(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】住宅用可動間仕切り構造
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20230228BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20230228BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
E04H1/04 A
E04H1/02
E04B2/74 561C
(21)【出願番号】P 2018012670
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 和彦
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-037497(JP,A)
【文献】特開2000-145171(JP,A)
【文献】特開2009-068236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00 - 1/14
E04B 2/72 - 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外領域を除く限られた居住空間領域において、全ての水廻り設備を1箇所に集約させた集約領域と、
前記集約領域以外の前記居住空間領域に配設され、可動間仕切りを配置させるための間仕切りレール機構と、
各階の住戸の床及び天井を規定する床下構造と、を有し、
前記床下構造は、前記集約領域に亘って構成されるダウンスラブと、前記集約領域以外の前記居住空間領域に亘って構成される床スラブと、を有し、
前記ダウンスラブは、前記集約領域の下部側に設けられ、前記床スラブよりも垂直方向で低い位置に構成され、
前記ダウンスラブと前記床スラブとの接合部は、その厚さが他の部分よりも大きく設定され、かつ、鉄筋が配設され、
前記床下構造の四隅には、垂直荷重を支持可能に構成された柱部が配置され、
前記床下構造の荷重を前記柱部に伝達可能に構成された梁部が、前記柱部相互間に亘って水平方向に架け渡され、
前記ダウンスラブは、矩形状を成し、その四辺のうち、1辺が前記梁部に接合され、他の3辺が前記床スラブに接合されている住宅用可動間仕切り構造。
【請求項2】
前記間仕切りレール機構は、下がり天井となっていない前記居住空間領域に沿って配設されている請求項1に記載の住宅用可動間仕切り構造。
【請求項3】
前記全ての水廻り設備は、前記下がり天井に対向させて集約されている請求項
2に記載の住宅用可動間仕切り構造。
【請求項4】
前記間仕切りレール機構は、複数の間仕切りレールを有し、
前記各間仕切りレールは、相互に略同一の長さを有している請求項3に記載の住宅用可動間仕切り構造。
【請求項5】
前記間仕切りレール機構は、少なくとも4つの間仕切りレールを有し、
前記少なくとも4つの間仕切りレールのうち4つの前記間仕切りレールによって、予め設定された形状に閉じられた閉ループが構成されている請求項4に記載の住宅用可動間仕切り構造。
【請求項6】
前記可動間仕切りを収納するための収納部を有し、
前記収納部は、前記間仕切りレールに沿った位置に設定されている請求項
4に記載の住宅用可動間仕切り構造。
【請求項7】
前記収納部は、前記水廻り設備を区画する仕切り壁と前記間仕切りレールとの交差点に隣接させて配置されている請求項6に記載の住宅用可動間仕切り構造。
【請求項8】
前記水廻り設備は、玄関設備に隣接させて配置されている請求項1に記載の住宅用可動間仕切り構造。
【請求項9】
前記間仕切りレールは、袖壁の相互間に配設され、前記相互の袖壁によって、前記間仕切りレールの長さが調整される請求項
