、前記第2バッテリの第2バッテリ残量に応じて変化する第2バッテリ電圧を検出する第2電圧検出器を含み、
前記制御回路は、前記第1バッテリ電圧および前記第1バッテリの放電特性に基づいて、前記第1バッテリ残量を算出し、前記第2バッテリ電圧および前記第2バッテリの放電特性に基づいて、前記第2バッテリ残量を算出し、
前記制御回路は、前記第1バッテリ残量が前記第2バッテリ残量よりも少ないとき、前記第1バッテリの電力負担割合が低減され、前記第2バッテリの電力負担割合が増加されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定する
請求項1に記載の直流電力供給システム。
【請求項4】
前記第1電源は、充電可能な第1バッテリであり、
前記第2電源は、充電可能な第2バッテリであり、
前記第1出力部は、前記第1バッテリの第1推定充電量を算出する第1の推定充電量算出部を含み、
前記第2出力部は、前記第2バッテリの第2推定充電量を算出する第2の推定充電量算出部を含み、
前記制御回路は、前記第1推定充電量が、前記第2推定充電量よりも少ないとき、前記第1バッテリの電力負担割合が低減され、前記第2バッテリの電力負担割合が増加されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定する
請求項1に記載の直流電力供給システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が多い方の電力受電割合が低減されるように、前記第1変換装置に対する前記第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する前記第2出力電圧指令値を決定する
請求項1に記載の直流電力供給システム。
【請求項6】
負荷および充電用電源の一方または両方が接続される直流母線と、
第1エネルギを貯留し前記第1エネルギから直流電力を出力する第1電源と、
第2エネルギを貯留し前記第2エネルギから直流電力を出力する第2電源と、
前記第1電源と前記直流母線との間に配置され、前記第1電源側の第1電源電圧を前記直流母線側の第1出力電圧に昇降圧する第1変換装置と、
前記第2電源と前記直流母線との間に配置され、前記第2電源側の第2電源電圧を前記直流母線側の第2出力電圧に昇降圧する第2変換装置と、
前記第1電源が貯留する前記第1エネルギの残量に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、前記第1物理量を示す信号を出力する第1出力部と、
前記第2電源が貯留する前記第2エネルギの残量に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、前記第2物理量を示す信号を出力する第2出力部と、
前記第1変換装置の第1出力電流を検出し、前記第1出力電流を示す第1電流信号を第1ドループ制御部に出力する第1電流検出器と、
前記第2変換装置の第2出力電流を検出し、前記第2出力電流を示す第2電流信号を第2ドループ制御部に出力する第2電流検出器と、
前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1ドループ制御部に対する第1ドループ制御値、および、前記第2ドループ制御部に対する第2ドループ制御値を決定し、決定された前記第1ドループ制御値を前記第1ドループ制御部に出力し、決定された前記第2ドループ制御値を前記第2ドループ制御部に出力する制御回路と、
前記制御回路から受け取る前記第1ドループ制御値に基づいて、前記第1変換装置の第1電圧ドループ特性を調整する前記第1ドループ制御部と、
前記制御回路から受け取る前記第2ドループ制御値に基づいて、前記第2変換装置の第2電圧ドループ特性を調整する前記第2ドループ制御部と
を具備し、
前記第1ドループ制御部は、調整後の前記第1電圧ドループ特性と、前記第1出力電流とに基づいて、前記第1変換装置に対する第1出力電圧指令値を決定し、決定された前記第1出力電圧指令値を前記第1変換装置に出力し、
前記第2ドループ制御部は、調整後の前記第2電圧ドループ特性と、前記第2出力電流とに基づいて、前記第2変換装置に対する第2出力電圧指令値を決定し、決定された前記第2出力電圧指令値を前記第2変換装置に出力する
直流電力供給システム。
【請求項7】
前記制御回路は、前記第1電源および前記第2電源のうち、エネルギ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、前記第1ドループ制御部に対する前記第1ドループ制御値、および、前記第2ドループ制御部に対する前記第2ドループ制御値を決定する
請求項6に記載の直流電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
並列に接続されたバッテリから直流母線に電力を出力するシステムにおいて、各バッテリと直流母線との間の変換装置によって、直流母線に出力される出力電流を制御する技術が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、スイッチング電源システムが開示されている。特許文献1に記載のスイッチング電源システムでは、発電装置と直流母線との間に、出力電流が増加するにつれて出力電圧が降下するドループ特性が付加されたスイッチング電源が配置されている。
【0004】
より具体的には、特許文献1に記載のスイッチング電源システムでは、電力供給源としての各発電装置の電力供給能力に対応して、直流母線への出力電流が適正に分担されるように、変換装置としての各スイッチング電源に、出力電流が増加するにつれて出力電圧が降下するドループ特性が付加され、当該ドループ特性があらかじめ設定されている。各変換装置の作動に際して、制御タイミングのズレや制御誤差等が生じ得る。このため、直流母線への出力の目標値である目標電圧が複数の変換装置間で同一に設定されている場合においても、各変換装置の実際の出力電圧には誤差が生じ得る。そこで、特許文献1に記載のスイッチング電源システムでは、変換装置に、ドループ特性を付加することにより、特定の変換装置の出力電圧が他の変換装置の出力電圧よりも高くなることに起因して当該特定の変換装置から集中的に電流が出力されることを防ぐ。
【0005】
図14に、従来技術における直流電力供給システムの一例を示す。図14において、直流電力供給システムは、負荷91、直流母線92、第1のバッテリ群94A、第2のバッテリ群94B、第1のバッテリマネジメントユニット93A、第2のバッテリマネジメントユニット93B、第1の変換装置95A、第2の変換装置95B、第1の電流検出器96A、第2の電流検出器96B、第1のドループ制御部97A、および、第2のドループ制御部97Bを有する。
【0006】
図14に記載の直流電力供給システムにおいて、第1のドループ制御部97Aは、第1の電流検出器96Aが検出する出力電流が増加すると第1の変換装置95Aの出力電圧が降下するドループ特性が発揮されるように、第1の変換装置95Aに出力電圧指令値を送信する。また、第2のドループ制御部97Bは、第2の電流検出器96Bが検出する出力電流が増加すると第2の変換装置95Bの出力電圧が降下するドループ特性が発揮されるように、第2の変換装置95Bに出力電圧指令値を送信する。こうして、第1の変換装置95Aおよび第2の変換装置95Bのうちの一方の出力電圧が、第1の変換装置95Aおよび第2の変換装置95Bのうちの他方に出力電圧よりも高くなることを防ぎ、第1の変換装置95Aおよび第2の変換装置95Bのうちの一方から集中的に電流が出力されることを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-22331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、容量または放電特性が異なるバッテリが組み合わせられる場合、あるいは、同種のバッテリに個体差がある場合等において、特許文献1に示されたスイッチング電源システムでは、先にバッテリ残量がゼロとなる個体が生じる。この場合、バッテリ残量がゼロの個体を電源とする変換装置は動作を停止し、残機の負荷がステップ状に増加する。その結果、残機に過負荷が作用して、システムの停止に至るおそれがある。また、並列配置された動作中の変換装置の数が減少するため、冗長性も損なわれる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、変換装置の動作停止を抑制し、変換装置の冗長性を維持することにより、安定した直流電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態における直流電力供給システムは、負荷および充電用電源の一方または両方が接続される直流母線と、第1エネルギを貯留し前記第1エネルギから直流電力を出力する第1電源と、第2エネルギを貯留し前記第2エネルギから直流電力を出力する第2電源と、前記第1電源と前記直流母線との間に配置され、前記第1電源側の第1電源電圧を前記直流母線側の第1出力電圧に昇降圧する第1変換装置と、前記第2電源と前記直流母線との間に配置され、前記第2電源側の第2電源電圧を前記直流母線側の第2出力電圧に昇降圧する第2変換装置と、前記第1電源が貯留する前記第1エネルギの残量に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、前記第1物理量を示す信号を出力する第1出力部と、前記第2電源が貯留する前記第2エネルギの残量に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、前記第2物理量を示す信号を出力する第2出力部と、前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1変換装置に対する第1出力電圧指令値、および、前記第2変換装置に対する第2出力電圧指令値を決定し、決定された前記第1出力電圧指令値を前記第1変換装置に出力し、決定された前記第2出力電圧指令値を前記第2変換装置に出力する制御回路とを具備し、前記第1変換装置は、前記第1出力電圧指令値と、第1電圧ドループ特性とに基づいて、前記第1電源電圧を前記第1出力電圧に昇降圧し、前記第2変換装置は、前記第2出力電圧指令値と、第2電圧ドループ特性とに基づいて、前記第2電源電圧を前記第2出力電圧に昇降圧することを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の実施形態における直流電力供給システムは、負荷および充電用電源の一方または両方が接続される直流母線と、第1エネルギを貯留し前記第1エネルギから直流電力を出力する第1電源と、第2エネルギを貯留し前記第2エネルギから直流電力を出力する第2電源と、前記第1電源と前記直流母線との間に配置され、前記第1電源側の第1電源電圧を前記直流母線側の第1出力電圧に昇降圧する第1変換装置と、前記第2電源と前記直流母線との間に配置され、前記第2電源側の第2電源電圧を前記直流母線側の第2出力電圧に昇降圧する第2変換装置と、前記第1電源が貯留する前記第1エネルギの残量に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、前記第1物理量を示す信号を出力する第1出力部と、前記第2電源が貯留する前記第2エネルギの残量に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、前記第2物理量を示す信号を出力する第2出力部と、前記第1変換装置の第1出力電流を検出し、前記第1出力電流を示す第1電流信号を第1ドループ制御部に出力する第1電流検出器と、前記第2変換装置の第2出力電流を検出し、前記第2出力電流を示す第2電流信号を第2ドループ制御部に出力する第2電流検出器と、前記第1物理量および前記第2物理量に基づいて、前記第1ドループ制御部に対する第1ドループ制御値、および、前記第2ドループ制御部に対する第2ドループ制御値を決定し、決定された前記第1ドループ制御値を前記第1ドループ制御部に出力し、決定された前記第2ドループ制御値を前記第2ドループ制御部に出力する制御回路と、前記制御回路から受け取る前記第1ドループ制御値に基づいて、前記第1変換装置の第1電圧ドループ特性を調整する前記第1ドループ制御部と、前記制御回路から受け取る前記第2ドループ制御値に基づいて、前記第2変換装置の第2電圧ドループ特性を調整する前記第2ドループ制御部とを具備し、前記第1ドループ制御部は、調整後の前記第1電圧ドループ特性と、前記第1出力電流とに基づいて、前記第1変換装置に対する第1出力電圧指令値を決定し、決定された前記第1出力電圧指令値を前記第1変換装置に出力し、前記第2ドループ制御部は、調整後の前記第2電圧ドループ特性と、前記第2出力電流とに基づいて、前記第2変換装置に対する第2出力電圧指令値を決定し、決定された前記第2出力電圧指令値を前記第2変換装置に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、変換装置の動作停止を抑制し、変換装置の冗長性を維持することにより、安定した直流電力供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施形態における直流電力供給システムの回路構成の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、変換装置の電圧ドループ特性について説明するための図である。
