IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シマノの特許一覧

特許7233838人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システム
<>
  • 特許-人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システム 図1
  • 特許-人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システム 図2
  • 特許-人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システム 図3
  • 特許-人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システム 図4
  • 特許-人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システム 図5
  • 特許-人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システム
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20230228BHJP
   B62J 6/015 20200101ALN20230228BHJP
   B62J 6/028 20200101ALN20230228BHJP
【FI】
B62M6/45
B62J6/015
B62J6/028
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2017253406
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019119247
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木谷 哲也
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-015470(JP,A)
【文献】特開平11-321770(JP,A)
【文献】中国実用新案第206255120(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/00 - 6/90
B62J 6/02 - 6/03
B60R 16/02
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通のバッテリから電力が供給される複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの少なくとも1つの消費電力を制御する制御部を含む人力駆動車両用制御装置であって、
前記複数の人力駆動車両用コンポーネントは、第1コンポーネントおよび、前記第1コンポーネントとは異なる第2コンポーネントを含み、
前記制御部は、前記第2コンポーネントに関する情報を含む信号を受信し、前記第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記バッテリの残量に関する第1閾値を設定し、前記バッテリの残量が前記第1閾値になると、前記第2コンポーネントが所定時間以上動作可能になるように前記第1コンポーネントの消費電力を低減させ、
前記第2コンポーネントに関する情報は、前記第2コンポーネントの定格の電流値、前記第2コンポーネントの定格の電圧値、前記第2コンポーネントの定格の消費電力、および、前記第2コンポーネントの公称抵抗値のうちの少なくとも1つを含む、人力駆動車両用制御装置。
【請求項2】
前記第2コンポーネントに関する情報は、前記第2コンポーネントを使用する場合に必要な電流値、前記第2コンポーネントを使用する場合に必要な電圧値、前記第2コンポーネントを使用する場合の抵抗値、および、前記第2コンポーネントを使用する場合に必要な消費電力のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記バッテリから少なくとも前記第2コンポーネントに電力が供給された状態で前記第2コンポーネントに関する情報を算出し、算出された前記第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定する、請求項1または2に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項4】
共通のバッテリから電力が供給される複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの少なくとも1つの消費電力を制御する制御部を含む人力駆動車両用制御装置であって、
前記複数の人力駆動車両用コンポーネントは、第1コンポーネントおよび、前記第1コンポーネントとは異なる第2コンポーネントを含み、
前記制御部は、前記第2コンポーネントに関する情報を含む信号を受信し、前記第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記バッテリの残量に関する第1閾値を設定し、前記バッテリの残量が前記第1閾値になると、前記第2コンポーネントが所定時間以上動作可能になるように前記第1コンポーネントの消費電力を低減させ、前記バッテリから少なくとも前記第2コンポーネントに電力が供給された状態で前記第2コンポーネントに関する情報を算出し、算出された前記第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定し、前記複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの前記第2コンポーネントだけに前記バッテリの電力が供給された状態において取得した前記第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定する、人力駆動車両用制御装置。
【請求項5】
前記第2コンポーネントに関する情報は、前記第2コンポーネントを使用する場合に必要な電流値、前記第2コンポーネントの定格の電流値、前記第2コンポーネントを使用する場合に必要な電圧値、前記第2コンポーネントの定格の電圧値、前記第2コンポーネントを使用する場合の抵抗値、前記第2コンポーネントの公称抵抗値、前記第2コンポーネントを使用する場合に必要な消費電力、および、前記第2コンポーネントの定格の消費電力のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項4に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記バッテリの残量が第1所定残量以下であり、前記複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの前記第2コンポーネントだけに前記バッテリの電力が供給された状態において取得した前記第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定する、請求項4または5に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記バッテリの残量が第2所定残量以上であり、前記複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの前記第2コンポーネントだけに前記バッテリの電力が供給された状態において取得した前記第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定する、請求項4または5に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項8】
