(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング方法及び磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230228BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 312
G01N24/08 510Y
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2018225041
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】518427269
【氏名又は名称】山田 晋也
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】押尾 晃一
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】油井 正生
(72)【発明者】
【氏名】桜庭 誓子
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0326367(US,A1)
【文献】特開2009-118917(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125832(WO,A1)
【文献】特開平05-115458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して、励起用RFパルスを繰り返し時間の間隔で繰り返し印加しながら、各繰り返し時間内で時間積分量がゼロになるようにバランスされた傾斜磁場パルス群を印加するバランスSSFPシーケンスを、持続的なスピンラベルを生成するためのスピンラベリング用傾斜磁場を
前記傾斜磁場パルス群が印加される各繰り返し時間内でさらに印加しながら実行することを含む、
磁気共鳴イメージング方法。
【請求項2】
前記持続的なスピンラベルは、前記バランスSSFPシーケンスによって収集される画像内で縞状に生成される、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項3】
前記スピンラベリング用傾斜磁場及び前記励起用RFパルスの少なくとも一方を変更することで、前記スピンラベルの状態を変更する、
ことをさらに含む、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項4】
リードアウト方向及びフェーズエンコード方向それぞれに沿って前記スピンラベリング用傾斜磁場を印加し、前記リードアウト方向と前記フェーズエンコード方向との間のスピンラベリング用傾斜磁場の配分を変更することで、前記スピンラベルの方向を制御する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項5】
前記スピンラベリング用傾斜磁場の時間積分量を変更することで、前記スピンラベルのピッチを制御する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項6】
前記励起用RFパルスの送信位相を変更することで、前記スピンラベルの位置を制御する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項7】
操作者からの指示に基づいて、前記スピンラベルの状態を変更する、
請求項3~6のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項8】
前記被検体から取得された生体信号、又は、時系列に連続して収集された画像を解析することで、被検体の周期的な状態変化を検出し、検出した状態変化に基づいて、前記スピンラベルの状態を変更する、
請求項3~6のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項9】
静磁場内に置かれた被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイルと、
前記被検体にRFパルスを印加するRFコイルと、
前記傾斜磁場コイル及び前記RFコイルを制御することで、前記被検体に対して、励起用RFパルスを繰り返し時間の間隔で繰り返し印加しながら、各繰り返し時間内で時間積分量がゼロになるようにバランスされ
た傾斜磁場
パルス群を印加するバランスSSFPシーケンスを、持続的なスピンラベルを生成するためのスピンラベリング用傾斜磁場を
前記傾斜磁場パルス群が印加される各繰り返し時間内でさらに印加しながら実行する実行部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング方法及び磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置を用いて血液や脳脊髄液(Cerebrospinal Fluid:CSF)、心筋等の動きを可視化する方法として、Time-SLIP(Time-Spatial Labeling inversion pulse)法やTagging法が知られている。これらの方法は、いずれも観察対象をラベリングした後にイメージングのための読み出しを行うものであるが、ラベリングの持続時間に限界があるため、ラベルの見え方が一定でなく、観察対象の連続的な動きや不随意な動きを適切に可視化することが難しい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-242948号公報
【文献】特開昭63-111845号公報
【文献】特開平07-178068号公報
【文献】特開2010-136786号公報