図3図3は、比較例に関し、バッテリ残量と、変換装置に対する出力電圧指令値との関係の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に関し、バッテリ残量と、変換装置に対する出力電圧指令値との関係の一例を示す図である。
図5図5は、第1変換装置が電圧ドループ特性を有する条件下で、第1変換装置に対する第1出力電圧指令値が変更される様子を模式的に示す図である。
図6図6は、第1の実施形態における直流電力供給システムの回路構成の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、比較例に関し、バッテリ残量と、変換装置に対する出力電圧指令値との関係の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に関し、バッテリ残量と、変換装置に対する出力電圧指令値との関係の一例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態における直流電力供給システムの回路構成の一例を模式的に示す図である。
図10図10は、第3の実施形態における直流電力供給システムの回路構成の一例を模式的に示す図である。
図11図11は、第3の実施形態における直流電力供給システムの変換装置の電圧ドループ特性の一例を示す図である。
図12図12は、第1変換装置の電圧ドループ特性が変更された後の状態を模式的に示す図である。
図13図13は、第3の実施形態における直流電力供給システムの回路構成の一例を模式的に示す図である。
図14図14は、従来例における直流電力供給システムの回路構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態における直流電力供給システム100に関して、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同じ機能を有する部材、部位については、同一の符号が付され、同一の符号が付されている部材、部位について、繰り返しの説明は省略される。
【0015】
(第1の実施形態)
図1乃至図8を参照して、第1の実施形態における直流電力供給システム100Aについて説明する。図1は、第1の実施形態における直流電力供給システム100Aの回路構成の一例を模式的に示す図である。図2は、変換装置(5A、5B)の電圧ドループ特性について説明するための図である。図3は、比較例に関し、バッテリ残量と、変換装置(5A、5B)に対する出力電圧指令値との関係の一例を示す図である。図4は、第1の実施形態に関し、バッテリ残量と、変換装置(5A、5B)に対する出力電圧指令値との関係の一例を示す図である。図5は、第1変換装置5Aが電圧ドループ特性を有する条件下で、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値が変更される様子を模式的に示す図である。図6は、第1の実施形態における直流電力供給システム100Aの回路構成の一例を模式的に示す図である。なお、図6は、バッテリ(40A、40B)への充電が行われている様子を示す。図7は、比較例に関し、バッテリ残量と、変換装置(5A、5B)に対する出力電圧指令値との関係の一例を示す図である。図8は、第1の実施形態に関し、バッテリ残量と、変換装置(5A、5B)に対する出力電圧指令値との関係の一例を示す図である。
【0016】
(構成)
図1に記載の例では、直流電力供給システム100Aは、少なくとも1つの負荷1Aと、直流母線2と、第1電源4Aと、第2電源4Bと、第1のバッテリマネジメントユニット3A(以下、バッテリマネジメントユニットのことを「BMU」という。)と、第2のBMU3Bと、第1変換装置5Aと、第2変換装置5Bと、第1出力部6Aと、第2出力部6Bと、制御回路7と、を具備する。なお、第1のBMU3Aおよび第2のBMU3Bのうちの一方、あるいは、第1のBMU3Aおよび第2のBMU3Bの両方は、省略されてもよい。
【0017】
また、少なくとも1つの負荷1Aは、少なくとも1つの充電用電源1Bに置換されてもよい。代替的に、直流電力供給システム100Aは、少なくとも1つの負荷1Aに加えて、少なくとも1つの充電用電源1Bを備えていてもよい。換言すれば、直流母線2には、負荷1Aおよび充電用電源1Bの一方または両方が接続される。
【0018】
図1に記載の例において、負荷1Aは、例えば、直流負荷、あるいは、変換装置と交流負荷との組み合わせ等により構成され、直流母線2から供給される電力を消費する。なお、図1に記載の例において、負荷1Aが充電用電源1Bに置換される場合、あるいは、直流電力供給システム100Aが、負荷1Aに加えて充電用電源1Bを備える場合、当該充電用電源1Bは、直流母線2を介して、第1電源4Aおよび/または第2電源4Bに電力を供給する。こうして、第1電源4Aおよび/または第2電源4Bに貯留されるエネルギ量が増加する。
【0019】
第1電源4Aは、第1エネルギを貯留し第1エネルギから直流電力を出力する。第1電源4Aは、例えば、充電可能な第1バッテリ40A(より具体的には、第1のバッテリ群)である。充電可能な第1バッテリ40Aは、例えば、化学反応により、第1エネルギから直流電力を生成する化学電池である。充電可能な第1バッテリ40Aは、リチウムイオン電池であってもよい。
【0020】
第1の実施形態(あるいは、後述の第2の実施形態、または、後述の第3の実施形態)において、第1電源4Aは、燃料電池(燃料電池は、化学電池の一種である。)であっても構わない。当該燃料電池は、水素等の燃料と酸素等とが化学反応することにより、第1エネルギとしての燃料から、直流電力を生成する。代替的に、第1の実施形態(あるいは、後述の第2の実施形態、または、後述の第3の実施形態)において、第1電源4Aは、フライホイール等のように運動エネルギを貯留する電源であってもよいし、弾性エネルギあるいは熱エネルギを貯留する電源であってもよい。更に代替的に、第1電源4Aは、超電導コイルのように永久電流を貯留する電源であってもよい。
【0021】
第2電源4Bは、第2エネルギを貯留し第2エネルギから直流電力を出力する。第2電源4Bは、例えば、充電可能な第2バッテリ40B(より具体的には、第2のバッテリ群)である。充電可能な第2バッテリ40Bは、例えば、化学反応により、第2エネルギから直流電力を生成する化学電池である。充電可能な第2バッテリ40Bは、リチウムイオン電池であってもよい。
【0022】
第1の実施形態(あるいは、後述の第2の実施形態、または、後述の第3の実施形態)において、第2電源4Bは、燃料電池(燃料電池は、化学電池の一種である。)であっても構わない。当該燃料電池は、水素等の燃料と酸素等とが化学反応することにより、第2エネルギとしての燃料から、直流電力を生成する。代替的に、第1の実施形態(あるいは、後述の第2の実施形態、または、後述の第3の実施形態)において、第2電源4Bは、フライホイール等のように運動エネルギを貯留する電源であってもよいし、弾性エネルギあるいは熱エネルギを貯留する電源であってもよい。更に代替的に、第2電源4Bは、超電導コイルのように永久電流を貯留する電源であってもよい。
【0023】
第1電源4Aと第2電源4Bとは、同じタイプの電源であってもよい(例えば、両者とも、充電可能なバッテリであってもよい。)。代替的に、第1電源4Aと第2電源4Bとは、異なるタイプの電源であってもよい(例えば、前者が充電可能なバッテリであり、後者が、充電可能なバッテリ以外の電源であってもよい。)。
【0024】
以下において、第1電源4Aが、充電可能な第1バッテリ40A(例えば、第1のバッテリ群)であり、第2電源4Bが、充電可能な第2バッテリ40B(例えば、第2のバッテリ群)である場合の例について説明する。ただし、第1の実施形態において、第1電源4Aおよび第2電源4Bのうちの少なくとも一方が、充電可能なバッテリ以外の電源であっても構わない。
【0025】
換言すれば、以下の第1の実施形態の説明において、「第1バッテリ40A」、「第2バッテリ40B」、「バッテリ電圧」、「第1バッテリ電圧」、「第2バッテリ電圧」、「バッテリ残量」、「第1バッテリ残量」、「第2バッテリ残量」は、それぞれ、「第1電源4A」、「第2電源4B」、「電源電圧」、「第1電源電圧」、「第2電源電圧」、「エネルギ残量」、「第1エネルギ残量」、「第2エネルギ残量」に読み替え可能である。
【0026】
第1のBMU3Aは、第1バッテリ40Aの状態監視、および/または、第1バッテリ40Aの保護を行う。図1に記載の例では、第1のBMU3Aは、第1バッテリ40Aに装備されている。第2のBMU3Bは、第2バッテリ40Bの状態監視、および/または、第2バッテリ40Bの保護を行う。図1に記載の例では、第2のBMU3Bは、第2バッテリ40Bに装備されている。
【0027】
第1変換装置5Aは、第1バッテリ40Aと直流母線2との間に配置され、第1バッテリ40A側の第1バッテリ電圧を、直流母線2側の出力電圧(以下、「第1出力電圧」という。)に昇降圧する。より具体的には、第1変換装置5Aは、直流母線2の目標電圧(あるいは、後述の第1出力電圧指令値)、および、第1電圧ドループ特性に基づいて、第1バッテリ40A側の第1バッテリ電圧を、直流母線2側の第1出力電圧に昇降圧する。
【0028】
なお、本明細書において、第1電圧ドループ特性とは、第1変換装置5Aの出力電流(以下、「第1出力電流」という。)が増加することに応じて、第1変換装置5Aの第1出力電圧が降下する特性を意味する。
【0029】
図1に記載の例では、第1バッテリ40Aと第1変換装置5Aとが第1電線L1を介して接続され、第1変換装置5Aと直流母線2とが第2電線L2を介して接続されている。この場合、第1変換装置5Aは、第1電線L1における電圧を、第2電線L2における電圧に昇降圧する。
【0030】
図2を参照して、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性について説明する。図2に記載の例において、直流母線2の目標電圧は、電圧V1である。図2に記載の例において、第1変換装置5Aの第1出力電流の値が、電流値I1から、電流値I1’に増加すると、第1変換装置5Aの第1出力電圧の値が、電圧値F1から、電圧値F1’に低下する(矢印AR1を参照。)。他方、図2に記載の例において、第1変換装置5Aの第1出力電流の値が、電流値I1’から、電流値I1に減少すると、第1変換装置5Aの第1出力電圧の値が、電圧値F1’から、電圧値F1に増加する(矢印AR2を参照。)。
