(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-27
(45)【発行日】2023-03-07
(54)【発明の名称】茶風味アルコール飲料ベース、希釈型アルコール飲料、および茶風味アルコール飲料のアルコール刺激感マスキング方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20230228BHJP
【FI】
C12G3/04
(21)【出願番号】P 2018247427
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】内橋 康充
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-147775(JP,A)
【文献】特開2002-209519(JP,A)
【文献】特開2017-216937(JP,A)
【文献】特開2014-039478(JP,A)
【文献】特開2016-093182(JP,A)
【文献】特開2016-131523(JP,A)
【文献】特開平08-224075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/00-3/08
A23F 3/00-3/42
A23L 2/00-35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出物と、0.5~
4.0g/Lのアラニンと、を含有し、
アルコール濃度が、20~50vol/vol%であり、
アルコール濃度(vol/vol%)に対するアラニン濃度(g/L)の比率が、0.01~0.30であることを特徴とする、無殺菌の茶風味アルコール飲料ベース。
【請求項2】
前記茶抽出物は、緑茶抽出物またはウーロン茶抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の茶風味アルコール飲料ベース。
【請求項3】
前記茶抽出物を、1~100g/Lの濃度で含有することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の茶風味アルコール飲料ベース。
【請求項4】
請求項1から
3の何れか1項に記載の茶風味アルコール飲料ベースと、希釈液を含んでなることを特徴とする、希釈型アルコール飲料。
【請求項5】
希釈倍率が、2~15倍であることを特徴とする、請求項
4に記載の希釈型アルコール飲料。
【請求項6】
茶抽出物とアルコールとを含有する茶風味アルコール飲料
ベースに、
アラニンを
0.5~4.0g/Lの濃度で添加
し、
アルコール濃度を20~50vol/vol%、
アルコール濃度(vol/vol%)に対するアラニン濃度(g/L)の比率を0.01~0.30に調整し、
殺菌工程がない、茶風味アルコール飲料のアルコール刺激感マスキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、茶の風味を有するアルコール飲料に関する。より具体的には、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできる茶風味アルコール飲料ベース、および茶風味アルコール飲料ベースを希釈して得られる希釈型アルコール飲料に関する。また、本発明は、茶風味アルコール飲料のアルコール刺激感のマスキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な食事との相性の良さなどを理由に、茶の風味を有するアルコール飲料(以下、「茶風味アルコール飲料」ともいう。)の需要が高まっている。このような状況下で、茶風味アルコール飲料の風味、および香味などをより良くする試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、消費者が茶特有の苦渋味を感じられるとともにアルコール感もしっかりと感じることのできる茶系アルコール飲料を提供することを目的とした発明が開示されている。そして、特許文献1には、茶系浸漬酒を0.03v/v%以上含有する茶系アルコール飲料が開示されている。
【0004】