【文献】米国特許出願公開第2015/0272453号明細書
【文献】米国特許第8,195,274号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0009710号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、観察対象の連続的な動きや不随意な動きをより適切に可視化することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法は、被検体に対して、励起用RFパルスを繰り返し時間の間隔で繰り返し印加しながら、各繰り返し時間内で時間積分量がゼロになるようにバランスされた傾斜磁場パルス群を印加するバランスSSFPシーケンスを、持続的なスピンラベルを生成するためのスピンラベリング用傾斜磁場を各繰り返し時間内でさらに印加しながら実行することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るシーケンス実行機能によって実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るスピンラベリング用傾斜磁場によって生成されるスピンラベルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るスピンラベリング用傾斜磁場によって生成されるスピンラベルの変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るスピンラベリング用傾斜磁場によって生成されるスピンラベルの変化の他の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るMRI装置によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本願に係る磁気共鳴イメージング方法及び磁気共鳴イメージング装置の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置の構成例を示す図である。
【0009】
例えば、
図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身用コイル4、局所用コイル5、寝台6、送信回路7、受信回路8、架台9、インタフェース10、ディスプレイ11、記憶回路12、及び処理回路13~16を備える。
【0010】
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、その内周側にある撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有する。なお、静磁場磁石1は、例えば、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
【0011】
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1によって発生した静磁場内に置かれた被検体Sに傾斜磁場を印加する。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成され、静磁場磁石1の内周側に配置されており、傾斜磁場電源3から供給される電流に基づいて、その内周側にある撮像空間に傾斜磁場を発生させる。また、傾斜磁場コイル2は、X軸、Y軸及びZ軸それぞれに対応するXコイル、Yコイル及びZコイルを有しており、傾斜磁場電源3から各コイルに供給される電流に応じて、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を撮像空間に発生させる。これにより、X軸、Y軸及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、X軸は、水平方向に沿うように設定され、Y軸は、鉛直方向に沿うように設定され、Z軸は、傾斜磁場コイル2の軸方向に一致し、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿うように設定される。
【0012】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が有するXコイル、Yコイル及びZコイルそれぞれに電流を供給することで、X軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を撮像空間に発生させる。具体的には、傾斜磁場電源3は、Xコイル、Yコイル及びZコイルに個別に電流を供給することで、互いに直交するリードアウト方向、フェーズエンコード方向及びスライス方向それぞれに沿って、磁場強度が直線的に変化する傾斜磁場を発生させる。
【0013】
ここで、リードアウト方向の傾斜磁場、フェーズエンコード方向の傾斜磁場、及びスライス方向の傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳されることで、被検体Sから発生するMR信号に空間的な位置情報を付与する。具体的には、リードアウト方向の傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、リードアウト方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。また、フェーズエンコード傾斜磁場は、フェーズエンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、フェーズエンコード方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。また、スライス傾斜磁場は、スライス方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。例えば、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ及び枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させるために用いられる。これにより、リードアウト方向に沿った軸、フェーズエンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。
