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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】位置検出センサ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/046 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
G06F3/046 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018105835
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019211887
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大介
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-221176(JP,A)
【文献】特開2015-026235(JP,A)
【文献】実開平05-066740(JP,U)
【文献】特開2010-218542(JP,A)
【文献】特開2011-221938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置指示器と共に使用され、前記位置指示器と電磁結合するためのコイルを備えるセンサ基板本体と、前記コイルを引き出して構成したケーブル部とを有する電磁誘導方式の位置検出センサであって、
前記センサ基板本体は、
本体部絶縁基板を備え、前記本体部絶縁基板の前記位置指示器により位置指示される側の第1の面と、前記本体部絶縁基板の前記第1の面とは反対側の第2の面とに、前記コイルを構成する導体が形成されており、
前記本体部絶縁基板の前記第2の面の全面には、前記本体部絶縁基板の前記第2の面に形成された前記コイルを覆うようにして磁性粉材料層が被着されており、
前記ケーブル部は、
前記本体部絶縁基板に連続し、前記本体部絶縁基板の一部から張り出したケーブル部絶縁基板を備え、
前記本体部絶縁基板の前記第1の面に連続する前記ケーブル部絶縁基板の第1の面と、前記本体部絶縁基板の前記第2の面に連続する前記ケーブル部絶縁基板の第2の面との一方あるいは両方には、前記本体部絶縁基板の前記第1の面と前記本体部絶縁基板の前記第2の面とに形成されたコイルが引き出されており、
前記ケーブル部絶縁基板を前記本体部絶縁基板の第2の面側に折り曲げることにより、前記磁性粉材料層を挟んで、前記本体部絶縁基板の前記第2の面と、前記ケーブル部絶縁基板の前記第2の面とを対向させた状態で固定され、
前記本体部絶縁基板の前記第1の面に連続し、外側に露呈する前記ケーブル部絶縁基板の前記第1の面にベタ電極を配設する
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記本体部絶縁基板の前記第2の面の全面に被着された前記磁性粉材料層の全面を覆うようにして電磁シールド層が被着されている
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記ケーブル部絶縁基板の前記第2の面の全面には、当該全面に対して熱硬化樹脂が用いられることなく、磁性粉材料層が設けられている
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項4】
請求項2に記載の位置検出センサであって、
前記ケーブル部絶縁基板の前記第2の面の全面には、当該全面に対して熱硬化樹脂が用いられることなく、磁性粉材料層が設けられ、当該磁性粉材料層を覆うようにして、当該磁性粉材料層の全面に対して熱硬化樹脂が用いられることなく、電磁シールド層が設けられている
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4のいずれかに記載の位置検出センサであって、
前記磁性粉材料層は、磁性粉の磁化の方向が、前記磁性粉材料層の厚さ方向に直交する方向に揃えられたものである
ことを特徴とする位置検出センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の位置検出センサであって、
前記位置指示器と電磁結合するための前記コイルは、第1の方向に配置される第1の複数個のループコイルと、前記第1の方向と直交する第2の方向に配置される第2の複数個のループコイルからなり、
前記本体部絶縁基板の前記第1の面には、前記第1の複数個のループコイルが配置されると共に、前記本体部絶縁基板の前記第2の面には、前記第2の複数個のループコイルが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ペン型の位置指示器を使用して入力操作を行う位置検出装置に搭載される位置検出センサであって、特に電磁的作用により位置検出を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどの情報処理装置の入力機器として、電子ペンによる操作入力を受け付けるいわゆるペンタブレットがある。このペンタブレットには、電子ペンによる指示位置を検出するための位置検出センサが搭載されている。位置検出センサは、センサ基板本体とケーブル部(引き出し線部)とからなる。センサ基板本体は、複数のX軸方向電極と複数のY軸方向電極とが配設された部分である。ケーブル部は、電子回路(位置検出回路)への接続を容易にするために、センサ基板本体に配設されている複数のX軸方向電極と複数のY軸方向電極を引き出してまとめるようにした部分である。
【0003】
電磁誘導方式の位置検出センサは、上述したX軸方向電極、Y軸方向電極のそれぞれがループコイルの構成とされている。そして、電磁誘導方式の位置検出センサは、当該複数のコイルに順次に電力を供給して磁界を発生させる送信期間と、電力の供給を停止し外部からの磁界を受信する受信期間とを交互に設ける構成を有する。当該位置検出センサに対応する電子ペンは、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備え、位置検出センサからの磁界に応じて、当該コイルに電流が流れることにより信号を発生させて位置検出センサに送信する構成を備える。