4に記載の住宅用可動間仕切り構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、集合住宅の各住戸や、一戸建てなどの住宅に用いられる可動間仕切り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、洗面所、浴室、台所などの水廻り設備を住戸の中央に集約し、それ以外の居住空間領域を可動間仕切りで区画する技術が知られている。かかる技術では、当該水廻り設備と2か所の出入口以外をフリースペースとし、可動間仕切りによって、所望の間取りを得ることの容易性が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の技術では、全ての水廻り設備が1箇所に集約されておらず、トイレ設備は、一方の出入口に隣接させて配置されている。この場合、可動間仕切りの配置は、トイレ設備を回避させてレイアウトせざるを得ない。このため、可動間仕切りを用いた間取りの変更の自由度には、一定の限界があった。
【0005】
更に、特許文献1の技術分野は、集合住宅を想定した間仕切り構造であるところ、例えば、ダウンスラブ(下がり天井)や梁部、カーテンボックスなどの集合住宅特有の居室内構造について、一切考慮されていない。この場合、当該居室内構造を避けて可動間仕切りを配置するか、或いは、下がり天井を設置して対応する仕様が考えられる。
【0006】
しかしながら、下がり天井の仕様では、当該下がり天井の設置に要するコストが加わるため、間仕切り構造全体の製造(設置)コストが上昇してしまうだけでなく、下がり天井を設置したことで、上記したフリースペースに係る居住空間領域の天井が低くなってしまうため、居住性が悪くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、全ての水廻り設備を1箇所に集約することで、居住空間領域における間取りの変更の自由度を高くしつつ、居住性に優れた低コストの住宅用可動間仕切り構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の住宅用可動間仕切り構造は、屋外領域を除く限られた居住空間領域において、全ての水廻り設備を1箇所に集約させた集約領域と、集約領域以外の居住空間領域に配設され、可動間仕切りを配置させるための間仕切りレール機構と、各階の住戸の床及び天井を規定する床下構造と、を有し、床下構造は、集約領域に亘って構成されるダウンスラブと、集約領域以外の居住空間領域に亘って構成される床スラブと、を有し、ダウンスラブは、集約領域の下部側に設けられ、床スラブよりも垂直方向で低い位置に構成され、ダウンスラブと床スラブとの接合部は、その厚さが他の部分よりも大きく設定され、かつ、鉄筋が配設され、床下構造の四隅には、垂直荷重を支持可能に構成された柱部が配置され、床下構造の荷重を柱部に伝達可能に構成された梁部が、柱部相互間に亘って水平方向に架け渡され、ダウンスラブは、矩形状を成し、その四辺のうち、1辺が梁部に接合され、他の3辺が床スラブに接合されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、全ての水廻り設備を1箇所に集約することで、居住空間領域における間取りの変更の自由度を高くしつつ、居住性に優れた低コストの住宅用可動間仕切り構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る住宅用可動間仕切り構造を示す平面図。
【
図2】集合住宅の床下構造(床スラブ、ダウンスラブ)の縦断面図。
【
図3】可動間仕切りの収納部に設置された収納レールを天井側から見た上面図。
【
図4】収納部から可動間仕切りを取り出す第1ステップを天井側から見た上面図。
【
図5】収納部から可動間仕切りを取り出す第2ステップを天井側から見た上面図。
【
図6】収納部から可動間仕切りを取り出す第3ステップを天井側から見た上面図。
【
図7】可動間仕切りを間仕切りレールに沿って展開させた状態を示す平面図。
【
図8】可動間仕切りに適用された位置決め機構(フランス落し)を示す斜視図。
【
図9】可動間仕切りによって居住空間領域が区画された状態を天井側から見た上面図。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る住宅用可動間仕切り構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「一実施形態の構成」
以下、本発明の一実施形態に係る住宅用可動間仕切り構造について、添付図面を参照して説明する。本実施形態では、集合住宅の各住戸に適用された可動間仕切り構造を想定する。
図1には、本実施形態の可動間仕切り構造が適用された1つの住戸の内部が示され、