【0014】
全身用コイル4は、被検体SにRFパルス(RF磁場)を印加し、当該RFパルスの影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信するRFコイルである。具体的には、全身用コイル4は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成され、傾斜磁場コイル2の内周側に配置されており、送信回路7から供給されるRFパルス信号に基づいて、その内周側にある撮像空間に配置された被検体SにRFパルスを印加する。また、全身用コイル4は、RFパルスの影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路8へ出力する。例えば、全身用コイル4は、QD(quadrature)コイルである。
【0015】
局所用コイル5は、被検体Sから発生したMR信号を受信するRFコイルである。具体的には、局所用コイル5は、被検体Sの部位ごとに用意されたRFコイルであり、被検体Sの撮像が行われる際に、撮像対象の部位の近傍に配置される。そして、局所用コイル5は、全身用コイル4によって印加されるRFパルスの影響によって被検体Sから発生したMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路8へ出力する。なお、局所用コイル5は、被検体SにRFパルスを印加する送信コイルの機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所用コイル5は、送信回路7に接続され、送信回路7から供給されるRFパルス信号に基づいて、被検体SにRFパルスを印加する。例えば、局所用コイル5は、サーフェスコイルや、複数のサーフェスコイルで構成されたアレイコイルである。
【0016】
寝台6は、被検体Sが載置される天板6aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板6aを撮像空間に移動する。例えば、寝台6は、天板6aの長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平衡になるように設置されている。
【0017】
送信回路7は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有のラーモア周波数に対応するRFパルス信号を全身用コイル4に出力する。具体的には、送信回路7は、パルス発生器、RF発生器、変調器、及び増幅器を有する。パルス発生器は、RFパルス信号の波形を生成する。RF発生器は、共鳴周波数のRF信号を発生する。変調器は、RF発生器によって発生したRF信号の振幅をパルス発生器によって発生した波形で変調することで、RFパルス信号を生成する。増幅器は、変調器によって発生したRFパルス信号を増幅して全身用コイル4に出力する。
【0018】
受信回路8は、全身用コイル4及び局所用コイル5によって受信されたMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。具体的には、受信回路8は、検波器を有しており、当該検波器によって、全身用コイル4及び局所用コイル5によって受信されたMR信号から共鳴周波数の成分を差し引くことでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
【0019】
架台9は、略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成された中空のボア9aを有し、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、及び全身用コイル4を支持している。具体的には、架台9は、静磁場磁石1の内周側に傾斜磁場コイル2を配置し、傾斜磁場コイル2の内周側に全身用コイル4を配置し、全身用コイル4の内周側にボア9aを配置した状態で、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、及び全身用コイル4それぞれを支持している。ここで、架台9が有するボア9a内の空間が、撮像時に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0020】
なお、ここでは、MRI装置100が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び全身用コイル4それぞれが略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構成を有する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構成を有していてもよい。この場合には、一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルによって挟まれた空間が、トンネル型の構成におけるボアに相当する。
【0021】