【0004】
これにより、電磁誘導方式の位置検出装置は、送信期間において電子ペンに電力を供給して、電子ペンを駆動可能にする。そして、電磁誘導方式の位置検出装置は、受信期間において電子ペンからの発振信号を受信することにより、電子ペンによる指示位置や電子ペンにかけられている筆圧を検出することができる。このような構成を有する電磁誘導方式の位置検出センサの場合、位置検出センサと電子回路とを重ね合わせるようにして近接配置すると問題が生じる場合がある。
【0005】
例えば、送信期間において、位置検出センサのループコイルの構成とされたX軸方向電極やY軸方向電極から電子ペンに対して出力された磁界が電子回路の金属部分の影響により減衰されてしまい、電子ペンで受け取れる磁界が弱くなるという問題が発生する。また、電子回路が発生するノイズが、X軸方向電極やY軸方向電極に影響を与え、電子ペンの座標が正確に検出できないという問題が発生する可能性がある。
【0006】
そこで、後に記す特許文献1には、位置検出センサと電子回路との間に設ける磁路板を工夫した位置検出装置等に関する発明が開示されている。特許文献1に開示された発明は、電磁シールドとしての性能を有し、電子ペンや位置検出センサのX軸方向電極、Y軸方向電極が発生させる磁界を減衰させず、外部からの磁気的ノイズの影響を受けにくい磁路板を用いるものである。当該磁路板は、アモルファス金属層と非アモルファス金属層を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-3796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いわゆるスマートフォンやタブレットPC(Personal Computer)などの携帯端末にも、入力機器として位置検出装置が搭載されている。近年、携帯端末には、軽量であるフレキシブル基板の位置検出センサが用いられている。フレキシブル基板の位置検出センサの場合にも、センサ基板本体とケーブル部とは一体に形成される。フレキシブル基板は、電極をむき出しのままにすると酸化してしまうため、電極を表面シートや機能性シートで覆うことになる。機能性シートは、カバーレイ(ベースフィルム)、磁性粉材料層、電磁シールド層、保護シートが積層されて形成されたものであり、上述した磁路板としての機能をも実現する。通常、機能性シートは、一体に形成されるセンサ基板本体とケーブル部とに熱硬化樹脂により貼り付けられる。
【0009】
そして、LCD(Liquid Crystal Display)を備えた携帯端末にフレキシブル基板の位置検出センサを搭載する場合、LCDの表示画面の全面を指示入力領域とするために、LCDの表示画面の全面に位置検出センサのセンサ基板本体を対応させる。そして、携帯端末のLCDの表示画面以外の部分には、操作ボタンや受話器としてのスピーカやカメラのレンズ部などが配置されるため、位置検出センサのケーブル部は、折り曲げることにより、センサ基板本体の裏面側に位置させ、センサ基板本体の裏面において回路基板と接続させる。
【0010】
しかし、フレキシブル基板の位置検出センサには、上述したように機能性シートが熱硬化樹脂により貼り付けられているので、硬化した熱硬化樹脂やカバーレイ(ベースフィルム)は元の状態に復帰しようとする復元力を作用させる。ケーブル部は折り曲げられて、センサ基板本体の裏側に両面テープなどにより貼り付けられ、さらにプレスされて元に戻らないようにされるものの、熱硬化樹脂やベースフィルムの当該復元力は、経年により折り曲げた部分を膨らませる。すなわち、長年の使用により、位置検出センサの折り曲げたケーブル部が膨らむことで、周囲の回路部等にストレスが加わり、当該部分の周囲での位置検出精度が落ちるといった不具合を生じさせてしまう懸念がある。
【0011】
以上のことに鑑み、この発明は、センサ基板本体とケーブル部とからなるフレキシブル基板の位置検出センサで、ケーブル部を折り曲げても、ケーブル部が折り曲げ前の位置に容易に復帰することなく、折り曲げて使用するケーブル部のノイズ対策も加えて、折り曲げて使用するケーブル部を設ける場合に適した位置検出センサを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、
位置指示器と共に使用され、前記位置指示器と電磁結合するためのコイルを備えるセンサ基板本体と、前記コイルを引き出して構成したケーブル部とを有する電磁誘導方式の位置検出センサであって、
前記センサ基板本体は、
本体部絶縁基板を備え、前記本体部絶縁基板の前記位置指示器により位置指示される側の第1の面と、前記本体部絶縁基板の前記第1の面とは反対側の第2の面とに、前記コイルを構成する導体が形成されており、
前記本体部絶縁基板の前記第2の面の全面には、前記本体部絶縁基板の前記第2の面に形成された前記コイルを覆うようにして磁性粉材料層が被着されており、
前記ケーブル部は、
前記本体部絶縁基板に連続し、前記本体部絶縁基板から張り出すように設け設けられたケーブル部絶縁基板を備え、
前記本体部絶縁基板の前記第1の面に連続する前記ケーブル部絶縁基板の第1の面と、前記本体部絶縁基板の前記第2の面に連続する前記ケーブル部絶縁基板の第2の面との一方あるいは両方には、前記本体部絶縁基板の前記第1の面と前記本体部絶縁基板の前記第2の面とに形成されたコイルが引き出されており、
前記ケーブル部絶縁基板を前記本体部絶縁基板の第2の面側に折り曲げることにより、前記磁性粉材料層を挟んで、前記本体部絶縁基板の前記第2の面と、前記ケーブル部絶縁基板の前記第2の面とを対向させた状態で固定され、
前記本体部絶縁基板の前記第1の面に連続し、外側に露呈する前記ケーブル部絶縁基板の前記第1の面にベタ電極を配設する
ことを特徴とする位置検出センサを提供する。
【0015】
磁性粉材料層は、センサ基板本体のコイルが発生させる磁界の渦電流による減衰を低減させると共に、外部からのノイズの混入も低減させる。また、ベタ電極は、ケーブル部を通じて出力する信号にノイズが混入することを防止する。この場合、ケーブル部の第2の面には、カバーレイを熱硬化樹脂により取り付けずに、センサ基板本体に直接磁性粉材料層を設けることで、ケーブル部がセンサ基板本体の第2の面側に折り曲げられて固定されても、戻るように作用する力は大幅に小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態の電磁誘導方式の位置検出センサが用いられて構成された位置検出装置の例と位置指示器である電子ペンの例について説明するための図である。