図2には、集合住宅の各住戸1を規定する躯体構造2が示されている。
【0012】
躯体構造2は、例えば、床下構造3と、柱部4と、梁部5と、を有している。
【0013】
床下構造3は、予め設定された間隔で垂直方向に沿って互いに平行に階層化され、各階の住戸1の床6及び天井7を規定している(
図7参照)。床下構造3には、後述する床スラブ3a及びダウンスラブ3bが構築されている。
【0014】
柱部4は、例えば、床下構造3の四隅に配置され、垂直荷重を支持可能に構成されている。梁部5は、柱部4相互間に亘って水平方向に架け渡され、床下構造3の荷重を柱部4に伝達可能に構成されている。柱部4と梁部5との相互間には、2つの境界壁(第1境界壁8、第2境界壁9)と、2つの外壁(廊下側外壁10、バルコニ側外壁11)が配設されている。
【0015】
図1では一例として、第1境界壁8と第2境界壁9とは、互いに平行に対向し、廊下側外壁10とバルコニ側外壁11とは、互いに平行に対向している。更に、2つの境界壁8,9と2つの外壁10,11とは、互いに直交している。
【0016】
各階の住戸1には、境界壁8,9と外壁10,11と床下構造3(床6、天井7)とで囲まれた居住空間領域12が規定されている。
図1には一例として、直方体形状の居住空間領域12を有する住戸1内が示されている。住戸1の長手方向両側には、バルコニ13と外廊下14が配置されている。なお、バルコニ13と住戸1内は、バルコニ側外壁11によって区画され、外廊下14と住戸1内は、廊下側外壁10によって区画されている。
【0017】
住戸1内(即ち、居住空間領域12)には、1箇所に集約された水廻り設備15と、そこ以外のフリー空間領域16と、可動間仕切り構造と、がレイアウトされている。この場合、居住空間領域12とは、例えば、バルコニ13及び外廊下14などの屋外領域を除く限られた空間領域を指す。
【0018】
可動間仕切り構造は、後述する水廻り設備15(集約領域)と、居住空間領域12(フリー空間領域16)を区画する可動間仕切り17と、可動間仕切り17を収納するための収納部18と、居住空間領域12(フリー空間領域16)に可動間仕切り17を配置させるための間仕切りレール機構と、を有している。
【0019】
「水廻り設備15」
水廻り設備15としては、例えば、トイレ19、洗面室20、浴室21、キッチン22、水廻り機能室23などを想定することができる。ここで、水廻り設備15を集約させる領域としては、例えば、住戸1内における四隅のいずれか一方、或いは、四隅相互の中間などを想定することができる。
図1では一例として、水廻り設備15は、玄関設備24に隣接させて配置されている。
【0020】
玄関設備24としては、例えば、玄関ドア24a、玄関ホール24b、シューズクローゼット24c、玄関用固定壁24dなどを想定することができる。玄関ドア24aは、外廊下14と玄関ホール24bとを区画する開閉式出入口であり、シューズクローゼット24cは、玄関ホール24bに設置されている。玄関用固定壁24dは、フリー空間領域16と玄関ホール24bとを区画している。
【0021】
水廻り設備15は、その一部が玄関設備24に隣接されている。
図1では一例として、トイレ19がシューズクローゼット24cに隣接させて配置されている。トイレ19は、トイレ区画壁19aによって仕切られ、その内部に便器19cが配設されている。トイレ区画壁19aは、床6から天井7に亘って延在し、第1境界壁8に隣接させて配置されている。トイレ区画壁19aには、玄関ホール24b寄りの部位に開閉式出入扉19bが設置されている。かかるトイレ19に隣接させて洗面室20が配置されている。
【0022】
洗面室20は、洗面室区画壁20aによって仕切られ、その内部に洗面台20bが設置されている。洗面室区画壁20aは、床6から天井7に亘って延在し、第1境界壁8に隣接させて配置されている。洗面室区画壁20aには、フリー空間領域16に対向した部位に開閉式出入扉20cが設置されている。かかる洗面室20に隣接させて浴室21及びキッチン22が配置されている。
【0023】
浴室21は、浴室区画壁21aによって仕切られ、その内部に浴槽21bや洗い場21cなどが設置されている。浴室区画壁21aは、床6から天井7に亘って延在し、第1境界壁8に隣接させて配置されている。浴室区画壁21aには、洗面室20に対向した部位に開閉式出入扉21dが設置されている。