インタフェース10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、インタフェース10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路16に出力する。例えば、インタフェース10は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、インタフェース10は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路もインタフェース10の例に含まれる。
【0022】
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRTモニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0023】
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0024】
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。寝台制御機能13aは、制御用の電気信号を寝台6へ出力することで、寝台6の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、インタフェース10を介して、天板6aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板6aを移動するように、寝台6が有する天板6aの移動機構を動作させる。
【0025】
処理回路14は、シーケンス実行機能14aを有する。シーケンス実行機能14aは、傾斜磁場電源3、送信回路7及び受信回路8を介して、傾斜磁場コイル2、全身用コイル4及び局所用コイル5を制御することで、各種のパルスシーケンスを実行する。
【0026】
具体的には、シーケンス実行機能14aは、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに従って、傾斜磁場電源3、送信回路7及び受信回路8を駆動することで、各種のパルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス実行データは、パルスシーケンスを表すデータであり、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路7が全身用コイル4にRFパルス信号を供給するタイミング及び供給するRFパルスの強さ、受信回路8がMR信号をサンプリングするタイミング等を規定した情報である。
【0027】
そして、シーケンス実行機能14aは、各種のパルスシーケンスを実行した結果、受信回路8から出力されるMR信号データを収集し、収集したMR信号データを記憶回路12に記憶させる。このとき、シーケンス実行機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト方向の傾斜磁場、フェーズエンコード方向の傾斜磁場、及びスライス方向の傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元のk空間に配列されたk空間データとして記憶回路12に記憶される。
【0028】
処理回路15は、画像生成機能15aを有する。画像生成機能15aは、記憶回路12に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能15aは、シーケンス実行機能14aによって収集されたMR信号データを記憶回路12から読み出し、読み出したMR信号データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、2次元又は3次元の画像を生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像を記憶回路12に記憶させ、操作者からの要求に応じて、記憶回路12から画像データを読み出してディスプレイ11に出力する。
【0029】
処理回路16は、撮像制御機能16aを有する。撮像制御機能16aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、撮像制御機能16aは、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ11に表示し、インタフェース10を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置100が有する各構成要素を制御する。例えば、撮像制御機能16aは、操作者によって入力された撮像条件に基づいて、各種パルスシーケンスを設定し、設定したパルスシーケンスを表すシーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。
【0030】
ここで、上述した処理回路13~16は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、記憶回路12から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。ここで、各処理回路は、複数のプロセッサによって構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、ここでは、単一の記憶回路12が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0031】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の全体的な構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、観察対象の動きを可視化するための機能を有している。