【0031】
第1変換装置5Aが、第1電圧ドループ特性を発揮するために、第1の実施形態における直流電力供給システム100Aは、第1変換装置5Aの第1出力電流(より具体的には、第2電線L2を流れる電流)を検出可能である。第1変換装置5Aは、第1出力電流の増加(あるいは、減少)に応じて、第1出力電圧を減少(あるいは、増加)させる。図1に記載の例では、第1出力電流を検出する第1電流検出器9Aが第1変換装置5Aに組み込まれているが、第1電流検出器9Aと第1変換装置5Aとは別体であってもよい。
【0032】
第2変換装置5Bは、第2バッテリ40Bと直流母線2との間に配置され、第2バッテリ40B側の第2バッテリ電圧を、直流母線2側の出力電圧(以下、「第2出力電圧」という。)に昇降圧する。より具体的には、第2変換装置5Bは、直流母線2の目標電圧(あるいは、後述の第2出力電圧指令値)、および、第2電圧ドループ特性に基づいて、第2バッテリ40B側の第2バッテリ電圧を、直流母線2側の第2出力電圧に昇降圧する。
【0033】
なお、本明細書において、第2電圧ドループ特性とは、第2変換装置5Bの出力電流(以下、「第2出力電流」という。)が増加することに応じて、第2変換装置5Bの第2出力電圧が降下する特性を意味する。
【0034】
図1に記載の例では、第2バッテリ40Bと第2変換装置5Bとが第3電線L3を介して接続され、第2変換装置5Bと直流母線2とが第4電線L4を介して接続されている。この場合、第2変換装置5Bは、第3電線L3における電圧を、第4電線L4における電圧に昇降圧する。
【0035】
図2を参照して、第2変換装置5Bの第2電圧ドループ特性について説明する。図2に記載の例において、直流母線2の目標電圧は、電圧V1である。図2に記載の例において、第2変換装置5Bの第2出力電流の値が、電流値I1から、電流値I1’に増加すると、第2変換装置5Bの第2出力電圧の値が、電圧値F1から、電圧値F1’に低下する(矢印AR3を参照。)。他方、図2に記載の例において、第2変換装置5Bの第2出力電流の値が、電流値I1’から、電流値I1に減少すると、第2変換装置5Bの第2出力電圧の値が、電圧値F1’から、電圧値F1に増加する(矢印AR4を参照。)。
【0036】
第2変換装置5Bが、第2電圧ドループ特性を発揮するために、第1の実施形態における直流電力供給システム100Aは、第2変換装置5Bの第2出力電流(より具体的には、第4電線L4を流れる電流)を検出可能である。第2変換装置5Bは、第2出力電流の増加(あるいは、減少)に応じて、第2出力電圧を減少(あるいは、増加)させる。図1に記載の例では、第2出力電流を検出する第2電流検出器9Bが第2変換装置5Bに組み込まれているが、第2電流検出器9Bと第2変換装置5Bとは別体であってもよい。
【0037】
図2に記載の例では、第2変換装置5Bの第2電圧ドループ特性は、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性と等しい。代替的に、第2変換装置5Bの第2電圧ドループ特性は、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性と異なっていてもよい。
【0038】
図2に例示されるように、第1変換装置5Aおよび第2変換装置5Bの各々が電圧ドループ特性を有する場合、第1変換装置5Aおよび第2変換装置5Bが並列運転される際に、第1変換装置5Aと第2変換装置5Bとの間で横流が生じることが抑制される。
【0039】
第1出力部6Aは、第1電源4Aが貯留する第1エネルギの残量(より具体的には、第1バッテリ40Aのバッテリ残量である第1バッテリ残量)に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、当該第1物理量を示す信号を制御回路7に出力する。第1物理量は、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量に応じて変化する物理量であれば如何なる物理量であってもよい。第1物理量は、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量に応じて変化する複数の物理量を含んでいてもよい。第1出力部6Aは、第1物理量を示す信号を制御回路7に出力する任意の出力部である。なお、第1出力部6Aから制御回路7への信号の出力は、任意の素子または任意の構成を介して行われてもよいことは言うまでもない。
【0040】
図1に記載の例では、第1物理量は、第1バッテリ40Aのバッテリ電圧(以下、「第1バッテリ電圧」という。)であり、第1出力部6Aは、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量に応じて変化する第1バッテリ電圧を検出する第1電圧検出器60Aである。
【0041】
第1電圧検出器60Aとしては、分圧器、アイソレータ等が使用される。図1に記載の例では、第1電圧検出器60Aは、第1バッテリ40Aと第1変換装置5Aの間の第1電線L1における電圧を、第1バッテリ電圧として検出する。
【0042】
なお、第1電圧検出器60Aは、PLC(Programmable Logic Controller)、第1変換装置5A、あるいは、第1のBMU3A等に組み込まれていてもよい。
【0043】
第2出力部6Bは、第2電源4Bが貯留する第2エネルギの残量(より具体的には、第2バッテリ40Bのバッテリ残量である第2バッテリ残量)に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、当該第2物理量を示す信号を制御回路7に出力する。第2物理量は、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量に応じて変化する物理量であれば如何なる物理量であってもよい。第2物理量は、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量に応じて変化する複数の物理量を含んでいてもよい。第2出力部6Bは、第2物理量を示す信号を制御回路7に出力する任意の出力部である。なお、第2出力部6Bから制御回路7への信号の出力は、任意の素子または任意の構成を介して行われてもよいことは言うまでもない。
【0044】
図1に記載の例では、第2物理量は、第2バッテリ40Bのバッテリ電圧(以下、「第2バッテリ電圧」という。)であり、第2出力部6Bは、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量に応じて変化する第2バッテリ電圧を検出する第2電圧検出器60Bである。
【0045】
第2電圧検出器60Bとしては、分圧器、アイソレータ等が使用される。図1に記載の例では、第2電圧検出器60Bは、第2バッテリ40Bと第2変換装置5Bの間の第3電線L3における電圧を、第2バッテリ電圧として検出する。
【0046】
なお、第2電圧検出器60Bは、PLC(Programmable Logic Controller)、第2変換装置5B、あるいは、第2のBMU3B等に組み込まれていてもよい。
【0047】
制御回路7は、第1物理量および第2物理量に基づいて、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。より具体的には、制御回路7は、第1物理量を示す信号を第1出力部6Aから受け取り、第2物理量を示す信号を第2出力部6Bから受け取り、第1物理量および第2物理量に基づいて、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。
【0048】
第1出力部6Aが、第1電圧検出器60Aであり、第2出力部6Bが、第2電圧検出器60Bである場合には、制御回路7は、第1電圧検出器60Aにより検出される第1バッテリ電圧(換言すれば、第1電圧検出器60Aから受け取る第1バッテリ電圧を示す第1信号)、および、第2電圧検出器60Bにより検出される第2バッテリ電圧(換言すれば、第2電圧検出器60Bから受け取る第2バッテリ電圧を示す第2信号)に基づいて、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。
【0049】
また、制御回路7は、決定された第1出力電圧指令値(換言すれば、第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令)を第1変換装置5Aに出力し、決定された第2出力電圧指令値(換言すれば、第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令)を第2変換装置5Bに出力する。
【0050】
第1変換装置5Aは、制御回路7から受け取る第1出力電圧指令値(換言すれば、第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令)と、第1電圧ドループ特性とに基づいて、第1バッテリ40A側の第1バッテリ電圧を直流母線2側の第1出力電圧に昇降圧する。また、第2変換装置5Bは、制御回路7から受け取る第2出力電圧指令値(換言すれば、第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令)と、第2電圧ドループ特性とに基づいて、第2バッテリ40B側の第2バッテリ電圧を直流母線2側の第2出力電圧に昇降圧する。
【0051】
(作用:直流母線2への給電)
図1に記載の例において、制御回路7は、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。また、制御回路7は、決定された第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力し、決定された第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力する。その結果、第1変換装置5Aの第1出力電圧および/または第2変換装置5Bの第2出力電圧が変化し、バッテリ残量が少ない方のバッテリの電力負担割合が低減される。こうして、バッテリ毎にバッテリ残量がゼロになるタイミングが大きくばらつくことが防止される。
【0052】
より具体的には、図1に記載の例では、制御回路7は、第1電圧検出器60Aから第1バッテリ40Aの第1バッテリ電圧を示す第1信号を受け取り、第2電圧検出器60Bから第2バッテリ40Bの第2バッテリ電圧を示す第2信号を受け取る。制御回路7は、第1バッテリ40Aの第1バッテリ電圧および第1バッテリ40Aの放電特性に基づいて、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量を算出し、第2バッテリ40Bの第2バッテリ電圧および第2バッテリ40Bの放電特性に基づいて、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量を算出する。
【0053】
制御回路7は、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量が、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量よりも少ないとき、第1バッテリ40Aの電力負担割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力負担割合が増加されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。
【0054】
また、制御回路7は、決定された第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力し、決定された第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力する。