【0024】
キッチン22は、キッチン区画壁22aによって仕切られ、その内部に調理台22bが設置されている。調理台22bは、フリー空間領域16側から自由にアクセス可能に構成されている。キッチン区画壁22aは、床6から天井7に亘って延在し、調理台22bの両側に沿って構成された2つの仕切り壁(第1仕切り壁22c、第2仕切り壁22d)を備えている。これらの仕切り壁22c,22dは、フリー空間領域16に向けて互いに平行に延出されている。
【0025】
なお、2つの仕切り壁22c,22dを、袖壁と言う仕様もある。更に、2つの仕切り壁22c,22dを、水廻り設備15を区画する仕切り壁22dと言う仕様もある。
【0026】
双方の仕切り壁(袖壁)22c,22dの延出端(第1延出端22c-1、第2延出端22d-1)は、第2境界壁9に対向させて位置付けられている。第2境界壁9には、2つの袖壁(第1袖壁25、第2袖壁26)が設けられ、当該袖壁25,26は、第2境界壁9から垂直に突出している。これらの袖壁25,26は、第2境界壁9の天井7寄りの部分から第1境界壁8に向けて互いに平行に突出し、その突出端(第1突出端25t、第2突出端26t)は、上記した2つの仕切り壁(袖壁)22c,22dの延出端22c-1,22d-1に対向させて位置付けられている。
【0027】
なお、袖壁25,26を設けた理由としては、第2境界壁9の内面に沿って梁が設置される仕様があり、かかる仕様においても、後述する可動間仕切り構造(即ち、間仕切りレール機構)を配設できるようにするためである。かくして、後述する間仕切りパネル17a,17b,17c,17dを床6から天井7に亘って配置させることが可能となる。
【0028】
更に、上記したバルコニ側外壁11には、第3袖壁27が設けられ、当該袖壁27は、バルコニ側外壁11から垂直に突出している。第3袖壁27は、バルコニ側外壁11の天井7寄りの部分から第2仕切り壁(袖壁)22dの第2延出端22d-1、及び、第1仕切り壁(袖壁)22cの第1延出端22c-1の双方向けて突出している。これにより、第3袖壁27の第3突出端27tと、上記した第2延出端22d-1と第1延出端22c-1とは、互いに同一直線上に位置付けられている。
【0029】
なお、袖壁27を設けた理由としては、バルコニ側外壁11の内面に沿ってカーテンボックスが設置される仕様があり、かかる仕様においても、後述する可動間仕切り構造(即ち、間仕切りレール機構)を配設できるようにするためである。かくして、後述する間仕切りパネル17a,17b,17c,17dを床6から天井7に亘って配置させることが可能となる。
【0030】
この場合、第1延出端22c-1と第1突出端25tとの間の距離(間隔)、第2延出端22d-1と第2突出端26tとの間の距離(間隔)、双方の仕切り壁22c,22dの延出端22c-1,22d-1を相互に結んだ距離(間隔)、そして、第3突出端27tと第2延出端22d-1との間の距離(間隔)は、互いに同一に設定されている。
【0031】
また、水廻り設備15には、例えば、電気配線や給排水管などが収容される水廻り機能室23が含まれ、当該水廻り機能室23は、浴室21とキッチン22に隣接させて配置されている。この場合、水廻り機能室23は、浴室区画壁21aとキッチン区画壁22aと第2仕切り壁22dと第1境界壁8とによって仕切られている。かかる水廻り機能室23の開閉扉23aは、バルコニ13側のフリー空間領域16に対向した部位に設置されている。
【0032】
「床下構造3(床スラブ3a、ダウンスラブ3b)」
床下構造3は、水廻り設備15の集約領域に亘って構成されるダウンスラブ3bと、水廻り設備15(即ち、集約領域)以外のフリー空間領域16に亘って構成される床スラブ3aと、を有している。ダウンスラブ3bは、集合住宅の各階の住戸1の階層化方向(即ち、垂直方向)において、水廻り設備15の集約領域の下層(下部)側に設けられ、床スラブ3aよりも垂直方向で低い位置に構成されている。
図1~
図2には一例として、矩形状(長方形)のダウンスラブ3bが示されている。
【0033】