【0032】
例えば、磁気共鳴イメージング装置を用いて血液や脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)、心筋等の動きを可視化する方法として、Time-SLIP(time-spatial labeling inversion pulse)法やTagging法が知られている。ここで、Time-SLIP法は、血液やCSF等をスライス状にラベリングすることで、そのスライス内又はスライス外への血液やCSF等の流れや移動を可視化する方法である。また、Tagging法は、心筋等を格子状にラベリングすることで、心筋等の動きを可視化及び定量化する方法である。
【0033】
これらの方法は、いずれも観察対象をラベリングした後にイメージングのための読み出しを行うものであるが、ラベリングの持続時間に限界があるため(Time-SLIPでは5~6秒程度、Tagging法では1心拍程度)、ラベルの見え方が一定でなく、観察対象の連続的な動きや不随意な動きを適切に可視化することが難しい場合がある。
【0034】
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、観察対象の連続的な動きや不随意な動きをより適切に可視化することができるように構成されている。以下、このようなMRI装置100の構成について、詳細に説明する。
【0035】
まず、本実施形態では、処理回路14のシーケンス実行機能14aが、被検体に対して、励起用RFパルスを繰り返し時間の間隔で繰り返し印加しながら、各繰り返し時間内で時間積分量がゼロになるようにバランスされた傾斜磁場パルス群を印加するバランスSSFP(Steady-State Free Precession)シーケンスを、持続的なスピンラベルを生成するためのスピンラベリング用傾斜磁場を各繰り返し時間内でさらに印加しながら実行する。なお、シーケンス実行機能14aは、実行部の一例である。
【0036】
ここで、バランスSSFPシーケンス(balanced SSFPシーケンスや、true SSFPとも呼ばれる)は、横緩和が十分に行われないような短い繰り返し時間(Repetition Time:TR)の間隔で原子核スピンの励起を繰り返し、かつ、TR内で印加される傾斜磁場の時間積分量をゼロにすることで、組織の縦磁化及び横磁化を定常状態にしながらMR信号を収集するパルスシーケンスである。
【0037】
図2は、本実施形態に係るシーケンス実行機能14aによって実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。ここで、
図2は、2次元の画像を収集するためのパルスシーケンスを示している。また、
図2において、「RF」は励起用RFパルスを示し、「DAQ」はエコー信号のサンプリング期間を示し、「Slice」はスライス方向の傾斜磁場の印加タイミングを示し、「Read」はリードアウト方向の傾斜磁場を示し、「Phase」はフェーズエンコード方向の傾斜磁場を示している。
【0038】
例えば、
図2に示すように、バランスSSFPシーケンスでは、静磁場中に置かれた被検体に対して、撮像条件として予め設定されたTRの間隔で、スライス方向のスライス選択用傾斜磁場パルス201及び励起用RFパルス202が印加される。ここで、各TR内では、スライス選択用傾斜磁場パルス201及び励起用RFパルス202が印加された後に、スライス方向のリフェーズ用傾斜磁場パルス203、リードアウト方向のディフェーズ用傾斜磁場パルス204、及び、TRごとに大きさを変えたフェーズエンコード方向のフェーズエンコード用傾斜磁場パルス205が印加され、その後、リードアウト方向の読み出し用傾斜磁場パルス206が印加されている状態で、サンプリング期間207の間にエコー信号がサンプリングされる。また、エコー信号がサンプリングされた後には、TR内で印加される傾斜磁場の時間積分量がゼロに戻されるように、スライス方向のリワインド用傾斜磁場パルス208、リードアウト方向のリワインド用傾斜磁場パルス209、及びフェーズエンコード方向のリワインド用傾斜磁場パルス210が印加される。
【0039】
そして、本実施形態では、シーケンス実行機能14aは、このようなバランスSSFPシーケンスを実行する際に、各TR内で、リードアウト方向及びフェーズエンコード方向それぞれに沿って、持続的なスピンラベルを生成するためのスピンラベリング用傾斜磁場をさらに印加する。
【0040】
例えば、シーケンス実行機能14aは、
図2において矢印で示すように、各TR内で、リードアウト方向のディフェーズ用傾斜磁場パルス204及びリワインド用傾斜磁場パルス209それぞれに重畳させて、一定の大きさのスピンラベリング用傾斜磁場211を印加する。また、シーケンス実行機能14aは、フェーズエンコード方向のフェーズエンコード用傾斜磁場パルス205及びリワインド用傾斜磁場パルス210それぞれに重畳させて、一定の大きさのスピンラベリング用傾斜磁場212を印加する。なお、
図2では、説明の都合上、リードアウト方向及びフェーズエンコード方向それぞれに沿って印加される傾斜磁場パルスとスピンラベリング用傾斜磁場とを別々に図示しているが、実際には、各方向に沿って、傾斜磁場パルスとスピンラベリング用傾斜磁場とを足し合わせた大きさの磁場が印加される。
【0041】
このように、バランスSSFPシーケンスにおいて、各TR内で一定の大きさのスピンラベリング用傾斜磁場をオフセットとして印加することによって、その結果として収集される画像内で、縞状の持続的なスピンラベルが生成されるようになる。
【0042】