前記複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの前記第2コンポーネントだけに前記バッテリの電力が供給された状態において取得した前記第2コンポーネントに関する情報は、前記バッテリの残量が所定残量に到達後、前記バッテリの電力が前記第2コンポーネントに供給されなくなるまでの期間における前記第2コンポーネントの動作時間と、前記バッテリの残量が前記所定残量に到達後、前記バッテリの電力が前記第2コンポーネントに供給されなくなるまでの期間における前記バッテリの残量の減少速度との少なくとも一方を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2コンポーネントに関する情報の値が小さくなるほど前記第1閾値を小さくし、前記第2コンポーネントに関する情報の値が大きくなるほど前記第1閾値を大きくする、請求項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、外部装置から前記第2コンポーネントに関する情報を含む信号を受信する、請求項1~9のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項11】
前記外部装置は、スマートデバイスおよびパーソナルコンピュータの少なくとも一方を含む、請求項10に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項12】
前記第2コンポーネントは、前記第2コンポーネントに関する情報を含む信号を前記制御部に送信可能な通信部を含み、
前記制御部は、前記通信部から送信された前記第2コンポーネントに関する情報を取得する、請求項1~11のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第1閾値になると、前記第1コンポーネントの少なくとも1つの機能を停止するように前記第1コンポーネントの消費電力を低減させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第1閾値になると、前記第1コンポーネントの消費電力を0にする、請求項13に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値になると、前記第2コンポーネントの消費電力を低減させる、請求項1~14のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第2閾値になると、前記第2コンポーネントの少なくとも1つの機能を停止するように前記第2コンポーネントの消費電力を低減させる、請求項15に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第2閾値になると、前記第2コンポーネントの消費電力を0にする、請求項16に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項18】
前記第1コンポーネントは、前記人力駆動車両の推進を補助するモータユニット、変速機、アジャスタブルシートポスト、サスペンション、ランプ、表示装置、音響装置、グリップヒータ、シートヒータ、無線通信装置、撮像装置、および、ブレーキ装置のうちのいずれか1つを含み、
前記第2コンポーネントは、前記モータユニット、前記変速機、前記アジャスタブルシートポスト、前記サスペンション、前記ランプ、前記表示装置、前記音響装置、前記グリップヒータ、前記シートヒータ、前記無線通信装置、前記撮像装置、および、前記ブレーキ装置のうちの前記第1コンポーネントとは異なるいずれか1つを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項19】
前記第1コンポーネントは、前記モータユニットを含み、
前記第2コンポーネントは、前記ランプを含む、請求項18に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項20】
前記人力駆動車両は自転車である、請求項1~19のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置と、
前記複数の人力駆動車両用コンポーネントと、を含む人力駆動車両用制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
共通のバッテリから電力が供給される複数の人力駆動車両用コンポーネントの消費電力を制御する人力駆動車両用制御装置が知られている。複数の人力駆動車両用コンポーネントは、第1コンポーネントおよび第2コンポーネントを含む。この人力駆動車両用制御装置では、バッテリの残量が予め設定された第1閾値以下になると第1コンポーネントの消費電力を低減させ、バッテリの残量が第1閾値よりも小さい第2閾値以下になると第2コンポーネントの消費電力を低減させる。特許文献1は、従来の人力駆動車両用制御装置の一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-323694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリの残量に関する第1閾値は、例えば第2コンポーネントが少なくとも所定時間以上動作可能なバッテリの残量を残すように設定される。一方、第2コンポーネントの消費電力が小さい場合、バッテリの残量が第1閾値以下になったときに第2コンポーネントを所定時間以上動作させるためのバッテリの残量よりも余分にバッテリの残量を残したまま第1コンポーネントの消費電力を低減させることがある。この場合、必要以上に早く第1コンポーネントの消費電力を低減させるため、第1コンポーネントを使用できる期間が短くなる。
【0005】
本発明の目的は、第1コンポーネントを使用できる期間を出来る限り伸ばすことができる人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に従う人力駆動車両用制御装置は、共通のバッテリから電力が供給される複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの少なくとも1つの消費電力を制御する制御部を含む人力駆動車両用制御装置であって、前記複数の人力駆動車両用コンポーネントは、第1コンポーネントおよび第2コンポーネントを含み、前記制御部は、前記第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記バッテリの残量に関する第1閾値を設定し、前記バッテリの残量が前記第1閾値になると、前記第2コンポーネントが所定時間以上動作可能になるように前記第1コンポーネントの消費電力を低減させる。