図2】実施の形態の電磁誘導方式の位置検出センサの具体的な構成例を説明するための図である。
図3】実施の形態の電磁誘導方式の位置検出センサの具体例を説明するための断面図である。
図4】実施の形態の電磁誘導方式の位置検出センサに用いられる磁性粉材料層の特性について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しながら、この発明による位置検出センサの実施の形態について説明する。
【0018】
[位置検出センサを備えた位置検出装置の構成例]
図1は、この実施の形態の位置検出センサが用いられて構成された位置検出装置の例と、当該位置検出装置で用いられる位置指示器としての電子ペンの例について説明するための図である。この実施の形態の位置検出装置100及び電子ペン200は電磁誘導方式のものである。位置指示器としての電子ペン200は、図1の左上に示すように、信号送受信用に用いられるコイルLと、可変容量コンデンサである筆圧検出部Cvと、共振コンデンサCf等が並列に接続されることにより構成された共振回路を備える。
【0019】
位置検出装置100には、X軸方向ループコイル群12Xと、Y軸方向ループコイル群12Yとが積層されて形成された位置検出センサ1を備えている。X軸ループコイル群12XのループコイルX、X、…、X40及びY軸ループコイル群12YのループコイルY、Y、…、Y30のそれぞれは、1ターンの場合もあれば、2ターン以上の複数ターンの場合もある。なお、図1において、位置検出センサ1は、簡略化して示しており、位置検出センサ1の詳細な構成については後述する。そして、位置検出センサ1が、位置検出回路102に接続されることにより、全体として位置検出装置100を構成している。
【0020】
位置検出回路102は、発振器104と、電流ドライバ105と、選択回路106と、切り替え接続回路107と、受信アンプ108と、位置検出用回路109と、筆圧検出用回路110と、処理制御部111とからなる。図1に示すように、位置検出センサ1のX軸方向ループコイル群12X及びY軸方向ループコイル群12Yが、選択回路106に接続される。選択回路106は、処理制御部111の制御に応じて、2つのループコイル群12X,12Yのうちの一のループコイルを順次選択する。
【0021】
処理制御部111は、マイクロプロセッサにより構成されている。処理制御部111は、選択回路106におけるループコイルの選択と、切り替え接続回路107の切り替えとを制御すると共に、位置検出用回路109及び筆圧検出用回路110での処理タイミングを制御する。
【0022】
発振器104は、周波数f0の交流信号を発生させる。発振器104は、発生させた交流信号を、電流ドライバ105と筆圧検出用回路110に供給する。電流ドライバ105は、発振器104から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路107へ送出する。切り替え接続回路107は、処理制御部111からの制御により、選択回路106によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ105が、受信側端子Rには受信アンプ108が、それぞれ接続されている。
【0023】
選択回路106により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路106及び切り替え接続回路107を介して受信アンプ108に送られる。受信アンプ108は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、位置検出用回路109及び筆圧検出用回路110へ送出する。
【0024】
X軸方向ループコイル群12X及びY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルには、電子ペン200から送信される電波によって誘導電圧が発生する。位置検出用回路109は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、その検波出力信号をデジタル信号に変換し、処理制御部111に出力する。処理制御部111は、位置検出用回路109からのデジタル信号、すなわち、各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン200のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
【0025】
一方、筆圧検出用回路110は、受信アンプ108の出力信号を発振器104からの交流信号で同期検波して、それらの間の位相差(周波数偏移)に応じたレベルの信号を得、その位相差(周波数偏移)に応じた信号をデジタル信号に変換して処理制御部111に出力する。処理制御部111は、筆圧検出用回路110からのデジタル信号、すなわち、送信した電波と受信した電波との位相差(周波数偏移)に応じた信号のレベルに基づいて、電子ペン200に印加されている筆圧を検出する。
【0026】
[位置検出センサの構成例]
図2は、省スペース用の位置検出センサ1の具体的な構成例を説明するための図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は長辺側の側面図、図2(C)はコイルが設けられている部分であるセンサ層1Xの断面図である。図2(A)に示すように、位置検出センサ1は、電子ペン200により位置指示される側の面である第1の面(操作面)1S1側から見ると、大きな長方形状のセンサ基板本体1Sと、センサ基板本体1Sより張り出した小さな長方形状のケーブル部1Cとからなっている。なお、ケーブル部1Cは、例えば台形状に形成される場合もあり、その形状は様々である。
【0027】
センサ基板本体1Sは、電子ペン200と電磁結合するためのコイルを備え、電子ペン200による位置指示を受け付ける部分である。ケーブル部1Cは、センサ基板本体1Sに設けられているコイルを引き出して、図1を用いて説明した位置検出回路102との接続端部を構成している。すなわち、ケーブル部1Cは、センサ基板本体1Sに設けられているコイルと位置検出回路102とを接続しやすくするための部分である。