ダウンスラブ3bは、四辺のうち、1辺が梁部5に接合され、他の3辺が床スラブ3aに接合されている。ダウンスラブ3bと床スラブ3aとの接合部3c(即ち、スラブハンチ)は、その厚さ(横断面積)が他の部分よりも大きく設定され、かつ、鉄筋が配設されている。これにより、一定の強度が確保されたスラブハンチ3cが、水廻り設備15(集約領域)の外周に沿って構成される。
【0034】
ここで、水廻り設備15(集約領域)は、スラブハンチ3cを含めたダウンスラブ3bの範囲として規定してもよいし、或いは、スラブハンチ3cを含めないダウンスラブ3bの範囲として規定してもよい。一方、床スラブ3aは、水廻り設備15(集約領域)を回避した範囲に規定され、この場合、スラブハンチ3cを含めてもよいし、或いは、スラブハンチ3cを含めなくてもよい。
【0035】
いずれの場合でも、各階の住戸1を同一レイアウトで構成する集合住宅において、
図2に示すように、スラブハンチ3cを含めたダウンスラブ3bの範囲が、下階の天井7の一部に下がり天井7aとして現れる。即ち、水廻り設備15(集約領域)に対向した天井部分が、下がり天井7aとなって突出する。換言すると、水廻り設備15(集約領域)は、下がり天井7aの直下に位置付けられている。この場合、フリー空間領域16は、下がり天井7a及び水廻り設備15を回避した居住空間領域12(住戸1内)に規定される。
【0036】
「可動間仕切り構造」
可動間仕切り構造は、上記した水廻り設備15(集約領域)と、フリー空間領域16を区画する可動間仕切り17と、可動間仕切り17を収納するための収納部18と、フリー空間領域16に可動間仕切り17を配置させるための間仕切りレール機構と、上記した袖壁25,26,27,22c,22dと、を有している。
【0037】
間仕切りレール機構は、下がり天井7aとなっていない居住空間領域12、即ち、床スラブ3aによって天井7が構成されているフリー空間領域16に沿って配設されている。間仕切りレール機構は、第1間仕切りレール28と、第2間仕切りレール29と、第3間仕切りレール30と、第4間仕切りレール31と、第5間仕切りレール32と、を有している。
【0038】
間仕切りレール28~32は、袖壁25,26,27,22c,22dの相互間に配設されている。袖壁25,26,27,22c,22dの相互間は、相互に同一の距離(間隔)に設定されている。間仕切りレール28~32は、相互に略同一の長さ(レール長)に設定されている。間仕切りレール28~32は、真っ直ぐに延出されている。
【0039】
ここで、「間仕切りレール28~32が相互に略同一の長さを有している」とは、間仕切りレール28~32が完全に同一の長さを有している場合だけでなく、製造誤差等の範囲内で相互に長さが僅かに異なる場合も含むことを意味する。相互に長さが僅かに異なる場合とは、製造誤差の場合のほか、例えば、可動間仕切りが可動できるレール長さの範囲としてカタログ等に掲載されている値の範囲内において長さが異なる場合等が挙げられる。
【0040】
また、第1間仕切りレール28は、第1延出端22c-1と第1突出端25tとの間に配置され、第2間仕切りレール29は、第2延出端22d-1と第2突出端26tとの間に配置されている。更に、第3間仕切りレール30は、第3突出端27tと第2突出端22d-1との間に配置され、第4間仕切りレール31は、第1延出端22c-1と第2延出端22d-1との間に配置されている。
【0041】
そして、第5間仕切りレール32は、第1間仕切りレール28と第2間仕切りレール29との間において、第4間仕切りレール31と平行に配置されている。この場合、これら4つの間仕切りレール28~32によって、予め設定された形状(例えば、矩形状)に閉じられた閉ループ33が構成されている。なお、第4間仕切りレール31と第5間仕切りレール32との間隔は、例えば、後述する間仕切りパネル17a,17b,17c,17dの1枚分の幅寸法に一致させるか、或いは、僅かに大きく設定する。
【0042】
可動間仕切り17は、複数枚(例えば、4枚)の間仕切りパネル17a,17b,17c,17dを1組として構成されている。間仕切りパネル17a~17dは、フリー空間領域16の床6から天井7に亘る高さを有し、例えば
図7に示すように、4枚の間仕切りパネル17a~17dを横並びさせた状態において、その全幅は、第1延出端22c-1と第1突出端25tとの間の距離(間隔)、第2延出端22d-1と第2突出端26tとの間の距離(間隔)、双方の仕切り壁22c,22dの延出端22c-1,22d-1を相互に結んだ距離(間隔)、第3突出端27tと第2延出端22d-1との間の距離(間隔)に一致する。