第2コンポーネントに関する情報に基づいて第1閾値が設定されるため、第1コンポーネントの消費電力を適切なタイミングで低減させることができる。このため、第1コンポーネントを使用できる期間を出来る限り伸ばすことができる。また、バッテリの残量が第1閾値になる状態で、第2コンポーネントを所定時間以上動作させることができる。
【0007】
前記第1側面に従う第2側面の人力駆動車両用制御装置において、前記第2コンポーネントに関する情報は、前記第2コンポーネントの電流値、電圧値、抵抗値、および、消費電力のうちの少なくとも1つに関する負荷情報を含む。
このため、第2コンポーネントの負荷情報に基づいて第1閾値を適切に設定することができる。
【0008】
前記第2側面に従う第3側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記第2コンポーネントの負荷情報の値が小さくなるほど前記第1閾値を小さくし、前記第2コンポーネントの負荷情報の値が大きくなるほど前記第1閾値を大きくする。
このため、第2コンポーネントの負荷情報の値の大きさに基づいて第1閾値を適切に設定することができる。
【0009】
前記第1~第3側面のいずれか1つに従う第4側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記バッテリから少なくとも第2コンポーネントに電力が供給された状態で前記第2コンポーネントに関する情報を算出し、算出された第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定する。
このため、第2コンポーネントに関する情報を手動で入力することなく、人力駆動車両用コンポーネントの使用状態に基づいて第2コンポーネントに関する情報を算出することができる。
【0010】
前記第4側面に従う第5側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの前記第2コンポーネントだけに前記バッテリの電力が供給された状態において取得した第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定する。
第2コンポーネントだけにバッテリの電力が供給される使用状態に基づいて第2コンポーネントに関する情報を算出するため、第2コンポーネントに関する情報の算出精度が向上する。このため、第1閾値をより適切に設定することができる。
【0011】
前記第5側面に従う第6側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記バッテリの残量が第1所定残量以下であり、前記複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの前記第2コンポーネントだけに前記バッテリの電力が供給された状態において取得した第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定する。
バッテリの残量が第1所定残量以下の場合、第2コンポーネントだけにバッテリの電力が供給される可能性が高くなるため、第1閾値をより適切に設定することができる。また、第1閾値が既に設定されている場合、その第1閾値を第2コンポーネントに関する情報から取得できる閾値に基づいて必要に応じて補正することができる。このため、第2コンポーネントを交換した場合、または、第1閾値が誤った値に設定されている場合に第1閾値を適切に補正することができる。
【0012】
前記第5側面に従う第7側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記バッテリの残量が第2所定残量以上であり、前記複数の人力駆動車両用コンポーネントのうちの前記第2コンポーネントだけに前記バッテリの電力が供給された状態において取得した第2コンポーネントに関する情報に基づいて前記第1閾値を設定する。
このため、バッテリの残量が少なくなる前に第1閾値を設定することができる。
【0013】
前記第1~第7側面のいずれか1つに従う第8側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、外部装置から前記第2コンポーネントに関する情報を含む信号を受信する。
正確な第2コンポーネントに関する情報を外部装置から取得するため、第1閾値を適切に設定することができる。
【0014】
前記第8側面に従う第9側面の人力駆動車両用制御装置において、前記外部装置は、スマートデバイスおよびパーソナルコンピュータの少なくとも一方を含む。
このため、手動で入力される第2コンポーネントに関する情報に基づいて第1閾値を設定することができる。
【0015】
前記第1~第9側面のいずれか1つに従う第10側面の人力駆動車両用制御装置において、前記第2コンポーネントは、前記第2コンポーネントに関する情報を含む信号を前記制御部に送信可能な通信部を含み、前記制御部は、前記通信部から送信された前記第2コンポーネントに関する情報を取得する。
正確な第2コンポーネントに関する情報を第2コンポーネントから自動的に取得するため、第1閾値を適切に設定することができる。
【0016】
前記第1~第10側面のいずれか1つに従う第11側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第1閾値になると、前記第1コンポーネントの少なくとも1つの機能を停止するように前記第1コンポーネントの消費電力を低減させる。
このため、バッテリの残量が第1閾値に到達した場合に、バッテリの電力を第2コンポーネントに優先して供給することができる。
【0017】
前記第11側面に従う第12側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第1閾値になると、前記第1コンポーネントの消費電力を0にする。
このため、バッテリの残量が第1閾値に到達した場合に、バッテリの電力を第2コンポーネントに優先して供給することができる。
【0018】
前記第1~第12側面のいずれか1つに従う第13側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値になると、前記第2コンポーネントの消費電力を低減させる。
このため、バッテリの過放電を抑制することができる。また、第2コンポーネントを使用できる期間を伸ばすことができる。
【0019】
前記第13側面に従う第14側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第2閾値になると、前記第2コンポーネントの少なくとも1つの機能を停止するように前記第2コンポーネントの消費電力を低減させる。
このため、バッテリの過放電を抑制することができる。