【0028】
位置検出センサ1のセンサ基板本体1Sは、スマートフォンやタブレットPCなどの携帯端末に搭載される場合、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置の表示画面よりやや大きく構成され、当該表示画面の全面に対応するようになっている。また、位置検出センサ1が携帯端末に搭載される場合、携帯端末の小型化に伴い、図2(B)に示すように、ケーブル部1Cは、電子ペン200により位置指示が行われるセンサ基板本体1Sの第1の面1S1とは反対側の第2の面(裏面)1S2側に折り曲げられ、センサ基板本体1Sの下側において、位置検出回路102が構成されている回路基板に接続される。
【0029】
したがって、位置検出センサ1が携帯端末等に搭載された場合、センサ基板本体1Sの第2の面1S2とケーブル部1Cの第2の面1C2とが対向するようになる。従って、図2(A)に示した状態では、同一方向の面であるセンサ基板本体1Sの第1の面1S1と、ケーブル部1Cの第1の面1C1とは、ケーブル部1Cが折り曲げられることにより、互いに逆方向の面となる。
【0030】
このように、この実施の形態では、センサ基板本体1Sの面とケーブル部1Cの面とは区別している。すなわち、図2(B)にも示したように、センサ基板本体1Sの第1の面1S1に連なるケーブル部1Cの面をケーブル部1Cの第1の面1C1とし、センサ基板本体1Sの第2の面1S2に連なるケーブル部1Cの面をケーブル部1Cの第2の面1C2としている。
【0031】
そして、位置検出センサ1のセンサ基板本体1Sには、図1を用いて上述したように、X軸方向ループコイル群12XとY方向ループコイル群12Yとが積層されて構成されている。当該コイルが設けられている部分であるセンサ層1Xは、図2(C)に示すように、絶縁基板11の第2の面(下面)にX軸方向ループコイル群12Xが設けられ、第1の面(上面)にY軸方向ループコイル群12Yが設けられる。そして、Y軸方向ループコイル群12Yの上には、表面シートが設けられ、Y軸方向ループコイル群12Yが保護される。
【0032】
なお、ケーブル部1Cにおいては、下側からX軸方向ループコイル群12X、絶縁基板11、Y軸方向ループコイル群12Y、表面シートの順に積層される構成は、センサ基板本体1Sと同じである。但し、X軸ループコイル群12Xの各ループコイルとY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルとは、位置検出回路102への接続を容易にするために、外側に向かう方向(センサ基板本体1Sのある方向とは逆方向)に引き出すようにされている。また、X軸ループコイル群12Xの各ループコイルとY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルとが、同一面に引き出され、1つの面において、全てのループコイルの接続端が構成される場合もある。
【0033】
図2(C)に示したように、位置検出センサ1は、X軸方向ループコイル群12XとY方向ループコイル群12Yとが積層された構造を有する。これらのループコイル群12X、12Yの各ループコイルが発生させる磁界を近隣に配置される電子回路の金属部が減衰させたり、また、外部からの磁気的なノイズの混入を防止したりする必要がある。このため、従来であれば、第2の面側、図2(C)に示した例の場合には、X軸ループコイル群12Xの下側に機能性シートが設けられていた。
【0034】
機能性シートは、下側から順に例えば、保護シート、電磁シールド層、磁性粉材料層、カバーレイ(ベースフィルム)を積層して構成したものであり、図2(C)に示したX軸ループコイル群12Xの全面に熱硬化樹脂により接着されていた。しかし、機能性シートを熱硬化樹脂により接着した場合、折り曲げられて固定されるケーブル部1C部分は、硬化した熱硬化樹脂やカバーレイが元の状態に戻るように作用する。
【0035】
つまり、熱硬化樹脂は加熱により硬化する。また、カバーレイは例えばポリイミドなどの強度の高い材料が用いられて形成されている。このため、熱硬化樹脂もベースフィルムも折り曲げられる前の状態に戻るように作用する。従って、図2(B)を用いて説明したように、第2の面側に折り曲げられて固定されるケーブル部1Cが、経年によりセンサ基板本体1Sの第2の面1S2から離れる方向に移動し、センサ基板本体1Sのケーブル部1C側を押し上げてしまう可能性がある。この場合、当該部分において、位置検出センサ1の検出感度を劣化させてしまう恐れがある。
【0036】
そこで、この実施の形態の位置検出センサ1においては、従来から用いられているいわゆるカバーレイ(ベースフィルム)と接着用の熱硬化樹脂は使用していない。そして、磁性粉材料層や電磁シールド層やベタ電極を設ける場所や設け方などを工夫することによって、ループコイル群12X、12Yの各ループコイルが発生させる磁界を減衰させることなく、また、外部からのノイズの混入も低減させるような、ケーブル部1Cを折り曲げて使用する省スペース用の位置検出センサを実現している。
【0037】
[位置検出センサの構成例]
図3は、この実施の形態の位置検出センサ1の具体例を説明するための図であり、位置検出センサ1のセンサを長手基板本体とケーブル部1Cとが連なる部分を長手方向に沿って切断した場合の断面図である。位置検出センサ1を構成する各層は、実際には1mm以下の厚みのものであり、図2(B)を用いて説明したように、ケーブル部1Cは、センサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げられ、第2の面1S2に固定されて用いられる。しかし、図3においては、位置検出センサ1の積層構造を明確に示すために、主要な各層に厚みを持たせて示すようにしている。
【0038】
このため、図3においては、位置検出センサ1の折り曲げ部分がカーブを形成するようになっているが、実際には図2(B)に示したように、厚めの紙を折るように折り曲げることができる。そして、上述もしたように、位置検出センサ1を構成する各層の厚みは1mm以下の薄いものであるので、図3に示すように、折り曲げたとしても、各層の長手方向の長さが大きく異なるものでもない。
【0039】