これ以外にも、アルコール濃度が高くリキャップ可能なリキュールに茶風味を加えるとともに、糖などの甘味成分が加えられた茶風味リキュール、あるいは、茶をアルコール含有物に浸漬し蒸留した茶風味スピリッツなども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、茶系浸漬酒を含有させたのみの茶系アルコール飲料では、アルコール感が強すぎて、消費者が飲みにくさを感じる可能性がある。また、糖などが加えられた茶風味リキュールでは、アルコールによる刺激感は糖などによってマスキングされるが、糖由来の後味が残り、キレが悪くなってしまう。また、茶をアルコール含有物に浸漬し蒸留した茶風味スピリッツでは、蒸留により高分子の多糖、タンパク質、およびアミノ酸などの不揮発性成分が除去されるため、茶由来の自然な甘さやコクが低減してしまう。
【0007】
そこで、本発明では、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできる茶風味アルコール飲料ベースおよび希釈型アルコール飲料を提供することを目的とする。また、本発明では、茶風味アルコール飲料においてアルコールの刺激感をマスキングする方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、茶抽出物を含むアルコール飲料に、アミノ酸の一種であるアラニンを添加することで、アルコールの刺激感をマスキングすることができるとともに、茶らしい自然な甘味が付加されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の茶風味アルコール飲料ベースおよび希釈型アルコール飲料、並びに茶風味アルコール飲料のアルコール刺激感マスキング方法に関する。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の茶風味アルコール飲料ベースは、茶抽出物と、0.5~8.0g/Lのアラニンとを含有することを特徴とする。
この茶風味アルコール飲料ベースによれば、アラニンが添加されることで、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできるアルコール飲料を得ることができる。すなわち、この茶風味アルコール飲料ベースを希釈して得られるアルコール飲料は、アルコールの刺激感は抑制されていながら、良好な茶の風味が付与されている。
【0010】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベースの一実施態様によれば、茶抽出物は、緑茶抽出物またはウーロン茶抽出物であるという特徴を有する。
この特徴によれば、茶風味アルコール飲料ベースに緑茶抽出物またはウーロン茶抽出物を含有させることで、それぞれの茶の風味の特徴を生かしたアルコール飲料ベースを得ることができる。
【0011】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベースの一実施態様では、アルコール濃度が、15vol/vol%以上であるという特徴を有する。
この特徴によれば、茶風味アルコール飲料ベース中での微生物の増殖を抑えることができる。
【0012】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベースの一実施態様では、アルコール濃度が、20~50vol/vol%であってもよい。
この特徴によれば、茶風味アルコール飲料ベース中での微生物の増殖をより確実に抑えることができる。そのため、茶風味アルコール飲料ベースの含有容器を一旦開封した場合にも、長期の保存が可能となる。また、茶風味アルコール飲料ベース中のアルコール濃度が上記の範囲内であることにより、希釈液を用いて茶風味アルコール飲料ベースを希釈し、所望のアルコール濃度の希釈型アルコール飲料を作製することができる。
【0013】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベースの一実施態様では、茶抽出物を、1~100g/Lの濃度で含有するという特徴を有する。
この特徴によれば、得られる茶風味アルコール飲料ベースおよびそれを希釈した希釈型アルコール飲料に、適度な茶の風味を付与することができる。
【0014】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベースの一実施態様によれば、アルコール濃度(vol/vol%)に対するアラニン濃度(g/L)の比率が、0.01~0.30であるという特徴を有する。
この特徴によれば、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じるという本発明の効果をより一層発揮することができる。