【0055】
第1制御指令を受け取る第1変換装置5Aは、第1出力電圧指令値に基づいて、第1出力電圧を減少させる。こうして、第1バッテリ40Aの電力負担割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力負担割合が増加する。代替的に、あるいは、付加的に、第2制御指令を受け取る第2変換装置5Bは、第2出力電圧指令値に基づいて、第2出力電圧を増加させてもよい。
【0056】
他方、制御回路7は、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量が、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量よりも少ないとき、第2バッテリ40Bの電力負担割合が低減され、第1バッテリ40Aの電力負担割合が増加されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。
【0057】
また、制御回路7は、決定された第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力し、決定された第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力する。
【0058】
第2制御指令を受け取る第2変換装置5Bは、第2出力電圧指令値に基づいて、第2出力電圧を減少させる。こうして、第2バッテリ40Bの電力負担割合が低減され、第1バッテリ40Aの電力負担割合が増加する。
【0059】
なお、本明細書において、第1バッテリ残量は、第1バッテリ40Aの満充電量に対する、第1バッテリ40Aの充電量(すなわち、満充電量に対する比率)を意味していてもよいし、代替的に、第1バッテリ残量は、第1バッテリ40Aが貯留しているエネルギの量自体(すなわち、充電量自体)を意味していてもよい。また、第2バッテリ残量は、第2バッテリ40Bの満充電量に対する、第2バッテリ40Bの充電量(すなわち、満充電量に対する比率)を意味していてもよいし、代替的に、第2バッテリ残量は、第2バッテリ40Bが貯留しているエネルギの量自体(すなわち、充電量自体)を意味していてもよい。
【0060】
図3および図4を参照して、比較例における各バッテリ(40A、40B)のバッテリ残量と、各変換装置(5A、5B)に対する出力電圧指令値との関係の一例(図3)、および、第1の実施形態における各バッテリ(40A、40B)のバッテリ残量と、各変換装置(5A、5B)に対する出力電圧指令値との関係の一例(図4)について説明する。なお、図3および図4では、図1に例示されるように、直流母線2に負荷1Aが接続され、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bが、直流母線2を介して、負荷1Aに給電する場合の例が想定されている。
【0061】
図3(a)および図4(a)には、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値の経時変化、および、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量の経時変化が示されている。また、図3(b)および図4(b)には、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値の経時変化、および、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量の経時変化が示されている。なお、図3(a)における時間経過と、図3(b)における時間経過とは、同時並行的に進行しているものとする。同様に、図4(a)における時間経過と、図4(b)における時間経過とは、同時並行的に進行しているものとする。
【0062】
図3および図4に記載の例において、時刻t2までは、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値は電圧V1であり、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値は電圧V1であり、第1出力電圧指令値と第2出力電圧指令値とは同値である。また、図3および図4に記載の例において、第1バッテリ40Aのバッテリ容量は、第2バッテリ40Bのバッテリ容量よりも小さいものとする。
【0063】
第1バッテリ40Aのバッテリ容量が、第2バッテリ40Bのバッテリ容量よりも小さい場合、直流母線2に供給される電力を各バッテリが等分負担すると、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量は、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量と比較して、速く低下する。このため、図3および図4に記載の例では、時刻t2における第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量を残量P1とし、時刻t2における第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量を残量P2とするとき、P1<P2となる。
【0064】
この状態で、図3に例示されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を、電圧V1に維持した場合、時刻t4で第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量はゼロとなり、第1変換装置5Aは停止する。このような第1変換装置5Aの停止は、第2変換装置5Bにおける過電力の発生、あるいは、変換装置の冗長性の低下に繋がる。
【0065】
そこで、図4に例示されるように、第1の実施形態によれば、制御回路7は、時刻t2において、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値を、電圧V1よりも低い電圧V2に決定し、当該第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力する。第1制御指令を受け取る第1変換装置5Aは、低下された第1出力電圧指令値に基づいて、第1バッテリ電圧を第1出力電圧に昇降圧する。その結果、第1バッテリ40Aの電力負担割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力負担割合が増加される。こうして、第1バッテリ40Aの充電量がゼロになるタイミングを、時刻t4よりも遅くすることができる。
【0066】
代替的に、制御回路7は、時刻t2において、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を、電圧V1よりも高い電圧に決定し、当該第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力してもよい。第2制御指令を受け取る第2変換装置5Bは、上昇された第2出力電圧指令値に基づいて、第2バッテリ電圧を第2出力電圧に昇降圧する。その結果、第2バッテリ40Bの電力負担割合が増加され、第1バッテリ40Aの電力負担割合が低減される。こうして、第1バッテリ40Aのバッテリ残量がゼロになるタイミングを、時刻t4よりも遅くすることができる。
【0067】
なお、第1の実施形態において、各バッテリのバッテリ容量に応じて、各バッテリの電力負担が比例配分される直流電力供給システムが採用される場合には、理論的には、バッテリ容量に対するバッテリ残量の比率がばらつかないように、複数のバッテリを運用することが可能である。しかし、各バッテリの利用方法、あるいは、バッテリの交換などによっては、バッテリ毎に、バッテリ容量に対するバッテリ残量の比率に差が生じる可能性がある。この場合、1つのバッテリのバッテリ残量が、他のバッテリのバッテリ残量に先行して、ゼロになる。
【0068】
第1の実施形態は、このような場合にも対応可能である。より具体的には、制御回路7は、複数のバッテリ(40A、40B)のうち、バッテリ容量に対するバッテリ残量の比率が小さいバッテリの電力負担割合が低減されるように、各変換装置に対する出力電圧指令値を決定し、決定された出力電圧指令値に対応する制御指令を各変換装置(5A、5B)に出力する。その結果、相対的にバッテリ残量(%)が少ないバッテリの電力負担割合が低減される。その結果、1つのバッテリのバッテリ残量が、他のバッテリのバッテリ残量に先行して、ゼロになることが防止または抑制される。なお、ここでの「防止」は、複数のバッテリのバッテリ残量が、実質的に同時に、ゼロになること意味する。また、ここでの「抑制」は、1つのバッテリのバッテリ残量が、他のバッテリのバッテリ残量に先行してゼロになるタイミングが遅くなることを意味する。
【0069】
なお、図4に記載の例では、第1出力電圧指令値が変更されるタイミングは、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量(例えば、第1バッテリ40Aの第1バッテリ電圧および第1バッテリ40Aの放電特性から算出される第1バッテリの第1バッテリ残量)が、所定の残量P1になるタイミングのみである。
【0070】
代替的に、第1出力電圧指令値が変更されるタイミングは、複数設定されてもよい。例えば、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量が、第1の所定値になるタイミングで、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値が、電圧V1から電圧V1よりも低い電圧V2に変更され、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量が、第1の所定値より更に低い第2の所定値になるタイミングで、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値が、電圧V2から電圧V2よりも低い電圧に変更されてもよい。
【0071】
更に代替的に、第1出力電圧指令値が変更されるタイミングは、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量のみに依存して決定されるのではなく、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量と、時間(例えば、第1バッテリ40Aからの放電時間、あるいは、第1出力電圧指令値が変更されない場合に第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量がゼロになるまでの時間等)との組み合わせに基づいて決定されてもよい。
【0072】
また、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値が、電圧V1から電圧V2に変更された後、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量と第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量とが一致するタイミングで、第1変換装置5Aの第1出力電圧指令値が、電圧V2から電圧V1に戻されてもよい。
【0073】
図1に記載の例では、直流母線2に、並列的に接続される変換装置(5A、5B)の数が2つであるが、直流母線2に並列的に接続される変換装置の数は、3つ以上であってもよい。
【0074】
第1の実施形態では、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値および/または第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値が変更されることに加え、第1変換装置5Aおよび第2変換装置5Bの各々が電圧ドループ特性を有する。