また、図3(A)~(E)において、一番上の層のセンサ層1Xは、図2(C)を用いて説明した積層構造を有するものである。また、図3(A)~(E)において、矢印で示した位置Pが、センサ基板本体1Sとケーブル部1Cとの境界位置を示している。従って、図3(A)~(E)において、位置Pの左側がセンサ基板本体1Sであり、位置Pの右側(折り曲げられた部分)がケーブル部1Cである。
【0040】
<位置検出センサ1の第1の例>
図3(A)は、位置検出センサ1の第1の例を示している。位置検出センサ1の第1の例は、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2に形成されているX軸方向ループコイル群12Xを覆うようにして、磁性粉材料層14を設けたものである。従って、磁性粉材料層14は、ケーブル部1Cの第2の面1C2は覆わないものである。これにより、ケーブル部1Cが、センサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げられた場合には、図3(A)に示すように、センサ基板本体1Sの第2の面1S2と、ケーブル部1Cの第2の面1C2とが、磁性粉材料層14を挟んで対向する。また、ケーブル部1Cの第1の面1C1には、ベタ電極15が設けられる。
【0041】
磁性粉材料層14は、高透磁率の磁性体の粉末、例えばアモルファス合金の粉末を、非磁性および非導電性の高分子材料、この例では樹脂と混合したものである。そして、この実施の形態では、磁性粉材料は、塗料のような形態として構成して、この塗料形態の磁性粉材料を、センサ層1Xの第2の面に形成されているX軸ループコイル群12Xの全体を覆うように塗布することにより、磁性粉材料層を形成することができる。また、以下に説明する位置検出センサ1の他の例においては、磁性粉材料層14A、14B、14Cは、上述した磁性粉材料層14と同様に構成されるものである。
【0042】
なお、磁性粉材料層14を構成する磁性粉材料としては、アモルファス合金の粉末の代わりに、パーマロイやフェライト(酸化鉄)の粉末を用いることもできる。また、高分子材料としては、樹脂に限られるものではなく、有機高分子材料、無機高分子材料のいずれであっても良い。例えば、有機高分子材料としては、タンパク質、核酸、多糖類(セルロース、デンプンなど)や天然ゴムなどの天然高分子材料、また、合成樹脂、シリコン樹脂、合成繊維、合成ゴムなどの合成高分子材料を用いることができる。また、無機高分子材料としては、二酸化ケイ素(水晶、石英)、雲母、長石、石綿などの天然高分子材料、また、ガラスや合成ルビーなどの合成高分子材料を用いることができる。
【0043】
また、ベタ電極15は、金属や種々の導電性材料により構成された1枚のシート状の電極であってもよいし、両面基板の一方の面に銅箔のベタパターンにより形成されたものであってもよい。ベタ電極15は、ケーブル部1Cがセンサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げられた場合に、センサ基板本体1Sと重なり合う部分の全体に設けられる。ベタ電極のケーブル部1Cの第1の面1C1への被着は、塗布、蒸着、融着、種々の接着材による接着や、ベタパターンの設置などでよい。
【0044】
このように、センサ層1Xのセンサ基板本体1SのX軸ループコイル群12Xを覆うように、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2側に磁性粉材料層14が設けられ、この磁性粉材料層14は、磁界の通り道となる磁路を形成する。これにより、センサ基板本体1Sの下側に位置する回路基板の金属部分などが影響して、X軸ループコイル群12XやY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルが発生させる磁界を減衰させたり、外部からの磁気的ノイズが混入したりすることを防止できる。
【0045】
また、ケーブル部1Cの第1の面1C1にはベタ電極が設けられている。ケーブル部1Cは、位置検出回路102との接続部となるが、このケーブル部1Cを通じて、外部からの電気的なノイズが混入したり、また、外部に対して電気的なノイズを放出したりすることがないようにできる。
【0046】
<位置検出センサ1の第2の例>
図3(B)は、位置検出センサ1の第2の例を示している。位置検出センサ1の第2の例は、図3(A)を用いて説明した位置検出センサの第1の例に対して、磁性粉材料層14の下側に更に電磁シールド層16を設けたものである。すなわち、電磁シールド層16が、磁性粉材料層14に対応し、センサ層1Xのセンサ基板本体の第2の面を覆うものであり、ケーブル部1Cの第2の面1C2は覆わないものである。これにより、ケーブル部1Cが、センサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げられた場合には、図3(B)に示すように、センサ基板本体1Sの第2の面1S2と、ケーブル部1Cの第2の面1C2とが、磁性粉材料層14と電磁シールド層16とを挟んで対向する。また、ケーブル部1Cの第1の面1C1には、ベタ電極15が設けられる点は、図3(A)の第1の例の場合と同様である。
【0047】
電磁シールド層16は、非磁性体であると共に、センサ層1XのX軸方向ループコイル群12X及びY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルにICや各種回路の電磁ノイズが混入しないようにする。このため、電磁シールド層16は、低抵抗(好ましくは電気抵抗がほぼゼロ)で高い導電性を備えている金属材料、この例では、アルミニウムで構成されている。
【0048】
このアルミニウムからなる電磁シールド層16を、磁性粉材料層14に対して被着する方法としては、接着剤を用いて接着する方法の他、圧着による方法、あるいはアルミニウムを磁性粉材料層14に蒸着するなどの方法を用いることができる。圧着による方法の場合に、磁性粉材料層14には、接着材を含浸させておくようにしても良い。この実施の形態では、電磁シールド層16は、磁性粉材料層14に対して蒸着されるものである。
【0049】