【0015】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベースの一実施態様によれば、無殺菌であるという特徴を有する。
この特徴によれば、殺菌工程を経ることなく、茶風味アルコール飲料ベースを製造することができる。そのため、製造工程の簡略化が可能となる。
【0016】
また、上記課題を解決するための本発明の希釈型アルコール飲料は、本発明の一実施態様にかかる茶風味アルコール飲料ベースと、希釈液を含んでなることを特徴とする。
本発明の希釈型アルコール飲料には、アラニンが添加されている茶風味アルコール飲料ベースが含まれている。そのため、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできる希釈型アルコール飲料が得られる。
【0017】
また、本発明の希釈型アルコール飲料の一実施態様によれば、希釈倍率が、2~15倍であるという特徴を有する。
この特徴によれば、例えば、アルコール濃度が40vol/vol%程度の茶風味アルコール飲料ベースを用いて、アルコール濃度が約3~約20vol/vol%の希釈型アルコール飲料を作製することができる。
【0018】
上記課題を解決するための本発明の茶風味アルコール飲料のアルコール刺激感マスキング方法は、茶抽出物とアルコールとを含有する茶風味アルコール飲料に、アラニンを0.03~8.0g/Lの濃度で添加することを特徴とする。
この茶風味アルコール飲料のアルコール刺激感マスキング方法によれば、茶風味アルコール飲料に所定濃度のアラニンを添加することで、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできるアルコール飲料を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできる茶風味アルコール飲料ベースおよび希釈型アルコール飲料を提供することができる。また、本発明のアルコール刺激感マスキング方法によれば、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできる茶風味アルコール飲料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[茶風味アルコール飲料ベース]
本発明の茶風味アルコール飲料ベースは、茶抽出物と、0.5~8.0g/Lのアラニンとを含有する。
【0021】
本発明の茶風味アルコール飲料ベースは、例えば、水、湯、氷、炭酸水、ソフトドリンク、果汁などの希釈液を用いて希釈され、飲用に供される。このような茶風味アルコール飲料ベースは、例えば、飲食店、酒類卸業者、一般消費者によって購入される。そして、購入者自身が、希釈液を用いて茶風味アルコール飲料ベースを希釈し、所望のアルコール濃度に調製して飲用に供することができる。
【0022】
(アルコール成分について)
本発明にかかる茶風味アルコール飲料ベースには、アルコール成分が含まれている。茶風味アルコール飲料ベース中のアルコール成分の濃度は、15vol/vol%以上であることが好ましい。茶風味アルコール飲料ベース中のアルコール成分の濃度が15vol/vol%以上であることにより、茶風味アルコール飲料ベース中での微生物の増殖を抑えることができる。そのため、長期保存を可能とすることができる。
【0023】
また、茶風味アルコール飲料ベース中のアルコール成分の濃度は、20~50vol/vol%の範囲内であることがより好ましい。これによれば、茶風味アルコール飲料ベース中での微生物の増殖をより確実に抑えることができる。そのため、茶風味アルコール飲料ベースの含有容器を一旦開封した場合にも、長期の保存が可能となる。また、茶風味アルコール飲料ベース中のアルコール成分の濃度が20~50vol/vol%の範囲内であることにより、例えば、水、湯、氷、炭酸水、ソフトドリンク、果汁などの希釈液を用いて茶風味アルコール飲料ベースを希釈し、所望のアルコール濃度の希釈型アルコール飲料を作製することができる。
【0024】
本発明の茶風味アルコール飲料ベースを製造する際には、アルコール成分は、原料用アルコール、蒸留酒などの形態で添加することができる。蒸留酒としては、例えば、ウィスキー、焼酎、スピリッツ、ブランデー、リキュールなどが挙げられるが、これに限定はされない。
【0025】