【0020】
前記第14側面に従う第15側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記バッテリの残量が前記第2閾値になると、前記第2コンポーネントの消費電力を0にする。
このため、バッテリの過放電を抑制することができる。
【0021】
前記第1~第15側面のいずれか1つに従う第16側面の人力駆動車両用制御装置において、前記第1コンポーネントは、前記人力駆動車両の推進を補助するモータユニット、変速機、アジャスタブルシートポスト、サスペンション、ランプ、表示装置、音響装置、グリップヒータ、シートヒータ、無線通信装置、撮像装置、および、ブレーキ装置のうちのいずれか1つを含み、前記第2コンポーネントは、前記モータユニット、前記変速機、前記アジャスタブルシートポスト、前記サスペンション、前記ランプ、前記表示装置、前記音響装置、前記グリップヒータ、前記シートヒータ、前記無線通信装置、前記撮像装置、および、前記ブレーキ装置のうちの前記第1コンポーネントとは異なるいずれか1つを含む。
このため、複数の人力駆動車両用コンポーネントを使用できる期間に関して優先順位を設定することができる。
【0022】
前記第16側面に従う第17側面の人力駆動車両用制御装置において、前記第1コンポーネントは、前記モータユニットを含み、前記第2コンポーネントは、前記ランプを含む。
このため、モータユニットを使用できる期間を出来る限り伸ばすことができる。また、モータユニットが停止した後に、ランプを所定時間以上動作させることができる。
【0023】
前記第1~第17側面のいずれか1つに従う第18側面の人力駆動車両用制御装置において、前記人力駆動車両は自転車である。
このため、人力駆動車両用制御装置を自転車に適用することができる。
【0024】
本発明の第19側面に従う人力駆動車両用制御システムは、前記人力駆動車両用制御装置と、前記複数の人力駆動車両用コンポーネントと、を含む。
第2コンポーネントに関する情報に基づいて第1閾値が設定されるため、第1コンポーネントの消費電力を適切なタイミングで低減させることができる。このため、第1コンポーネントを使用できる期間を出来る限り伸ばすことができる。また、バッテリの残量が第1閾値になる状態で、第2コンポーネントを所定時間以上動作させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システムによれば、第1コンポーネントを使用できる期間を出来る限り伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態の人力駆動車両用制御システムを含む人力駆動車の側面図。
図2図1の人力駆動車両用制御システムのブロック図。
図3図2の制御部が実行する制御の一例を示すフローチャート。
図4】第2実施形態の人力駆動車両用制御システムのブロック図。
図5図4の制御部が実行する制御の一例を示すフローチャート。
図6】第3実施形態の人力駆動車両用制御システムにおいて、制御部が実行する制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
図1を参照して、人力駆動車両用制御システム10を含む人力駆動車両Aについて説明する。
ここで、人力駆動車両は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動で人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車両には含まれない。特に、内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車両には含まれない。通常、人力駆動車両には、小型軽車両が想定され、公道での運転に免許を要しない車両が想定される。図示される人力駆動車両Aは、電気エネルギーを用いて人力駆動車両Aの推進を補助する電動補助ユニットEを含む自転車(e-bike)である。具体的には、図示される人力駆動車両Aは、ロードバイクである。人力駆動車両Aは、フレームA1、フロントフォークA2、前輪WF、後輪WR、ハンドルH、および、ドライブトレインBをさらに含む。
【0028】
ドライブトレインBは、チェーンドライブタイプに構成される。ドライブトレインBは、クランクC、フロントスプロケットD1、リアスプロケットD2、および、チェーンD3を含む。クランクCは、フレームA1に回転可能に支持されるクランク軸C1、および、クランク軸C1の両端部のそれぞれに設けられる一対のクランクアームC2を含む。各クランクアームC2の先端には、ペダルPDが回転可能に取り付けられる。なお、ドライブトレインBは、任意のタイプから選択でき、ベルトドライブタイプ、または、シャフトドライブタイプであってもよい。
【0029】
フロントスプロケットD1は、クランク軸C1と一体に回転するようにクランクCに設けられる。リアスプロケットD2は、後輪WRのハブHRに設けられる。チェーンD3は、フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2に巻き掛けられる。人力駆動車両Aに搭乗するユーザによってペダルPDに加えられる駆動力は、フロントスプロケットD1、チェーンD3、および、リアスプロケットD2を介して後輪WRに伝達される。
【0030】
人力駆動車両Aは、電動補助ユニットEをさらに含む。電動補助ユニットEは、人力駆動車両Aの推進力がアシストされるように動作する。電動補助ユニットEは、例えばペダルPDに加えられる駆動力に応じて動作する。電動補助ユニットEは、モータユニット22を含む。モータユニット22は、ペダルPDから後輪WRまでの動力伝達系または前輪WFに回転を伝達するように、電動補助ユニットEのハウジング(図示略)内に設けられる。モータユニット22は、回生可能に構成されてもよい。電動補助ユニットEは、人力駆動車両Aに搭載されるバッテリBT、または、バッテリBTとは別の電源(図示略)から供給される電力によって駆動される。
【0031】
人力駆動車両用制御システム10は、人力駆動車両用制御装置12と、共通のバッテリBTから電力が供給される複数の人力駆動車両用コンポーネント20と、を含む。人力駆動車両用制御装置12は、複数の人力駆動車両用コンポーネント20と電力線(図示略)を介して電気的に接続される。人力駆動車両用制御装置12は、複数の人力駆動車両用コンポーネント20と電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)を実行することができる。人力駆動車両用制御装置12は、例えば各種の操作装置への入力に基づいて、対応する人力駆動車両用コンポーネント20を制御する。本実施形態では、人力駆動車両用制御装置12は、電動補助ユニットEのハウジング内に設けられる。人力駆動車両用制御装置12は、例えばバッテリBTから供給される電力によって駆動される。
【0032】