このように、この第2の例の場合には、センサ層1Xのセンサ基板本体1SのX軸ループコイル群12Xを覆うように、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2側に磁性粉材料層14と電磁シールド層16とが設けられる。これにより、X軸ループコイル群12XやY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルが発生させる磁界を外部に漏洩させたり、また、外部からの磁気的ノイズや電気的なノイズが混入したりすることをより確実に防止できる。
【0050】
また、ケーブル部1Cの第1の面1C1には、第1の例の場合と同様に、ベタ電極が設けられているので、ケーブル部1Cを介して、外部からの電気的なノイズの混入や外部への電気的なノイズの放出を防止できる。
【0051】
<位置検出センサ1の第3の例>
図3(C)は、位置検出センサ1の第3の例を示している。図3(A)を用いて説明した第1の例は、磁性粉材料層14をセンサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2部分だけに設けていた。これに対して、この第3の例では、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2と、これに連なるセンサ層1Xのケーブル部1Cの第2の面1C2との両方に、塗料形態の磁性粉材料を塗布して磁性粉材料層14Aを設けるようにしたものである。
【0052】
これにより、ケーブル部1Cが、センサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げられた場合には、図3(C)に示すように、センサ基板本体1Sの第2の面1S2と、ケーブル部1Cの第2の面1C2とが、2層(2倍の厚み)となる磁性粉材料層14Aを挟んで対向する。また、ケーブル部1Cの第1の面1C1には、ベタ電極15が設けられる点は、図3(A)、(B)に示した第1、第2の例の場合と同様である。
【0053】
この第3の例の場合には、第1の例の場合と同様に、磁性粉材料層14Aの機能により、X軸ループコイル群12XやY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルが発生させる磁界を減衰させたり、外部からの磁気的ノイズが混入したりすることを防止できる。また、ケーブル部1Cの第1の面1C1のベタ電極15の機能により、このケーブル部1Cを通じて、外部からの電気的なノイズが混入したり、また、外部に対して電気的なノイズを放出したりすることがないようにできる。
【0054】
そして、この第3の例の場合には、センサ層1Xの第2の面、即ち、センサ基板本体1Sの第2の面1S2とケーブル部1Cの第2の面1C2との両方に、磁性粉材料層14Aを塗布すればよいので、製造工程を簡単にすることができる。
【0055】
<位置検出センサ1の第4の例>
図3(D)は、位置検出センサ1の第4の例を示している。この位置検出センサ1の第4の例は、図3(C)を用いて説明した位置検出センサの第3の例と同様に、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2と、これに連なるセンサ層1Xのケーブル部1Cの第2の面1C2との両方に、磁性粉材料層14Bを設ける。磁性粉材料層14Bの被着の方法は、上述したように、塗料形態の磁性粉材料を塗布することによりおこなわれる。
【0056】
そして、この第4の例においても、図3(B)に示した第2の例の場合と同様に、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2に対応する部分の磁性粉材料層14Bの下側に、更に電磁シールド層16を設ける。すなわち、電磁シールド層16は、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2を覆うものであり、ケーブル部1Cの第2の面1C2は覆わないものである。電磁シールド層16の被着の方法は、磁性粉材料層14Bのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2に対応する部分にアルミニウムを蒸着することにより行われる。
【0057】
これにより、ケーブル部1Cが、センサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げられた場合には、図3(D)に示すように、センサ基板本体1Sの第2の面1S2と、ケーブル部1Cの第2の面1C2とが、2層となる磁性粉材料層14Bと電磁シールド層16とを挟んで対向する。また、ケーブル部1Cの第1の面1C1には、ベタ電極15が設けられる点は、図3(A)、(B)、(C)に示した第1、第2、第3の例の場合と同様である。
【0058】
この第4の例の場合には、磁性粉材料層14B、電磁シールド層16の機能により、第2の例の場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、X軸ループコイル群12XやY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルが発生させる磁界を外部に漏洩させたり、また、外部からの磁気的ノイズや電気的なノイズが混入したりすることをより確実に防止できる。
【0059】
また、ケーブル部1Cの第1の面1C1には、第1の例の場合と同様に、ベタ電極15が設けられているので、ケーブル部1Cを介して、外部からの電気的なノイズの混入や外部への電気的なノイズの放出を防止できる。
【0060】
<位置検出センサ1の第5の例>
図3(E)は、位置検出センサ1の第5の例を示している。この位置検出センサ1の第5の例は、図3(D)を用いて説明した位置検出センサの第4の例と同様に、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2と、これに連なるセンサ層1Xのケーブル部1Cの第2の面1C2との両方に、磁性粉材料層14Cを設ける。被着の方法は、上述した例と同様に、塗料形態の磁性粉材料を、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2と、これに連なるセンサ層1Xのケーブル部1Cの第2の面1C2との両方に塗布することにより行う。
【0061】