(茶抽出物について)
茶抽出物としては、例えば、緑茶(日本茶、碾茶)、中国茶(例えば、ウーロン茶、プーアル茶、ジャスミン茶など)、紅茶、穀物茶などの各種茶の抽出物が使用される。茶抽出物を得るために使用される各種茶葉または穀物の品種、産地、摘採時期、摘採方法、栽培方法は限定されない。本発明にかかる茶風味アルコール飲料ベースには、これら各種茶の抽出物の何れかを単独で用いてもよいし、複数種類の茶抽出物を混合して用いてもよい。
【0026】
これらの各種茶の抽出物の中でも、アルコールとの相性の良さを考慮すると、本発明の茶風味アルコール飲料ベースには、緑茶またはウーロン茶の抽出物が含まれることが好ましい。茶風味アルコール飲料ベースに緑茶抽出物またはウーロン茶抽出物をそれぞれ単独で含有させることで、それぞれの茶の風味の特徴を生かしたアルコール飲料ベースを得ることができる。
【0027】
本発明の茶風味アルコール飲料ベースにおける茶抽出物の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1~100g/Lである。下限値として、より好ましくは3g/L以上であり、更に好ましくは5g/L以上であり、特に好ましくは7g/L以上である。上限値として、より好ましくは80g/L以下であり、更に好ましくは50g/L以下であり、特に好ましくは30g/L以下である。茶抽出物の濃度を上記範囲とすることにより、茶風味アルコール飲料ベース及びそれを希釈した希釈型アルコール飲料に、適度な茶の風味を付与することができる。
ここで、茶抽出物の濃度とは、茶由来のエキス純分(固形分)の含有量を意味するものである。茶抽出物の濃度は、京都電子工業株式会社製密度/比重計DA-520によって測定することができる。
【0028】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベースは、茶の風味を特徴づける各種成分として、例えば、テアニン、タンニンなどを含有することが好ましい。
テアニンの濃度は、好ましくは30mg/L~1500mg/Lであり、下限値としては、より好ましくは50mg/L以上であり、上限値としては、より好ましくは1400mg/L以下である。
タンニンの濃度は、好ましくは20g/L~45g/Lであり、下限値としては、より好ましくは25g/L以上であり、上限値としては、より好ましくは40g/L以下である。
【0029】
本発明の茶風味アルコール飲料ベースを製造する際には、茶抽出物は、どのような形態のものを使用してもよい。例えば、粉末、顆粒、タブレット(錠剤)、濃縮液などの形態で添加することができる。
【0030】
(アラニンについて)
アラニンは、アミノ酸の一種であり、CH3CH(COOH)NH2の構造式で規定される。すなわち、アラニンは、アミノ酸の構造の側鎖がメチル基(-CH3)になった構造を有する。アラニンは、その立体構造の違いによって、D体およびL体に分類される。また、アラニンは、生体内でのエネルギー供給において重要な役割を担い、アルコール代謝を助けるなどの生理機能を有していることが知られている。
【0031】
本発明の茶風味アルコール飲料ベースには、アラニンが0.5~8.0g/Lの範囲内の濃度で含まれている。本発明の茶風味アルコール飲料ベース中に、アラニンを添加することで、その風味を調整することができる。すなわち、茶風味アルコール飲料ベース中に、上記の濃度でアラニンを含有させることで、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできる濃縮型(ベースタイプ)および希釈型の茶風味アルコール飲料を提供することができる。
【0032】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベース中に含まれる茶抽出物が緑茶抽出物である場合には、アラニン濃度は、2.0~8.0g/Lの範囲内の濃度で含まれていることが好ましい。アラニン濃度をこのような範囲とすることで、アルコールの刺激感をより適切に抑えつつ、緑茶らしさをより感じることのできる濃縮型(ベースタイプ)および希釈型の茶風味アルコール飲料を提供することができる。
【0033】
なお、本発明の茶風味アルコール飲料ベース中に含まれる茶抽出物が緑茶抽出物である場合には、緑茶抽出物の濃度(g/L)に対するアラニン濃度(g/L)の比率は、0.2~0.8の範囲内とすることが好ましい。ここで、緑茶抽出物に含まれる各種成分の含有量は、上述した通りである。これによれば、得られる濃縮型(ベースタイプ)および希釈型の茶風味アルコール飲料に、緑茶らしさをより適度に付与することができる。