【0075】
図2および図5を参照して、変換装置(5A、5B)が電圧ドループ特性を有する条件下で、変換装置(5A、5B)の出力電圧指令値が変更される例について説明する。
【0076】
図2は、制御回路7が、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の電力負担割合を低減させるための第1制御指令および第2制御指令を出力する前の時点(以下、「時点t1」という。)における、第1変換装置5Aの第1出力電流と第1変換装置5Aの第1出力電圧との間の関係の一例、および、第2変換装置5Bの第2出力電流と第2変換装置5Bの第2出力電圧との間の関係の一例を示すグラフである。なお、時点t1は、図4に記載の例における時刻t0と時刻t2との間の任意の時点である。
【0077】
他方、図5は、制御回路7が、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の電力負担割合を低減させるための第1制御指令および第2制御指令を出力した後の時点(以下、「時点t3」という。)における、第1変換装置5Aの第1出力電流と第1変換装置5Aの第1出力電圧との間の関係の一例、および、第2変換装置5Bの第2出力電流と第2変換装置5Bの第2出力電圧との間の関係の一例を示すグラフである。なお、時点t3は、図4に記載の例における時刻t2と時刻t4との間の任意の時点である。
【0078】
図2に記載の例では、時点t1において、第1変換装置5Aが制御回路7から受け取る第1出力電圧指令値と、第2変換装置5Bが制御回路7から受け取る第2出力電圧指令値とは同一であり、第1出力電圧指令値および第2出力電圧指令値は、それぞれ、直流母線2の目標電圧V1の値と一致している。第1変換装置5Aは、第1電圧ドループ特性を有するため、時点t1における第1変換装置5Aの第1出力電圧の値は電圧値F1であり、時点t1における第1変換装置5Aの第1出力電流の値は電流値I1である。第2変換装置5Bは、第2電圧ドループ特性を有するため、時点t1における第2変換装置5Bの第2出力電圧の値は電圧値F1であり、時点t1における第2変換装置5Bの第2出力電流の値は電流値I1である。なお、簡略化のため、時点t1において、第1電圧ドループ特性と第2電圧ドループ特性とが同一であり、第1変換装置5Aの第1出力電圧の値と、第2変換装置5Bの第2出力電圧の値とが同一であり、第1変換装置5Aの第1出力電流の値と、第2変換装置5Bの第2出力電流の値とが同一であるものとする。
【0079】
時点t1では、第1変換装置5Aの第1出力電流が増加すると、第1変換装置5Aの第1出力電圧が低下し(矢印AR1を参照。)、第1変換装置5Aの第1出力電流が減少すると、第1変換装置5Aの第1出力電圧が上昇する。また、時点t1では、第2変換装置5Bの第2出力電流が増加すると、第2変換装置5Bの第2出力電圧が低下し(矢印AR3を参照。)、第2変換装置5Bの第2出力電流が減少すると、第2変換装置5Bの第2出力電圧が上昇する。これらの電圧ドループ特性は、各バッテリのバッテリ残量とは関係なく発揮される。
【0080】
図5に記載の例では、時刻t2より後の時点t3において、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、充電量が少ない方のバッテリの電力負担割合を低減させるために、第1変換装置5Aが制御回路7から受け取る第1出力電圧指令値は、電圧V1(より具体的には、直流母線2の目標電圧V1の値)から、電圧V2に低下され(矢印AR5を参照。)、第2変換装置5Bが制御回路7から受け取る第2出力電圧指令値は、電圧V1(より具体的には、直流母線2の目標電圧V1の値)に維持されている。
【0081】
第1変換装置5Aは、第1電圧ドループ特性を有するため、時点t3における第1変換装置5Aの第1出力電圧の値は第2電圧値Fであり、時点t3における第1変換装置5Aの第1出力電流の値は電流値I2である。第2変換装置5Bは、第2電圧ドループ特性を有するため、時点t3における第2変換装置5Bの第2出力電圧の値は第2電圧値Fであり、時点t3における第2変換装置5Bの第2出力電流の値は電流値I3である。
【0082】
図5に記載の例では、電流値I2は電流値I3よりも小さい。よって、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の第1バッテリ40Aの電力負担割合(ドットによるハッチングが付与された領域を参照。)が低減され、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が多い方の第2バッテリ40Bの電力負担割合(斜線によるハッチングが付与された領域を参照。)が増加されている。
【0083】
時点t3では、第1変換装置5Aの第1出力電流が増加すると、第1変換装置5Aの第1出力電圧が低下し(矢印AR6を参照。)、第1変換装置5Aの第1出力電流が減少すると、第1変換装置5Aの第1出力電圧が上昇する(矢印AR7を参照。)。また、時点t3では、第2変換装置5Bの第2出力電流が増加すると、第2変換装置5Bの第2出力電圧が低下し(矢印AR8を参照。)、第2変換装置5Bの第2出力電流が減少すると、第2変換装置5Bの第2出力電圧が上昇する(矢印AR9を参照。)。これらのドループ特性は、各バッテリのバッテリ残量に基づいた変換装置(5A、5B)の出力電圧指令値の変更が行われた後においても、発揮される。
【0084】
(作用:直流母線2からの受電)
図6に記載の例において、制御回路7は、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が多い方の電力受電割合が低減されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。
【0085】
また、制御回路7は、決定された第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力し、決定された第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力する。その結果、第1変換装置5Aの第1出力電圧および/または第2変換装置5Bの第2出力電圧が変化し、エネルギ残量が多い方のバッテリの電力受電割合が低減される。こうして、バッテリ毎に満充電になるタイミングが大きくばらつくことが防止される。
【0086】
より具体的には、図6に記載の例では、制御回路7は、第1電圧検出器60Aから第1バッテリ40Aの第1バッテリ電圧を示す第1信号を受け取り、第2電圧検出器60Bから第2バッテリ40Bの第2バッテリ電圧を示す第2信号を受け取る。制御回路7は、第1バッテリ40Aの第1バッテリ電圧および第1バッテリ40Aの放電特性に基づいて、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量を算出し、第2バッテリ40Bの第2バッテリ電圧および第2バッテリ40Bの放電特性に基づいて、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量を算出する。
【0087】
制御回路7は、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量が、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量よりも多いとき、第1バッテリ40Aの電力受電割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力受電割合が増加されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。
【0088】
また、制御回路7は、決定された第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力し、決定された第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力する。
【0089】
第1制御指令を受け取る第1変換装置5Aは、第1出力電圧指令値に基づいて、第1出力電圧を増加させる。こうして、第1バッテリ40Aの電力受電割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力受電割合が増加する。
【0090】
図7および図8を参照して、比較例における各バッテリ(40A、40B)のバッテリ残量と、各変換装置(5A、5B)に対する出力電圧指令値との関係の一例(図7)、および、第1の実施形態における各バッテリ(40A、40B)のバッテリ残量と、各変換装置(5A、5B)に対する出力電圧指令値との関係の一例(図8)について説明する。なお、図7および図8では、図6に例示されるように、直流母線2に充電用電源1Bが接続され、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bが、直流母線2を介して、充電用電源1Bから受電する場合の例が想定されている。
【0091】
図7(a)および図8(a)には、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値の経時変化、および、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量の経時変化が示されている。また、図7(b)および図8(b)には、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値の経時変化、および、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量の経時変化が示されている。なお、図7(a)における時間経過と、図7(b)における時間経過とは、同時並行的に進行しているものとする。同様に、図8(a)における時間経過と、図8(b)における時間経過とは、同時並行的に進行しているものとする。
【0092】
図7および図8に記載の例において、時刻t2までは、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値は電圧V1であり、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値は電圧V1であり、第1出力電圧指令値と第2出力電圧指令値とは同値である。
【0093】
図7に記載の例では、時刻t2において、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量Pは、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量P’よりも多い。図7に記載の例において、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bの各々について、直流母線2からの電力受電割合が維持されると、時刻t4において、第1バッテリ40Aが、第2バッテリ40Bに先行して満充電となる。
【0094】
第1バッテリ40Aが満充電になると、第1変換装置5Aは停止する。このような第1変換装置5Aの停止は、第2変換装置5Bにおける過電力の発生、あるいは、変換装置の冗長性の低下に繋がる。
【0095】
そこで、図8に例示されるように、第1の実施形態によれば、制御回路7は、時刻t2において、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値を、電圧V1よりも高い電圧V3に決定し、当該第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力する。第1制御指令を受け取る第1変換装置5Aは、増加された第1出力電圧指令値に基づいて、第1バッテリ電圧を第1出力電圧に昇降圧する。その結果、第1バッテリ40Aの電力受電割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力受電割合が増加される。こうして、第1バッテリ40Aが満充電になるタイミングを、時刻t4よりも遅くすることができる。