更に、図3(E)に示すように、磁性粉材料層14Cの下側に磁性粉材料層14Cに対応して、電磁シールド層16Aを設ける。すなわち、電磁シールド層16Aもまた、磁性粉材料層14Cと同様に、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2と、これに連なるセンサ層1Xのケーブル部1Cの第2の面1C2との両方に設けられる。被着の方法は、上述した例と同様に、アルミニウムをセンサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2と、これに連なるセンサ層1Xのケーブル部1Cの第2の面1C2との両方に設けられている磁性粉材料層14Cに対してアルミニウムを蒸着することにより行う。
【0062】
これにより、ケーブル部1Cが、センサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げられた場合には、図3(E)に示すように、センサ基板本体1Sの第2の面1S2と、ケーブル部1Cの第2の面1C2とが、2層となる磁性粉材料層14Cと、2層となる電磁シールド層16Aとを挟んで対向する。また、ケーブル部1Cの第1の面1C1には、ベタ電極15が設けられる点は、図3(A)、(B)、(C)、(D)に示した第1、第2、第3、第4の例の場合と同様である。
【0063】
この第5の例の場合にも、磁性粉材料層14C、電磁シールド層16Aの機能により、第2の例の場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、X軸ループコイル群12XやY軸方向ループコイル群12Yの各ループコイルが発生させる磁界を外部に漏洩させたり、また、外部からの磁気的ノイズや電気的なノイズが混入したりすることをより確実に防止できる。
【0064】
また、ケーブル部1Cの第1の面1C1には、第1の例の場合と同様に、ベタ電極が設けられているので、ケーブル部1Cを介して、外部からの電気的なノイズの混入や外部への電気的なノイズの放出を防止できる。
【0065】
そして、この第5の例の場合には、センサ層1Xの第2の面、即ち、センサ基板本体1Sの第2の面1S2とケーブル部1Cの第2の面1C2との両方に、磁性粉材料層14Cと、電磁シールド層16Aとを設けることができる。このため、製造工程を簡単にすることができる。
【0066】
[実施の形態の効果]
この実施の形態の位置検出センサ1の場合には、図3を用いてその構成のバリエーションを説明したように、従来用いられていた、カバーレイや磁性粉材料層や電磁シールド層を有するいわゆる機能性シートを、熱硬化樹脂で貼り付けるものではない。図3(A)、(B)の例の場合には、ケーブル部1Cの第2の面1C2には、磁性粉材料層も電磁シールド層も被着されていない。また、図3(C)、(D)、(E)の場合には、磁性粉材料層や電磁シールド層は、熱硬化樹脂を用いず、また、カバーレイも介在させずにセンサ層1Xに対して被着されている。
【0067】
このため、位置検出センサ1のケーブル部1Cをセンサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げて固定しても、従来のカバーレイを用いた位置検出センサのように、カバーレイを被着した熱硬化樹脂やカバーレイの影響によりいわゆるスプリングバック現象を発生させない。このため、位置検出センサ1のケーブル部1Cをセンサ基板本体1Sの第2の面1S2側に折り曲げて固定しても、長年の使用によりケーブル部1Cが元の位置に戻ることもないため、位置検出性能が劣化しない高精度の位置検出センサを実現できる。
【0068】
なお、センサ層1Xの第1の面に配設されたY軸方向ループコイル群12の各ループコイルからの引出し線はセンサ基板本体1Sとケーブル部1Cの接続付近でスルーホール等を介して第2の面に移動して、ケーブル部1Cの第2の面1C2に配設される。そのため、ケーブル部の第1の面1C1にはベタ電極のみを配設することができる。また、通常、ベタ電極はセンサ基板の基準電位であるグランドに接続される(接地される)。
【0069】
[変形例]
<磁性粉材料層、電磁シールド層の被着の方法>
上述した実施の形態では、磁性粉材料層14、14A、14B、14Cは、塗料形態の磁性粉材料を塗布することにより形成した。また、電磁シールド層16、16Aは、アルミニウムを蒸着することにより形成した。しかしこれに限るものではない。例えば、図3(A)に示した第1の例と、図3(B)に示した第2の例の場合には、ケーブル部1Cの第2の面1C2側には、磁性粉材料層も電磁シールド層も設けられない。
【0070】
このため、磁性粉材料層14、電磁シールド層16は、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2に対応して設けられ、このセンサ基板本体1Sは折り曲げられて使用されることはないので、どのような方法により被着させてもよい。例えば、図3(A)に示した第1の例と、図3(B)に示した第2の例の場合には、熱硬化樹脂を接着剤として用いて、シート状に形成した磁性粉材料層14や電磁シールド層16を、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2に対応して被着させてもよい。また、カバーレイ(ベースフィルム)の一方の面に磁性粉材料層14を設け、他方の面に電磁シールド層16を設けたものを、熱硬化樹脂を用いてセンサ基板本体1S部分に設けてもよい。
【0071】
また、図3(C)に示した第3の例と、図3(D)に示した第4の例の場合には、磁性粉材料層14Aが、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2と、ケーブル部1Cの第2の面1C2の両方に形成される。このため、少なくとも、ケーブル部1Cの第2の面1C2の折れ曲がる部分に対して、熱硬化樹脂を用いたり、カバーレイを介在させたりしなければ、どのような方法を用いて磁性粉材料層14Aを被着させてもよい。
【0072】
図3(C)、(D)に示した第3、第4の例の場合には、例えば、シート状に形成した磁性粉材料を、熱硬化樹脂により、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2の全面に被着させて、磁性粉材料層を形成する。そして、ケーブル部1Cでは、折り曲げる部分に熱硬化樹脂を使用しなければ、例えば、端部だけというように、部分的に熱硬化樹脂を用いて、磁性粉材料を被着させ、磁性粉材料層を形成することも可能である。
