(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】変色が抑制された固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20230228BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230228BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230228BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230228BHJP
A61K 31/415 20060101ALI20230228BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K47/20
A61K47/12
A61K45/00
A61K31/415
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2018090244
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307020615
【氏名又は名称】キョーリンリメディオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重倉 好博
(72)【発明者】
【氏名】森下 佳典
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/089573(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/154061(WO,A1)
【文献】特開平08-231402(JP,A)
【文献】特表平01-500589(JP,A)
【文献】特表2007-516188(JP,A)
【文献】特開2012-140433(JP,A)
【文献】J. Pharm. Sci. Technol.,2014年,Vol.74, No.2,pp.160-169
【文献】Pharmacists Association J Pharm Sci,2004年,Vol.93, No.12,pp.3047-3056
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウリル硫酸ナトリウム、
ステアリン酸マグネシウム、セルロースエーテル及び乳糖を含有する固形製剤において、セルロースエーテルが
、平均分子量13万以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び平均分子量13万以上のヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
ラウリル硫酸ナトリウムの含有量に対するセルロースエーテルの含有量の比が0.8~1.2であることを特徴とする請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
更に有効成分を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
有効成分がセレコキシブであることを特徴とする請求項3に記載の固形製剤。
【請求項5】
ラウリル硫酸ナトリウム、
ステアリン酸マグネシウム、セルロースエーテル及び乳糖を含有する固形製剤において、セルロースエーテルが
、平均分子量13万以上の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び平均分子量13万以上のヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする固形製剤の製造方法であり、ラウリル硫酸ナトリウムを溶解液として噴霧、添加する工程を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時的な変色が抑制された、ラウリル硫酸ナトリウムとセルロースエーテルを含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
陰イオン性界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムは、医薬品の添加剤として安定化剤、界面活性剤、滑沢剤、可溶化剤、基剤、結合剤、光沢化剤、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、発泡剤、分散剤等、様々な用途で用いられている(非特許文献1)。特に可溶化剤として用いると、水難溶性薬物の消化管吸収の改善が期待できることから、水難溶性薬物を経口製剤として開発する上で極めて有用な添加剤である。一方、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する固形製剤は、経時的に変色や斑点が出現する場合があり、特に加温条件に保存したときの変色が大きく、その外観変化に伴う商品価値の低下が問題となる。しかしながら、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する固形製剤の外観変化を改善する技術は少ない(特許文献1及び非特許文献2)。
【0003】
非特許文献2では、ラウリル硫酸ナトリウム含有固形製剤の変色の原因を、ラウリル硫酸ナトリウム中の残留硫酸(ラウリル硫酸ナトリウムの製造過程における中和処理が不十分であることに起因)と添加剤(乳糖等の炭水化物)との脱水反応と考察し、その変色抑制にはラウリル硫酸ナトリウムに残留する硫酸や不純物等の規格を公定書より厳しく管理することを推奨している。しかしながら、このような高純度のラウリル硫酸ナトリウムを医薬品原料として常時使用することは、入手の難しさやコスト面等で問題がある。
【0004】
一方、特許文献1には、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する製剤に、中性塩あるいは塩基性物質を配合することで、製剤の変色や品質劣化を抑制する方法が開示されている。しかしながら、中性塩や塩基性物質の添加は、製剤中の有効成分との相互作用による分解や溶解性の変化等、医薬品としての品質面への影響を考慮する必要がある。
【0005】
そのため、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する固形製剤の経時的な変色の抑制について、高純度のラウリル硫酸ナトリウムあるいは中性塩と塩基性物質等の添加剤を使用しなくても、簡単にしかも安価に実現できることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】医薬品添加物事典2016 薬事日報社