図2に示されるように、複数の人力駆動車両用コンポーネント20は、第1コンポーネント20Aおよび第2コンポーネント20Bを含む。第1コンポーネント20Aは、人力駆動車両Aの推進を補助するモータユニット22、変速機24、アジャスタブルシートポスト26、サスペンション28、ランプ30、表示装置32、音響装置34、グリップヒータ36、シートヒータ38、無線通信装置40、撮像装置42、および、ブレーキ装置44のうちのいずれか1つを含む。本実施形態では、第1コンポーネント20Aは、モータユニット22を含む。第2コンポーネント20Bは、モータユニット22、変速機24、アジャスタブルシートポスト26、サスペンション28、ランプ30、表示装置32、音響装置34、グリップヒータ36、シートヒータ38、無線通信装置40、撮像装置42、および、ブレーキ装置44のうちの第1コンポーネント20Aとは異なるいずれか1つを含む。本実施形態では、第2コンポーネント20Bは、ランプ30を含む。第1コンポーネント20Aおよび第2コンポーネント20Bに含まれない要素は、人力駆動車両Aから省略されてもよく、バッテリBTとは別の電源(図示略)からの電力によって駆動されてもよい。また、第2コンポーネント20Bは、第1コンポーネント20Aと共通のバッテリBTからの電力により動作するように構成されているが、上記共通のバッテリBTに加えて別の電源からの電力により動作するように構成してもよい。
【0033】
変速機24は、フロントディレーラ24Aおよびリアディレーラ24Bの少なくとも一方を含む(図1参照)。フロントディレーラ24Aは、フレームA1のうちのクランク軸C1付近に設けられる(図1参照)。フロントディレーラ24Aの駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるフロントスプロケットD1が変更され、人力駆動車両Aの変速比が変更される。リアディレーラ24Bは、フレームA1のリアエンドA3に設けられる(図1参照)。リアディレーラ24Bの駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるリアスプロケットD2が変更され、人力駆動車両Aの変速比が変更される。なお、変速機24は、内装変速ハブ等の内装タイプに構成されてもよい。
【0034】
アジャスタブルシートポスト26は、フレームA1に対するサドルSDの高さが変更されるように動作する。サスペンション28は、フロントサスペンション28A(図1参照)およびリアサスペンション(図示略)の少なくとも一方を含む。フロントサスペンションは、前輪WFが地面から受ける衝撃が緩和されるように動作する。リアサスペンションは、後輪WRが地面から受ける衝撃が緩和されるように動作する。ランプ30は、前ランプ30A(図1参照)および後ランプ(図示略)の少なくとも一方を含む。前ランプ30Aは、例えば人力駆動車両Aの前方に光を照射するようにフロントフォークA2に設けられる(図1参照)。後ランプは、例えば人力駆動車両Aの後方に光を照射するようにアジャスタブルシートポスト26に設けられる。表示装置32は、サイクルコンピュータを含む。表示装置32は、例えばハンドルHに設けられる(図1参照)。
【0035】
音響装置34は、ブザーを含む。音響装置34は、例えばハンドルHに設けられる。グリップヒータ36は、グリップGR(図1参照)を加熱するヒータである。一例では、グリップヒータ36は、フィルムヒータである。グリップヒータ36は、例えばグリップGR内に設けられる。シートヒータ38は、サドルSDを加熱するヒータである。一例では、シートヒータ38は、電熱線である。シートヒータ38は、例えばサドルSD内に設けられる。無線通信装置40は、無線信号を送信または受信可能に構成される。一例では、無線通信装置40は、人力駆動車両用制御装置12と別の無線通信装置(図示略)とを通信可能に構成される。撮像装置42は、前撮像装置および後撮像装置の少なくとも一方を含む(図示略)。前撮像装置は、例えば人力駆動車両Aの前方を撮像するようにハンドルHに設けられる。後撮像装置は、例えば人力駆動車両Aの後方を撮像するようにアジャスタブルシートポスト26に設けられる。
【0036】
ブレーキ装置44は、前ブレーキ装置44Aおよび後ブレーキ装置44Bの少なくとも一方を含む(図1参照)。前ブレーキ装置44Aは、前輪WFのリムRFを制動するリムブレーキ装置である(図1参照)。後ブレーキ装置44Bは、後輪WRのリムRRを制動するリムブレーキ装置である(図1参照)。各ブレーキ装置44A、44Bは、ディスクブレーキロータ(図示略)を制動するディスクブレーキ装置であってもよい。
【0037】
人力駆動車両用制御装置12は、共通のバッテリBTから電力が供給される複数の人力駆動車両用コンポーネント20のうちの少なくとも1つの消費電力を制御する制御部14を含む。本実施形態では、制御部14は、第1コンポーネント20Aおよび第2コンポーネント20Bの少なくとも一方の消費電力を制御する。すなわち、制御部14は、第1および第2コンポーネント20A、20Bの両方の消費電力を制御してもよく、第1および第2コンポーネント20A、20Bの一方の消費電力を制御し、第1および第2コンポーネント20A、20Bの他方の消費電力を制御せずに一定としてもよい。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部14は、1つまたは複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0038】
人力駆動車両用制御装置12は、各種の情報を記憶する記憶部16をさらに含む。記憶部16は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。記憶部16は、例えば制御のための各種プログラム、および、予め設定される情報等を記憶する。予め記憶部16に記憶される情報は、所定の入力装置(図示略)を用いて変更可能に構成されてもよい。
【0039】
制御部14は、第2コンポーネント20Bに関する情報に基づいてバッテリBTの残量に関する第1閾値を設定する。制御部14は、第1閾値が既に記憶部16に記憶されている場合、第2コンポーネント20Bに関する情報に基づいて、その第1閾値を変更するように新たな第1閾値を設定することができる。制御部14は、バッテリBTの残量と第1閾値との比較に基づいて、第1コンポーネント20Aの消費電力を低減させる。
【0040】
第2コンポーネント20Bに関する情報は、第2コンポーネント20Bの電流値、電圧値、抵抗値、および、消費電力のうちの少なくとも1つに関する負荷情報を含む。第2コンポーネント20Bの電流値に関する負荷情報は、第2コンポーネント20Bを使用する場合に必要な電流値に関する情報、および、第2コンポーネント20Bの定格の電流値に関する情報の少なくとも一方を含む。第2コンポーネント20Bの電圧値に関する情報は、第2コンポーネント20Bを使用する場合に必要な電圧値に関する情報、および、第2コンポーネント20Bの定格の電圧値に関する情報の少なくとも一方を含む。第2コンポーネント20Bの抵抗値に関する負荷情報は、第2コンポーネント20Bを使用する場合の抵抗値に関する情報、および、第2コンポーネント20Bの公称抵抗値に関する情報の少なくとも一方を含む。第2コンポーネント20Bの消費電力に関する情報は、第2コンポーネント20Bを使用する場合に必要な消費電力に関する情報、および、第2コンポーネント20Bの定格の消費電力に関する情報の少なくとも一方を含む。