具体的には、上述したように、各TR内で一定の大きさのスピンラベリング用傾斜磁場をオフセットとして印加した場合には、各TRにおいて、スピンラベリング用傾斜磁場を印加した方向に磁場の不均一が生じた状態で、MR信号がサンプリングされることになる。これにより、各TRでサンプリングされるMR信号には、スピンラベリング用傾斜磁場の時間積分量に応じた大きさの位相ズレが発生することになる。この位相ズレは、TRごとに累積してゆき、位相ズレの大きさがπ(180°)となったタイミングで、正負反対の位相の信号が打ち消し合う結果、MR信号が無信号となる。すなわち、MR信号の位相ズレが2π、4π、6π・・・2nπ(nは自然数)となるごとに、それぞれの間で1回ずつMR信号が無信号となる。この結果、収集される画像内で、黒い縞状のスピンラベルが生成されるようになる。これは、通常のバランスSSFPシーケンスに見られるダークバンドアーチファクトと同等なものであるが、これを意図的にコントロールすることによりスピンラベルとして利用する。
【0043】
なお、スピンラベリング用傾斜磁場を印加するタイミングは、必ずしも、
図2に示されるものに限られない。例えば、リードアウト方向のディフェーズ用傾斜磁場パルス204からリワインド用傾斜磁場パルス209までの期間の全体にわたって、スピンラベリング用傾斜磁場211を印加するようにしてもよい。同様に、フェーズエンコード方向のフェーズエンコード用傾斜磁場パルス205からリワインド用傾斜磁場パルス210までの期間の全体にわたって、スピンラベリング用傾斜磁場212を印加するようにしてもよい。
【0044】
図3は、本実施形態に係るスピンラベリング用傾斜磁場によって生成されるスピンラベルの一例を示す図である。ここで、
図3は、被検体の頭部を撮像した画像を示しており、被検体の脳内の側脳室301や第三脳室302、中脳水道303、第四脳室304等が撮像範囲に含まれている。
【0045】
例えば、
図3に示すように、スピンラベリング用傾斜磁場によって生成されるスピンラベルは、画像内で、複数の交差しない黒い線で構成された縞状に生成される。ここで、例えば、
図2に示したように、リードアウト方向及びフェーズエンコード方向それぞれに沿ってスピンラベリング用傾斜磁場が印加された場合には、画像の面内で斜めの方向に縞状のスピンラベルが生成されることになる。なお、スピンラベルの形状は、原理的には平行な縞になるはずであるが、実際は磁場の不均一等の影響によって完全な平行にはならず、波状の縞になる。
【0046】
そして、本実施形態では、処理回路15の画像生成機能15aが、シーケンス実行機能14aによって連続的に収集されたMR信号データに基づいて、時系列に連続する複数の画像を生成する。例えば、画像生成機能15aは、1つの画像を生成するために必要なデータが収集されるごとに、当該データに基づいて画像を生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像を時系列順に連続してディスプレイ112に表示する。
【0047】
このように、画像生成機能15aによって時系列に連続する画像が生成された場合に、上述した縞状のスピンラベルは、各画像に含まれる液体や器官の動きに応じて形状が変化する。
【0048】
図4は、本実施形態に係るスピンラベリング用傾斜磁場によって生成されるスピンラベルの変化の一例を示す図である。ここで、
図4は、
図3に示した画像において一点鎖線で示した範囲におけるスピンラベルの変化を示している。
【0049】
例えば、撮像中に、被検体の脳内でCSFが中脳水道303を通って第四脳室304から第三脳室302へ流れた場合には、
図4の(a)~(b)に示すように、時系列に連続する脳の画像において、スピンラベルにおける第三脳室302、中脳水道303及び第四脳室304の上に生成された部分が、それぞれCSFが流れる方向へ突出するように変形する。
【0050】
このとき、例えば、CSFの流れがある一定の速度より遅い定常流となっている場合には、スピンラベルの突出した部分が、偏移した状態で固定されて表示される。また、例えば、CSFの流れが突発的に速くなった場合には、スピンラベルの突出した部分が、他の部分から切り離されて、CSFが流れる方向に飛び出すように表示される場合がある。
【0051】
図5は、本実施形態に係るスピンラベリング用傾斜磁場によって生成されるスピンラベルの変化の他の一例を示す図である。ここで、
図5は、被検体の腕を撮像した画像を示しており、被検体の前腕部が撮像範囲に含まれている。
【0052】
例えば、撮像中に、被検体の前腕部に含まれる指を動かす骨格筋401が収縮した場合には、
図5の(a)及び(b)に示すように、時系列に連続する前腕部の画像において、スピンラベルにおける骨格筋401の上に生成された部分が、指の動きに連動して、骨格筋401が収縮する方向へ突出するように変形する(
図5の(b)において矢印で示す箇所を参照)。
【0053】
このように、本実施形態では、上述した縞状のスピンラベルによって、CSFや骨格筋の動きを可視化することができる。これにより、操作者が、縞状のスピンラベルの移動の様子から、観察対象となる液体や器官の動きを把握できるようになる。ここで、上述したスピンラベルは、時間が経過しても消失することがないので、操作者が観察対象を連続的に観察することができる。また、上述したスピンラベルによれば、画像の面内の異なる位置の動きや同期性、同調性を連続的に可視化することができる。
【0054】
なお、ここでは、CSF及び骨格筋の例を説明したが、上述したスピンラベルの適用例は、これらに限られない。
【0055】