【0043】
更に、間仕切りパネル17a~17dは、出入扉として構成することができる。
図7では一例として、4枚の間仕切りパネル17a~17dのうち、当該図面に向かって左端のパネル17aに取っ手34が設けられ、これにより、当該出入扉(パネル17a)から出入り可能となっている。なお、取っ手34は、全てのパネル17a~17dに設けることができる。
【0044】
収納部18は、例えば
図3に示すように、4枚の間仕切りパネル17a~17dを平行に密接させて収納可能に構成されている。
図1及び
図3には一例として、収納部18は、上記した第2仕切り壁22d(即ち、水廻り設備15を区画する仕切り壁22d)と第3間仕切りレール30との交差点に隣接させて配置されている。
【0045】
収納部18には、収納レール35が配設されている。収納レール35は、その一端が第3間仕切りレール30に接続され、その他端が第2仕切り壁22dに接続されている。更に、収納レール35は、第3間仕切りレール30に沿って延出した第1収納レール部35aと、第2仕切り壁22dに沿って平行に延出した第2収納レール部35bとを相互に連続させて構成されている。
【0046】
かかる構成において、間仕切りパネル17a~17dを順次、第1収納レール部35aと第3間仕切りレール30に沿って平行移動させる。これにより、4枚の間仕切りパネル17a~17dが、第2仕切り壁22dに寄り添うように収納される。
【0047】
なお、収納部18を設置する位置は、
図1及び
図3のレイアウトに限定されることはなく、これ以外の位置でもよい。要するに、収納部18の位置は、いずれかの間仕切りレール28~32に沿った位置であれば、任意に設定することができる。
【0048】
「一実施形態の作用」
ここでは、
図1に示すようなフルオープン間取りから、
図9に示すようなLLDK間取りに変更するプロセスについて説明する。
【0049】
まず、第1ステップとして、
図4に示すように、収納レール35(第1収納レール部35a)に沿って、収納部18から間仕切りパネル17a~17dを1枚ずつ平行に引き出す。
図4には一例として、間仕切りパネル17aが、第1収納レール部35aと第3間仕切りレール30に沿って平行に引き出された状態が示されている。
【0050】
続いて、第2ステップとして、
図5に示すように、間仕切りパネル17aの幅方向一端を、第3間仕切りレール30に沿って移動させると共に、当該間仕切りパネル17aの幅方向他端を、収納レール35(第2収納レール部35b)に沿って移動させる。
【0051】
そして、第3ステップとして、
図6に示すように、当該間仕切りパネル17aの幅方向他端を、第3間仕切りレール30に移動させる。かくして、間仕切りパネル17aが、第3間仕切りレール30に沿って移動可能となる。
【0052】
この後、間仕切りパネル17aを、例えば、第4間仕切りレール31を経由させた後、第1間仕切りレール28に沿って移動させる。
【0053】
ここで、
図7に示すように、4枚の間仕切りパネル17a~17dが第1間仕切りレール28に沿って展開された状態において、各間仕切りパネル17a~17dの下端側面部の位置決め機構(フランス落し)36によって間仕切りパネル17a~17dを位置決めする。例えば、
図8に示すように、昇降つまみ36aを下方にスライドさせて、位置決めシャフト36bの先端を、予め床6に設定された受け金穴36cに差し込む。
【0054】
かくして、
図9に示すようなLLDK間取りが実現される。かかるLLDK間取りにおいて、例えば、居住者は出入扉(間仕切りパネル17a)を通って、リビング相互を移動することができる。
【0055】
「他の実施形態」
上記した一実施形態では、1セットの可動間仕切り17を用いた間取り仕様を想定したが、本発明は、これに限定されることは無く、複数セットの可動間仕切り17を用いた間取り仕様にも適用可能である。例えば
図10には、3セットの可動間仕切り17を用いた実施形態が示されている。
【0056】
この場合、収納部18は、3箇所に配置させる。例えば
図1及び