【0041】
制御部14は、第2コンポーネント20Bの負荷情報の値が小さくなるほど第1閾値を小さくし、第2コンポーネント20Bの負荷情報の値が大きくなるほど第1閾値を大きくする。制御部14は、第2コンポーネント20Bの電流値に関する負荷情報に基づいて第1閾値を設定する場合、例えば供給電圧を一定とした場合における電流値の大きさに基づいて第1閾値を設定する。制御部14は、第2コンポーネント20Bの電圧値に関する負荷情報に基づいて第1閾値を設定する場合、例えば供給電流を一定とした場合における電圧値に基づいて第1閾値を設定する。
【0042】
制御部14は、例えば以下の第1例および第2例の少なくとも一方に従って第1閾値を設定する。第1例では、制御部14は、外部装置46から第2コンポーネント20Bに関する情報(以下、「入力情報」)を含む信号を受信する。入力情報は、例えば第2コンポーネント20Bの負荷情報を含む。制御部14は、外部装置46から入力情報を取得し、その入力情報に基づいて第1閾値を設定する。外部装置46は、ユーザが手動で入力可能な装置を含む。外部装置46は、スマートデバイス46Aおよびパーソナルコンピュータ46Bの少なくとも一方を含む。スマートデバイス46Aは、スマートフォン、スマートウォッチ、および、タブレットコンピュータのうちの少なくとも1つを含む(図示略)。一例では、制御部14は、外部装置46を介して入力される入力情報を記憶部16に記憶することによって第1閾値を設定する。制御部14は、外部装置46を介して入力される入力情報に基づいて第1閾値を算出し、算出された第1閾値を記憶部16に記憶してもよい。
【0043】
第2例では、制御部14は、バッテリBTから少なくとも第2コンポーネント20Bに電力が供給された状態で第2コンポーネント20Bに関する情報を算出し、算出された第2コンポーネント20Bに関する情報に基づいて第1閾値を設定する。制御部14は、複数の人力駆動車両用コンポーネント20のうちの第2コンポーネント20BだけにバッテリBTの電力が供給された状態において取得した第2コンポーネント20Bに関する情報に基づいて第1閾値を設定する。
【0044】
本実施形態では、制御部14は、バッテリBTの残量が第1所定残量以下であり、複数の人力駆動車両用コンポーネント20のうちの第2コンポーネント20BだけにバッテリBTの電力が供給された状態において取得した第2コンポーネント20Bに関する情報(以下、「第1取得情報」)に基づいて第1閾値を設定する。第1所定残量は、バッテリBTの残量が満充電の30%以下の範囲に含まれることが好ましい。第1所定残量は、予め記憶部16に記憶される。第1閾値が既に記憶部16に記憶されている場合では、第1所定残量として第1閾値を利用してもよい。一例では、制御部14は、第1閾値が既に記憶部16に記憶されている場合にその第1閾値を変更可能であり、第1閾値が記憶部16に記憶されていない場合に第1閾値を新たに設定可能である。
【0045】
第1取得情報は、例えば第1情報、第2情報、および、第3情報のうちの少なくとも1つを含む。第1情報は、バッテリBTの残量が第1所定残量に到達後、バッテリBTの電力が第2コンポーネント20Bに供給されなくなるまでの期間(以下、「第1駆動期間」)における第2コンポーネント20Bの動作時間に関する情報を含む。一例では、第1駆動期間は、バッテリBTの残量が第1所定残量に到達後、バッテリBTの残量が後述する第2閾値に到達するまでの期間である。第2情報は、第1駆動期間におけるバッテリBTの残量の減少速度に関する情報を含む。バッテリBTの残量の減少速度は、第2コンポーネント20Bの消費電力と相関する。第3情報は、バッテリBTから第2コンポーネント20Bだけに供給される電力に基づいて取得できる第2コンポーネント20Bの負荷情報を含む。バッテリBTから供給される電力は、例えば人力駆動車両Aに搭載される検出器48によって検出される。検出器48は、電流計および電圧計等を含む。一例では、制御部14は、第2コンポーネント20BだけにバッテリBTの電力が供給された状態において第1取得情報を算出して取得する。
【0046】
制御部14は、第1閾値が既に記憶部16に記憶されている場合、その第1閾値と第1取得情報から得られるバッテリBTの残量に関する閾値(以下、「暫定閾値」)とを比較することによって、第1閾値が適切か否かを判定する。暫定閾値は、例えば第2コンポーネント20Bが所定時間以上動作可能なバッテリBTの残量を基準に設定される。一例では、制御部14は、第1閾値が適切であると判定した場合、その第1閾値を記憶部16に記憶させた状態を維持する。一方、制御部14は、第1閾値が適切でないと判定した場合、その第1閾値を取得した暫定閾値に変更する。第1閾値が適切でない場合は、第1閾値と暫定閾値との差が所定値以上であり、第2コンポーネント20Bが所定時間以上動作可能なバッテリBTの残量よりも過剰または不足している場合である。所定値は、第1閾値と暫定閾値とが実質的に同じであると判定できる範囲において予め設定される。また、制御部14は、第1閾値が記憶部16に記憶されていない場合、第1取得情報から得られる暫定閾値を第1閾値として設定する。なお、制御部14は、例えば第1および第2コンポーネント20A、20BにバッテリBTの電力が供給された状態において取得した第1取得情報に基づいて第1閾値を算出する場合、第1コンポーネント20Aに関する情報を予め記憶部16に記憶しておくことが好ましい。第1コンポーネント20Aに関する情報は、第1コンポーネント20Aの電流値、電圧値、抵抗値、および、消費電力のうちの少なくとも1つに関する負荷情報を含む。
【0047】
制御部14は、バッテリBTの残量が第1閾値になると、第2コンポーネント20Bが所定時間以上動作可能になるように第1コンポーネント20Aの消費電力を低減させる。具体的には、制御部14は、バッテリBTの残量が第1閾値よりも大きい状態から第1閾値以下の状態になると、第1コンポーネント20Aの消費電力を低減させる。制御部14は、第2コンポーネント20Bが所定時間以上連続的に動作可能になるように第1コンポーネント20Aの消費電力を低減させてもよく、第2コンポーネント20Bが所定時間以上断続的に動作可能になるように第1コンポーネント20Aの消費電力を低減させてもよい。また、制御部14は、第1コンポーネント20Aの消費電力が低減するように第1コンポーネント20Aを制御してもよく、第1コンポーネント20Aの消費電力が低減するように第1コンポーネント20Aの消費電力に関する情報を含む信号をバッテリBTに送信してもよい。
【0048】