【0034】
また、本発明の茶風味アルコール飲料ベース中に含まれる茶抽出物がウーロン茶抽出物である場合には、アラニン濃度は、1.0~4.0g/Lの範囲内の濃度で含まれていることが好ましい。アラニン濃度をこのような範囲とすることで、アルコールの刺激感をより適切に抑えつつ、ウーロン茶らしさをより感じることのできる濃縮型(ベースタイプ)および希釈型の茶風味アルコール飲料を提供することができる。
【0035】
なお、本発明の茶風味アルコール飲料ベース中に含まれる茶抽出物がウーロン茶抽出物である場合には、ウーロン茶抽出物の濃度(g/L)に対するアラニン濃度(g/L)の比率は、0.1~0.4の範囲内とすることが好ましい。ここで、ウーロン茶抽出物に含まれる各種成分の含有量は、上述した通りである。これによれば、得られる濃縮型(ベースタイプ)および希釈型の茶風味アルコール飲料に、ウーロン茶らしさをより適度に付与することができる。
【0036】
本発明の茶風味アルコール飲料ベースを製造する際には、アラニンは、粉末、顆粒、タブレット(錠剤)などの形態で添加することができる。
【0037】
(アルコール濃度に対するアラニン濃度の比率について)
続いて、本発明の茶風味アルコール飲料ベースに含まれるアルコール濃度(vol/vol%)に対するアラニン濃度(g/L)の比率について説明する。このアルコール濃度(vol/vol%)に対するアラニン濃度(g/L)の比率は、0.01~0.3の範囲内であることが好ましい。下限値として、より好ましくは0.02以上である。また、上限値として、より好ましくは0.2以下であり、更に好ましくは0.15以下であり、特に好ましくは0.1以下である。
【0038】
アルコール濃度に対するアラニン濃度の比率を、0.01~0.3の範囲内とすることで、アラニンを添加しない場合と比較してアルコールの刺激感を感じにくくすることができる。また、アルコール濃度に対するアラニン濃度の比率を、0.02~0.1の範囲内とすることで、アルコールの刺激感を適度に抑えつつも、バランスの良いアルコール感を付与することができる。
【0039】
(その他の含有成分について)
本発明の茶風味アルコール飲料ベースには、上記以外の従来の公知のいずれの成分を加えてもよい。このような成分としては、例えば、香料、増粘剤、甘味料、乳化剤、機能性成分、保存料、安定剤、酸化防止剤、ビタミン類、ミネラル分、pH調整剤(重曹など)などが挙げられる。これらの成分の添加量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
【0040】
(茶風味アルコール飲料の形態について)
本発明の茶風味アルコール飲料ベースは、個々に容器詰めされた形態のものであってもよいし、個包装されていない形態(例えば、タンクなどに貯蔵された形態)であってもよい。容器は、従来公知のガラス瓶、金属缶、紙、プラスチック等が用いられ特に限定されない。
【0041】
また、容器詰めされた茶風味アルコール飲料ベースは、殺菌処理が施されることなくそのまま充填されていてもよく、必要に応じて殺菌処理が施されていてもよい。例えば、茶風味アルコール飲料ベース中に含まれるアルコール成分の濃度が高い場合(例えば、15vol/vol%以上の場合)には、殺菌工程を経ることなく無殺菌の状態で容器詰めされてもよい。一方、茶風味アルコール飲料ベース中に含まれるアルコール成分の濃度が比較的低い場合(例えば、1~15vol/vol%未満の場合)には、従来公知の加熱工程を施した後に容器詰めすることが好ましい。
【0042】
[希釈型アルコール飲料]
本発明のもう一つの局面にかかる希釈型アルコール飲料は、上述の本発明の茶風味アルコール飲料ベースを、希釈液で希釈して得られるものである。本発明の希釈型アルコール飲料に含まれる希釈液は、例えば、水、湯、氷、炭酸水、ソフトドリンク、果汁などである。
【0043】
本発明の希釈型アルコール飲料中のアルコール成分の濃度は、飲用者の好みに応じて適宜変更することができる。本発明の希釈型アルコール飲料中のアルコール成分の濃度は、例えば、0.5~30vol/vol%の範囲内とすることができる。下限値として、より好ましくは1vol/vol%以上であり、更に好ましくは2vol/vol%以上であり、特に好ましくは4vol/vol%以上である。上限値として、より好ましくは20vol/vol%以下であり、更に好ましくは15vol/vol%以下であり、特に好ましくは10vol/vol%以下である。