図10に示すように、1つの収納部18は、第2仕切り壁22dと第3間仕切りレール30との交差点に隣接させて配置させ、他の1つの収納部18は、第2境界壁9と第1間仕切りレール28との交差点に隣接させて配置させ、そして、残りの1つの収納部18は、第2境界壁9と第2間仕切りレール29との交差点に隣接させて配置させる。
【0057】
図1に示すように、フリー空間領域16には、4つの間仕切りレール28~32によって、矩形状に閉じられた閉ループ33が構成されている。ここで、
図10に示すように、3つの収納部18の各可動間仕切り17を、閉ループ33に沿って配置させる。即ち、第1間仕切りレール28、第2間仕切りレール29、及び、第5間仕切りレール32に、可動間仕切り17を1つずつ配置させる。
【0058】
かかる配置によれば、キッチン22の手前側に沿って、1つの閉じられた通路(廊下)37が構成される。同時に、1つの閉じられたキッチンスペースが構成される。これにより、通路(廊下)37付きのLLLK間取りが実現される。この結果、通路(廊下)37を通ることで、特定の仕切り部屋を通過すること無く、別の仕切り部屋に移動することができる。
【0059】
「上記した各実施形態の効果」
本実施形態によれば、トイレ、洗面室、浴室、キッチン、水廻り機能室などの全ての水廻り設備15を1箇所(下がり天井7aに対向した位置、下がり天井7aの直下)に集約し、その集約領域以外のフリー空間領域16に、可動間仕切り17を配置させるための間仕切りレール機構を配置する。この場合、フリー空間領域16の天井7は、全体に亘って同一平坦面上に位置付けられ、間仕切りレール機構の配置を制限するような下がり天井7aは存在しない。これにより、間仕切りレール28~32の配置の自由度を高めることができる。この結果、当該間仕切りレール28~32に沿って、間仕切りパネル17a~17dを自由にレイアウトさせることができる。かくして、限られた空間領域を、ユーザのニーズに応じた多様な間取りに変更することができる。
【0060】
本実施形態によれば、フリー空間領域16内には、下がり天井7aは存在せず、床6から高い位置に天井7を確保することができる。これにより、各仕切り部屋を、天井7の高い広々とした居住空間(換言すると、狭苦しくない居住空間)とすることができる。この結果、各仕切り部屋における居住性を高めることができる。
【0061】
本実施形態によれば、間仕切りレール機構(即ち、間仕切りレール28~32)の両側に袖壁25,26,27,22c,22dを設ける。これにより、例えば、ダウンスラブ3b(下がり天井7a)や梁部5、カーテンボックスなどの室内構造が存在する空間領域であっても、当該間仕切りレール機構を、予め設定した所望の位置に設定することができる。この結果、床6から天井7直近に亘って間仕切りパネル17a~17dをレイアウトすることができる。
【0062】
本実施形態によれば、間仕切りレール機構の各間仕切りレール28~32の長さ(レール長)を相互に同一に設定する。これにより、可動間仕切り17を複数種類用意すること無く、1種類の可動間仕切り17によって、多様な間取りに変更することができる。この結果、所望の間取りを得ることの容易性を高めることができる。
【0063】
本実施形態によれば、4つの間仕切りレール28~32によって、矩形状に閉じられた閉ループ33を構成する。これにより、当該閉ループ33に沿って通路(廊下)37を構成することができる。この結果、通路(廊下)37を通ることで、特定の仕切り部屋を通過すること無く、別の仕切り部屋に移動することができる。
【0064】
本実施形態によれば、可動間仕切り17(間仕切りパネル17a~17d)を収納する収納部18を、間仕切りレール機構(即ち、間仕切りレール28~32)に隣接させて配置させる。これにより、間仕切りパネル17a~17dの収納や引出しが容易になる。この結果、従来技術に比べて、短時間で簡単に間取りの変更を行うことがきる。
【符号の説明】
【0065】
1…住戸、3c…スラブハンチ、8…第1境界壁、9…第2境界壁、10…廊下側外壁、
11…バルコニ側外壁、12…居住空間領域、13…バルコニ、14…外廊下、
15…水廻り設備、16…フリー空間領域、17…可動間仕切り、18…収納部、
19…トイレ、20…洗面室、21…浴室、22…キッチン、
22c,22d…仕切り壁(袖壁)、23…水廻り機能室、24…玄関設備、
25…第1袖壁、26…第2袖壁、27…第3袖壁。