【0096】
図8に記載の例では、第1出力電圧指令値が変更されるタイミングは、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量が、所定の残量(P)になるタイミングのみである。
【0097】
代替的に、第1出力電圧指令値が変更されるタイミングは、複数設定されてもよい。例えば、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量が、第1の所定値になるタイミングで、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値が、電圧V1から電圧V1よりも高い電圧V3に変更され、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量が、第1の所定値より更に高い第2の所定値になるタイミングで、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値が、電圧V3から電圧V3よりも高い電圧に変更されてもよい。
【0098】
更に代替的に、第1出力電圧指令値が変更されるタイミングは、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量のみに依存して決定されるのではなく、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量と、時間(例えば、第1バッテリ40Aの充電時間、あるいは、第1出力電圧指令値が変更されない場合に第1バッテリ40Aが満充電になるまでの時間等)との組み合わせに基づいて決定されてもよい。
【0099】
また、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値が、電圧V1から電圧V3に変更された後、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量と第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量とが一致するタイミングで、第1変換装置5Aの第1出力電圧指令値が、電圧V3から電圧V1に戻されてもよい。
【0100】
第1の実施形態では、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が多い方の電力受電割合が低減されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値および/または第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値が変更されることに加え、第1変換装置5Aおよび第2変換装置5Bの各々が電圧ドループ特性を有する。電圧ドループ特性については、図2図5等を用いて説明済みであるため、電圧ドループ特性についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0101】
(効果)
第1の実施形態における直流電力供給システム100Aでは、各電源のエネルギ容量あるいは各電源の特性が異なる場合において、各電源のエネルギ残量に応じて、少なくとも1つの変換装置の出力電圧指令値が変更されることにより、各電源の電力負担割合が調整される。こうして、1つの電源のエネルギ残量が、他の電源のエネルギ残量に先行して、ゼロになることが防止または抑制される。その結果、複数の変換装置の動作が維持され、特定の変換装置において過電力が生じることが防止され、且つ、変換装置の冗長性が維持される。こうして、第1の実施形態では、安定した直流電力供給システムが提供される。
【0102】
また、第1の実施形態における直流電力供給システム100Aでは、各電源のエネルギ残量に応じて、少なくとも1つの変換装置の出力電圧指令値が変更されることと、各変換装置の電圧ドループ特性に基づいて変換装置の出力電圧が変更されることとの両方が実行される。よって、各電源のエネルギ残量に応じた少なくとも1つの変換装置の出力電圧指令値の変更前においても、各電源のエネルギ残量に応じた少なくとも1つの変換装置の出力電圧指令値の変更後においても、複数の変換装置間で横流が生じることが抑制される。
【0103】
また、第1の実施形態において、充電用電源1Bから、直流母線2を介して、複数の電源(4A、4B)に給電される場合において、各電源のエネルギ残量(換言すれば、各電源のエネルギ蓄積量)に応じて、少なくとも1つの変換装置の出力電圧指令値が変更されることにより、各電源の電力受電割合が調整される。こうして、1つの電源のエネルギ蓄積量が、他の電源のエネルギ蓄積量に先行して、FULLになることが防止または抑制される。その結果、複数の変換装置の動作が維持され、特定の変換装置において過電力が生じることが防止され、且つ、変換装置の冗長性が維持される。こうして、第1の実施形態では、安定した直流電力供給システムが提供される。
【0104】
(第2の実施形態)
図9を参照して、第2の実施形態における直流電力供給システム100Bについて説明する。図9は、第2の実施形態における直流電力供給システム100Bの回路構成の一例を模式的に示す図である。
【0105】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第2の実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0106】
(構成)
第2の実施形態では、第1出力部6Aが、「第1の推定充電量算出部62A」であり、第2出力部6Bが、「第2の推定充電量算出部62B」であり、第1出力部6A(第1の推定充電量算出部62A)が検出または算出する第1物理量が「第1バッテリ40Aの推定充電量(以下、「第1推定充電量」という。)」であり、第2出力部6B(第2の推定充電量算出部62B)が検出または算出する第2物理量が「第2バッテリ40Bの推定充電量(以下、「第2推定充電量」という。)」である点で、第1の実施形態とは異なる。その他の点では、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様である。
【0107】
第2の実施形態における直流電力供給システム100Bは、負荷1Aおよび充電用電源1Bの一方または両方が接続される直流母線2と、第1電源4Aとしての第1バッテリ40Aと、第2電源4Bとしての第2バッテリ40Bと、第1のBMU3Aと、第2のBMU3Bと、第1変換装置5Aと、第2変換装置5Bと、第1出力部6Aとしての第1の推定充電量算出部62Aと、第2出力部6Bとしての第2の推定充電量算出部62Bと、制御回路7と、を具備する。なお、第1のBMU3Aおよび第2のBMU3Bのうちの一方、あるいは、第1のBMU3Aおよび第2のBMU3Bの両方は、省略されてもよい。
【0108】
(作用)
第2の実施形態では、第1の推定充電量算出部62Aおよび第2の推定充電量算出部62Bに付随する構成あるいは制御を中心に説明し、それ以外の事項についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0109】
第1の推定充電量算出部62Aは、第1バッテリ40Aの第1推定充電量(例えば、SOC(State Of Charge))を算出し、当該第1推定充電量を示す第3信号を制御回路7に出力する。なお、第1の推定充電量算出部62Aから制御回路7への第3信号の出力は、任意の素子または任意の構成を介して行われてもよいことは言うまでもない。
【0110】
第2の推定充電量算出部62Bは、第2バッテリ40Bの第2推定充電量(例えば、SOC(State Of Charge))を算出し、当該第2推定充電量を示す第4信号を制御回路7に出力する。なお、第2の推定充電量算出部62Bから制御回路7への第4信号の出力は、任意の素子または任意の構成を介して行われてもよいことは言うまでもない。
【0111】
図9に記載の例では、第1の推定充電量算出部62Aは、第1のBMU3Aから受信する信号に基づいて、第1バッテリ40Aの第1推定充電量を算出し、第2の推定充電量算出部62Bは、第2のBMU3Bから受信する信号に基づいて、第2バッテリ40Bの第2推定充電量を算出する。代替的に、第1の推定充電量算出部62Aは、第1変換装置5Aから受信する信号に基づいて、第1バッテリ40Aの第1推定充電量を算出してもよく、第2の推定充電量算出部62Bは、第2変換装置5Bから受信する信号に基づいて、第2バッテリ40Bの第2推定充電量を算出してもよい。例えば、第1電線L1を通過する電流の積算値、あるいは、当該積算値と温度等の環境条件との組合せに基づいて、第1バッテリ40Aの第1推定充電量が算出されてもよい。また、第3電線L3を通過する電流の積算値、あるいは、当該積算値と温度等の環境条件との組合せに基づいて、第2バッテリ40Bの第2推定充電量が算出されてもよい。
【0112】
更に代替的に、第1の推定充電量算出部62Aは、制御回路7とは別の他の制御回路やPLC等から受信する第1バッテリ充電量またはその推定のための電気量情報に基づいて、第1バッテリ40Aの推定充電量を算出してもよい。同様に、第2の推定充電量算出部62Bは、制御回路7とは別の他の制御回路やPLC等から受信する第2バッテリ充電量またはその推定のための電気量情報に基づいて、第2バッテリ40Bの推定充電量を算出してもよい。
【0113】
なお、「推定充電量の算出」には、第1のBMU3A、第2のBMU3B、第1変換装置5A、第2変換装置5B、制御回路7とは別の他の制御回路、あるいは、PLC等によって算出された推定充電量をそのまま利用することも含まれる。
【0114】
図9に記載の例では、制御回路7は、第1推定充電量および第2推定充電量に基づいて、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値および第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。より具体的には、制御回路7は、第1バッテリ40Aの第1推定充電量が、第2バッテリ40Bの第2推定充電量よりも少ないとき、第1バッテリ40Aの電力負担割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力負担割合が増加されるように、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。
【0115】
(効果)
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0116】
(第3の実施形態)
図10乃至図13を参照して、第3の実施形態における直流電力供給システム100Cについて説明する。図10は、第3の実施形態における直流電力供給システム100Cの回路構成の一例を模式的に示す図である。図11は、第3の実施形態における直流電力供給システム100Cの変換装置(5A、5B)の電圧ドループ特性の一例を示す図である。図12は、第1変換装置5Aの電圧ドループ特性が変更された後の状態を模式的に示す図である。図13は、第3の実施形態における直流電力供給システム100Cの回路構成の一例を模式的に示す図である。なお、図13は、バッテリ(40A、40B)への充電が行われている様子を示す。
【0117】
第3の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第3の実施形態では、第1の実施形態または第2の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第3の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みの事項を第3の実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0118】