制御部14は、バッテリBTの残量が第1閾値になると、第1コンポーネント20Aの少なくとも1つの機能を停止するように第1コンポーネント20Aの消費電力を低減させる。一例では、制御部14は、少なくとも人力駆動車両Aの推進を補助する機能を停止するようにモータユニット22の消費電力を低減させる。例えば、モータユニット22が回生機能を含む場合、バッテリBTの残量にかかわらず回生機能を使用可能な状態に維持するように構成してもよい。本実施形態では、制御部14は、バッテリBTの残量が第1閾値になると、第1コンポーネント20Aの消費電力を0にする。一例では、制御部14は、バッテリBTの残量が第1閾値になると、複数の人力駆動車両用コンポーネント20のうちの第2コンポーネント20Bだけを動作可能にするようにバッテリBTの電力を供給する。制御部14は、バッテリBTの残量が第1閾値になると、複数の人力駆動車両用コンポーネント20のうちの第2コンポーネント20BだけにバッテリBTの電力を供給するようにしてもよい。
【0049】
制御部14は、バッテリBTの残量が第1閾値よりも小さい第2閾値になると、第2コンポーネント20Bの消費電力を低減させる。具体的には、制御部14は、バッテリBTの残量が第2閾値よりも大きい状態から第2閾値以下の状態になると、第2コンポーネント20Bの消費電力を低減させる。制御部14は、第2コンポーネント20Bの消費電力が低減するように第2コンポーネント20Bを制御してもよく、第2コンポーネント20Bの消費電力が低減するように第2コンポーネント20Bの消費電力に関する情報を含む信号をバッテリBTに送信してもよい。第2閾値は、例えばバッテリBTの容量等に応じて予め設定される。
【0050】
制御部14は、バッテリBTの残量が第2閾値になると、第2コンポーネント20Bの少なくとも1つの機能を停止するように第2コンポーネント20Bの消費電力を低減させる。一例では、制御部14は、断続的に光を照射する機能を維持し、連続的に光を照射する機能を停止するようにランプ30の消費電力を低減させる。別の例では、第1光量で光を照射する機能を維持し、第1光量より大きい第2光量で光を照射する機能を停止させる。本実施形態では、制御部14は、バッテリBTの残量が第2閾値になると、第2コンポーネント20Bの消費電力を0にする。一例では、制御部14は、バッテリBTの残量が第2閾値になると、バッテリBTから人力駆動車両用コンポーネント20への電力供給を停止させる。このとき、第2閾値は、バッテリBTの過放電を抑制するために、0より大きい値となるように設定される。
【0051】
図3を参照して、制御部14が実行する制御の一例について説明する。
制御部14は、例えば人力駆動車両用コンポーネント20と電力線によって電気的に接続された状態において以下の制御を実行する。制御部14は、ステップS11において、外部装置46から信号を受信したか否かを判定する。制御部14は、ステップS11において、外部装置46から信号を受信したと判定した場合、外部装置46から入力情報を取得し、ステップS12の処理に移行する。制御部14は、ステップS12において、外部装置46から取得した入力情報に基づいて第1閾値を設定する。具体的には、制御部14は、入力情報を記憶部16に記憶することによって第1閾値を設定する、または、入力情報から算出した第1閾値を記憶部16に記憶する。制御部14は、記憶部16に記憶されている第1閾値が存在し、その第1閾値と入力情報に基づく第1閾値とが実質的に同じである場合、ステップS12において第1閾値を変更しなくてもよい。
【0052】
制御部14は、ステップS13において、バッテリBTの残量が第1閾値以下か否かを判定する。制御部14は、ステップS13において、バッテリBTの残量が第1閾値より大きいと判定した場合、ステップS13の処理を繰り返す。一方、制御部14は、ステップS13において、バッテリBTの残量が第1閾値以下であると判定した場合、ステップS14の処理に移行する。制御部14は、ステップS14において、第1取得情報を取得する。具体的には、制御部14は、第2コンポーネント20BだけにバッテリBTの電力が供給された状態において第1取得情報を取得する。
【0053】
制御部14は、ステップS15において、記憶部16に記憶されている第1閾値と、第1取得情報から得られる暫定閾値との差が所定値未満か否かを判定する。具体的には、制御部14は、ステップS12において設定した入力情報に基づく第1閾値と暫定閾値との差が所定値未満か否かを判定する。制御部14は、ステップS15において、第1閾値と暫定閾値との差が所定値未満であると判定した場合、ステップS16の処理に移行する。制御部14は、ステップS16において、ステップS12の処理で設定した第1閾値を記憶部16に記憶させた状態を維持する。以上の処理を経て、ステップS11~ステップS16の処理を終了する。なお、制御部14は、ステップS15において、入力情報と第1取得情報に含まれる第3情報とを比較してもよい。
【0054】
一方、制御部14は、ステップS15において、第1閾値と暫定閾値との差が所定値以上であると判定した場合、ステップS19の処理に移行する。制御部14は、ステップS19において、第1閾値を変更するように、第1取得情報に基づいて暫定閾値を第1閾値として設定する。具体的には、制御部14は、ステップS12の処理で記憶部16に記憶された第1閾値を変更し、第1取得情報から得られる暫定閾値を新たな第1閾値として記憶部16に記憶する。以上の処理を経て、ステップS11~ステップS15、ステップS19の処理を終了する。
【0055】
制御部14は、ステップS11において、外部装置46から信号を受信していないと判定した場合、ステップS17の処理に移行する。制御部14は、ステップS17において、バッテリBTの残量が第1所定残量以下か否かを判定する。制御部14は、ステップS17において、バッテリBTの残量が第1所定残量より大きいと判定した場合、ステップS17の処理を繰り返す。一方、制御部14は、ステップS17の処理において、バッテリBTの残量が第1所定残量以下であると判定した場合、ステップS18の処理に移行する。制御部14は、ステップS18において、ステップS14と同じ処理を実行する。
【0056】
制御部14は、ステップS19において、第1取得情報に基づいて暫定閾値を第1閾値として設定する。制御部14は、記憶部16に記憶されている第1閾値が存在し、その第1閾値と第1取得情報から得られる暫定閾値とが実質的に同じである場合、ステップS19において第1閾値を変更しなくてもよい。以上の処理を経て、ステップS11、ステップS17~ステップS19の処理を終了する。制御部14は、ステップS13~ステップS19の処理を省略して実行してもよく、ステップS11~ステップS16の処理を省略して実行してもよい。
【0057】
(第2実施形態)
図4および図5を参照して、第2実施形態の人力駆動車両用制御システム10について説明する。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
図4に示されるように、第2コンポーネント20Bは、第2コンポーネント20Bに関する情報を含む信号を制御部14に送信可能な通信部30Bを含む。通信部30Bは、例えば無線信号を送信または受信可能に構成される。本実施形態では、通信部30Bは、ランプ30内に設けられる。制御部14は、例えば以下の第3例に従って第1閾値を設定する。第3例では、制御部14は、通信部30Bから送信された第2コンポーネント20Bに関する情報(以下、「機器情報」)を取得する。機器情報は、例えば第2コンポーネント20Bに関する負荷情報を含む。制御部14は、通信部30Bから機器情報を取得し、その機器情報に基づいて第1閾値を設定する。