【0044】
本発明の希釈型アルコール飲料には、本発明の茶風味アルコール飲料ベースと同様に、茶抽出物およびアラニンが含まれている。これにより、希釈型アルコール飲料の飲用者は、アルコールの刺激感をあまり感じることなく、茶の風味をより感じることができる。
【0045】
本発明の希釈型アルコール飲料中のアラニンの濃度は、好ましくは0.03~4g/Lである。下限値として、より好ましくは0.1g/L以上であり、上限値として、より好ましくは1.6g/Lである。
また、茶抽出物として緑茶抽出物を含有する場合には、希釈型アルコール飲料中のアラニンの濃度は、好ましくは0.1~4g/Lである。下限値として、より好ましくは0.4g/L以上であり、上限値として、より好ましくは1.6g/Lである
茶抽出物としてウーロン茶抽出物を含有する場合には、希釈型アルコール飲料中のアラニンの濃度は、好ましくは0.07~2g/Lである。下限値として、より好ましくは0.2g/L以上であり、上限値として、より好ましくは0.8g/Lである
【0046】
また、希釈型茶風味アルコール飲料においては、テアニン濃度は、好ましくは2mg/L~750mg/Lである。下限値としては、より好ましくは6mg/L以上であり、更に好ましくは10mg/L以上である。上限値としては、より好ましくは300mg/L以下であり、更に好ましくは280mg/L以下である。
希釈型茶風味アルコール飲料においては、タンニンの濃度は、好ましくは1.3g/L~22.5g/Lである。下限値としては、より好ましくは4g/L以上であり、更に好ましくは5g/L以上である。上限値としては、より好ましくは9g/L以下であり、更に好ましくは8g/L以下である。
【0047】
なお、本発明にかかる茶風味アルコール飲料ベースを希釈して希釈型アルコール飲料を作製する場合、その希釈倍率は、茶風味アルコール飲料ベース中のアルコール濃度および所望とする飲料中のアルコール濃度を考慮して適宜決めることができる。例えば、茶風味アルコール飲料ベースのアルコール濃度が、15vol/vol%以上の場合には、希釈倍率は、2~15倍の範囲内とすることが好ましい。また、茶風味アルコール飲料ベースのアルコール濃度が、20~50vol/vol%の場合には、希釈倍率は、3~10倍の範囲内とすることが好ましい。
【0048】
[アルコール刺激感マスキング方法]
続いて、本発明のもう一つの局面にかかるアルコール刺激感マスキング方法について説明する。本発明のアルコール刺激感マスキング方法は、茶抽出物とアルコールとを含有する茶風味アルコール飲料に、アラニンを0.03~8.0g/Lの濃度で添加することによって、茶風味アルコール飲料におけるアルコール刺激感をマスキングするというものである。なお、ここで言う茶風味アルコール飲料には、茶風味アルコール飲料ベース(濃縮液)および希釈型アルコール飲料の両方が含まれる。
【0049】
茶風味アルコール飲料に含まれる茶抽出物およびアルコール成分については、上述の本発明の茶風味アルコール飲料ベースおよび希釈型アルコール飲料の説明で用いたものを同様に使用することができる。また、本方法において使用されるアラニンについても、上述の本発明の茶風味アルコール飲料ベースおよび希釈型アルコール飲料の説明で用いたものを同様に使用することができる。
【0050】
また、本方法では、添加されるアラニン濃度(g/L)のアルコール濃度(vol/vol%)に対する比率を、0.01~0.3の範囲内であることが好ましい。下限値として、より好ましくは0.02以上である。また、上限値として、より好ましくは0.2以下であり、更に好ましくは0.15以下であり、特に好ましくは0.1以下である。
【0051】
アルコール濃度に対するアラニン濃度の比率を、0.01~0.3の範囲内とすることで、アラニンを添加しない場合と比較してアルコールの刺激感を感じにくくすることができる。また、アルコール濃度に対するアラニン濃度の比率を、0.02~0.1の範囲内とすることで、アルコールの刺激感を適度に抑えつつも、バランスの良いアルコール感を付与することができる。
【0052】
なお、本方法に使用される茶抽出物が緑茶抽出物である場合には、緑茶抽出物の濃度(g/L)に対するアラニン濃度(g/L)の比率は、0.2~0.8の範囲内とすることが好ましい。ここで、緑茶抽出物に含まれる各種成分の含有量は、上述した通りである。これによれば、得られる茶風味アルコール飲料に、緑茶らしさをより適度に付与することができる。