【文献】Geoff Carr,Pharmaceutical Technology EUROPE,August 2015 Vol.27No.8,32-36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ラウリル硫酸ナトリウムとセルロースエーテルを含有する固形製剤の経時的な変色を抑制した製剤とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、セルロースエーテルとラウリル硫酸ナトリウムとの配合が固形製剤の変色に大きく影響していること、そして、セルロースエーテルの平均分子量と固形製剤の変色の程度とには相関があり、平均分子量が13万以上のセルロースエーテルを用いた場合に固形製剤の経時的な変色が著しく抑制されることを見出した。更に、固形製剤の製造において、ラウリル硫酸ナトリウムを溶解液として、噴霧、添加する工程を含むことにより、固形製剤の経時的な変色がより良好に抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、以下の発明を含む。
(1)ラウリル硫酸ナトリウム及びセルロースエーテルを含有する固形製剤において、セルロースエーテルの平均分子量が13万以上であることを特徴とする固形製剤。
(2)セルロースエーテルが低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする(1)に記載の固形製剤。
(3)ラウリル硫酸ナトリウムの含有量に対するセルロースエーテルの含有量の比が0.8~1.2であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の固形製剤。
(4)更に有効成分を含有することを特徴とする(1)から(3)のいずれか一つに記載の固形製剤。
(5)有効成分がセレコキシブであることを特徴とする(4)に記載の固形製剤。
(6)ラウリル硫酸ナトリウムを溶解液として噴霧、添加する工程を含むことを特徴とする(1)から(5)のいずれか一つに記載の固形製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、経時的な変色を抑制した、ラウリル硫酸ナトリウムとセルロースエーテルを含有する固形製剤を簡便な方法で安価に提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1及び2で得られた錠剤を105℃で12時間保存後の錠剤表面の変色
【
図2】比較例1から3で得られた錠剤を105℃で12時間保存後の錠剤表面の変色
【
図3】試験例1から3で得られた混合末を105℃で12時間保存後の混合末の色調と状態の変化
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「固形製剤」とは、患者の治療に用いられる医薬品の投与形態が固体状態のものであり、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤及びカプセル剤等が挙げられる。
【0014】
本明細書において「セルロースエーテル」とは、非イオン性セルロースエーテル及びイオン性セルロースエーテルが挙げられる。非イオン性セルロースエーテルとして、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられ、また、イオン性セルロースエーテルとして、例えばカルボキシメチルセルロース及びニトロセルロース等が挙げられる。本発明においては、非イオン性セルロースエーテルが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
【0015】
本明細書においてセルロースエーテルの平均分子量は13万以上が好ましく、13万~100万が更に好ましく、13万~15万が特に好ましい。ヒドロキシプロピルセルロースの平均分子量は14万以上が好ましく、14万~100万が更に好ましい。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均分子量は13万以上が好ましく、13万~15万が更に好ましい。
【0016】
本明細書において「ラウリル硫酸ナトリウムの溶解液」とは、ラウリル硫酸ナトリウムを任意の溶媒に溶解した液であり、溶媒としては水、メタノール、エタノール、2-プロパノール又はこれらの混合溶液などが挙げられ、好ましくは水若しくはエタノール又はこれらの混合溶液が挙げられ、より好ましくは水が挙げられる。
【0017】
本明細書において、ラウリル硫酸ナトリウムの含有量に対するセルロースエーテルの含有量の比(セルロースエーテル/ラウリル硫酸ナトリウム)は0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0018】
本明細書において「固形製剤」は、ラウリル硫酸ナトリウム及びセルロースエーテル以外に、薬理活性を有する成分(有効成分)並びに医薬上許容される種々の添加剤、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、香料及びコーティング剤等を任意に含有することができる。
【0019】
本明細書において「薬理活性を有する成分」及び「有効成分」とは、病気の治療に用いられる薬物であれば特に限定されないが、好ましくは水難溶性薬物で、例えばインドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、フェルビナク、ジフェロナク、アセチルサリチル酸、フルフェナム酸、メフェナム酸、アルクロフェナク、イブプロフェン、スリンダク、セレコキシブ、オキサプロジン、フェンブフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、オキサプロジン、テルミサルタン、タダラフィル、リバーロキサバン、ルフィナミド、イトナコナゾール、イブルチニブ、ゲフィチニブ、アピキサバン、オメプラゾール、ウルソデオキシコール酸、塩酸マプロチリン、塩酸パパベリン、ノルエピネフリン、塩化ベルベリン、塩酸セトラキサート、スルファメトキサゾール、メトロニダゾール、ジアゼパム、シメチジン、ファモチジン、塩酸ブロムヘキシン、塩酸ジフェニドール、カフェイン、ジゴキシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、アジスロマイシン、アビラテロン酢酸エステル等であり、特に、セレコキシブ、タダラフィルが好ましい。
【0020】
本明細書において「賦形剤」とは、乳糖、白糖、果糖、粉末還元麦芽糖水あめ、ブドウ糖、トレハロース、D-マンニトール、キシリトール、エリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、マルチトース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、デキストリン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、沈降炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸などが挙げられ、特に乳糖が好ましい。