【0059】
図5を参照して、制御部14が実行する制御の一例について説明する。
制御部14は、例えば人力駆動車両用コンポーネント20と電力線によって電気的に接続された状態において以下の制御を実行する。制御部14は、ステップS21において、通信部30Bから信号を受信したか否かを判定する。制御部14は、ステップS21において、通信部30Bから信号を受信していないと判定した場合、ステップS21の処理を繰り返す。一方、制御部14は、ステップS21において、通信部30Bから信号を受信したと判定した場合、通信部30Bから機器情報を取得し、ステップS22の処理に移行する。制御部14は、ステップS22において、通信部30Bから取得した機器情報に基づいて第1閾値を設定する。制御部14は、記憶部16に記憶されている第1閾値が存在し、その第1閾値と機器情報に基づく第1閾値とが実質的に同じである場合、ステップS22において第1閾値を変更しなくてもよい。以上の処理を経て、ステップS21~ステップS22の処理を終了する。
【0060】
(第3実施形態)
第3実施形態の人力駆動車両用制御システム10について説明する。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0061】
制御部14は、例えば以下の第4例に従って第1閾値を設定する。第4例では、制御部14は、バッテリBTの残量が第2所定残量以上であり、複数の人力駆動車両用コンポーネント20のうちの第2コンポーネント20BだけにバッテリBTの電力が供給された状態において取得した第2コンポーネントの情報(以下、「第2取得情報」)に基づいて第1閾値を設定する。第2所定残量は、バッテリBTの残量が満充電の70%以上の範囲に含まれることが好ましい。第2所定残量は、予め記憶部16に記憶される。制御部14は、第1閾値が記憶部16に記憶されていない状態において、バッテリBTの電力が初めて第2コンポーネント20Bに供給された状態において取得した第2取得情報に基づいて第1閾値を設定してもよい。
【0062】
第2取得情報は、例えば第4情報、第5情報、および、第6情報のうちの少なくとも1つを含む。第4情報は、バッテリBTの残量が満充電から第2所定残量に到達するまでの期間(以下、「第2駆動期間」)における第2コンポーネント20Bの動作時間に関する情報を含む。第5情報は、第2駆動期間におけるバッテリBTの残量の減少速度に関する情報を含む。第6情報は、バッテリBTから第2コンポーネント20Bだけに供給される電力に基づいて取得できる第2コンポーネント20Bの負荷情報を含む。一例では、制御部14は、第2コンポーネント20BだけにバッテリBTの電力が供給された状態において第2取得情報を算出して取得する。なお、制御部14は、例えば第1および第2コンポーネント20A、20BにバッテリBTの電力が供給された状態において取得した第2取得情報に基づいて第1閾値を算出する場合、第1コンポーネント20Aに関する情報を予め記憶部16に記憶しておくことが好ましい。
【0063】
図6を参照して、制御部14が実行する制御の一例について説明する。
制御部14は、例えば人力駆動車両用コンポーネント20と電力線によって電気的に接続された状態において以下の制御を実行する。制御部14は、ステップS31において、バッテリBTの残量が第2所定残量以上か否かを判定する。制御部14は、ステップS31において、バッテリBTの残量が第2所定残量未満であると判定した場合、ステップS31の処理を繰り返す。一方、制御部14は、ステップS31において、バッテリBTの残量が第2所定残量以上であると判定した場合、ステップS32の処理に移行する。
【0064】
制御部14は、ステップS32において、第2取得情報を取得する。具体的には、制御部14は、第2コンポーネント20BだけにバッテリBTの電力が供給された状態において第2取得情報を取得する。制御部14は、ステップS33において、第2取得情報に基づいて第1閾値を設定する。制御部14は、記憶部16に記憶されている第1閾値が存在し、その第1閾値と第2取得情報に基づく第1閾値とが実質的に同じである場合、ステップS33において第1閾値を変更しなくてもよい。以上の処理を経て、ステップS31~ステップS33の処理を終了する。
【0065】
(変形例)
上記各実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う人力駆動車両用制御装置および人力駆動車両用制御システムは、例えば以下に示される上記各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、各実施形態の形態と共通する部分については、各実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
・第1閾値の設定方法は、任意に変更可能である。一例では、制御部14は、上記各実施形態と対応する第1例、第2例、第3例、および、第4例において、第1例および第2例の組合せ以外に少なくとも2つ以上の組合せに従って第1閾値を設定する。
【0067】
・第1コンポーネント20Aと第1閾値および第2閾値との関係は、任意に変更可能である。一例では、制御部14は、バッテリBTの残量が第1閾値になると、第1コンポーネント20Aの消費電力を低減させ、バッテリBTの残量が第2閾値になると、第1コンポーネント20Aの消費電力を0にする。このように、制御部14は、第1コンポーネント20Aの消費電力を段階的に低減させてもよい。
【0068】
・複数の人力駆動車両用コンポーネント20の数は、任意に変更可能である。一例では、複数の人力駆動車両用コンポーネント20は、第1コンポーネント20Aおよび第2コンポーネント20Bとは異なる少なくとも1つのコンポーネント(以下、「第3コンポーネント」)をさらに含む。制御部14は、例えばバッテリBTの残量が第1閾値になると、第1コンポーネント20Aと同様に第3コンポーネントの消費電力を低減させる。
【0069】
・人力駆動車両Aの種類は、任意に変更可能である。第1変形例では、人力駆動車両Aは、マウンテンバイク、クロスバイク、トレッキングバイク、シティサイクル、カーゴバイク、または、リカンベントである。第2変形例では、人力駆動車両Aは、キックスケータである。
【符号の説明】
【0070】
10…人力駆動車両用制御システム、12…人力駆動車両用制御装置、14…制御部、20…人力駆動車両用コンポーネント、20A…第1コンポーネント、20B…第2コンポーネント、22…モータユニット、24…変速機、26…アジャスタブルシートポスト、28…サスペンション、30…ランプ、30B…通信部、32…表示装置、34…音響装置、36…グリップヒータ、38…シートヒータ、40…無線通信装置、42…撮像装置、44…ブレーキ装置、46…外部装置、46A…スマートデバイス、46B…パーソナルコンピュータ、A…人力駆動車両、BT…バッテリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6