【0073】
また、図3(E)に示した第5の例の場合には、磁性粉材料層14Cと、電磁シールド層16Aとが、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2と、ケーブル部1Cの第2の面1C2の両方に形成される。このため、少なくとも、ケーブル部1Cの第2の面1C2の折れ曲がる部分に対して、熱硬化樹脂を用いて磁性粉材料層14Aや電磁シールド層を接着しなければ、どのような方法を用いて磁性粉材料層14A、電磁シールド層を被着させてもよい。
【0074】
図3(E)に示した第5の例の場合には、例えば、シート状に形成した磁性粉材料やアルミニウムを、熱硬化樹脂により、センサ層1Xのセンサ基板本体1Sの第2の面1S2の全面に被着させて、磁性粉材料層や電磁シールド層を形成する。そして、ケーブル部1Cでは、折り曲げる部分に熱硬化樹脂を使用しなければ、例えば、端部だけというように、部分的に熱硬化樹脂を用いて、磁性粉材料やアルミニウムを被着し、磁性粉材料層や電磁シールド層を形成することも可能である。
【0075】
この他にも、被着させる材料の形態や塗布の対象の特性に応じて、塗布、蒸着、融着、圧着等、種々の方法を用いて、センサ層1Xに対して、磁性粉材料層や電磁シールド層を被着させることができる。また、センサ層1Xに対して、磁性粉材料層や電磁シールド層は、ずれることがなければよいので、被着対象に対して磁性粉材料層や電磁シールド層の全面を接着させなくてもよい。このため、シート状の磁性粉材料やシート状のアルミニウムを用いる場合には、被着対象の端部などのいくつかの部分で、シート状の磁性粉材料やシート状のアルミニウムを固定するようにしておけばよい。
【0076】
また、図3(B)に示した第2の例と、図3(C)の第3の例の場合には、圧着により磁性粉材料層14、14Bに対して、電磁シールド層を被着させる場合に、磁性粉材料層14や磁性粉材料層14Cのセンサ基板本体1Sに対応する部分には、接着材を含浸させておくようにしても良い。
【0077】
要は、折り曲げて使用されるケーブル部1Cの実際に折り曲げられる部分に、熱硬化樹脂やカバーレイ(ベースフィルム)といった、元に戻るように作用する材料を用いなければよい。
【0078】
<磁性粉材料層の特性>
図4は、実施の形態の電磁誘導方式の位置検出センサに用いられる磁性粉材料層14、14A、14B14Cの特性について説明するための図である。具体的に、図4は、磁性粉材料層14、14A、14B14Cにおいて、磁性粉14Pの磁化の方向が、磁界発生装置300の前後で変更されることを説明するための模式的な図である。このため、扁平楕円形の磁性粉14Pの大きさと、磁性粉材料層14、14A、14B、14Cの厚さや幅との関係は実際とは異なるっている。
【0079】
磁性粉材料層14,14A、14B、14Cに含まれる全ての磁性粉の磁化の方向が、位置検出センサ1の操作面に平行な方向に揃えられることにより、この磁性粉材料層14,14A、14B、14Cからの漏れ磁束を防ぎ易くすることができる。また、磁性粉材料層14,14A、14B、14Cの透磁率の制御が容易になると共に、最適な透磁率とする磁性粉材料層14,14A、14B、14Cの厚さの制御が容易になると言う効果がある。そこで、この実施の形態の位置検出センサ1においては、磁性粉材料層14,14A、14B、14Cが形成された位置検出センサ1を磁界発生装置300に通すことによって、磁化の方向を揃えるようにしてもよい。
【0080】
図4(A)は、位置検出センサ1に形成された磁性粉材料層14、14A、14B、14Cを、位置検出センサ1の電子ペン200により操作される操作面に直交する方向から見た場合における磁性粉14Pの磁化の方向(磁極を結ぶ方向)を説明するための図である。また、図4(B)は、磁性粉材料層14、14A、14B、14Cを、その厚さ方向に直交する方向から見た場合においける磁性粉14Pの磁化の方向(磁極を結ぶ方向)を説明するための図である。また、図4(A)、(B)において、磁性粉材料層14、14A、14B、14Cは、左から右に向かって、磁界発生装置300を通過するようになっているものとする。
【0081】
図4(A)および図4(B)に示すように、位置検出センサ1に形成された磁性粉材料層14、14A、14B、14Cに含まれる磁性粉14Pのそれぞれの磁化の方向(図4において各磁性粉14Pに付与した矢印で示す扁平面の方向)は、まちまちである。これが、磁界発生装置300を通ることにより、磁性粉材料層14,14A、14B、14Cの厚さ方向に直交する方向の磁界300Fと同じ方向に揃うようにされる。
【0082】
そして、磁界発生装置300の作用により、図4(B)のように、磁性粉材料層14,14A、14B、14Cに含まれる全ての磁性粉14Pの磁化の方向が、位置検出センサ1の操作面に平行な方向に揃えられる。これにより、この磁性粉材料層14,14A、14B、14Cからの漏れ磁束を防ぎ易くすることができる。また、磁性粉材料層14,14A、14B、14Cの透磁率の制御が容易になると共に、最適な透磁率とする磁性粉材料層14,14A、14B、14Cの厚さの制御が容易になると言う効果がある。
【0083】
なお、磁性粉14Pの扁平形状は、楕円形に限られるものではないことは言うまでもない。磁化の方向を、厚さ方向に鉛直な方向に、極性の反転を許しつつ指向性をもって保持できる形状であれば良く、典型的には、針状のものや棒状とよばれる形状を含む。例えば、磁性粉は、軟磁性体であって、その形状が例えば厚さ方向に直交するある一方向のベクトル成分(主成分)が、その方向に直交する他のベクトル成分に比して大きい形状、であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…位置検出センサ、1S…センサ基板本体、1C…ケーブル部、1S1…センサ基板本体の第1の面、1S2…センサ基板本体の第2の面、1C1…ケーブル部の第1の面、1C2…ケーブル部の第2の面、11…絶縁基板、12X…X軸方向ループコイル群、12Y…Y軸方向ループコイル群、13…表面シート、1X…センサ層、14,14A、14B、14C…磁性粉材料層、15…ベタ電極、16、16A…電磁シールド層、100…位置検出装置、102…位置検出回路、200…電子ペン、300…磁界発生装置
図1
図2
図3
図4