【0021】
本明細書において「崩壊剤」とは、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、部分アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられ、特に低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0022】
本明細書において「結合剤」とは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、ポリビニルアルコール部分ケン化物、ポリビニルアルコール完全ケン化物、ポリビニルピロリドン、部分アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられ、特にヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0023】
本明細書において「滑沢剤」とは、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、硬化油、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられ、特にステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0024】
本発明に係るラウリル硫酸ナトリウムとセルロースエーテルを含有する固形製剤の製造方法は特に限定されず、製剤分野において公知の方法により行うことができる。例えば以下の方法により製造することができる。
【0025】
有効成分及び任意の賦形剤(例えば、乳糖)、崩壊剤(例えばセルロースエーテルである低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、結合剤(例えばセルロースエーテルであるヒドロキシプロピルセルロース)を混合した後、得られた混合粉体にラウリル硫酸ナトリウムの水溶液をスプレー噴霧することで造粒し、乾燥する。得られた造粒顆粒の粒度を粉砕機や分級機等を用いて調節すれば、細粒剤や顆粒剤を得ることができる。また、前述した造粒顆粒に崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)を混合した後、圧縮成型すれば錠剤を得ることができる。更に得られた錠剤に任意の添加剤[例えば、コーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、可塑剤(例えば、マクロゴール)、着色剤(例えば、三二酸化鉄、酸化チタン)等]を含むコーティング液を噴霧し、乾燥させた後、任意の光沢化剤(例えば、カルナウバロウ)を添加し、フィルムコーティング錠を得ることができる。
【0026】
本発明に係るラウリル硫酸ナトリウムとセルロースエーテルを含有する固形製剤の造粒顆粒の製造方法は、湿式造粒法が好ましい。湿式造粒法としては、流動層造粒法、撹拌造粒法、押出し造粒法、練合造粒法、噴霧造粒法等が挙げられる。中でも撹拌造粒法又は流動層造粒法が、特に好ましい。
【0027】
以下に実施例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【実施例】
【0028】
実施例1
セレコキシブ2500.0g、乳糖水和物(DFE pharma製)987.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-11、平均分子量13万)315.0g、ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン製、コリフォールSLSファイン)225.0g及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC-L-FP、平均分子量14万)67.5gを高速撹拌造粒機(パウレック製:VG-25型)に投入し、撹拌しながら、ラウリル硫酸ナトリウム225.0gを精製水700.0gに溶解した溶解液を噴霧、添加し造粒後、送風乾燥した。得られた顆粒に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-11、平均分子量13万)135.0g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)45.0gを加え混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製、HT-EX18型)を用いて圧縮成型することで錠剤を得た。
【0029】
実施例2
セレコキシブ170.0g、乳糖水和物(DFE pharma製)67.2g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-11、平均分子量13万)21.4gを流動層造粒機(パウレック製:MP-01型)に投入し、撹拌しながら、ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン製、コリフォールSLSファイン)30.6g及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC-L-FP、平均分子量14万)4.6gを精製水200.0gに溶解した溶解液を噴霧、添加し造粒後、送風乾燥した。得られた顆粒に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-11、平均分子量13万)9.2g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)3.1gを加え混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製、HT-EX18型)を用いて圧縮成型することで錠剤を得た。
【0030】
比較例1
セレコキシブ170.0g、乳糖水和物(DFE pharma製)67.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-31、平均分子量10万)21.4g、ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン製、コリフォールSLSファイン)30.6g及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC-L-FP、平均分子量14万)4.6gを高速撹拌造粒機(パウレック製:VG-01型)に投入し、撹拌しながら、精製水70.0gを添加し造粒後、送風乾燥した。得られた顆粒に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-31、平均分子量10万)9.2g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)3.1gを加え混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製、HT-EX18型)を用いて圧縮成型することで錠剤を得た。