例えば、上述したスピンラベルは、水や血液、尿、胆汁、膵液、リンパ液、内耳リンパ液、唾液、眼房液等の他の液体の流れを可視化する場合にも同様に適用することができる。例えば、水に適用した場合の例として、浮腫内の水の流れの把握や、流入出の箇所の特定等を行えるようになる。また、例えば、血液に適用した場合の例として、大動脈解離の真腔及び偽腔の把握や、解離箇所の把握等を行えるようになる。また、例えば、尿に適用した場合の例として、腎臓、尿路又は膀胱内の尿の動きを把握できるようになる。また、例えば、胆汁や膵液の分布を把握できるようになる。また、例えば、腹水や胸水など病的状態で生じる液体の動きを把握できるようになる。
【0056】
また、例えば、上述したスピンラベルは、前腕部以外の筋肉や臓器、脳の実質部、腸、眼球等の他の器官の動きを可視化する場合にも同様に適用することができる。例えば、眼球を観察対象とした場合に、眼球の不随意な動きも含めて、動きの検出や動きの角度等の定量化を行うことができるようになる。
【0057】
そして、本実施形態では、さらに、処理回路16の撮像制御機能16aが、スピンラベリング用傾斜磁場及び励起用RFパルスの少なくとも一方を変更することで、縞状に生成されるスピンラベルの状態を変更する。
【0058】
具体的には、撮像制御機能16aは、リードアウト方向とフェーズエンコード方向との間のスピンラベリング用傾斜磁場の配分を変更することで、スピンラベルの方向を制御する。
【0059】
例えば、
図3~5に例示したような2次元の画像において、左右方向がリードアウト方向に対応し、上下方向がフェーズエンコード方向に対応していたとする。その場合に、例えば、
図2に示したように、リードアウト方向及びフェーズエンコード方向それぞれに沿ってスピンラベリング用傾斜磁場が印加されていた場合には、画像の面内で、上下方向及び左右方向に対して斜めの方向に縞状のスピンラベルが生成されることになる。
【0060】
ここで、例えば、撮像制御機能16aが、リードアウト方向のスピンラベリング用傾斜磁場の配分をフェーズエンコード方向のスピンラベリング用傾斜磁場より大きくした場合には、縞状のダークバンドはフェーズエンコード方向に対してより平行に近づくように生成される、すなわち、スピンラベルの方向は、上下方向に近い角度に傾けられる。そして、例えば、撮像制御機能16aが、フェーズエンコード方向のスピンラベリング用傾斜磁場の配分をゼロにし、リードアウト方向のスピンラベリング用傾斜磁場の配分をゼロ以外にした場合には、縞状のダークバンドはフェーズエンコード方向と平行をなすように生成される、すなわち、スピンラベルの方向は上下方向になる。
【0061】
一方、撮像制御機能16aが、フェーズエンコード方向のスピンラベリング用傾斜磁場の配分をリードアウト方向のスピンラベリング用傾斜磁場より大きくした場合には、スピンラベルの方向は、左右方向に近い角度に傾けられる。そして、例えば、撮像制御機能16aが、リードアウト方向のスピンラベリング用傾斜磁場の配分をゼロにし、フェーズエンコード方向のスピンラベリング用傾斜磁場の配分をゼロ以外にした場合には、スピンラベルの方向は左右方向になる。
【0062】
また、撮像制御機能16aは、スピンラベリング用傾斜磁場のTR内の時間積分量を変更することで、スピンラベルのピッチを制御する。例えば、撮像制御機能16aは、スピンラベリング用傾斜磁場のTR内の時間積分量を大きくすることで、スピンラベルのピッチを細かくする(間隔を狭くする)。また、例えば、撮像制御機能16aは、スピンラベリング用傾斜磁場のTR内の時間積分量を小さくすることで、スピンラベルのピッチを粗くする(間隔を広くする)。
【0063】
また、撮像制御機能16aは、励起用RFパルスの送信位相を変更することで、スピンラベルの位置を制御する。例えば、撮像制御機能16aは、連続する励起用RFパルスの送信位相を一定量インクリメントすること(位相サイクリング)で、スピンラベルを平行移動させる。
【0064】
図6は、第1実施形態に係るMRI装置100によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0065】
例えば、
図6に示すように、本実施形態では、撮像制御機能16aが、TR内でスピンラベリング用傾斜磁場を印加するバランスSSFPシーケンスを設定し(ステップS101)、操作者から撮像を開始する指示を受け付けた場合に(ステップS102,Yes)、設定したバランスSSFPシーケンスを表すシーケンス実行データを処理回路14に送信することで、撮像を開始する。
【0066】
続いて、シーケンス実行機能14aが、送信されたシーケンス実行データに基づいて、撮像制御機能16aによって設定されたバランスSSFPシーケンスを実行する(ステップS103)。そして、画像生成機能15aが、バランスSSFPシーケンスによって収集されたMR信号に基づいて画像を生成し(ステップS104)、生成した画像をディスプレイ11に表示する(ステップS105)。
【0067】
ここで、撮像制御機能16aが、操作者からスピンラベルの状態を変更する指示を受け付けた場合には(ステップS106,Yes)、受け付けた指示に応じて、スピンラベリング用傾斜磁場及び励起用RFパルスの少なくとも一方を変更する。
【0068】
具体的には、撮像制御機能16aは、スピンラベルの方向を変更する指示を受け付けた場合には(ステップS107,Yes)、受け付けた指示に応じて、リードアウト方向とフェーズエンコード方向との間のスピンラベリング用傾斜磁場の配分を変更する(ステップS108)。
【0069】
また、撮像制御機能16aは、スピンラベルのピッチを変更する指示を受け付けた場合には(ステップS109,Yes)、受け付けた指示に応じて、スピンラベリング用傾斜磁場のTR内の時間積分量を変更する(ステップS110)。
【0070】