【0053】
なお、本方法に使用される茶抽出物がウーロン茶抽出物である場合には、ウーロン茶抽出物の濃度(g/L)に対するアラニン濃度(g/L)の比率は、0.1~0.4の範囲内とすることが好ましい。ここで、ウーロン茶抽出物に含まれる各種成分の含有量は、上述した通りである。これによれば、得られる茶風味アルコール飲料に、ウーロン茶らしさをより適度に付与することができる。
【実施例】
【0054】
[実施例1]
実施例1では、先ず、ウーロン茶抽出物を用いて、含有アラニン濃度を異ならせた7種類の茶風味アルコール飲料ベースを作製した。これらの茶風味アルコール飲料ベースを、希釈液(水)を用いて5倍に希釈し、含有アラニン濃度が異なる7種類の茶風味アルコール飲料を調製した。そして、7名のパネリストによる官能検査を実施した。
【0055】
(ウーロン茶風味のアルコール飲料の調製)
ウーロン茶風味のアルコール飲料ベースの原料としては、以下のものを使用した。
・ウーロンチャエキストラクト G-6884(高砂香料工業社製)
・DL-アラニン(武蔵野化学研究所社製)
【0056】
上記の各原料を用いて、以下の表1に示す処方のウーロン茶風味のアルコール飲料ベースを調製し、試験区1~7とした。そして、表1に示す処方の各アルコール飲料ベースを、希釈液(水)を用いて5倍に希釈し、官能評価用の試料とした。
【0057】
【0058】
(官能評価)
上記の試験区1~7の各アルコール飲料について、7名のパネリストによる官能評価を実施した。具体的には、各アルコール飲料の「アルコールによる刺激感」および「ウーロン茶感」について評価した。「アルコールによる刺激感」については、下記の表2に示す5段階の評価基準で行った。「ウーロン茶感」については、下記の表3に示す5段階の評価基準で行った。なお、評価点の採点基準は、試験区1~7の各アルコール飲料を飲み比べることにより、各アルコール飲料に対して評価点1~5を振った。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
以上の結果より、アルコール飲料ベースにアラニンを添加することで、アルコールの刺激感を低減させながら、ウーロン茶感をより感じることのできるアルコール飲料が得られることが確認された。特に、アルコール飲料ベース中のアラニンの含有量を0.5g/L以上とすることで、アルコールの刺激感をより低減させることができることが確認された。また、アルコール飲料ベース中のアラニンの含有量を8.0g/L以下とすることで、良好なウーロン茶感も得られることが確認された。一方、アルコール飲料ベース中のアラニンの含有量を8.0g/L超とすると、ウーロン茶らしさがやや低減することが確認された。
【0063】
[実施例2]
実施例2では、先ず、緑茶抽出物を用いて、含有アラニン濃度を異ならせた7種類の茶風味アルコール飲料ベースを作製した。これらの茶風味アルコール飲料ベースを、希釈液(水)を用いて5倍に希釈し、含有アラニン濃度が異なる7種類の茶風味アルコール飲料を調製した。そして、7名のパネリストによる官能検査を実施した。
【0064】
(緑茶風味のアルコール飲料の調製)
緑茶風味のアルコール飲料ベースの原料としては、以下のものを使用した。
・テンチャエキストラクト G-61045(高砂香料工業社製)
・DL-アラニン(武蔵野化学研究所社製)
【0065】
上記の各原料を用いて、以下の表5に示す処方の緑茶風味のアルコール飲料を調製し、試験区1~7とした。そして、表5に示す処方の各アルコール飲料ベースを、希釈液(水)を用いて5倍に希釈し、官能評価用の試料とした。
【0066】
【0067】
(官能評価)
上記の試験区1~7の各アルコール飲料について、7名のパネリストによる官能評価を実施した。具体的には、各アルコール飲料の「アルコールによる刺激感」および「緑茶感」について評価した。「アルコールによる刺激感」については、実施例1と同様に、上記の表2に示す5段階の評価基準で行った。「緑茶感」については、下記の表6に示す5段階の評価基準で行った。なお、評価点の採点基準は、試験区1~7の各アルコール飲料を飲み比べることにより、各アルコール飲料に対して評価点1~5を振った。
【0068】
【0069】
【0070】