【0031】
比較例2
セレコキシブ2500.0g、乳糖水和物(DFE pharma製)987.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-21、平均分子量12万)315.0g、ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン製、コリフォールSLSファイン)450.0g及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC-L-FP、平均分子量14万)67.5gを高速撹拌造粒機(パウレック製:VG-25型)に投入し、撹拌しながら、精製水800.0gを添加し造粒後送風乾燥した。得られた顆粒に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-21、平均分子量12万)135.0g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)45.0gを加え混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製、HT-EX18型)を用いて圧縮成型することで錠剤を得た。
【0032】
比較例3
セレコキシブ170.0g、乳糖水和物(DFE pharma製)67.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-11、平均分子量13万)21.4g、ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン製、コリフォールSLSファイン)15.3g及びヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、HPC-SSL、平均分子量4万)4.6gを高速撹拌造粒機(パウレック製:VG-01型)に投入し、撹拌しながら、ラウリル硫酸ナトリウム15.3gを精製水60.0gに溶解した液を添加し造粒後、送風乾燥した。得られた顆粒に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-11、平均分子量13万)9.2g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)3.1gを加え混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製、HT-EX18型)を用いて圧縮成型することで錠剤を得た
【0033】
実施例及び比較例で得られた錠剤の1錠あたりの組成を表1に示す。なお、表中の数値の単位はミリグラム(mg)である。
【0034】
【0035】
<実験例1>
実施例1及び2、並びに、比較例1から3で得られた錠剤50錠を各々105℃の恒温層に12時間保存し、錠剤の表面、裏面及び側面を目視で観察し、変色又は斑点を認めた錠剤の数を記録した。
【0036】
【0037】
表2、並びに、
図1及び
図2に示すように低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースの平均分子量が大きくなるほど、加温により変色を認める錠剤の数が減少することが確認された。一方、平均分子量が4万のヒドロキシプロピルセルロースを用いた比較例3の錠剤は50錠全ての錠剤において、激しい変色及び斑点を認めた。
平均分子量が13万の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと平均分子量が14万のヒドロキシプロピルセルロースを用いた実施例1の錠剤は,比較例に対して変色が大きく改善されていた。また、平均分子量が13万の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースと平均分子量が14万のヒドロキシプロピルセルロースを用い、更にラウリル硫酸ナトリウムを水溶液として噴霧、添加した実施例2の錠剤は、ラウリル硫酸ナトリウムを粉末として添加した後に更に水溶液として添加した実施例1の錠剤と比較しても、変色する錠剤数が更に減少することが確認された。
【0038】
<実験例2>
(ラウリル硫酸ナトリウムと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの配合変化試験)
試験例1
ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン製、コリフォールSLSファイン)と低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-11、平均分子量13万)の粉末を質量比1:1の割合で粉末混合し,混合末を調製した。
【0039】
試験例2
ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン製、コリフォールSLSファイン)と低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-21、平均分子量12万)の粉末を質量比1:1の割合で混合し,混合末を調製した。
【0040】
試験例3
ラウリル硫酸ナトリウム(BASFジャパン製、コリフォールSLSファイン)と低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業製、LH-31、平均分子量10万)の粉末を質量比1:1の割合で混合し,混合末を調製した。
【0041】
試験例1から3の混合末を105℃で12時間加熱し、各々の外観変化を観察した。
【0042】
図3に示すように、ラウリル硫酸ナトリウムと平均分子量13万の低置換ヒドロキシプロピルセルロースの混合末は、白色のままで変色は認められず状態の変化もなかった(試験例1)。一方、ラウリル硫酸ナトリウムと平均分子量が12万の低置換ヒドロキシプロピルセルロースの混合末は褐色から黒褐色に変色し、なおかつ強い凝集塊を認めた(試験例2)。更に、ラウリル硫酸ナトリウムと平均分子量が10万の低置換ヒドロキシプロピルセルロースの混合末は、黒褐色のペースト状に変化した(試験例3)。この結果から、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの平均分子量が小さくなるほどラウリル硫酸ナトリウムとの相互作用による変化が激しくなることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、医薬品の添加剤として、用いられるラウリル硫酸ナトリウムとセルロースエーテルを含有する固形製剤において、経時的な外観変化による商品価値の低下を防止するために、高純度の添加剤、中性塩類及び塩基性物質等の特殊な成分を用いる必要が無く、一般的な生産設備で製造可能であるため、簡便な方法で安価に提供することができる。