(構成)
第3の実施形態における直流電力供給システム100Cは、第1電圧ドループ特性を調整する第1ドループ制御部10A、および、第2電圧ドループ特性を調整する第2ドループ制御部10Bを有する点で、第1の実施形態における直流電力供給システム100Aおよび第2の実施形態における直流電力供給システム100Bとは異なる。その他の点では、第3の実施形態は、第1の実施形態、または、第2の実施形態と同様である。
【0119】
第3の実施形態における直流電力供給システム100Cは、図10に例示されるように、負荷1Aおよび充電用電源1Bの一方または両方が接続される直流母線2と、第1電源4A(例えば、第1バッテリ40A)と、第2電源4B(例えば、第2バッテリ40B)と、第1のBMU3Aと、第2のBMU3Bと、第1変換装置5Aと、第2変換装置5Bと、第1出力部6Aと、第2出力部6Bと、第1電流検出器9Aと、第2電流検出器9Bと、第1ドループ制御部10Aと、第2ドループ制御部10Bと、を具備する。なお、第1のBMU3Aおよび第2のBMU3Bのうちの一方、あるいは、第1のBMU3Aおよび第2のBMU3Bの両方は、省略されてもよい。
【0120】
負荷1A、充電用電源1B、直流母線2、第1電源4A(例えば、第1バッテリ40A)、第2電源4B(例えば、第2バッテリ40B)、第1のBMU3A、第2のBMU3B、第1変換装置5A、第2変換装置5B、第1出力部6A、第2出力部6Bについては、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みであるため、これらの構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0121】
以下において、第1電源4Aが、充電可能な第1バッテリ40A(例えば、第1のバッテリ群)であり、第2電源4Bが、充電可能な第2バッテリ40B(例えば、第2のバッテリ群)である場合の例について説明する。ただし、第3の実施形態において、第1電源4Aおよび第2電源4Bのうちの少なくとも一方が、充電可能なバッテリ以外の電源であっても構わない。
【0122】
換言すれば、以下の第3の実施形態の説明において、「第1バッテリ40A」、「第2バッテリ40B」、「バッテリ電圧」、「第1バッテリ電圧」、「第2バッテリ電圧」、「バッテリ残量」、「第1バッテリ残量」、「第2バッテリ残量」は、それぞれ、「第1電源4A」、「第2電源4B」、「電源電圧」、「第1電源電圧」、「第2電源電圧」、「エネルギ残量」、「第1エネルギ残量」、「第2エネルギ残量」に読み替え可能である。
【0123】
第1出力部6Aは、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量に応じて変化する第1物理量を検出または算出し、第1物理量を示す信号を制御回路7に出力する。第1物理量は、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量に応じて変化する物理量であれば如何なる物理量であってもよい。第1物理量は、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量に応じて変化する複数の物理量を含んでいてもよい。第1出力部6Aは、第1物理量を示す信号を制御回路7に出力する任意の出力部である。なお、第1出力部6Aから制御回路7への信号の出力は、任意の素子または任意の構成を介して行われてもよいことは言うまでもない。第1出力部6Aは、第1バッテリ40Aの第1バッテリ電圧を検出する第1電圧検出器60Aを含んでいてもよく、第1バッテリ40Aの第1推定充電量を算出する第1の推定充電量算出部62Aを含んでいてもよく、第1電圧検出器60Aおよび第1の推定充電量算出部62Aの両方を含んでいてもよい。
【0124】
第2出力部6Bは、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量に応じて変化する第2物理量を検出または算出し、第2物理量を示す信号を制御回路7に出力する。第2物理量は、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量に応じて変化する物理量であれば如何なる物理量であってもよい。第2物理量は、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量に応じて変化する複数の物理量を含んでいてもよい。第2出力部6Bは、第2物理量を示す信号を制御回路7に出力する任意の出力部である。なお、第2出力部6Bから制御回路7への信号の出力は、任意の素子または任意の構成を介して行われてもよいことは言うまでもない。第2出力部6Bは、第2バッテリ40Bの第2バッテリ電圧を検出する第2電圧検出器60Bを含んでいてもよく、第2バッテリ40Bの第2推定充電量を算出する第2の推定充電量算出部62Bを含んでいてもよく、第2電圧検出器60Bおよび第2の推定充電量算出部62Bの両方を含んでいてもよい。
【0125】
第1電圧検出器60A、第2電圧検出器60B、第1の推定充電量算出部62A、および、第2の推定充電量算出部62Bについては、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みであるため、これらの構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0126】
第1電流検出器9Aは、第1変換装置5Aが直流母線2に出力する第1出力電流を検出する。より具体的には、第1電流検出器9Aは、第1変換装置5Aと直流母線2との間の第2電線L2を流れる第1出力電流を検出する。また、第1電流検出器9Aは、第1出力電流を示す第1電流信号を第1ドループ制御部10Aに出力する。第1電流検出器9Aとしては、例えば、CT(Current Transformer)、または、電流プローブ等が使用される。なお、第1電流検出器9Aは、PLC、第1変換装置5A、第1のBMU3A等に組み込まれていてもよい。
【0127】
第2電流検出器9Bは、第2変換装置5Bが直流母線2に出力する第2出力電流を検出する。より具体的には、第2電流検出器9Bは、第2変換装置5Bと直流母線2との間の第4電線L4を流れる第2出力電流を検出する。また、第2電流検出器9Bは、第2出力電流を示す第2電流信号を第2ドループ制御部10Bに出力する。第2電流検出器9Bとしては、例えば、CT(Current Transformer)、または、電流プローブ等が使用される。なお、第2電流検出器9Bは、PLC、第2変換装置5B、第2のBMU3B等に組み込まれていてもよい。
【0128】
制御回路7は、第1物理量、および、第2物理量に基づいて、第1ドループ制御部10Aに対する第1ドループ制御値、および、第2ドループ制御部10Bに対する第2ドループ制御値を決定する。より具体的には、制御回路7は、第1物理量を示す信号(例えば、第1バッテリ電圧を示す第1信号、および/または、第1推定充電量を示す第3信号)、および、第2物理量を示す信号(例えば、第2バッテリ電圧を示す第2信号、および/または、第2推定充電量を示す第4信号)を受信し、第1物理量、および、第2物理量に基づいて、第1ドループ制御部10Aに対する第1ドループ制御値、および、第2ドループ制御部10Bに対する第2ドループ制御値を決定する。
【0129】
また、制御回路7は、決定された第1ドループ制御値に対応する第1ドループ制御指令を第1ドループ制御部10Aに出力し、決定された第2ドループ制御値に対応する第2ドループ制御指令を第2ドループ制御部10Bに出力する。
【0130】
第1ドループ制御部10Aは、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性を調整する。より具体的には、第1ドループ制御部10Aは、制御回路7から受け取る第1ドループ制御値に基づいて、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性を調整する。
【0131】
また、第1ドループ制御部10Aは、第1電流検出器9Aから第1出力電流を示す第1電流信号を受け取り、第1ドループ制御値に基づいて調整された第1電圧ドループ特性と、第1出力電流とに基づいて、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値を決定する。更に、第1ドループ制御部10Aは、決定された第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力する。
【0132】
第2ドループ制御部10Bは、第2変換装置5Bの第2電圧ドループ特性を調整する。より具体的には、第2ドループ制御部10Bは、制御回路7から受け取る第2ドループ制御値に基づいて、第2変換装置5Bの第2電圧ドループ特性を調整する。
【0133】
また、第2ドループ制御部10Bは、第2電流検出器9Bから第2出力電流を示す第2電流信号を受け取り、第2ドループ制御値に基づいて調整された第2電圧ドループ特性と、第2出力電流とに基づいて、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。更に、第2ドループ制御部10Bは、決定された第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力する。
【0134】
なお、第1ドループ制御部10Aの一部または全体が、第1変換装置5A、または、制御回路7に組み込まれていてもよい。また、第2ドループ制御部10Bの一部または全体が、第2変換装置5B、または、制御回路7に組み込まれていてもよい。
【0135】
(作用:直流母線2への給電)
図10に記載の例において、制御回路7は、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、第1ドループ制御部10Aに対する第1ドループ制御値、および、第2ドループ制御部10Bに対する第2ドループ制御値を決定する。また、制御回路7は、決定された第1ドループ制御値に対応する第1ドループ制御指令を第1ドループ制御部10Aに出力し、決定された第2ドループ制御値に対応する第2ドループ制御指令を第2ドループ制御部10Bに出力する。
【0136】
第1ドループ制御部10Aは、第1ドループ制御値に基づいて調整された第1電圧ドループ特性と、第1変換装置5Aの第1出力電流とに基づいて、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値を決定する。また、第1ドループ制御部10Aは、決定された第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力する。
【0137】
第2ドループ制御部10Bは、第2ドループ制御値に基づいて調整された第2電圧ドループ特性と、第2変換装置5Bの第2出力電流とに基づいて、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。また、第2ドループ制御部10Bは、決定された第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力する。
【0138】
その結果、第1変換装置5Aの第1出力電圧、および/または、第2変換装置5Bの第2出力電圧が変化し、バッテリ残量が少ない方のバッテリの電力負担割合が低減される。こうして、バッテリ毎にバッテリ残量がゼロになるタイミングが大きくばらつくことが防止される。
【0139】
図11および図12を参照して、電圧ドループ特性の調整の一例について説明する。
【0140】