以上の結果より、アルコール飲料ベースにアラニンを添加することで、アルコールの刺激感を低減させながら、緑茶感をより感じることのできるアルコール飲料が得られることが確認された。特に、アルコール飲料ベース中のアラニンの含有量を0.5g/L以上とすることで、アルコールの刺激感をより低減させることができることが確認された。また、アルコール飲料ベース中のアラニンの含有量を8.0g/L以下とすることで、良好な緑茶感も得られることが確認された。
【0071】
[実施例3]
実施例3では、上記の実施例1の試験区4と同様の処方で、ウーロン茶風味のアルコール飲料ベースを実施例3の試料として調製した。また、比較対象として、アラニンの代わりに、旨味成分として知られているグルタミン酸を各濃度となるように添加して、比較例3-1~比較例3-3の試料とした。各試料の処方を、以下の表8に示す。そして、表8に示す処方の各アルコール飲料ベースを、希釈液(水)を用いて5倍に希釈し、官能評価用の試料とした。
【0072】
【0073】
(官能評価)
上記の各試料について、7名のパネリストによる官能評価を実施した。具体的には、各アルコール飲料の「アルコールによる刺激感」および「ウーロン茶感」について評価した。「アルコールによる刺激感」については、実施例1の表2に示す5段階の評価基準で行った。「ウーロン茶感」については、実施例1の表3に示す5段階の評価基準で行った。なお、評価点の採点基準は、実施例1の試験区1~7を飲み比べて評価点1~5を振ったもの基準として、実施例3及び比較例3-1~3-3に評価点を付した。
【0074】
【0075】
以上の結果より、アラニンの代わりにアルコール飲料ベースにグルタミン酸を添加した場合には、ウーロン茶感の付与効果は得られないことが確認された。
【0076】
[実施例4]
実施例4では、上記の実施例2の試験区5と同様の処方で、緑茶風味のアルコール飲料ベースを実施例4の試料として調製した。また、比較対象として、アラニンの代わりに、旨味成分として知られているグルタミン酸を各濃度となるように添加して、比較例4-1~比較例4-3の試料とした。各試料の処方を、以下の表10に示す。そして、表10に示す処方の各アルコール飲料ベースを、希釈液(水)を用いて5倍に希釈し、官能評価用の試料とした。
【0077】
【0078】
(官能評価)
上記の各試料について、7名のパネリストによる官能評価を実施した。具体的には、各アルコール飲料の「アルコールによる刺激感」および「緑茶感」について評価した。「アルコールによる刺激感」については、実施例1の表2に示す5段階の評価基準で行った。「緑茶感」については、実施例2の表6に示す5段階の評価基準で行った。なお、評価点の採点基準は、実施例2の試験区1~7を飲み比べて評価点1~5を振ったもの基準として、実施例4及び比較例4-1~4-3に評価点を付した。
【0079】
【0080】
以上の結果より、アラニンの代わりにアルコール飲料ベースにグルタミン酸を添加した場合には、緑茶感の付与効果は得られないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の茶風味アルコール飲料ベースによれば、アラニンが添加されることで、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできるアルコール飲料を得ることができる。本発明の茶風味アルコール飲料ベースは、アルコール度数の高いベースタイプのアルコール飲料であるため、例えば、水、湯、氷、炭酸水、ソフトドリンク、果汁などの所望の希釈液を用いて、所望のアルコール度数に調製して飲用に供される。そのため、本発明の茶風味アルコール飲料ベースは、飲食店向けの商業用および一般消費者向けの家庭用の両方の用途で利用可能である。
【0082】
また、本発明の希釈型アルコール飲料は、発明の茶風味アルコール飲料ベースを所望の希釈液を用いて希釈されたものであり、そのまま飲用に供することができる。本発明の希釈型アルコール飲料は、飲料製造工場において、茶風味アルコール飲料ベースを用いて製造されてもよいし、飲食店などにおいて茶風味アルコール飲料ベースから調製されてもよい。本発明の希釈型アルコール飲料は、飲食店向けの商業用および一般消費者向けの家庭用の両方の用途で利用可能である。
【0083】
また、本発明の茶風味アルコール飲料のアルコール刺激感マスキング方法は、例えば、飲料製造工場における茶風味アルコール飲料の製造時に、アルコールの刺激感を抑えつつ、茶の風味をより感じることのできるアルコール飲料を製造するために利用される。