また、撮像制御機能16aは、スピンラベルの位置を変更する指示を受け付けた場合には(ステップS111,Yes)、受け付けた指示に応じて、励起用RFパルスの送信位相を変更する(ステップS112)。
【0071】
その後、撮像制御機能16aは、操作者から撮像を継続する指示を受け付けた場合に(ステップS113,Yes)、変更後のスピンラベルの条件で、撮像を継続する(ステップS103へ戻る)。一方、操作者から撮像を継続しない(終了する)指示を受け付けた場合には(ステップS113,No)、撮像制御機能16aは、撮像を終了する。
【0072】
ここで、上述したステップS101、S102、S106~S113の処理は、例えば、処理回路16が、撮像制御機能16aに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103の処理は、例えば、処理回路14が、シーケンス実行機能14aに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS104及びS105の処理は、例えば、処理回路15が、画像生成機能15aに対応する所定のプログラムを記憶回路12から読み出して実行することにより実現される。
【0073】
このように、本実施形態では、撮像制御機能16aが、画像の連続収集の途中で、スピンラベルを変化させる。
【0074】
なお、ここでは、撮像制御機能16aが、1つの画像の撮像と次の画像の撮像との間でラベルを変更する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、撮像制御機能16aは、1つのTRのデータ収集と次のTRのデータ収集との間で、ラベルを変更してもよい。また、撮像制御機能16aは、ラベルを変更するタイミングの前後に、バランスSSFPシーケンスの中断又は開始用のシーケンスを挿入して実行してもよい。ここでいう中断又は開始用のシーケンスは、例えば、フリップバック用のRFパルスを印加するシーケンスや、スタートアップ用のRFパルスを印加するシーケンス等である。
【0075】
また、ここでは、撮像制御機能16aが、操作者からの指示に基づいて、スピンラベルの状態を変更する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、撮像制御機能16aは、被検体から取得された生体信号、又は、時系列に連続して収集された画像を解析することで、被検体の周期的な状態変化(動き)を検出し、検出した状態変化(動き)に基づいて、スピンラベルの状態を変更してもよい。例えば、撮像制御機能16aは、心拍の周期を示す心電信号や、脈拍の周期を示す脈波信号、呼吸の周期を示す呼吸信号等を入力信号として用いて、被検体の周期的な状態変化(動き)を検出する。また、例えば、撮像制御機能16aは、連続して収集された各画像を比較することによって、画像間の変化を検出し、検出した変化に基づいて、被検体の周期的な状態変化(動き)を検出する。例えば、被検体の呼吸周期に基づいてスピンラベルの状態を変更することで、通常呼吸から強制深呼吸に切り替えた場合の指の動きの変化を連続的に観察することができる。スピンラベルの状態を変更する代表例としては、励起用RFパルスの送信位相のインクリメント量を周期的に変化させたり、スピンラベリング用傾斜磁場のTR内の時間積分量を周期的に変化させることが挙げられる。
【0076】
上述したように、本実施形態によれば、スピンラベルを生成するためのスピンラベリング用傾斜磁場を各繰り返し時間内でさらに印加しながらバランスSSFPシーケンスを実行することで、縞状のスピンラベルを同時かつ持続的に生成することができ、かつ、ラベリングされた画像を連続収集することができる。これにより、画像の面内の異なる位置での動きを同時に可視化できる等の効果を得ることができる。したがって、本実施形態によれば、観察対象の連続的な動きや不随意な動きをより適切に可視化することができる。
【0077】
なお、上述した実施形態では、2次元の画像を収集する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、上述したスピンラベリング用傾斜磁場を用いたラベリングの方法は、3次元の画像(ボリュームデータ)をバランスSSFPシーケンスで収集する場合にも、同様に適用することができる。
【0078】
また、上述した実施形態では、本明細書における実行部及び制御部を、それぞれ、処理回路の実行機能及び制御機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における実行部及び制御部は、実施形態で述べた実行機能及び制御機能によって実現する他にも、ハードウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0079】
また、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合は、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態のプロセッサは、単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0080】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0081】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、観察対象の連続的な動きや不随意な動きをより適切に可視化することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
100 MRI装置
14 処理回路
14a シーケンス実行機能
16 処理回路
16a 撮像制御機能