図11は、制御回路7が、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の電力負担割合を低減させるための第1ドループ制御指令および第2ドループ制御指令を出力する前の時点t1における、第1変換装置5Aの第1出力電流と第1変換装置5Aの第1出力電圧との間の関係の一例、および、第2変換装置5Bの第2出力電流と第2変換装置5Bの第2出力電圧との間の関係の一例を示すグラフである。
【0141】
簡略化のため、時点t1において、第1変換装置5Aの電圧ドループ特性と、第2変換装置5Bの電圧ドループ特性とは等しいものとする。また、時点t1において、第1変換装置5Aの第1出力電圧の値は、第2変換装置5Bの第2出力電圧の値と等しく、第1出力電圧の値および第2出力電圧の値は、それぞれ、電圧値F2である。また、時点t1において、第1変換装置5Aの第1出力電流の値は、第2変換装置5Bの第2出力電流の値と等しく、第1出力電流の値および第2出力電流の値は、それぞれ、電流値I1である。
【0142】
図11に記載の例では、第1変換装置5Aの出力電力と、第2変換装置5Bの出力電力は、共に、F2×I1となる。図11に記載の例において、第1バッテリ40Aのバッテリ残量が、第2バッテリ40Bのバッテリ残量に比べて少ない場合を想定する。この場合、第1の実施形態における説明と同様に、各変換装置の出力電力が等しければ、第1バッテリ40Aのバッテリ残量が、先にゼロとなり、第1変換装置5Aは停止する。このような第1変換装置5Aの停止は第2変換装置5Bにおける過電力の発生、あるいは、変換装置の冗長性の低下に繋がる。
【0143】
そこで、第3の実施形態によれば、制御回路7は、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の電力負担割合が低減されるように、第1ドループ制御部10Aに対する第1ドループ制御値および第2ドループ制御部10Bに対する第2ドループ制御値を決定する。また、第1ドループ制御値を受け取る第1ドループ制御部10A、および、第2ドループ制御値を受け取る第2ドループ制御部10Bのうちの少なくとも一方は、対応する変換装置の電圧ドループ特性を変更する(換言すれば、対応する変換装置の電圧ドループ特性を補正する。)。
【0144】
より具体的に説明する。図12に記載の例において、第1バッテリ40Aの第1バッテリ残量が、第2バッテリ40Bの第2バッテリ残量よりも少ない場合を想定する。この場合、第1ドループ制御値に対応する第1ドループ制御指令を受け取る第1ドループ制御部10Aは、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性が強化されるように(換言すれば、第1変換装置5Aの第1出力電流の増加(あるいは、減少)に対する、第1変換装置5Aの第1出力電圧の減少(あるいは、増加)の割合が大きくなるように)、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性を補正する(矢印AR10を参照。)。
【0145】
図12に記載の例では、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性が強化されることにより、第1バッテリ40Aの電力負担割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力負担割合が増加される。より具体的には、図12に記載の例では、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性が強化されることにより、(1)第1変換装置5Aの第1出力電圧の値および第2変換装置5Bの第2出力電圧の値が、共に、電圧値F2から電圧値F3に変更され、(2)第1変換装置5Aの第1出力電流の値が、電流値I1から電流値I2に減少され、(3)第2変換装置5Bの第2出力電流の値が、電流値I1から電流値I3に増加される。その結果、第1変換装置5Aの出力電力は、F3×I2に変化し、第2変換装置5Bの出力電力はF3×I3に変化する、電流値I2<電流値I3であるため、第1変換装置5Aの出力電力(F3×I2)<第2変換装置5Bの出力電力(F3×I3)となる。なお、第1変換装置5Aの出力電力と第2変換装置5Bの出力電力の合計「F3×(I2+I3)」は、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性が強化される前の両者の出力電力の合計「2×F2×I1」と等しい。
【0146】
以上のとおり、図12に記載の例では、第1変換装置5Aの第1電圧ドループ特性が強化されることにより、第1バッテリ40Aの電力負担割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力負担割合が増加される。代替的に、あるいは、付加的に、第2変換装置5Bの第2電圧ドループ特性が弱められることにより、第1バッテリ40Aの電力負担割合が低減され、第2バッテリ40Bの電力負担割合が増加されてもよい。
【0147】
なお、第3の実施形態において、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が少ない方の電圧ドループ特性が、連続的に強化されてもよく、段階的に強化されてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第3の実施形態において、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が多い方の電圧ドループ特性が、連続的に弱められてもよく、段階的に弱められてもよい。
【0148】
(作用:直流母線2からの受電)
図13に記載の例において、制御回路7は、第1バッテリ40Aおよび第2バッテリ40Bのうち、バッテリ残量が多い方の電力受電割合が低減されるように、第1ドループ制御部10Aに対する第1ドループ制御値、および、第2ドループ制御部10Bに対する第2ドループ制御値を決定する。また、制御回路7は、決定された第1ドループ制御値に対応する第1ドループ制御指令を第1ドループ制御部10Aに出力し、決定された第2ドループ制御値に対応する第2ドループ制御指令を第2ドループ制御部10Bに出力する。
【0149】
第1ドループ制御部10Aは、第1ドループ制御値に基づいて調整された第1電圧ドループ特性と、第1変換装置5Aの第1出力電流とに基づいて、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値を決定する。また、第1ドループ制御部10Aは、決定された第1出力電圧指令値に対応する第1制御指令を第1変換装置5Aに出力する。
【0150】
第2ドループ制御部10Bは、第2ドループ制御値に基づいて調整された第2電圧ドループ特性と、第2変換装置5Bの第2出力電流とに基づいて、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。また、第2ドループ制御部10Bは、決定された第2出力電圧指令値に対応する第2制御指令を第2変換装置5Bに出力する。
【0151】
その結果、第1変換装置5Aの第1出力電圧、および/または、第2変換装置5Bの第2出力電圧が変化し、バッテリ残量が多い方のバッテリの電力受電割合が低減され、バッテリ残量が少ない方のバッテリの電力受電割合が増加される。その結果、バッテリ毎に満充電となるタイミングが大きくばらつくことが防止される。
【0152】
(効果)
第3の実施形態における直流電力供給システム100Cでは、各電源のエネルギ容量あるいは各電源の特性が異なる場合において、各電源のエネルギ残量に応じて、少なくとも1つの変換装置の電圧ドループ特性が変更されることにより、各電源の電力負担割合が調整される。こうして、1つの電源のエネルギ残量が、他の電源のエネルギ残量に先行して、ゼロになることが防止または抑制される。その結果、複数の変換装置の動作が維持され、特定の変換装置において過電力が生じることが防止され、且つ、変換装置の冗長性が維持される。こうして、第3の実施形態では、安定した直流電力供給システムが提供される。
【0153】
また、第3の実施形態における直流電力供給システム100Cでは、各電源のエネルギ残量に応じて、少なくとも1つの変換装置の電圧ドループ特性が変更されることと、電圧ドループ特性に基づいて変換装置の出力電流に応じて出力電圧が変更されることとの両方が実行される。よって、各電源のエネルギ残量に応じた少なくとも1つの変換装置の電圧ドループ特性の変更前においても、各電源のエネルギ残量に応じた少なくとも1つの変換装置の電圧ドループ特性の変更後においても、複数の変換装置間で横流が生じることが抑制される。
【0154】
また、第3の実施形態において、充電用電源1Bから、直流母線2を介して、複数の電源(4A、4B)に給電される場合において、各電源のエネルギ残量(換言すれば、各電源のエネルギ蓄積量)に応じて、少なくとも1つの変換装置の電圧ドループ特性が変更されることにより、各電源の電力受電割合が調整される。こうして、1つの電源のエネルギ蓄積量が、他の電源のエネルギ蓄積量に先行して、FULLになることが防止または抑制される。その結果、複数の変換装置の動作が維持され、特定の変換装置において過電力が生じることが防止され、且つ、変換装置の冗長性が維持される。こうして、第3の実施形態では、安定した直流電力供給システムが提供される。
【0155】
本発明は上記各実施形態または各変形例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態又は各変形例は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は各変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は他の変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態又は各変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0156】
1A…負荷、1B…充電用電源、2…直流母線、3A…第1のBMU、3B…第2のBMU、4A…第1電源、4B…第2電源、5A…第1変換装置、5B…第2変換装置、6A…第1出力部、6B…第2出力部、7…制御回路、9A…第1電流検出器、9B…第2電流検出器、10A…第1ドループ制御部、10B…第2ドループ制御部、40A…第1バッテリ、40B…第2バッテリ、60A…第1電圧検出器、60B…第2電圧検出器、62A…第1の推定充電量算出部、62B…第2の推定充電量算出部、91…負荷、92…直流母線、93A…第1のバッテリマネジメントユニット、93B…第2のバッテリマネジメントユニット、94A…第1のバッテリ群、94B…第2のバッテリ群、95A…第1の変換装置、95B…第2の変換装置、96A…第1の電流検出器、96B…第2の電流検出器、97A…第1のドループ制御部、97B…第2のドループ制御部、100、100A、100B、100C…直流電力供給システム、L1…第1電線、L2…第2電線、L3…第3電線、L4…第4電線
【要約】
【課題】変換装置の動作停止を抑制し、変換装置の冗長性を維持することにより、安定した直流電力供給システムを提供する。
【解決手段】直流電力供給システムは、直流母線2と、第1電源4Aと、第2電源4Bと、第1変換装置5Aと、第2変換装置5Bと、制御回路7と、を具備する。制御回路7は、第1電源4Aが貯留するエネルギ残量に応じて変化する第1物理量、および、第2電源4Bが貯留するエネルギ残量に応じて変化する第2物理量に基づいて、第1変換装置5Aに対する第1出力電圧指令値、および、第2変換装置5Bに対する第2出力電圧指令値を決定する。第1変換装置5Aは、第1出力電圧指令値と第1電圧ドループ特性とに基づいて、第1電源電圧を第1出力電圧に昇降圧する。第2変換装置5Bは、第2出力電圧指令値と第2電圧ドループ特性とに基づいて、第2電源電圧を第2出力電圧に昇降圧する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14